(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記抗体又はその抗原結合断片が、トラスツズマブ又はペルツズマブ又はFab37モノクローナル抗体又はchA21モノクローナル抗体と、ヒトHER2受容体への結合について競合しない、請求項2に記載の抗体又はその抗原結合断片。
前記抗体又はその抗原結合断片が、放射性リガンド結合アッセイにより測定した場合にヒトHER2受容体に対して、100nM未満のKdを示す、請求項1〜4のいずれか一項に記載の抗体又はその抗原結合断片。
細胞は請求項9に記載のベクターを含み、前記抗体又はその抗原結合断片の発現を生じる条件で前記細胞を培養することにより、抗体又はその抗原結合断片を作製する方法。
請求項1〜7のいずれか一項に記載の抗体又はその抗原結合断片と、1種以上の治療薬又は診断薬(D)とを含み、その各々が独立して、直接的又は間接的に前記抗体又はその抗原結合断片に連結される、複合体。
前記抗体又はその抗原結合断片に連結された1又は複数の重合体足場材料をさらに含み、前記1種以上のDの各々が、前記1又は複数の重合体足場材料を介して独立に前記抗体又はその抗原結合断片に連結されている、請求項11に記載の複合体。
1又は複数の重合体足場材料の各々が、独立して、分子量が2kDa〜40kDaの範囲のポリ(1−ヒドロキシメチルエチレン=ヒドロキシメチル−ホルマール)(PHF)を含む、請求項12に記載の複合体。
前記癌は、肛門癌、星状細胞腫、白血病、リンパ腫、頭部および頸部癌、肝臓癌、精巣癌、頸部癌、肉腫、血管腫、食道癌、眼癌、喉頭癌、口癌、中皮腫、皮膚癌、骨髄腫、口腔癌、直腸癌、咽喉癌、膀胱癌、乳癌、子宮癌、卵巣癌、前立腺癌、肺癌、非小細胞肺癌(NSCLC)、大腸癌、脾臓癌、腎臓癌、および胃癌からなる群から選ばれる、請求項25に記載の使用のための複合体。
【発明の概要】
【0011】
本発明は、HER2(ErbB2、p185
neu、および/またはHER2/neuとしても知られる)を特異的に認識するモノクローナル抗体を提供する。本明細書で開示される抗体は、リン酸化AKTの量を減らして細胞の生存を促進するPI3K−Akt経路を調節する(例えば、阻止、阻害、低下、拮抗、中和、あるいは干渉)することができ、かつ有用である。本明細書で開示される抗体はまた、HER2のリガンドから独立した同種二量化および/または異種二量化を調節する(例えば、阻止、阻害、低下、拮抗、中和、あるいは干渉)することができ、かつ有用である。本明細書で開示される抗体はまた、可溶性HER2と結合する抗体を含む。
【0012】
本発明の抗体は、当該分野で記述される抗体とは異なるHER2結合特性を示す。特に、本明細書で開示される抗体は、HER2の異なるエピトープに結合する。というのは、これらの抗体はHER2への結合を互いに交差阻害するが、トラスツズマブ、ペルツズマブ、Fab37、またはchA21がHER2に結合することを交差阻害しないからである。さらに、周知の抗体とは反対に、本明細書で開示される抗体は、細胞増殖を促進せずにHER2が発現している細胞に効果的に内部移行することができる。
【0013】
本明細書で開示される抗体は、新規なエピトープに結合する完全ヒトモノクローナル抗体であり、かつ/または治療での使用に好ましい他の特性を有する。そのような特性としては、例えば、高濃度または低濃度でヒトHER2を発現している癌細胞への好ましい結合特性、組み換えヒトおよびカニクイザルHER2への特異的結合、HER2への結合時における効率的内部移行、抗体−薬物複合体(ADC)として投与した場合の高濃度または低濃度でHER2を発現している癌細胞を殺傷する高い能力、HER2を発現している癌細胞の増殖に及ぼす作動薬効果が実質的にないこと、抗体依存性細胞障害作用(ADCC)が媒介するHER2を発現している細胞の有効な殺傷、およびこれらの特性の任意の組み合わせ等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0014】
本明細書で開示される抗体はまた、ヒトHER2受容体の細胞外領域の残基452〜531(例えば、配列番号38の残基474〜553または配列番号39の残基452〜531)を含む、ヒトHER2受容体のエピトープに特異的に結合する単離抗体またはその抗原結合断片を含む。
【0015】
本明細書で開示される抗体はまた、ヒトHER2受容体の領域IVのN末端の少なくとも一部と結合するがヒトHER2受容体のエピトープ4D5と結合する抗体とは交差競合しない単離抗体またはその抗原結合断片を含む。例えば、本明細書で記載される抗体または抗原結合断片は、ヒトHER2受容体への結合でトラスツズマブと交差競合しない。というのは、トラスツズマブはヒトHER2受容体のエピトープ4D5に結合することが分かっているからである。本明細書における用語「ヒトHER2受容体のエピトープ4D5」は、ヒトHER2受容体の細胞外領域のアミノ酸残基529〜627(例えば、配列番号38の残基551〜649、または配列番号39の残基529〜627)を指す。また、いくつかの態様では、前記単離抗体またはその抗原結合断片は、カニクイザルHER2受容体の少なくとも1つのエピトープに結合する。
【0016】
本明細書で開示される抗体はまた、ヒトHER2受容体の細胞外領域の残基452〜500(例えば、配列番号38の残基474〜522、または配列番号39の残基452〜500)を含むヒトHER2受容体のエピトープに特異的に結合する単離抗体またはその抗原結合断片を含む。
【0017】
本明細書で開示される抗体はまた、ヒトHER2受容体の細胞外領域のアミノ酸残基E521、L525、およびR530(例えば、配列番号38の残基543、547、および552、および配列番号39の残基521、525、および530)からなる群から選ばれる少なくとも1つのアミノ酸残基を含むヒトHER2受容体のエピトープに特異的に結合する単離抗体またはその抗原結合断片を含む。例えば、本明細書で開示される抗体は、ヒトHER2受容体の細胞外領域のアミノ酸残基E521、L525、およびR530からなる群から選ばれる少なくとも2つのアミノ酸残基を含むヒトHER2受容体の細胞外領域のエピトープに特異的に結合する単離抗体またはその抗原結合断片を含む。本明細書で開示される抗体はまた、ヒトHER2受容体の細胞外領域の少なくともアミノ酸残基E521、L525、およびR530を含むヒトHER2受容体のエピトープに特異的に結合する単離抗体またはその抗原結合断片を含む。いくつかの態様では、また、これら単離抗体またはその抗原結合断片のいずれかまたは全ては、カニクイザルHER2受容体の少なくとも1つのエピトープに結合する。
【0018】
本明細書で開示される抗体はまた、ヒトHER2受容体の領域IIIの少なくとも一部および領域IVのN末端の少なくとも一部と結合するが、Fab37モノクローナル抗体またはヒトHER2受容体のエピトープ4D5に結合する抗体と交差競合しない、単離抗体またはその抗原結合断片を含む。例えば、本明細書で記載される抗体またはその抗原結合断片は、ヒトHER2受容体への結合でFab37モノクローナル抗体および/またはトラスツズマブと交差競合しない。いくつかの態様では、単離抗体またはその抗原結合断片はまた、カニクイザルHER2受容体の少なくとも1つのエピトープを含む。
【0019】
本明細書で開示される抗体はまた、ヒトHER2受容体の細胞外領域の残基520〜531(例えば、配列番号38の残基542〜553または配列番号39の残基520〜531)を含むヒトHER2受容体のエピトープに特異的に結合する単離抗体またはその抗原結合断片を含む。
【0020】
本明細書で開示される抗体はまた、ヒトHER2受容体の細胞外領域の残基C453、H456、H473、N476、R495、G496、H497、およびW499(例えば、配列番号38の残基475、478、495、498、517、518、519、および521、または配列番号39の残基453、456、473、476、495、496、497、および499)からなる群から選ばれる少なくとも1つのアミノ酸残基を含むヒトHER2受容体のエピトープに特異的に結合する単離抗体またはその抗原結合断片を含む。例えば、本明細書で開示される抗体は、ヒトHER2受容体の細胞外領域のアミノ酸残基C453、H456、H473、N476、R495、G496、H497、およびW499からなる群から選ばれる少なくとも2個のアミノ酸残基を含むヒトHER2受容体の細胞外領域のエピトープに特異的に結合する単離抗体またはその抗原結合断片を含む。例えば、本明細書で開示される抗体は、ヒトHER2受容体の細胞外領域のアミノ酸残基C453、H456、H473、N476、R495、G496、H497、およびW499からなる群から選ばれる少なくとも3個のアミノ酸残基を含むヒトHER2受容体の細胞外領域のエピトープに特異的に結合する単離抗体またはその抗原結合断片を含む。例えば、本明細書で開示される抗体は、ヒトHER2受容体の細胞外領域のアミノ酸残基C453、H456、H473、N476、R495、G496、H497、およびW499からなる群から選ばれる少なくとも4個のアミノ酸残基を含むヒトHER2受容体の細胞外領域のエピトープに特異的に結合する単離抗体またはその抗原結合断片を含む。例えば、本明細書で開示される抗体は、ヒトHER2受容体の細胞外領域のアミノ酸残基C453、H456、H473、N476、R495、G496、H497、およびW499からなる群から選ばれる少なくとも5個のアミノ酸残基を含むヒトHER2受容体の細胞外領域のエピトープに特異的に結合する単離抗体またはその抗原結合断片を含む。例えば、本明細書で開示される抗体は、ヒトHER2受容体の細胞外領域のアミノ酸残基C453、H456、H473、N476、R495、G496、H497、およびW499からなる群から選ばれる少なくとも6個のアミノ酸残基を含むヒトHER2受容体の細胞外領域のエピトープに特異的に結合する単離抗体またはその抗原結合断片を含む。例えば、本明細書で開示される抗体は、ヒトHER2受容体の細胞外領域の少なくともアミノ酸残基C453、H456、H473、N476、R495、G496、H497、およびW499を含むヒトHER2受容体の細胞外領域のエピトープに特異的に結合する単離抗体またはその抗原結合断片を含む。いくつかの態様では、また、これら単離抗体またはその抗原結合断片のいずれかまたは全ては、カニクイザルHER2受容体の少なくとも1個のエピトープと結合する。
【0021】
本明細書で開示される抗体はまた、ヒトHER2受容体の細胞外領域の残基C453、H473、N476、R495、H497、およびW499(例えば、配列番号38の残基475、495、498、517、519、および521、または配列番号39の残基453、473、476、495、497、および499)からなる群から選ばれる少なくとも1個のアミノ酸残基を含むヒトHER2受容体のエピトープに特異的に結合する単離抗体またはその抗原結合断片を含む。例えば、本明細書で開示される抗体は、ヒトHER2受容体の細胞外領域のアミノ酸残基C453、H473、N476、R495、H497、およびW499からなる群から選ばれる少なくとも2個のアミノ酸残基を含むヒトHER2受容体の細胞外領域のエピトープに特異的に結合する単離抗体またはその抗原結合断片を含む。例えば、本明細書で開示される抗体は、ヒトHER2受容体の細胞外領域のアミノ酸残基C453、H473、N476、R495、H497、およびW499からなる群から選ばれる少なくとも3個のアミノ酸残基を含むヒトHER2受容体の細胞外領域のエピトープに特異的に結合する単離抗体またはその抗原結合断片を含む。例えば、本明細書で開示される抗体は、ヒトHER2受容体の細胞外領域のアミノ酸残基C453、H473、N476、R495、H497、およびW499からなる群から選ばれる少なくとも4個のアミノ酸残基を含むヒトHER2受容体の細胞外領域のエピトープに特異的に結合する単離抗体またはその抗原結合断片を含む。例えば、本明細書で開示される抗体は、ヒトHER2受容体の細胞外領域のアミノ酸残基C453、H473、N476、R495、H497、およびW499からなる群から選ばれる少なくとも5個のアミノ酸残基を含むヒトHER2受容体の細胞外領域のエピトープに特異的に結合する単離抗体またはその抗原結合断片を含む。例えば、本明細書で開示される抗体は、ヒトHER2受容体の細胞外領域のアミノ酸残基C453、H473、N476、R495、H497、およびW499からなる群から選ばれる少なくとも6個のアミノ酸残基を含むヒトHER2受容体の細胞外領域のエピトープに特異的に結合する単離抗体またはその抗原結合断片を含む。例えば、本明細書で開示される抗体は、ヒトHER2受容体の細胞外領域の少なくともアミノ酸残基C453、H473、N476、R495、H497、およびW499を含むヒトHER2受容体の細胞外領域のエピトープに特異的に結合する単離抗体またはその抗原結合断片を含む。いくつかの態様では、これら単離抗体またはその抗原結合断片のいずれかまたは全ては、カニクイザルHER2受容体の少なくとも1個のエピトープに結合する。
【0022】
以下に、本発明のこれらおよび他の側面をさらに詳細に記載する。
【0023】
モノクローナル本明細書で開示される抗体としては、例えば、本明細書で記載されるXMT1517抗体、XMT1518抗体、XMT1519抗体、およびXMT1520抗体が挙げられる。あるいは、前記モノクローナル抗体は、互いに交差阻止するが、トラスツズマブ、ペルツズマブ、Fab37、またはchA21(それぞれ、HER2の領域IV、領域II、領域III、および領域Iにある特定のエピトープと結合する)またはそのバイオ後続品と同じエピトープに結合しない。本明細書では、これらの抗体は、それぞれ「HER2」抗体と言う。HER2抗体は、完全ヒトモノクローナル抗体、ヒト化モノクローナル抗体、およびキメラ抗体を含む。これらの抗体は、ヒトHER2に対する特異性を示し、リン酸化AKTの量を減らして細胞の生存を促進するPI3K−Akt経路を調節する(例えば、阻止、阻害、低下、拮抗、中和、あるいは干渉)することが示されている。これら抗体は、トラスツズマブまたはそのバイオ後続品の内部移行と同じまたは実質的に同程度の割合でHER2を発現している細胞の表面から内部移行する。例えば、これら抗体および抗原結合断片は、(細胞に)結合(0時間)してから4時間までに内部移行する内部移行率が全表面の約50%である。
【0024】
本明細書で開示される抗体は、配列番号1、3、5、および7からなる群から選ばれる配列に少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上同一であるアミノ酸配列を有する重鎖、および配列番号2、4、6、および8からなる群から選ばれる配列に少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上同一であるアミノ酸配列を有する軽鎖を含む。
【0025】
本明細書で開示される抗体は、(i)配列番号1のアミノ酸配列と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上同一である重鎖アミノ酸配列、および配列番号2のアミノ酸配列と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上同一である軽鎖アミノ酸配列、(ii)配列番号3のアミノ酸配列と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上同一である重鎖アミノ酸配列、および配列番号4のアミノ酸配列と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上同一である軽鎖アミノ酸配列、(iii)配列番号5のアミノ酸配列と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上同一である重鎖アミノ酸配列、および配列番号6のアミノ酸配列と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上同一である軽鎖アミノ酸配列、および(iv)配列番号7のアミノ酸配列と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上同一である重鎖アミノ酸配列、および配列番号8のアミノ酸配列と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上同一である軽鎖アミノ酸配列からなる群から選ばれる重鎖アミノ酸配列および軽鎖アミノ酸配列の組み合わせを含む。
【0026】
いくつかの態様では、本明細書で開示される抗体は、配列番号1のアミノ酸配列と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上同一である重鎖アミノ酸配列、および配列番号2のアミノ酸配列と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上同一である軽鎖アミノ酸配列を含む。
【0027】
いくつかの態様では、本明細書で開示される抗体は、配列番号3のアミノ酸配列と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上同一である重鎖アミノ酸配列、および配列番号4のアミノ酸配列と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上同一である軽鎖アミノ酸配列を含む。
【0028】
いくつかの態様では、本明細書で開示される抗体は、配列番号5のアミノ酸配列と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上同一である重鎖アミノ酸配列、および配列番号6のアミノ酸配列と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上同一である軽鎖アミノ酸配列を含む。
【0029】
いくつかの態様では、本明細書で開示される抗体は、配列番号7のアミノ酸配列と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上同一である重鎖アミノ酸配列、および配列番号8のアミノ酸配列と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上同一である軽鎖アミノ酸配列を含む。
【0030】
本明細書で開示される抗体は、配列番号1、3、5、および7からなる群から選ばれるアミノ酸配列を有する重鎖、および配列番号2、4、6、および8からなる群から選ばれるアミノ酸配列を有する軽鎖を含む。
【0031】
本明細書で開示される抗体は、(i)前記配列番号1の重鎖アミノ酸配列および前記配列番号2の軽鎖アミノ酸配列、(ii)前記配列番号3の重鎖アミノ酸配列および前記配列番号4の軽鎖アミノ酸配列、(iii)前記配列番号5の重鎖アミノ酸配列および前記配列番号6の軽鎖アミノ酸配列、および(iv)前記配列番号7の重鎖アミノ酸配列および前記配列番号8の軽鎖アミノ酸配列からなる群から選ばれる重鎖アミノ酸配列および軽鎖アミノ酸配列の組み合わせを含む。
【0032】
いくつかの態様では、本明細書で開示される抗体は、前記配列番号1の重鎖アミノ酸配列および前記配列番号2の軽鎖アミノ酸配列を含む。
【0033】
いくつかの態様では、本明細書で開示される抗体は、前記配列番号3の重鎖アミノ酸配列および前記配列番号4の軽鎖アミノ酸配列を含む。
【0034】
いくつかの態様では、本明細書で開示される抗体は、前記配列番号5の重鎖アミノ酸配列および前記配列番号6の軽鎖アミノ酸配列を含む。
【0035】
いくつかの態様では、本明細書で開示される抗体は、前記配列番号7の重鎖アミノ酸配列および前記配列番号8の軽鎖アミノ酸配列を含む。
【0036】
本明細書で開示される抗体は、配列番号9、11、13、および15からなる群から選ばれる配列と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上同一であるアミノ酸配列を有する重鎖可変領域、および配列番号10、12、14、および16からなる群から選ばれる配列に少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上同一であるアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域を含む。
【0037】
本明細書で開示される抗体は、(i)配列番号9のアミノ酸配列と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上同一である重鎖可変領域アミノ酸配列および配列番号10のアミノ酸配列と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上同一である軽鎖可変領域アミノ酸配列、(ii)配列番号11のアミノ酸配列と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上同一である重鎖可変領域アミノ酸配列および配列番号12のアミノ酸配列と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上同一である軽鎖可変領域アミノ酸配列、(iii)配列番号13のアミノ酸配列と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上同一である重鎖可変領域アミノ酸配列および配列番号14のアミノ酸配列と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上同一である軽鎖可変領域アミノ酸配列、および(iv)配列番号15のアミノ酸配列と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上同一である重鎖可変領域アミノ酸配列および配列番号16のアミノ酸配列と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上同一である軽鎖可変領域アミノ酸配列からなる群から選ばれる重鎖可変領域アミノ酸配列および軽鎖可変領域アミノ酸配列の組み合わせを含む。
【0038】
いくつかの態様では、本明細書で開示される抗体は、配列番号9のアミノ酸配列と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上同一である重鎖可変領域アミノ酸配列、および配列番号10のアミノ酸配列と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上同一である軽鎖可変領域アミノ酸配列を含む。
【0039】
いくつかの態様では、本明細書で開示される抗体は、配列番号11のアミノ酸配列と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上同一である重鎖可変領域アミノ酸配列、および配列番号12のアミノ酸配列と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上同一である軽鎖可変領域アミノ酸配列を含む。
【0040】
いくつかの態様では、本明細書で開示される抗体は、配列番号13のアミノ酸配列と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上同一である重鎖可変領域アミノ酸配列、および配列番号14のアミノ酸配列と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上同一である軽鎖可変領域アミノ酸配列を含む。
【0041】
いくつかの態様では、本明細書で開示される抗体は、配列番号15のアミノ酸配列と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上同一である重鎖可変領域アミノ酸配列、および配列番号16のアミノ酸配列と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上同一である軽鎖可変領域アミノ酸配列を含む。
【0042】
本明細書で開示される抗体は、配列番号9、11、13、および15からなる群から選ばれるアミノ酸配列を有する重鎖可変領域、および配列番号10、12、14、および16からなる群から選ばれるアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域を含む。
【0043】
本明細書で開示される抗体は、(i)配列番号9の重鎖可変領域アミノ酸配列および配列番号10の軽鎖可変領域アミノ酸配列、(ii)配列番号11の重鎖可変領域アミノ酸配列および配列番号12の軽鎖可変領域アミノ酸配列、(iii)配列番号13の重鎖可変領域アミノ酸配列および配列番号14の軽鎖可変領域アミノ酸配列、および(iv)配列番号15の重鎖可変領域アミノ酸配列および配列番号16の軽鎖可変領域アミノ酸配列からなる群から選ばれる重鎖可変領域アミノ酸配列および軽鎖可変領域アミノ酸配列の組み合わせを含む。
【0044】
いくつかの態様では、本明細書で開示される抗体は、前記配列番号9の重鎖可変領域アミノ酸配列、および前記配列番号10の軽鎖可変領域アミノ酸配列を含む。
【0045】
いくつかの態様では、本明細書で開示される抗体は、前記配列番号11の重鎖可変領域アミノ酸配列および前記配列番号12の軽鎖可変領域アミノ酸配列を含む。
【0046】
いくつかの態様では、本明細書で開示される抗体は、前記配列番号13のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域、および前記配列番号14のアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域を含む。
【0047】
いくつかの態様では、本明細書で開示される抗体は、前記配列番号15の重鎖可変領域アミノ酸配列、および前記配列番号16の軽鎖可変領域アミノ酸配列を含む。
【0048】
本明細書で開示される抗体の3つの重鎖CDRは、配列番号17、25、および30からなる群から選ばれる配列と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上同一であるアミノ酸配列を含む重鎖相補性決定領域1(CDRH1)、配列番号18、23、26、および31からなる群から選ばれる配列と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上同一であるアミノ酸配列を含む重鎖相補性決定領域2(CDRH2)、および配列番号19および27からなる群から選ばれる配列と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上同一である重鎖相補性決定領域3(CDRH3)を含むアミノ酸配列を含む。
【0049】
本明細書で開示される抗体の3つの軽鎖CDRは、配列番号20および28からなる群から選ばれる配列と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上同一であるアミノ酸配列を含む軽鎖相補性決定領域1(CDRL1)、配列番号21および24からなる群から選ばれる配列と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上同一であるアミノ酸配列を含む軽鎖相補性決定領域2(CDRL2)、および配列番号22および29からなる群から選ばれる配列と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上同一であるアミノ酸配列を含む軽鎖相補性決定領域3(CDRL3)を含む。
【0050】
前記抗体は、配列番号17、25、および30からなる群から選ばれる配列と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上同一であるアミノ酸配列を含むCDRH1、配列番号18、23、26、および31からなる群から選ばれる配列と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上同一であるアミノ酸配列を含むCDRH2、配列番号19および27からなる群から選ばれる配列と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上同一であるアミノ酸配列を含むCDRH3、配列番号20および28からなる群から選ばれる配列と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上同一であるアミノ酸配列を含むCDRL1、配列番号21および24からなる群から選ばれる配列と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上同一であるアミノ酸配列を含むCDRL2、および配列番号22および29からなる群から選ばれる配列と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上同一であるアミノ酸配列を含むCDRL3を含む、重鎖CDR配列および軽鎖CDR配列の組み合わせを含む。
【0051】
本明細書で開示される抗体の3つの重鎖CDRは、配列番号17、25、および30からなる群から選ばれるアミノ酸配列を含むCDRH1、配列番号18、23、26、および31からなる群から選ばれるアミノ酸配列を含むCDRH2、および配列番号19および27からなる群から選ばれるアミノ酸配列を含むCDRH3を含む。
【0052】
本明細書で開示される抗体の3つの軽鎖CDRは、配列番号20および28からなる群から選ばれるアミノ酸配列を含むCDRL1、配列番号21および24からなる群から選ばれるアミノ酸配列を含むCDRL2、および配列番号22および29からなる群から選ばれるアミノ酸配列を含むCDRL3を含む。
【0053】
本明細書で開示される抗体は、配列番号17、25、および30からなる群から選ばれるアミノ酸配列を含むCDRH1、配列番号18、23、26、および31からなる群から選ばれるアミノ酸配列を含むCDRH2、配列番号19および27からなる群から選ばれるアミノ酸配列を含むCDRH3、配列番号20および28からなる群から選ばれるアミノ酸配列を含むCDRL1、配列番号21および24からなる群から選ばれるアミノ酸配列を含むCDRL2、および配列番号22および29からなる群から選ばれるアミノ酸配列を含むCDRL3を含む重鎖CDR配列および軽鎖CDR配列の組み合わせを含む。
【0054】
本明細書で開示される抗体は、(i)配列番号17のCDRH1アミノ酸配列、配列番号18のCDRH2アミノ酸配列、配列番号19のCDRH3アミノ酸配列、配列番号20のCDRL1アミノ酸配列、配列番号21のCDRL2アミノ酸配列、および配列番号22のCDRL3アミノ酸配列、(ii)配列番号17のCDRH1アミノ酸配列、配列番号23のCDRH2アミノ酸配列、配列番号19のCDRH3アミノ酸配列、配列番号20のCDRL1アミノ酸配列、配列番号24のCDRL2アミノ酸配列、および配列番号22のCDRL3アミノ酸配列、(iii)配列番号25のCDRH1アミノ酸配列、配列番号26のCDRH2アミノ酸配列、配列番号27のCDRH3アミノ酸配列、配列番号28のCDRL1アミノ酸配列、配列番号21のCDRL2アミノ酸配列、および配列番号29のCDRL3アミノ酸配列、および(iv)配列番号30のCDRH1アミノ酸配列、配列番号31のCDRH2アミノ酸配列、配列番号27のCDRH3アミノ酸配列、配列番号28のCDRL1アミノ酸配列、配列番号21のCDRL2アミノ酸配列、および配列番号29のCDRL3アミノ酸配列からなる群から選ばれる重鎖相補性決定領域アミノ酸配列および軽鎖相補性決定領域アミノ酸配列の組み合わせを含む。
【0055】
いくつかの態様では、本明細書で開示される抗体は、配列番号17のCDRH1アミノ酸配列、配列番号18のCDRH2アミノ酸配列、配列番号19のCDRH3アミノ酸配列、配列番号20のCDRL1アミノ酸配列、配列番号21のCDRL2アミノ酸配列、および配列番号22のCDRL3アミノ酸配列を含む。
【0056】
いくつかの態様では、本明細書で開示される抗体は、配列番号17のCDRH1アミノ酸配列、配列番号23のCDRH2アミノ酸配列、配列番号19のCDRH3アミノ酸配列、配列番号20のCDRL1アミノ酸配列、配列番号24のCDRL2アミノ酸配列、および配列番号22のCDRL3アミノ酸配列を含む。
【0057】
いくつかの態様では、本明細書で開示される抗体は、配列番号25のCDRH1アミノ酸配列、配列番号26のCDRH2アミノ酸配列、配列番号27のCDRH3アミノ酸配列、配列番号28のCDRL1アミノ酸配列、配列番号21のCDRL2アミノ酸配列、および配列番号29のCDRL3アミノ酸配列を含む。
【0058】
いくつかの態様では、本明細書で開示される抗体は、配列番号30のCDRH1アミノ酸配列、配列番号31のCDRH2アミノ酸配列、配列番号27のCDRH3アミノ酸配列、配列番号28のCDRL1アミノ酸配列、配列番号21のCDRL2アミノ酸配列、および配列番号29のCDRL3アミノ酸配列を含む。
【0059】
いくつかの態様では、本明細書で開示されるHER2抗体はまた、前記抗体に結合した薬剤を含む。いくつかの態様では、前記薬剤は治療薬である。いくつかの態様では、前記薬剤は抗腫瘍薬である。いくつかの態様では、前記薬剤は、毒素またはその断片である。いくつかの態様では、前記薬剤は(a)オーリスタチン化合物、(b)カリケアマイシン化合物、(c)デュオカルマイシン化合物、(d)SN38、(e)ピロロベンゾジアゼピン、(f)ビンカ化合物、(g)ツブリシン化合物、(h)非天然のカンプトセシン化合物、(i)メイタンシノイド化合物、(j)DNA結合薬物、(k)キナーゼ阻害剤、(l)MEK阻害剤、(m) KSP阻害剤、(n)トポイソメラーゼ阻害剤、およびこれらの類縁体またはその類似物である。いくつかの態様では、前記薬剤は、リンカーを介してHER2抗体に結合している。いくつかの態様では、前記リンカーは開裂可能なリンカーである。いくつかの態様では、前記リンカーは開裂不能なリンカーである。いくつかの態様では、前記薬剤は本明細書で記載される任意のいずれかである。
【0060】
一側面では、本明細書で記載されるHER2抗体複合体(conjugate)は、1種以上の治療薬または診断薬(D)に直接または関節に結合した単離HER2抗体またはその抗原結合断片を含む。いくつかの態様では、前記HER2抗体複合体はまた、前記抗体またはその抗原結合断片に結合した1種以上の重合体足場材料を含み、前記1種以上の治療薬または診断薬Dのそれぞれは、前記1種以上の重合体足場材料を介して前記抗体またはその抗原結合断片に独立して結合している。
【0061】
いくつかの態様では、前記単離HER2抗体またはその抗原結合断片に結合した1種以上の重合体足場材料は、それぞれ独立に、分子量が約2kDa〜約40kDaの範囲のポリ(1−ヒドロキシメチルエチレン=ヒドロキシメチル−ホルマール)(PHF)を含む。
【0062】
いくつかの態様では、それぞれの1種以上の重合体足場材料は、独立に式(Ic)で表される:
【化1】
式中、
L
D1はカルボニルを含む部位であり、
【化2】
の各出現は、独立して、生分解性結合を含む第一のリンカーであり、前記結合が切れると、その意図された治療効果に合わせて活性化された形態でDが放出され、
【化3】
はDのL
D1への直接または間接的連結を示し、
【化4】
の各出現は、独立して、前記単離抗体またはその抗原結合断片にまだ結合していない第二のリンカーであり、L
P2は前記単離抗体またはその抗原結合断片の官能基と共有結合をまだ形成していない官能基を含む部位であり、L
D1とL
P2の間の
【化5】
はL
P2のL
D1への直接または間接的連結を示し、前記第二のリンカーの各出現は前記第一のリンカーの各出現とは区別され、
【化6】
の各出現は、独立して、各D担持重合体足場材料を前記単離抗体またはその抗原結合断片と結合する第三のリンカーであり、L
P2と連結した末端
【化7】
は、L
P2の官能基と前記単離抗体またはその抗原結合断片の官能基の間に共有結合が形成される時のL
P2の前記単離抗体またはその抗原結合断片への直接または間接的連結を示し、前記第三のリンカーの各出現は、前記第一のリンカーの各出現とは区別され、
mは1から約300の整数であり、
m
1は1から約140の整数であり、
m
2は1から約40の整数であり、
m
3は0から約18の整数であり、
m
4は1から約10の整数であり、
m、m
1、m
2、m
3、およびm
4の合計は約15から約300の範囲であり、
前記単離抗体またはその抗原結合断片に結合したL
P2の総数は10以下である。
【0063】
本明細書で記載される複合体は、以下の特徴事項を1つ以上含む。
【0064】
例えば、式(Ic)で、前記単離HER2抗体またはその抗原結合断片は、分子量が40kDa以上(例えば、60kDa以上、80kDa以上、100kDa以上、120kDa以上、140kDa以上、160kDa以上、180kDa以上、または200kDa以上、または約40〜200kDa、40〜180kDa、40〜140kDa、60〜200kDa、60〜180kDa、60〜140kDa、80〜200kDa、80〜180kDa、80〜140kDa、100〜200kDa、100〜180kDa、100〜140kDa、または140〜150kDa)である。いくつかの態様では、前記単離HER2抗体またはその抗原結合断片は本開示の抗体または抗原結合断片のいずれかである。その例としては、例えば、本明細書で記載されるXMT1517抗体、XMT1518抗体、XMT1519抗体、およびXMT1520抗体等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0065】
例えば、式(Ic)で、m
1は1〜約120の整数(例えば、約1〜90)、かつ/またはm
3は1〜約10の整数(例えば、約1〜8)である。
【0066】
例えば、式(Ic)のPHFの分子量が約6kDa〜約20kDa(すなわち、m、m
1、m
2、m
3、およびm
4の合計が約45〜約150)の範囲である場合、m
2は2〜約20の整数であり、m
3は0〜約9の整数であり、m
4は1〜約10の整数であり、かつ/またはm
1は1〜約75の整数(例えば、m
1は約4〜45)である。
【0067】
例えば、式(Ic)のPHFの分子量が約8kDa〜約15kDa(すなわち、m、m
1、m
2、m
3、およびm
4の合計が約60〜約110)の範囲である場合、m
2は2〜約15の整数、m
3は0〜約7の整数、m
4は1〜約10の整数、かつ/またはm
1は1〜約55の整数(例えば、m
1は約4〜30)である。
【0068】
例えば、式(Ic)のPHFの分子量が約2kDa〜約20kDa(すなわち、m、m
1、m
2、m
3、およびm
4の合計が約15〜約150)の範囲である場合、m
2は1〜約20の整数であり、m
3は0〜約10(例えば、m
3は0〜約9の範囲)の整数であり、m
4は1〜約8の整数であり、かつ/またはm
1は1〜約70の整数であり、前記単離抗体またはその抗原結合断片に結合したL
P2の総数は、約2〜約8の範囲(例えば、約2、3、4、5、6、7、または8)である。
【0069】
例えば、式(Ic)のPHFの分子量が約3kDa〜約15kDa(すなわち、m、m
1、m
2、m
3、およびm
4の合計が約20〜約110)の範囲である場合、m
2は2〜約15の整数であり、m
3は0〜約8(例えば、m
3は0〜約7の範囲)の整数であり、m
4は1〜約8の整数であり、かつ/またはm
1は2〜約50の整数であり、前記単離抗体またはその抗原結合断片に結合したL
P2の総数は、約2〜約8の範囲(例えば、約2、3、4、5、6、7、または8)である。
【0070】
例えば、式(Ic)のPHFの分子量が約5kDa〜約10kDa(すなわちm、m
1、m
2、m
3、およびm
4の合計が約40〜約75)の範囲である場合、m
2は約2〜約10の整数(例えば、m
2は約3〜10)であり、m
3は0〜約5(例えば、m
3は0〜約4の範囲)の整数であり、m
4は1〜約8(例えば、m
4は1〜約5の範囲)の整数であり、かつ/またはm
1は約2〜約35(例えば、m
1は約5〜35)の整数であり、前記単離抗体またはその抗原結合断片に結合したL
P2の総数は約2〜約8の範囲(例えば、約2、3、4、5、6、7、または8)である。
【0071】
例えば、Dの各出現は、独立して、分子量が5kDa以下の治療薬である。
【0072】
例えば、Dの各出現は、独立して、例えばビンカアルカロイド、オーリスタチン、ツブリシン、デュオカルマイシン、非天然のカンプトセシン化合物、メイタンシノイド、カリケアマイシン化合物、トポイソメラーゼ阻害剤、DNA結合薬物、キナーゼ阻害剤、MEK阻害剤、KSP阻害剤、およびこれらの類縁体から選ばれる抗癌剤である。
【0073】
例えば、単離抗体またはその抗原結合断片に結合していない場合、各
【化8】
は、独立して末端基W
Pを含み、各W
Pは独立して以下のものである。
【化9】
式中R
1Kは脱離基(例えば、ハロゲンまたはRC(O)O−(Rは水素、脂肪族部位、複素脂肪族部位、炭素環部位、またはヘテロシクロアルキル部位))であり、R
1Aは硫黄保護基であり、および環Aはシクロアルキルまたはヘテロシクロアルキルであり、R
1Jは水素、脂肪族部位、複素脂肪族部位、炭素環部位、またはヘテロシクロアルキル部位である。
【0074】
例えば、R
1Aはそれぞれ独立して、
【化10】
(rは1または2)であり、R
s1、R
s2、およびR
s3は、それぞれ水素、脂肪族部位、複素脂肪族部位、炭素環部位、またはヘテロシクロアルキル部位である。
【0075】
例えば、前記単離抗体またはその抗原結合断片の官能基と共有結合をまだ形成していないL
P2の官能基は、
−SR
p、−S−S−LG、
【化11】
、およびハロ(ここでLGは脱離基であり、R
pはHまたは硫黄保護基であり、X
aおよびX
bの一方はHであり、他方は水溶性マレイミド遮断部位である、あるいはX
aおよびX
bは、結合した炭素と共に炭素−炭素二重結合を形成する)から選ばれる。例えば、前記共有結合まだ形成していないL
P2の官能基は、前記単離抗体またはその抗原結合断片の官能基と反応しない官能基(例えば、L
P2の官能基としての
【化12】
(ここでX
aおよびX
bの一方はHであり、他方は水溶性マレイミド遮断部位である、またはX
aおよびX
bである)である。
【0076】
例えば、L
D1は、
【化13】
のカルボニル基に直接結合したXを有する−X−(CH
2)
v−C(=O)−を含み、ここでXはCH
2、O、またはNHであり、vは1〜6の整数である。
【0077】
例えば、
【化14】
の各出現は、独立して、−C(=O)−X−(CH
2)
v−C(=O)−NH−(CH
2)
u−NH−C(=O)−(CH
2)
w−(OCH
2)
x−NHC(=O)−(CH
2)
y−Mである(ここでXはCH
2、O、またはNHであり、v、u、w、x、およびyのそれぞれは独立して1〜6の整数であり、Mは
【化15】
(X
aおよびX
bの一方はHであり、他方は水溶性マレイミド遮断部位である、あるいはX
aおよびX
bは、結合した炭素と共に炭素−炭素二重結合を形成する))である。
【0078】
例えば、v、u、w、x、およびyのそれぞれは2である。
【0079】
例えば、Dと前記単離HER2抗体またはその抗原結合断片の比は、約25:1、24:1、23:1、22:1、21:1、20:1、19:1、18:1、17:1、16:1、15:1、14:1、13:1、12:1、11:1、10:1、9:1、8:1、7:1、6:1、5:1、4:1、3:1、2:1、または1:1である。
【0080】
例えば、Dと前記単離HER2抗体またはその抗原結合断片の比は、約20:1、15:1、10:1、5:1、2:1、または1:1である。
【0081】
例えば、Dと前記単離HER2抗体またはその抗原結合断片の比は、約16:1、15:1、14:1、13:1、12:1、11:1、または10:1である。
【0082】
例えば、Dと前記単離HER2抗体またはその抗原結合断片の比は、約15:1、14:1、13:1、12:1、または11:1である。
【0083】
例えば、Dと前記単離HER2抗体またはその抗原結合断片の比は、約15:1、14:1、13:1、または12:1である。
【0084】
例えば、Dと前記単離HER2抗体またはその抗原結合断片の比は約6:1、5:1、4:1、3:1、2:1、または1:1である。
【0085】
例えば、前記1種以上のD担持重合体足場材料のそれぞれは、独立して式(Id)で表される。
【化16】
式中、
m
3aは0〜約17の整数であり、
m
3bは1〜約8の整数であり、
末端
【化17】
は、前記1種以上の重合体足場材料が分子量40kDa以上の前記単離HER2抗体またはその抗原結合断片に直接連結していることを示す。
【0086】
式(Id)の足場材料は、以下の特徴事項を1つ以上含むことができる。
【0087】
m
3aとm
3bの合計が1〜18である。
【0088】
式(Id)のPHFの分子量が約2kDa〜約40kDaの範囲である場合、m、m
1、m
2、m
3a、およびm
3bの合計は約15〜約300の範囲であり、m
1は1〜約140の整数であり、m
2は1〜約40の整数であり、m
3aは0〜約17の整数であり、m
3bは1〜約8の整数であり、m
3aおよびm
3bの合計は1〜約18の範囲であり、PHFと前記単離HER2抗体またはその抗原結合断片の比率は10以下である。
【0089】
式(Id)のPHFの分子量が約2kDa〜約20kDaの範囲である場合、m、m
1、m
2、m
3a、およびm
3bの合計は約15〜約150の範囲であり、m
1は1〜約70の整数であり、m
2は1〜約20の整数であり、m
3aは0〜約9の整数であり、m
3bは1〜約8の整数であり、m
3aおよびm
3bの合計は1〜約10の範囲であり、PHFと前記単離HER2抗体またはその抗原結合断片の比率は2〜約8の整数である。
【0090】
式(Id)のPHFの分子量が約3kDa〜約15kDaの範囲である場合、m、m
1、m
2、m
3a、およびm
3bの合計は約20〜約110の範囲であり、m
1は2〜約50の整数であり、m
2は2〜約15の整数であり、m
3aは0〜約7の整数であり、m
3bは1〜約8の整数であり、m
3aおよびm
3bの合計は1〜約8の範囲であり、PHFと前記単離HER2抗体またはその抗原結合断片の比率は2〜約8(例えば、約2〜約6または約2〜約4)である。
【0091】
式(Id)のPHFの分子量が約5kDa〜約10kDaである場合、m、m
1、m
2、m
3a、およびm
3bの合計は約40〜約75の範囲であり、m
1は約2〜約35の整数であり、m
2は約2〜約10の整数であり、m
3aは0〜約4の整数であり、m
3bは1〜約5の整数であり、m
3aおよびm
3bの合計は1〜約5の範囲であり、PHFと前記単離HER2抗体またはその抗原結合断片の比率は2〜約8の整数(例えば、約2〜約6または約2〜約4)である。
【0092】
特定の態様では、オーリスタチンFヒドロキシルプロピルアミド(「AF HPA」)と前記単離HER2抗体またはその抗原結合断片の比は、約30:1、29:1、28:1、27:1、26:1、25:1、24:1、23:1、22:1、21:1、20:1、19:1、18:1、17:1、16:1、15:1、14:1、13:1、12:1、11:1、10:1、9:1、8:1、7:1、または6:1であってもよい。
【0093】
特定の態様では、AF HPAおよび 前記単離HER2抗体またはその抗原結合断片の比は、約25:1、24:1、23:1、22:1、21:1、20:1、19:1、18:1、17:1、16:1、15:1、14:1、13:1、12:1、11:1、10:1、9:1、8:1、7:1、または6:1であってもよい。
【0094】
他の態様では、前記AF HPAと前記単離HER2抗体またはその抗原結合断片の比は、約20:1、19:1、18:1、17:1、16:1、15:1、14:1、13:1、12:1、11:1、10:1、9:1、8:1、7:1、または6:1であってもよい。
【0095】
いくつかの態様では、前記AF HPAと前記単離HER2抗体またはその抗原結合断片の比は、約16:1、15:1、14:1、13:1、12:1、11:1、または10:1であってもよい。
【0096】
いくつかの態様では、前記AF HPAと前記単離HER2抗体またはその抗原結合断片の比は、約15:1、14:1、13:1、12:1、または11:1であってもよい。
【0097】
いくつかの態様では、前記AF HPAと前記単離HER2抗体またはその抗原結合断片の比は、約15:1、14:1、13:1、または12:1であってもよい。
【0098】
特定の態様では、前記PHFと前記単離HER2抗体またはその抗原結合断片の比は、約10:1、9:1、8:1、7:1、6:1、5:1、4:1、3:1、2:1、または1:1であってもよい。
【0099】
特定の態様では、前記PHFと前記単離HER2抗体またはその抗原結合断片の比は、約8:1、7:1、6:1、5:1、4:1、3:1、または2:1であってもよい。
【0100】
他の態様では、前記PHFと前記単離HER2抗体またはその抗原結合断片の比は、約6:1、5:1、4:1、3:1、2:1、または1:1であってもよい。
【0101】
他の態様では、前記PHFと前記単離HER2抗体またはその抗原結合断片の比は、約6:1、5:1、4:1、3:1、または2:1であってもよい。
【0102】
他の態様では、前記PHFと前記単離HER2抗体またはその抗原結合断片の比は、約6:1、5:1、4:1、または3:1であってもよい。
【0103】
いくつかの態様では、前記PHFと前記単離HER2抗体またはその抗原結合断片の比は、約5:1、4:1、または3:1であってもよい。
【0104】
いくつかの態様では、前記PHFと前記単離HER2抗体またはその抗原結合断片の比は、約4:1、3:1、または2:1であってもよい。
【0105】
前記水溶性マレイミド遮断部位(例えば、X
aまたはX
b)は、式(II)のチオール含有化合物とマレイミド基の反応でオレフィンの炭素の2個のうちの1個に共有結合することができる部位である。
R
90−(CH
2)
d−SH (II)
式中、
R
90は、NHR
91、OH、COOR
93、CH(NHR
91)COOR
93、または置換されたフェニル基であり、
R
93は水素またはC
1-4アルキルであり、
R
91は水素、CH
3、またはCH
3COであり、
dは1〜3の整数である。
【0106】
一態様では、式(II)の水溶性マレイミド遮断化合物は、システイン、N−アセチルシステイン、システインメチルエステル、N−メチルシステイン、2−メルカプトエタノール、3−メルカプトプロパン酸、2−メルカプト酢酸、メルカプトメタノール(すなわち、HOCH
2SH)、ベンジルチオール(フェニル基は1個以上の親水性置換基で置換されている)、または3−アミノプロパン−1−チオールであってもよい。フェニル基の1個以上の親水性置換基としては、OH、SH、メトキシ、エトキシ、COOH、CHO、COC
1-4アルキル、NH
2、F、シアノ、SO
3H、PO
3H等が挙げられる。
【0107】
他の側面では、水溶性マレイミド遮断基は−S−(CH
2)
d−R
90であり、
R
90はOH、COOH、またはCH(NHR
91)COOR
93であり、
R
93は水素またはCH
3であり、
R
91は水素またはCH
3COであり、
dは1または2である。
【0108】
他の態様では、前記水溶性マレイミド遮断基は−S−CH
2−CH(NH
2)COOHである。
【0109】
特定の態様では、本明細書で記載される複合体は1種以上のD担持PHFを含む。前記1種以上のD担持PHFはそれぞれ式(If)で表され、約2kDa〜約40kDaの範囲の分子量を有する。
【化18】
式中、
mは1〜約300の整数であり、
m
1は1〜約140の整数であり、
m
2は1〜約40の整数であり、
m
3aは0〜約17の整数であり、
m
3bは1〜約8の整数であり、
m
3aおよびm
3bの合計は1〜約18の範囲であり、
m、m
1、m
2、m
3a、およびm
3bの合計は約15〜約300の範囲であり、
末端
【化19】
は、1つ以上のPHF重合体足場材料の、前記ヒトHER2受容体のエピトープに特異的に結合する単離抗体またはその抗原結合断片への連結を示し、アミノ酸配列FTFSSYSMN(配列番号25)を含む重鎖可変領域相補性決定領域1(CDRH1)、アミノ酸配列YISSSSSTIYYADSVKG(配列番号26)を含む重鎖可変領域相補性決定領域2(CDRH2)、アミノ酸配列GGHGYFDL(配列番号27)を含む重鎖可変領域相補性決定領域3(CDRH3)、アミノ酸配列RASQSVSSSYLA(配列番号28)を含む軽鎖可変領域相補性決定領域1(CDRL1)、アミノ酸配列GASSRAT(配列番号21)を含む軽鎖可変領域相補性決定領域2(CDRL2)、およびアミノ酸配列QQYHHSPLT(配列番号29)を含む軽鎖可変領域相補性決定領域3(CDRL3)を含み、
前記PHFと前記抗体の比率は10以下である。
【0110】
式(If)の足場材料は、以下の特徴事項を1つ以上含んでいてもよい。
【0111】
式(If)のPHFの分子量が約2kDa〜約20kDaである場合、m、m
1、m
2、m
3a、およびm
3bの合計は約15〜約150の範囲であり、m
1は1〜約70の整数であり、m
2は1〜約20の整数であり、m
3aは0〜約9の整数であり、m
3bは1〜約8の整数であり、m
3aおよびm
3bの合計は1〜約10の範囲であり、前記PHFと前記抗体の比率は2〜約8の整数である。
【0112】
式(If)のPHFの分子量が約3kDa〜約15kDaの範囲である場合、m、m
1、m
2、m
3a、およびm
3bの合計は約20〜約110の範囲であり、m
1は2〜約50の整数であり、m
2は2〜約15の整数であり、m
3aは0〜約7の整数であり、m
3bは1〜約8の整数であり、m
3aおよびm
3bの合計は1〜約8の範囲であり、前記PHFと前記抗体の比率は2〜約8(例えば、約2〜約6または約2〜約4)の整数である。
【0113】
式(If)のPHFの分子量が約5kDa〜約10kDaの範囲である場合、m、m
1、m
2、m
3a、およびm
3bの合計は約40〜約75の範囲であり、m
1は約2〜約35の整数であり、m
2は約2〜約10の整数であり、m
3aは0〜約4の整数であり、m
3bは1〜約5の整数であり、m
3aおよびm
3bの合計は1〜約5の範囲であり、前記PHFと前記抗体の比率は2〜約8の整数(例えば、約2〜約6または約2〜約4)である。
【0114】
特定の態様では、オーリスタチンFヒドロキシルプロピルアミド(「AF HPA」)と前記抗体の比は、約30:1、29:1、28:1、27:1、26:1、25:1、24:1、23:1、22:1、21:1、20:1、19:1、18:1、17:1、16:1、15:1、14:1、13:1、12:1、11:1、10:1、9:1、8:1、7:1、または6:1であってもよい。
【0115】
特定の態様では、AF HPAと前記抗体の比は、約25:1、24:1、23:1、22:1、21:1、20:1、19:1、18:1、17:1、16:1、15:1、14:1、13:1、12:1、11:1、10:1、9:1、8:1、7:1、または6:1であってもよい。
【0116】
他の態様では、AF HPAと前記抗体の比は、約20:1、19:1、18:1、17:1、16:1、15:1、14:1、13:1、12:1、11:1、10:1、9:1、8:1、7:1、または6:1であってもよい。
【0117】
いくつかの態様では、AF HPAと前記抗体の比は、約16:1、15:1、14:1、13:1、12:1、11:1、または10:1であってもよい。
【0118】
いくつかの態様では、AF HPAと前記抗体の比は、約15:1、14:1、13:1、12:1、または11:1であってもよい。
【0119】
いくつかの態様では、AF HPAと前記抗体の比は、約15:1、14:1、13:1、または12:1であってもよい。
【0120】
特定の態様では、PHFと前記抗体の比は、約10:1、9:1、8:1、7:1、6:1、5:1、4:1、3:1、2:1、または1:1であってもよい。
【0121】
特定の態様では、PHFと前記抗体の比は、約8:1、7:1、6:1、5:1、4:1、3:1、または2:1であってもよい。
【0122】
他の態様では、PHFと前記抗体の比は、約6:1、5:1、4:1、3:1、2:1、または1:1であってもよい。
【0123】
他の態様では、PHFと前記抗体の比は、約6:1、5:1、4:1、3:1、または2:1であってもよい。
【0124】
他の態様では、PHFと前記抗体の比率は、約6:1、5:1、4:1、または3:1であってもよい。
【0125】
いくつかの態様では、PHFと前記抗体の比は約5:1、4:1、または3:1であってもよい。
【0126】
いくつかの態様では、PHFと前記抗体の比は約4:1、3:1、または2:1であってもよい。
【0127】
他の側面では、本明細書で記載される複合体は式(Ib)で表される。
【化20】
式中、
HER2抗体は、本明細書で記載される単離HER2抗体またはその抗原結合断片を示し、
L
P2とHER2抗体の間の
【化21】
はHER2抗体のL
P2への直接または間接的連結を示し、
HER2抗体の各出現は、独立して分子量が200kDa未満であり、
mは1〜約2200の整数であり、
m
1は1〜約660の整数であり、
m
2は3〜約300の整数であり、
m
3は0〜約110の整数であり、
m
4は1〜約60の整数であり、
m、m
1、m
2、m
3、およびm
4の合計は約150〜約2200の範囲である。
【0128】
式(Ib)では、m
1は約10〜約660(例えば、約10〜250)の整数である。
【0129】
式(Ib)のPHFの分子量が約50kDa〜約100kDa(すなわち、m、m
1、m
2、m
3、およびm
4の合計が約370〜約740の範囲)である場合、m
2は5〜約100の整数であり、m
3は1〜約40の整数であり、m
4は1〜約20の整数であり、かつ/またはm
1は1〜約220(例えば、m
1約15〜80)である。
【0130】
式(Ib)では、HER2抗体の分子量は、それぞれ独立して、120kDa以下、80kDa以下、70kDa以下、60kDa以下、50kDa以下、40kDa以下、30kDa以下、20kDa以下、10kDa以下、または約4kDa〜80kDa(例えば、4〜20kDa、20〜30kDa、または30〜70kDa)である。
【0131】
本発明の他の側面は、本明細書で記載される複合体を調製する方法を特徴とする。前記方法は、前記複合体が形成されるように前記単離抗体またはその抗原結合断片を式(Ia)の重合体足場材料と反応させることを含む。
【化22】
式中、
L
D1はカルボニル含有部位であり、
【化23】
の各出現は、独立して、生分解性結合を含む第一のリンカーであり、前記結合が切れると、その意図された治療効果に合わせて活性化された形態でDが放出され、
【化24】
はDのL
D1への直接または間接的連結を示し、
【化25】
の各出現は、独立して、前記単離抗体またはその抗原結合断片にまだ結合していない第二のリンカーであり、L
P2は前記単離抗体またはその抗原結合断片の官能基と共有結合をまだ形成していない官能基を含む部位であり、L
D1とL
P2の間の
【化26】
はL
P2のL
D1への直接または間接的連結を示し、前記第二のリンカーの各出現は前記第一のリンカーの各出現とは区別され、
mは1〜約300の整数であり、
m
1は1〜約140の整数であり、
m
2は1〜約40の整数であり、
m
3は1〜約18の整数であり、
m、m
1、m
2、およびm
3の合計は約15〜約300の範囲である。
【0132】
本明細書で開示される重合体足場材料の式で、ポリアセタール単位間の非結合部分、すなわち切れ目は任意の順で互いに結合してもよい。言い換えると、例えば、D、L
P2、および前記単離抗体またはその抗原結合断片を含む付加基は、重合体の主鎖に沿って無作為に分布していてもよい。
【0133】
本発明はまた、治療または予防を必要とする対象に本明細書で開示されるモノクローナル抗体、その断片、および/またはその複合体を投与して、HER2の異常な発現、機能および/または活性化に関連づけられた1つ以上の病状の進行を治療、予防、遅延、あるいは前記病状の症状を改善する、または前記病状の症状を緩和する方法を提供する。治療される対象は例えばヒトである。前記モノクローナル抗体、その断片、および/またはその複合体は、前記病状に関連づけられた症状を治療、予防、または軽減するのに十分な量で投与される。
【0134】
本発明はまた、治療または予防を必要とする対象に本明細書で開示されるモノクローナル抗体、その断片、および/またはその複合体を投与して、HER2の発現、機能および/または活性化に関連づけられた1つ以上の病状の症状の進行を治療、予防、遅延、あるいは改善する、または前記病状に関連づけられた症状を緩和する方法を提供する。治療される対象は例えばヒトである。前記モノクローナル抗体、その断片、および/またはその複合体は、前記病状に関連づけられた症状を治療、予防、または軽減するのに十分な量で投与される。
【0135】
本明細書で開示されるモノクローナル抗体、その断片、および/またはその複合体を用いて治療および/または予防される病状としては、例えば癌が挙げられる。例えば、本明細書で開示されるモノクローナル抗体、その断片、および/またはその複合体は、肛門癌、星状細胞腫、白血病、リンパ腫、頭部および頸部癌、肝臓癌、精巣癌、頸部癌、肉腫、血管腫、食道癌、眼癌、喉頭癌、口癌、中皮腫、皮膚癌、骨髄腫、口腔癌、直腸癌、咽喉癌、膀胱癌、乳癌、子宮癌、卵巣癌、前立腺癌、肺癌、非小細胞肺癌(NSCLC)、大腸癌、脾臓癌、腎臓癌、および胃癌からなる群から選ばれる癌の進行を治療、予防、遅延、あるいはその症状を改善するのに有用である。
【0136】
いくつかの態様では、本明細書で開示される抗体またはその抗原結合断片および/またはPBRM−重合体−薬物複合体は、乳癌の進行を治療、予防、遅延する、あるいはその症状を改善するのに有用である。
【0137】
いくつかの態様では、本明細書で開示される抗体またはその抗原結合断片および/またはPBRM−重合体−薬物複合体は、胃癌の進行を治療、予防、遅延する、あるいはその症状を改善するのに有用である。
【0138】
いくつかの態様では、本明細書で開示される抗体またはその抗原結合断片および/またはPBRM−重合体−薬物複合体は、非小細胞肺癌(NSCLC)の進行を治療、予防、遅延する、あるいはその症状を改善するのに有用である。
【0139】
いくつかの態様では、本明細書で開示される抗体またはその抗原結合断片および/またはPBRM−重合体−薬物複合体は、卵巣癌の進行を治療、予防、遅延する、あるいはその症状を改善するのに有用である。
【0140】
いくつかの態様では、癌(例えば、肛門癌、星状細胞腫、白血病、リンパ腫、頭部および頸部癌、肝臓癌、精巣癌、頸部癌、肉腫、血管腫、食道癌、眼癌、喉頭癌、口癌、中皮腫、皮膚癌、骨髄腫、口腔癌、直腸癌、咽喉癌、膀胱癌、乳癌、子宮癌、卵巣癌、前立腺癌、肺癌、非小細胞肺癌(NSCLC)、大腸癌、脾臓癌、腎臓癌、および胃癌からなる群から選ばれる癌)の進行を治療、予防、遅延する、あるいはその症状を改善するのに用いられるHer2抗体またはその抗原結合断片は、Her−2の同じエピトープへの結合に関して、以下のものを含む抗体と競合する:(1)アミノ酸配列FTFSSYSMN(配列番号25)を含む重鎖可変領域CDRH1、アミノ酸配列YISSSSSTIYYADSVKG(配列番号26)を含むCDRH2、アミノ酸配列GGHGYFDL(配列番号27)を含むCDRH3と、軽鎖可変領域CDRL1を含むアミノ酸配列RASQSVSSSYLA(配列番号28)、アミノ酸配列GASSRAT(配列番号21)を含むCDRL2、およびアミノ酸配列QQYHHSPLT(配列番号29)を含むCDRL3、(2)アミノ酸配列FTFSGRSMN(配列番号30)を含む重鎖可変領域CDRH1、アミノ酸配列YISSDSRTIYYADSVKG(配列番号31)を含むCDRH2、アミノ酸配列GGHGYFDL(配列番号27)を含むCDRH3、アミノ酸配列RASQSVSSSYLA(配列番号28)を含む軽鎖可変領域CDRL1、アミノ酸配列GASSRAT(配列番号21)を含むCDRL2、およびアミノ酸配列QQYHHSPLT(配列番号29)を含むCDRL3、(3)アミノ酸配列FTFSSYGMH(配列番号17)を含む重鎖可変領域CDRH1、アミノ酸配列VIWYDGSNKYYADSVKG(配列番号18)を含むCDRH2、アミノ酸配列EAPYYAKDYMDV(配列番号19)を含むCDRH3、およびアミノ酸配列RASQSVSSDYLA(配列番号20)を含む軽鎖可変領域CDRL1、アミノ酸配列GASSRAT(配列番号21)を含むCDRL2、およびアミノ酸配列QQYVSYWT(配列番号22)を含むCDRL3、または(4)アミノ酸配列FTFSSYGMH(配列番号17)を含む重鎖可変領域CDRH1、アミノ酸配列GIWWDGSNEKYADSVKG(配列番号23)を含むCDRH2、アミノ酸配列EAPYYAKDYMDV(配列番号19)を含むCDRH3、とアミノ酸配列RASQSVSSDYLA(配列番号20)を含む軽鎖可変領域CDRL1、アミノ酸配列GASRRAT(配列番号24)を含むCDRL2、およびアミノ酸配列QQYVSYWT(配列番号22)を含むCDRL3。
【0141】
他の態様では、癌(例えば、肛門癌、星状細胞腫、白血病、リンパ腫、頭部および頸部癌、肝臓癌、精巣癌、頸部癌、肉腫、血管腫、食道癌、眼癌、喉頭癌、口癌、中皮腫、皮膚癌、骨髄腫、口腔癌、直腸癌、咽喉癌、膀胱癌、乳癌、子宮癌、卵巣癌、前立腺癌、肺癌、非小細胞肺癌(NSCLC)、大腸癌、脾臓癌、腎臓癌、および胃癌からなる群から選ばれる癌)の進行を治療、予防、遅延、あるいはその症状を改善するのに用いられるHer2抗体またはその抗原結合その断片は、Her−2の同じエピトープへの結合に関して、以下のものを含む抗体と競合する:(1)アミノ酸配列FTFSSYSMN(配列番号25)を含む重鎖可変領域CDRH1、アミノ酸配列YISSSSSTIYYADSVKG(配列番号26)を含むCDRH2、アミノ酸配列GGHGYFDL(配列番号27)を含むCDRH3、およびアミノ酸配列RASQSVSSSYLA(配列番号28)を含む軽鎖可変領域CDRL1、アミノ酸配列GASSRAT(配列番号21)を含むCDRL2、およびアミノ酸配列QQYHHSPLT(配列番号29)を含むCDRL3、(2)アミノ酸配列FTFSGRSMN(配列番号30)を含む重鎖可変領域CDRH1、アミノ酸配列YISSDSRTIYYADSVKG(配列番号31)を含むCDRH2、アミノ酸配列GGHGYFDL(配列番号27)を含むCDRH3、アミノ酸配列RASQSVSSSYLA(配列番号28)を含む軽鎖可変領域CDRL1、アミノ酸配列GASSRAT(配列番号21)を含むCDRL2、およびアミノ酸配列QQYHHSPLT(配列番号29)を含むCDRL3、(3)アミノ酸配列FTFSSYGMH(配列番号17)を含む重鎖可変領域CDRH1、アミノ酸配列VIWYDGSNKYYADSVKG(配列番号18)を含むCDRH2、アミノ酸配列EAPYYAKDYMDV(配列番号19)を含むCDRH3、およびアミノ酸配列RASQSVSSDYLA(配列番号20)を含む軽鎖可変領域CDRL1、アミノ酸配列GASSRAT(配列番号21)を含むCDRL2、およびアミノ酸配列QQYVSYWT(配列番号22)を含むCDRL3、(4)アミノ酸配列FTFSSYGMH(配列番号17)を含む重鎖可変領域CDRH1、アミノ酸配列GIWWDGSNEKYADSVKG(配列番号23)を含むCDRH2、アミノ酸配列EAPYYAKDYMDV(配列番号19)を含むCDRH3、およびアミノ酸配列RASQSVSSDYLA(配列番号20)を含む軽鎖可変領域CDRL1、アミノ酸配列GASRRAT(配列番号24)を含むCDRL2、およびアミノ酸配列QQYVSYWT(配列番号22)を含むCDRL3。ここで、前記Her2抗体またはその抗原結合その断片は少なくとも1種の治療薬に直接または間接に結合し、前記治療薬は、分子量が約5kDa以下、約4kDa以下、約3kDa以下、約1.5kDa以下、または約1kDa以下の小分子である。本発明はまた、本明細書で開示されるHER2抗体またはその抗原結合断片、および/またはその複合体での治療の前にHER2の発現量が低い患者を識別して、本明細書で開示されるHER2抗体またはその抗原結合断片および/またはそのPBRM−重合体−薬物複合体治療としての投与に好適な患者集団を識別するか精緻化(例えば、階層化)するためのキットおよび/または方法を提供する。低HER2発現量とは、例えば、試験細胞集団を測定して細胞あたりHER2分子が100,000個以下、90,000個以下、または80,000個以下の患者を指す。HER2の発現量、すなわち、細胞あたりのHER2分子数は、従来の技術で認められた任意の方法(本明細書に提供される実施例(例えば、実施例18を参照)に示される細胞基準生存性アッセイを含むが、これらに限定されない)を用いて測定することができる。
【0142】
本発明はまた、本明細書で開示されるHER2抗体またはその抗原結合断片、および/またはその複合体での治療の前に対象のHER2スコアを識別して、本明細書で開示されるHER2抗体またはその抗原結合断片、および/またはその複合体の治療としての投与に好適な患者集団を識別するか精緻化(例えば、階層化)するためのキットおよび/または方法を提供する。いくつかの態様では、前記対象は、HER2の発現について1+または2+のスコアを有すると確認される。いくつかの態様では、前記対象は、試験細胞集団に対して行われた免疫組織化学(IHC)分析により検出されたHER2の発現のスコアが1+または2+であると確認され、前記HER2遺伝子は前記試験細胞集団では増幅されない。いくつかの態様では、前記試験細胞集団は、生検材料試料に由来する新鮮で冷凍していない組織に由来する。いくつかの態様では、前記試験細胞集団は、生検材料試料に由来する冷凍組織に由来する。
【0143】
IHC試験では、癌組織試料(例えば、乳癌組織試料または胃癌試料)中の細胞表面にあるHER2受容体タンパク質の量を測定し、細胞表面のHER2受容体の検出量に対してHER2スコア0、1+、2+、または3+を付与する。対象のHER2スコアが0〜1+の範囲内である場合、前記癌は「HER2陰性」であると考えられる。前記スコアが2+である場合、前記癌は「境界線」とされる。スコア3+は、前記癌が「HER2陽性」であることを意味する。
【0144】
いくつかの態様では、前記対象は、HER2の発現についてスコアが1+または2+であると確認され、標準最先端化学療法薬を含む化学療法に難治性を示す。本明細書を通して、用語「対象」はヒトおよび他の哺乳類を含む。いくつかの態様では、前記対象は、HER2の発現についてスコアが1+または2+であると確認され、乳癌、胃癌、非小細胞肺癌(NSCLC)、または卵巣癌を患っている。
【0145】
いくつかの態様では、本明細書で開示される抗体またはその抗原結合断片および/またはPBRM−重合体−薬物複合体は、遺伝子増幅がない(例えば、FISH−(すなわち、蛍光in situハイブリダイゼーション陰性)HER2 IHC 1+またはHER2 IHC 2+である患者の乳癌の進行を治療、予防、遅延、あるいはその症状を改善するのに有用である。
【0146】
いくつかの態様では、本明細書で開示される抗体またはその抗原結合断片および/またはPBRM−重合体−薬物複合体は、進行したHER2陽性乳癌の患者およびカドサイラで以前に治療を受けたことがある患者の乳癌の進行を治療、予防、遅延、あるいはその症状を改善するのに有用である。
【0147】
いくつかの態様では、本明細書で開示される抗体またはその抗原結合断片および/またはPBRM−重合体−薬物複合体は、進行したHER2陽性乳癌の患者およびカドサイラで以前に治療を受けたことがある患者の乳癌の進行を治療、予防、遅延、あるいはその症状を改善するのに有用である。
【0148】
いくつかの態様では、本明細書で開示される抗体またはその抗原結合断片および/またはPBRM−重合体−薬物複合体は、遺伝子増幅がない(例えば、FISH−)HER2 IHC 1+またはHER2 IHC 2+である患者の胃癌の進行を治療、予防、遅延、あるいはその症状を改善するのに有用である。
【0149】
いくつかの態様では、本明細書で開示される抗体またはその抗原結合断片および/またはPBRM−重合体−薬物複合体は、HER2 IHC 2+、HER2 IHC 3+、任意のHER2遺伝子増幅、または変異状態を有する患者の非小細胞肺癌(NSCLC)の進行を治療、予防、遅延、あるいはその症状を改善するのに有用である。
【0150】
いくつかの態様では、前記対象は、標準最先端化学療法薬を含む化学療法に難治性を示す。いくつかの態様では、前記対象はカドサイラを用いた治療に抵抗性を示す。
【0151】
本明細書で提供される方法および使用の態様のいずれかで用いられるHER2抗体またはその抗原結合断片、および/または結合HER2抗体またはその抗原結合断片は、前記病気のいずれの段階で投与してもよい。例えば、このようなHER2抗体および/または結合HER2抗体は、初期から転移期の任意の段階の癌を患っている患者に投与してもよい。
【0152】
これら方法および使用の態様のいずれかで用いられるHER2抗体および/または結合HER2抗体は、単独または1種以上の化学療法薬またはその他の薬剤と組み合わせて投与してもよい。いくつかの態様では、前記薬剤は、本明細書で記載される毒素のいずれかである。いくつかの態様では、前記薬剤は、(1)HER2阻害剤、(2)EGFR阻害剤(例えば、チロシンキナーゼ阻害剤または標的抗EGFR抗体)、(3)BRAF阻害剤、(4)ALK阻害剤、(5)ホルモン受容体阻害剤、(6)mTOR阻害剤、(7)VEGF阻害剤、または(8)癌ワクチンである。いくつかの態様では、前記薬剤は、標準最先端化学療法薬、例えば、トラスツズマブ、ペルツズマブ、アドトラスツズマブエムタンシン(カドサイラ)、ラパチニブ、アナストロゾール、レトロゾール、エキセメスタン、エベロリムス、フルベストラント、タモキシフェン、トレミフェン、酢酸メゲストロール、フルオキシメステロン、エチニルエストラジオール、パクリタキセル、カペシタビン、ゲムシタビン、エリブリン、ビノレルビン、シクロホスファミド、カルボプラチン、ドセタキセル、アルブミン結合パクリタキセル、シスプラチン、エピルビシン、イクサベピロン、ドキソルビシン、フルオロウラシル、オキサリプラチン、フルオロピリミジン、イリノテカン、ラムシルマブ、マイトマイシン、ロイコボリン、セツキシマブ、ベバシズマブ、エルロチニブ、アファチニブ、クリゾチニブ、ペメトレキセド、セリチニブ、エトポシド、ビンブラスチン、ビンクリスチン、イホスファミド、リポソームドキソルビシン、トポテカン、アルトレタミン、メルファラン、または酢酸ロイプロリドである。いくつかの態様では、第二の薬剤はカドサイラである。
【0153】
いくつかの態様では、前記薬剤は、少なくともHER2に特異的に結合する第二の抗体またはその抗原結合断片である。いくつかの態様では、前記HER2抗体および/または結合HER2抗体は、HER2抗体、HER2二量化阻害剤抗体、あるいはHER2抗体とHER2二量化阻害剤抗体の組み合わせ(例えば、トラスツズマブ、ペルツズマブ、あるいはこれらの組み合わせ)との組み合わせで投与される。いくつかの態様では、前記HER2抗体および/または結合HER2抗体は、トラスツズマブのバイオ後続品、ペルツズマブのバイオ後続品、あるいはこれらの組み合わせと組み合わせて投与される。
【0154】
HER2抗体および/または結合HER2抗体のこれらの組み合わせは、癌等の病状の治療に有用である。例えば、HER2抗体および/または結合HER2抗体、例えば、本明細書で開示されるHER2抗体またはその抗原結合断片および/または結合HER2抗体(例えば、HER2抗体−重合体−薬物複合体)のこれらの組み合わせをトラスツズマブ、ペルツズマブ、トラスツズマブとペルツズマブの両方、またはトラスツズマブのバイオ後続品、ペルツズマブのバイオ後続品、またはこれらバイオ後続品の両方と組み合わせることは、癌(例えば、肛門癌、星状細胞腫、白血病、リンパ腫、頭部および頸部癌、肝臓癌、精巣癌、頸部癌、肉腫、血管腫、食道癌、眼癌、喉頭癌、口癌、中皮腫、皮膚癌、骨髄腫、口腔癌、直腸癌、咽喉癌、膀胱癌、乳癌、子宮癌、卵巣癌、前立腺癌、肺癌、非小細胞肺癌(NSCLC)、大腸癌、脾臓癌、腎臓癌、および胃癌)からなる群から選ばれる癌の症状の進行を治療、予防、遅延する、あるいはその症状を改善するのに有用である。
【0155】
これらの組み合わせはまた、HER2発現細胞をこれらの組み合わせと接触させた場合にHER2の分解を増加させるのに有用である。HER2の分解量は、HER2の分解を検出する、従来の技術で認められたいずれかの方法を用いて検出される。例えば、本明細書で提供される実施例で示されるように(例えば、実施例14を参照のこと)、各HER2抗体(またはそのバイオ後続品)の組み合わせの存在下および非存在下でHER2の分解量を検出する方法が挙げられるが、これに限定されない。例えば、HER2抗体の組み合わせで治療したHER2発現細胞の溶菌液をHER2抗体の組み合わせで治療しなかったHER2発現細胞内のHER2の分解量と比べるウェスタン分析を用いて、HER2の分解量を求める。
【0156】
いくつかの態様では、前記HER2抗体および/または結合HER2抗体および追加の薬剤は、単一の治療用組成物に製剤されて、前記HER2抗体および/または結合HER2抗体および追加の薬剤は同時に投与される。あるいは、前記HER2抗体および/または結合HER2抗体および追加の薬剤は互いに独立している。例えば、それぞれが個別の治療用組成物に製剤されて、HER2抗体および/または結合HER2抗体および追加の薬剤が同時に投与される。あるいは、HER2抗体および/または結合HER2抗体および追加の薬剤は、治療計画の間、異なる時間に投与される。例えば、前記HER2抗体および/または結合HER2抗体は、追加の薬剤の投与前に投与される。あるいは、前記HER2抗体および/または結合HER2抗体は、追加の薬剤の投与後に投与される。または、前記HER2抗体および/または結合HER2抗体および追加の薬剤は交互に投与される。本明細書で記載されるように、前記HER2抗体および/または結合HER2抗体および追加の薬剤は、単一投与量または複数の投与量で投与される。
【0157】
本発明による医薬品組成物は、本明細書で開示される抗体、その断片、および/またはその複合体と好適な担体を含んでいてもよい。これら医薬品組成物は、キット(例えば、診断キット)に含まれていてもよい。
【0158】
当業者には自明であるが、本明細書で開示される抗体は様々な使途がある。例えば、本明細書で開示されるタンパク質は、治療薬として用いられる。本明細書で開示される抗体はまた、診断キットの試薬または診断ツールとして用いられる。あるいは、治療試薬を生成するためにこれら抗体を競合アッセイで用いてもよい。
【0159】
特に断りがなければ、本明細書で用いられるすべての技術用語および科学用語は、本発明が属する当該分野の当業者によって一般に理解されるのと同じ意味を有する。本明細書では、特に明記されていない限り、単数形は複数形をも含む。本明細書で記載される方法および材料に類似または等価である方法および材料は本発明の実行または試験に用いることができるが、好適な方法および材料は以下で記載される。矛盾があった場合は、定義を含む本明細書により調整される。また、これら材料、方法、および実施例は、例示のためのみのものであり、限定を意図するものではない。
【0160】
本発明のその他の特徴および利点は、以下の詳細な記述および請求項から分かる。
【発明を実施するための形態】
【0184】
本発明は、可溶な形態または膜に結合した(すなわち、細胞表面で発現した場合)のヒトHER2に特異的に結合するモノクローナル抗体を提供する。本発明はさらに、HER2に特異的に結合するモノクローナル抗体を提供する。本明細書では、これらの抗体をまとめて「HER2」抗体と言う。
【0185】
本発明の抗体は、1μM以下、例えば100nM以下、好ましくは10nM以下、より好ましくは1nM以下の平衡解離定数(K
dまたはK
D)を有するHER2エピトープに結合する。例えば、本明細書で提供されるHER2抗体は、K
dが約1nM〜約1pMの範囲である。
【0186】
本明細書で開示されるHER2抗体は、HER2の機能活性を調節、阻止、阻害、低下、拮抗、中和、あるいは干渉する働きをする。HER2の機能活性は、例えば、PI3K−Akt経路活性の調節を含む。例えば、前記HER2抗体は、部分的にまたは完全にPI3K−Akt経路活性を調節、阻止、阻害、低下、拮抗、中和、あるいは干渉してHER2機能活性を完全または部分的に阻害する。PI3K−Akt経路活性は、従来の技術で認められた任意のPI3K−Akt経路活性を検出する方法を用いて評価される。そのような方法は、本明細書で開示される抗体または抗原結合断片の存在下および非存在下でリン酸化Akt量を検出する方法を含むが、これに限定されない。
【0187】
本明細書で記載されるHER2抗体との結合の非存在下でのHER2機能活性度と比べてHER2抗体の存在下のHER2機能活性度が少なくとも95%、例えば、96%、97%、98%、99%、または100%低下している場合は、前記HER2抗体はHER2機能活性を完全に調節、阻止、阻害、低下、拮抗、中和、あるいは干渉すると見なされる。本明細書で記載されるHER2抗体との結合の非存在下でのHER2活性度と比べてHER2抗体の存在下でのHER2活性度が95%未満、例えば、10%、20%、25%、30%、40%、50%、60%、75%、80%、85%、または90%低下している場合は、前記HER2抗体はHER2機能活性を部分的に調節、阻止、阻害、低下、拮抗、中和、あるいは干渉すると見なされる。
定義
【0188】
特に断りがなければ、本発明に関連して用いられる科学用語および技術用語は、当業者によって一般に理解される意味を有するものとする。さらに、文脈から必要とされなければ、用語の単数形は複数を含み、用語の複数形は単数を含むものとする。一般に、本明細書で記載される細胞および組織培養、分子生物学、タンパク質およびオリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチド化学、およびハイブリダイゼーションに関連して用いられる用語、ならびにこれらの技術において用いられる用語は当該分野で周知であり、一般に用いられる。組み換えDNA、オリゴヌクレオチド合成、組織培養、および形質転換(例えば、電気穿孔法、リポフェクション法)には一般的な技術が用いられる。製造者の仕様書に従って、あるいは当該分野で一般に確立している、または本明細書で記載されるように酵素反応および精製技術が実行される。以下の技術および手順は、当該分野で周知の従来の方法に従って、また本明細書で引用され、議論される一般的およびより特定の各種参考文献で記載されているように行われる。例えば、Sambrook et al. Molecular Cloning: A Laboratory Manual (2d ed., Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, N.Y. (1989)を参照のこと。本明細書で記載される分析化学、合成有機化学、および医薬品化学に関連して用いられる用語、ならびにその実験手順および技術の用語は、当該分野で周知であり、一般に用いられる。化学合成、化学分析、医薬品調製、製剤、および供給、および患者の治療については一般的な技術が用いられる。
【0189】
本開示によって用いられるように、特に断りがなければ、以下の用語は以下の意味を持つものとする。
【0190】
本明細書を通して、本明細書で用いる場合、用語「HER2」(ErbB−2、NEU、HER−2、およびCD340としても知られる)はヒト上皮成長因子受容体2(SwissProt P04626)を指し、細胞(腫瘍細胞を含む)によって天然に発現した、あるいはHER2遺伝子で形質移入した細胞で発現したHER2の任意の多様体、イソ型、および種の相同体を含む。種の相同体としては、アカゲザル(macaca mulatta)HER2(Genbank登録番号GI:109114897)が挙げられる。これらの用語は同義であり、お互いに言い換え可能である。
【0191】
本明細書を通して、用語「HER2抗体」または「抗HER2抗体」は、抗原HER2に特異的に結合する抗体である。
【0192】
本明細書を通して、用語「抗体」は、免疫グロブリン分子、および免疫グロブリン(Ig)分子の免疫的活性部分、すなわち、抗原に特異的に結合(抗体反応)する抗原結合部位を含む分子を指す。「特異的に結合する」、「抗体反応する」、または「に対して作られる」という用語は、抗体が所望の抗原の1つ以上のエピトープと反応するが、より親和性の低い(K
d>10
-6)他のポリペプチドとは反応しない、すなわち結合しないことを意味する。抗体としては、ポリクロナール抗体、モノクローナル抗体、キメラ抗体、dAb(ドメイン抗体)、単鎖抗体、F
ab、F
ab’およびF
(ab’)2断片、scFv、およびF
ab発現ライブラリー等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0193】
塩基性抗体の構成単位は四量体を含むことが知られている。各四量体は、ポリペプチド鎖の同一の2つの対からなり、各対は1本の「軽」(約25kDa)鎖と1本の「重」鎖(約50〜70kDa)を有する。各鎖のアミノ端末部位は、主に抗原の認識に関わる約100〜110個以上のアミノ酸の可変領域を含む。各鎖のカルボキシ端末部位は、主に効果または機能に関わる定常領域を規定する。一般に、ヒト由来の抗体分子は、クラスIgG、IgM、IgA、IgE、およびIgDのいずれかに関する。これらは、抗体分子に存在する重鎖の性質により互いに異なっている。特定のクラスは、IgG
1、IgG
2等の下位クラスを含む。さらに、ヒトでは、軽鎖はκ鎖またはλ鎖であってもよい。
【0194】
本明細書で用いる用語「モノクローナル抗体」(mAb)または「モノクローナル抗体組成物」は、固有の軽鎖遺伝子産物と固有の重鎖遺伝子産物からなる抗体分子の分子種を1種のみ含む抗体分子の集団を指す。特に、モノクローナル抗体の相補性決定領域(CDR)は、前記集団の分子のすべてにおいて同一である。mAbは、その固有の結合親和性により特徴づけられる抗原の特定のエピトープと免疫反応することができる抗原結合部位を含む。
【0195】
一般に、ヒト由来の抗体分子は、クラスIgG、IgM、IgA、IgE、およびIgDのいずれかに関する。これらは、抗体分子に存在する重鎖の性質により互いに異なっている。特定のクラスは、IgG
1、IgG
2等の下位クラスを有する。さらに、ヒトでは、軽鎖はκ鎖またはλ鎖であってもよい。
【0196】
用語「抗原結合部位」または「結合部分」は、抗原の結合に参加する免疫グロブリン分子の部品を指す。抗原結合部位は、重(「H」)鎖および軽(「L」)鎖のN−末端可変(「V」)領域のアミノ酸残基により形成される。「超可変領域」と言われる重鎖および軽鎖のV領域内の3つの非常に多様な伸長部は、「フレームワーク領域」すなわち「FR」として知られるより保存された隣接する伸長部の間に介在している。したがって、用語「FR」は、免疫グロブリンの超可変領域間とそれらに隣接して天然に見られるアミノ酸配列を指す。抗体分子では、軽鎖の3つの超可変領域および重鎖の3つの超可変領域が、抗原結合表面を形成する三次元空間で互いに交互に配置されている。抗原結合表面は、結合した抗原の三次元表面に相補的であり、重鎖および軽鎖のそれぞれの3つの超可変領域は、「相補性決定領域」すなわち「CDR」と呼ばれる。アミノ酸の各領域への付与は、Kabat Sequences of Proteins of Immunological Interest(国立衛生研究所、メリーランド州ベセツダ(1987 and 1991))またはChothia & Lesk J. Mol. Biol. 196:901-917 (1987), Chothia et al. Nature 342:878-883 (1989)の定義に従っている。
【0197】
用語「断片」、「抗体断片」、「抗原結合断片」、および「抗原結合断片」は、特に断りのない限りお互いに言い換え可能に用いられる。
【0198】
本明細書を通して、用語「エピトープ」は、免疫グロブリンまたはその断片、またはT細胞受容体に特異的に結合することができる任意のタンパク質を含む。用語「エピトープ」は、免疫グロブリンまたはT細胞受容体に特異的に結合することができる任意のタンパク質決定基を含む。エピトープは、一般的に分子(例えば、アミノ酸または糖側鎖)の化学的活性表面基からなり、通常、特定の三次元構造特性および特定の電荷特性を有する。解離定数が1μM以下、例えば、100nM以下、好ましくは10nM以下、より好ましくは1nM以下である場合に、抗体は抗原に特異的に結合すると言う。
【0199】
本明細書において2種以上の抗体の関連で用いられる場合、用語「競合する」または「交差競合する」は、2つ以上の抗体がHER2への結合について競合する、例えば、実施例5または8に記載されるアッセイでのHER2結合について競合することを指す。抗体が25%以上、1つ以上の他の抗体と競合する(好ましくは実施例5および8のアッセイを用いて決定されるが、25%〜74%は「部分阻害」を表し、75%〜400%は「完全阻害」を表す)場合、その抗体は、1つ以上の他の抗体がHER2と結合するのを「阻害する」または「交差阻害する」。抗体のいくつかの対では、実施例5または8のアッセイにおける競合または阻害は、1つの抗体をプレート上に塗布して、他の抗体を競合に用いる、あるいはその反対の場合にのみ観察される。また、特に文脈で定義されない、あるいは否定されない限り、本明細書で用いられる用語「競合する」または「交差競合する」、「阻害する」または「交差阻害する」はこのような抗体対をも含むことを意図するものである。
【0200】
本明細書を通して、「HER二量化を阻害する」抗体は、HER二量体の形成を阻害または干渉する抗体を意味するものとする。そのような抗体は、HER2の異種二量体結合部位で結合することが好ましい。一態様では、本明細書の二量化阻害抗体は、ペルツズマブすなわちMAb−2C4である。HER二量化を阻害する抗体の他の例としては、EGFRに結合して1つ以上の他のHER受容体との二量化を阻害する抗体(例えば、活性化すなわち「非係留」EGFRに結合するEGFRモノクローナル抗体806、MAb 806(Johns et al., J. Biol. Chem. 279(29):30375-30384 (2004)を参照のこと)、HER3に結合して1つ以上の他のHER受容体との二量化を阻害する抗体、およびHER4に結合して1つ以上の他のHER受容体との二量化を阻害する抗体等が挙げられる。
【0201】
本明細書で用いられる用語「HER2二量化阻害剤」は、HER2を含む二量体または異種二量体の形成を阻害する薬剤を意味するものとする。
【0202】
本明細書を通して、HER2抗体の文脈で用いられる場合の用語「内部移行」は、抗体が、例えば、飲食作用により細胞表面および/または周囲の培地からHER2発現細胞に内部移行する任意の反応機構を含む。
【0203】
本明細書を通して、用語「免疫結合」および「免疫結合性」は、免疫グロブリン分子と、その免疫グロブリンに特異的な抗原との間に生じる種類の非共有結合性相互作用を指す。免疫結合相互作用の強度または親和性は、相互作用の解離定数(K
d)で表すことができ、K
dが小さいと親和性が大きいことを表す。選択されたポリペプチドの免疫結合性は、当該分野で周知の方法を用いて定量化することができる。そのような方法の一つに、抗原結合部位/抗原の複合体形成および解離率の測定が含まれる。この測定では、複合体形成および解離率は複合体を形成する相手の濃度、相互作用の親和性、および両方向で複合体形成・解離速度に等しく影響を及ぼす幾何学的パラメータに依存する。従って、「会合速度(on rate)定数」(K
on)および「解離速度(off rate)定数」(K
off)はいずれも、濃度と実際の会合・解離速度を計算して求めることができる(Nature 361:186-87 (1993)を参照のこと)。K
off/K
onの比率により親和性に関係しないすべてのパラメータを相殺することができ、この比率は解離定数K
dと等しい(一般に、Davies et al. (1990) Annual Rev Biochem 59:439-473を参照のこと)。アッセイ(例えば、放射性リガンド結合アッセイまたは当業者に周知の同様のアッセイ)により測定された平衡解離定数(K
dまたはK
D)が1μM以下、好ましくは100nM以下、より好ましくは10nM以下、最も好ましくは100pM〜約1pMである場合、本発明の抗体は、HER2に特異的に結合すると言う。
【0204】
本明細書で用いられる用語「単離ポリヌクレオチド」はゲノム起源、cDNA起源、または合成起源、あるいはこれらの組み合わせのポリヌクレオチドを意味するものとする。その起源を理由に、「単離ポリヌクレオチド」は(1)天然に見られるポリヌクレオチドのすべてまたは部分と関連づけられない、(2)天然には結合されないポリヌクレオチドと操作により結合される、または(3)より大きな配列の一部として天然には出現しない。本発明によるポリヌクレオチドは、配列番号34および36の核酸配列、配列番号1、3、5、および7に提示される重鎖免疫グロブリン分子をコードする核酸分子、配列番号35および37の核酸配列、ならびに配列番号2、4、6、および8に表される軽鎖免疫グロブリン分子をコードする核酸分子を含む。
【0205】
本明細書で用いられる用語「単離タンパク質」は、cDNA、組み換えRNA、または合成起源、あるいはこれらのある組み合わせのタンパク質を意味する。その起源を理由に、「単離タンパク質」は、(1)天然に見られるタンパク質とは関連づけられない、(2)同じ源に由来する他のタンパク質を含まない、(3)異なる種に由来する細胞によって発現される、または(4)天然には出現しない。
【0206】
本明細書では、用語「ポリペプチド」は、あるポリペプチド配列の天然のタンパク質、断片、または類縁体を指す総称として用いられる。よって、天然のタンパク質、断片および類縁体はポリペプチド属の種である。本発明によるポリペプチドは、配列番号1、3、5、および7で表される重鎖免疫グロブリン分子、配列番号2、4、6、および8で表される軽鎖免疫グロブリン分子、軽鎖免疫グロブリン分子(例えば、κ軽鎖免疫グロブリン分子)を有する重鎖免疫グロブリン分子、およびその逆を含む組み合わせによって形成される抗体分子、ならびにそれらの断片および類縁体を含む。
【0207】
本明細書で用いられる用語「天然出現」は、ある物質が天然に見られるという事実を指す。例えば、天然源から単離することができ、人により実験室等で意図的に修飾されていない有機体(ウイルスを含む)に存在するポリペプチド配列またはポリヌクレオチド配列は、天然出現である。
【0208】
本明細書で用いられる用語「操作により結合した」は、上記成分の位置が意図されたように機能するような関係にあることを指す。コード配列に「操作により結合した」制御配列は、制御配列と相性がいい条件でコード配列が発現するようにライゲートされる。
【0209】
本明細書で用いられる用語「制御配列」は、ライゲート対象のコード配列の発現と処理を達成するのに必要なポリヌクレオチド配列を指す。そのような制御配列の性質は、原核生物中のホスト有機体により異なる。一般に、そのような制御配列は、真核生物のプロモーター、リポソーム結合部位、および転写終結配列を含む。一般に、そのような制御配列は、プロモーターおよび転写終結配列を含む。用語「制御配列」は、少なくともその存在が発現および処理に必須であるすべての成分を含むことが意図される。また、その存在が有益である追加の成分(例えば、リーダー配列、融合パートナー配列等)を含んでいてもよい。本明細書で用いられる用語「ポリヌクレオチド」は、長さが少なくとも10塩基のヌクレオチドの重合体ホウ素を意味する。「ポリヌクレオチド」は、リボヌクレオチド、デオキシリボヌクレオチド、あるいはいずれかのヌクレオチドの修飾形態である。この用語は、DNAの一本鎖形態および二本鎖形態を含む。
【0210】
本明細書で用いられる用語「オリゴヌクレオチド」は、天然出現オリゴヌクレオチド連鎖および非天然出現オリゴヌクレオチド連鎖により結合した天然出現のヌクレオチドおよび修飾ヌクレオチドを含む。オリゴヌクレオチドは、一般に長さが200塩基以下のポリヌクレオチドの下位群である。オリゴヌクレオチドは長さが10〜60塩基であることが好ましく、12、13、14、15、16、17、18、19、または20〜40塩基であることが最も好ましい。オリゴヌクレオチドは、通常、例えば、プローブの場合、一本鎖であるが、例えば、遺伝子変異体の構築物に用いる場合は二本鎖であってもよい。本明細書で開示されるオリゴヌクレオチドは、センスオリゴヌクレオチドまたはアンチセンスオリゴヌクレオチドである。
【0211】
本明細書で用いられる用語「天然出現ヌクレオチド」は、デオキシリボヌクレオチドおよびリボヌクレオチドを含む。本明細書で用いられる用語「修飾ヌクレオチド」は、修飾基または置換基の糖を有するヌクレオチドを含む。本明細書で用いられる用語「オリゴヌクレオチド連鎖」は、オリゴヌクレオチド連鎖、例えばホスホロチオエート、ホスホロジチオエート、ホスホロセレロエート、ホスホロジセレノエート、ホスホロアニロチオエート、ホスホロアニラデート、ホスホロンミデート等を含む。例えば、LaPlanche et al. Nucl. Acids Res. 14:9081 (1986); Stec et al. J. Am. Chem. Soc. 106:6077 (1984), Stein et al. Nucl. Acids Res. 16:3209 (1988), Zon et al. Anti Cancer Drug Design 6:539 (1991); Zon et al. Oligonucleotides and Analogues: A Practical Approach(オリゴヌクレオチドと類縁体、実践的手法), pp. 87-108 (F. Eckstein, Ed., Oxford University Press, Oxford England (1991)); Stec et al. 米国特許公開第5,151,510号; Uhlmann and Peyman Chemical Reviews 90:543 (1990)を参照のこと。オリゴヌクレオチドは必要に応じて検出用の標識を含んでいてもよい。
【0212】
本明細書で用いられる用語「選択的にハイブリダイズする」は、検出可能かつ特異的に結合することを意味する。本発明によるポリヌクレオチド、オリゴヌクレオチド、およびその断片は、非特異的核酸への検出可能な結合の感知可能量を最少にするハイブリダイゼーション条件および洗浄条件で核酸鎖に選択的にハイブリダイズする。非常に厳密な条件を用いて、当該分野で周知の、および本明細書で述べる選択可能なハイブリダイゼーション条件を達成することができる。一般に、本明細書で開示されるポリヌクレオチド、オリゴヌクレオチド、およびその断片と目的の核酸配列の核酸配列相同性は少なくとも80%であり、より一般的には相同性が少なくとも85%、90%、95%、99%、および100%まで高められていることが好ましい。2つのアミノ酸配列が部分的あるいは完全に同一である場合は、これらの配列は相同である。例えば、85%の相同性とは、2つの配列を最大一致に対して並べてアミノ酸の85%が同一であることを意味する。(一致している2つの配列のいずれかにおける)ギャップは、最大一致ギャップ長が5以下であることが好ましく、2以下であることがより好ましい。あるいは、好ましくは、変異データマトリックスおよび6以上のギャップペナルティを有するプログラムALIGNを用いたアライメントスコアが(標準偏差単位で)5超である場合、2つのタンパク質配列(または長さが少なくとも30個のアミノ酸に由来するポリペプチド配列)は相同である。Dayhoff, M.O., in Atlas of Protein Sequence and Structure, pp. 101-110 (Volume 5, National Biomedical Research Foundation (1972))およびこの巻のSupplement 2, pp. 1-10を参照のこと。より好ましいのは、プログラムALIGNを用いて最適に並べた際に2つの配列のアミノ酸が50%以上同一である場合、これら2つの配列またはその部分は相同である。本明細書で用いられる用語「対応する」は、ポリヌクレオチド配列が基準ポリヌクレオチド配列の全部または一部と相同である(すなわち、同一であるが、厳密には進化的に関連していない)、またはポリペプチド配列が基準ポリペプチド配列と同一であることを意味する。これに対して、本明細書で用いられる用語「と相補する」は、相補配列が基準ポリヌクレオチド配列の全部または一部と相同であることを意味する。例えば、ヌクレオチド配列「TATAC」は配列「TATAC」と対応し、かつ基準配列「GTATA」と相補する。
【0213】
2個以上のポリヌクレオチド配列またはアミノ酸配列の配列関係を記述するのに、以下の用語「基準配列」、「比較窓」、「配列同一性」、「配列同一性の百分率」、および「実質的同一性」が用いられる。「基準配列」は、配列比較の基礎として用いられる規定された配列である。基準配列は、例えば、配列リストで与えられる完全な長さのcDNAまたは遺伝子配列の分節としてより大きな配列の下位部分であってもよい。あるいは、完全なcDNA配列または遺伝子配列を含んでいてもよい。一般に、基準配列の長さは、少なくとも18個のヌクレオチドまたは6個のアミノ酸であり、少なくとも24個のヌクレオチドまたは8個のアミノ酸、少なくとも48個のヌクレオチドまたは16個のアミノ酸であることが多い。2個のポリヌクレオチド配列またはアミノ酸配列は、それぞれ(1)2個の分子の間で類似する配列(すなわち、完全なポリヌクレオチド配列またはアミノ酸配列の部分)を含み、かつ(2)さらに前記2個のポリヌクレオチド配列またはアミノ酸配列間で異なる配列を含んでいてもよいので、一般に、2個の分子配列を「比較窓」と比較して局所領域の配列の類似性を同定し、比較してこれら2個(またはそれ以上)の分子配列の比較が行われる。本明細書で用いられる用語「比較窓」は、少なくとも18個の近接するヌクレオチド位置または6個のアミノ酸を指す。ここで、ポリヌクレオチド配列またはアミノ酸配列は、少なくとも18個の近接するヌクレオチドまたは6個のアミノ酸配列の基準配列と比較されてもよく、比較窓中のポリヌクレオチド配列の部分は、2つの配列の最適なアライメントについて基準配列(付加または欠失を含まない)と比較して20パーセント以下の付加、欠失、置換等(すなわち、ギャップを含んでいてもよい。比較窓を並べるための配列の最適なアライメントは、Smith and Waterman Adv. Appl. Math. 2:482 (1981)の局所相同性アルゴリズム、Needleman and Wunsch J. Mol. Biol. 48:443 (1970)の相同性アライメントアルゴリズム、Pearson and Lipman Proc. Natl. Acad. Sci. (U.S.A.) 85:2444 (1988)の類似性検索方法、これら算法(GAP、BESTFIT、FASTA、およびTFASTA、Wisconsin Genetics Software Package Release 7.0, (Genetics Computer Group, ウィスコンシン州マジソン、サイエンスドライブ575), Geneworks, またはMacVectorソフトウェアパッケージ)のコンピュータによる実行、または検査によって行われてもよく、各種方法で生成した最高アライメント(すなわち、比較窓に対する相同性の百分率が最も高い)が選択される。
【0214】
用語「配列同一性」は、比較窓に対して2個のポリヌクレオチド配列またはアミノ酸配列が(すなわち、ヌクレオチド対ヌクレオチドまたは残基対残基で)同一であることを意味する。用語「配列同一性の百分率」は、比較窓に対して2つの最適に並べた配列を比較し、位置の数を決定し(ここで同一の核酸塩基(例えば、A、T、C、G、U、またはI)または残基が両方の配列で出現して一致した位置の数を生成する)、一致した位置の数を比較窓の位置の総数(すなわち、窓の大きさ)で除して、100を乗じて配列同一性の百分率を得ることで算出される。本明細書で用いられる「実質的同一性」は、ポリヌクレオチド配列またはアミノ酸配列の一特性を指す。ここで、ポリヌクレオチドまたはアミノ酸は、少なくとも18個のヌクレオチド(6個のアミノ酸)位置、しばしば少なくとも24〜48個のヌクレオチド(8〜16個のアミノ酸)位置の比較窓に対して比べて配列同一性が少なくとも85パーセント、好ましくは少なくとも90〜95パーセント、より一般的には少なくとも99パーセントである配列を含む。配列同一性の百分率は、比較窓に対して基準配列の合計20パーセント以下である欠失または付加を含む可能性がある配列と基準配列を比較して算出される。基準配列は、より大きな配列の下位部分であってもよい。
【0215】
本明細書を通して、20種の従来のアミノ酸およびその略語は慣例的な用法に従う。Immunology - A Synthesis(免疫学:合成)(2nd Edition, E.S. Golub and D.R. Gren, Eds., Sinauer Associates, Sunderland7 Mass. (1991))を参照のこと。20種の従来のアミノ酸、非天然のアミノ酸(例えば、α−,α−二置換アミノ酸等)、N−アルキルアミノ酸、乳酸、およびその他の特殊アミノ酸の立体異性体(例えば、D−アミノ酸)もまた、本発明のポリペプチドの好適な成分である可能性がある。特殊アミノ酸としては、例えば、4−ヒドロキシプロリン、γ−カルボキシグルタミン酸塩、ε−N,N,N−トリメチルリシン、ε−N−アセチルリシン、O−ホスホセリン、N−アセチルセリン、N−ホルミルメチオニン、3−メチルヒスチジン、5−ヒドロキシリジン、σ−N−メチルアルギニン、およびその他の類似のアミノ酸およびイミノ酸(例えば、4−ヒドロキシプロリン)が挙げられる。本明細書で用いられるポリペプチドの表記では、標準的用法および慣例に従って左手方向がアミノ末端方向であり、右手方向がカルボキシ末端方向である。
【0216】
同様に、特に断りがなければ、一本鎖ポリヌクレオチド配列の左手側末端が5’末端であり、二本鎖ポリヌクレオチド配列の左手側末端は5’方向として言及される。新生RNA転写物の5’から3’の付加の方向は、RNAと同じ配列を有するDNA鎖の転写方向配列領域と言われる。このDNA鎖の転写方向配列領域は、RNA転写物の5’末端に対して5’末端が「上流配列」と言われる。RNAと同じ配列を有するDNA鎖の配列領域で、RNA転写物の3’末端に対応する3’末端は「下流配列」と言われる。
【0217】
ポリペプチドに用いられる用語「実質的同一性」は、規定値のギャップ重みを用いるプログラムGAPまたはBESTFIT等を用いて最適に並べられた2個のペプチド配列が、少なくとも80パーセント、好ましくは少なくとも90パーセント、より好ましくは少なくとも95パーセント、最も好ましくは少なくとも99パーセントの配列同一性を共有することを意味する。
【0218】
同一ではない残基の位置は、保存的アミノ酸置換によって異なることが好ましい。
【0219】
用語「保存的アミノ酸置換」は、類似する側鎖を有する残基の互換性を指す。例えば、脂肪族側鎖を有するアミノ酸基は、グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、およびイソロイシンである。脂肪族ヒドロキシル側鎖を有するアミノ酸群は、セリンおよびトレオニンである。アミド含有側鎖を有するアミノ酸群は、アスパラギンおよびグルタミンである。芳香族側鎖を有するアミノ酸群は、フェニルアラニン、チロシン、およびトリプトファンである。塩基性側鎖を有するアミノ酸群はリシン、アルギニン、およびヒスチジンである。硫黄含有側鎖を有するアミノ酸群はシステインおよびメチオニンである。好ましい保存的アミノ酸置換群は、バリン−ロイシン−イソロイシン、フェニルアラニン−チロシン、リシン−アルギニン、アラニン−バリン、グルタミン酸−アスパラギン酸、およびアスパラギン−グルタミンである。
【0220】
本明細書で述べるように、抗体または免疫グロブリン分子のアミノ酸配列中の小さな変異は本発明に包含されるものとするが、アミノ酸配列の変異は少なくとも75%、より好ましくは少なくとも80%、90%、95%、および最も好ましくは99%を維持している。特に、保存的アミノ酸置換体が企図される。保存的置換体は、側鎖に関連したアミノ酸族内で出現する。遺伝的にコードされたアミノ酸は、一般に次のように分けられる。(1)酸性のアミノ酸はアスパラギン酸塩、グルタミン酸塩である。(2)塩基性アミノ酸はリシン、アルギニン、ヒスチジンである。(3)非極性アミノ酸はアラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン、トリプトファンである。(4)非荷電性極性アミノ酸は、グリシン、アスパラギン、グルタミン、システイン、セリン、トレオニン、チロシンである。親水性アミノ酸としては、アルギニン、アスパラギン、アスパラギン酸塩、グルタミン、グルタミン酸塩、ヒスチジン、リシン、セリン、およびトレオニンが挙げられる。疎水性アミノ酸としては、アラニン、システイン、イソロイシン、ロイシン、メチオニン、フェニルアラニン、プロリン、トリプトファン、チロシンが挙げられる。他のアミノ酸族としては、(i)脂肪族ヒドロキシ族のセリンおよびトレオニン、(ii)アミド含有族のアスパラギンおよびグルタミン、(iii)脂肪族のアラニン、バリン、ロイシン、およびイソロイシン、および(iv)芳香族のフェニルアラニン、トリプトファン、およびチロシン等が挙げられる。例えば、特に単離されたロイシンのイソロイシンまたはバリンとの置換体、アスパラギン酸塩のグルタミン酸塩との置換体、トレオニンのセリンとの置換体、またはアミノ酸の構造的に関連するアミノ酸との類似の置換体が読み枠部位内にアミノ酸を含んでいない場合、これら置換体が得られる分子の結合または特性に大きな効果を及ぼさないことは理にかなっている。アミノ酸の変化が機能的ペプチドになるかどうかは、ポリペプチド誘導体の特定の活性を検定することで容易に決定することができる。本明細書では、アッセイは詳細に記述される。抗体または免疫グロブリン分子の断片または類縁体は、当業者により容易に準備することができる。断片または類縁体の好ましいアミノ末端およびカルボキシ末端は、機能領域の境界付近で出現する。構造領域および機能領域は、ヌクレオチド配列データおよび/またはアミノ酸配列データを公開の、または独占所有権のある配列データベースと比較して識別することができる。コンピュータによる比較方法を用いて配列モチーフ、または周知の構造および/または機能を有する他のタンパク質で出現する予測されたタンパク質形態領域を識別することができることが好ましい。周知の三次元構造に折りたたまれたタンパク質配列を同定する方法は周知である。Bowie et al. Science 253:164 (1991)。従って、以下の実施例は、本発明による構造領域および機能領域を規定するのに用いてもよい配列モチーフおよび構造的形態を当業者が認識することができることを示している。
【0221】
好ましいアミノ酸置換は、(1)タンパク質分解に対する感受性を下げるアミノ酸置換、(2)酸化に対する感受性を下げるアミノ酸置換、(3)タンパク質複合体を形成するための結合親和性を変化させるアミノ酸置換、(4)結合親和性を変化させるアミノ酸置換、および(4)そのような類縁体の他の物理化学特性または機能特性を付与または変性するアミノ酸置換である。類縁体としては、天然に出現するペプチド配列の以外の配列の各種変異タンパク質が挙げられる。例えば、天然に出現する配列では(好ましくは分子間接触を形成する領域外にあるポリペプチドの部分において)単一または複数のアミノ酸置換(好ましくは保存的アミノ酸置換)が起きてもよい。保存的アミノ酸置換は親配列の構造特性を実質的に変化させることがない(例えば、置換体アミノ酸は、親配列で出現するらせん体を壊さない、または親配列を特徴づけるその他の種類の二次的構造を阻害しない傾向がある)。従来の技術で認められたポリペプチドの二次的および三次的構造の例は、Proteins, Structures and Molecular Principles(タンパク質、構造と分子原理)(Creighton, Ed., W. H. Freeman and Company, New York (1984)); Introduction to Protein Structure (C. Branden and J. Tooze, eds., Garland Publishing, New York, N.Y. (1991))、およびThornton et at. Nature 354:105 (1991)で記載されている。
【0222】
本明細書で用いられる用語「ポリペプチド断片」は、アミノ末端欠失および/またはカルボキシ末端欠失を有するが、残りのアミノ酸配列は、例えば完全な長さcDNA配列から推定される天然に出現する配列の対応する位置と同一であるポリペプチドを指す。一般に、断片は長さが少なくとも5、6、8、または10個のアミノ酸、好ましくは少なくとも14個のアミノ酸、より好ましくは少なくとも20個のアミノ酸、通常少なくとも50個のアミノ酸、およびより好ましいくは少なくとも70個のアミノ酸である。本明細書で用いられる用語「類縁体」は、推定されるアミノ酸配列の部分と実質的同一性を有し、好適な結合条件でHER2と特異的結合をする少なくとも25個のアミノ酸の分節を含むポリペプチドを指す。通常、ポリペプチド類縁体は、天然に出現する配列に対して保存的アミノ酸置換(または付加あるいは欠失)を含む。類縁体は通常、長さが少なくとも20個のアミノ酸、好ましくは少なくとも50個以上のアミノ酸であり、完全な長さの天然に出現するポリペプチドと同じ長さであってもよい場合が多い。
【0223】
ペプチド類縁体は、鋳型ペプチドの特性と類似した特性を有する非ペプチド薬物として医薬品工業で一般に用いられている。これらの種類の非ペプチド化合物は、「ペプチド模倣物」または「ペプチド模倣薬」と言われる。Fauchere, J. Adv. Drug Res. 15:29 (1986), Veber and Freidinger TINS p.392 (1985)、およびEvans et al. J. Med. Chem. 30:1229 (1987)。このような化合物は、コンピュータによる分子モデルの補助により開発されることが多い。治療に有用なペプチドに構造的に類似したペプチド模倣物を用いて等価な治療効果または予防効果を得てもよい。一般に、ペプチド模倣薬は、典型(paradigm)ポリペプチド(すなわち、生化学特性または薬理活性を有するポリペプチド(例えばヒト抗体等))と構造的に類似するが、当該分野で周知の方法により以下からなる群から選ばれる連鎖で置換されてもよい1つ以上のペプチド連鎖を有する:−−CH
2NH−−、−−CH
2S−、−−CH
2−CH
2−−、−−CH=CH−−(シスおよびトランス)、−−COCH
2−−、CH(OH)CH
2−−、および−CH
2SO−−。共通配列の1つ以上のアミノ酸の、同種のD−アミノ酸(例えば、L−リシンに代わってD−リシン)による体系的置換を用いて、より安定したペプチドを生成してもよい。また、当該分野で周知の方法(Rizo and Gierasch Ann. Rev. Biochem. 61:387 (1992))、例えば、ペプチドを環化させる分子内ジスルフィド架橋を形成することができる内部システイン残基を付加して、共通配列または実質的に同一の共通配列多様体を含む抑制ペプチドを生成してもよい。
【0224】
本明細書で、用語「薬剤」は、化合物、化合物の混合物、生物学的巨大分子、または生体材料からの抽出物を指すのに用いられる。
【0225】
本明細書で用いられる用語「標識」または「標識された」は、例えば、放射線標識アミノ酸の組み込み、あるいはマーカー付きのアビジン(例えば、光学的方法または熱量測定法で検出可能な蛍光マーカーまたは酵素活性を含むストレプトアビジン等)で検出可能なビオチニル部位のポリペプチドへの付加等による、検出可能なマーカーの組み込みを指す。特定の状況では、標識またはマーカーは治療目的であってもよい。ポリペプチドおよび糖タンパク質を標識する様々な方法は当該分野で周知であり、用いてもよい。ポリペプチド用の標識としては、例えば、放射性同位体または放射性核種(例えば、
3H、
14C、
15N、
35S、
90Y、
99Tc、
111In、
125I、
131I)、蛍光標識(例えば、FITC、ローダミン、ランタノイド蛍光体)、酵素標識(例えば、西洋ワサビペルオキシダーゼ、p−ガラクトシダーゼ、ルシフェラーゼ、アルカリ性ホスファターゼ)、化学発光体、ビオチニル基、二次的レポーターにより認識される所定のポリペプチドエピトープ(例えば、ロイシンジッパー対配列、二次抗体用の結合部位、金属結合領域、エピトープタグ等)が挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの態様では、起こりうる立体障害を低減するために標識は様々な長さのスペーサーアームで付加される。本明細書で用いられる用語「医薬品薬剤または薬物」は、患者に適切に投与されると所望の治療効果を誘発することができる化合物または組成物を指す。
【0226】
本明細書では、他の化学用語は、The McGraw-Hill Dictionary of Chemical Terms(マクグローヒル化学用語辞典)(Parker, S., Ed., McGraw-Hill, San Francisco (1985))等に例示されるように当該分野での慣例用法に従って用いられる。
【0227】
本明細書で用いられる用語「実質的に純粋」は、対象種が顕著に存在する種である(すなわち、モル基準で、組成物中の他のいずれの個体種よりも多い)ことを意味する。実質的に精製された画分は、前記対象種が存在するすべてのマクロ分子種の少なくとも約50パーセント(モル基準で)を含む組成物であることが好ましい。
【0228】
一般に、実質的に純粋な組成物は、前記組成物中に存在するすべてのマクロ分子種の約80パーセント超、より好ましくは約85%、90%、95%、および99%超を含む。前記対象種は、本質的に均一になるまで精製される(従来の検出方法で組成物中に汚染種を検出することができない)ことがより好ましい。ここで、前記組成物は本質的に単一のマクロ分子種からなる。
【0229】
以下の記述および請求項のいずれにおいても、特に断りがない、あるいは文脈で明らかな矛盾がなければ、冠詞「a」、「an」、および「the」の用法は、単数形および複数形の両方を含むと解釈されるべきである。用語「含む」、「有する」、「の」(「化学式の」)、「備える」、および「含有する」は、特に断りがなければ、オープンエンドの用語と解釈される(すなわち、「含むが限定されない」を意味する)。例えば、特定の式の重合体足場材料は、その式で示される単量体単位のすべてを含み、その式で示されない追加の単量体単位をも含んでいてもよい。また、自明であるが、ある態様で「含む」またはその他の非制限語句を用いる場合は常に、中間的な語句「本質的に〜からなる」あるいは制限語句「からなる」を用いて同じ態様の範囲をより狭めることができる。
【0230】
数値に関連して用いられる用語「約」、「おおよそ」、または「近似する」は、値の集合または範囲が含まれることを意味する。例えば、「約X」(Xは数値)は、Xの±20%、±10%、±5%、±2%、±1%、±0.5%、±0.2%、または±0.1%の値の範囲を含む。一態様では、用語「約」は、指定された値の5%超または5%未満の値の範囲を指す。他の態様では、用語「約」は、指定された値の2%超または2%未満の値の範囲を指す。他の態様では、用語「約」は、指定された値の1%超または1%未満の値の範囲を指す。
【0231】
特に断りがなければ、値の範囲の記述は、その範囲内の個別の値を個々に言及する短縮した方法としての役目を果たすことのみが意図されており、各個別の値は、本明細書に個々に引用されたものとして本明細書に組み込まれる。特に断りのない限り、本明細書で用いられる範囲は、その範囲の2つの限界を含む。例えば、「xは1から6の間の整数」および「xは1〜6の整数」という表現はいずれも、「xは1、2、3、4、5、または6」であることを意味する。すなわち、用語「XとYの間」および「XからYの範囲」は、XおよびY、ならびにその間の整数を含む。
【0232】
特に断りがない、あるいは文脈で明らかな矛盾がなければ、本明細書で記載されるすべての方法は、任意の好適な順序で行うことができる。本明細書で提供されるいずれかの、およびすべての例、または例示的言語(例えば、「等」)は、本発明をよりよく説明するためのみに用いられることが意図されており、明示的に主張されなければ、請求項の範囲の限定と解釈されるべきではない。本明細書のいかなる言語も、特許請求されていない任意の要素が特許請求されているものに必須であることを示すと解釈されるべきではない。
【0233】
「タンパク質系認識分子」すなわち「PBRM」は、細胞表面マーカーまたは受容体(例えば、トランス膜タンパク質、表面に固定化されたタンパク質、またはプロテオグリカン等)を認識して結合する分子を指す。PBRMとしては、例えば、本明細書で記載されるXMT1517抗体、XMT1518抗体、XMT1519抗体、およびXMT1520抗体、ならびに他の抗体(例えば、トラスツズマブ、セツキシマブ、リツキシマブ、ベバシズマブ、エプラツズマブ、ベルツズマブ、ラベツズマブ、B7−H4、B7−H3、CA125、CD33、CXCR2、EGFR、FGFR1、FGFR2、FGFR3、FGFR4、HER2、NaPi2b、c−Met、MUC−1、NOTCH1、NOTCH2、NOTCH3、NOTCH4、PD−L1、および抗5T4)、および本明細書で記載される抗体またはその抗原結合断片)あるいはペプチド(LHRH受容体標的ペプチド、EC−1ペプチド)、リポカリン(例えば、アンチカリン)、タンパク質(インターフェロン)、リンホカイン、成長因子、コロニー刺激因子、ペプチドまたはペプチド模倣物等が挙げられるが、これらに限定されない。また、特定の細胞、組織または位置への修飾重合体複合体を標的にすることに加えて、タンパク質系認識分子は、標的細胞または経路に対する抗増殖(細胞分裂阻害性および/または細胞毒性)活性等の特定の治療効果を有していてもよい。このタンパク質系認識分子は、少なくとも1つの化学反応性基(例えば、−COOH、一級アミン、二級アミン−NHR、−SH等)、あるいは化学反応性アミノ酸部位または側鎖(例えば、チロシン、ヒスチジン、システイン、またはリシン等)を含む、あるいは含むように設計されてもよい。
【0234】
本明細書で用いられる用語「生体適合性」は、体液、あるいは生きている細胞または組織との接触時に最少の破壊効果あるいは宿主応答効果を及ぼす化合物を記述することが意図される。したがて、本明細書で用いられる生体適合性基は、脂肪族、シクロアルキル、複素脂肪族、ヘテロシクロアルキル、アリール、またはヘテロアリール部位を指す。これらは、上記および本明細書で定義した用語生体適合性の定義に含まれる。本明細書で用いられる用語「生体適合性」はまた、認識タンパク質(例えば、天然出現抗体、細胞タンパク質、細胞、および生物系のその他の成分)との相互作用が特に望ましくなければ、化合物は最小限のそのような相互作用を示すことを意味すると解釈される。従って、このような最少の相互作用を引き起こすことが特に意図される物質および官能基(例えば、薬物およびプロドラッグ)は、生体適合性を有すると見なされる。好ましくは(細胞毒性を有することが意図される化合物(例えば、抗腫瘍薬等)は例外として)、意図された全身性生体内濃度と同程度の濃度で生体外の正常細胞に加えると、生体内でのその化合物の半減期に相当する時間(例えば、生体内で投与された化合物の50%が除去される/消失するのに必要な期間)での細胞の死亡が1%以下であり、生体内への投与が最少かつ医学的に容認可能な炎症、異物反応、免疫毒性、化学毒性、および/またはその他の有害効果を誘発する場合、その化合物は「生体適合性」である。上の文で、用語「正常細胞」は、破壊されることが意図されていない細胞、あるいは試験中の化合物により大きく影響されない細胞を指す。
【0235】
「生分解性」:本明細書で用いられる用語「生分解性」重合体は、生体内での生物学的処理の影響を受けやすい重合体である。本明細書で用いられる用語「生分解性」化合物または部位は、細胞に取り入れられると、リソソーム機構または他の化学機構、あるいは加水分解により、細胞に大きな毒性効果を及ぼすことなく細胞が再利用または破棄することができる成分に分解することができるものである。本明細書で用いられる用語「生物切断可能性」は「生分解性」と同じ意味を有する。分解断片は、臓器または細胞への過負荷、あるいは過負荷あるいは生体内での他の有害効果によって生じる病的過程をほとんど、あるいはまったく誘発しないことが好ましい。生分解過程としては、例えば、酵素加水分解、非酵素加水分解、酸化還元が挙げられる。本明細書で記載される生分解性タンパク質−重合体−薬物複合体(またはその成分、例えば、生分解性重合体担体や、担体と抗体または薬物分子のリンカー等)の非酵素加水分解に適した条件としては、例えば、リソソーム細胞内成分の温度およびpHで生分解性複合体を水に暴露することが挙げられる。また、いくつかの生分解性タンパク質−重合体−薬物複合体(またはその成分、例えば、生分解性重合体担体や、担体と抗体または薬物分子のリンカー等)の生分解は、活性化マクロファージまたは分解促進因子を放出する他の細胞の近くで細胞外(例えば、動物の体の低pH域(例えば、炎症部位))で高めることができる。特定の好ましい態様では、pHが約7.5の重合体担体の有効サイズは、1日から7日間は検出可能な程変化せず、少なくとも数週間は重合体の元のサイズの50%以内のままである。一方、pHが約5では、前記重合体担体は、1日から5日間で検出可能な程度に分解し、2週間から数ヶ月以内に低分子量断片に完全に変換されることが好ましい。このような検査での重合体の完全性は、例えばサイズ排除HPLCにより測定することができる。いくつかの場合では分解が速いほうが好ましいが、一般には、細胞による重合体断片の代謝または排出の速度を超えない速度で重合体が細胞内で分解することがより望ましい場合がある。好ましい態様では、重合体および重合体生分解副生物は生体適合性を有する。
【0236】
本明細書で用いられる用語「マレイミド遮断化合物」は、マレイミドと反応してマレイミドをコハク酸イミドに転化することができる化合物を指し、「マレイミド遮断部位」は、転化時にコハク酸イミドに付加される化学部位を指す。特定の態様では、前記マレイミド遮断化合物は、マレイミドと反応する末端チオール基を有する化合物である。一態様では、前記マレイミド遮断化合物は、システイン、N−アセチルシステイン、システインメチルエステル、N−メチルシステイン、2−メルカプトエタノール、3−メルカプトプロパン酸、2−メルカプト酢酸、メルカプトメタノール(すなわち、HOCH
2SH)、ベンジルチオール(ここでフェニル基は1個以上の親水性置換基で置換されている)、または3−アミノプロパン−1−チオールである。
【0237】
「親水性」:例えば、重合体単量体単位またはマレイミド遮断部位の置換基が親水性または水溶性であるという場合の用語「親水性」は、当該分野のこの用語の意味と本質的に異なるものではなく、イオン性原子、極性原子、または分極性原子を含む化学部位、または水分子によって溶媒和されてもよい化学部位を指す。したがって、本明細書で用いられる親水性基は、上で定義した用語「親水性」の定義に含まれる脂肪族部位、シクロアルキル部位、複素脂肪族部位、ヘテロシクロアルキル部位、アリール部位、またはヘテロアリール部位を指す。好適な特定の親水性有機部位としては、例えば、約1個から12個の範囲の原子の分子鎖を含む脂肪族基または複素脂肪族基、ヒドロキシル、ヒドロキシアルキル、アミン、カルボキシル、アミド、カルボキシルエステル、チオエステル、アルデヒド、ニトリル、イソニトリル、ニトロソ、ヒドロキシルアミン、メルカプトアルキル、複素環、カルバミン酸塩、カルボン酸およびその塩、スルホン酸およびその塩、スルホン酸エステル、リン酸およびその塩、リン酸エステル、ポリグリコールエーテル、ポリアミン、ポリカルボン酸塩、ポリエステル、およびポリチオエステル等が挙げられるが、これらに限定されない。特定の態様では、親水性置換基としては、カルボキシル基(COOH)、アルデヒド基(CHO)、ケトン基(COC
1-4アルキル)、メチロール(CH
2OH)、またはグリコール(例えば、CHOH−CH
2OHまたはCH−(CH
2OH)
2)、NH
2、F、シアノ、SO
3H、PO
3H等が挙げられる。
【0238】
本明細書で開示される重合体に関する用語「親水性」は、一般に、当該分野でのこの用語の用法と異なるものではなく、上で定義した親水性官能基を含む重合体を指す。好ましい態様では、親水性重合体は水溶性高分子である。重合体の親水性は、水和エネルギーを求めて直接測定してもよく、あるいは2つの液相の調査または疎水度が分かっている固相(例えばC4またはC18)を用いるクロマトグラフィーにより決定してもよい。
【0239】
「重合体担体」:本明細書で用いられる用語「重合体担体」は、指定されたリンカーを有する1種以上の薬物分子および/または指定されたリンカーを有する1種以上のPBRMに共有結合するのに好適な、あるいは共有結合させることができる重合体または変性重合体を指す。
【0240】
「生理条件」:本明細書で用いられる用語「生理条件」は、生体組織の細胞外液で生じるような化学的(例えば、pH、イオン強度)条件および生化学的(例えば、酵素濃度)条件の範囲に関する。大部分の正常な組織では、生理pHは約7.0〜7.4の範囲である。循環する血漿および正常な間隙液は、正常な生理条件の典型例である。
【0241】
「薬物」:本明細書で用いられる用語「薬物」は、生物学的に活性であって、それを必要とする対象に投与すると所望の生理的効果をもたらす化合物(例えば、活性医薬品成分)を指す。
【0242】
「細胞毒性」:本明細書で用いられる用語「細胞毒性」は、細胞または選択された細胞集団(例えば、癌細胞)に対する毒性を意味する。毒性効果は、細胞死および/または溶解を引き起こす場合がある。特定の例では、毒性効果は、細胞に対する亜致死的破壊効果(例えば、細胞の成長を遅らせるか止める)である可能性がある。細胞毒性効果を達成するために、薬物またはプロドラッグは、その他のうち、DNA損傷剤、微小管破壊剤、または細胞毒性タンパク質またはポリペプチドからなる群から選ばれてもよい。
【0243】
「細胞分裂阻害」:本明細書で用いられる用語「細胞分裂阻害」は、細胞の成長および/または増殖を阻害あるいは停止させる薬物または他の化合物を指す。
【0244】
「小分子」:本明細書で用いられる用語「小分子」は、天然に出現する、あるいは(例えば化学合成により)人工的に作られた比較的低い分子量を有する分子を指す。好ましい小分子は、動物、好ましくは哺乳類、より好ましくはヒトで局所効果または全身性効果をもたらすという点において生物学的に活性である。特定の好ましい態様では、小分子は薬物であり、「薬物分子」、「薬物」、または「治療薬」と言われる。特定の態様では、薬物分子は、MWが約5kDa以下である。他の態様では、薬物分子は、MWが約1.5kDa以下である。いくつかの態様では、薬物分子は、ビンカアルカロイド、オーリスタチン、デュオカルマイシン、ツブリシン、非天然のカンプトセシン化合物、トポイソメラーゼ阻害剤、DNA結合薬物、キナーゼ阻害剤、MEK阻害剤、KSP阻害剤、カリケアマイシン、SN38、ピロロベンゾジアゼピン、およびこれらの類縁体から選ばれる。必ずしも必要ではないが、前記薬物は、適切な政府機関または行政体(例えば、食品医薬品局(FDA))により使用について既に安全かつ有効であることが認められていることが好ましい。例えば、FDAにより21C.F.R.§§330.5、331〜361、および440〜460に示されたヒト用途の薬物、FDAにより21C.F.R.§§500〜589で示された獣医学用途の薬物(参照により本明細書に組み込まれる)はすべて、本明細書の親水性重合体との使用に好適であると見なされる。
【0245】
本明細書で用いられる用語「薬物誘導体」または「修飾薬物」は、本明細書で開示される複合体により供給される薬物分子と、その薬物分子を重合体担体に付加することができる官能基を含む化合物を指す。
【0246】
本明細書で用いられる用語「活性形態」は、生体内または生体外で意図された医薬品有効性を示す化合物の形態を指す。特に、本明細書で開示される複合体により供給されることが意図された薬物分子が複合体から放出される場合、活性形態は、意図された治療特性を示す薬物自体あるいはその誘導体であってもよい。薬物を重合体担体に付加しているリンカーの生分解性結合が開裂して、薬物を複合体から放出させることができる。したがって、活性薬物誘導体はリンカーの部分を含んでいてもよい。
【0247】
「PHF」はポリ(1−ヒドロキシメチルエチレン=ヒドロキシメチル−ホルマール)を指す。
【0248】
本明細書で用いられる用語「重合体単位」、「単量体単位」、「単量体」、「モノマー体単位」、「単位」はすべて、重合体の繰り返し可能な構成単位を指す。
【0249】
本明細書で用いられる用語重合体、重合体担体/足場材料、または重合体複合体の「分子量」または「MW」は、特に断りのない限り、無変性重合体の重量平均分子量を指す。
【0250】
本発明は、本明細書の化合物に出現する原子のすべての同位体を含むものとする。同位体は、原子番号が同じで異なる質量数を有する原子を含む。これに限定されないが、一般的な例として、水素の同位体は三重水素および重水素を含む。炭素の同位体はC−13およびC−14を含む。
【0251】
本発明は、光学異性体および互変異性体を指して含む化合物のすべての異性体を含むものとする。ここで、光学異性体は、エナンチオマーおよびジアステレオマー、キラル異性体、および非キラル異性体を含む。また、光学異性体は、単離された光学異性体、光学異性体の混合物(ラセミ体と非ラセミ体の混合物を含む)を含む。ここで、異性体は単離された形態、あるいは1種以上の他の異性体の混合物であってもよい。
HER2抗体
【0252】
本明細書で開示されるモノクローナル抗体は、HER2媒介PI3K−Akt経路活性を阻害する能力を有する。
【0253】
本明細書で開示される抗体としては、例えば、XMT1517抗体、XMT1518抗体、XMT1519抗体、およびXMT1520抗体が挙げられる。これらの抗体は、ヒトHER2に対する特異性を示し、生体外でのHER2の機能活性を阻害することが示されている。
【0254】
本明細書で記載されるHER2モノクローナル抗体はそれぞれ、アミノ酸および以下の示される対応する核酸配列に示される重鎖(HC)、重鎖可変領域(VH)、軽鎖(LC)、および軽鎖可変領域(VL)を含む。各抗体の重鎖可変領域および軽鎖可変領域は、以下のアミノ酸配列では網掛けされている。重鎖および軽鎖の相補性決定領域(CDR)は、以下で示されるアミノ酸配列で下線が引かれている。相補性決定領域(CDR)を囲むアミノ酸は、E.A. Kabat et al. (See Kabat, E.A., et al., Sequences of Protein of immunological interest(免疫学的目的のタンパク質配列), Fifth Edition, US Department of Health and Human Services, US Government Printing Office (1991))に定義された通りである。
>XMT1517重鎖アミノ酸配列(重鎖可変領域(配列番号9)+IgG1重鎖定常領域(配列番号32))
【化27】
CDRH1:FTFSSYGMH(配列番号17)
CDRH2:VIWYDGSNKYYADSVKG(配列番号18)
CDRH3:EAPYYAKDYMDV(配列番号19)
>XMT1517重鎖可変領域核酸配列
【化28】
>XMT1517軽鎖アミノ酸配列(軽鎖可変領域(配列番号10)+軽鎖定常領域(配列番号33))
【化29】
CDRL1:RASQSVSSDYLA(配列番号20)
CDRL2:GASSRAT(配列番号21)
CDRL3:QQYVSYWT(配列番号22)
>XMT1517軽鎖可変領域核酸配列
【化30】
>XMT1518重鎖アミノ酸配列(重鎖可変領域(配列番号11)+IgG1重鎖定常領域(配列番号32))
【化31】
CDRH1:FTFSSYGMH(配列番号17)
CDRH2:GIWWDGSNEKYADSVKG(配列番号23)
CDRH3:EAPYYAKDYMDV(配列番号19)
>XMT1518軽鎖アミノ酸配列(軽鎖可変領域(配列番号12)+軽鎖定常領域(配列番号33))
【化32】
CDRL1:RASQSVSSDYLA(配列番号20)
CDRL2:GASRRAT(配列番号24)
CDRL3:QQYVSYWT(配列番号22)
>XMT1519重鎖アミノ酸配列(重鎖可変領域(配列番号13)+IgG1重鎖定常領域(配列番号32))
【化33】
CDRH1:FTFSSYSMN(配列番号25)
CDRH2:YISSSSSTIYYADSVKG(配列番号26)
CDRH3:GGHGYFDL(配列番号27)
>XMT1519重鎖可変領域核酸配列
【化34】
>XMT1519軽鎖アミノ酸配列(軽鎖可変領域(配列番号14)+軽鎖定常領域(配列番号33))
【化35】
CDRL1:RASQSVSSSYLA(配列番号28)
CDRL2:GASSRAT(配列番号21)
CDRL3:QQYHHSPLT(配列番号29)
>XMT1519軽鎖可変領域核酸配列
【化36】
>XMT1520重鎖アミノ酸配列(重鎖可変領域(配列番号15)+IgG1重鎖定常領域(配列番号32))
【化37】
CDRH1:FTFSGRSMN(配列番号30)
CDRH2:YISSDSRTIYYADSVKG(配列番号31)
CDRH3:GGHGYFDL(配列番号27)
>XMT1520軽鎖アミノ酸配列(軽鎖可変領域(配列番号16)+軽鎖定常領域(配列番号33))
【化38】
CDRL1:RASQSVSSSYLA(配列番号28)
CDRL2:GASSRAT(配列番号21)
CDRL3:QQYHHSPLT(配列番号29)
【0255】
また、本発明は、本明細書で記載される抗体およびその抗原結合断片と同じエピトープに結合する、あるいはその同じエピトープへの結合について競合する抗体およびその抗原結合断片を含む。例えば、本明細書で開示される抗体および抗原結合断片は特異的にHER2に結合する。ここで、前記抗体またはその断片は、ヒトHER2の1つ以上のアミノ酸残基(例えば、GenBank登録番号P04626.1)を含むエピトープに結合する。
【0256】
本明細書で開示される抗体およびその抗原結合断片は、以下のアミノ酸配列を含む完全な長さのヒトHER2受容体のエピトープに特異的に結合する。
【化39】
【0257】
本明細書で開示される抗体およびその抗原結合断片は、以下のアミノ酸配列を含むヒトHER2受容体の細胞外領域(ECD)のエピトープに特異的に結合する。
【化40】
【0258】
当業者には自明であるが、必要以上に実験をしなくても、本明細書で開示されるモノクローナル抗体(例えば、XMT1517、XMT1518、XMT1519、およびXMT1520)が天然の結合相手またはHER2と関連づけられることが分かっている他の分子と結合をするのをあるモノクローナル抗体が妨げるかどうかを確かめることで、両方のモノクローナル抗体が同じ特異性を有するかどうかを決定することができる。検査対象のモノクローナル抗体が本明細書で開示されるモノクローナル抗体と競合する場合、本明細書で開示されるモノクローナル抗体による結合が減少し、これら2つのモノクローナル抗体は同じまたは密接に関連したエピトープに結合することが示される。
【0259】
あるモノクローナル抗体が本明細書で開示されるモノクローナル抗体の特異性を有するかどうかを決定する別の方法では、本明細書で開示されるモノクローナル抗体を(通常、そのモノクローナル抗体が反応性を有する)可溶性HER2を用いて予備培養し、検査対象のモノクローナル抗体を加えて、検査対象のモノクローナル抗体がHER2に結合する能力が阻害されるかどうかを決定する。検査対象のモノクローナル抗体が阻害された場合、このモノクローナル抗体が本明細書で開示されるモノクローナル抗体と同じまたは機能的に等価なエピトープ特異性を有することはほぼ確実である。
【0260】
あるいは、例えば、HER2媒介PI3K−Akt経路活性を測定して、モノクローナル抗体がPI3K−Akt経路活性を調節、阻止、阻害、低下、拮抗、中和、または干渉することができるかどうかを決定して、本明細書で開示されるモノクローナル抗体をスクリーニングしてもよい。
【0261】
HER2抗体は、例えば、本明細書で提供される実施例で記載される方法を用いて生成される。この方法に代えて、あるいは追加して、当該分野で周知の様々な手順を用いて、HER2あるいはその誘導体、断片、類縁体、相同体、または相同分子種(orthologs)に対して作られたモノクローナル抗体を産生してもよい。(例えば、Antibodies: A Laboratory Manual(抗体:実験マニュアル), Harlow E, and Lane D, 1988, Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, NY、参照により本明細書に組み込まれる)。完全ヒト抗体とは、CDRを含む軽鎖および重鎖の両方の全配列がヒト遺伝子に由来する抗体分子である。本明細書では、このような抗体を「ヒト抗体」または「完全ヒト抗体」と言う。ヒトモノクローナル抗体は、例えば、以下に提供される実施例で記載される手順を用いて作製される。ヒトモノクローナル抗体はまた、トリオーマ技術、ヒトB細胞融合細胞技術(Kozbor, et al., 1983 Immunol Today 4: 72を参照のこと)、およびヒトモノクローナル抗体を産生するためのEBV融合細胞技術(Cole, et al., 1985 In: MONOCLONAL ANTIBODIES AND CANCER THERAPY(モノクローナル抗体と癌治療), Alan R. Liss, Inc., pp. 77-96を参照のこと)を用いて作製してもよい。ヒトモノクローナル抗体を利用してヒト融合細胞を用いて(Cote, et al., 1983. Proc Natl Acad Sci USA 80: 2026-2030を参照のこと)あるいはエプスタイン・バール・ウイルスを用いて生体外でヒトB細胞を形質転換して(Cole, et al., 1985 In: MONOCLONAL ANTIBODIES AND CANCER THERAPY(モノクローナル抗体と癌治療), Alan R. Liss, Inc., pp. 77-96を参照のこと)産生されてもよい。
【0262】
抗体は、周知の技術、例えば、主に免疫血清のIgG画分を提供するタンパク質Aまたはタンパク質Gを用いた親和性クロマトグラフィーにより精製される。この精製の後またはこの精製の代わりに、得られた免疫グロブリンの標的である特異的な抗原またはそのエピトープをカラムに固定して、免疫親和性クロマトグラフィーにより免疫特異的抗体を精製してもよい。免疫グロブリンの精製については、例えば、D. Wilkinson (The Scientist, The Scientist, Inc. により発行, Philadelphia PA, Vol. 14, No. 8 (April 17, 2000), pp. 25-28)に記載されている。
【0263】
HER2媒介PI3K−Akt経路活性を調節、阻止、阻害、低下、拮抗、中和、または干渉するモノクローナル抗体は、例えば、膜結合および/または可溶性HER2(例えば、マウス、ラット、またはヒトHER2)あるいは免疫原性断片、誘導体、またはその変異体を用いて動物を免疫化して生成される。あるいは、HER2が形質移入された細胞の表面で発現してその細胞表面と関連づけられるようにHER2をコードする核酸分子を含むベクターを用いて形質移入された細胞で動物を免疫化する。あるいは、抗体は、抗体またはHER2に結合するための抗原結合領域配列を含むライブラリーをスクリーニングして得られる。このライブラリーは、例えば、会合させたファージ粒子の表面で発現させたバクテリオファージ被覆タンパク質へのタンパク質またはペプチド融合、およびファージ粒子内に含まれたコードDNA配列(すなわち、「ファージ提示ライブラリー」)としてバクテリオファージの範疇に整備されている。骨髄腫/B細胞融合から得られる融合細胞はHER2に対する反応性で選別される。また、抗体は、例えば、以下に記載される酵母菌抗体提示ライブラリーおよび酵母菌ライブラリー提示システムから選ばれ、任意で最適化される。Blaise L, Wehnert A, Steukers MP, van den Beucken T, Hoogenboom HR, Hufton SE. Construction and diversification of yeast cell surface displayed libraries by yeast mating: application to the affinity maturation of Fab antibody fragments(酵母菌の交配による酵母細胞表面提示ライブラリーの構築と多様化:Fab抗体断片の親和性成熟化への応用)。Gene. 2004 Nov 24;342(2):211-8; Boder ET, Wittrup KD. Yeast surface display for screening combinatorial polypeptide libraries(組み合わせポリペプチドライブラリーを選別するための酵母表面提示)。Nat Biotechnol. 1997 Jun;15(6):553-7; Kuroda K, Ueda M. Cell surface engineering of yeast for applications in white biotechnology(ホワイトバイオテクノロジーに応用される酵母の細胞表面工学)。Biotechnol Lett. 2011 Jan;33(1):1-9. doi: 10.1007/s10529-010-0403-9.Review; Lauer TM, Agrawal NJ, Chennamsetty N, Egodage K, Helk B, Trout BL. Developability index: a rapid in silico tool for the screening of antibody aggregation propensity(発達性の指標:抗体凝集傾向のスクリーニングのための高速コンピュータツール)。J Pharm Sci. 2012 Jan;101(1):102-15; Orcutt K.D. and Wittrup K.D. (2010), 207-233 doi: 10.1007/978-3-642-01144-3_15; Rakestraw JA, Aird D, Aha PM, Baynes BM, Lipovsek D. Secretion-and-capture cell-surface display for selection of target-binding proteins(標的結合タンパク質の選択のための分泌捕獲型細胞表面提示)。Protein Eng Des Sel. 2011 Jun;24(6):525-30; US 8,258,082; US 6,300,064; US 6,696,248; US 6,165,718; US 6,500,644; US 6,291,158; US 6,291,159; US 6,096,551; US 6,368,805; US 6,500,644。酵母菌ライブラリー提示システムは、例えば、WO2008118476号、WO2009/036379号、WO2010105256号、およびWO2012009568号で記載されている。特定の態様では、このような酵母菌抗体提示ライブラリーまたは酵母菌ライブラリー提示システムは、ヒト免疫前抗体レパトアの多様性特性を模倣または反映するように設計される。特定の態様では、このような酵母菌抗体提示ライブラリーまたは酵母菌ライブラリー提示システムの多様性は、コンピュータにより生成される。特定の態様では、このような酵母菌抗体提示ライブラリーまたは酵母菌ライブラリー提示システムは、サッカロミケス酵母菌細胞(例えば、サッカロミケス・セレビシエ(Saccharomyces Cerevisiae)細胞)を含む。特定の態様では、このような酵母菌抗体提示ライブラリーまたは酵母菌ライブラリー提示システムはピキア(Pichia)細胞を含む。
【0264】
モノクローナル抗体は、例えば、Kohler and Milstein, Nature, 256:495 (1975)で記載される融合細胞法を用いて作製される。融合細胞法では、一般に、マウス、ハムスター、または他の適切な宿主動物を免疫化剤で免疫化して、免疫化剤に特異的に結合する抗体を産生する、または産生することができるリンパ球を誘発する。あるいは、リンパ球は生体外で免疫化されてもよい。
【0265】
一般に、免疫化剤としては、タンパク質抗原、その断片、またはその融合タンパク質が挙げられる。一般に、ヒト由来の細胞が望ましい場合は末梢血リンパ球が用いられ、ヒト以外の哺乳類に由来の細胞が望ましい場合は脾臓細胞またはリンパ節細胞が用いられる。リンパ球は、次いで、好適な融合剤(例えば、ポリエチレングリコール)を用いて不死化細胞株と融合させて、融合細胞を形成する(Goding, Monoclonal Antibodies: Principles and Practice(モノクローナル抗体:原理と実践), Academic Press, (1986) pp. 59-103)。不死化細胞株は、通常、形質変換した哺乳類の細胞、特に齧歯類、ウシ、およびヒト由来の骨髄腫細胞である。通常、ラットまたはマウスの骨髄腫細胞株が用いられる。融合細胞は、好ましくは未融合の不死化細胞の成長または生存を阻害する1種以上の物質を含む好適な培地で培養することができる。例えば、親細胞に酵素ヒポキサンチングアニンホスホリボシル転移酵素(HGPRTまたはHPRT)がない場合、融合細胞用の培地は、通常、HGPRT欠損細胞の成長を防止する物質であるヒポキサンチン、アミノプテリン、およびチミジン(「HAT培地」)を含む。
【0266】
好ましい不死化細胞株は、効率的に融合し、選択された抗体産生細胞による抗体の安定した高発現量を支持し、HAT培地等の培地に感度の高い不死化細胞株である。より好ましい不死化細胞株は、例えば、サーク研究所細胞配布センター(カリフォルニア州サンディエゴ)およびアメリカ培養細胞系統保存機関(ヴァージニア州マナサス)から入手することができるマウス骨髄腫細胞株である。モノクローナル抗体の産生に関しては、ヒト骨髄腫細胞株およびマウス−ヒトヘテロ骨髄腫細胞株も記載されている。(Kozbor, J. Immunol., 133:3001 (1984); Brodeur et al., Monoclonal Antibody Production Techniques and Applications(モノクローナル抗体の産生技術と応用), Marcel Dekker, Inc., New York, (1987) pp. 51-63)を参照のこと)。
【0267】
次いで、融合細胞が培養される培地を、抗原に対して作られるモノクローナル抗体の存在について検査してもよい。融合細胞によって産生されたモノクローナル抗体の結合特異性は、免疫沈殿または生体外結合アッセイ(例えば、放射免疫アッセイ(RIA)または酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA))で決定されることが好ましい。このような技術およびアッセイは当該分野で周知である。モノクローナル抗体の結合親和性は、例えば、Munson and Pollard, Anal. Biochem., 107:220 (1980)のスキャッチャード分析により決定することができる。また、モノクローナル抗体の治療用途では、標的抗原に対する高い特異性および高い結合親和性を有する抗体を同定することが重要である。
【0268】
所望の融合細胞を同定した後、クローンを限界希釈法によりサブクローニングして、標準的な方法で成長させてもよい(Goding, Monoclonal Antibodies: Principles and Practice(モノクローナル抗体:原理と応用), Academic Press, (1986) pp. 59-103))。この目的に好適な培地としては、例えば、ダルベッコ改変イーグル培地およびRPMI1640培地が挙げられる。あるいは、融合細胞を哺乳類の腹水等、生体内で成長させてもよい。
【0269】
サブクローンによって分泌されたモノクローナル抗体を、従来の免疫グロブリン精製法(例えば、タンパク質A−セファロース、ヒドロキシアパタイト・クロマトグラフィー、ゲル電気泳動法、透析、または親和性クロマトグラフィー)により培地または腹水から単離あるいは精製してもよい。
【0270】
また、モノクローナル抗体を、米国特許第4,816,567号に記載される組み換えDNA法で作製してもよい。本明細書で開示されるモノクローナル抗体をコードするDNAは、(例えば、マウス抗体の重鎖および軽鎖をコードする遺伝子に特異的に結合することができるオリゴヌクレオチドプローブを用いる)従来の方法で容易に単離し、配列決定することができる。本明細書で開示される融合細胞は、そのようなDNAの好ましい供給源として作用する。一旦単離されると、このDNAは発現ベクターに入れることができる。次いで、その発現ベクターを、そうしないと免疫グロブリンタンパク質を産生しない宿主細胞(例えば、サルのCOS細胞、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、または骨髄腫細胞)に形質移入して、組み換え宿主細胞内でモノクローナル抗体を合成する。また、例えば、ヒトの重鎖および軽鎖定常領域のコード配列を相同性マウス配列と置換して(米国特許第4,816,567号、Morrison, Nature 368, 812-13 (1994))、または非免疫グロブリンポリペプチドのコード配列の全てまたは一部を免疫グロブリンコード配列に共有結合させてDNAを修飾してもよい。このような非免疫グロブリンポリペプチドは、本明細書で開示される抗体の定常領域と置換して、または本明細書で開示される抗体の1つの抗原結合部位の可変領域と置換して、2価のキメラ抗体を作製することができる。
【0271】
本明細書で開示されるモノクローナル抗体は、完全ヒト抗体またはヒト化抗体を含む。これらの抗体は、ヒトが投与された免疫グロブリンに対する免疫応答を発生させることなく、ヒトに投与するのに好適である。
【0272】
ヒト化HER2抗体または完全ヒトHER2抗体は、例えば、以下に提供される実施例で記載される手順を用いて生成される。
【0273】
他の別の方法では、HER2抗体は、例えば、ヒト配列のみを含む抗体を用いるファージ提示法を用いて開発される。そのような手法は当該分野、例えば、WO92/01047号および米国特許第6,521,404号(引用により本明細書に組み込まれる)で周知である。この手法では、HER2またはその断片の天然源または組み換え源を用いて、軽鎖および重鎖の無作為な対を担持するファージの組み合わせライブラリーがスクリーニングされる。他の手法では、少なくとも1つの工程が遺伝子導入非ヒト動物をヒトHER2タンパク質で免疫化することを含む過程によってHER2抗体を産生してもよい。この手法では、この異種間非ヒト動物の内因性重鎖座位および/またはκ軽鎖座位のいくつかは、抗原に応答して免疫グロブリンをコードする遺伝子を生成するのに必要な再構成が機能しない、あるいは再構成することができなくしてある。また、少なくとも1個のヒト重鎖座位および少なくとも1個のヒト軽鎖座位は、安定して動物に形質移入されている。従って、投与された抗原に応答して、ヒトの座位は再編成し、その抗原に免疫特異的な、ヒト可変領域コード遺伝子をもたらす。したがって、免疫化の際には、ゼノマウス(xenomouse)は、完全ヒト免疫グロブリンを分泌するB細胞を産生する。
【0274】
異種間非ヒト動物を生み出す様々な技術が当該分野で周知である。例えば、米国特許第6,075,181号および6,150,584号(参照により本明細書に組み込まれる)を参照のこと。この一般的な方法は、1994年に出版された最初のXenoMouse(登録商標)血統に関して実証された。Green et al. Nature Genetics 7:13-21 (1994)(参照により本明細書に組み込まれる)を参照のこと。また、米国特許第6,162,963号、6,150,584号、6,114,598号、6,075,181号、および5,939,598号、日本特許第3068180B2号、3068506B2号、および3068507B2号、欧州特許EP第0463151B1号、ならびに国際特許出願WO94/02602、WO96/34096、WO98/24893、WO00/76310およびこれらの対応特許を参照のこと。
【0275】
別の手法では、Ig座位に由来する断片(個々の遺伝子)を封入して外因性Ig座位を模倣する「ミニ座位」法が用いられている。したがって、1つ以上のVH遺伝子、1つ以上のD
H遺伝子、1つ以上のJ
H遺伝子、ミュー定常領域、および第二の定常領域(好ましくはガンマ定常領域)が、動物に挿入するための構築物として形成される。例えば、米国特許第5,545,806号、5,545,807号、5,591,669号、5,612,205号、5,625,825号、5,625,126号、5,633,425号、5,643,763号、5,661,016号、5,721,367号、5,770,429号、5,789,215号、5,789,650号、5,814,318号、5,877,397号、5,874,299号、6,023,010号、6,255,458号、および欧州特許第0546073B1号、ならびに国際特許出願WO92/03918、WO92/22645、WO92/22647号、WO92/22670、WO93/12227、WO94/00569、WO94/25585、WO96/14436,WO97/13852、WO98/24884およびこれらの対応特許を参照のこと。
【0276】
また、微小核融合により染色体の大きな断片または染色体全体を導入したマウスからのヒト抗体の生成が示されている。欧州特許出願第773288号および843961を参照のこと。
【0277】
ヒト抗マウス抗体(HAMA)応答により、産業界ではキメラ抗体またはヒト化抗体が作製されている。キメラ抗体はヒト定常領域および免疫可変領域を有するが、特に抗体の慢性投与または複数回投与で用いた場合は特定のヒト抗キメラ抗体(HACA)応答が観察されると予測される。したがって、HAMA応答またはHACA応答の恐れおよび/または効果を低下あるいは緩和させるために、HER2に対する完全ヒト抗体を提供することが望ましい。
【0278】
また、免疫原性を抑制した抗体は、ヒト化、キメラ化、および適切なライブラリーを用いた提示技術により産生される。自明であるが、当該分野で周知の技術を用いてマウス抗体または他の種に由来する抗体をヒト化あるいは霊長類化することができる。例えば、Winter and Harris Immunol Today 14:43 46 (1993)、およびWright et al. Crit, Reviews in Immunol. 12125-168 (1992)を参照のこと。目的の抗体を組み換えDNA技術により設計して、CH1、CH2、CH3、ヒンジ領域、および/またはフレームワーク領域を対応するヒト配列で置換してもよい(WO92102190、および米国特許第5,530,101号、5,585,089号、5,693,761号、5,693,792号、5,714,350号、および5,777,085号を参照のこと)。また、キメラ免疫グロブリン遺伝子の構築のためにIg cDNAを用いることが当該分野で周知である(Liu et al. P.N.A.S. 84:3439 (1987) and J. Immunol. 139:3521 (1987))。cDNAの作製に、抗体を産生する融合細胞または他の細胞からmRNAを単離して用いる。特異的なプライマーを用いたポリメラーゼ連鎖反応によりこの目的のcDNAを増幅してもよい(米国特許第4,683,195号および4,683,202号)。あるいは、ライブラリーを作製して、スクリーニングを行って目的の配列を単離する。次いで、抗体の可変領域をコードするDNA配列をヒト定常領域配列に融合する。ヒト定常領域の遺伝子配列は、Kabat et al. (1991) Sequences of Proteins of immunological Interest、国立衛生研究所公開番号91−3242で見つけることができる。ヒトC領域遺伝子は、周知のクローンから容易に入手可能である。イソタイプの選択は、所望のエフェクター機能(例えば、補体結合、または抗体依存性細胞毒性の活性等)により誘導される。好ましいイソタイプはIgG1、IgG3、およびIgG4である。ヒト軽鎖定常領域κまたはλのいずれかを用いてもよい。そして、従来の方法でキメラヒト化抗体を発現させる。
【0279】
変化しないタンパク質(例えば、プロテアーゼ)による切断または化学的な切断により抗体断片、例えば、Fv、F(ab’)
2、およびFabを調製してもよい。あるいは、切断遺伝子を設計する。例えば、F(ab’)
2断片の一部をコードするキメラ遺伝子は、重鎖のCH1領域およびヒンジ領域をコードするDNA配列と、その後ろに切断分子を作るための翻訳終止コドンを含む。
【0280】
重鎖および軽鎖のJ領域の共通配列を用いてプライマーとして用いるオリゴヌクレオチドを設計し、有用な制限部位をJ領域に導入し、その後でV領域分節とヒトC領域分節とを結合してもよい。C領域のcDNAを部位特異的変異により修飾して、ヒト配列の類似位置に制限部位を置いてもよい。
【0281】
発現ベクターとしては、プラスミド、レトロウイルス、YAC、EBV由来の遺伝子副体等が挙げられる。使いやすいベクターは、機能的に完全ヒトCHまたはCL免疫グロブリン配列をコードし、任意のVHまたはVL配列を容易に挿入かつ発現することができるように設計された適切な制限部位を有するものである。このようなベクターでは、通常、挿入されたJ領域のスプライス供与部位とヒトC領域の前のスプライス受容部位との間、およびヒトCHエクソン内に発生するスプライス領域でスプライシングが起こる。コード領域下流の天然の染色体部位ではポリアデニル化および転写終結が起こる。得られたキメラ抗体を任意の強いプロモーターに接合してもよい。そのようなプロモーターとしては、レトロウイルスLTR(例えば、SV−40初期プロモーター(Okayama et al. Mol. Cell. Bio. 3:280 (1983))、ラウス肉腫ウイルスLTR (Gorman et al. P.N.A.S. 79:6777 (1982))、およびモロニ−マウス白血病ウイルスLTR(Grosschedl et al. Cell 41:885 (1985))が挙げられる。また、自明であるが、天然のIgプロモーターを用いてもよい。
【0282】
さらに、ヒト抗体またはその他の種に由来する抗体を提示技術により生成してもよい。そのような技術としては、ファージ提示法、レトロウイルス提示法、リポソーム提示法、および当該分野で周知の技術を用いた他の技術等が挙げられるが、これらに限定されない。得られた分子を親和性成熟等、当該分野で周知の技術でさらに成熟させてもよい。Wright et al. Crit, Reviews in Immunol. 12125-168 (1992), Hanes and Pluckthun PNAS USA 94:4937-4942 (1997)(リポソーム提示法)、Parmley and Smith Gene 73:305-318 (1988)(ファージ提示法)、Scott, TIBS, vol. 17:241-245 (1992), Cwirla et al. PNAS USA 87:6378-6382 (1990), Russel et al. Nucl. Acids Research 21:1081-1085 (1993), Hoganboom et al. Immunol. Reviews 130:43-68 (1992), Chiswell and McCafferty TIBTECH; 10:80-8A (1992)、および米国特許第5,733,743号。提示技術を用いてヒトではない抗体を産生する場合は、そのような抗体は上記のようにヒト化することができる。
【0283】
これらの技術を用いて、HER2発現細胞、HER2の溶解性形態、エピトープまたはそのペプチド、およびそれに対する発現ライブラリーに対して抗体を生成して(例えば、米国特許第5,703,057号を参照のこと)、その後、本明細書で記載される活性について上述のようにスクリーニングを行ってもよい。
【0284】
本明細書で開示されるHER2抗体は、上述の単鎖抗体をコードするDNA分節を含むベクターにより発現させてもよい。
【0285】
これらは、ベクター、リポソーム、裸のDNA、アジュバント補助DNA、遺伝子銃、カテーテル等を含む。ベクターは、WO93/64701に記載の標的部位(例えば、細胞表面受容体に対するリガンド)、および核酸結合部位(例えば、ポリリシン)を有する化学複合体、ウイルスベクター(例えば、DNAまたはRNAウイルスベクター)、PCT/US95/02140(WO95/22618)に記載の標的部位(例えば、標的細胞に特異的な抗体)および核酸結合部位(例えば、プロタミン)を含む融合タンパク質である融合タンパク質、プラスミド、ファージ等を含む。ベクターは、染色体由来、非染色体由来、または合成したものであってもよい。
【0286】
好ましいベクターとしては、ウイルスベクター、融合タンパク質、および化学複合体が挙げられる。レトロウイルスベクターとしては、モロニ−マウス白血病ウイルスが挙げられる。DNAウイルスベクターが好ましい。これらのベクターとしては、ポックスベクター(例えば、オルソポックスまたはトリポックスベクター)、ヘルペスウイルスベクター(例えば、単純ヘルペスIウイルス(HSV)ベクター(Geller, A. I. et al., J. Neurochem, 64:487 (1995); Lim, F., et al., in DNA Cloning: Mammalian Systems(DNAクローニング:哺乳類系), D. Glover, Ed. (Oxford Univ. Press, Oxford England) (1995); Geller, A. I. et al., Proc Natl. Acad. Sci.: U.S.A. 90:7603 (1993); Geller, A. I., et al., Proc Natl. Acad. Sci USA 87:1149 (1990), Adenovirus Vectors(アデノウイルスベクター)(LeGal LaSalle et al., Science, 259:988 (1993); Davidson, et al., Nat. Genet 3:219 (1993); Yang, et al., J. Virol. 69:2004 (1995) and Adeno-associated Virus Vectors(アデノ随伴ウイルスベクター)(Kaplitt, M. G. et al., Nat. Genet. 8:148 (1994))を参照のこと)が挙げられる。
【0287】
ポックスウイルスベクターは、遺伝子を細胞の細胞質に導入する。トリポックスウイルスベクターは、核酸の短期発現のみが得られる。核酸を神経細胞に導入するのにはアデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクター、および単純ヘルペスウイルス(HSV)ベクターが好ましい。アデノウイルスベクターは、アデノ随伴ウイルス(約4ヶ月)よりも発現期間が短く(約2ヶ月)、これはHSVベクターよりも短い。選択した特定のベクターは、標的細胞および処理条件に依存する。導入は、一般的な技術(例えば、感染、形質移入、形質導入、または形質転換)により行うことができる。遺伝子導入法としては、例えば、裸のDNA、CaPO
4沈殿、DEAEデキストラン、電気穿孔法、原形質体融合、リポフェクション法、細胞微量注入法、およびウイルスベクター等が挙げられる。
【0288】
ベクターを用いて、本質的にいずれの所望の標的細胞をも標的することができる。例えば、定位注入法を用いてベクター(例えば、アデノウイルス、HSV)を所望の位置に向けることができる。また、ミニポンプ注入システム(例えば、SynchroMed Infusion System)を用いた脳室内(icv)注入により粒子を送達してもよい。また、対流という総体流に基づく方法も大きい分子を脳の広い領域に送達するのに有効であることが証明されており、ベクターを標的細胞に送達するのに有用な場合がある(Bobo et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 91:2076-2080 (1994); Morrison et al., Am. J. Physiol. 266:292-305 (1994)を参照のこと)。用いることのできる他の方法としては、カテーテル、静脈内投与、非経口投与、腹腔内注射および皮下注射、経口投与、またはその他の周知の投与経路が挙げられる。
【0289】
これらのベクターを用いて、様々な方法で用いることができる抗体を大量に発現させることができる。例えば、試料のHER2の存在を検出するのに用いることができる。また、抗体を用いて、HER2関連信号伝達への結合およびその阻害を試みることができる。
【0290】
本明細書で開示される抗原タンパク質に特異的な単鎖抗体を産生するための技術を採用することができる(例えば、米国特許第4,946,778号を参照のこと)。また、F
ab発現ライブラリーを構築する方法(例えば、Huse, et al., 1989 Science 246: 1275-1281)を用いてもよい。これにより、タンパク質、あるいはその誘導体、断片、類縁体または相同体に対する所望の特異性を有するモノクローナルF
ab断片を高速かつ有効に同定することができる。当該分野で周知の技術によりタンパク質抗原に対するイディオタイプを含む抗体断片を産生してもよい。そのような断片としては、(i)抗体分子のペプシン消化によって産生されたF
(ab’)2断片、(ii)F
(ab’)2断片のジスルフィド架橋を還元して生成されたF
ab断片、(iii)パパインおよび還元剤で抗体分子を処理して生成されたF
ab断片、および(iv)F
v断片が挙げられるが、これらに限定されない。
【0291】
本発明はまた、F
v、F
ab、F
ab’およびF
(ab’)2抗HER2断片または抗HER2断片、単鎖抗HER2抗体、少なくとも1本の腕がHER2に結合する多特異性抗体、およびヘテロ複合体抗HER2抗体を含む。
【0292】
二重特異性抗体は、少なくとも2種の異なる抗原に対する結合特異性を有する抗体である。この場合、結合特異性の1つは、HER2に対するものである。第二の結合標的は任意の他の抗原であり、細胞表面タンパク質、受容体、または受容体下位単位を含む。
【0293】
二重特異性抗体を作製する方法は当該分野で周知である。従来、二重特異性抗体の組み換え産生は免疫グロブリンの重鎖と軽鎖との2つの対に基づいており、ここで2本の重鎖は異なる特異性を有する(Milstein and Cuello, Nature, 305:537-539 (1983))。免疫グロブリン重鎖および軽鎖を無作為に分類するため、これら融合細胞(クアドローマ)は10種の異なる抗体分子の混合物を産生する可能性があるが、そのうちの1種のみが正しい二重特異性構造を有する。この正しい分子は、通常親和性クロマトグラフィー工程により精製される。同様の手順が1993年5月13日に公開されたWO93/08829、およびTraunecker et al., EMBO J., 10:3655-3659 (1991)で開示されている。
【0294】
所望の結合特異性(抗体−抗原結合部位)を有する抗体可変領域を免疫グロブリン定常領域配列と融合させてもよい。少なくともヒンジ領域、CH2領域、およびCH3領域の一部を有する免疫グロブリン重鎖定常領域との融合が好ましい。前記融合の少なくとも1つに存在する軽鎖結合に必要な部位を含む第一の重鎖定常領域(CH1)を有することが好ましい。免疫グロブリン重鎖融合、および必要に応じて免疫グロブリン軽鎖をコードするDNAを別々の発現ベクターに挿入して、好適な宿主有機体に共形質移入する。二重特異性抗体の生成についてのさらなる詳細は、例えば、Suresh et al., Methods in Enzymology, 121:210 (1986)を参照のこと。
【0295】
WO96/27011に記載の他の手法によると、抗体分子対の界面を設計して、組み換え細胞培地から回収される異種二量体の百分率を最大にしてもよい。好ましい界面は、少なくとも抗体定常領域のCH3領域の一部を含む。この方法では、第一の抗体分子の界面に由来する1つ以上の小さいアミノ酸側鎖をより大きい側鎖(例えば、チロシンまたはトリプトファン)と置換する。大きいアミノ酸側鎖を小さい側鎖(例えば、アラニンまたはトレオニン)と置換して、大きい側鎖と同じまたは類似した大きさの補償「空洞」を第二の抗体分子の界面に作製する。これにより、他の望ましくない最終生成物(例えば、同種二量体等)に対して異種二量体の歩留まりを増加させる反応機構が提供される。
【0296】
二重特異性抗体を完全な長さの抗体または抗体断片(例えば、F(ab’)
2二重特異性抗体)として作製してもよい。抗体断片から二重特異性抗体を生成する技術が文献に記載されている。例えば、化学結合を用いて二重特異性抗体を作製してもよい。Brennan et al., Science 229:81 (1985)には、無傷の抗体をタンパク分解的に開裂してF(ab’)
2断片を生成する手順が記載されている。これらの断片を、ジチオール錯化剤である亜ヒ酸ナトリウムの存在下で還元して、近接するジチオールを安定化し、分子間ジスルフィドの形成を防止する。次いで、生成されたFab’断片をチオニトロベンゾアート(TNB)誘導体に転化する。次いで、Fab’−TNB誘導体の1つをメルカプトエチルアミンで還元してFab’−チオールに再転化し、等モル量の他のFab’−TNB誘導体と混合して二重特異性抗体を形成する。産生された二重特異性抗体は、酵素の選択可能な固定化のための薬剤として用いることができる。
【0297】
また、Fab’断片を大腸菌から直接回収して、化学的に結合して二重特異性抗体を形成してもよい。Shalaby et al., J. Exp. Med. 175:217-225 (1992)には、完全ヒト化二重特異性抗体F(ab’)
2分子の産生が記載されている。各Fab’断片は、大腸菌から個別に分泌されて、生体外で直接化学結合して二重特異性抗体を形成する。このように形成された二重特異性抗体は、ErbB2受容体を過剰発現している細胞および正常なヒトT細胞に結合し、ヒト乳房腫瘍標的に対するヒト細胞毒性リンパ球の溶解活性を誘発することができる。
【0298】
また、二重特異性抗体断片を組み換え細胞培地から直接作製して単離する様々な技術が記載されている。例えば、二重特異性抗体はロイシンジッパーを用いて産生される。Kostelny et al., J. Immunol. 148(5):1547-1553 (1992)。遺伝子融合により、Fosタンパク質およびJunタンパク質由来のロイシンジッパーペプチドを2種の異なる抗体のFab’部分に結合された。この抗体同種二量体をヒンジ領域で還元して単量体を形成し、再度酸化して抗体異種二量体が形成された。また、この方法を抗体同種二量体の産生に用いてもよい。Hollinger et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90:6444-6448 (1993)に記載の「二重特異性抗体」技術は、二重特異性抗体断片を作製するための別の反応機構を提供している。この断片は、短すぎて同じ鎖の2つの領域間で対を形成することができないリンカーによって軽鎖可変領域(V
L)に結合した重鎖可変領域(V
H)を含む。したがって、1つの断片のV
HおよびV
L領域を他の断片の相補性V
LおよびV
H領域と無理に対にして、2つの抗原−結合部位を形成する。また、単鎖Fv(sFv)二量体を用いて二重特異性抗体断片を作製する他の方法が報告されている。Gruber et al., J. Immunol. 152:5368 (1994)を参照のこと。
【0299】
結合価が2を超える抗体が企図される。例えば、三重特異性抗体を作製してもよい。Tutt et al., J. Immunol. 147:60 (1991)。
【0300】
例示的な二重特異性抗体は、少なくとも1つは本明細書で開示されるタンパク質抗原に由来する、2種の異なるエピトープに結合することができる。あるいは、細胞防御反応機構を特定の抗原を発現している細胞に注目させるように白血球のトリガー分子(例えば、T細胞受容体分子(例えば、CD2、CD3、CD28、またはB7))、またはIgGに対するFc受容体(FcγR)(例えば、FcγRI(CD64)、FcγRII(CD32)、およびFcγRIII(CD16))に結合している腕に免疫グロブリン分子の抗抗原腕を結合してもよい。また、二重特異性抗体を用いて、特定の抗原を発現している細胞に細胞毒性薬を向けてもよい。これらの抗体は、抗原結合腕と、細胞毒性薬または放射性核種キレート剤(例えば、EOTUBE、DPTA、DOTA、またはTETA等)に結合する腕を有する。他の目的とする二重特異性抗体は、本明細書で記載されるタンパク質抗原に結合し、さらに組織因子(TF)と結合する。
【0301】
また、異種複合体抗体も本発明の範囲内である。異種複合体抗体は、2種の共有結合した抗体からなる。このような抗体は、例えば、免疫系細胞を望ましくない細胞に標的する(米国特許第4、676,980号を参照のこと)ため、およびHIV感染の治療(WO91/00360;WO92/200373;EP03089を参照のこと)のために提案されている。合成タンパク質化学で周知の方法(架橋剤を含む方法を含む)を用いて抗体を生体外で作製することが企図される。例えば、ジスルフィド交換反応を用いてまたはチオエーテル結合を形成して免疫毒素を構築することができる。この目的のために好適な試薬としては、例えば、イミノチオレート、メチル−4−ブチリミデート、および例えば、米国特許第4、676,980号に開示される試薬が挙げられる。
【0302】
本明細書で開示される抗体の効果または機能を変更することが望ましい場合がある。例えば、HER2の異常発現および/または活性に関連づけられた病気および障害の治療に関して抗体の有効性の高めてもよい。例えば、システイン残基をFc領域に導入して、この領域に鎖間ジスルフィド結合を形成することができる。このように生成された同種二量体抗体は、向上した内部移行能および/または高められた補体媒介細胞殺傷および抗体依存性細胞障害作用(ADCC)を有することができる。(Caron et al., J. Exp Med., 176: 1191−1195 (1992)、およびShopes, J. Immunol., 148: 2918-2922 (1992)を参照のこと)。あるいは、二重のFc領域を有する抗体を設計して、これにより補体溶解およびADCC能を高めることができる(Stevenson et al., Anti-Cancer Drug Design, 3: 219-230 (1989)を参照のこと)。
HER2抗体複合体
【0303】
本発明はまた、毒素(例えば、バクテリア、真菌、植物、または動物由来の酵素活性毒素、またはその断片)等の細胞毒性薬、あるいは放射性同位体(すなわち、放射性複合体)に結合した抗体を含む免疫複合体に関する。
【0304】
用いることができる酵素活性毒素およびその断片としては、ジフテリアA鎖、ジフテリア毒素の非結合活性断片、外毒素A鎖(緑膿菌由来)、リシンA鎖、アブリンA鎖、モデシンA鎖、α−八連球菌、シナアブラギリ(Aleurites fordii)タンパク質、ジアンチンタンパク質、ヤマシュゴボウ(Phytolaca americana)タンパク質(PAPI、PAPII、およびPAP−S)、ツルレイシ(momordica charantia)阻害剤、クルシン、クロチン、サボンソウ(sapaonaria officinalis)阻害剤、ゲロニン、マイトゲリン、レストリクトシン、フェノマイシン、エノマイシン、およびトリコテセン等が挙げられる。放射性複合体抗体の産生に様々な放射性核種が利用可能である。例えば
212Bi、
131I、
131In、
90Y、および
186Reが挙げられる。
【0305】
抗体と細胞毒性薬の複合体は様々な二官能タンパク質結合剤を用いて作製される。そのような結合剤としては、3−(2−ピリジルジチオ)プロピオン酸N−スクシンイミジル(SPDP)、イミノチオラン(IT)、イミドエステルの二官能誘導体(例えば、アジプイミド酸ジメチルHCl)、活性エステル(例えば、スベリン酸ジスクシンイミジル)、アルデヒド(例えば、グルタルアルデヒド)、ビスアジド化合物(例えば、ビス(p−アジドベンゾイル)ヘキサンジアミン)、ビスジアゾニウム誘導体(例えば、ビス−(p−ジアゾニウムベンゾイル)−エチレンジアミン)、ジイソシアン酸塩(例えば、2,6−ジイソシアン酸トルエン)、およびビス活性フッ素化合物(例えば、1,5−ジフルオロ−2,4−ジニトロベンゼン)等が挙げられる。例えば、Vitetta et al., Science 238: 1098 (1987)に記載されたようにリシン免疫毒素を調製することができる。放射性ヌクレオチドを抗体に結合させるためのキレート剤としては、例えば炭素14で標識した1−イソチオシアナトベンジル−3−メチルジエチレントリアミン五酢酸(MX−DTPA)である(WO94/11026を参照のこと)。
【0306】
当業者には自明であるが、様々な可能性のある部位を本明細書で開示される抗体に結合することができる(例えば、“Conjugate Vaccines(複合体ワクチン)", Contributions to Microbiology and Immunology(微生物学と免疫学への貢献), J. M. Cruse and R. E. Lewis, Jr (eds), Carger Press, New York, (1989)を参照のこと。その全内容は引用により本明細書に組み込まれる)。
【0307】
抗体と他の部位がそれぞれの活性を保持している限り、2個の分子を結合するいずれかの化学反応によって結合を行ってもよい。この結合は、共有結合、親和性結合、インターカレーション、配位結合、および錯体化等、多くの化学反応機構を含む。しかしながら、好ましい結合は共有結合である。共有結合は、存在する側鎖の直接縮合あるいは外部架橋分子の組み込みにより得ることができる。タンパク質分子(例えば本発明の抗体)を他の分子に結合させるのに多くの2価または多価の結合剤が有用である。例えば、典型的な結合剤としては、チオエステル、カルボジイミド、コハク酸イミドエステル、二イソシアン酸塩、グルタルアルデヒド、ジアゾベンゼン、およびヘキサメチレンジアミン等の有機化合物が挙げられる。このリストは、当該分野で周知の様々な結合剤の範疇を網羅することを意図するものではなく、むしろ、より一般的な結合剤を例示することを意図するものである(Killen and Lindstrom, Jour. Immun. 133:1335-2549 (1984); Jansen et al., Immunological Reviews 62:185-216 (1982); およびVitetta et al., Science 238:1098 (1987)を参照のこと)。
【0308】
文献に好ましいリンカーが記載されている(例えば、Ramakrishnan, S. et al., Cancer Res. 44:201-208 (1984)にはMBS(M−マレイミドベンゾイル−N−ヒドロキシコハク酸イミドエステル)の使用が記載されている)。また、米国特許第5,030,719号には、オリゴペプチドリンカーにより抗体に結合されたハロゲン化アセチルヒドラジド誘導体の使用が記載されている。特に好ましいリンカーとしては、(i)EDC(1−エチル−3−(3−ジメチルアミノ−プロピル)カルボジイミド塩酸塩)、(ii)SMPT(4−スクシンイミジルオキシカルボニル−α−メチル−α−(2−ピリジル−ジチオ)−トルエン(Pierce Chem. Co., Cat. (21558G))、(iii)SPDP(6−[3−(2−ピリジルジチオ)プロピオンアミド]ヘキサン酸スクシンイミジル(Pierce Chem. Co., Cat.# 21651G))、(iv)スルホ−LC−SPDP(6−[3−(2−ピリジルジチオ)−プロピオナミド]ヘキサン酸スルホスクシンイミジル(Pierce Chem. Co. Cat.# 2165-G))、および(v)EDCに結合したスルホ−NHS(N−ヒドロキシスルホ−コハク酸イミド(Pierce Chem. Co., Cat.# 24510))が挙げられる。
【0309】
上述のリンカーは異なる属性を有し、したがって異なる物理化学特性を有する複合体を生成する成分を含む。例えば、カルボン酸アルキルのスルホ−NHSエステルは、芳香族カルボン酸塩のスルホ−NHSエステルよりも安定している。リンカーを含むNHS−エステルは、スルホ−NHSエステルよりも溶解性が低い。さらに、リンカーSMPTは立体障害ジスルフィド結合を含み、安定性が高められた複合体を形成することができる。ジスルフィド結合は、一般に、他の結合に比べて不安定である。これは、ジスルフィド結合が生体外で開裂するためで、その結果、利用可能な複合体が減少する。スルホ−NHSは、特にカルボジイミド結合の安定性を高めることができる。スルホ−NHSとの結合に用いられるカルボジイミド結合(例えば、EDC)は、カルボジイミド結合反応のみよりも加水分解耐性があるエステルを形成する。
【0310】
また、本明細書で開示される抗体は免疫リポソームとして処方することができる。前記抗体を含むリポソームは、例えば、Epstein et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 82: 3688 (1985); Hwang et al., Proc. Natl Acad. Sci. USA, 77: 4030 (1980)、および米国特許第4,485,045号および4,544,545号などに記載の当該分野で周知の方法により作製される。循環時間の向上したリポソームが、米国特許第5,013,556号に開示されている。
【0311】
特に有用なリポソームは、ホスファチジルコリン、コレステロール、およびPEG誘導体化ホスファチジルエタノールアミン(PEG−PE)を含む脂質組成物を用いた逆相蒸発法により生成してもよい。リポソームを所定の孔サイズの濾過器から押し出して、所望の直径を有するリポソームが得られる。本発明の抗体のFab’断片は、Martin et al., J. Biol. Chem., 257: 286-288 (1982)等に記載されているように、ジスルフィド交換反応によりリポソームに結合させることができる。
【0312】
一側面では、本明細書で記載される複合体は、1種以上のD担持重合体足場材料に直接または間接に結合した単離HER2抗体またはその抗原結合その断片を含む。この1種以上のD担持重合体足場材料は、それぞれ独立に、分子量が約2kDa〜約40kDaの範囲のポリ(1−ヒドロキシメチルエチレン=ヒドロキシメチル−ホルマール)(PHF)を含み、それぞれのD担持重合体足場材料は、独立して、式(Ic)で表される。
【化41】
式中、
Dの各出現は、独立して、治療薬または診断薬であり、
L
D1はカルボニル含有部位であり、
【化42】
の各出現は、独立して、生分解性結合を含む第一のリンカーであり、この結合が切れると、その意図された治療効果に合わせて活性化された形態でDが放出され、
【化43】
はDのL
D1への直接または間接的連結を示し、
【化44】
の各出現は、独立して、前記単離HER2抗体またはその抗原結合断片にまだ結合していない第二のリンカーであり、L
P2は、単離抗体またはその抗原結合断片の官能基と共有結合をまだ形成していない官能基を含む部位であり、L
D1とL
P2の間の
【化45】
はL
P2のL
D1への直接または間接的連結を示し、第二のリンカーの各出現は前記第一のリンカーの各出現とは区別され、
【化46】
の各出現は、各D担持重合体足場材料を単離抗体またはその抗原結合断片に結合する第三のリンカーであり、L
P2と連結した末端
【化47】
は、L
P2の官能基と単離抗体またはその抗原結合断片の官能基との間に共有結合が形成される時のL
P2の単離抗体またはその抗原結合断片への直接または間接的連結を示し、前記第三のリンカーの各出現は、前記第一のリンカーの各出現とは区別され、
mは1から約300の整数であり、
m
1は1から約140の整数であり、
m
2は1から約40の整数であり、
m
3は0から約18の整数であり、
m
4は1から約10の整数であり、
m、m
1、m
2、m
3、およびm
4の合計は約15から約300の範囲であり、前記単離抗体またはその抗原結合断片に結合したL
P2の総数は10以下である。
【0313】
前記複合体は、以下の特徴事項を1つ以上含んでいてもよい。
【0314】
例えば、式(Ic)で、m
1は1〜約120(例えば、約1〜90)の整数であり、かつ/またはm
3は1〜約10(例えば、約1〜8)の整数である。
【0315】
例えば、式(Ic)のPHFの分子量が約6kDa〜約20kDa(すなわち、m、m
1、m
2、m
3、およびm
4の合計が約45〜約150の範囲)である場合、m
2は2〜約20の整数であり、m
3は0〜約9の整数であり、m
4は1〜約10の整数であり、かつ/またはm
1は1〜約75の整数(例えば、m
1は約4〜45)である。
【0316】
例えば、式(Ic)のPHFの分子量が約8kDa〜約15kDa(すなわち、m、m
1、m
2、m
3、およびm
4の合計が約60〜約110の範囲)である場合、m
2は2〜約15の整数であり、m
3は0〜約7の整数であり、m
4は1〜約10の整数であり、かつ/またはm
1は1〜約55の整数(例えば、m
1は約4〜30)である。
【0317】
例えば、式(Ic)のPHFの分子量が約2kDa〜約20kDa(すなわち、m、m
1、m
2、m
3、およびm
4の合計が約15〜約150の範囲)である場合、m
2は1〜約20の整数であり、m
3は0〜約10の整数(例えば、m
3は0〜約9の範囲)であり、m
4は1〜約8の整数であり、かつ/またはm
1 は1〜約70の整数であり、単離抗体またはその抗原結合断片に結合したL
P2の総数は約2〜約8の範囲(例えば、約2、3、4、5、6,7、または8)である。
【0318】
例えば、式(Ic)のPHFの分子量が約3kDa〜約15kDa(すなわち、m、m
1、m
2、m
3、およびm
4の合計が約20〜約110の範囲)である場合、m
2は2〜約15の整数であり、m
3は0〜約8の整数(例えば、m
3は0〜約7の範囲)であり、m
4は1〜約8の整数であり、かつ/または m
1は2〜約50の整数であり、単離抗体またはその抗原結合断片に結合したL
P2の総数が約2〜約8の範囲(例えば、約2、3、4、5、6,7、または8)である。
【0319】
例えば、式(Ic)のPHFの分子量が約5kDa〜約10kDa(すなわち、m、m
1、m
2、m
3、およびm
4の合計が約40〜約75の範囲)である場合、m
2は約2〜約10の整数(例えば、m
2は約3〜10)であり、m
3は0〜約5の整数(例えば、m
3は0〜約4の範囲)であり、m
4は1〜約8の整数(例えば、m
4は1〜約5の範囲)であり、かつ/またはm
1は約2〜約35の整数(例えば、m
1は約5〜35)であり、単離抗体またはその抗原結合断片に結合したL
P2の総数は約2〜約8の範囲(例えば、約2、3、4、5、6,7、または8)である。
【0320】
例えば、PHFの分子量が2kDa〜40kDaの範囲(例えば、約6〜20kDa、約8〜15kDa、約2〜20kDa、約3〜15kDa、または約5〜10kDa)である場合、PHFあたりの薬物の数(例えば、m
2)は1〜約40の整数(例えば、約1〜20、約2〜15、約3〜10、または約2〜10)である。この足場材料は、例えば、分子量が40kDa以上(例えば、60kDa以上、80kDa以上、100kDa以上、120kDa以上、140kDa以上、160kDa以上、180kDa以上、または200kDa以上、または約40〜200kDa、40〜180kDa、40〜140kDa、60〜200kDa、60〜180kDa、60〜140kDa、80〜200kDa、80〜180kDa、80〜140kDa、100〜200kDa、100〜180kDa、100〜140kDa、または140〜150kDa)の単離抗体またはその抗原結合断片の結合に用いることができる。この態様では、前記単離抗体またはその抗原結合断片のPHFに対する比は、約1:1〜約1:10、約1:1〜約1:9、約1:1〜約1:8、約1:1〜約1:7、約1:1〜約1:6、約1:1〜約1:5、約1:1〜約1:4、約1:1〜約1:3、約1:1〜約1:2、約1:2〜約1:4、約1:2〜約1:3、約1:3〜約1:4、または約1:3〜約1:5である。
【0321】
例えば、PHFの分子量が2kDa〜40kDaの範囲(例えば、約6〜20kDa,約8〜15kDa、約2〜20kDa、約3〜15kDa、または約5〜10kDa)である場合、PHFあたりの薬物の数(例えば、m
2)は1〜約40の整数(例えば、約1〜20、約2〜15、約3〜10、または約2〜10)である。この足場材料は、例えば分子量が140kDa〜180kDaまたは140kDa〜150kDaの単離抗体またはその抗原結合断片の結合に用いることができる。この態様では、前記単離抗体またはその抗原結合断片のPHFに対する比は、約1:1〜約1:10、約1:1〜約1:9、約1:1〜約1:8、約1:1〜約1:7、約1:1〜約1:6、約1:1〜約1:5、約1:1〜約1:4、約1:1〜約1:3、約1:1〜約1:2、約1:2〜約1:4、約1:2〜約1:3、約1:3〜約1:4、または約1:3〜約1:5である。
【0322】
この範囲の分子量を有する単離抗体またはその抗原結合断片としては、完全な長さの抗体(例えば、IgG、IgM)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0323】
例えば、PHFの分子量が2kDa〜40kDaの範囲である場合、PHFあたりの薬物の数(例えば、m
2)は1〜約40の整数(例えば、約1〜20、約2〜15、約3〜10、または約2〜10)である。この足場材料は、例えば、分子量が60kDa〜120kDaの単離抗体またはその抗原結合断片の結合に用いることができる。この態様では、前記単離抗体またはその抗原結合断片のPHFに対する比は、約1:1〜約1:10、約1:1〜約1:9、約1:1〜約1:8、約1:1〜約1:7、約1:1〜約1:6、約1:1〜約1:5、約1:1〜約1:4、約1:1〜約1:3、約1:1〜約1:2、約1:2〜約1:4、約1:2〜約1:3、約1:3〜約1:4、または約1:3〜約1:5である。
【0324】
この範囲の分子量を有する単離抗体またはその抗原結合断片としては、抗体断片(例えば、Fab2およびラクダ科の動物由来の抗体)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0325】
特定の態様では、Dは治療薬である。特定の態様では、前記治療薬は分子量が約5kDa以下、約4kDa以下、約3kDa以下、約1.5kDa以下、または約1kDa以下の小分子である。
【0326】
特定の態様では、前記治療薬は、50%阻害濃度IC
50が約1nM未満である
【0327】
他の態様では、前記治療薬は、IC
50が1nM超である。例えば、前記治療薬は、IC
50が約1〜50nMである。
【0328】
IC
50が約1nMを超える治療薬(例えば、「作用の弱い薬物」)には、従来認められている結合技術を用いる抗体との結合には不適切なものもある。特定の理論に拘束されるものではないが、そのような治療薬の有効性は、従来技術を用いた標的抗体−薬物複合体に用いるには不十分である。というのも、従来認められている技術を用いて、複合体の薬物動態特性および物理化学特性を損なうことなく薬物の十分な複製(すなわち、8超)を結合させることはできないからである。しかしながら、本明細書で記載される結合方法を用いて、望ましい薬物動態特性および物理化学特性を維持しつつ、これら作用の弱い薬物を十分に高く充填して、高充填治療薬を得ることができる。したがって、本発明はまた、単離抗体またはその抗原結合断片、PHF、および少なくとも8個の治療薬部位を含む抗体−重合体−薬物複合体に関し、ここでDはオーリスタチン、ドラスタチン、モノメチルオーリスタチンE(MMAE)、モノメチルオーリスタチンF(MMAF)、オーリスタチンF、AF HPA、フェニレンジアミン(AFP)である。
【0329】
例えば、デュオカルマイシンまたはその類縁体はデュオカルマイシンA、デュオカルマイシンB1、デュオカルマイシンB2、デュオカルマイシンC1、デュオカルマイシンC2、デュオカルマイシンD、デュオカルマイシンSA、CC−1065、アドゼレシン、ビゼレシン、またはカルゼルシンである。
【0330】
Dの他の例としては、米国出願公開第2013−0101546号および米国特許第8,815,226号、および同時継続出願の2014年10月10日に提出された米国仮出願第14/512,316号、2014年5月2日に提出された61/988,011号、および2014年6月11日に提出された62/010,972号に記載のものが挙げられる。これらの開示は、それぞれ、その全内容が本明細書に組み込まれる。
【0331】
いくつかの態様では、抗体に結合させることができるD担持重合体足場材料の数は、遊離システイン残基の数により制限される。いくつかの態様では、本明細書で記載される方法により遊離システイン残基が抗体アミノ酸配列に導入される。本明細書で開示される複合体としては、例えば、1、2、3、または4個の遺伝子操作されたシステインアミノ酸を有する抗体が挙げられる(Lyon, R. et al (2012) Methods in Enzym. 502:123-138)。いくつかの態様では、遺伝子操作を用いずに1個以上の遊離システイン残基が既に抗体内に存在する。この場合、この存在する遊離システイン残基を用いて前記抗体をD担持重合体足場材料に結合させてもよい。いくつかの態様では、1個以上の遊離システイン残基を生成するために、抗体を結合する前にその抗体を還元条件に暴露する。
【0332】
特定の態様では、本明細書で記載される複合体で、式(Ic)で表されるD担持重合体足場材料は、式(Ie)で表される。
【化48】
式中、
PHFの分子量は約2kDa〜約40kDaの範囲であり、
Dの各出現は、独立して、分子量が5kDa以下の治療薬であり、Dとカルボニル基の間の
【化49】
はDのカルボニル基への直接または間接的連結を示し、
XはCH
2、O、またはNHであり、
X
aおよびX
bの一方はHであり、他方は水溶性マレイミド遮断部位である、あるいはX
aおよびX
bは結合した炭素と共に炭素−炭素二重結合を形成し、m
1は1から約140の整数であり、
m
7は1〜約40の整数であり、m
1とm
7の合計は約2〜約180であり、
mは1から約300の整数であり、
m
3aは0〜約17の整数であり、
m
3bは1〜約8の整数であり、m
3aおよびm
3bの合計は1〜18であり、
m、m
1、m
7、m
3a、およびm
3bの合計は約15〜約300の範囲である。
【0333】
特定の態様では、本明細書で記載される複合体で、式(Ie)で表されるD担持重合体足場材料は式(Id)で表される。
【化50】
式中、
X
aおよびX
bの一方はHであり、他方は水溶性マレイミド遮断部位である、あるいはX
aおよびX
bは、結合した炭素と共に炭素−炭素二重結合を形成し、
m
3aは0〜約17の整数であり、
m
3bは1〜約8の整数であり、m
3aおよびm
3bの合計は1〜18であり、
m、m
1、m
2、m
3a、およびm
3bの合計は約15〜約300の範囲である。
【0334】
例えば、m
2とm
3bの比は1:1より大きく、10:1以下である。
【0335】
例えば、m
2とm
3bの比は約9:1、8:1、7:1、6:1、5:1、4:1、3:1、または2:1である。
【0336】
例えば、m
2とm
3bの比は、2:1から8:1である。
【0337】
例えば、m
2とm
3bの比は、約8:1、7:1、6:1、5:1、4:1、3:1、または2:1である。
【0338】
例えば、m
2とm
3bの比は、2:1から4:1である。
【0339】
例えば、m
2とm
3bの比は、約4:1、3:1、または2:1である。
【0340】
例えば、m
2とm
3bの比は、約3:1から5:1である。
【0341】
例えば、m
2とm
3bの比は約3:1、4:1、または5:1である。
【0342】
例えば、式(Id)のPHFの分子量が約2kDa〜約20kDaの範囲である場合、m、m
1、m
2、m
3a、およびm
3bの合計は約15〜約150の範囲であり、m
1は1〜約70の整数であり、m
2は1〜約20の整数であり、m
3aは0〜約9の整数であり、m
3bは1〜約8の整数であり、前記PHFと前記単離HER2抗体またはその抗原結合断片の比率は2〜約8である。
【0343】
例えば、式(Id)のPHFの分子量が約3kDa〜約15kDaの範囲である場合、m、m
1、m
2、m
3a、およびm
3bの合計は約20〜約110の範囲であり、m
1は2〜約50の整数であり、m
2は2〜約15の整数であり、m
3aは0〜約7の整数であり、m
3bは1〜約8の整数であり、前記PHFと前記単離HER2抗体またはその抗原結合断片の比率は2〜約8の整数(例えば、2〜約6の整数または2〜約4の整数)である。
【0344】
例えば、式(Id)のPHFの分子量が約5kDa〜約10kDaの範囲である場合、m、m
1、m
2、m
3a、およびm
3bの合計は約40〜約75の範囲であり、m
1は約2〜約35の整数であり、m
2は約2〜約10の整数であり、m
3aは0〜約4の整数であり、m
3bは1〜約5の整数であり、前記PHFと前記単離HER2抗体またはその抗原結合断片の比率は2〜約8の整数(例えば、2〜約6の整数または2〜約4の整数)である。
【0345】
例えば、前記水溶性マレイミド遮断部位は、マレイミド基が式(II)のチオール含有化合物と反応する際にオレフィンの炭素の2個のうちの1個と共有結合することができる部位である。
R
90−(CH
2)
d−SH
(II)
式中、
R
90はNHR
91、OH、COOR
93、CH(NHR
91)COOR
93、または置換されたフェニル基であり、
R
93は水素またはC
1-4アルキルであり、
R
91は水素、CH
3 or CH
3COであり、かつ
dは1〜3の整数である。
【0346】
例えば、式(II)の水溶性マレイミド遮断化合物は、システイン、N−アセチルシステイン、システインメチエステル、N−メチルシステイン、2−メルカプトエタノール、3−メルカプトプロパン酸、2−メルカプト酢酸、メルカプトメタノール(すなわち、HOCH
2SH)、フェニル基が1個以上の親水性置換基で置換されたベンジルチオール、または3−アミノプロパン−1−チオールであってもよい。フェニル基の1個以上の親水性置換基としては、OH、SH、メトキシ、エトキシ、COOH、CHO、COC
1-4アルキル、NH
2、F、シアノ、SO
3H、PO
3H等が挙げられる。
【0347】
例えば、前記水溶性マレイミド遮断基は−S−(CH
2)
d−R
90であり、ここでR
90はOH、COOH、またはCH(NHR
91)COOR
93であり、
R
93は水素またはCH
3であり、
R
91は水素またはCH
3COであり、かつ
dは1または2である。
【0348】
例えば、前記水溶性マレイミド遮断基は−S−CH
2−CH(NH
2)COOHである。
【0349】
例えば、PHFの分子量が2kDa〜40kDaの範囲(例えば、約2〜20kDa、約3〜15kDa、または約5〜10kDa)である場合、PHFあたりの薬物の数(例えば、m
2)は1〜約40の整数(例えば、約1〜20、約2〜15、約3〜10、または約2〜10)である。この足場材料は、例えば、分子量が40kDa以上(例えば、60kDa以上、80kDa以上、100kDa以上、120kDa以上、140kDa以上、160kDa以上、180kDa以上、または200kDa以上、約40〜200kDa、40〜180kDa、40〜140kDa、60〜200kDa、60〜180kDa、60〜140kDa、80〜200kDa、80〜180kDa、80〜140kDa、100〜200kDa、100〜180kDa、100〜140kDa、または140〜150kDa)の単離抗体またはその抗原結合断片の結合に用いることができる。この態様では、前記単離抗体またはその抗原結合断片のPHFに対する比は、約1:1〜約1:10、約1:1〜約1:9、約1:1〜約1:8、約1:1〜約1:7、約1:1〜約1:6、約1:1〜約1:5、約1:1〜約1:4、約1:1〜約1:3、約1:1〜約1:2、約1:2〜約1:8、約1:2〜約1:6、約1:2〜約1:5、約1:2〜約1:4、約1:2〜約1:3、約1:3〜約1:4、または約1:3〜約1:5である。
【0350】
例えば、PHFの分子量が2kDa〜40kDaの範囲(例えば、約2〜20kDa、約3〜15kDa、または約5〜10kDa)である場合、PHFあたりの薬物の数(例えば、m
2)は1〜約40の整数(例えば、約1〜20、約2〜15、約3〜10、または約2〜10)である。この足場材料は、例えば、分子量が140kDa〜180kDaまたは140kDa〜150kDaの単離抗体またはその抗原結合断片の結合に用いることができる。この態様では、前記単離抗体またはその抗原結合断片のPHFに対する比は、約1:1〜約1:10、約1:1〜約1:9、約1:1〜約1:8、約1:1〜約1:7、約1:1〜約1:6、約1:1〜約1:5、約1:1〜約1:4、約1:1〜約1:3、約1:1〜約1:2、約1:2〜約1:8、約1:2〜約1:6、約1:2〜約1:5、約1:2〜約1:4、約1:2〜約1:3、約1:3〜約1:4、または約1:3〜約1:5である。
【0351】
この範囲の分子量の単離抗体またはその抗原結合断片としては、完全な長さの抗体(例えば、IgG、IgM)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0352】
例えば、PHFの分子量が2kDa〜40kDaの範囲(例えば、約2〜20kDa、または約3〜15kDa、または約5〜10kDa)である場合、PHFあたりの薬物の数(例えば、m
2)は1〜約40の整数(例えば、約1〜20、約2〜15、約3〜10、または2〜10)である。この足場材料は、例えば、分子量が60kDa〜120kDaの単離抗体またはその抗原結合断片の結合に用いることができる。この態様では、前記単離抗体またはその抗原結合断片のPHFに対する比は、約1:1〜約1:10、約1:1〜約1:9、約1:1〜約1:8、約1:1〜約1:7、約1:1〜約1:6、約1:1〜約1:5、約1:1〜約1:4、約1:1〜約1:3、約1:1〜約1:2、約1:2〜約1:8、約1:2〜約1:6、約1:2〜約1:5、約1:2〜約1:4、約1:2〜約1:3、約1:3〜約1:4、または約1:3〜約1:5である。
【0353】
この範囲の分子量の単離抗体またはその抗原結合断片としては、抗体断片(例えば、Fab2、scFcFv、およびラクダ科の動物由来の抗体)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0354】
例えば、PHFの分子量が2kDa〜40kDaの範囲(例えば、約2〜20kDa、約3〜15kDa、または約5〜10kDa)である場合、PHFあたりの薬物の数(例えば、m
2)は1〜約40の整数(例えば、約1〜20、約2〜15、約3〜10、または2〜10)である。この足場材料は、例えば、分子量が40kDa〜80kDaの単離抗体またはその抗原結合断片の結合に用いることができる。この態様では、前記単離抗体またはその抗原結合断片のPHFに対する比は、約1:1〜約1:10、約1:1〜約1:9、約1:1〜約1:8、約1:1〜約1:7、約1:1〜約1:6、約1:1〜約1:5、約1:1〜約1:4、約1:1〜約1:3、約1:1〜約1:2、約1:2〜約1:8、約1:2〜約1:6、約1:2〜約1:5、約1:2〜約1:4、約1:2〜約1:3、約1:3〜約1:4、または約1:3〜約1:5である。
【0355】
この範囲の分子量、すなわち、約40kDa〜約80kDaの単離抗体またはその抗原結合断片としては、抗体断片(例えば、Fab)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0356】
特定の態様では、本明細書で記載される複合体で、式(Ie)で表されるD担持重合体足場材料は、式(If)で表され、ここで、重合体は、分子量が約2kDa〜約40kDaの範囲のPHFである。
【化51】
式中、
mは1から約300の整数であり、
m
1は1から約140の整数であり、
m
2は1から約40の整数であり、
m
3aは0〜約17の整数であり、
m
3bは1〜約8の整数であり、
m
3aおよびm
3bの合計は1〜約18の範囲であり、
m、m
1、m
2、m
3a、およびm
3bの合計は約15〜約300の範囲であり、
末端
【化52】
は、1種以上の重合体足場材料の、ヒトHER2受容体のエピトープに特異的に結合する単離抗体またはその抗原結合断片との連結を示し、アミノ酸配列FTFSSYSMN(配列番号25)を含む重鎖可変領域相補性決定領域1(CDRH1)、アミノ酸配列YISSSSSTIYYADSVKG(配列番号26)を含む重鎖可変領域相補性決定領域2(CDRH2)、アミノ酸配列GGHGYFDL(配列番号27)を含む重鎖可変領域相補性決定領域3(CDRH3)、アミノ酸配列RASQSVSSSYLA(配列番号28)を含む軽鎖可変領域相補性決定領域1(CDRL1)、アミノ酸配列GASSRAT(配列番号21)を含む軽鎖可変領域相補性決定領域2(CDRL2)、およびアミノ酸配列QQYHHSPLT(配列番号29)を含む軽鎖可変領域相補性決定領域3(CDRL3)を含み、かつ
前記PHFと前記抗体の比率は10以下である。
【0357】
式(If)の足場材料は、以下の特徴事項を1つ以上含む。
【0358】
式(If)のPHFの分子量が約2kDa〜約20kDaの範囲である場合、m、m
1、m
2、m
3a、およびm
3bの合計は約15〜約150の範囲であり、m
1は1〜約70の整数であり、m
2は1〜約20の整数であり、m
3aは0〜約9の整数であり、m
3bは1〜約8の整数であり、m
3aおよびm
3bの合計は1〜約10の範囲であり、前記PHFと前記抗体の比率は2〜約8の整数である。
【0359】
式(If)のPHFの分子量が約3kDa〜約15kDaの範囲である場合、m、m
1、m
2、m
3a、およびm
3bの合計は約20〜約110の範囲であり、m
1は2〜約50の整数であり、m
2は2〜約15の整数であり、m
3aは0〜約7の整数であり、m
3bは1〜約8の整数であり、m
3aおよびm
3bの合計は1〜約8の範囲であり、前記PHFと前記抗体の比率は2〜約8の整数(例えば、約2〜約6または約2〜約4)である。
【0360】
式(If)のPHFの分子量が約5kDa〜約10kDaの範囲である場合、m、m
1、m
2、m
3a、およびm
3bの合計は約40〜約75の範囲であり、m
1は約2〜約35の整数であり、m
2は約2〜約10の整数であり、m
3aは0〜約4の整数であり、m
3bは1〜約5の整数であり、m
3aおよびm
3bの合計は1〜約5の範囲であり、前記PHFと前記抗体の比率は2〜約8の整数(例えば、約2〜約6または約2〜約4)である。
【0361】
特定の態様では、オーリスタチンFヒドロキシルプロピルアミド(「AF HPA」)と抗体の比は、約30:1、29:1、28:1、27:1、26:1、25:1、24:1、23:1、22:1、21:1、20:1、19:1、18:1、17:1、16:1、15:1、14:1、13:1、12:1、11:1、10:1、9:1、8:1、7:1、または6:1であってもよい。
【0362】
特定の態様では、AF HPAと前記抗体の比は、約25:1、24:1、23:1、22:1、21:1、20:1、19:1、18:1、17:1、16:1、15:1、14:1、13:1、12:1、11:1、10:1、9:1、8:1、7:1、または6:1であってもよい。
【0363】
他の態様では、AF HPAと前記抗体の比は、約20:1、19:1、18:1、17:1、16:1、15:1、14:1、13:1、12:1、11:1、10:1、9:1、8:1、7:1、または6:1であってもよい。
【0364】
いくつかの態様では、AF HPAと前記抗体の比は、約16:1、15:1、14:1、13:1、12:1、11:1、または10:1であってもよい。
【0365】
いくつかの態様では、AF HPAと前記抗体の比は、約15:1、14:1、13:1、12:1、または11:1であってもよい。
【0366】
いくつかの態様では、AF HPAと前記抗体の比は、約15:1、14:1、13:1、または12:1であってもよい。
【0367】
特定の態様では、PHFと前記抗体の比は、約10:1、9:1、8:1、7:1、6:1、5:1、4:1、3:1、2:1、または1:1であってもよい。
【0368】
特定の態様では、PHFと前記抗体の比は、約8:1、7:1、6:1、5:1、4:1、3:1、または2:1であってもよい。
【0369】
他の態様では、PHFと前記抗体の比は、約6:1、5:1、4:1、3:1、2:1、または1:1であってもよい。
【0370】
他の態様では、PHFと前記抗体の比は、約6:1、5:1、4:1、3:1、または2:1であってもよい。
【0371】
他の態様では、PHFと前記抗体の比は、約6:1、5:1、4:1、または3:1であってもよい。
【0372】
いくつかの態様では、PHFと前記抗体の比は、約5:1、4:1、または3:1であってもよい。
【0373】
いくつかの態様では、PHFと前記抗体の比は、約4:1、3:1、または2:1であってもよい。
【0374】
この範囲の分子量の単離抗体またはその抗原結合断片としては、抗体断片(例えば、Fab)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0375】
抗体−重合体薬物複合体の他の態様は、例えば、米国特許第8,815,226号、および2014年10月10日に提出された米国仮出願第14/512,316号、および2014年5月2日に提出された61/988,011号に記載されている。これらの開示は、それぞれ、その全内容が本明細書に組み込まれる。
【0376】
本発明はまた、重合体担体を有しない抗体またはその抗原結合断片に直接結合することができるように修飾された薬物誘導体、およびその薬物−抗体複合体に関する。
【0377】
いくつかの態様では、前記抗体−薬物複合体は、薬物部位に結合、すなわち共有結合した抗体またはその抗原結合断片を含む。いくつかの態様では、前記抗体またはその抗原結合断片は、リンカー、例えば、非重合体リンカーを介して薬物部位に共有結合している。
【0378】
抗体−薬物複合体(ADC)の薬物部位(D)は、本明細書で定義した細胞毒性または細胞分裂阻害効果を有する任意の化合物、部位、または基を含んでいてもよい。特定の態様では、抗体−薬物複合体(ADC)は、腫瘍細胞を標的する抗体(Ab)、薬物部位薬物部位(D)、およびAbをDに結合するリンカー部位(L)を含む。いくつかの態様では、前記抗体は、1個以上のアミノ酸残基(例えば、リシンおよび/またはシステイン)を介してリンカー部位(L)に結合する。
【0379】
特定の態様では、ADCは式(Ig)で表される。
Ab−(L−D)
p
(Ig)
式中、pは1〜約20である。
【0380】
いくつかの態様では、抗体に結合することができる薬物部位の数は、遊離システイン残基の数により制限される。いくつかの態様では、遊離システイン残基は、本明細書で記載される方法により抗体アミノ酸配列に導入される。式(Ig)のADCとしては、例えば、1、2、3、または4個の遺伝子操作されたシステインアミノ酸を有する抗体(Lyon, R. et al (2012) Methods in Enzym. 502:123-138)が挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの態様では、遺伝子操作を用いずに1個以上の遊離システイン残基が既に抗体に存在している。この場合、存在する遊離システイン残基を用いて前記抗体を薬物に結合させてもよい。いくつかの態様では、1個以上の遊離システイン残基を生成するために、抗体を結合させる前にその抗体を還元条件に暴露する。
【0381】
いくつかの態様では、前記「リンカー」(L)は、1個以上の薬物部位(D)を抗体(Ab)に結合して式(Ig)の抗体−薬物複合体(ADC)を形成するのに用いることができる二官能または多官能部位である。いくつかの態様では、抗体−薬物複合体(ADC)は、前記薬物および前記抗体に共有結合するための反応性官能基を有するリンカーを用いて作製してもよい。例えば、ある態様では、抗体(Ab)のシステインチオールは、リンカーまたは薬物−リンカー中間体の反応性官能基と結合を形成してADCを作製することができる。
【0382】
一側面では、リンカーは、抗体に存在する遊離システインと反応して共有結合を形成することができる官能基を有する。このような反応性官能基としては、例えば、マレイミド、ハロアセトアミド、α−ハロアセチル、活性化エステル(例えば、コハク酸イミドエステル、4−ニトロフェニルエステル、ペンタフルオロフェニルエステル、テトラフルオロフェニルエステルなど)、無水物、酸塩化物、スルホニル塩化物、イソシアン酸塩、およびイソチオシアン酸塩が挙げられるが、これらに限定されない。例えば、Klussman, et al (2004), Bioconjugate Chemistry 15(4):765-773の766ページの接合方法、および本明細書の実施例を参照のこと。
【0383】
いくつかの態様では、リンカーは、抗体に存在する求電子性基と反応することができる官能基を有する。そのような求電子性基としては、例えば、アルデヒド基およびケトンカルボニル基が挙げられる。いくつかの態様では、リンカーの反応性官能基のヘテロ原子は、抗体の求電子性基と反応して、抗体単位と共有結合を形成することができる。このような反応性官能基としては、例えば、ヒドラジド、オキシム、アミノ、ヒドラジン、チオセミカルバゾン、ヒドラジンカルボキシラート、およびアリールヒドラジドが挙げられるが、これらに限定されない。
【0384】
リンカーは1種以上のリンカー成分を含んでいてもよい。リンカー成分としては、例えば6−マレイミドカプロイル(「MC」)、マレイミドプロパノイル(「MP」)、バリン−シトルリン(「val−cit」または「vc」)、アラニン−フェニルアラニン(「ala−phe」)、p−アミノベンジルオキシカルボニル(「PAB」)、4−(2−ピリジルチオ)ペンタン酸N−スクシンイミジル(「SPP」)、およびカルボン酸4−(N−マレイミドメチル)シクロヘキサン−1(「MCC」)が挙げられる。様々なリンカー成分が当該分野で周知であり、そのうちのいくつかについては以下で記述する。
【0385】
リンカーは、薬物の放出を促進する「開裂可能なリンカー」であってもよい。そのような開裂可能なリンカーとしては、例えば、(例えば、ヒドラゾンを含む)酸に不安定なリンカー、タンパク質分解酵素に高感度の(例えば、ペプチダーゼに高感度の)リンカー、光解離性リンカー、またはジスルフィド含有リンカー(Chari et al., Cancer Research 52:127-131 (1992); 米国特許第5,208,020号)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0386】
特定の態様では、リンカーは以下の式(IIg)で表される。
−A
a−W
w−Y
y
(IIg)
式中、
Aは「伸長単位」であり、aは0〜1の整数であり、
Wは「アミノ酸単位」であり、wは0〜12の整数であり、
Yは「スペーサー単位」であり、yは0、1、または2の整数である。式(IIg)のリンカーを含むADCは、式I(A):Ab−(Aa−Ww−Yy−D)pで表され、式中Ab、D、およびpは、上述の式(Ig)で定義されたとおりである。そのようなリンカーの例示的態様は、米国特許第7,498,298号(その全内容は、参照により本明細書に組み込まれる)に記載されている。
【0387】
いくつかの態様では、リンカー成分は、抗体を他のリンカー成分または薬物部位に結合させる「伸長単位」(A)を含む。伸長単位の非限定的例を以下に示す(式中、波線は抗体、薬物、または追加のリンカー成分との共有結合部位を示す)。
【化53】
【0388】
いくつかの態様では、リンカー成分は「アミノ酸単位」(W)を含む。そのようないくつかの態様では、アミノ酸単位により、リンカーをタンパク質分解酵素で開裂させることができる。これにより、細胞内タンパク質分解酵素(例えば、リソソーム酵素)に暴露すると免疫複合体から薬物が容易に放出される(Doronina et al. (2003) Nat. Biotechnol. 21:778-784)。アミノ酸単位としては、例えばジペプチド、トリペプチド、テトラペプチド、およびペンタペプチドが挙げられるが、これらに限定されない。ジペプチドとしては、例えばバリン−シトルリン(vcまたはval−cit)、アラニン−フェニルアラニン(afまたはala−phe)、フェニルアラニン−リシン(fkまたはphe−lys)、フェニルアラニン−ホモリシン(phe−homolys)、およびN−メチル−バリン−シトルリン(Me−val−cit)が挙げられるが、これらに限定されない。トリペプチドとしては、例えばグリシン−バリン−シトルリン(gly−val−cit)、およびグリシン−グリシン−グリシン(gly−gly−gly)が挙げられるが、これらに限定されない。アミノ酸単位は、天然に出現するアミノ酸残基、および/または小さいアミノ酸、および/または非天然出現アミノ酸類縁体(例えば、シトルリン)を含んでいてもよい。アミノ酸単位は、特定の酵素(例えば、腫瘍に関連づけられたタンパク質分解酵素、カテプシンB、C、およびD、またはプラスミンタンパク質分解酵素)による酵素開裂に最適であるように設計することができる。
【0389】
通常、ペプチド型リンカーは、2個以上のアミノ酸および/またはペプチド断片のペプチド結合を形成して作製することができる。このようなペプチド結合は、例えば、液相合成方法(例えば、E. Schrider and K. Lubke (1965) “The Peptides”, volume 1, pp 76-136, Academic Press)によって形成することができる。
【0390】
いくつかの態様では、リンカー成分は、直接または伸長単位および/またはアミノ酸単位を介して前記抗体を薬物部位に結合する「スペーサー」単位を含む。スペーサー単位は「自己犠牲型」または「非自己犠牲型」であってもよい。「非自己犠牲型」スペーサー単位は、ADCの開裂時にスペーサー単位の一部または全部が薬物部位に結合したまま残る。非自己犠牲型スペーサー単位としては、例えば、グリシンスペーサー単位およびグリシン−グリシンスペーサー単位が挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの態様では、グリシン−グリシンスペーサー単位を含むADCが腫瘍細胞に関連づけられたタンパク質分解酵素によって酵素開裂されると、ADCの残部からグリシン−グリシン−薬物部位が放出される。いくつかのそのような態様では、グリシン−グリシン−薬物部位は、腫瘍細胞内で加水分解され、それにより前記薬物部位からグリシン−グリシンスペーサー単位が開裂する。
【0391】
「自己犠牲型」スペーサー単位は、薬物部位の放出を可能にする。特定の態様では、リンカーのスペーサー単位はp−アミノベンジル単位を含む。いくつかのそのような態様では、p−アミノベンジルアルコールはアミド結合を介してアミノ酸単位に結合され、ベンジルアルコールと前記薬物の間でカルバミン酸塩、メチルカルバミン酸塩、またはカルボン酸塩が形成される(Hamann et al. (2005) Expert Opin. Ther. Patents (2005) 15:1087-1103)。いくつかの態様では、前記スペーサー単位はp−アミノベンジルオキシカルボニル(PAB)を含む。いくつかの態様では、自己犠牲型リンカーを含むADCは以下の構造を有する。
【化54】
式中、
Qは−C
1−C
8アルキル、−O−(C
1−C
8アルキル)、ハロゲン、ニトロ、またはシアノであり、
n
6は0〜4の整数であり、
X
aは、1つ以上の追加のスペーサー単位であってもよく、あるいはなくてもよく、かつ
pは1〜約20の整数である。
【0392】
いくつかの態様では、pは1〜10、1〜7、1〜5、または1〜4の整数である。非限定的例として、X
aスペーサー単位は以下のものを含む。
【化55】
式中、R
101およびR
102は、独立して、HおよびC
1−C
6アルキルから選択される。いくつかの態様では、R
101およびR
102はそれぞれ−CH
3である。
【0393】
他の自己犠牲型スペーサーの例としては、PABに電子的に類似した芳香族化合物(例えば、2−アミノイミダゾール−5−メタノール誘導体(米国特許第7,375,078号、Hay et al. (1999) Bioorg. Med. Chem. Lett. 9:2237)、およびオルトまたはパラアミノベンジルアセタールが挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの態様では、置換および無置換の4−アミノ酪酸アミド(Rodrigues et al (1995) Chemistry Biology 2:223)、適切に置換されたビシクロ[2.2.1]環系およびビシクロ[2.2.2]環系(Storm et al (1972) J. Amer. Chem. Soc. 94:5815)、および2−アミノフェニルプロピオン酸アミド(Amsberry, et al (1990) J. Org. Chem. 55:5867)などのアミド結合の加水分解時に環化するスペーサーを用いてもよい。ADCに有用な可能性がある自己犠牲型スペーサーのその他の例としては、グリシン残基のα−炭素に薬物が結合したものが挙げられる(Kingsbury et al (1984) J. Med. Chem. 27:1447)。
【0394】
いくつかの態様では、リンカーLは分岐多官能リンカー部位を介して2個以上の薬物部位を抗体に共有結合するための樹状リンカーであってもよい(Sun et al (2002) Bioorganic & Medicinal Chemistry Letters 12:2213-2215; Sun et al (2003) Bioorganic & Medicinal Chemistry 11:1761-1768)。樹状リンカーは、薬物の抗体に対するモル比、すなわち充填量(ADCの有効性に関連する)を高めることができる。したがって、抗体が反応性システインチオール基を1個のみ有する場合は、樹状リンカーを介して多数の薬物部位を結合させてもよい。
【0395】
式(Ig)で表されるADCのリンカーの非限定的例を以下に示す。
【化56】
式中、R
101およびR
102は、独立して、HおよびC
1−C
6アルキルから選択され、
n
5は0〜12の整数である。
【0396】
いくつかの態様では、nは2〜10の整数である。いくつかの態様では、nは4〜8の整数である。
【0397】
いくつかの態様では、R
101およびR
102は、それぞれ−CH
3である。
【0398】
さらに、非限定的例としてのADCは、以下の構造を含む。
【化57】
式中、Xaは
【化58】
であり、
Yは
【化59】
であり、
各R
103は、独立して、HまたはC
1−C
6アルキルであり、n7は1〜12の整数である。
【0399】
いくつかの態様では、リンカーは、溶解度および/または反応性を調節する基で置換されている。非限定的例として、電荷を帯びた置換基(例えば、スルホン酸塩(−SO
3-))またはアンモニウムは、リンカー試薬の水に対する溶解度を高めて、リンカー試薬と抗体および/または薬物部位との結合反応を容易にする可能性がある。あるいは、ADCの作製に用いられる合成経路に応じて、Ab−L(抗体−リンカー中間体)とDまたはD−L(薬物−リンカー中間体)とAbの結合反応を容易にする可能性がある。いくつかの態様では、前記リンカーの一部は、前記抗体に結合し、前記リンカーの別の一部は薬物に結合し、次いで前記Ab−(リンカー部分)
aは薬物−(リンカー部分)
bに結合して、式(Ig)のADCを形成する。
【0400】
本明細書で開示される化合物は、以下のリンカー試薬を用いて作製されるADCを明らかに企図するものであるが、これらに限定されない。前記リンカー試薬は、ビスマレイミド−トリオキシエチレングリコール(BMPEO)、N−(β−マレイミドプロピルオキシ)−N−ヒドロキシコハク酸イミドエステル(BMPS)、N−(ε−マレイミドカプロイルオキシ)コハク酸イミドエステル(EMCS)、N−[γ−マレイミドブチリルオキシ]コハク酸イミドエステル(GMBS)、1,6−ヘキサン−ビス(ビニルスルホン)(HBVS)、4−(N−マレイミドメチル)シクロヘキサン−1−カルボキシ−(6−アミドカプロン酸)スクシンイミジル(LC−SMCC)、m−マレイミドベンゾイル−N−ヒドロキシコハク酸イミドエステル(MBS)、4−(4−N−マレイミドフェニル)酪酸ヒドラジド(MPBH)、3−(ブロモアセトアミド)プロピオン酸スクシンイミジル(SBAP)、ヨード酢酸スクシンイミジル(SIA)、(4−ヨードアセチル)アミノ安息香酸スクシンイミジル(SIAB)、3−(2−ピリジルジチオ)プロピオン酸N−スクシンイミジル(SPDP)、4−(2−ピリジルチオ)ペンタン酸N−スクシンイミジル(SPP)、4−(N−マレイミドメチル)シクロヘキサン−1−カルボン酸スクシンイミジル(SMCC)、4−(p−マレイミドフェニル)酪酸スクシンイミジル(SMPB)、6−[(β−マレイミドプロピオンアミド)ヘキサン酸]スクシンイミジル(SMPH)、イミノチオラン(IT)、スルホ−EMCS、スルホ−GMBS、スルホ−KMUS、スルホ−MBS、スルホ−SIAB、スルホ−SMCC、およびスルホ−SMPB、および(4−ビニルスルホン)安息香酸スクシンイミジル(SVSB)である。また、以下のビスマレイミド試薬を含む:ジチオビスマレイミドエタン(DTME)、1,4−ビスマレイミドブタン(BMB)、1,4−ビスマレイミジル−2,3−ジヒドロキシブタン(BMDB)、ビスマレイミドヘキサン(BMH)、ビスマレイミドエタン(BMOE)、BM(PEG)
2(以下に示す)、およびBM(PEG)
3(以下に示す);イミドエステルの二官能誘導体(例えば、アジプイミド酸ジメチルHCl)、活性エステル(例えば、スベリン酸ジスクシンイミジル)、アルデヒド(例えば、グルタルアルデヒド)、ビスアジド化合物(例えば、ビス−(p−アジドベンゾイル)ヘキサンジアミン)、ビスジアゾニウム誘導体(例えば、ビス−(p−ジアゾニウムベンゾイル)−エチレンジアミン)、二イソシアン酸(例えば、2,6−イソシアン酸トルエン)、およびビス活性フッ素化合物(例えば、1,5−ジフルオロ−2,4−ジニトロベンゼン)。いくつかの態様では、ビスマレイミド試薬により、抗体中のシステインのチオール基をチオール含有薬物部位、リンカー、またはリンカー−薬物中間体に結合することができる。チオール基との反応性を有する他の官能基としては、ヨードアセトアミド、ブロモアセトアミド、ビニルピリジン、ジスルフィド、ピリジルジスルフィド、イソシアン酸塩、およびイソチオシアン酸塩が挙げられるが、これらに限定されない。
【化60】
【0401】
特定の有用なリンカー試薬は、様々な商業的供給源(例えば、Pierce Biotechnology, Inc.(イリノイ州ロックフォード)、Molecular Biosciences Inc.(コロラド州ボルダー)から得てもよい。あるいは、Toki et al (2002) J. Org. Chem. 67:1866-1872; Dubowchik, et al. (1997) Tetrahedron Letters, 38:5257-60; Walker, M. A. (1995) J. Org. Chem. 60:5352-5355; Frisch et al (1996) Bioconjugate Chem. 7:180-186; 米国特許公開第6,214,345号、WO02/088172、US2003130189、US2003096743、WO03/026577、WO03/043583、およびWO04/032828など、当該分野で記載の方法により製造してもよい。
【0402】
放射性ヌクレオチドを抗体に接合するためのキレート剤としては、炭素14で標識したトリアミン五酢酸1−イソチオシアナトベンジル−3−メチルジエチレン(MX−DTPA)が挙げられる。例えば、WO94/11026を参照のこと。
HER2抗体複合体の作製方法
【0403】
特定の態様では、前記複合体はいくつかの工程で形成される。これらの工程は、(1)薬物またはその誘導体の官能基と反応することができる官能基を含むように重合体を修飾すること、(2)前記薬物が前記重合体に結合するように修飾済み重合体を前記薬物またはその誘導体と反応させること、(3)前記重合体が単離抗体、その抗原結合断片、またはその誘導体の官能基と反応することができる官能基を含むように前記重合体−薬物複合体を修飾すること、および(4)前記修飾済み重合体−薬物複合体を前記抗体またはその抗原結合断片と反応させて本明細書で開示される複合体を形成することを含む。工程(1)で生成された修飾済み重合体が抗体またはその抗原結合断片の官能基と反応することができる官能基を含む場合は工程(3)を省いてもよい。
【0404】
他の態様では、前記複合体はいくつかの工程で形成される。これらの工程は、(1)重合体が第一の薬物またはその誘導体の官能基と反応することができる官能基を含むように前記重合体を修飾すること、(2)前記第一の薬物が前記重合体に結合するように修飾済み重合体を前記第一の薬物またはその誘導体と反応させること、(3)第二の薬物またはその誘導体の官能基と反応することができる別の官能基を含むように前記重合体−薬物複合体を修飾すること、(4)前記第二の薬物が前記重合体−薬物複合体に結合するように前記修飾済み重合体−薬物複合体と前記第二の薬物またはその誘導体を反応させること、(5)前記重合体が前記抗体またはその抗原結合断片の官能基と反応することができる官能基を含むように、2種類の異なる薬物を含む重合体−薬物複合体を修飾すること、および(6)工程(5)の修飾済み重合体−薬物複合体を単離抗体、その抗原結合断片、またはその誘導体と反応させて本明細書で開示される複合体を形成することを含む。2種類の異なる単離抗体、その抗原結合断片、またはその誘導体を接合して2種類の異なる薬物および2種類の異なる抗体またはその抗原結合断片を含む重合体−薬物複合体を形成する場合は、工程(5)および(6)を繰り返してもよい。
【0405】
他の態様では、前記複合体はいくつかの工程で形成される。これらの工程は、(1)薬物またはその誘導体の官能基と反応することができる官能基を含むように重合体を修飾すること、(2)抗体またはその抗原結合断片の官能基と反応することができる官能基を含むように前記重合体をさらに修飾すること、(3)前記薬物が前記重合体に結合するように前記修飾済み重合体を前記薬物またはその誘導体と反応させること、および(4)前記修飾済み重合体−薬物複合体を前記抗体またはその抗原結合断片と反応させて本明細書で開示される複合体を形成することを含む。工程(1)および(2)の順序または工程(3)および(4)の順序は入れ替えてもよい。さらに、修飾済み重合体が前記薬物またはその誘導体の官能基および前記抗体またはその抗原結合断片の官能基の両方と反応することができる官能基を含む場合は、工程(1)または工程(2)のいずれかを省いてもよい。
【0406】
他の態様では、前記複合体はいくつかの工程で形成される。これらの工程は、(1)第一の薬物またはその誘導体の官能基と反応することができる官能基を含むように重合体を修飾すること、(2)抗体またはその抗原結合断片の官能基と反応することができる官能基を含むように重合体をさらに修飾すること、(3)前記第一の薬物が前記重合体に結合するように前記修飾済み重合体を前記第一の薬物またはその誘導体と反応させること、(4)第二の薬物またはその誘導体の官能基と反応することができる別の官能基を含むように重合体−薬物複合体を修飾すること、(5)前記第二の薬物が前記重合体−薬物複合体に結合するように前記修飾済み重合体−薬物複合体を前記第二の薬物またはその誘導体と反応させること、および(6)2種類の異なる薬物を含む修飾済み重合体−薬物複合体を前記単離抗体、その抗原結合断片、または誘導体と反応させて本明細書で開示される複合体を形成することを含む。2種類の異なる単離抗体、その抗原結合断片、またはその誘導体を接合して、2種類の異なる薬物および2種類の異なる抗体またはその抗原結合断片を含む重合体−薬物複合体を形成する場合は、工程(6)を繰り返してもよい。前記修飾済み重合体が2種類の異なる薬物またはその誘導体の2個の異なる官能基を含むように、工程(4)を工程(1)の後に行ってもよい。この態様では、2種類の異なる薬物またはその誘導体と反応することができる2個の異なる官能基を含む修飾済み重合体を2種類の異なる薬物(工程(3)および工程(5))または抗体またはその抗原結合断片(工程(6))のいずれかと反応させる前に、前記抗体またはその抗原結合断片の官能基と反応することができる官能基を含むように前記修飾済み重合体をさらに修飾してもよい。
【0407】
特定の例示的態様では、本明細書で開示される複合体は、生物医学用途(例えば、薬物送達および組織工学)で用いられ、前記重合体担体は生体適合性および生分解性を有する。特定の態様では、前記担体は溶解性重合体、ナノ粒子、ゲル、リポソーム、ミセル、縫合、移植片、などである。特定の態様では、用語「溶解性重合体」は、生分解性生体適合性重合体、例えば、ポリアール(例えば、親水性ポリアセタールまたはポリケタール)を包含する。特定の他の態様では、前記担体は、全合成重合体、半合成重合体、または天然に出現する重合体である。特定の他の態様では、前記担体は親水性である。本明細書で開示される複合体を作製するのに好適な重合体担体の例は、米国特許第8,815,226号に記載されており、その全内容が参照により本明細書に組み込まれる。
【0408】
一態様では、前記重合体担体は式(IV)の単位を含む。
【化61】
式中、X’は重合体主鎖の水酸基の置換基を示す。式(IV)および本明細書で記載される他の式で示されるように、各ポリアセタール単位は、グリセリン部位に結合した1個の水酸基およびグリコールアルデヒド部位に結合したX’基を有する。これは簡便さのためのみであり、式(IV)および本明細書で記載される他の式の単位を有する重合体は、グリコールアルデヒド部位に結合したX’基(またはマレイミド末端を含むリンカーなど、他の置換基)を有する単位、グリセリン部位に結合した単一のX’基(またはマレイミド末端を含むリンカーなど、他の置換基)を有する単位、および一方がグリコールアルデヒド部位に結合し、他方がグリセリン部位に結合した2個のX’基(またはマレイミド末端を含むリンカーなど、他の置換基)を有する単位の無作為な分布を含む可能性があると解釈すべきである。
【0409】
一態様では、本発明を実行するのに好適な生分解性生体適合性ポリアールの分子量は、約0.5〜約300kDaである。例えば、生分解性生体適合性ポリアールの分子量は、約1〜約300kDa(例えば、約1〜約200kDa、約2〜約300kDa、約2〜約200kDa、約5〜約100kDa、約10〜約70kDa、約20〜約50kDa、約20〜約300kDa、約40〜約150kDa、約50〜約100kDa、約2〜約40kDa、約6〜約20kDa、または約8〜約15kDa)である。例えば、本明細書で開示される重合体足場材料または複合体に用いられる生分解性生体適合性ポリアールは、分子量が約2〜約40kDa(例えば、約2〜20kDa、3〜15kDa、または5〜10kDa)のPHFである。
【0410】
修飾剤に接合するのに好適な重合体担体(例えば、生体適合性生分解性重合体担体)を調製する方法は当該分野で周知である。例えば、米国特許第5,811,510号、5,863,990号、5,958,398号、7,838,619号、7,790,150号、および8,685,383号に合成の指針が見いだせる。これらの方法を用いて本発明の実行に用いる重合体担体を作製する方法は当業者には自明である。
【0411】
一態様では、本発明の生分解性生体適合性ポリアール複合体を形成する方法は、好適な多糖を効率的な量のグリコールに特異的な酸化剤と結合させてアルデヒド中間体を形成する過程を含む。アルデヒド中間体はポリアールそのものであるが、これを対応するポリオールに還元して、コハク酸化し、1種以上の好適な修飾剤を結合させて、スクシンアミド含有結合を含む生分解性生体適合性ポリアール複合体を形成してもよい。
【0412】
他の好ましい態様では、本発明で用いられる全合成生分解性生体適合性ポリアールは、好適な開始剤を好適な前駆体化合物と反応させて調製することができる。
【0413】
例えば、完全合成ポリアールは、保護された置換ジオールでビニルエーテルを縮合して調製してもよい。開環重合など、他の方法を用いてもよい。その場合は、その方法の有効性は置換度および保護基の嵩高さに依存することがある。
【化62】
【0414】
当業者には自明であるが、溶媒系、触媒、および他の因子を最適にして高分子量生成物を得てもよい。
【0415】
特定の態様では、前記担体はPHFである。
【0416】
複数の態様では、前記重合体担体は、多分散指数(PDI)が1.5以下(例えば、<1.4、<1.3、<1.2、または<1.1)のPHFである。
【0417】
例えば、分子量が40kDa〜200kDaの単離抗体またはその抗原結合断片を接合するために、足場材料の重合体担体は、ポリアセタール、例えば、分子量(すなわち、非修飾PHFのMW)が約2kDa〜約40kDa(例えば、約2〜20kDa、または約3〜15kDa、または約5〜10kDa)の範囲のPHFである。
【0418】
例えば、分子量が40kDa〜80kDaの抗体またはその抗原結合断片を接合するために、本明細書で開示される足場材料の重合体担体はポリアセタール、例えば、分子量(すなわち、非修飾PHFのMW)が約2kDa〜約40kDa(例えば、約2〜20kDa、または約3〜15kDa、または約5〜10kDa)の範囲のPHFである。例えば、前記PHFの分子量は、約5kDa、6kDa、7kDa、8kDa、9kDa、10kDa、11kDa、12kDa、13kDa、14kDa、または15kDaである。
【0419】
この範囲の分子量の抗体またはその抗原結合断片としては、例えば、抗体断片(例えば、Fab)が挙げられるが、これに限定されない。
【0420】
例えば、分子量が60kDa〜120kDaの抗体またはその抗原結合断片を接合するために、本明細書で開示される足場材料の重合体担体はポリアセタール、例えば、分子量(すなわち、非修飾PHFのMW)が約2kDa〜約40kDa(例えば、約2〜20kDa、または約3〜15kDa、または約5〜10kDa)の範囲のPHFである。例えば、前記PHFの分子量は、約5kDa、6kDa、7kDa、8kDa、9kDa、10kDa、11kDa、12kDa、13kDa、14kDa、または15kDaである。
【0421】
この範囲の分子量の抗体またはその抗原結合断片としては、例えば、ラクダ科の動物由来の抗体、Fab2、scFvFcなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0422】
例えば、分子量が140kDa〜180kDaまたは140kDa〜150kDaの抗体またはその抗原結合断片を接合するために、本明細書で開示される足場材料の重合体担体はポリアセタール、例えば、分子量(すなわち、非修飾PHFのMW)が約2kDa〜約40kDa(例えば、約2〜20kDa、または約3〜15kDa、または約5〜10kDa)の範囲のPHFである。例えば、前記PHFの分子量は、約5kDa、6kDa、7kDa、8kDa、9kDa、10kDa、11kDa、12kDa、13kDa、14kDa、または15kDaである。
【0423】
この範囲の分子量の抗体またはその抗原結合断片としては、例えば、完全な長さの抗体(例えば、IgG、IgM)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0424】
本明細書で開示される生分解性生体適合性複合体は、所望の要件である生分解性および親水性を満たすように調製することができる。例えば、生理学的条件で生分解性と安定性のバランスをとってもよい。例えば、特定の閾値(一般に、分子の物理形状に応じて40〜100kDa超)を超える分子量を有する分子は、小分子とは異なり、腎臓から排出されず、細胞による吸収および細胞内区画(とりわけ、リソソーム)での分解によってのみ体から除去することができることが周知である。この観察は、一般的な生理条件(pH=7.5±0.5)およびリソソームのpH(pHは5付近)での安定性を調節して機能的に安定した生分解性材料をどのように設計するかという可能性を例示している。例えば、アセタールおよびケタール群の加水分解は酸によって触媒されることが分かっており、したがって、一般に、ポリアールは、例えば血漿中に比べて酸性のリソソーム環境では不安定になる。例えば、37℃のpH=5およびpH=7.5の水性溶媒中での重合体の分解データを比較し、通常の生理的環境および細胞による吸収後の「消化作用を持つ」リソソーム区画での重合体の安定性の予測バランスを決定する試験を設計してもよい。このような試験での重合体の完全性は、例えば、サイズ排除HPLCにより測定してもよい。当業者であれば、本明細書で開示される分解した複合体の様々な断片を調べるための他の好適な方法を選択することができる。
【0425】
pH=7.5での重合体の有効サイズが1日から7日間、検出可能な程に変化せず、少なくとも数週間は元のサイズの50%以内をとどめることが好ましい場合が多い。一方、pH=5では、重合体は1日から5日かけて検出可能な程度に分解されて、2週間から数ヶ月以内に低分子量断片に完全に変換されることが好ましい。分解が速いほうが好ましい場合もあるが、一般に、重合体は、細胞内で細胞による重合体断片の代謝速度または排出速度を超えない速度で分解することがより望ましい場合がある。したがって、特定の態様では、本発明の複合体は、特に細胞による吸収時に生分解性であり、生物系に関して比較的「不活性」であることが期待される。担体の分解物は、電荷を帯びておらず、環境のpHを大きく変化させないことが好ましい。多量のアルコール群は、細胞受容体、特に食細胞の細胞受容体による重合体の認識率を低下させる場合があることが提案されている。本発明の重合体主鎖は、一般に、(例えば数種の多糖およびポリペプチドに特徴的な)エピトープをほとんど含まず、一般に、鍵穴が望ましくなければ生体内で「鍵と鍵穴」型の相互作用に関与することができる固定した構造を含まない。したがって、本明細書で開示される可溶性架橋固体複合体は、毒性および生体付着性が低いと予測され、いくつかの生物医学用途に好適なものとなっている。
【0426】
本発明の特定の態様では、生分解性生体適合性複合体は、線状または分岐構造を形成していてもよい。例えば、本発明の生分解性生体適合性ポリアール複合体は対掌性(光学的に活性)であってもよい。必要なら本発明の生分解性生体適合性ポリアール複合体はスケールミック(scalemic=異なった比率のエナンチオマーの混合物)であってもよい。
【0427】
特定の態様では、本明細書で開示される複合体は水溶性である。特定の態様では、本明細書で開示される複合体は水不溶性である。特定の態様では、本発明の複合体は固体の形態である。特定の態様では、本明細書で開示される複合体はコロイドである。特定の態様では、本明細書で開示される複合体は粒子の形態である。特定の態様では、本明細書で開示される複合体はゲルの形態である。
【0428】
以下のスキーム1は、本明細書で開示される重合体薬物足場材料を作製するための合成スキームを示す。一態様では、前記複合体はいくつかの工程で形成される。これらの工程は、(1)COOH部位(例えば、−C(O)−X−(CH
2)
2−COOH)を含むように重合体PHFを修飾すること、(2)PBRMの官能基と反応することができるマレイミド部位(例えば、EG2−MI)を含むように前記重合体をさらに修飾すること、(3)2個の異なる官能基を含む修飾済み重合体を薬物またはその誘導体(例えば、AF−HPA−Ala)の官能基と反応させて、重合体−薬物複合体を形成すること、(4)PBRMのジスルフィド結合を還元すること、(5)還元されたPBRMを重合体−薬物複合体と反応させて生分解性タンパク質−重合体−薬物複合体を形成すること、および(6)残ったマレイミド部位を任意でマレイミド遮断化合物(例えば、システイン)と反応させることを含む。
【0429】
他の態様では、工程(2)および(3)の順序は、以下のスキーム1の右側の経路に示すように、逆にしてもよい。
【化63】
【化64】
【0430】
他の態様では、上記の工程(2)および(3)は、以下のスキーム2で示すように同時に行われる。
【化65】
【化66】
【0431】
HER2に対する抗体の使用
自明であるが、本発明による治療物質の投与は、配合物に組み込んで輸送、送達、耐性などを向上させるのに好適な担体、賦形剤、およびその他の薬剤を用いて行われる。多数の適切な配合物が、すべての医薬化学者に周知の処方で見いだせる:Remington's Pharmaceutical Sciences(レミントンの医薬品の科学)(15th ed, Mack Publishing Company, Easton, PA (1975))、特にBlaug, Seymourによる87章。これら配合物としては、粉末、ペースト、軟膏、ゼリー、ワックス、オイル、脂質、媒体を含む(陽イオン性または陰イオン性)脂質(例えば、リポフェクチン(登録商標))、DNA複合体、無水吸収ペースト、水中油乳液および油中水乳液、乳化カーボワックス(様々な分子量のポリエチレングリコール)、半固体ゲル、およびカーボワックスを含む半固体混合物などが挙げられる。配合物の薬効成分が配合物によって非活性化されず、配合物が生理的に相溶性であり、投与経路での耐性があれば、上記の混合物のいずれも本発明による処置および治療で適切なものであり得る。また、Baldrick P. “Pharmaceutical excipient development: the need for preclinical guidance.(医薬賦形剤の開発:臨床前指針の必要性)" Regul. Toxicol Pharmacol. 32(2):210-8 (2000), Wang W. “Lyophilization and development of solid protein pharmaceuticals.(固形タンパク質薬剤の凍結乾燥と開発)" Int. J. Pharm. 203(1-2):1-60 (2000), Charman WN “Lipids, lipophilic drugs, and oral drug delivery-some emerging concepts.(脂質、親油性薬物と、経口薬物送達―新概念)" J Pharm Sci. 89(8):967-78 (2000), Powell et al. “Compendium of excipients for parenteral formulations(非経口投与製剤のための賦形剤の概要)" PDA J Pharm Sci Technol. 52:238-311 (1998)、および医薬化学者に周知のの配合物、賦形剤、および担体に関するさらなる情報については本明細書の引用文献を参照のこと。
【0432】
一態様では、本明細書で開示されるモノクローナル抗体、その断片、および/またはその複合体は治療薬として用いてもよい。一般に、このような薬剤を用いて、例えば、対象のHER2の異常活性および/または異常発現に関連づけられた病気または病状の進行を診断、予知、監視、治療、軽減、予防、および/または遅延してもよい。治療計画は、HER2の異常活性および/または異常発現に関連づけられた病気または障害(例えば、癌)を患っている(あるいはその発症の危険性を有する)対象、例えば、ヒト患者を標準的な方法を用いて同定して実行される。抗体製剤、好ましくは標的抗原に対する高い特異性と高い親和性を有する抗体製剤は、対象に投与され、一般にその標的との結合による効果を有する。抗体を投与して、標的の信号伝達機能を無効化、阻害、または干渉してもよい。抗体を投与して、天然に結合する内因性リガンドと標的との結合を無効化、阻害、または干渉してもよい。例えば、抗体は、標的に結合して、HER2活性および/または発現を調節、遮断、阻害、低減、拮抗、中和、または干渉する。
【0433】
HER2の異常活性および/または異常発現に関する病気または障害としては、癌が挙げられるが、これに限定されない。標的の癌は、肛門癌、星状細胞腫、白血病、リンパ腫、頭部および頸部癌、肝臓癌、精巣癌、頸部癌、肉腫、血管腫、食道癌、眼癌、喉頭癌、口癌、中皮腫、皮膚癌、骨髄腫、口腔癌、直腸癌、咽喉癌、膀胱癌、乳癌、子宮癌、卵巣癌、前立腺癌、肺癌、大腸癌、膵臓癌、腎臓癌、または胃癌であってもよい。
【0434】
他の側面では、病気または障害は乳癌、胃癌、非小細胞肺癌(NSCLC)、および卵巣癌からなる群から選ばれる癌である。
【0435】
一般に、病気または障害の緩和または治療は、その病気または障害に関連づけられた1つ以上の症状または医学的問題を低減することを含む。例えば、癌の場合、薬物の治療有効量は、以下のことの1つ、あるいは組み合わせを達成することができる。すなわち、癌細胞数の減少、腫瘍サイズの低下、周辺臓器への癌細胞の浸潤の阻害(すなわち、ある程度の減少および/または停止)、腫瘍の転移の阻害、ある程度の腫瘍の成長の阻害、および/または癌に関連づけられた症状の1つ以上のある程度の緩和である。いくつかの態様では、本明細書で開示される組成物を用いて対象の病気または障害の発症または再発を予防してもよい。
【0436】
本明細書で開示される抗体、その断片、および/またはその複合体の治療有効量は、一般に、治療目的を達成するのに必要な量に関する。上述のように、これは、抗体と標的抗原との結合相互作用であってもよく、特定の場合に標的の機能を阻害する。さらに、投与に必要な量は、抗体とその抗体に特異的な抗原の結合親和性に依存し、また、投与される抗体が他の投与対象の自由体積から使い切られる速度にも依存する。本明細書で開示される抗体、その抗体断片、および/またはその複合体の治療有効投与量の一般的な範囲は、例えば、約0.1mg/kg(体重)〜約50mg/kg(体重)、約0.1mg/kg(体重)〜約100mg/kg(体重)、または約0.1mg/kg(体重)〜約150mg/kg(体重)であってもよいが、これらに限定されない。一般的な投与頻度は、例えば、1日2回から1ヶ月に1回の範囲(例えば、1日1回、1週間に1回、隔週1回、3週間または1ヶ月に1回)であってもよい。例えば、本明細書で開示されるXMT1519の複合体、例えば、XMT1519−(EG2−MI−(PHF−BA−(AF−HPA−Ala)))複合体またはXMT1519−(EG2−MI−(10kDa PHF−BA−(AF−HPA−Ala)))複合体を(例えば、単回投与量として毎週、隔週、3週間毎、あるは毎月)約0.1mg/kg〜約20mg/kg(例えば、0.2mg/kg、0.5mg/kg、0.67mg/kg、1mg/kg、2mg/kg、3mg/kg、4mg/kg、5mg/kg、6mg/kg、7mg/kg、8mg/kg、9mg/kg、10mg/kg、11mg/kg、12mg/kg、13mg/kg、14mg/kg、15mg/kg、16mg/kg、17mg/kg、18mg/kg、19mg/kg、または20mg/kg)投与してもよい。例えば、本明細書で開示されるXMT1519の複合体、例えば、XMT1519−(EG2−MI−(PHF−BA−(AF−HPA−Ala)))複合体またはXMT1519−(EG2−MI−(10kDa PHF−BA−(AF−HPA−Ala)))複合体を、HER2発現量の少ない乳癌またはHER2発現量の少ない胃癌の治療のために(例えば、単回投与量として毎週、隔週、3週間毎、あるは毎月)約0.1mg/kg〜約20mg/kg(例えば、0.2mg/kg、0.5mg/kg、0.67mg/kg、1mg/kg、2mg/kg、3mg/kg、4mg/kg、5mg/kg、6mg/kg、7mg/kg、8mg/kg、9mg/kg、10mg/kg、11mg/kg、12mg/kg、13mg/kg、14mg/kg、15mg/kg、16mg/kg、17mg/kg、18mg/kg、19mg/kg、または20mg/kg)投与してもよい。
【0437】
治療の有効性は、特定のHER2に関連した障害を診断または治療するための任意の周知の方法との関連で決定される。HER2関連障害の1つ以上の症状の軽減は、抗体が臨床的恩恵をもたらすことを示す。
【0438】
所望の特異性を有する抗体のスクリーニング方法としては、酵素結合免疫吸収アッセイ(ELISA)、および当該分野で周知の他の免疫媒介技術が挙げられるが、これらに限定されない。
【0439】
他の態様では、HER2に対して作られた抗体を、(例えば、適切な生理学的試料中のHER2量の測定、タンパク質などの画像処理などでの使用など)当該分野で周知の、HER2の局所化および/または定量化に関する方法で用いてもよい。ある態様では、HER2に特異的な抗体、またはその抗体由来の抗原結合領域を含む誘導体、断片、類縁体、あるいは相同体は、薬理活性化合物(以後、「治療薬物」と言う)として用いられる。
【0440】
他の態様では、HER2に特異的な抗体を用いて、標準的な技術(例えば、免疫親和性クロマトグラフィー、クロマトグラフィー、または免疫沈殿など)によりHER2ポリペプチドを単離してもよい。HER2タンパク質(またはその断片)に対して作られた抗体を診断に用いて、例えば、ある治療投薬計画の有効性を決定するための臨床試験手順の一部として組織中のタンパク質量を監視することができる。抗体を検出可能な物質に結合(すなわち、物理的に結合)させることで容易に検出することができる。検出可能な物質としては、例えば、酵素、補欠分子族、蛍光材料、発光材料、生物発光材料、および放射性活性材料などが挙げられる。好適な酵素としては、例えば、西洋ワサビペルオキシダーゼ、アルカリ性ホスファターゼ、β−ガラクトシダーゼ、またはアセチルコリンエストラーゼなどが挙げられる。好適な補欠分子族複合体としては、例えば、ストレプトアビジン/ビオチン、およびアビジン/ビオチンなどが挙げられる。好適な蛍光材料としては、例えば、ウンベリフェロン、フルオレセイン、イソチオシアン酸フルオレセイン、ローダミン、ジクロロトリアジニルアミンフルオレセイン、塩化ダンシル、またはフィコエリスリンなどが挙げられる。発光材料としては、例えばルミノールなどが挙げられる。生物発光材料としては、例えばルシフェラーゼ、ルシフェリン、およびイクオリンなどが挙げられる。好適な放射性活性材料としては、例えば、
125I、
131I、
35S、または
3Hなどが挙げられる。
【0441】
他の態様では、本発明による抗体を、試料中のHER2タンパク質(またはその断片)の存在を検出するための薬剤として用いてもよい。いくつかの態様では、前記抗体は検出可能な標識を含む。抗体はポリクロナール、またはより好ましくはモノクローナルである。損傷のない抗体、またはその断片(例えば、F
ab、scFv、またはF
(ab)2)が用いられる。プローブまたは抗体に関する用語「標識化」は、検出可能な物質をプローブまたは抗体に結合(すなわち、物理的に結合)することによるプローブまたは抗体の直接標識、および直接標識された他の試薬との反応性を用いたプローブまたは抗体の間接標識を包含することを意図する。間接標識としては、蛍光標識二次抗体を用いた一次抗体の検出、および蛍光標識ストレプトアビジンで検出することができるようにビオチンによるDNAプローブの末端標識などが挙げられる。用語「生体試料」は、対象から単離された組織、細胞、および体液、ならびに対象内の組織、細胞、および体液を含むことを意図する。したがって、血液および血清、血漿、またはリンパ液を含む血液の画分または成分が用語「生体試料」の用法の範囲内に含まれる。すなわち、本明細書で開示される検出方法を用いて、生体外および生体内の生体試料中の検体mRNA、タンパク質、またはゲノムDNAを検出することができる。例えば、検体mRNAを検出するための生体外技術としては、ノーザンハイブリダイゼーション、およびその場ハイブリダイゼーションが挙げられる。検体タンパク質を検出するための生体外技術としては、酵素結合免疫吸収アッセイ(ELISA)、ウエスタンブロット、免疫沈殿、および免疫蛍光が挙げられる。検体ゲノムDNAを検出するための生体外技術としては、サザンハイブリダイゼーションが挙げられる。免疫アッセイを行う手順は、例えば、“ELISA: Theory and Practice: Methods in Molecular Biology(ELISA:理論と実践:分子生物学における方法)”, Vol. 42, J. R. Crowther (Ed.) Human Press, Totowa, NJ, 1995; “Immunoassay(免疫アッセイ)”, E. Diamandis and T. Christopoulus, Academic Press, Inc., San Diego, CA, 1996; and “Practice and Theory of Enzyme Immunoassays(酵素免疫アッセイの実践と理論)”, P. Tijssen, Elsevier Science Publishers, Amsterdam, 1985などで記載されている。さらに、検体タンパク質を検出するための生体内技術としては、標識抗検体タンパク質抗体の対象への導入が挙げられる。例えば、一般的な画像処理技術対象中の存在および位置を検出することができる放射性活性マーカーで抗体を標識してもよい。
HER2抗体の治療投与および製剤
【0442】
本明細書で開示される抗体、その誘導体、断片、類縁体、相同体、および/またはその複合体(以後、「活性化合物」とも言う)を投与に好適な医薬品組成物に組み込んでもよい。そのような組成物の調製に関する原理および考察、ならびに成分選択の指針は、例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences: The Science And Practice Of Pharmacy 19th ed.(レミントンの医薬品の科学:調剤学の科学と実践19版) (Alfonso R. Gennaro, et al., editors) Mack Pub. Co., Easton, Pa.: 1995; Drug Absorption Enhancement: Concepts, Possibilities, Limitations, And Trends(薬物の吸収の増加:概念、可能性、限界と傾向), Harwood Academic Publishers, Langhorne, Pa., 1994; and Peptide And Protein Drug Delivery (Advances In Parenteral Sciences, Vol. 4)(ペプチドおよびタンパク質薬物の送達(非経口投与科学の発展)), 1991, M. Dekker, New Yorkなどで提供される。
【0443】
そのような組成物は、一般に、抗体、その断片、および/またはその複合体、および薬学的に容認可能な担体を含む。抗体断片を用いる場合は、標的タンパク質の結合領域に特異的に結合する最も小さい阻害性断片が好ましい。例えば、抗体の可変領域配列に基づいて、標的タンパク質配列に結合する能力を保持するペプチド分子を設計してもよい。そのようなペプチドは、化学的に合成および/または組み換えDNA技術により産生することができる(例えば、Marasco et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 90: 7889-7893 (1993)を参照のこと)。
【0444】
本明細書で用いられる用語「薬学的に容認可能な担体」は、医薬品投与に相性がよい任意およびすべての溶媒、分散媒体、被覆物、抗菌剤、抗真菌剤、等張および吸収遅延剤を含むことを意図する。適切な担体は、当該分野での標準的教科書である Remington’s Pharmaceutical Science(レミントンの医薬品の科学)の最新版(参照により本明細書に組み込まれる)で記載されている。好ましいそのような担体または希釈剤としては、例えば、水、生理食塩水、リンガー液、ブドウ糖液、および5%ヒト血清アルブミンが挙げられるが、これらに限定されない。リポソームおよび非水性媒体(例えば、固定油など)を用いてもよい。薬学的活性物質にそのような媒体および薬剤を用いることは当該分野で周知である。従来の媒体または薬剤のいずれかが活性化合物と非相溶性でない限り、上記媒体または薬剤を前記組成物に用いることが企図される。
【0445】
生体内投与に用いられる製剤は、殺菌されていなければならない。これは、殺菌濾過膜で濾過することで容易に達成される。
【0446】
本明細書で開示される医薬品組成物は、意図された投与経路と相性がよくなるように製剤される。投与経路としては、例えば、非経口投与(例えば、静脈内投与、皮内投与、皮下投与など)、経口投与(例えば、吸入)、経皮投与(すなわち、局所投与)、経粘膜投与、および直腸投与が挙げられる。非経口投与、皮内投与、または皮下投与に用いられる溶液または懸濁液は、以下の成分、すなわち、殺菌希釈剤(例えば、注射用水、生理食塩水液、固定油、ポリエチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコール、その他の合成溶媒など)、抗菌剤(例えば、ベンジルアルコール、メチルパラベンなど)、抗酸化剤(例えば、アスコルビン酸、重亜硫酸ナトリウムなど)、キレート剤(例えば、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)など)、緩衝剤(例えば、酢酸塩、クエン酸塩、リン酸塩など)、および毒性を調節するための薬剤(例えば、塩化ナトリウム、ブドウ糖など)を含んでいてもよい。酸または塩基、例えば塩酸または水酸化ナトリウムでpHを調節してもよい。非経口投与製剤は、アンプル、使い捨ての注射器、またはガラスやプラスチック製の複数回投与用バイアル瓶に封入してもよい。
【0447】
注射可能な用途に好適な医薬品組成物は、殺菌液(水溶性の場合)、または殺菌された注射可能溶液または分散体の即時調製用の分散体および殺菌粉末を含む。静脈内投与に好適な担体としては、生理食塩水、静菌水、Cremophor EL(登録商標、BASF、ニュージャージー州パーシパニー)、またはリン酸緩衝生理食塩水(PBS)が挙げられる。全ての場合において、前記組成物は殺菌されていなければならず、容易に注射できる程度に液状でなければならいない。前記組成物は、製造条件および貯蔵条件で安定していなければならない。また、細菌(例えば、バクテリアおよび菌類など)の汚染作用から保護されていなければならない。前記担体は、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセリン、プロピレングリコール、および液体ポリエチレングリコールなど)、およびそれらの好適な混合物を含む溶媒または分散媒であってもよい。被覆物(例えば、レシチンなど)の使用、分散体の場合は必要な粒径の維持、および界面活性剤の使用により適切な流動性を維持することができる。細菌の作用は、様々な抗菌剤および抗真菌剤(例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、アスコルビン酸、チメロサールなど)により防止することができる。組成物に等張剤(例えば、糖)、ポリアルコール(例えば、マンニトール、ソルビトール)、塩化ナトリウムを含むことが好ましい場合が多い。注射可能組成物の吸収は、前記組成物中に吸収遅延剤(例えば、一ステアリン酸アルミニウム、およびゼラチンなど)を含有させて遅らせることができる。
【0448】
殺菌された注射可能溶液は、適切な溶媒に必要量の活性化合物を上で列挙した成分の1種またはその組み合わせと共に組み込み、濾過殺菌して調製することができる。一般に、塩基性分散媒と、上で列挙した成分から必要なその他の成分を含む殺菌媒体に活性化合物を組み込んで分散体を調製する。殺菌された注射可能溶液の調製に殺菌粉末が用いられる場合、調製方法は真空乾燥および冷凍乾燥である。これにより、事前に殺菌濾過した薬効成分液から薬効成分の粉末と任意の追加の所望の成分が得られる。
【0449】
経口投与組成物は、一般に、不活性希釈剤または食用担体を含む。経口投与組成物は、ゼラチンカプセルに封入する、あるいは圧縮して錠剤にしてもよい。治療のための経口投与では、前記活性化合物は賦形剤と共に組み込まれていてもよく、かつ錠剤、トローチ、またはカプセルの形態で用いてもよい。また、流体担体を用いて経口投与組成物を口内洗浄液の用途として調製してもよい。ここで、流体担体中の化合物は、口から入れて、口内をすすぎ、はき出される、あるいは飲み込まれる。医薬的に相溶性がある結合剤、および/またはアジュバント材料を前記組成物の一部として含んでいてもよい。錠剤、丸薬、カプセル、トローチなどは、以下の成分または類似の性質の化合物のいずれかを含んでいてもよい:結着剤(例えば、微結晶性セルロース、トラガカントガム、ゼラチンなど)、賦形剤(例えば、澱粉、ラクトースなど)、崩壊剤(例えば、アルギン酸、Primogel、コーンスターチなど)、潤滑剤(例えば、ステアリン酸マグネシウム、Sterotesなど)、流動促進剤(例えば、コロイド状二酸化ケイ素など)、甘味剤(例えば、ショ糖、サッカリンなど)、または風味剤(例えば、ペッパーミント、サリチル酸メチル、オレンジ風味剤など)。
【0450】
吸入による投与の場合、前記化合物は、好適な推進剤(例えば、二酸化炭素などの気体)を含む加圧容器または散布器、あるいは噴霧器からのエアロゾルスプレーという形態で送達される。
【0451】
全身性投与は、経粘膜投与手段または経皮投与手段であってもよい。経粘膜投与または経皮投与の場合、製剤には浸透させる障壁に適切な浸透剤が用いられる。そのような浸透剤は、一般に当該分野で周知であり、例えば、経粘膜投与の場合では、清浄剤、胆汁塩、およびフシジン酸誘導体が挙げられる。経粘膜投与は、経鼻スプレーまたは尿道坐薬を用いて行うことができる。経皮投与の場合、前記活性化合物は、一般に当該分野で周知の軟膏、軟膏、ゲル、またはクリームに製剤される。
【0452】
前記化合物はまた、(例えば、従来のココアバターおよび他のグリセリドなど、尿道座薬基剤を含む)尿道坐薬、あるいは直腸送達用の停留かん腸の形態で調製してもよい。
【0453】
一態様では、前記活性化合物は、前記化合物が体から急速に排泄されるのを保護する担体、例えば、埋め込みおよびマイクロカプセル化送達システムを含む徐放/放出制御剤と共に調製される。生分解性生体適合性重合体、例えば、エチレン酢酸ビニル、ポリ無水物、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリオルトエステル、およびポリ乳酸などを用いることができる。そのような製剤を調製する方法は当業者には自明である。
【0454】
例えば、前記薬効成分は、例えば、コアセルベーション技術または界面重合により調製されたマイクロカプセル(例えば、それぞれ、ヒドロキシメチルセルロースまたはゼラチンのマイクロカプセル、およびポリメチルメタクリル酸のマイクロカプセル)中、コロイド状薬物送達系(例えば、リポソーム、アルブミンマイクロスフェア、マイクロ乳液、ナノ粒子、およびナノカプセルなど)、またはマクロ乳液中にそれぞれ取り込むことができる。
【0455】
徐放剤を調製してもよい。好適な徐放剤としては、例えば、マトリックスが成形品(例えば、フィルム、またはマイクロカプセル)の形態である、抗体を含む固体疎水性重合体の半透過性マトリクスが挙げられる。徐放マトリックスとしては、例えば、ポリエステル、ヒドロゲル(例えば、ポリ(メタクリル酸2−ヒドロキシエチル)、またはポリ(ビニルアルコール))、ポリラクチド(米国特許第3,773,919号)、L−グルタミン酸とγエチル−L−グルタミン酸塩の共重合体、非分解性酢酸エチレンビニル、分解性乳酸−グリコール酸共重合体(例えば、LUPRON DEPOT(登録商標)、乳酸−グリコール酸共重合体とおよび酢酸ロイプロリドからなる注射可能なマイクロスフェア)、およびポリ−D−(−)−3−ヒドロキシ酪酸が挙げられる。酢酸エチレンビニルおよび乳酸−グリコール酸などの重合体は、100日以上にわたって分子を放出することができるが、特定のヒドロゲルはそれよりも短い期間にタンパク質を放出する。
【0456】
また、前記材料をAlza CorporationおよびNova Pharmaceuticals社からリポソーム懸濁液(ウイルス抗原に対するモノクローナル抗体を有する感染細胞に標的したリポソームを含む)として商業的に入手することができ、薬学的に容認可能な担体としても用いることができる。これらは、例えば米国特許第4,522,811号に記載の方法など、当業者に周知の方法により調製することができる。
【0457】
投与を容易にし、投与量を均一にするため、経口投与組成物または非経口投与組成物を投与量単位の形態で製剤することが特に有用である。本明細書で用いられる「投与量単位の形態」は、治療される対象に対する単一投与量に合わせた物理的に個別の単位を指し、各単位は、必要な医薬品担体と共同して所望の治療効果をもたらすように計算された所定量の活性化合物を含む。本明細書で開示される投与量単位の形態の仕様は、活性化合物に特有の特性、達成される特定の治療効果、および個体の治療のためにそのような活性化合物を配合する技術に固有の限界により決定され、かつこれらに直接依存する。
【0458】
前記医薬品組成物は、投与の指示と共に容器、パック、または散布器に含まれていてもよい。
【0459】
また、前記製剤は、治療される特定の兆候に必要な、好ましくは、互いに悪影響を及ぼさない相補性活性を有する2種以上の活性化合物を含んでいてもよい。これに代えて、あるいはこれに加えて、前記組成物はその機能を高める薬剤(例えば、細胞毒性薬、サイトカイン、化学療法薬、または成長阻害剤など)を含んでいてもよい。そのような分子は、意図された目的に有効な量で組み合わせて好適に存在する。
【0460】
一態様では、前記活性化合物は、併用療法で、すなわち、他の薬剤、例えば、病態または障害(例えば、癌、自己免疫疾患、および炎症性疾患などの様々形態)を治療するのに有用な治療薬と組み合わせて投与される。この文脈の用語「組み合わせ」は、前記薬剤が実質的に同時、あるいは同時または順次のいずれかで投与されることを意味する。順次に投与される場合、2種の化合物のうち、第二の化合物の投与の開始時に第一の化合物が治療部位において有効濃度で検出可能であることが好ましい。
【0461】
前記併用療法としては、例えば、1種以上の本明細書で開示されるモノクローナル抗体、その断片、および/またはその複合体を1種以上の追加の抗体(例えば、HER2抗体、HER2二量化阻害剤抗体、またはHER2抗体とHER2二量化阻害剤抗の組み合わせ(例えば、トラスツズマブ、ペルツズマブ、またはトラスツズマブとペルツズマブの組み合わせ、またはトラスツズマブのバイオ後続品および/またはペルツズマブ、またはバイオ後続品の組み合わせ)と共製剤および/または共投与することが挙げられる。
【0462】
前記併用療法としては、例えば、1種以上の本明細書で開示されるモノクローナル抗体、その断片、および/またはその複合体を1種以上の追加の治療薬、例えば、タキサン(パクリタキセル、またはドセタキセル)、アントラサイクリン(ドキソルビシン、またはエピルビシン)、シクロホスファミド、カペシタビン、タモキシフェン、レトロゾール、カルボプラチン、ゲムシタビン、シスプラチン、エルロチニブ、イリノテカン、フルオロウラシル、またはオキサリプラチンと共製剤および/または共投与することが挙げられる。そのような併用療法は、投与される治療薬の投与量を減らすのに有用に用いられて、様々な単剤療法に関連づけられた起こりうる毒性または合併症を回避することができる。
【0463】
いくつかの態様では、本明細書で開示される抗体、その断片、および/またはその複合体と組み合わせて用いられる追加の治療薬は、免疫応答および/または炎症性応答の異なる段階に干渉する薬剤である。一態様では、本明細書で記載される1種以上の抗体を1種以上の追加の薬剤と共製剤および/または共投与してもよい。
診断薬および予防薬
【0464】
本明細書で開示されるHER2抗体、その抗原結合断片、および/またはその複合体は、診断薬および予防薬に用いられる。一態様では、本明細書で開示されるHER2抗体、その抗原結合断片、および/またはその複合体は、前記病気(これに限定されないが、例えば、癌)の1つ以上を発症する危険性がある患者に投与される。患者または臓器の前記兆候の1つ以上の傾向を遺伝子型標識、血清学的標識、または生化学標識を用いて決定することができる。
【0465】
本発明の他の態様では、本明細書で開示されるHER2抗体、その抗原結合断片、および/またはその複合体は、前記病気(これに限定されないが、例えば、癌)の1つ以上と関連づけられた臨床兆候と診断されたヒト個体に投与される。診断時に、本明細書で開示されるHER2抗体、その抗原結合断片、および/またはその複合体は、前記病気の1つ以上と関連づけられた臨床兆候の効果を軽減または好転させるために投与される。
【0466】
本発明の他の態様では、本明細書で開示される複合体で治療するのに適している乳癌患者を識別する方法は、前記患者に由来する腫瘍試料中の特定の特性の状態を測定すること、および前記腫瘍試料中の特定の特性の状態に基づいて治療する患者を識別することを含む。
【0467】
また、本明細書で開示される抗体は、患者の試料中のHER2の検出に有用であり、したがって、診断法として有用である。例えば、本明細書で開示されるHER2抗体は、患者試料中のHER2量を検出するための生体外アッセイ(例えば、ELISA)に用いられる。
【0468】
一態様では、本明細書で開示されるHER2抗体は、固体支持体(例えば、マイクロ滴定器のプレートのウェル)に固定化されている。この固定化された抗体は、試験試料に存在する可能性がある任意のHER2を拿捕する抗体として働く。固定化された抗体を患者試料と接触させる前に、固体支持体を阻害剤(例えば、乳タンパク質またはアルブミン)で洗浄および処理して、検体の非特異的吸着を防止する。
【0469】
その後、ウェルを、抗原を含むと疑われる試験試料、または標準量の抗原を含む溶液で処理する。そのような試料は、例えば、病態の診断に役立つと見なされる循環抗原量を有すると疑われる対象由来の血清試料である。試験試料または標準液を洗浄した後、検出可能に標識された第二の抗体で固体支持体を処理する。標識された第二の抗体は、検出抗体として作用する。検出可能な標識の量を測定し、標準試料から作成した標準曲線と比較して試験試料中のHER2抗原濃度を決定する。
【0470】
自明であるが、本明細書で開示されるHER2抗体を用いて生体外診断アッセイで得られた結果に基づいて、対象の病気をHER2抗原の発現量に基づいて段階付けすることができる。ある病気では、血液試料は、病気の進行の様々な段階および/または病気の治療の様々な時点にあると診断された対象者から採取される。進行または治療の各段階で統計的に有意な結果を提供する試料集団を用いて、各段階に特徴的と見なされる可能性がある抗原濃度の範囲が設計される。
【0471】
本明細書で引用したすべての出版物および特許文献は、それぞれ具体的に、また、個々に参照により本明細書に組み込まれることが示されたように、参照により本明細書に組み込まれる。出版物および特許文献の引用は、いずれかが従来の技術に関連することを認める意図ではなく、また、引用の内容または日付について何らかの承認を与えるものでもない。本発明を記述により説明してきたが、本発明は、様々な態様で実行することができ、上記の記述および以下の実施例は例示目的であり、続く請求項に対する限定ではないことは当業者には自明である。
【実施例】
【0472】
以下の実施例は、リンカー、薬物分子、およびPBRM、およびこれらを調製する方法の例示である。これらは限定を意図するものではなく、当業者には自明であるが、他の試薬または方法を用いてもよい。
略語
【0473】
以下の反応スキームおよび合成例では以下の略語が用いられる。このリストは、有機合成の当業者には自明であるが、追加の標準的略語として本願で用いられる略語の包括的リストであることを意味するものではく、合成スキームおよび実施例にも用いることができる。
AF−HPA オーリスタチンF−ヒドロキシプロピルアミド
BSA ウシ血清アルブミン
DMEM ダルベッコ改変イーグル培地
FBS ウシ胎児血清
HRP 西洋ワサビペルオキシダーゼ
PBS リン酸緩衝生理食塩水、0.9%のNaCl
TMB 3,3’,5,5’−テトラメチルベンジジン
一般情報
【0474】
Genentech社によって製造される注射用カドサイラ(登録商標)(アド−トラスツズマブエムタンシン)を購入した。
【0475】
CDRはKabat番号付けスキームにより同定された。
【0476】
腫瘍増殖抑制度(%TGI)は、治療群と対照群の腫瘍体積中央値(MTV)の差を百分率として定義した。
【0477】
治療の有効性は、試験中に観察された腫瘍サイズの退縮応答の出現数とその程度から決定した。治療により、動物の腫瘍が部分退縮(PR)または完全体縮(CR)する可能性がある。PR応答では、腫瘍体積は、試験中に行った3回の連続測定での体積が1日目の体積の50%以下であり、これら3回の測定うちの少なくとも1回で13.5mm
3以上であった。CR応答では、腫瘍体積は試験中に行った3回の連続測定で13.5mm
3未満であった。試験の終わりにCR応答を有する動物をさらに無腫瘍生存体(TFS)として分類した。動物を退縮応答について監視した。
【0478】
HPLC精製をPhenomenex Gemini、粒径5μm、孔径110Å、250×10mm、5ミクロン、半調製カラムで行った。
【0479】
SECを東ソー・バイオサイエンスTSK gel G5000カラム(7.8mm×30cm、10um)またはSuperose 12カラム(GEヘルスケア)で行った。
【0480】
弱酸性陽イオン交換(WCX)をProPac WCX-10(94mm×250mm)カラム(サーモフィッシャー)で行った。
【0481】
可能な場合は常に、複合体の薬物含有量を分光光度分析により決定した。そうでない場合は、LC/MSまたは
1H−NMRを行って薬物含有量を定量した。
【0482】
タンパク質−重合体−薬物複合体のタンパク質含有量を分光光度分析(280nm)またはELISAで決定した。
【0483】
多糖またはタンパク質の分子量標準のいずれかを用いてSECにより重合体複合体の分子量(見かけの重量平均分子量またはピーク分子量として報告された)を決定した。より具体的には、前記重合体または重合体−薬物複合体については多糖の分子量標準を用いて、タンパク質−薬物−重合体複合体についてはタンパク質の分子量標準を用いる。特に断りがなければ、報告された重合体担体分子量はPHFの重量平均分子量であり、重合体−薬物複合体の分子量およびタンパク質−重合体−薬物複合体はピーク分子量である。HER2−重合体−薬物複合体のピーク分子量は約170kDa〜約230kDaである。製造/測定された重合体および重合体複合体は、典型的には多分散度が1.5以下である。
【0484】
大量透析濾過によりHer2−重合体−薬物複合体を未反応の薬物−重合体複合体の残留物から分離した。必要に応じて、サイズ排除クロマトグラフィー、WCXクロマトグラフィーの一方あるいは両方で追加の精製を行って任意の凝集したHer2−重合体−薬物複合体を除去した。一般に、前記Her2−重合体−薬物複合体は、典型的には、5%(w/w)未満(例えば、2%(w/w)未満)(SECにより決定)の凝集画分、0.5%(w/w)未満(例えば、0.1%(w/w)未満)(RP−HPLCまたはLC−MS/MSにより決定)の遊離(未接合)薬物、1%(w/w)未満(SECおよび/またはRP−HPLCにより決定)の遊離重合体−薬物複合体、および2%(w/w)未満(例えば、1%(w/w)未満)(HIC−HPLCおよび/またはWCX HPLCにより決定)の未接合Her2を含んでいた。還元または部分的に還元された抗体を文献に記載された手順を用いて作製した。例えば、Francisco et al., Blood 102 (4): 1458-1465 (2003)を参照のこと。総(接合および未接合)薬物濃度をLC−MS/MSにより決定した。
一般的な手順
一般的な手順A.重合体とリンカーまたは薬物との接合
【0485】
一般に、活性化剤(例えば、EDC.HClなど)の存在下、水性溶媒または10〜90%の有機溶媒/水性溶媒の混合物中で前記重合体(PHF−BAまたはPHF−GA)をアミン含有リンカー(例えば、EG2−マレイミド)またはアミン含有リンカー薬物(例えば、AF−HPA−Ala、HPA−Ala)と接合する。典型的な有機溶媒としては、水と相溶性を有する溶媒、例えば、DMSO、DMF、DMA、NMP、およびACNなどが挙げられるが、これらに限定されない。結合を速めるために、共活性剤、例えば、NHSを添加する。まず、重合体をアミノ含有化合物と混合し、共活性剤(NHS)、次いで活性剤(EDC.HCl)を添加する。反応を周囲温度で0〜10℃、pH4.5〜7.5で1時間〜24時間行う。得られた重合体複合体を透析濾過またはSECにより精製する。この生成物を2〜50mg/mLまで濃縮し、pHを4.5〜6.5に調整して、薬物−重合体リンカーの安定性を確保し、さらに用いるまで−20℃から−80℃で複合体を冷凍保存する。
【0486】
重合体とアミン含有リンカーまたは薬物の接合は、順次、任意の順序で行っても同時に行ってもよい。
一般的な手順B.タンパク質(HER2抗体)の部分的に選択可能な還元
【0487】
重合体−薬物複合体との接合の前に、適切なHER2抗体の鎖間ジスルフィド基または不対ジスルフィドの部分的に選択可能な還元を還元剤(例えば、TCEP、DTT、またはβ−メルカプトエタノール)を用いて行う。過剰な還元剤を用いて還元を行う場合、接合の前にSECにより還元剤を除去する。HER2ジスルフィド基の反応性スルフヒドリル基への転化度は、HER2の化学量論、還元剤、pH、温度、および/または反応の継続期間に依存する。PBRMのジスルフィド基のすべてではないがいくつかを還元する場合、還元されたPBRMは部分的に還元されたHER2である。
一般的な手順C.部分的に還元したHER2と重合体薬物複合体との接合
【0488】
部分的に還元されたPBRMの重合体−薬物複合体への接合は、中性またはわずかに塩基性の条件(pH:6.5〜8.5)でPBRM濃度が1〜10mg/mL、重合体−薬物複合体濃度が0.5〜10mg/mLで行われる。前記重合体−薬物複合体は典型的に、所望の生分解性タンパク質−重合体−薬物複合体の化学量論に対して1〜5.0倍過剰で用いられる。前記PBRMを前記重合体−薬物複合体のマレイミド基に接合する場合、任意で水溶性マレイミド遮断化合物(例えば、N−アセチルシステイン、システインメチルエステル、N−メチルシステイン、2−メルカプトエタノール、3−メルカプトプロパン酸、2−メルカプト酢酸、メルカプトメタノール(すなわち、HOCH
2SH)、ベンジルチオールなど)を添加して接合を終了させる。
【0489】
得られたHER2−重合体−薬物複合体は、典型的には透析濾過により精製して、任意の未接合重合体−薬物複合体、未接合薬物、および小分子不純物を除去する。これに代えて、あるいはこれに加えて、適切なクロマトグラフィーによる分離手順を用いてHER2−重合体−薬物複合体を精製してもよい。そのような分離手順としては、例えば、サイズ排除クロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィー、イオンクロマトグラフィー(例えば、WCXクロマトグラフィー)、逆相クロマトグラフィー、水酸燐灰石クロマトグラフィー、親和性クロマトグラフィー、またはこれらの組み合わせが挙げられる。精製されたHER2−重合体−薬物複合体は、典型的にはpHが5.0〜6.5の緩衝剤中で製剤される。
実施例1:HER2抗体のためのFACS(蛍光活性化細胞選別)による選別
【0490】
本明細書で開示されるHER2抗体のうちの2つ、XMT1517およびXMT1519を以下で記載する手順を用いて選別した。それぞれ約10
9の多様性を有する8個の未処理ヒト合成酵母菌ライブラリーを上述のように伝播させた(例えば、WO2009036379、WO2010105256、WO2012/009568、およびXu et al., Protein Eng Des Sel. 2013 Oct;26(10):663-70を参照のこと)。選別の最初の2回は、(Siegel et al., J Immunol Methods. 2004 Mar;286(1-2):141-53)に記載のように、Miltenyi MACSシステムを用いた磁性ビーズ選別技術を行った。簡単に説明すると、0.1%BSA(EZ-Link Sulfo-NHS-Biotinylation Kit、サーモサイエンティフィック、Cat.# 21425を用いてビオチン化した)を含むFACS洗浄緩衝PBS中で、酵母菌細胞(約10
10細胞/ライブラリー)を200nMのビオチン化単量体HER2抗原または10nMのビオチン化HER2−Fc融合抗原3mlと共に室温で15分間インキュベートした。50mlの氷冷した洗浄緩衝剤で1回洗浄した後、細胞ペレットを40mLの洗浄緩衝剤中に懸濁させて、500μlのStreptavidin MicroBeads (Miltenyi Biotec, Bergisch Gladbach、独国、Cat.# 130-048-101)を酵母菌に加え、4℃で15分間インキュベートした。次いで、この酵母菌をペレット化して、5mLの洗浄緩衝剤に再懸濁させ、MACS LSカラム(Miltenyi Biotec, Bergisch Gladbach、独国、Cat.# 130-042-401)に充填した。5mLを充填した後、カラムを3mlのFACS洗浄緩衝剤で3回洗浄した。次いで、カラムを磁界から取り除き、酵母菌を5mLの増殖媒体で溶出して、一晩増殖した。選別の以下の3回はフローサイトメトリーにより行った。約1×10
8の酵母菌をペレット化して、洗浄緩衝剤で3回洗浄し、室温で10分間、それぞれ200nM、100nM、10nMのビオチン化HER2と共にインキュベートした。ついて、酵母菌を2回洗浄して、1:100で希釈したヤギ抗ヒトF(ab’)
2κ−FITC(Southern Biotech、アラバマ州バーミンガム、Cat.# 2062-02)と、1:500で希釈したストレプトアビジンAlexa Fluor633(Life Technologies, Grand Island, NY, Cat.# S21375)または1:50で希釈したExtravidin−フェコエリスリン(シグマアルドリッチ社、セントルイス、Cat.# E4011)のいずれかと、二次試薬を用いて4℃で15分間染色した。氷冷した洗浄緩衝剤で2回洗浄した後、細胞ペレットを0.4mLの洗浄緩衝剤に再懸濁させ、濾過器と栓付きの選別管に移した。FACS ARIA選別器(BD Biosciences)を用いて選別を行い、2つの選別分について選別ゲートを決定してHER2結合クローンのみを選別し、3つ目の選別分については試薬結着剤を低減する陰性選別を行った。選別の最終回の後、酵母菌を蒔いて、個々のコロニーを性質決定のために採集した。
実施例2:HER2抗体の親和性成熟
【0491】
以下で記載する手順を用いて、親和性成熟させた本明細書で開示されるHER2抗体XMT1518およびXMT1520を作製した。軽鎖バッチ多様化(LCBD)に5つ目の選別分の結合集団を用いた。重鎖プラスミドを抽出して、1×10
6の多様性を有する軽鎖ライブラリーに形質変換した。上述のように、選別は、一度のMACS選別と、それぞれ10nMまたは1nMのビオチン化抗原を用いた二度のFACS選別により行った。
【0492】
さらに、LCBDから最もよいクローンに親和性成熟を行った。これらクローン由来の重鎖のCDRH3をそれぞれ、個々に予め作製しておいた1×10
8の多様性を有する多様体のライブラリーに組み換えた。選別は上述のように行った。様々な時間で抗原抗体酵母菌複合体と親Fabをインキュベートして親和性圧力を加えて、親和性が最も高い抗体を選別した。
【0493】
親和性成熟の三度目の選別分は、重鎖および軽鎖のエラープローンPCRを含んでいた。3つのすべての選別分についてFACS選別を用いて上述のサイクルと同様に、またFab圧力については時間を長くして選別を行った。
実施例3:抗体の産生および精製
【0494】
酵母菌クローンを飽和状態まで増殖させて、振とうしながら30℃で48時間誘導した。誘導後、酵母菌細胞をペレット化して、上澄みを精製用に採取した。タンパク質Aカラムを用いてIgGを精製して、酢酸(pH:2.0)で溶出した。パパインで消化してFab断片を生成し、KappaSelect(GEヘルスケア・ライフサイエンス社、Cat.#17−5458−01)で精製した。
【0495】
抗体を新しい発現ベクターにサブクローニングして、HEKに一過性形質移入および発現させてIgGの哺乳類発現を行った。簡単に説明すると、形質移入は以下のように行う。目的の抗体を含む発現ベクターを形質移入試薬と複合化して、1時間HEK細胞に暴露し、細胞の最終密度が400万個/mLになるまで培地を希釈する。次いで、48時間毎に新しい培地と取り替えながら細胞を7日間培養する。7日後に、上澄みを回収して遠心分離し、タンパク質Aカラムを用いて、さらに必要に応じてCHTカラムを用いて精製し、95%超の単量体を得る。
実施例4:HER2抗体の親和性の測定
【0496】
ForteBioまたはMSD−SETによりK
Dを測定してHER2抗体の親和性を決定した。上述のように一般にForteBio親和性測定を行った(Estep et al., MAbs. 2013 Mar-Apr;5(2):270-8)。簡単に説明すると、ForteBio親和性測定は、オンラインのIgGをAHQセンサに充填して行った。アッセイ緩衝剤中で30分間、センサをオフラインで平衡にし、ベースラインを確立するためにオンラインで60秒間監視した。IgGを充填したセンサを5分間100nMの抗原に暴露し、その後、解離速度(off−rate)測定のため5分間アッセイ緩衝剤に移した。1:1の結合モデルを用いて動態を分析した。
【0497】
上述のように(Estep et al., 2013)、平衡親和性測定を行った。抗原を50pMで一定に保ち、10nMから3〜5倍に連続希釈した抗体と共にインキュベートして溶液平衡滴定(SET)をPBSとIgGを含まない0.1%のBSA(PBSF)中で行った。4℃で一晩、または室温で30分間、標準結合MSD−ECLプレートを抗体(PBS中20nM)で被覆した。次いで、プレートを700rpmで振とうしながら30分間ブロックし、その後、洗浄緩衝剤(PBSF+0.05%のTween20)で3回洗浄した。SET試料をプレートに入れて、700rpmで振とうしながら150秒間インキュベートした。その後、1回洗浄した。プレートに拿捕された抗原をプレート上で3分間インキュベートして、PBSF中で250ng/mLのスルホタグ標識ストレプトアビジンを用いて検出した。プレートを洗浄緩衝剤で3回洗浄して、界面活性剤を含む1×Read Buffer Tを用いてMSD SECtor Imager2400装置で読み取った。Prismを用いて、滴定した抗体の関数としてパーセントなしの抗原をプロットし、二次方程式に適合させてK
Dを抽出した。処理量を向上させるため、SET試料の調製を含むMSD−SET実験を通して液体処理ロボットを用いた。表IにForteBioおよびMSD−SET親和性測定の結果を示す。
【表1】
実施例5:Octet Red384によるエピトープのビニング
【0498】
Forte Bio Octet Red384システム(Pall Forte Bio社、カリフォルニア州メンロパーク)で標準サンドイッチ方式ビニングアッセイにより抗体のエピトープビニングを行った。対照の抗標的IgGをAHQセンサに充填し、センサ上の空いているFc結合部位を関連のないヒトIgG1抗体でブロックした。次いで、センサを100nMの標的抗原に暴露して、その後、二次抗標的抗体に暴露した。ForteBio社のData Analysis Software7.0を用いてデータを処理した。抗原の会合後にさらに二次抗体が結合した場合は空いているエピトープ(非競合体)を示し、そのような結合がない場合はエピトープがブロックされたこと(競合体)を示す。この過程を4種の対照抗体について繰り返した。(i)HER2の領域IVに結合するトラスツズマブ(Cho et al., Nature. 2003 Feb 13;421(6924):756-60)、(ii)HER2の領域IIに結合するペルツズマブ(Franklin et al., Cancer Cell. 2004 Apr; 5(4):317-28)、(iii)HER2の領域IIIに結合するFab37(Fisher et al., J Mol Biol. 2010 Sep 10;402(1):217-29)、および(iv)HER2の領域Iに結合するchA21(Zhou et al., J Biol Chem. 2011 Sep 9;286(36):31676-83.; Cheng et al., Cell Res. 2003 Feb;13(1):35-48)。対照抗体の配列を以下に示す。
>トラスツズマブ重鎖可変領域アミノ酸配列
【化67】
(配列番号40)
>トラスツズマブ軽鎖可変領域アミノ酸配列
【化68】
(配列番号41)
>ペルツズマブ重鎖可変領域アミノ酸配列
【化69】
(配列番号42)
>ペルツズマブ軽鎖可変領域アミノ酸配列
【化70】
(配列番号43)
>Fab37重鎖可変領域アミノ酸配列
【化71】
>Fab37軽鎖可変領域アミノ酸配列
【化72】
>chA21重鎖可変領域アミノ酸配列
【化73】
>chA21軽鎖可変領域アミノ酸配列
【化74】
【0499】
これら4種の対照抗体と競合しない、最も高い親和性を有する抗体XMT1519、XMT1520、XMT1517、XMT1518を選別した。
【0500】
図1Aに示すXMT1517抗体、XMT1518抗体、および
図1Bに示すXMT1519抗体、XMT1520抗体が4種の対照抗体と競合しなかった。
実施例6:JIMT−1細胞を用いた抗体結合定数の測定
【0501】
Macsquantフローサイトメーター(Miltenyi Biotec, Bergisch Gladbach、独国)を用いてHER2抗体のJIMT−1細胞への細胞表面結合を評価した。JIMT−1細胞を10%のFBS(Gibco(登録商標)、Life Technologies、ニューヨーク州グランドアイランド)を含むDMEM媒地(ATCC、バージニア州マナサス)で一晩約90%の集密培養物になるまで培養して、Accutase細胞剥離液(Innovative Cell Technologies、カリフォルニア州サンディエゴ)で処理してプレート表面から剥離した。この剥離した細胞を6%のヤギ血清を含む氷冷した培地で1回洗浄して、同じ媒体中に再懸濁させた。100,000個の細胞を96ウェルプレートのV字型の底部を有するウェルに分けて、6%のヤギ血清を含む150μlのDMEM中、HER2抗体濃度を0.05〜100nMの範囲にして、氷上で3時間インキュベートした。次いで、細胞を氷冷したPBSで1回洗浄して、氷上で1時間、2%のヤギ血清と、6μg/mlの二次蛍光標識化抗体Alexa Fluor(登録商標)647で標識したヤギ抗ヒトIgG(Life Technologies Cat.#A-21445)を含む100μlのDMEMに再懸濁させた。この細胞を氷冷したPBS(Gibco(登録商標)、Life Technologies, Cat.# 10010049)で1回洗浄して、1%のパラホルムアルデヒドを含む200μlの氷冷したPBSで再懸濁させた。フローサイトメーターの各処理につき5000個の細胞を用いて細胞あたりの結合した蛍光体の量を決定した。処理毎の中央蛍光値をグラフ化して、Graphpad Prismソフトウェアを用いて、単一部位特異的結合モデルを用いた非直線回帰により抗体毎に解離定数K
dを算出した。
図2は、HER2抗体のJIMT−1細胞への結合を示している。算出されたK
d値は、3.4nM(XMT1517)、0.4nM(XMT1518)、1.2nM(XMT1519)、および1.1nM(XMT1520)であった。
実施例7:ELISAによる抗体親和性の測定
【0502】
組み換えヒトおよびカニクイザルHER2に対する前記抗体の親和性をELISAアッセイにより決定した。各ウェルで50mMの重炭酸塩緩衝剤の1μg/ml溶液(pH:9.0)50μlを用いて室温で2時間インキュベートして、96ウェルプレートの表面をヒト由来(アミノ酸23−652、Acro Biosystems Cat.# HE2-H5225)またはカニクイザル由来(アミノ酸1−652、Sino Biological, Cat.# 90295-C08H)のいずれかの精製した組み換えHER2細胞外領域で被覆した。ウェルをTTBS(50mMのTris−HCl(pH:7.4)、150mMのNaCl、および0.05%のTween20)で4回洗浄した。5%のウシ血清アルブミンを含む50μlのTTBSで1時間インキュベートしてウェルをブロックした。次いで、3%のBSAを含むTTBS50μlに各試験抗体または実施例16Hの希釈したもの(0.005〜10nMの範囲、3倍に連続希釈)を室温で2時間添加した。未結合の試験抗体をTTBS洗浄(4×)で除去した。濃度が3%のBSAを含むTTBS中に0.2μg/mlのHRPに接合した二次抗ヒトIgG(Bethyl Laboratories, #A80-115Pを各ウェルで1時間インキュベートした。未結合の二次抗体を4回のTTBS洗浄で除去した。HRP基質TMB(Bethyl Laboratories #E102)を各ウェルに加えて、黄色になるまでインキュベートした。0.2Nの硫酸を50μl添加して反応を停止した。450nmの吸光度をプレートリーダー (Molecular Devices, Spectramax M5)測定した。GraphPad Prismソフトウェアを用いてその値をプロットした。単一部位特異的結合モデルを用いた非直線回帰によりK
dを決定した。
【0503】
図3aは、抗HER2抗体XMT1517、XMT1518のヒトHER2およびカニクイザルHER2への結合結果を示す。
図3bは、抗HER2抗体XMT1519、XMT1529のヒトHER2およびカニクイザルHER2への結合結果を示す。算出したK
d値を表IIに示す。
【表2】
【0504】
これら4種の試験抗体のヒトHER2およびカニクイザルHER2への結合親和性は同様であった。
【0505】
図3cおよび
図3dは、それぞれ、抗HER2抗体XMT1519および実施例16HのヒトHER2およびカニクイザルHER2への結合結果を示す。算出されたK
d値を以下の表IIAに示す。
【表3】
【0506】
XMT1519および実施例16HのヒトHER2およびカニクイザルHER2への結合親和性は同様であった。
実施例8:JIMT−1細胞を用いた抗体競合アッセイ
【0507】
XMT1518およびXMT1519抗体が重なり合うエピトープに結合することを確かめるために、前記抗体をJIMT−1細胞への競合結合アッセイで分析した。実施例6で記載したようにJIMT−1細胞を培養した。50μl中の50,000個の細胞を96ウェルプレートのV字型底部を有するウェルに分けた。次いで、25μlの媒体中30nMのAlexa Fluor(登録商標)647と接合した抗体XMT1519を単独で、または濃度を0.05〜100nMの範囲に希釈した未標識の二次抗体(XMT1518、XMT1519、またはトラスツズマブ)と混合して、氷上で3時間インキュベートした。次いで、細胞を氷冷したPBSで1回洗浄して、氷上で1時間、2%のヤギ血清と、6μg/mlのヤギAlexa Fluor(登録商標)647標識抗ヒトIgG(Life Technologies, Cat.# A-21445)を含む100μlのDMEMで再懸濁させた。細胞を氷冷したPBSで1回洗浄して、1%パラホルムアルデヒドを含む200μlの氷冷したPBSで懸濁させた。MacsQuantフローサイトメーター(Miltenyi Biotec, Bergisch Gladbach、独国)の各処理に5000個の細胞を用いて、細胞あたりの結合した蛍光体の量を決定した。処理毎の中央蛍光値をグラフ化して、Graphpad Prismを用いて、単一部位特異的結合モデルを用いた非直線回帰により抗体毎に解離定数K
dを算出した。
図4に示すように、抗体XMT1518は、未標識XMT1519と同程度、Alexa Fluor(登録商標)647標識XMT1519の結合と競合した。このことは、両方の抗体がHER2の重なり合うエピトープを認識することを示している。一方、トラスツズマブは、Alexa Fluor(登録商標)647標識化XMT1519の結合と競合しなかった。
実施例9:抗体依存性細胞媒介細胞毒性アッセイ
【0508】
抗HER2抗体の抗体依存性細胞媒介細胞毒性(ADCC)活性をBT474細胞で定量化した。10%のFBSを含むDMEM培地中、96ウェルプレートの各ウェルに5000個の細胞を蒔いて、5%のCO
2中37℃で一晩培養した。抗体濃度を0.001〜100nM(8連続で5倍に希釈)の範囲にしてXMT1518、XMT1519、XMT1520、またはトラスツズマブを細胞に加えて、ADCC活性をプロメガ社のバイオアッセイキット(Cat.#G7018)で測定した。このキットは、ADCC活性のレポーターとしてルシフェラーゼ酵素を産生するように遺伝子操作したエフェクター細胞を用いている。ルシフェラーゼ活性を分光光度計(Molecular Devices, Spectramax M5)で測定した。Graphpad Prismソフトウェアを用いて、作動薬の対数と応答、可変勾配、4パラメータモデルを用いた非直線回帰により値(抗体で処理した細胞の各試料のルシフェラーゼ活性の、抗体で処理していない細胞の各試料のルシフェラーゼ活性に対する比)をプロットした。
【0509】
図5はADCC値を示すグラフである。XMT1519およびXMT1520は、トラスツズマブと同程度の最大活性を示している。抗体を含む信号の、抗体を含まない信号に対する比は、XMT1519が30.1、XMT1520が29.7であり、トラスツズマブでは34.6である。XMT1518の最大活性は11.0である。ADCC活性のEC
50(半数結合)値は、それぞれ、0.16nM(XMT1518)、0.18nM(XMT1519)、0.54nM(XMT1520)、および0.07nM(トラスツズマブ)である。
実施例10:MCF7細胞でのリガンド依存HER2信号伝達
【0510】
HER3リガンドであるニューレグリンβ1で細胞を処理した後、リン酸化AKTの量を測定してMCF7細胞(ATCC、HTB−22)での抗HER2抗体のリガンド依存HER2信号伝達に及ぼす効果を決定した。6ウェル培養皿の各ウェルに300,000個のMCF7細胞を0.01mg/mlのウシインスリンおよび10%のFBSを含むMEM培地に蒔いて、5%のCO
2雰囲気中37℃で一晩培養した。培地を除いて、10μg/mlの試験抗体を含む新しい培地と交換し、1時間インキュベートした。その後、40pMのニューレグリンβ1(R&D Systems、ミネソタ州ミネアポリス、Cat.# 377-HB-050)で15分間処理した。細胞を氷冷したPBSで1回洗浄して、50mMのTrisHCl(pH:7.4)、150mMのNaCl、1%トリトンX−100、cOmpleteプロテアーゼ阻害剤カクテル錠剤(ロシュ、インディアナ州インディアナポリス)、およびPhosSTOPホスファターゼ阻害剤カクテル錠剤(ロシュ、インディアナ州インディアナポリス)を含む洗浄緩衝剤200μlを添加して、溶解した。溶解物を15,000rpm、4℃で15分間遠心分離して、不溶性の残骸を除去した。製造者の指示に従ってCell Signaling Technology PathScan(登録商標) Phospho-Akt1 (Ser473) Sandwich ELISA Kitを用いてリン酸化AKTの量を決定した。
【0511】
表IIIは、MCF7細胞のニューレグリン処理によって誘導されたAKTリン酸化反応の増加を示し、未刺激の細胞で測定したAKTリン酸化反応の増加に対する百分率として表している。
【表4】
【0512】
ニューレグリンで処理するとリン酸化AKT量が5倍(未刺激の細胞に対して522%)に増加した。XMT1517、XMT1518、XMT1519、およびXMT1520では、AKTリン酸化反応でのニューレグリンによって誘導される増加は、それぞれ564%、441%、381%、および439%であり、増加率はほとんどあるいは全く下がらなかった。トラスツズマブでも増加率は同程度(369%)であった。ペルツズマブは、リガンド依存信号伝達を阻害することが示されている(Franklin et al., Cancer Cell. 2004 April 19; 5:317-28)が、未刺激の細胞の増加率付近(127%)までニューレグリンによる刺激を低減した。これらの結果は、ニューレグリンにより促進され、ペルツズマブにより阻害されるHER2およびHER3の異種二量化を阻害することで試験抗体が作用しないことを示唆している。
実施例11:MCF7、SKBR3、およびJIMT−1細胞でのリガンド独立HER2信号伝達
【0513】
抗体で4時間処理した後、リン酸化AKT量の変化を測定して、MCF7(ATCC、HTB−22)、SKBR3(ATCC、HTB−30)、JIMT−1(ATCC、HTB−30)細胞における抗HER2抗体のHER2信号伝達に及ぼす効果を決定した。細胞を6ウェル培養皿の各ウェル中の10%のFBSを含むそれらの細胞に特異的な培地に蒔いて、5%のCO
2雰囲気中37℃で一晩培養した。培地を除いて、10μg/mlの試験抗体を含む新しい培地と交換し、4時間インキュベートした。細胞を氷冷したPBSで1回洗浄して、50mMのTrisHCl(pH:7.4)、150mMのNaCl、1%トリトンX−100、cOmpleteプロテアーゼ阻害剤カクテル錠剤(ロシュ、インディアナ州インディアナポリス)、およびPhosSTOPホスファターゼ阻害剤カクテル錠剤(ロシュ、インディアナ州インディアナポリス)を含む緩衝剤200μlを添加して、溶解した。溶解物を15,000rpm、4℃で15分間遠心分離して、不溶性の残骸を除去した。製造者の指示に従ってCell Signaling Technology PathScan(登録商標) Phospho-Akt1 (Ser473) Sandwich ELISA Kitを用いてリン酸化AKTの量を決定した。
【0514】
表IVから、AKTリン酸化反応の量により示されるように、MCF7、SKBR3、およびJIMT−1細胞のリガンド独立HER2信号伝達を阻害することが分かる。結果を未処理細胞に対する百分率として表す。
【表5】
【0515】
試験抗HER2抗体は、SKBR3細胞でのHER2信号伝達を大きく阻害した。XMT1517、XMT1518、XMT1519およびXMT1520は、未処理細胞で出現するリン酸化AKT量の43%、59%、34%、および29%までリン酸化AKT量低下させた。これに対して、トラスツズマブによる低下は未処理細胞で出現するリン酸化AKT量の64%であった。
【0516】
前記抗HER2抗体は、リン酸化AKT量の低下に示されるように、JIMT−1細胞でのHER2信号伝達を阻害した。XMT1517、XMT1518、XMT1519およびXMT1520では、未処理細胞で出現するリン酸化AKT量の66%、62%、84%、および69%まで、リン酸化AKT量が低下した。同様に、トラスツズマブによる低下は、未処理細胞で出現するリン酸化AKT量の56%であった。
【0517】
MCF7細胞は、XMT1518は、トラスツズマブ同様、HER2信号伝達を阻害しなかったが、XMT1517、XMT1519、およびXMT1520は信号伝達を穏やかに低下させ、未処理細胞で起こるAKTリン酸化反応の79%、76%、および66%までAKTリン酸化反応を低下させた。
実施例12:BT474細胞でのリガンド独立HER2信号伝達
【0518】
4時間抗体で処理した後、リン酸化AKT量の変化を測定して、BT474細胞(ATCC、HTB−20)における抗HER2抗体のHER2信号伝達に及ぼす効果を決定した。BT474細胞(300,000個の細胞)を6ウェル培養皿の各ウェル中の10%のFBSを含むDMEM培地に蒔いて、5%のCO
2雰囲気中37℃で一晩培養した。培地を除いて、10μg/mlの試験抗体を含む新しい培地と交換して、4時間インキュベートした。細胞を氷冷したPBSで1回洗浄して、50mMのTrisHCl(pH:7.4)、150mMのNaCl、1%トリトンX−100、cOmpleteプロテアーゼ阻害剤カクテル錠剤(ロシュ、インディアナ州インディアナポリス)、およびPhosSTOPホスファターゼ阻害剤カクテル錠剤(ロシュ、インディアナ州インディアナポリス)を含む緩衝剤200μlを添加して、溶解した。溶解物を15,000rpm、4℃で15分間遠心分離して、不溶性の残骸を除去した。リン酸化AKTの量をウェスタン分析により分析した。各20μlの抽出物を7μlのNUPAGE充填色素(Life Technologies, Cat.#NP0007)および2μlの10×還元剤(Life Technologies, Cat.#NP0341)と混合して、4〜12%のビス−トリスポリアクリルアミドゲル(Life Technologies, Cat.#NP0341)に充填した。これをMOPSランニング緩衝剤(Life Technologies Cat.#NP000102)に90分間120ボルトで流した。分離したタンパク質を、半乾燥式電気泳動転写システム(Bio-Rad、Transblotシステム)を用いて10%のメタノールを含む転写緩衝剤(Life Technologies, Cat.#NP0006)中、10ボルトで30分間ニトロセルロース膜に転写した。この膜をブロッキング緩衝剤(Li-cor, Cat.#927-40000)中で1時間インキュベートして、次いで、1:1000に希釈した、AKTタンパク質を認識するマウス抗体(Cell Signaling Technology,#2920)、セリン473でリン酸化したAKTを認識するウサギ抗体(Cell Signaling Technology,#4060)、および1:5,000に希釈した、アクチンを認識するウサギ抗体(LiCor,Cat.#926-42210)と共に同じブロッキング緩衝剤中で1時間インキュベートした。インキュベーション後、膜10mlのTTBSで3回洗浄し、二次抗体、すなわち、IR色素(登録商標)800CWに接合したヤギ抗ウサギIgG(Li-Cor,Cat.#926-32211)、およびIR色素(登録商標)680RDに接合したヤギ抗マウスIgG(Li-Cor,Cat.#926-68070)(いずれも1:10,000に希釈)と共にブロッキング緩衝剤中で1時間インキュベートした。膜を再度、10mlのTTBSで3回洗浄して、Li-Cor Odysseyスキャナでスキャンした。スキャナのソフトウェアを用いてAKT、phospho−AKT、およびアクチンに対応するバンドを定量化した。各phospho−AKTバンドを総AKTバンドに対して正規化して、いずれの抗HER2抗体でも処理していない細胞由来のphospho−AKTタンパク質の百分率として表した。
【0519】
また、同じ実験で、抗HER2抗体のHER3リン酸化反応に及ぼす効果も調べた。上述のニトロセルロースブロットも、ブロッキング緩衝剤中1時間、1:1000で希釈した、チロシン1289のHER3リン酸化を認識するウサギ抗体(Cell Signaling Technolog,#4791)でプローブした。インキュベーション後、膜を10mlのTTBSで3回洗浄して、ブロッキング緩衝剤中1:10,000に希釈したIR色素(登録商標)800CWに接合したヤギ抗ウサギIgG(Li−Cor、Cat.#926−32211)と共に1時間インキュベートした。膜を再度、10mlのTTBSで3回洗浄して、Li-Cor Odysseyスキャナでスキャンした。スキャナのソフトウェアを用いてphospho−HER3およびアクチンに対応するバンドを定量化した。各phospho−HER3のバンドを総AKTバンドに対して正規化して、いずれの抗HER2抗体でも処理していない細胞由来のphospho−HER3タンパク質の百分率として表した。
【0520】
表Vに、AKTリン酸化反応またはHER3リン酸化反応の量により決定されたBT474細胞でのリガンド独立HER2信号伝達の阻害を示す。結果は、未刺激の細胞に対する百分率として示す。
【表6】
【0521】
抗HER2抗体XMT1519は、BT474の未処理細胞で見られるAKTリン酸化反応の約21%までAKTリン酸化反応を低下させ、HT19Bは、約30%まで低下させた。これに対して、トラスツズマブは、未処理細胞で見られるAKTリン酸化反応の約31%まで、ペルツズマブは約44%まで低下させた。HER3リン酸化反応はすべての抗体により穏やかに影響された。XMT1519、XMT1520、トラスツズマブ、およびペルツズマブで、それぞれ、未処理細胞で見られるAKTリン酸化反応の71%、76%、80%、および85%までAKTリン酸化反応が低下した。
実施例13:内部移行率の測定
【0522】
抗体XMT1518、XMT1519、XMT1520、およびトラスツズマブがそれぞれ、SKBR3細胞の細胞表面から内部移行する速度を、96ウェルに基づくアッセイ(96-well based assay)で蛍光により決定した。SKBR3細胞を96ウェルプレートに播種して、5%のCO
2中37℃で10%の胎児ウシ血清(FBS)(Gibco(登録商標)、Life Technologies、ニューヨーク州グランドアイランド、Cat.# 16140-071)を含むDMEM培地(ATCC、バージニア州マナサス、Cat.#30〜2002)で一晩培養した。細胞を氷上で1時間、10μg/mlの抗体を含む培地でインキュベートして、氷冷した培地で洗浄し、Alexa Fluor(登録商標)−647と接合した1μg/mlのヤギ抗ヒトIgG−1価Fab断片(Rockland Immunochemicals、ペンシルベニア州ギルバーツヴィル、Cat.#809−1102)を含む媒体75μlと共に氷上で1時間インキュベートした。洗浄後、細胞を37℃のインキュベーターに移して、様々な時点で内部移行させた。700nmチャネルを用いたOdysseyスキャナ(Li-Cor Biosciences、ネブラスカ州リンカーン)でプレートをスキャンした。次いで、プレートを氷上で100mMのグリシン、20mMのMgSO
4、50mMのKClと共にpH2.2でインキュベートして酸洗浄し、細胞表面に結合した抗体を除去し、氷冷したPBSで洗浄し、再度スキャンして、細胞により内部移行した蛍光体の量を決定した。
図6は、4時間に渡る抗体の内部移行率を示している。すべての抗体の内部移行率は、トラスツズマブの内部移行率とほぼ同じで、0時間で結合した総表面の約50%が4時間で内部移行した(
図6)。
実施例13A:SKBR3細胞でのHER2内部移行
【0523】
SKBR3細胞での抗HER2抗体の組み合わせのHER2内部移行に及ぼす効果を蛍光顕微鏡法で調べた。トラスツズマブをAlexa Fluor-647と接合して、細胞内のトラスツズマブの位置と、HER2と思われる位置を視覚化した。SKBR3細胞を4チャンバー顕微鏡スライドに播種して、装着し、5%のCO
2中37℃で10%の胎児ウシ血清(FBS)(Gibco(登録商標)、Life Technologies、ニューヨーク州グランドアイランド、Cat.#16140−071)を含むDMEM培地(ATCC、バージニア州マナサス、Cat.#30−2002)で一晩培養した。SKBR3細胞を、(i)トラスツズマブ−Alexa−647とペルツズマブの組み合わせ、または(ii)トラスツズマブ−Alexa−647、ペルツズマブ、HER2抗体XMT1519の組み合わせのいずれかを含む培地で90分間インキュベートした。トラスツズマブの位置を蛍光顕微鏡で視覚化した。
図7に示すように、ペルツズマブ単独と組み合わせたトラスツズマブ−Alexa Fluor-627の大部分は、細胞膜の位置を示唆するオレンジ色の細胞マスクと共局所化された。ペルツズマブおよびXMT1519の両方と組み合わせたトラスツズマブ−Alexa Fluor−647の大部分は、リソソームの位置を示唆するLysotrackerと共局所化された。この結果は、トラスツズマブとペルツズマブと組み合わせたXMT1519の存在は内部移行およびHER2のリソソームへの輸送を促進することを示唆している。
実施例13B:抗HER2抗体の組み合わせを用いた内部移行率の測定
【0524】
異なるエピトープを認識する複数の抗HER2抗体の組み合わせのHER2内部移行率に及ぼす効果を、実施例13に記載したのと同様の96ウェルプレートに基づくアッセイにより決定した。この実験では、細胞を試験HER2抗体単独、試験HER2抗体とトラスツズマブ、またはトラスツズマブおよびペルツズマブとの組み合わせで処理して、様々な時点の内部移行した抗HER2抗体量を測定した。
【0525】
このアッセイでは、40,000個のSKBR3細胞を3個の96ウェルプレート(透明な底部のウェルを有する黒色のプレート)の各ウェル中の10%のFBSを含むDMEM培地に蒔いて、5%のCO
2中37℃で一晩付着させた。翌日、以下のように細胞を抗体で処理した。各ウェルの培地を、試験HER2抗体またはトラスツズマブの1つを5μg/ml含む氷冷した新しい培地と交換して、氷上で1時間インキュベートした。氷冷した培地で2回細胞を洗浄して未結合の抗体を除去した。検出では、5μg/mlのAlexa647標識抗ヒトIgG−Fab断片を各ウェルの氷冷した培地に加えて、氷上で1時間インキュベートした。氷冷した培地で各ウェルを2回洗浄して、未結合の二次抗体を除去した。次いで、トラスツズマブを5μg/ml含む培地、またはトラスツズマブとペルツズマブをそれぞれ5μg/mlを含む培地、あるいは追加の抗体なしの培地を各ウェルに加えた。各処理は、同じ試料を3つずつ用意して行った。ウェルの1セットをAlexa647標識抗ヒトIgG1価Fab断片単独で処理して、これらウェルで測定された蛍光を用いてバックグラウンドの蛍光を減じた。
【0526】
1個のプレートを氷上に残して、処理毎の0時間での値を決定した。他のプレートは37℃でインキュベートした。1.5時間後、37℃から1つのプレート、および0時間のプレートを氷冷したPBSで2回洗浄して、680nmチャネルのLicor Odysseyスキャナを用いてスキャンした。各ウェルで測定された蛍光体量を処理毎の総蛍光体量として用いた。次いで、100mMのグリシン、50mMのKCl、および20mMのMgSO
4、pH2.2で細胞を2回酸洗浄し、氷冷したPBSで2回洗浄して表面に結合した抗体を除去した。プレートを再度スキャンして、各ウェルで内部移行した蛍光体の量を決定した。翌日、同様にして24時間プレートを分析した。
【0527】
内部移行した各HER2抗体(または対照ウェルのトラスツズマブの)百分率を、バックグラウンドを減じて、3つの同じ試料のそれぞれを平均して、処理毎の総蛍光体量で内部移行した蛍光体量を除して、100を乗じて算出した。
【0528】
表VAに示すように、トラスツズマブおよびペルツズマブの両方と組み合わせると、XMT1518、XMT1519、およびXMT1520の80〜90%は、1.5時間以内に内部移行する。XMT1517は、60%が内部移行したが、これはおそらくその非常に高い解離速度によるもので、それによってインキュベーション中に細胞から拡散したと思われる。トラスツズマブと組み合わせると各試験抗体の20〜40%が1.5時間以内に内部移行した。各試験抗体が単独で存在する場合は約15%が内部移行した。トラスツズマブ単独では1.5時間以内に約15%が内部移行し、ペルツズマブと組み合わせると約30%が内部移行したことが示された。
【0529】
したがって、3種のHER2抗体、すなわち、試験HER2抗体のいずれか1種と、トラスツズマブ、およびペルツズマブのの組み合わせは、HER2飲食作用率を高めると思われ、それによって抗体の内部移行率を高める。
【表7】
【表8】
実施例14:HER2の分解
【0530】
SKBR3細胞での抗HER2抗体のHER2分解に及ぼす効果を、抗体の処理後にウェスタン分析により決定した。300,000個のSKBR3細胞を6ウェル培養皿の各ウェル中の10%のFBSを含むDMEM培地に蒔いて、5%のCO
2雰囲気中37℃で一晩培養した。培地を除いて、各抗体を10μg/ml含む新しい培地と交換し、4時間インキュベートした。細胞を氷冷したPBSで1回洗浄して、50mMのTrisHCl(pH:7.4)、150mMのNaCl、1%トリトンX−100、cOmpleteプロテアーゼ阻害剤カクテル錠剤(ロシュ、インディアナ州インディアナポリス)、およびPhosSTOPホスファターゼ阻害剤カクテル錠剤(ロシュ、インディアナ州インディアナポリス)を含む緩衝剤200μlを添加して、溶解した。溶解物を15,000rpm、4℃で15分間遠心分離して、不溶性の残骸を除去した。各20μlの抽出物を7μlのNUPAGE充填色素(Life Technologies, Cat.#NP0007)および2μlの10×還元剤(Life Technologies, Cat.#NP0341)と混合して、4〜12%のビス−トリスポリアクリルアミドゲル(Life Technologies, Cat.#NP0341)に充填した。これをMOPSランニング緩衝剤(Life Technologies Cat.#NP000102)に90分間120ボルトで流した。分離したタンパク質を、半乾燥式電気泳動転写システム(Bio−Rad、Transblotシステム)を用いて10%のメタノールを含む転写緩衝剤(Life Technologies, Cat.#NP0006)中で、10ボルトで30分間ニトロセルロース膜に転写した。この膜をブロッキング緩衝剤(Li-cor, Cat.#927-40000)中で1時間インキュベートして、次いで、1:1,000で希釈した、HER2タンパク質を識別するウサギ抗体(Cell Signaling Technology, Cat.#2165)、および1:5,000で希釈したアクチンを識別するウサギ抗体(LiCor, Cat.#926-42210)と共に同じブロッキング緩衝剤中で1時間インキュベートした。インキュベーション後、膜を10mlのTTBSで3回洗浄し、二次抗体、すなわち、IR色素(登録商標)800CWに接合したヤギ抗ウサギIgG(Li-Cor,Cat.#926-32211)、およびIR色素(登録商標)680RDに接合したヤギ抗マウスIgG(Li−Cor,Cat.#926−68070)(いずれも1:10,000に希釈)と共にブロッキング緩衝剤中で1時間インキュベートした。膜を再度、10mlのTTBSで3回洗浄して、Li-Cor Odysseyスキャナでスキャンした。スキャナのソフトウェアを用いて完全な長さのHER2タンパク質およびアクチンに対応するバンドを定量化した。各HER2バンドをアクチンのバンドに対して正規化して、いずれの抗HER2抗体でも処理していない細胞由来のHER2タンパク質の百分率として表した。
【0531】
図8は、試験抗体単独またはトラスツズマブと組み合わせてSKBR3細胞を処理したところ、 HER2量にはほとんどあるいは全く効果がなかったが、XMT1518およびXMT1520は例外で、完全な長さのHER2をそれぞれ78%および68%まで減少させ、低分子量の分解物を生じたと思われることを示している。しかしながら、トラスツズマブ、ペルツズマブ、および試験HER2抗体の1種の3つの組み合わせは、HER2を大きく分解して、HER2分解物が生じたと思われる。XMT1518またはXMT1520をトラスツズマブおよびペルツズマブと組み合わせると、最大の低下が見られ、20%または31%のHER2が残留した。抗体XMT1517またはXMT1519をトラスツズマブおよびペルツズマブと組み合わせると、それぞれHER2の通常量の40%または42%が残留した。
実施例15:エピトープマッピング
【0532】
Integral Molecular Inc.(米国ペンシルベニア州フィラデルフィア、マーケットストリート3711スイート900)によりShotgun Mutagenesis Technologyを用いて抗体XMT1517およびXMT1519のエピトープマッピングが行われた。Shotgun Mutagenesisは、真核細胞内の変異させた標的タンパク質の大型ライブラリーを発現および分析することが可能な、独占所有権のある高処理細胞発現技術を採用している。機能の変化をアッセイするため、タンパク質の各残基を個々に変異させて、通常、他の複数のアミノ酸にする。タンパク質は標準哺乳類細胞株内で発現するので、真核翻訳処理または翻訳後処理を必要とする難しいタンパク質でもマッピングすることができる。
【0533】
Shotgun Mutagenesisマッピングにより、XMT1517結合について6種の重要なアミノ酸(C453、H473、N476、R495、H497、およびW499)が同定された。このことは、XMT1517が、HER2のIII領域のC末端および領域IVのN末端の領域に結合することを示している。また、H456およびG496の2つの二次的に重要な突然変異も、XMT1517のHER2との結合に関わる可能性がある。
【0534】
XMT1519結合について3種の重要なアミノ酸(E521、L525、およびR530)が同定された。このことは、XMT1519がHER2の領域IVのN末端の領域に結合することを示している。
実施例16:HER2−(EG2-MI-(10kDa PHF-BA-(AF-HPA-Ala)))の合成
【化75】
【0535】
2014年10月10日に提出された米国継続出願14/512,316号に記載の手順を用いてHER2−(EG2−MI−(10kDa PHF−BA−(AF−HPA−Ala)))複合体を作製した。表VIに、それら抗体−重合体薬物複合体の詳細を示す。
【表9】
【0536】
前記HER2−(EG2-MI-(10kDa PHF-BA-(AF-HPA-Ala)))複合体のピーク分子量は約170kDa〜約230kDaであった。製造・測定した重合体および重合体複合体は、典型的には多分散度が1.5以下であった。重合体−薬物複合体(すなわち、抗体に付加した薬物担持重合体鎖)は、約27モル%〜約33モル%のβ−アラニン、約6.4モル%〜約9.6モル%のAF−HPA−Ala、および約1.5モル%〜約4モル%のEG2−MIを含んでいた。
実施例17:リツキシマブ−(EG2-MI-(10kDa PHF-BA-(AF-HPA-Ala)))の合成
【化76】
【0537】
2014年10月10日に提出された米国継続出願14/512,316号に記載の手順を用いてリツキシマブ−(EG2−MI−(10kDa PHF-BA-(AF-HPA-Ala)))複合体(非結合の対照)を作製した。表VIIに、これら抗体−重合体薬物複合体の詳細を示す。
【表10】
【0538】
HER2−(EG2−MI−(10kDa PHF-BA-(AF-HPA-Ala)))複合体のピーク分子量は約170kDa〜約230kDaであった。製造・測定した重合体および重合体複合体は、典型的には多分散度が1.5以下であった。重合体−薬物複合体(すなわち、抗体に付加した薬物担持重合体鎖)は、約27モル%〜約33モル%のβ−アラニン、約6.4モル%〜約9.6モル%のAF−HPA−Ala、および約1.5モル%〜約4モル%のEG2−MIを含んでいた。
実施例18:HER2−(EG2−MI−(10kDa PHF-BA-(AF-HPA-Ala)))複合体の細胞毒性アッセイ
【0539】
Cell Titer-Glo(プロメガ社)を用いて、HER2-(EG2-MI-(10kDa PHF-BA-(AF-HPA-Ala)))複合体を生体外の腫瘍細胞株での抗増殖性について評価した。JIMT−1(HER2培地発現細胞、DSMZ、Braunschweig、独国、Cat.#ACC589)、MDA−MB−361(HER2培地発現ヒト乳癌細胞、ATCC、Cat.#HTB−27)、MDA−MB−453細胞(3種陰性乳癌細胞株、ATCC、Cat.#HTB−131)を10%のFBS(Gibco(登録商標)、Life Technologies、ニューヨーク州グランドアイランド、Cat.#16140−071)を含むDMEM培地(ATCC、バージニア州マナサス、Cat.#30−2002)で培養した。NCI−H522(非小細胞肺上皮悪性腫瘍細胞株、増幅せず、ATCC、Cat.#CRL−5810)、およびNCI−H2170(非小細胞肺上皮悪性腫瘍細胞株、ATCC、Cat.#CRL−5928)細胞をRPMI−1640培地(ATCC、Cat.#30−2001)で培養した。NCI−H1581(非小細胞肺上皮悪性腫瘍培地発現細胞株、増幅せず、ATCC、Cat.#CRL−5878)細胞をDMEM:F12培地(ATCC、Cat.#30−2006)で培養した。SNU5(胃上皮悪性腫瘍細胞株、増幅せず、ATCC、Cat.#CRL−5973)を20%のFBSを含むIscoveダルベッコ改変イーグル培地(Invitrogen Life Technologies、Cat.#12440053)で培養した。OVCAR3(卵巣腺癌細胞株、増幅せずATCC、Cat.#HTB−161)を20%のFBSを含むRPMI培地で培養した。MDA−MB−175−VII(ヒト乳癌細胞株、増幅せずATCC、Cat.#HTB−25)を20%のFBSを含むLeibovitz L-15培地で培養した。CAMA−1(ヒト乳癌細胞株、増幅せず、ATCC、Cat.#HTB−21)を90%のATCC処方イーグル最小必須培地で培養した。ZR75−1(ヒト乳癌細胞株、増幅せずATCC、Cat.#CRL−1500)をRPMI−1640培地で培養した。HCC1187(ヒト乳癌細胞株、増幅せずATCC、Cat.#CRL−2322)をRPMI−1640培地で培養した。HCC38(ヒト乳癌細胞株、増幅せずATCC、Cat.#CRL−2314)をRPMI−1640培地で培養した。T47D(ヒト乳癌細胞株、増幅せずATCC、Cat.#HTB−133)をRPMI−1640培地で培養した。HCC70(ヒト乳癌細胞株、増幅せずATCC、Cat.#CRL−2315)をRPMI−1640培地で培養した。MDA−MB−231(ヒト乳癌細胞株、増幅せずATCC、Cat.#HTB−26)をDMEM培地で培養した。CALU3(ヒト肺腺癌細胞株ATCC、Cat.#HTB−55)をATCC処方イーグル最小必須培地で培養した。A549(ヒト肺上皮性悪性腫瘍細胞株、増幅せずATCC、Cat.#CCL−185)をF12K培地で培養した。NCI−H2122(ヒト肺腺癌細胞株、増幅せず、ATCC、Cat.#CRL−5985)をRPMI−1640培地(ATCC、Cat.#30−2001)で培養した。NCI−H460(ヒト肺上皮性悪性腫瘍細胞株、増幅せずATCC、Cat.#HTB−177)をRPMI−1640培地(ATCC、Cat.#30−2001)で培養した。SHP−77(ヒト小細胞肺癌細胞株、増幅せずATCC、Cat.#CRL−2195)をRPMI−1640培地(ATCC、Cat.#30−2001)で培養した。KATO III(ヒト胃上皮悪性腫瘍細胞株、増幅せず、ATCC、Cat.#HTB−103)を20%のFBSを含むIscoveダルベッコ改変イーグル培地で培養した。MKN-45 III(ヒト胃腺癌細胞株、増幅せず、DSMZ、Braunschweig、独国、Cat.#ACC409)をRPMI−1640培地(ATCC、Cat.#30−2001)で培養した。SKOV3(ヒト卵巣腺癌細胞株、ATCC、Cat.#HTB−77)をMcCoyの5a培地で培養した。TOV−21G(ヒト卵巣腺癌細胞株、増幅せず、ATCC、Cat.#CRL−11730)を、最終濃度が1.5g/Lの重炭酸ナトリウムを含むMCDB 105培地および最終濃度が2.2g/Lの重炭酸ナトリウムを含む培地199の1:1の混合物中で培養した。BT474(HER2高発現ヒト乳癌細胞、ATCC、Cat.#HTB−20)を10%のFBSを含むDMEM培地で培養した。NCI−N87(HER2高発現胃癌細胞株、ATCC、Cat.#CRL−5822)を10%のFBSを含むRPMI−1640培地で培養した。
【0540】
細胞毒性アッセイでは、96ウェルプレートのウェルあたり3000個の細胞密度で細胞を播種して、5%のCO
2の存在下37℃で一晩インキュベートしながら付着させた。培地を、HER2-(EG2-MI-(10kDa PHF-BA-(AF-HPA-Ala)))複合体(100nM〜0.1pMの範囲で)またはカドサイラ(Genentech)を含む新しい培地と交換し、5%のCO
2の存在下37℃で細胞を72時間または6日間インキュベートした。CellTiter-Glo(登録商標)Luminescent Cell Viability Assay(プロメガ社、ウィスコンシン州マジソン)を用いて、キットの指示に従って細胞生存率を測定した。細胞生存率を未処理の対照に対して正規化して、百分率として表した。値をプロットして、Graphpad Prismソフトウェア(カリフォルニア州サンディエゴ)を用いて4パラメータ、可変勾配、投与反応曲線適合アルゴリズムによりIC
50値を算出した。表VIIIに、HER2-(EG2-MI-(10kDa PHF-BA-(AF-HPA-Ala)))複合体およびカドサイラの細胞毒性の例示的な結果を示す。
【表11】
【0541】
表VIIIに示すように、すべての試験した細胞株ですべてのHER2抗体−重合体−薬物複合体は、カドサイラよりも高い有効性を示した。
実施例19:変異体HER2を有する細胞株でのHER2-(EG2-MI-(10kDa PHF-BA-(AF-HPA-Ala)))複合体の細胞毒性アッセイ
【0542】
Cell Titer-Glo(プロメガ社)を用いて、HER2-(EG2-MI-(10kDa PHF-BA-(AF-HPA-Ala)))複合体を生体外の腫瘍細胞株での抗増殖性について評価した。NCI−H1781(HER2変異体発現ヒト肺癌細胞、ATCC、Cat.#CRL−5894)を10%のFBSを含むRPMI−1640培地で培養した。
【0543】
細胞毒性アッセイでは、96ウェルプレートのウェルあたり3000個の細胞密度で細胞を播種して、5%のCO
2の存在下37℃で一晩インキュベートしながら付着させた。次いで、培地を、HER2-(EG2-MI-(10kDa PHF-BA-(AF-HPA-Ala)))複合体(100nM〜0.1pMの範囲で)、実施例17A(リツキシマブ−(EG2-MI-(10kDa PHF-BA-(AF-HPA-Ala)))、またはカドサイラ(Genentech)を含む新しい培地と交換して、5%のCO
2の存在下37℃で細胞を72時間インキュベートした。CellTiter-Glo(登録商標)Luminescent Cell Viability Assay(プロメガ社、ウィスコンシン州マジソン)を用いて、キットの指示に従って細胞生存率を測定した。細胞生存率を未処理の対照に対して正規化して、百分率として表した。値をプロットして、Graphpad Prismソフトウェア(カリフォルニア州サンディエゴ)を用いて4パラメータ、可変勾配、投与反応曲線適合アルゴリズムによりIC
50値を算出した。表IXに、これらアッセイの結果を示す。
【表12】
【0544】
表IXで示されるように、試験した細胞株で、すべてのHER2抗体−重合体−薬物複合体は、リツキシマブ抗体−重合体−薬物複合体またはカドサイラよりも高い有効性を示した。
実施例20:PBRM−重合体−薬物複合体の投与に対する腫瘍成長応答
【0545】
メスのCB-17 SCIDマウスに対して、NCI−N87細胞(群あたりn=10)、JIMT−1細胞(群あたりn=10)、SNU−5細胞(群あたりn=10)、H522細胞(群あたりn=10)、SKOV3細胞(群あたりn=10)、Calu−3細胞(群あたりn=10)、NCI−N87カドサイラ耐性細胞(群あたりn=10)、NCI−N87−MSAカドサイラ耐性細胞(群あたりn=10)、またはBT474腫瘍断片(群あたりn=10)を皮下接種した。メスのNCr nu/nuに対して、TOV−21G細胞(群あたりn=10)を皮下接種した。1日目または示したように、試験化合物または媒体を単回投与量として静脈内投与した。デジタルカリパスを用いて
図8〜
図18に示した時間に腫瘍サイズを測定した。腫瘍体積を算出して、その体積から腫瘍の成長の遅延を決定した。腫瘍のサイズが800〜1500mm
3になったら、マウスを犠牲にした。群毎に、腫瘍体積を平均±標準誤差(SEM)として報告した。
【0546】
図9は、1日目の単回投与量として媒体、実施例16Aのトラスツズマブ−(EG2-MI-(10kDa PHF-BA-(AF-HPA-Ala)))(0.67mg/kg)、または実施例16DのXMT1519-(EG2-MI-(10kDa PHF-BA-(AF-HPA-Ala)))(0.67mg/kg)を静脈内投与した後の、NCI−N87細胞を皮下接種したマウス(群あたりn=10)における腫瘍応答の結果を示す。媒体およびトラスツズマブ−(EG2-MI-(10kDa PHF-BA-(AF-HPA-Ala)))では、腫瘍体積の増加が見られた。XMT1519-(EG2-MI-(10kDa PHF-BA-(AF-HPA-Ala)))では、60%の部分退縮が見られ、29日目に腫瘍成長阻害分析に基づく可能な治療活性(TGI:88%)が得られた。
【0547】
図10は、1日目の単回投与量として媒体、カドサイラを20mg/kg、実施例16Aのトラスツズマブ−(EG2-MI-(10kDa PHF-BA-(AF-HPA-Ala)))(0.67mg/kg)、または実施例16DのXMT1519-(EG2-MI-(10kDa PHF-BA-(AF-HPA-Ala)))(0.67mg/kg)を静脈内投与した後の、JIMT−1細胞(群あたりn=10)を皮下接種したマウスにおける腫瘍応答の結果を示す。媒体およびカドサイラでは、腫瘍体積の増加が見られた。トラスツズマブ−(EG2-MI-(10kDa PHF-BA-(AF-HPA-Ala)))複合体およびXMT1519-(EG2-MI-(10kDa PHF-BA-(AF-HPA-Ala)))複合体では、それぞれ、治療可能性が示され、40%および70%退縮があった。XMT1519-(EG2-MI-(10kDa PHF-BA-(AF-HPA-Ala)))では、5つの部分退縮および2つの完全退縮があり、69日目の試験終了時で腫瘍がなく生存していた。
【0548】
図11は、媒体、カドサイラ(1日目の単回投与量として10mg/kg)、カドサイラ10mg/kgとペルツズマブ15mg/kgの組み合わせ(3週間、毎週投与)、または実施例16D、XMT1519-(EG2-MI-(10kDa PHF-BA-(AF-HPA-Ala)))(1日目の単回投与量として0.67mg/kg)を静脈内投与した後の、JIMT−1細胞を皮下接種したマウス(群あたりn=10)における腫瘍応答の結果を示す。媒体、カドサイラ、およびカドサイラとペルツズマブの組み合わせすべてで、腫瘍体積の増加が見られた。XMT1519-(EG2-MI-(10kDa PHF-BA-(AF-HPA-Ala)))複合体では60%の部分退縮が見られ、最も高い有効性を示した。
【0549】
図12は、媒体、実施例16FのXMT1519-(EG2-MI-(10kDa PHF-BA-(AF-HPA-Ala)))(1日目の単回投与量として0.67mg/kg)、15mg/kgのトラスツズマブと15mg/kgのペルツズマブの組み合わせ(3週間、毎週、すなわち、1日目、8日目、および15日目に投与)、または15mg/kgのトラスツズマブと15mg/kgのペルツズマブ(それぞれ、3週間、毎週、すなわち、1日目、8日目、および15日目に投与)と実施例16FのXMT1519-(EG2-MI-(10kDa PHF-BA-(AF-HPA-Ala)))(1日目の単回投与量として0.67mg/kg)の3種の組み合わせを静脈内投与した後の、NCI−N87細胞(群あたりn=10)を皮下接種したマウスにおける腫瘍応答の結果を示す。媒体では、腫瘍体積の増加が見られた。XMT1519-(EG2-MI-(10kDa PHF-BA-(AF-HPA-Ala)))単独またはその組み合わせではすべて、腫瘍の縮小が見られ、トラスツズマブ、ペルツズマブと実施例16Fの3種の組み合わせが最も効果が高く、100%の部分退縮があった。実施例16F単独、またはトラスツズマブとペルツズマブの組み合わせは、それぞれ、10個のうち1個が部分応答を示した。3種の組み合わせは、実施例16F単独治療、またはトラスツズマブとペルツズマブの2種の組み合わせに比べて部分応答率の数値がより高く、腫瘍体積の縮小が有意に大きかった(p<.05、マン・ホイットニー試験)。部分応答は、少なくとも3回の一連の腫瘍測定で維持されたベースライン腫瘍体積の50%未満までの退縮として定義される。
【0550】
ペルツズマブおよびトラスツズマブと組み合わせたXMT1519-(EG2-MI-(10kDa PHF-BA-(AF-HPA-Ala)))の総生存利益は、XMT1519-(EG2-MI-(10kDa PHF-BA-(AF-HPA-Ala)))のみの投与と比べて大きく異なっており(P<0.011、ログランク検定)、ペルツズマブとトラスツズマブの組み合わせによって得られた転帰(P<0.273、ログランク検定)またはXMT1519抗体、ペルツズマブ、およびトラスツズマブの3種の組み合わせによって得られた転帰(P<0.05、ログランク検定)よりも勝っていた。
【0551】
図13は、媒体、カドサイラ(単回投与量として10mg/kg)、実施例16EのXMT1519-(EG2-MI-(10kDa PHF-BA-(AF-HPA-Ala)))(単回投与量として5mg/kg、2mg/kg、または0.67mg/kg)、または実施例17Bのリツキシマブ−(EG2-MI-(10kDa PHF-BA-(AF-HPA-Ala)))(1日目の単回投与量としてとして5mg/kg)を静脈内投与した後の、SNU−5細胞(群あたりn=10)を皮下接種したマウスにおける腫瘍応答の結果を示す。18日目に媒体では腫瘍体積の増加が見られた。XMT1519-(EG2-MI-(10kDa PHF-BA-(AF-HPA-Ala)))複合体では腫瘍の縮小が見られ、カドサイラまたはリツキシマブ−(EG2-MI-(10kDa PHF-BA-(AF-HPA-Ala)))に比べて高い有効性を示した。また、投与量5mg/kgおよび2mg/kgでは腫瘍のない生存者100%、投与量0.67mg/kgでは腫瘍のない生存者が90%という結果が得られた。
【0552】
図14は、媒体、カドサイラ(単回投与量として10mg/kg)、実施例16EのXMT1519-(EG2-MI-(10kDa PHF-BA-(AF-HPA-Ala)))(1日目の単回投与量として5mg/kgまたは2mg/kg)を静脈内投与した後の、TOV−21G細胞(群あたりn=10)を皮下接種したマウスにおける腫瘍応答の結果を示す。XMT1519-(EG2-MI-(10kDa PHF-BA-(AF-HPA-Ala)))複合体では、腫瘍の遅延が見られた。また、カドサイラよりも高い有効性を示した。カドサイラは治療活性の閾値を得られなかった。
【0553】
図15は、媒体、カドサイラ(単回投与量として10mg/kg)、実施例16EのXMT1519-(EG2-MI-(10kDa PHF-BA-(AF-HPA-Ala)))(単回投与量として5mg/kg)、または実施例17Bのリツキシマブ−(EG2-MI-(10kDa PHF-BA-(AF-HPA-Ala)))(1日目の単回投与量として5mg/kg)を静脈内投与した後の、H522細胞(群あたりn=10)を皮下接種したマウスにおける腫瘍応答の結果を示す。XMT1519-(EG2-MI-(10kDa PHF-BA-(AF-HPA-Ala)))複合体では、腫瘍の遅延が見られた。また、カドサイラおよびリツキシマブ−(EG2-MI-(10kDa PHF-BA-(AF-HPA-Ala)))よりも高い有効性を示した。これらは治療活性の閾値を得られなかった。
【0554】
図16は、媒体、カドサイラ(単回投与量として10mg/kg)、実施例16EのXMT1519-(EG2-MI-(10kDa PHF-BA-(AF-HPA-Ala)))(単回投与量として5mg/kg)、実施例17Bのリツキシマブ−(EG2-MI-(10kDa PHF-BA-(AF-HPA-Ala)))(1日目の単回投与量として5mg/kg)を静脈内投与した後の、SKOV3細胞(群あたりn=10)を皮下接種したマウスにおける腫瘍応答の結果を示す。XMT1519-(EG2-MI-(10kDa PHF-BA-(AF-HPA-Ala)))では、10個の完全応答からなる100%退縮という結果が得られた。また、カドサイラまたはリツキシマブ−(EG2-MI-(10kDa PHF-BA-(AF-HPA-Ala)よりも高い有効性を示した。これらは治療活性の閾値を得られなかった。
【0555】
図17は、媒体、または実施例16FのXMT1519-(EG2-MI-(10kDa PHF-BA-(AF-HPA-Ala)))(1日目の単回投与量として5mg/kg)を静脈内投与した後の、Calu−3細胞(群あたりn=10)を皮下接種したマウスにおける腫瘍応答の結果を示す。XMT1519-(EG2-MI-(10kDa PHF-BA-(AF-HPA-Ala)))では、2個の部分応答および8個の完全応答からなる100%の退縮応答という結果が得られた。このうち、6個は60日目に腫瘍がなくなった。
【0556】
図18は、媒体、カドサイラ(単回投与量として10mg/kg)、実施例16HのXMT1519-(EG2-MI-(10kDa PHF-BA-(AF-HPA-Ala)))(単回投与量として3mg/kg)、または実施例17Bのリツキシマブ−(EG2-MI-(10kDa PHF-BA-(AF-HPA-Ala)))(1日目に3mg/kg)を静脈内投与した後の、患者由来の異種移植モデルBRE-0333 HER2 1+(群あたりn=8)における腫瘍応答の結果を示す。XMT1519-(EG2-MI-(10kDa PHF-BA-(AF-HPA-Ala)))複合体では、腫瘍の遅延が見られた。また、カドサイラまたはリツキシマブ−(EG2-MI-(10kDa PHF-BA-(AF-HPA-Ala)))よりも高い有効性を示した。
【0557】
図19は、媒体、カドサイラ(単回投与量として10mg/kg)、実施例16HのXMT1519-(EG2-MI-(10kDa PHF-BA-(AF-HPA-Ala)))(1mg/kgまたは3mg/kg)、または実施例17Bのリツキシマブ−(EG2-MI-(10kDa PHF-BA-(AF-HPA-Ala)))(1日目の単回投与量として3mg/kg)を静脈内投与した後の、患者由来の異種移植モデルMAXF_1162 HER2 3+(群あたりn=10)における腫瘍応答の結果を示す。XMT1519-(EG2-MI-(10kDa PHF-BA-(AF-HPA-Ala)))では、1mg/kgおよび3mg/kgのいずれの場合も、100%の退縮応答と腫瘍のない生存者という結果が得られた。また、カドサイラまたは、リツキシマブ−(EG2-MI-(10kDa PHF-BA-(AF-HPA-Ala)))(3mg/kg)よりも高い有効性を示した。
【0558】
図20は、媒体、カドサイラ(単回投与量として5mg/kg)、実施例16HのXMT1519-(EG2-MI-(10kDa PHF-BA-(AF-HPA-Ala)))(1日目の単回投与量として5mg/kgまたは2mg/kg)、実施例17Cのリツキシマブ−(EG2-MI-(10kDa PHF-BA-(AF-HPA-Ala)))(1日目の単回投与量として5mg/kg)、またはXMT1519(単回投与量として5mg/kg)を静脈内投与した後の、BT474腫瘍断片(群あたりn=10)を皮下接種したマウスにおける腫瘍応答の結果を示す。XMT1519-(EG2-MI-(10kDa PHF-BA-(AF-HPA-Ala)))複合体では、完全腫瘍退縮が見られた。また、カドサイラ、リツキシマブ−(EG2-MI-(10kDa PHF-BA-(AF-HPA-Ala)))、またはXMT1519よりも高い有効性を示した。
【0559】
単回投与量1mg/kgまたは0.67mg/kgのXMT1519−(EG2−MI−(PHF−BA−(AF−HPA−Ala)))複合体では、低HER2発現乳癌および胃癌モデルで完全退縮が見られたが、アド−トラスツズマブエムタンシン(カドサイラ)は投与量が10mg/kg以上では不活性であった。HER2駆動性腫瘍モデルでは、XMT1519−(EG2−MI−(PHF−BA−(AF−HPA−Ala)))複合体は広く用いられる抗HER2治療薬トラスツズマブおよびペルツズマブとの組み合わせで相乗効果を示した。XMT1519−(EG2−MI−(PHF−BA−(AF−HPA−Ala)))複合体は、優れた薬物動態プロファイルを示し、非ヒト霊長類では治療投与量での忍容性が優れていた。
【0560】
臨床前データは、XMT1519−(EG2−MI−(PHF−BA−(AF−HPA−Ala)))複合体が、HER2標的治療薬から恩恵を受ける可能性のある患者数を大きく拡大する可能性があることを示唆している。前記複合体は、HER2受容体がわずか10,000個で他の治療薬は不活性である癌に効率的な薬物送達を行う。
その他の実施形態
【0561】
本発明はその詳細な説明と合わせて記載されたが、上述の記載は例示を意図するものであって、添付の請求項の範囲により定義される本発明の範囲を限定することを意図するものではない。その他の側面、利点、および変形は、以下の請求項の範囲内である。