(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のように、これまでフッ素イオンを含有する被処理水の処理方法が様々知られているが、吸着剤を用いた処理は、従来比較的フッ素イオン濃度が低い被処理水に対して行われてきた。フッ素イオン濃度が高い被処理水を処理する場合は、通常、まず凝集沈殿や共沈等によりフッ素イオンの不溶化処理を行ってある程度フッ素イオンを除去した後、フッ素イオン濃度が低減された被処理水を吸着剤と接触させることにより、フッ素イオンの高度除去を行う。しかしこのような処理は、プロセスが煩雑となりがちであることから、フッ素イオンを高濃度に含む被処理水をより簡便に処理できれば望ましい。
【0005】
本発明は前記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、フッ素イオンを比較的高濃度に含む被処理水から簡便により多くのフッ素イオンを除去することができる水処理方法および水処理システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
フッ素イオンを高濃度に含む被処理水の処理方法について本発明者らが検討したところ、吸着剤を用いてフッ素イオンを除去する方法では、条件によってはフッ素イオンを高度に除去できるものの、フッ素イオンの吸着量が増えるほど被処理水のpHが吸着至適範囲から外れやすくなるため、そのような場合は吸着処理に限界があることが明らかになった。しかし、被処理水にマグネシウムイオンと硫酸イオンが高濃度に含まれていれば、フッ素イオンを比較的高濃度に含む被処理水を吸着剤を用いて処理した場合でも、より多くのフッ素イオンを除去できることが明らかになった。すなわち上記課題を解決することができた本発明の水処理方法とは、フッ素イオン、マグネシウムイオンおよび硫酸イオンを含有する被処理水をフッ素吸着剤と接触させて、被処理水中のフッ素イオンの少なくとも一部を除去する吸着工程を有する水処理方法であって、被処理水のフッ素イオン濃度が50mg/L以上、マグネシウムイオンと硫酸イオンの合計濃度が10,000mg/L以上であるところに特徴を有する。
【0007】
フッ素吸着剤は吸着塔に充填されており、被処理水を多段に直列接続された吸着塔に順に導入して、フッ素吸着剤と接触させることが好ましい。この際、被処理水を、多段に直列接続された各吸着塔に導入する前にpHを調整することが好ましい。
【0008】
フッ素イオン、マグネシウムイオンおよび硫酸イオンを比較的高濃度に含有する被処理水としては、排ガスを水酸化マグネシウムと接触させて脱硫する排煙脱硫工程で得られる排煙脱硫廃水を用いることが好ましい。
【0009】
本発明の水処理方法は、フッ素吸着剤をアルカリ溶液と接触させてフッ素イオンを脱着させ、フッ素イオンを含有する脱離液を得る脱着工程をさらに有することが好ましい。この場合、少なくとも3つの吸着塔が設けられ、直列接続された吸着塔を用いて吸着工程を行いつつ、直列接続されていない吸着塔を用いて脱着工程を行い、直列接続された吸着塔のうちで最も上流側の吸着塔について接続を解除して脱着工程を行い、脱着工程の完了した吸着塔を直列接続された最も下流側の吸着塔に接続して吸着工程を行うことで、吸着塔単位で吸着工程と脱着工程を繰り返すようにしてもよい。このように処理することにより、連続的かつ効率的なフッ素除去が実現できる。
【0010】
本発明の水処理方法は、脱着工程で得られた脱離液にカルシウム化合物を加えてフッ化カルシウムを生成させ、濃縮または固液分離することにより、フッ素イオンをフッ化カルシウムとして回収する回収工程をさらに有していてもよい。このようにフッ素イオンを含む脱離液からフッ化カルシウムを回収することにより、マグネシウムや硫酸成分の少ない高純度のフッ化カルシウムを回収することが可能となる。
【0011】
本発明はまた、フッ素吸着剤が充填された吸着塔と、吸着塔の入側に連通し、フッ素イオン、マグネシウムイオンおよび硫酸イオンを含有する被処理水が供給される被処理水供給流路を有し、被処理水のフッ素イオン濃度が50mg/L以上、マグネシウムイオンと硫酸イオンの合計濃度が10,000mg/L以上である水処理システムも提供する。吸着塔は多段に直列接続して設けられていることが好ましく、多段に直列接続された各吸着塔の前にはpH調整手段が設けられていることが好ましい。また、被処理水は、水酸化マグネシウムを用いた排煙脱硫廃水であることが好ましい。
【0012】
本発明の水処理システムは、吸着塔として少なくとも3つが設けられ、被処理水供給流路が各吸着塔の入側にそれぞれ連通して設けられ、さらに、各吸着塔の入側にそれぞれ連通したアルカリ溶液供給流路と、各吸着塔の出側にそれぞれ連通した処理水流路と、一の吸着塔の出側と他の吸着塔の入側を連通させることで全ての吸着塔を環状に接続可能とする直列接続流路とが設けられているものであってもよい。このような水処理システムによれば、連続的かつ効率的なフッ素除去が実現できる。
【0013】
本発明の水処理システムは、吸着塔の入側に連通したアルカリ溶液供給流路と、吸着塔で吸着剤と接触したアルカリ溶液が送液される反応槽と、反応槽にカルシウム化合物を供給するカルシウム化合物供給手段とがさらに設けられているものであってもよい。このような水処理システムによれば、フッ素イオンを、マグネシウムや硫酸成分の少ない高純度のフッ化カルシウムを回収することが可能となる。
【発明の効果】
【0014】
本発明の水処理方法および水処理システムによれば、フッ素イオンを比較的高濃度に含む被処理水であっても、より多くのフッ素イオンを吸着除去することができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明は、フッ素イオン、マグネシウムイオンおよび硫酸イオンを含有する被処理水を処理する水処理方法および水処理システムに関する。詳細には、フッ素イオン、マグネシウムイオンおよび硫酸イオンを含有する被処理水をフッ素吸着剤と接触させて、被処理水中のフッ素イオンの少なくとも一部を除去する水処理方法および水処理システムに関する。
【0017】
従来、吸着剤を用いたフッ素除去は、比較的フッ素イオン濃度が低い被処理水に対して行われてきた。フッ素イオン濃度が高い被処理水を処理する場合、通常、まず凝集沈殿や共沈等によりフッ素イオンの不溶化処理を行ってある程度フッ素イオンを除去した後、フッ素イオン濃度が低減された被処理水を吸着剤と接触させることにより、フッ素イオンの高度除去を行う。このような処理が行われる理由としては、凝集沈殿や共沈による処理と比べて、吸着剤を用いればより高度にフッ素イオンを除去できることも挙げられるが、フッ素イオン濃度が高い被処理水を吸着剤と接触させた場合、フッ素イオンが吸着剤の水酸化物イオンとイオン交換されることにより被処理水のpHが上昇し、フッ素イオンの吸着除去に適したpH範囲から外れて、フッ素イオンが十分に吸着除去できないことも理由として挙げられる。すなわち、吸着剤を用いてフッ素イオンを吸着除去する場合、フッ素イオンが吸着剤に吸着されるのと交換される形で、水酸化物イオンが吸着剤から脱着するため、フッ素イオンが吸着剤に吸着されるにつれて被処理水のpHが上がり、フッ素イオンの吸着除去を好適に行うことができるpH範囲から外れやすくなる。このことは、被処理水のフッ素濃度が高くなるほど水酸化物イオンとの交換量が増え、顕著に表れるようになる。そのため、吸着剤を用いたフッ素イオンの除去では、フッ素イオン濃度が例えば30mg/L以下の被処理水を対象に吸着処理を行うことが一般的である。
【0018】
しかしながら本発明者らが検討したところ、マグネシウムイオンと硫酸イオンを比較的高濃度で含む被処理水に対して吸着剤によるフッ素イオンの除去を行うことにより、被処理水のpHの上昇を抑え、より多くのフッ素イオンを吸着除去できることが明らかになった。すなわち、本発明の水処理方法は、フッ素イオン、マグネシウムイオンおよび硫酸イオンを含有する被処理水をフッ素吸着剤と接触させて、被処理水中のフッ素イオンの少なくとも一部を除去する吸着工程を有する水処理方法であって、被処理水のフッ素イオン濃度が50mg/L以上、マグネシウムイオンと硫酸イオンの合計濃度が10,000mg/L以上であるところに特徴を有する。
【0019】
被処理水は、少なくともフッ素イオン、マグネシウムイオンおよび硫酸イオンを含有するものであれば特に限定されないが、本発明では、そのようなイオンを比較的高濃度に含む被処理水として、排ガスを水酸化マグネシウムと接触させて脱硫する排煙脱硫工程で得られる排煙脱硫廃水を用いることが好ましい。石炭火力発電所やコークス工場や製鉄工場等では、石炭やコークスを燃焼させることにより硫黄分やフッ素分を含む排ガスが排出されるが、当該排ガスを排煙脱硫装置により脱硫処理を行うと、硫酸イオンとともにフッ素イオンを比較的高濃度に含む排煙脱硫廃水が発生する。排煙脱硫装置における脱硫方法としては、水酸化カルシウムや水酸化マグネシウムを用いて湿式処理する方法が知られているが、脱硫剤として水酸化マグネシウムを用いると、排煙脱硫廃水に硫酸イオンとフッ素イオンとともにマグネシウムイオンも比較的高濃度に含まれることとなる。
【0020】
被処理水のフッ素イオン濃度は50mg/L以上であるが、フッ素イオン濃度はこれより高くてもよく、例えば80mg/L以上であってもよく、100mg/L以上、または120mg/L以上であってもよい。本発明によれば、このような高いフッ素イオン濃度の被処理水であっても、高度にフッ素イオンを吸着除去することができる。被処理水のフッ素イオン濃度の上限は特に限定されないが、例えば1,000mg/L以下であってもよく、800mg/L以下、600mg/L以下、または400mg/L以下であってもよい。被処理水中のフッ素イオン濃度は、イオンクロマトグラフィー等により求めることができる。
【0021】
被処理水のマグネシウムイオンと硫酸イオンの合計濃度は10,000mg/L以上であるが、マグネシウムイオンと硫酸イオンの合計濃度はこれより高くてもよく、例えば15,000mg/L以上であってもよく、20,000mg/L以上、または25,000mg/L以上であってもよい。被処理水のマグネシウムイオンと硫酸イオンの合計濃度の上限は特に限定されないが、例えば200,000mg/L以下であってもよく、150,000mg/L以下、100,000mg/L以下、または75,000mg/L以下であってもよい。被処理水のマグネシウムイオン濃度と硫酸イオン濃度の含有比率は特に限定されないが、マグネシウムイオン/硫酸イオンのモル比で、例えば2/8〜8/2の範囲にあればよく、3/7〜7/3の範囲がより好ましく、4/6〜6/4の範囲がさらに好ましい。被処理水中のマグネシウムイオンと硫酸イオンの各濃度は、遊離イオンの形態のみならず塩形成している形態も含む濃度を意味し、イオンクロマトグラフィー等により求めることができる。
【0022】
被処理水のpHは、吸着剤によるフッ素イオンの吸着除去が好適に行われるようにする点から、2.0以上が好ましく、2.2以上がより好ましく、また5.0以下が好ましく、4.0以下がより好ましく、3.5以下がさらに好ましく、3.0以下が特に好ましい。吸着工程に供する被処理水のpHが高い場合は、酸を添加することにより被処理水のpHを調整すればよく、当該酸としては塩酸や硫酸を用いることが好ましい。逆に吸着工程に供する被処理水のpHが低い場合は、アルカリを添加することにより被処理水のpHを調整すればよく、当該アルカリとしてはアルカリ金属水酸化物を用いることが好ましく、コスト面から水酸化ナトリウムを用いることがより好ましい。
【0023】
フッ素吸着剤としては、フッ素イオンを吸着することができる公知の吸着剤を用いればよく、例えば、アルミナ系吸着剤、フェライト鉄系吸着剤、ジルコニウム系吸着剤、セリウム系吸着剤等を用いることができる。中でも、高度にフッ素イオンを吸着除去できる吸着剤として、セリウム系吸着剤を用いることが好ましい。セリウム系吸着剤としては、含水酸化セリウム(CeO
2・nH
2O)を含む吸着剤が挙げられる。当該吸着剤は樹脂を含有し、含水酸化セリウムが樹脂によって固定化あるいは補強されていてもよい。
【0024】
フッ素吸着剤を用いてフッ素イオンを吸着除去する場合、フッ素イオンが吸着剤に吸着されるのと交換される形で、水酸化物イオンが吸着剤から脱離する。そのため、フッ素イオンが吸着剤に吸着されるにつれて被処理水のpHが上がることとなり、フッ素イオンの吸着除去を好適に行うことができるpH範囲から外れやすくなる。このことは、被処理水のフッ素濃度が高くなるほど水酸化物イオンとの交換量が増え、顕著に表れるようになる。しかし本発明では、被処理水にマグネシウムイオンと硫酸イオンが高濃度に含まれているため、これらのイオンの緩衝作用によってフッ素イオンの吸着除去に伴う被処理水のpH上昇を抑えることができ、より多くのフッ素イオンの吸着除去が可能となる。
【0025】
被処理水とフッ素吸着剤との接触は、バッチ法により行ってもよく、連続法により行ってもよい。被処理水とフッ素吸着剤とをバッチ法により接触させる場合は、例えば、被処理水にフッ素吸着剤を添加すればよい。この際、フッ素吸着剤はそのまま被処理水と接触させてもよいし、フッ素吸着剤を入れた通液可能な袋を被処理水に浸したり、フッ素吸着剤を一体的に取り扱えるように所定の形状に成形したものを被処理水に浸したりしてもよい。このときのフッ素吸着剤の添加量は、例えば被処理水1Lに対して、1g/L〜100g/Lの範囲で適宜調整すればよい。被処理水とフッ素吸着剤の接触時間は特に限定されず、例えば5分〜24時間の間で適宜設定すればよい。
【0026】
被処理水とフッ素吸着剤とを連続法により接触させる場合は、例えば、フッ素吸着剤が充填された吸着塔に被処理水を通液すればよい。被処理水は、吸着塔を上向流式で通液させてもよく、下向流式で通液させてもよい。このときの通液速度は、被処理水の性状やフッ素吸着剤の収容量(充填量)などに応じて適宜設定すればよいが、空間速度(SV)として例えば0.5hr
-1〜50hr
-1の範囲内(好ましくは1hr
-1〜20hr
-1の範囲内)で適宜調整すればよい。
【0027】
被処理水をフッ素吸着剤と接触させることにより、フッ素イオン濃度が低減された処理水が得られる。1回の吸着処理で処理水のフッ素イオン濃度が十分に低減しない場合は、吸着処理を2回以上行ってもよい。連続法で処理する場合は、吸着処理を1段で行ってもよく、処理水のフッ素イオン濃度をより低減するために、2段以上で行ってもよい。処理水のフッ素イオン濃度は例えば30mg/L以下にすることができ、吸着処理を2回以上あるいは多段で行う場合は、1回目あるいは1段目の吸着処理でフッ素イオン濃度を30mg/L以下にし、2回目あるいは2段目以降の吸着処理により処理水のフッ素イオン濃度を20mg/L以下、あるいは10mg/L以下にすることもできる。
【0028】
フッ素吸着剤を用いてフッ素イオンを含有する被処理水を効率的に処理する点からは、被処理水をフッ素吸着剤が充填された吸着塔に導入して処理することが好ましく、これにより1回の処理ごとに吸着剤を移動させたりする手間を省くことができる。さらに本発明では、フッ素イオン濃度が比較的高い被処理水を処理対象とすることから、被処理水を多段に直列接続した吸着塔に順に導入して処理することが好ましく、これにより処理水のフッ素イオン濃度を安定して十分に低減させることが可能となる。多段に直列接続する吸着塔の数は2以上であればよいが、直列接続する吸着塔の数(すなわち被処理水が通過する吸着塔の数)が多すぎても吸着塔の管理が煩雑になることから、5以下が好ましく、4以下がより好ましく、3以下がさらに好ましい。
【0029】
複数の吸着塔を多段に直列接続する場合、被処理水は、多段に直列接続された各吸着塔に導入する前にpHを調整することが好ましく、具体的には、被処理水を多段に直列接続された各吸着塔に導入する前に、酸またはアルカリを添加してpHを調整することが好ましい。このときの各pHは、上記に説明したように、2.0以上が好ましく、2.2以上がより好ましく、また5.0以下が好ましく、4.0以下がより好ましく、3.5以下がさらに好ましく、3.0以下が特に好ましい。このように各吸着塔に導入する前に被処理水のpHを調整することにより、例えば1段目の吸着塔からの流出水が吸着の至適pH範囲から外れた場合でも、当該流出水に酸またはアルカリを添加することにより、2段目の吸着塔でも好適にフッ素イオンの吸着を行うことができるようになる。
【0030】
被処理水のpHの調整は、吸着塔の前にpH調整手段を設けることにより行えばよい。多段に直列接続された各吸着塔に導入する前にpH調整をする場合は、各吸着塔の前にpH調整手段を設けることが好ましい。pH調整手段は、吸着塔の前に酸またはアルカリ添加手段を備えたpH調整槽を設けたり、被処理水を吸着塔に供給する流路に酸またはアルカリ添加手段を設ければよい。酸またはアルカリ添加手段としては、薬注ポンプ等が挙げられる。またpH調整手段として、酸またはアルカリ添加手段とともにpH測定手段を設けてもよい。pH測定手段は、pH調整槽に設置したり、被処理水を吸着塔に供給する流路の酸またはアルカリ添加手段と吸着塔の間に設置することが好ましい。
【0031】
吸着塔を多段に直列接続する場合は、通常、より前段側(上流側)の吸着塔の方が早く破過に達しやすくなる。そのため、吸着塔の破過の程度は、最も前段側に設けられた吸着塔(1段目の吸着塔)の入側と出側のpHから評価することができる。また、前段側の吸着塔の吸着剤の充填量を後段側(下流側)の吸着塔の吸着剤の充填量よりも多くすることで、前段側の吸着塔と後段側の吸着塔の破過のタイミングをできるだけ揃えるようにしてもよい。
【0032】
吸着処理をする際に被処理水中に固形分が多く含まれるような場合は、吸着工程の前に、被処理水に含まれる固形分の少なくとも一部を除去する分離工程を設けることが好ましい。分離工程を設けることにより被処理水に含まれる固形分量が低減し、フッ素吸着剤の目詰まりを抑えたり、固形分がフッ素吸着剤の表面に付着して吸着性能が低下することを抑えることができる。特に、被処理水として排煙脱硫廃水を用いる場合などは、固形分が比較的高濃度で含まれ得るため、吸着工程に先立って分離工程を行うことが好ましい。
【0033】
分離工程では、公知の固液分離手段を用いて被処理水中の固形分を除去することができるが、フッ素吸着剤の吸着性能を好適に発揮させる観点からは、比較的高度に固形分除去できる方法を採用することが好ましく、ろ過による固液分離を行うことが好ましい。ろ過手段としては、砂ろ過、膜ろ過、担体ろ過の他、フィルタープレス、ベルトプレス、スクリュープレス、ロータリープレス等の機械式ろ過手段を用いることができ、中でも、高い固液分離性能を有し、目詰まりなどの問題が起こりにくい機械式ろ過手段を用いることが好ましい。ろ過による固液分離を行う際は、必要に応じてろ過助剤を添加してもよく、ろ過助剤としては珪藻土やパーライトなどの粉体(当該粉体を含有する懸濁液を含む)が挙げられる。
【0034】
吸着工程に先立って分離工程を行う場合、上記に説明した被処理水のpH調整は分離工程の後に行うことが好ましい。すなわち、分離工程で得られた分離液(ろ過液)に酸やアルカリを添加することにより吸着工程に供する被処理水のpHを調整することが好ましく、これにより被処理水中にもともと含まれていた固形分からのフッ素の溶出を抑え、吸着処理の負荷を軽減することができる。
【0035】
吸着工程においてフッ素イオンを吸着した吸着剤は、次に脱着工程において、当該吸着剤をアルカリ溶液と接触させてフッ素イオンを脱着させ、フッ素イオンを含有する脱離液を得ることが好ましい。脱着工程を設けることにより、フッ素吸着剤を繰り返し使用することができるとともに、フッ素イオンを高濃度で含む脱離液を得ることができる。このようにして得られた脱離液は、被処理水よりもフッ素イオンを濃縮することができ、しかも高純度のフッ素イオン含有液となるため、フッ素の効率的な回収が可能となる。
【0036】
アルカリ溶液としては、アルカリ金属水酸化物の溶液を用いることが好ましい。アルカリ金属水酸化物としては、水酸化リチウム、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化ルビジウム、水酸化セシウム等を用いることができ、これらは1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なお、アルカリ金属水酸化物としては、コスト面から水酸化ナトリウムを用いることが好ましい。
【0037】
脱着工程で用いるアルカリ溶液は、水酸化物イオン濃度が高いほどフッ素イオンを高濃度に含む脱離液が得られることから、ある程度高い水酸化物イオン濃度を有するアルカリ溶液を使用することが好ましい。アルカリ溶液の水酸化物イオン濃度は、例えば0.05mol/L以上が好ましく、0.1mol/L以上がより好ましく、0.2mol/L以上がさらに好ましい。一方、アルカリ溶液の取り扱い性や設備仕様への影響を考慮すると、アルカリ溶液の水酸化物イオン濃度は3mol/L以下が好ましく、1mol/L以下がより好ましい。
【0038】
脱着工程でフッ素イオンを脱着させた吸着剤は、水洗や酸洗浄することにより、再びフッ素吸着剤として使用することができる。このときの酸としては、塩酸や硫酸を用いることが好ましい。
【0039】
脱着工程で得られた脱離液はそのままフッ素イオン含有アルカリ溶液として系外に排出してもよいが、フッ素イオンを固形物として回収することが、回収したフッ素イオンの取り扱い性を高める点で好ましい。従って、脱着工程の後に、脱離液にカルシウム化合物を加えてフッ化カルシウムを生成させ、濃縮または固液分離することにより、フッ素イオンをフッ化カルシウムとして回収する回収工程を設けることが好ましい。フッ化カルシウムはフッ素を高濃度に含む固形物であるため、フッ素イオンをフッ化カルシウムに変換することにより、フッ素を効率的に回収することができる。また、被処理水から直接フッ素イオンをフッ化カルシウムとして回収するのではなく、脱離液からフッ化カルシウムを回収することにより、マグネシウムや硫酸成分の少ない高純度のフッ化カルシウムを回収することが可能となる。
【0040】
回収工程で脱離液に加えるカルシウム化合物としては、塩化カルシウムや炭酸カルシウム等のカルシウム塩を用いることが好ましく、脱離液に加えたときにフッ化カルシウム以外の固形物の生成をできるだけ抑える点から、塩化カルシウムを用いることが特に好ましい。カルシウム化合物は、固体(例えば粉体)として脱離液に添加したり、溶液または分散液として脱離液に添加すればよい。
【0041】
脱離液にカルシウム化合物を加えることにより、脱離液中のフッ素イオンがフッ化カルシウムとして析出し、フッ化カルシウムを含有する懸濁液が得られる。この際、フッ化カルシウムの溶解を抑える点から、カルシウム化合物を加えた脱離液のpHは3以上とすることが好ましく、4以上がより好ましい。なお後述するように、脱離液にカルシウム化合物を加えた後、濃縮または固液分離して得られたフッ素希薄溶液をアルカリ剤として排煙脱硫工程に送液する場合などは、カルシウム化合物を加えた脱離液のpHは例えば9以上であってもよく、10以上であってもよい。
【0042】
回収工程では、フッ化カルシウムを含有する懸濁液を濃縮または固液分離する。フッ化カルシウムを含有する懸濁液を濃縮した場合は、フッ化カルシウムを含有する濃縮スラリーが得られるとともに、フッ素希薄溶液が得られる。フッ化カルシウムを含有する懸濁液を固液分離した場合は、フッ化カルシウムを含有するケーキが得られるとともに、フッ素希薄溶液が得られる。フッ化カルシウムを含有する懸濁液の濃縮または固液分離は、沈降分離、遠心分離、ろ過分離等の公知の手段により行えばよい。このようにして得られたフッ化カルシウムの濃縮スラリーやケーキは、系外に排出して、フッ素原料として再利用してもよく、廃棄物として処分してもよい。
【0043】
設備の簡略化の点からは、回収工程ではフッ化カルシウムを濃縮スラリーとして回収し、これを上記に説明した分離工程に返送することが好ましい。フッ化カルシウムを濃縮スラリーとして回収する場合は、フッ化カルシウムを含有する懸濁液を沈降分離(沈殿分離)することにより濃縮スラリーを得ることができ、そのための設備としては沈降槽を設ければ済むため、設備費の低減効果が期待できる。またこのようにして得られた濃縮スラリーを分離工程に返送することにより、既存の固液分離手段を用いてさらなる減容化を図ることができるため、フッ化カルシウムを廃棄処分する場合などは処分費の低減効果も期待できる。
【0044】
フッ化カルシウムの濃縮スラリーを分離工程に返送する場合は、フッ化カルシウムがろ過による固液分離の際のろ過助剤として機能することも期待できる。これにより、分離工程における被処理水のろ過性能の向上が期待できる。フッ化カルシウムは、例えば沈降槽でフッ化カルシウムを含有する懸濁液を緩撹拌することなどにより造粒し、造粒化したフッ化カルシウムを含有するスラリーを分離工程に供してもよく、これによりさらなるろ過性能の向上が期待できる。
【0045】
回収工程でフッ化カルシウムを回収する際に分離されたフッ素希薄溶液は、排煙脱硫工程に送液し、排ガスを脱硫する際のアルカリ剤として用いてもよい。これにより排煙脱硫工程での水酸化マグネシウム等のアルカリ剤の使用量を低減することができる。
【0046】
次に、本発明の水処理システムの構成例について、図面を参照して説明する。なお、本発明は、図面に示した実施態様に限定されるものではない。
【0047】
図1に示した水処理システムは、フッ素吸着剤が充填された吸着塔11と、吸着塔11の入側に連通し、被処理水1が供給される被処理水供給流路21を有している。被処理水1は、少なくとも、フッ素イオン、マグネシウムイオンおよび硫酸イオンを含有し、フッ素イオン濃度が50mg/L以上、マグネシウムイオンと硫酸イオンの合計濃度が10,000mg/L以上となっている。被処理水1を吸着塔11に導入してフッ素吸着剤と接触させることにより、フッ素イオン濃度が低減された処理水2が得られる。処理水2は、吸着塔11の出側に連通して設けられた処理水流路22を通して得られる。被処理水1はマグネシウムイオンと硫酸イオンの合計濃度が10,000mg/L以上となっているため、マグネシウムイオンや硫酸イオンの緩衝効果によって、フッ素イオンの吸着に伴うpH上昇を抑えることができ、より多くのフッ素イオンを吸着除去することが可能となる。
【0048】
吸着塔11の前には、被処理水1のpHを調整するためのpH調整手段12が設けられることが好ましい。pH調整手段12としては、酸やアルカリを添加する薬注ポンプ等が挙げられる。酸やアルカリは被処理水供給流路21の配管内に供給してもよく、被処理水供給流路21にpH調整槽を設けて、pH調整槽で酸やアルカリを供給してもよい。この際、被処理水1のpHを測定しながら酸やアルカリを供給することが好ましい。被処理水1のpHを吸着至適範囲に調整することにより、被処理水1を吸着塔11に導入した際にフッ素イオンを効率的に吸着除去できるようになる。
【0049】
フッ素イオンを吸着除去した吸着剤は、アルカリ溶液と接触させることにより、吸着剤からフッ素イオンが脱離し、吸着剤の繰り返し利用が可能となることから、吸着塔11の入側にはアルカリ溶液供給流路23が連通して設けられることが好ましい。吸着塔11の出側には、吸着剤と接触したアルカリ溶液すなわち脱離液3を排出する脱離液流路24が連通して設けられることが好ましい。なお
図1では、アルカリ溶液供給流路23は吸着塔11の入側に直接接続しているが、被処理水供給流路21に接続するものであってもよい。アルカリ溶液供給流路23からアルカリ溶液を供給する際には、吸着塔11への被処理水1の供給を止め、吸着塔11から排出された脱離液3が脱離液流路24を通して回収される。
【0050】
図1では、脱離液流路24に、吸着塔11から排出された脱離液3が送液される反応槽14が設けられており、反応槽14には、カルシウム化合物を供給するカルシウム化合物供給手段15が設けられている。吸着剤と接触したアルカリ溶液、すなわち吸着剤から脱離したフッ素イオンを含有する脱離液3を、反応槽14でカルシウム化合物と接触させることにより、フッ化カルシウムが生成し、フッ化カルシウムを含有する懸濁液4が得られる。このようにして得られたフッ化カルシウムの懸濁液4を固液分離手段16に供給することにより、フッ化カルシウムを含有するケーキ5が得られ、フッ素の効率的な回収が可能となる。
【0051】
なお、固液分離手段16からは、フッ化カルシウムが固液分離されたフッ素希薄溶液7も得られるが、例えば被処理水1が水酸化マグネシウムを用いた排煙脱硫廃水であるような場合は、フッ素希薄溶液7を排煙脱硫工程に送液し、フッ素希薄溶液7を排ガス脱硫の際のアルカリ溶液として用いてもよい。この場合、フッ素希薄溶液7を排煙脱硫装置に送液する送液路を設けることが好ましい。
【0052】
本発明の水処理システムの他の例について、
図2を参照して説明する。なお
図2の説明において、
図1と重複する部分は説明を省く。
【0053】
図2に示した水処理システムでは、吸着塔11の前段に、被処理水1に含まれる固形分の少なくとも一部を除去する固液分離手段13が設けられている。例えば被処理水1が水酸化マグネシウムを用いた排煙脱硫廃水であるような場合は、固形分が比較的高濃度で含まれ得るため、吸着塔11の前段に固液分離手段13を設けて、その分離液を吸着塔11に供給することにより、吸着塔11での目詰まりを抑えることができる。
【0054】
図2に示した水処理システムでは、反応槽14の後段に、フッ化カルシウムを含有する懸濁液4を濃縮する濃縮手段17が設けられている。反応槽14で得られた懸濁液4を濃縮手段17に供給することにより、フッ化カルシウムを含有する濃縮スラリー6が得られる。なお、フッ素イオンをフッ化カルシウムを含有する濃縮スラリー6として回収する場合、反応槽14と濃縮手段17とが一体化されていてもよく、この場合、1つの槽でフッ化カルシウムの生成と濃縮が行われることとなる。
【0055】
濃縮スラリー6は、吸着塔11の前段に設けられた固液分離手段13に返送することが好ましく、これにより固液分離手段13を被処理水1の固形分除去と濃縮スラリー6からのフッ化カルシウムの分離回収の両方に用いることができるため、設備費の低減効果が期待できる。この場合、濃縮スラリー6を固液分離手段13またはそれよりも上流側に返送する返送路を設けることが好ましい。
【0056】
図3〜
図5には、吸着塔周りの他の構成例を示した。
図3〜
図5に示した構成例は、
図1および
図2に示した水処理システムの吸着塔周りの構成例(
図1および
図2で点線で囲んだ部分)と置き換えることができる。
【0057】
図3に示した構成例では、吸着塔11として第1吸着塔11Aと第2吸着塔11Bが設けられ、第1吸着塔11Aと第2吸着塔11Bのそれぞれに被処理水供給流路21と処理水流路22とアルカリ溶液供給流路23と脱離液流路24が設けられている。
図3に示した構成例によれば、第1吸着塔11Aと第2吸着塔11Bのそれぞれで吸着工程と脱着工程を行うことができる。そのため、第1吸着塔11Aで吸着工程を行うのと同時に第2吸着塔11Bで脱着工程を行うことができ、またその逆も可能となるため、被処理水の連続的な吸着処理が可能となる。
【0058】
図4には、吸着塔が多段に直列接続された構成例を示した。
図4では、吸着塔11として第1吸着塔11Aと第2吸着塔11Bが設けられ、第1吸着塔11Aの出側と第2吸着塔11Bの入側に連通して直列接続流路25が設けられることにより、第1吸着塔11Aと第2吸着塔11Bが直列接続されている。被処理水1は被処理水供給流路21を通ってまず第1吸着塔11Aに導入され、第1吸着塔11Aからの流出水が直列接続流路25を通って第2吸着塔11Bに導入され、第2吸着塔11Bの出側に連通して設けられた処理水流路22を通って処理水2が得られる。
【0059】
各吸着塔11の前にはpH調整手段12が設けられることが好ましく、これにより第1吸着塔11Aと第2吸着塔11BのいずれにおいてもpHを吸着至適範囲に調整することが可能となり、フッ素イオンの吸着除去を好適に行うことができるようになる。そのため、第1吸着塔11Aと第2吸着塔11Bに充填された吸着剤を1つの吸着塔に充填した場合と比べて、吸着塔に充填された吸着剤のより多くがフッ素イオンの吸着に好適に寄与できるようになる。
【0060】
第1吸着塔11Aと第2吸着塔11Bの入側にはアルカリ溶液供給流路23が連通して設けられ、出側には脱離液流路24が連通して設けられることが好ましい。これにより、第1吸着塔11Aと第2吸着塔11Bのそれぞれに充填された吸着剤からフッ素イオンを脱着させ、フッ素イオンを高濃度に含有する脱離液3を得ることができる。
【0061】
なお
図4には示されていないが、被処理水供給流路21を第2吸着塔11Bの入側に連通して設け、処理水流路22を第1吸着塔11Aの出側に連通して設け、第2吸着塔11Bの出側と第1吸着塔11Aの入側に連通してさらに直列接続流路を設けてもよい。この場合、被処理水1を第1吸着塔11Aと第2吸着塔11Bに導入する順序を、吸着塔の破過の程度等に応じて、適宜変更することが可能となる。
【0062】
図5に示した構成例は、
図3の構成例と
図4の構成例を組み合わせた構成となっている。
図5では、吸着塔11として、第1吸着塔11Aと第2吸着塔11Bと第3吸着塔11Cが設けられ、被処理水供給流路21が第1吸着塔11Aと第2吸着塔11Bと第3吸着塔11Cの入側にそれぞれ連通して設けられ、処理水流路22が第1吸着塔11Aと第2吸着塔11Bと第3吸着塔11Cの出側にそれぞれ連通して設けられ、アルカリ溶液供給流路23が第1吸着塔11Aと第2吸着塔11Bと第3吸着塔11Cの入側にそれぞれ連通して設けられ、脱離液流路24が第1吸着塔11Aと第2吸着塔11Bと第3吸着塔11Cの出側にそれぞれ連通して設けられている。そして、第1吸着塔11Aの出側と第2吸着塔11Bの入側に連通して第1直列接続流路25Aが設けられ、第2吸着塔11Bの出側と第3吸着塔11Cの入側に連通して第2直列接続流路25Bが設けられ、第3吸着塔11Cの出側と第1吸着塔11Aの入側に連通して第3直列接続流路25Cが設けられることで、3つの吸着塔が環状に接続可能となっている。
【0063】
図5に示した構成例では、直列接続された吸着塔を用いて吸着工程を行いつつ、直列接続されていない吸着塔を用いて脱着工程を行い、直列接続された吸着塔のうちで最も上流側の吸着塔について接続を解除して脱着工程を行い、脱着工程の完了した吸着塔を直列接続された最も下流側の吸着塔に接続して吸着工程を行うことで、吸着塔単位で吸着工程と脱着工程を繰り返し行えるようになっている。具体的には、第1吸着塔11A〜第3吸着塔11Cのうちの1つを直列接続された前段側(上流側)の吸着塔として用い、他の1つを直列接続された後段側(下流側)の吸着塔として用いて吸着工程を行い、残りの1つの吸着塔を用いて脱着工程を行う。そして、第1吸着塔11A〜第3吸着塔11Cのそれぞれは、吸着工程で用いる直列接続された後段側の吸着塔、吸着工程で用いる直列接続された前段側の吸着塔、脱着工程で用いる吸着塔として順次利用する。具体的には、例えば、第1吸着塔1Aを直列接続された前段側の吸着塔に用い、第2吸着塔11Bを直列接続された後段側の吸着塔に用い(この場合、被処理水1は、被処理水供給流路21、第1吸着塔1A、第1直列接続流路25A、第2吸着塔1B、処理水流路22を順に通過することとなる)、第3吸着塔11Cを脱着工程に用い(すなわち第3吸着塔11Cには、アルカリ溶液供給流路23からアルカリ溶液が供給され、脱離液3が脱離液流路24を通って回収される)、次いで、第2吸着塔11Bを直列接続された前段側の吸着塔に用い、第3吸着塔11Cを直列接続された後段側の吸着塔に用い(この場合、被処理水1は、被処理水供給流路21、第2吸着塔1B、第2直列接続流路25B、第3吸着塔1C、処理水流路22を順に通過することとなる)、第1吸着塔1Aを脱着工程に用い(すなわち第1吸着塔11Aには、アルカリ溶液供給流路23からアルカリ溶液が供給され、脱離液3が脱離液流路24を通って回収される)、次いで、第3吸着塔11Cを直列接続された前段側の吸着塔として用い、第1吸着塔1Aを直列接続された後段側の吸着塔に用い(この場合、被処理水1は、被処理水供給流路21、第3吸着塔1C、第3直列接続流路25C、第1吸着塔1A、処理水流路22を順に通過することとなる)、第2吸着塔11Bを脱着工程に用い(すなわち第2吸着塔11Bには、アルカリ溶液供給流路23からアルカリ溶液が供給され、脱離液3が脱離液流路24を通って回収される)、このサイクルを繰り返し行う。この場合、吸着塔単位でみると、吸着工程と脱着工程とが繰り返し行われることとなる。このように複数設けられた吸着塔の2つ以上を多段に直列接続させて吸着工程を行い、残りの吸着塔で脱着工程を行うようにし、さらに各吸着塔は、吸着工程で用いる多段に直列接続された後段側から前段側の吸着塔に順次利用し、次いで脱着工程で利用することで、連続的かつ効率的なフッ素除去が実現できる。特に、脱着工程でフッ素イオンを脱着させた吸着塔を、まず吸着工程の最も後段側の吸着塔に用いることで、最終的に得られる処理水のフッ素イオン濃度を大幅に低減することが可能となる。
【0064】
なお上記において、「前段側」と「後段側」とは、多段に直列接続された吸着塔の相対的な位置を表しており、それぞれ「上流側」と「下流側」と同義である。また、吸着塔としてさらに第4吸着塔やそれ以外の吸着塔が設けられるようにシステムが構成されてもよく、吸着工程において3つ以上の吸着塔を直列接続してもよく、吸着工程でない吸着塔(例えば、脱着工程を行う吸着塔)が2つ以上となるようにしてもよい。