特許第6853060号(P6853060)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6853060
(24)【登録日】2021年3月15日
(45)【発行日】2021年3月31日
(54)【発明の名称】映像信号伝送装置
(51)【国際特許分類】
   H04N 21/235 20110101AFI20210322BHJP
   H04N 21/2383 20110101ALI20210322BHJP
【FI】
   H04N21/235
   H04N21/2383
【請求項の数】5
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2017-26279(P2017-26279)
(22)【出願日】2017年2月15日
(65)【公開番号】特開2018-133704(P2018-133704A)
(43)【公開日】2018年8月23日
【審査請求日】2019年10月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001122
【氏名又は名称】株式会社日立国際電気
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】加藤 昭宏
【審査官】 長谷川 素直
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−005924(JP,A)
【文献】 特開2011−223381(JP,A)
【文献】 特開2005−057632(JP,A)
【文献】 特開2016−139981(JP,A)
【文献】 特表2013−527996(JP,A)
【文献】 特開2011−029773(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 21/00−21/858
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
カメラアダプタで画像圧縮前にインジケータ信号を取り出し、1フィールド分のインジケータ信号を複数のスライスに分割後、分割した各スライスをパケット化するとともに、映像信号の複数フィールドの転送期間に分けてカメラ制御装置へ伝送し、カメラ制御装置内のフィールドメモリで複数スライスのインジケータ信号を1フィールドに合成して、画像伸張後の映像信号に重畳することを特徴とする映像信号伝送装置。
【請求項2】
HDTVカメラからカメラ制御装置へ映像信号を画像圧縮して時分割双方向伝送を行うデジタルトライアックスシステムにおいて、
前記HDTVカメラの映像信号に1ビットで多重された1フィールド分のインジケータ信号を、画像圧縮前に取り出す取出手段と、
前記取り出したインジケータ信号を複数個のスライスに分割する分割手段と、
前記分割した複数個のスライスのインジケータ信号を、複数フィールド期間をかけて、前記カメラ制御装置へ伝送する伝送手段と、
前記カメラ制御装置において、前記伝送された複数個のスライスされたインジケータ信号をフィールドメモリで1フィールドに合成する合成手段と、
前記合成されたインジケータ信号を画像伸張後の映像信号に重畳する手段と、
を備えたことを特徴とする映像信号伝送装置。
【請求項3】
請求項2において、
前記合成されたインジケータ信号は、輝度信号(Y)または色差信号(C)の最下位ビットに重畳されることを特徴とする映像信号伝送装置。
【請求項4】
請求項2において、
前記分割手段は、前記取り出したインジケータ信号を、12個のスライスへ分割し、
前記12個のスライスは、圧縮された画像データの12フィールド分の転送期間にかけて、順次、前記カメラ制御装置へ伝送されることを特徴とする映像信号伝送装置。
【請求項5】
請求項2において、
前記伝送手段は、1つのスライスを、ヘッダ部とインジケータ部とを含むパケットに変換し、
前記ヘッダ部は、前記パケットの1フィールド内での位置に相当する識別番号を含むことを特徴とする映像信号伝送装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、映像信号伝送装置に関し、映像信号に重畳されるインジケータ信号の伝送を行う映像信号伝送装置に適用可能である。
【背景技術】
【0002】
地上デジタル放送システムなどでは、カメラにより撮影された映像を伝送装置により伝送することが行われている。
【0003】
HDTV(High Definition Television)カメラからカメラ制御装置(CCU)へ光ケーブルやトライアックス(三重同軸)ケーブルで映像信号を伝送する際、CCU側で映像を見ながらカメラの色調補正やガンマ補正を行うための位置合わせのガイドとして、映像信号中に1ビットのインジケータ信号を付加しておき、CCUでそのインジケータ信号を映像信号の輝度信号または色差信号に加算して、映像信号に重畳することがある。
【0004】
このとき、本来のカメラ映像信号にはできるだけ影響を与えないようにするため、インジケータ信号は色差信号の最下位ビットに挿入する方法が一般的である。
【0005】
一例として、特許文献1(特開2011−223381号公報)のように、トライアックスケーブルでのインジケータ信号の伝送方式として、SD−SDI(Standard Definition - Serial Digital Interface)信号の下位1ビットにダウンコンバートしたインジケータ信号を多重し、パリティビットと兼用する方式がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2011−223381号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1の方式は、SD−SDIの禁止コードの発生を防ぐためにインジケータ信号をパリティビットに置き換える場合があり、圧縮映像信号のパターンによってはインジケータ信号にドット抜けが生じる、といった課題がある。また、圧縮後の映像フォーマットがSD−SDI以外の場合は適用できない、といった課題もある。
【0008】
本発明の目的は、カメラ映像信号に重畳するインジケータ信号を、ドット抜けなく伝送することができる映像信号伝送装置を提供することにある。
【0009】
その他の課題と新規な特徴は、本明細書の記述および添付図面から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明のうち代表的なものの概要を簡単に説明すれば下記の通りである。
【0011】
すなわち、映像信号伝送装置は、カメラアダプタで画像圧縮前にインジケータ信号を取り出し、1フィールド分のインジケータ信号を複数のスライスに分割後、分割した各スライスをパケット化するとともに、映像信号の複数フィールドの転送期間に分けてカメラ制御装置へ伝送し、カメラ制御装置内のフィールドメモリで複数スライスのインジケータ信号を1フィールドに合成して、画像伸張後の映像信号に重畳する。
【発明の効果】
【0012】
上記映像信号伝送装置によれば、インジケータ信号を、ドット抜けなく伝送することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明に係る映像信号伝送装置の構成例を示す図である。
図2】本発明に係るインジケータ信号の画面分割方法の一例を示す図である。
図3】本発明に係るインジケータ信号のTSパケット配列の一例を示す図である。
図4】圧縮された画像データとインジケータ信号との転送の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、実施形態について、図面を用いて説明する。ただし、以下の説明において、同一構成要素には同一符号を付し繰り返しの説明を省略することがある。なお、図面は説明をより明確にするため、実際の態様に比べ、模式的に表される場合があるが、あくまで一例であって、本発明の解釈を限定するものではない。
【実施例1】
【0015】
図1は、本発明に係る映像信号伝送装置の構成例を示す図である。
【0016】
本発明に係る映像信号伝送装置は、テレビジョンカメラとカメラ制御装置との間でトライアックス(三重同軸)ケーブルを介してシリアルデジタル信号を双方向伝送するデジタルトライアックスシステムを、映像信号伝送装置の一例として説明する。なお、トライアックスケーブル11を例とするが、他の任意の回線(例えば、光ケーブル等)が用いられてもよい。
【0017】
本発明に係る映像信号伝送装置は、HDTV(High Definition Television)カメラ1と、カメラアダプタCAと、トライアックスケーブル11と、カメラ制御装置CCUと、を有している。カメラアダプタCAとカメラ制御装置CCUとは、離隔した場所に設置することが可能である。
【0018】
カメラアダプタCAは、シリアル−パラレル変換部(S/P)2と、Y/C分離部3と、画像圧縮回路4と、画面分割部7と、複数のTS(トランスポート・ストリーム)パケット生成部5,6、8と、OFDM(直交周波数分割多重:Orthogonal Frequency Division Multiplexing)変調回路9と、送受切り替えスイッチ10と、を備える。
【0019】
カメラ制御装置CCUは、送受切り替えスイッチ12と、OFDM復調回路13と、画像伸張部14と、画面合成部15と、フィールドメモリ16と、インジケータ多重部17と、キャラクタ多重部18と、複数のパラレル−シリアル変換部(P/S)19、20と、を備える。
【0020】
本発明の映像信号伝送装置は、以下の様に構成される。
【0021】
HDTVカメラ1の映像信号に1ビットで多重された1フィールド分のインジケータ信号を、画像圧縮前に取り出す取出手段としてY/C分離部3が設けられる。そして、前記取り出した1フィールド分のインジケータ信号は複数個のスライスに分割される。1フィールド分のインジケータ信号を複数個のスライスに分割する分割手段として、画面分割部7が設けられる。前記複数個のスライスとして分割されたインジケータ信号は圧縮後の画像データの複数フィールドの転送期間に分けてカメラ制御装置CCUへ伝送される。この伝送手段としてTSパケット生成部8が設けられる。カメラ制御装置CCUは、伝送された複数個のスライス化されたインジケータ信号を、カメラ制御装置CCU内に設けられたフィールドメモリ16で1フィールドに合成する。この合成手段として、画面合成部15が設けられる。前記1フィールドに合成されたインジケータ信号は、画像伸張後の映像信号の輝度信号(Y)または色差信号(C)の最下位ビットに重畳される。この重畳手段としてインジケータ多重部17が設けられる。
【0022】
すなわち、映像信号伝送装置を含む映像伝送システムは、カメラアダプタCAで画像圧縮前にインジケータ信号を取り出し、1フィールド分のインジケータ信号を複数個のスライスに分割後、TS(トランスポート・ストリーム)パケット化して、圧縮後の画像データの複数フレーム期間かけてカメラ制御装置CCUへ伝送し、カメラ制御装置CCU内のフィールドメモリ16で複数スライスのインジケータ信号を1フィールドに再合成して、画像伸張後の映像信号の輝度信号(Y)または色差信号(C)の最下位ビットに重畳する。
【0023】
以下、図1から図4を用いて、本発明に係る映像信号伝送装置の動作の一例を、さらに、詳細に説明する。
【0024】
図1を参照して、HDTVカメラ1でカメラ映像信号とインジケータ信号が多重され、HD−SDI(High Definition−シリアル・デジタル・インターフェース)信号としてカメラアダプタCAに送られる。カメラアダプタCAの初段のシリアル−パラレル変換部2でパラレルデータに戻し、Y/C分離部3で輝度信号(Y)と色差信号(C)に分離され、画像圧縮回路4に送られる。一方、色差信号(C)に多重されたインジケータ信号は画面分割部7に送られる。
【0025】
画像圧縮回路4は、入力された映像(画像)の信号(輝度信号(Y)と色差信号(C))について、例えば、MPEG2−TS、H.264等の圧縮方式で画像圧縮を行い、その圧縮結果(圧縮画像データ)は、TSパケット生成部6に送られる。
【0026】
画面分割部7では、取り出した1フィールド分のインジケータ信号を複数個のスライスに分割する。画面分割部7での処理内容を図2に示す。HDTV1フィールドの有効サイズは、この例では、水平1920ピクセル、垂直540ラインであるが、伝送量を下げるためにあらかじめ水平は1/2に間引きして960ピクセルとする。次に、垂直方向を12分割(1S−12S)して1スライス46ラインのブロックに分割する。この分割された1スライス分のインジケータ信号は、図1のTS(トランスポート・ストリーム)パケット生成部8に送られて、図3に示されるように、TSパケットに変換される。1スライス分のTSパケットは圧縮された画像データの1フィールド分の転送期間(1/59.94秒)をかけて、カメラ制御装置CCU側に伝送される。このときの1スライス分のインジケータ信号の伝送ビットレートは、960×46×59.94≒2.65Mbpsとなる。図4には、圧縮された画像データとスライス化されたインジケータ信号との転送の関係が示される。第1時刻t1において、圧縮画像データの第1フィールド目の画像データ(1F)の転送が開始されるとした場合、1フィールド目の画像データ(1F)の転送と同期して、インジケータ信号の第1番目のスライス(1S)が転送される。第2時刻t2において、圧縮画像データの第2フィールドの画像データ(2F)の転送時に、2フィールド目の画像データ(2F)の転送と同期して、インジケータ信号の第2番目のスライス(2S)が転送される。同様にして、第3時刻t3において、圧縮画像データの第3フィールド目の画像データ(3F)の転送時に、3フィールド目の画像データ(3F)の転送と同期して、インジケータ信号の第3番目のスライス(3S)が転送される。その後、順次、第4フィールド目の画像データ(4F)、第4番目のスライス(4S)から第11フィールド目の画像データ(11F)、第11番目のスライス(11S)の転送が送付される。そして、第12時刻t12において、圧縮画像データの第12フィールド目の画像データ(12F)の転送時に、12フィールド目の画像データ(12F)の転送と同期して、インジケータ信号の第12番目のスライス(12S)が転送される。このようにして、カメラ制御装置CCUに対して、12フィールド分の圧縮された画像データの転送と、1フィールド分(12スライス分)のインジケータ信号の転送が行われる。例えば、1秒間に、60フィールド分の圧縮された画像データを転送する方式の場合、1秒間に、5フィールド分のインジケータ信号の転送が行われる。
【0027】
次に、図1のTS(トランスポート・ストリーム)パケット生成部8の動作を説明する。TSパケット生成部8は、1スライス分のインジケータ信号を伝送に適したTSパケットへ変換する。図3にそのTSパケットのデータ配列を示す。データ配列は、1ワードが8ビットとされており、4ワードのヘッダ部(TS Header)と、184ワードのインジケータ信号部(INSGP)を含む。ヘッダ部の先頭ワードは47h(hは16進数を示す)で、2番目のワードは34hとする。3・4番目ワードはブロック番号(BN)を示す。図2の一番目のスライス(1S)の部分に示すように、1スライス(960×46)は、30個(0−29)のTSパケット(8×184)により構成される。インジケータ信号の1フィールド分には12スライスあるため、1フィールド内でそのTSパケットがどの位置に相当するかを示す識別番号が30×12=360個必要である。この識別番号を示すためにブロック番号(BN)が設けられる。ブロック番号(BN)には、0〜359の番号が2ワードを使って割り当てられる。
【0028】
図1のTSパケット生成部5および6では、圧縮した画像およびオーディオ/CPUデータに対して同様のTSパケット生成を行い、OFDM(直交周波数分割多重:Orthogonal Frequency Division Multiplexing)変調回路9にてOFDM信号に変換される。送受切り替えスイッチ10では送信と受信を一定の時間で交互に切り替えて時分割双方向伝送を行い、カメラアダプタCAではリターン信号を受信する。次に、トライアックスケーブル11を経て、カメラ制御装置CCUに送られ、送受切り替えスイッチ12を経てOFDM復調回路13に入る。
【0029】
TSパケット化されたインジケータ信号は画面合成部15にて、ヘッダ部のブロック番号(BN)情報を元にフィールドメモリ16に書き込まれてマッピングされる。これにより、1フィールド分のインジケータ信号がフィールドメモリ16内で合成される。
【0030】
一方で、圧縮映像は画像伸張部14でHDTV映像信号にデコードされ、インジケータ多重部17にて、映像信号のフレーム同期コードにより映像信号に同期してフィールドメモリ16からインジケータ信号を読みだして、映像信号の輝度信号(例えば、Y)または色差信号(例えば、Pb、Pr)の最下位1ビットに加算することで、映像信号にインジケータ信号を多重する。
【0031】
インジケータ信号の多重された映像信号は、キャラクタ多重部18でメニュー等の文字情報を多重され、パラレル−シリアル変換部19でHD−SDI信号に変換され、モニタ用としてカメラ制御装置CCUから出力される。一方で、オンエア用の映像信号は、画像伸張部14からの映像信号をそのままパラレル−シリアル変換部20でHD−SDI信号に変換されてカメラ制御装置CCUから出力される。
【0032】
実施形態によれば、カメラ映像信号に重畳するインジケータ信号を、ドット抜けなく、TSパケット化して、効率良く伝送することができる。また、インジケータ信号を複数スライスに分割後、複数フィールド期間に分けて伝送するので、圧縮後の映像フォーマットがSD−SDI以外の場合、例えばMPEG2−TSのような場合でも適用でき、且つ、インジケータ単独で伝送でき、さらに、伝送レートも自由に変えることができる。
【0033】
以上、本発明者によってなされた発明を実施例に基づき具体的に説明したが、本発明は、上記実施例に限定されるものではなく、種々変更可能であることはいうまでもない。
【0034】
例えば、HDTV1フィールドの有効サイズは、水平1920ピクセル、垂直540ラインとしたが、水平1920ピクセル、垂直1080ラインでもよい。また、取り出した1フィールド分のインジケータ信号を12個のスライスに分割したが、24個のスライスに分割しても良いし、10個のスライスに分割しても良い。
【符号の説明】
【0035】
1:HDTVカメラ、 2:シリアル−パラレル変換部、 3:Y/C分離部、 4:画像圧縮回路、 5、6、8:TSパケット生成部、 7:画面分割部、 9:OFDM変調回路、 10、12:送受切り替えスイッチ、 11:トライアックスケーブル、 13:OFDM復調回路、 14:画像伸張回路、 15:画面合成部、 16:フィールドメモリ、 17:インジケータ多重部、 18:キャラクタ多重部、 19、20:パラレル−シリアル変換部
図1
図2
図3
図4