特許第6853070号(P6853070)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6853070-グリル用の調理容器 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6853070
(24)【登録日】2021年3月15日
(45)【発行日】2021年3月31日
(54)【発明の名称】グリル用の調理容器
(51)【国際特許分類】
   A47J 37/06 20060101AFI20210322BHJP
【FI】
   A47J37/06 366
【請求項の数】2
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2017-41467(P2017-41467)
(22)【出願日】2017年3月6日
(65)【公開番号】特開2018-143505(P2018-143505A)
(43)【公開日】2018年9月20日
【審査請求日】2019年11月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】000115854
【氏名又は名称】リンナイ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000305
【氏名又は名称】特許業務法人青莪
(72)【発明者】
【氏名】水上 裕人
(72)【発明者】
【氏名】英 真次
【審査官】 山本 崇昭
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−198758(JP,A)
【文献】 登録実用新案第3159585(JP,U)
【文献】 特開2014−212840(JP,A)
【文献】 実開平04−102922(JP,U)
【文献】 特開2014−200627(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2008/0000360(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24C 3/00−3/14
A47J 37/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
グリル庫の横方向両側部の下部に下火バーナが配置され、グリル庫の横方向両側の各側壁の内面に、下火バーナの上方位置で横方向内方に張出す二次空気案内板が設けられたグリルで用いられる調理容器であって、グリル庫内に収納可能で、下火バーナにより下方から加熱される上面が開放された容器本体と、容器本体の上面を覆うカバー体とを備えるものにおいて、
容器本体は、底壁に設けられた食材載置部の横方向両側に下方に窪んだ凹部を有すると共に、横方向各側の凹部から横方向外方にのびる、横方向外方に向けて上り勾配の付いた斜状延出部を有し、容器本体をグリル庫内に収納した状態で、斜状延出部が二次空気案内板の上方に通気間隙を存してオーバーラップするようにし、
カバー体は、容器本体の食材載置部に対向し、導熱孔が複数形成された主体部分と、容器本体の斜状延出部の横方向外端の起立した周壁部の上端に着座する横方向外端のフランジ部と、フランジ部の内周に設けられた下方への窪み部と、主体部分と窪み部との間の部分に設けられた、横方向外方に向けて下り勾配の付いた傾斜部とを有し、窪み部が容器本体の斜状延出部の横方向外端の周壁部の上部内周に嵌め込まれることで、カバー体が容器本体に対し位置決めされることを特徴とするグリル用の調理容器。
【請求項2】
記カバー体の前記主体部分とカバー体の前記フランジ部との間の高さ寸法は、前記容器本体の前記斜状延出部の横方向外端の前記周壁部の上端前記食材載置部との間の高さ寸法よりも大きいことを特徴とする請求項1記載のグリル用の調理容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、グリル庫の横方向両側部の下部に下火バーナが配置され、グリル庫の横方向両側の各側壁の内面に、下火バーナの上方位置で横方向内方に張出す二次空気案内板が設けられたグリルで用いられるグリル用の調理容器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のグリル用の調理容器として、特許文献1により、グリル庫内に収納可能で、下火バーナにより下方から加熱される上面が開放された容器本体と、容器本体の上面を覆うカバー体とを備え、容器本体の底壁上に載置した食材から加熱調理中に出る脂や水分がグリル庫内に飛散することをカバー体で防止できるようにしたものが知られている。
【0003】
この調理容器において、容器本体の横幅は、グリル庫両側の二次空気案内板間の横幅よりも狭く設定され、容器本体の横方向各側の周壁部と二次空気案内板の横方向内端との間に下火バーナの燃焼排ガスが流れる通気間隙が確保されるようにしている。然し、このものでは、グリル庫両側の二次空気案内板間の横幅よりも大きなピザ等の食材は容器本体内に入れて調理することができず、調理可能な食材の大きさがかなり制限されてしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2014−212840号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、以上の点に鑑み、グリル庫両側の二次空気案内板間の横幅よりも大きな食材を容器本体内に入れて調理できるようにした使い勝手の良いグリル用の調理容器を提供することをその課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明は、グリル庫の横方向両側部の下部に下火バーナが配置され、グリル庫の横方向両側の各側壁の内面に、下火バーナの上方位置で横方向内方に張出す二次空気案内板が設けられたグリルで用いられる調理容器であって、グリル庫内に収納可能で、下火バーナにより下方から加熱される上面が開放された容器本体と、容器本体の上面を覆うカバー体とを備えるものにおいて、容器本体は、底壁に設けられた食材載置部の横方向両側に下方に窪んだ凹部を有すると共に、横方向各側の凹部から横方向外方にのびる、横方向外方に向けて上り勾配の付いた斜状延出部を有し、容器本体をグリル庫内に収納した状態で、斜状延出部が二次空気案内板の上方に通気間隙を存してオーバーラップするようにし、カバー体は、容器本体の食材載置部に対向し、導熱孔が複数形成された主体部分と、容器本体の斜状延出部の横方向外端の起立した周壁部の上端に着座する横方向外端のフランジ部と、フランジ部の内周に設けられた下方への窪み部と、主体部分と窪み部との間の部分に設けられた、横方向外方に向けて下り勾配の付いた傾斜部とを有し、窪み部が容器本体の斜状延出部の横方向外端の周壁部の上部内周に嵌め込まれることで、カバー体が容器本体に対し位置決めされることを特徴とする。
【0007】
本発明によれば、容器本体の斜状延出部が二次空気案内板の上方にオーバーラップするため、食材の大きさがグリル庫両側の二次空気案内板間の横幅より大きくても、食材をその側部が斜状延出部に載るように容器本体に入れて調理することができ、使い勝手が向上する。また、斜状延出部の横方向外端の周壁部の上端にカバー体の横方向外端のフランジ部が着座するため、斜状延出部全体がカバー体で覆われることになる。従って、食材から上方に飛散した脂や水分はカバー体の裏面を伝って斜状延出部に滴下して、斜状延出部に食材から直接滴下した脂や水分と共に凹部に回収され、調理性が向上する。更に、斜状延出部は、二次空気案内板の上方に通気間隙を存してオーバーラップするため、下火バーナの燃焼排ガスがこの通気間隙を介してスムーズに上方に流れる。従って、容器本体の下方に燃焼排ガスが滞留して下火バーナの燃焼不良を生ずることはない。
また、カバー体に上記の如く傾斜部を設けることにより、前記通気間隙に連なるカバー体外側の排気空間を広く確保して、排気抵抗を小さくし、下火バーナの燃焼性を一層良好にすることができる。更に、カバー体の裏面に付着した脂が傾斜部の下り勾配により斜状延出部に流下しやすくなり、調理性が向上する。
【0008】
また、本発明において、容器本体の食材載置部に対向するカバー体の主体部分とカバー体のフランジ部との間の高さ寸法は、容器本体の斜状延出部の横方向外端の周壁部の上端と食材載置部との間の高さ寸法よりも大きいことが望ましい。これによれば、比較的厚い食材にも対処できると共に、容器本体の高さが比較的低くなるため、使用者が容器本体から食材を取り出す際に、容器本体の斜状延出部の横方向外端に不用意に触れて熱い思いをすることを可及的に回避でき、使い勝手が良好になる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の実施形態の調理容器を収納したグリルの切断側面図。
図2図1のII−II線で切断した断面図。
図3】実施形態の調理容器の分解状態の斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1図2を参照して、Aは、図示省略したガスコンロに組み込むグリルを示している。このグリルAは、コンロ本体(図示せず)内に設置されるグリル庫1と、グリル庫1の前面開口を開閉するグリル扉2とを備えている。グリル庫1内には、グリル皿3と共に、本発明の実施形態のグリル用の調理容器4又は図示省略した焼網が収納される。グリル皿3は、グリル扉2に連結される皿支持枠31に支持されている。皿支持枠31の前後には、調理容器4や焼網を支持する支持枠32が立設されている。そして、グリル扉2の前方への移動で、グリル皿3と調理容器4又は焼網が一緒にグリル庫1の前方に引き出されるようにしている。
【0012】
グリル庫1の天井部には、上火バーナ5が設けられ、更に、上火バーナ5を上方から覆うようにして遮熱カバー11が設けられている。上火バーナ5は、多数の炎孔(図示省略)を形成したセラミックス製の燃焼板51を有する表面燃焼式バーナで構成され、燃焼板51を下向きにした姿勢でグリル庫1の天井部に上火バーナ5を装着している。尚、上火バーナ5には、その後部に設けた混合管52から混合気が供給される。
【0013】
グリル庫1の横方向両側部の下部(調理容器4や焼網よりも低い部分)には、横方向内方に向けて開口する炎口61を有する前後方向に長手の下火バーナ6が配置されている。炎口61は、前後方向にスリット状に連続しており、前後複数個所に炎口の上下寸法を大きくした主炎口部61aが設けられている。
【0014】
下火バーナ6の後部には、点火電極62に対向するターゲット部62aが設けられており、点火電極62とターゲット部62aとの間の火花放電により下火バーナ6に点火される。また、下火バーナ6の失火検知のために、下火バーナ6の前部の主炎口部61aに臨ませて熱電対63を配置している。
【0015】
グリル庫1の横方向両側の各側壁12の内面には、下火バーナ6の上方位置で横方向内方に張出す二次空気案内板13と、下火バーナ6の下方位置で横方向内方に張出す、グリル皿3の加熱を抑制する遮熱板14とが設けられている。各側壁12には、二次空気案内板13の下側に二次空気を導入する空気取入れ口12aが開設されている。
【0016】
二次空気案内板13は、横方向内方に向けて下方に傾斜している。また、二次空気案内板13の横方向内端には、下方に屈曲する垂下板部13aが曲成されている。垂下板部13aには、その下縁から上方に凹入する凹欠部13bが下火バーナ6の複数の主炎口部61aに対応させて複数形成されている。ここで、空気取入れ口12aから吸引された空気(二次空気)は二次空気案内板13の下側を通ってグリル庫1内に流れるが、下火バーナ6の主炎口部61a以外の部分では、垂下板部13aにより庫内への空気の流れが規制され、主炎口部61aに対応する凹欠部13bから集中的に空気がグリル庫1内に流れる。そのため、主炎口部61aに対し高流速で二次空気が供給され、主炎口部61aに生ずる火炎が横方向内方に大きく伸び、調理容器4や焼網の横方向中央部に載置する食材も十分に加熱できる。
【0017】
遮熱板14は、横方向内方に向けて上方に傾斜している。遮熱板14の横方向内端には、下火バーナ6の各主炎口部61aに供給される二次空気の抜けが良くなるように、各主炎口部61aに対応する切欠き部14aが形成されている。
【0018】
また、グリルAは、グリル庫1の後端上部から後方にのびる排気通路15を備えている。排気通路15の後部は、コンロ天板の後部の排気口に向けて斜め上方に立ち上がる排気ダクト15aで構成されている。排気通路15の下面には、燃焼排ガス中に含まれる油煙を焼き切るアフターバーナ7が配置されている。アフターバーナ7は、多数の炎孔(図示省略)を形成したセラミックス製の燃焼板71を有する表面燃焼式バーナで構成される。そして、燃焼板71を上向きにした姿勢で排気通路15の下面にアフターバーナ7を装着している。尚、アフターバーナ7には、その横方向一端部に設けた混合管72から混合気が供給される。
【0019】
図3も参照して、本発明の実施形態のグリル用の調理容器4は、グリル庫1内に上記支持枠32に支持させた状態で収納可能で、下火バーナ6により下方から加熱される上面が開放された容器本体41と、容器本体41の上面を覆うカバー体42とを備えている。容器本体41の底壁には、横方向にのびる上方に凸の突条411aを前後方向の間隔を存して複数形成した食材載置部411が設けられている。尚、食材載置部411を平坦面に形成してもよい。
【0020】
容器本体41は、更に、食材載置部411の横方向両側に下方に窪んだ脂溜りとなる凹部412を有すると共に、横方向各側の凹部412から横方向外方にのびる、横方向外方に向けて上り勾配の付いた斜状延出部413を有している。そして、容器本体41をグリル庫1内に収納した状態で、斜状延出部413が二次空気案内板13の上方に通気間隙を存してオーバーラップするようにしている。尚、斜状延出部413の横方向外端は起立した周壁部413aとなっている。また、周壁部413aは、容器本体41の前後両端部に亘って延在している。
【0021】
カバー体42は、容器本体41の食材載置部411に対向する主体部分421を有し、この主体部分421に、上火バーナ6からの輻射熱を透過する横方向に長手の導熱孔422が前後方向の間隔を存して複数形成されている。尚、導熱孔422は、容器本体41の凹部412よりも横方向内方に位置している。これにより、凹部412に溜まった脂が上方に跳ねても、この脂が導熱孔422を介してグリル庫1内に飛散することを効果的に防止できる。また、カバー体42の横方向外端には、主体部分421よりも下方位置で、容器本体41の斜状延出部413の外端たる周壁部413aの上端に着座するフランジ部423が設けられている。フランジ部423は、容器本体41の前後両端の周壁部413aの上端にも着座するようにカバー体42の前後両端に亘って延在している。また、フランジ部423の内周には、下方への窪み部424が形成されている。そして、この窪み部424を周壁部413aの上部内周に嵌め込むことで、カバー体42が容器本体41に対し位置決めされるようにしている。
【0022】
以上の構成によれば、斜状延出部413が二次空気案内板13の上方にオーバーラップするため、食材の大きさがグリル庫1両側の二次空気案内板13,13間の横幅より大きくても、食材をその側部が斜状延出部413に載るように容器本体41に入れて調理することができ、使い勝手が向上する。また、斜状延出部413の横方向外端たる周壁部413a上端にカバー体42の外端のフランジ部423が着座するため、斜状延出部413全体がカバー体42で覆われることになる。従って、食材から上方に飛散した脂や水分はカバー体42の裏面を伝って斜状延出部413に滴下して、斜状延出部413に食材から直接滴下した脂や水分と共に凹部412に回収され、調理性が向上する。更に、斜状延出部413は、二次空気案内板13の上方に通気間隙を存してオーバーラップするため、下火バーナ6の燃焼排ガスがこの通気間隙を介してスムーズに上方に流れる。従って、容器本体41の下方に燃焼排ガスが滞留して下火バーナ6の燃焼不良を生ずることはない。
【0023】
また、本実施形態では、カバー体42の主体部分421とカバー体42のフランジ部423との間の高さ寸法H1を、容器本体41の斜状延出部413の横方向外端たる周壁部413a上端と食材載置部411との間の高さ寸法H2よりも大きくしている。これによれば、比較的厚い食材にも対処できると共に、容器本体41の高さが比較的低くなるため、使用者が容器本体41から食材を取り出す際に、容器本体41の周壁部413aに不用意に触れて熱い思いをすることを可及的に回避でき、使い勝手が良好になる。
【0024】
更に、本実施形態では、カバー体42の主体部分421とフランジ部423との間の部分、より正確には、主体部分421と窪み部424との間の部分に、横方向外方に向けて下り勾配の付いた傾斜部425を設けている。これによれば、斜状延出部413と二次空気案内板13との間の通気間隙に連なるカバー体42外側の排気空間を広く確保して、排気抵抗を小さくし、下火バーナ6の燃焼性を一層良好にすることができる。更に、カバー体42の裏面に付着した脂が傾斜部425の下り勾配により斜状延出部413に流下しやすくなり、調理性が向上する。尚、本実施形態では、カバー体42の主体部分421と前後両端のフランジ部423との間の部分にも、前後方向外方に向けて下り勾配の付いた傾斜部425´を設けている。
【0025】
以上、本発明の実施形態について図面を参照して説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、上記実施形態では、カバー体42の傾斜部425に、横方向外方に向けて次第に急になる曲線状の下り勾配を付けているが、直線状の下り勾配を付けてもよい。また、上記実施形態では、容器本体41の斜状延出部413に、横方向外方に向けて直線状の上り勾配を付けているが、曲線状の上り勾配を付けることも可能である。更に、上記実施形態では、斜状延出部413の横方向外端が起立した周壁部413aになっているが、斜状延出部413の横方向外端を、周壁部413aを省略した形状とし、或いは、上方への傾斜角を大きくした直線状又は曲線状の急勾配部としてもよい。また、上記実施形態は、ガスコンロに組み込むグリル用の調理容器4に本発明を適用したものであるが、ガスコンロに組み込まずに独立して設けられるグリル用の調理容器にも同様に本発明を適用できる。
【符号の説明】
【0026】
1…グリル庫、12…側壁、13…二次空気案内板、4…調理容器、41…容器本体、411…食材載置部、412…凹部、413…斜状延出部、413a…周壁部(斜状延出部の横方向外端)、42…カバー体、421…主体部分、423…フランジ部、425…傾斜部、6…下火バーナ。
図1
図2
図3