特許第6853071号(P6853071)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6853071
(24)【登録日】2021年3月15日
(45)【発行日】2021年3月31日
(54)【発明の名称】シールド測量方法
(51)【国際特許分類】
   G01C 15/00 20060101AFI20210322BHJP
   G01C 15/06 20060101ALI20210322BHJP
   E21D 9/093 20060101ALI20210322BHJP
【FI】
   G01C15/00 104D
   G01C15/00 103A
   G01C15/06 T
   E21D9/093 B
【請求項の数】5
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2017-41494(P2017-41494)
(22)【出願日】2017年3月6日
(65)【公開番号】特開2018-146386(P2018-146386A)
(43)【公開日】2018年9月20日
【審査請求日】2020年2月3日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000549
【氏名又は名称】株式会社大林組
(73)【特許権者】
【識別番号】591284601
【氏名又は名称】株式会社演算工房
(74)【代理人】
【識別番号】100097113
【弁理士】
【氏名又は名称】堀 城之
(74)【代理人】
【識別番号】100162363
【弁理士】
【氏名又は名称】前島 幸彦
(72)【発明者】
【氏名】西森 昭博
(72)【発明者】
【氏名】守屋 洋一
(72)【発明者】
【氏名】田中 善広
(72)【発明者】
【氏名】上田 潤
(72)【発明者】
【氏名】日野 義嗣
(72)【発明者】
【氏名】菅野 静
(72)【発明者】
【氏名】横井 康人
(72)【発明者】
【氏名】前川 泰光
【審査官】 國田 正久
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭62−293115(JP,A)
【文献】 特開2002−116026(JP,A)
【文献】 特開平10−206156(JP,A)
【文献】 特開平06−137072(JP,A)
【文献】 特開2000−234929(JP,A)
【文献】 特開2003−262521(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01C 15/00
G01C 15/06
E21D 9/093
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動追尾機能を備えたトータルステーションによってシールド掘削機に設けられた複数の機器ターゲットを視準し、測定した複数の前記機器ターゲットの位置に基づいて前記シールド掘削機の位置及び姿勢を測定するシールド測量方法であって、
シールドトンネル内の既知点に設置した人為測定用トータルステーションを測定者が操作して、前記シールド掘削機に設けられた複数の前記機器ターゲットと共に、前記シールドトンネル内の既知点に設置した基準ターゲットを視準することで、前記シールド掘削機の位置及び姿勢を測定する人為測定工程と、
前記シールドトンネル内に取付けられた支持具に自動測定用トータルステーションを設置する盛り替え工程と、
前記支持具に設置した前記自動測定用トータルステーションによって、前記人為測定工程によって位置及び姿勢を測定した前記シールド掘削機の複数の前記機器ターゲットを視準することで、前記支持具に設置した前記自動測定用トータルステーションの位置及び姿勢を測定する位置測定工程と、
前記支持具に設置した前記自動測定用トータルステーションによって、前記シールド掘削機に設けられた複数の前記機器ターゲットを前記自動追尾機能で視準させ、前記シールド掘削機の位置及び姿勢を自動で測定する自動測定工程と、を具備し、
前記シールド掘削機の停止中に前記人為測定工程、前記盛り替え工程及び前記位置測定工程を実施することで、前記自動測定工程によって移動中の前記シールド掘削機の位置及び姿勢を測定させることを特徴とするシールド測量方法。
【請求項2】
前記盛り替え工程において、前記人為測定用トータルステーションを前記自動測定用トータルステーションとして前記支持具に設置することを特徴とする請求項1記載のシールド測量方法。
【請求項3】
複数の前記機器ターゲットは、前記人為測定工程で使用する複数の人為測定用ターゲットと、前記自動測定工程で使用する複数の自動測定用ターゲットとを具備することを特徴とする請求項1又は2記載のシールド測量方法。
【請求項4】
前記位置測定工程では、前記人為測定用ターゲット及び前記自動測定用ターゲットの前記シールド掘削機での取付け位置をターゲット配置情報として記憶しておき、前記人為測定工程で測定した前記シールド掘削機の位置及び姿勢と前記ターゲット配置情報とを用いて複数の前記自動測定用ターゲットのそれぞれの位置を算出することを特徴とする請求項3記載のシールド測量方法。
【請求項5】
前記人為測定工程及び前記自動測定工程では、可視レーザー光を投射する装置を設け、視準用の光と同一方向に可視レーザー光を投射することを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のシールド測量方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シールド掘削機を用いてトンネルを築造するシールド工法において、掘進動作中のシールド掘削機の位置及び姿勢を測定するシールド測量方法に関する。
【背景技術】
【0002】
シールド工法では、シールド掘進機の位置を正確に測量する必要がある。シールド掘削機の位置及び姿勢を測定する方法として、距離を測る光波測距儀としての機能と角度を測るセオドライトとしての機能とを併せ持つトータルステーションを用いて行うシールド測量方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。従来技術では、シールド掘進機の後方に位置する台車にトータルステーションを搭載し、トータルステーションでシールド掘進機に設置されたターゲットを測定するので、進行中のシールド掘進機の位置及び姿勢を測定すると共に、シールド掘進機が停止している間に、トータルステーションによるターゲットの測定と、ジャイロコンパスによる台車の姿勢の計測によって、トータルステーションの位置、姿勢を逆算している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平06−137072号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来技術では、トータルステーションを台車に搭載しているため、シールド掘進機に設置されたターゲットとの間の視界が、すぐに後方台車によって遮られ、盛り替え頻度(トータルステーションを移動させる頻度)が増加してしまう。従って、測量誤差が累積しやすいという問題点があった。また、台車の姿勢の計測のために、高額なジャイロコンパスを使用する必要があると共に、ジャイロコンパスの方向角の指示値が落ち着くまでに時間を要するため、測量に要する時間が長くなってしまう。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上述した事情を考慮してなされたもので、盛り替え頻度(トータルステーションを移動させる頻度)を減少させることができ、測量精度を向上させることができるシールド測量方法を提供することを目的とする。
【0006】
上記目的を達成するため、本発明のシールド測量方法は、自動追尾機能を備えたトータルステーションによってシールド掘削機に設けられた複数の機器ターゲットを視準し、測定した複数の前記機器ターゲットの位置に基づいて前記シールド掘削機の位置及び姿勢を測定するシールド測量方法であって、シールドトンネル内の既知点に設置した人為測定用トータルステーションを測定者が操作して、前記シールド掘削機に設けられた複数の前記機器ターゲットと共に、前記シールドトンネル内の既知点に設置した基準ターゲットを視準することで、前記シールド掘削機の位置及び姿勢を測定する人為測定工程と、前記シールドトンネル内に取付けられた支持具に自動測定用トータルステーションを設置する盛り替え工程と、前記支持具に設置した前記自動測定用トータルステーションによって、前記人為測定工程によって位置及び姿勢を測定した前記シールド掘削機の複数の前記機器ターゲットを視準することで、前記支持具に設置した前記自動測定用トータルステーションの位置及び姿勢を測定する位置測定工程と、前記支持具に設置した前記自動測定用トータルステーションによって、前記シールド掘削機に設けられた複数の前記機器ターゲットを前記自動追尾機能で視準させ、前記シールド掘削機の位置及び姿勢を自動で測定する自動測定工程と、を具備し、前記シールド掘削機の停止中に前記人為測定工程、前記盛り替え工程及び前記位置測定工程を実施することで、前記自動測定工程によって移動中の前記シールド掘削機の位置及び姿勢を測定させることを特徴とする。
さらに、本発明のシールド測量方法では、前記盛り替え工程において、前記人為測定用トータルステーションを前記自動測定用トータルステーションとして前記支持具に設置しても良い
らに、本発明のシールド測量方法において、複数の前記機器ターゲットは、前記人為測定工程で使用する複数の人為測定用ターゲットと、前記自動測定工程で使用する複数の自動測定用ターゲットとを具備しても良い。
さらに、本発明のシールド測量方法において、前記位置測定工程では、前記人為測定用ターゲット及び前記自動測定用ターゲットの前記シールド掘削機での取付け位置をターゲット配置情報として記憶しておき、前記人為測定工程で測定した前記シールド掘削機の位置及び姿勢と前記ターゲット配置情報とを用いて複数の前記自動測定用ターゲットのそれぞれの位置を算出しても良い。
さらに、本発明のシールド測量方法において、前記人為測定工程及び前記自動測定工程では、可視レーザー光を投射する装置を設け、視準用の光と同一方向に可視レーザー光を投射しても良い。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、シールドトンネルの内壁に取付けられた支持具に設置したトータルステーションによって、移動中のシールド掘削機の位置及び姿勢を測定することができるため、盛り替え頻度(トータルステーションを設置する頻度)を減少させることができ、測量精度を向上させることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明に係るシールド測量方法を実施するシステム構成例を示す図である。
図2】本発明に係るシールド測量方法を説明する側断面模式図である。
図3】本発明に係るシールド測量方法を説明する断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明に係るシールド測量方法の実施形態について、添付図面を参照して説明する。
【0010】
図1には、本実施形態のシールド測量方法を実施するシールド測量システムの構成例が示されている。シールド測量システムは、図1を参照すると、シールド掘削機1の後方から視認可能な位置に設けられた機器ターゲット2a〜2dと、既知点3に設置する基準ターゲット4と、既知点5に設置し、機器ターゲット2a、2b及び基準ターゲット4を視準するトータルステーション6と、支持具7に設置し、機器ターゲット2c〜2dを視準するトータルステーション8と、測量装置9と、端末装置10とを備えている。なお、トータルステーション6と、トータルステーション8と、測量装置9と、端末装置10とは、いずれも無線LAN等の通信機能を備えており、直接もしくは間接的に通信可能に構成されている。
【0011】
機器ターゲット2a〜2dは、シールド掘削機1に間隔をおいて取り付けられたトータルステーション6、8用のプリズム反射鏡である。機器ターゲット2a〜2dは、トータルステーション6、8から投射された測距測角用の光を反射してトータルステーション6、8へ送り返す。本実施形態において、機器ターゲット2a、2bは、トータルステーション6を測定者が操作してシールド掘削機1の位置及び姿勢を測定する人為測定用ターゲットであり、機器ターゲット2c、2dは、トータルステーション8がシールド掘削機1の位置及び姿勢を自動で測定する自動測定用ターゲットである。
【0012】
基準ターゲット4は、トータルステーション6用のプリズム反射鏡である。機器ターゲット2a〜2dは、トータルステーション6、8から投射された測距測角用の光を反射してトータルステーション6、8へ送り返す。なお、基準ターゲット4及びトータルステーション6をそれぞれ設置する既知点3、5としては、ダボと称されるシールドトンネル坑内で施工のために利用する仮設の基準点を用いる。
【0013】
トータルステーション6は、測距測角用の光を機器ターゲット2a、2b、基準ターゲット4に向けて投射し、その反射光を受光することで、機器ターゲット2a、2b、基準ターゲット4との距離を測定する光波測距儀としての機能と、機器ターゲット2a、2b、基準ターゲット4との角度を測定するセオドライトとしての機能を備えている。また、トータルステーション6は、機器ターゲット2a、2bを自動追尾する周知技術の自動追尾機能を有している。トータルステーション8は、測距測角用の光を機器ターゲット2c、2dに向けて投射し、その反射光を受光することで、機器ターゲット2c、2dとの距離を測定する光波測距儀としての機能と、機器ターゲット2c、2dとの角度を測定するセオドライトとしての機能を備えている。また、トータルステーション8は、機器ターゲット2c、2dを自動追尾する周知技術の自動追尾機能を有している。
【0014】
測量装置9は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等を備えたパーソナルコンピュータ等の情報処理装置である。ROMには測量装置9の動作制御を行うための制御プログラムが記憶されている。CPUは、ROMに記憶されている制御プログラムを読み出し、制御プログラムをRAMに展開させることで、シールド掘削機位置算出部91、ターゲット位置算出部92、トータルステーション位置算出部93として機能する。
【0015】
また、測量装置9は、記憶部94を備えている。記憶部94は、半導体メモリーやHDD(Hard Disk Drive)等の記憶手段である。記憶部94には、機器ターゲット2a〜2dのシールド掘削機1での取付け位置がターゲット配置情報941として記憶されている。また、記憶部94には、従来から実施されている日常掘進管理測量によって測量された既知点3、5の位置が既知点情報942として記憶される。さらに、記憶部94には、シールド掘削機位置算出部91による算出結果が測量結果943として記憶される。
【0016】
シールド掘削機位置算出部91は、既知点5に設置されたトータルステーション6と基準ターゲット4との角度及び距離と、既知点5に設置されたトータルステーション6と機器ターゲット2a、2bとのそれぞれの角度及び距離と、ターゲット配置情報941と、既知点情報942とを用いて、シールド掘削機1の位置及び姿勢を算出する。また、シールド掘削機位置算出部91は、トータルステーション位置算出部93によって算出されたトータルステーション8の位置と、自動追尾機能を用いて自動測定されたトータルステーション8と機器ターゲット2c、2dとのそれぞれの角度及び距離とを用いて、シールド掘削機1の位置及び姿勢を算出する。
【0017】
ターゲット位置算出部92は、シールド掘削機位置算出部91で算出されたシールド掘削機1の位置及び姿勢と、ターゲット配置情報941とを用いて、機器ターゲット2c、2dのそれぞれの位置を算出する。なお、高さ情報については、既知点3もしくはその他の高さ情報を持つ基準点を視準することで、トータルステーション6に持たせることとする。
【0018】
トータルステーション位置算出部93は、ターゲット位置算出部92によって算出された機器ターゲット2c、2dのそれぞれの位置と、測定されたトータルステーション8と機器ターゲット2c、2dとのそれぞれの角度及び距離と用いて、トータルステーション8の位置及び姿勢を算出する。
【0019】
端末装置10は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等を備えたタブレット等の情報処理装置である。ROMには端末装置10の動作制御を行うための制御プログラムが記憶されている。CPUは、ROMに記憶されている制御プログラムを読み出し、制御プログラムをRAMに展開させることで、トータルステーション6、8を操作する操作部101、測量装置9による測量結果を表示する表示部102として機能する。
【0020】
次に、本実施形態のシールド測量方法について図2及び図3を参照して詳細に説明する。
まず、シールド掘削機1が停止している状態で実施する日常掘進管理測量の一つとして、測定者は、トータルステーション6を操作してシールド掘削機1の位置及び姿勢を測定する人為測定工程を実施する。
【0021】
人為測定工程において、測定者は、図2(a)に示すように、シールドトンネル11内の既知点3に基準ターゲット4を設置すると共に、トータルステーション6をシールドトンネル11内の既知点5に設置する。
【0022】
次に、測定者は、端末装置10によってトータルステーション6を操作することで、図2(a)に示す矢印Aのように、基準ターゲット4を視準させてトータルステーション6の方位角を特定すると共に、図2(a)に示す矢印Bのように、人為測定用ターゲットとして機器ターゲット2a、2bをそれぞれ視準させて機器ターゲット2a、2bとの角度及び距離をそれぞれ測定させる。なお、トータルステーション6は、自動追尾機能を備えているため、視準範囲内に機器ターゲットがあれば、自動で視準し、角度及び距離を測定する。具体的には、シールド掘削機1の掘進リング情報を与えると、測量装置9は機器ターゲット2a、2bのおおよその位置を算出し、トータルステーション6をその方向に視準させ、自動でターゲットを視準する。これにより、測定者が直接視準しなくても良いため、視準作業を簡略化させることができる。
【0023】
なお、既知点3と既知点5とは、一般的にシールドトンネル11内のトンネル底部に設けられ、この既知点3に設置された基準ターゲット4を視準可能な位置にある既知点5にトータルステーション6が設置される。従って、人為測定用ターゲットである機器ターゲット2a、2bは、スプリングラインよりも下方に配置されていると視準しやすくなる。
【0024】
トータルステーション6で測定された、トータルステーション6と基準ターゲット4との角度及び距離と、人為測定されたトータルステーション6と機器ターゲット2a、2bとのそれぞれの角度及び距離とは、測量装置9に送信される。
【0025】
そして、測量装置9のシールド掘削機位置算出部91によって、人為測定されたトータルステーション6と基準ターゲット4との角度と、人為測定されたトータルステーション6と機器ターゲット2a、2bとのそれぞれの角度及び距離と、ターゲット配置情報941と、既知点情報942とを用いて、シールド掘削機1の位置及び姿勢が算出される。
【0026】
次に、測定者は、図2(b)に示すように、シールドトンネル11の内壁に取付けられた支持具7に、トータルステーション8を設置する盛り替え工程と、支持具7に設置したトータルステーション8の位置及び姿勢を測定する位置測定工程とを実施する。なお、盛り替え工程で設置するトータルステーション8には、人為測定工程で用いたトータルステーション6を兼用しても良い。また、盛り替え工程は、ターゲットを視準する位置を変更する工程であり、トータルステーション6と同じ機器をトータルステーション8として支持具7に設置する行為以外に、トータルステーション6とは異なる機器をトータルステーション8として支持具7に設置する行為も含むものとする。
【0027】
盛り替え工程において、測定者は、シールドトンネル11の内壁に取付けられた支持具7に、トータルステーション8を設置する。支持具7は、トンネル頂部もしくはトンネル側部のスプリングラインよりも上方に取付けられている。そして、支持具7と、支持具7に設置されたトータルステーション8とは、シールド掘削機1の後方台車と接触しない位置に配置される。
【0028】
次に、位置測定工程において、測定者は、端末装置10によってトータルステーション8を操作することで、図2(b)に示す矢印Cのように、自動測定用ターゲットとして機器ターゲット2c、2dをそれぞれ視準させて機器ターゲット2c、2dとの角度及び距離をそれぞれ測定させる。なお、トータルステーション8は、自動追尾機能を備えているため、視準範囲内に機器ターゲット2c、2dがあれば、自動で視準し、角度及び距離を測定する。これにより、測定者が直接視準しなくても良いため、トータルステーション8を支持具7に設定しても視準作業を簡単に行うことができる。
【0029】
トータルステーション8で測定された、トータルステーション8と機器ターゲット2c、2dとのそれぞれの角度及び距離とは、測量装置9に送信される。これにより、測量結果を読み取る作業、書き記す作業、入力する作業を省略できるため、ヒューマンエラーによるミスを排除できる。
【0030】
そして、測量装置9のトータルステーション位置算出部93によって、ターゲット位置算出部92によって算出された機器ターゲット2c、2dのそれぞれの位置と、人為測定されたトータルステーション8と機器ターゲット2c、2dとのそれぞれの角度及び距離とを用いて、トータルステーション8の位置が算出される。
【0031】
シールド掘削機位置算出部91によって算出されたシールド掘削機1の位置及び姿勢は、記憶部94に測量結果943として記憶されると共に、端末装置10に送信され、表示部102に測量結果として表示される。これにより、測定者は、測量結果をその場で確認することができる。
【0032】
次に、測定者は、トータルステーション8に自動測定を指示し、トータルステーション8によって推進中のシールド掘削機1の位置及び姿勢を自動測定する自動測定工程を実施させる。
【0033】
測定者は、端末装置10によって、トータルステーション8に自動測定を指示する。
【0034】
トータルステーション8は、自動測定が指示されると、図2(b)に示す矢印Cのように、自動測定用ターゲットである機器ターゲット2c、2dの視準を所定の間隔で繰り返して、測定した機器ターゲット2c、2dのそれぞれの角度及び距離を測量装置9に送信する。
【0035】
なお、視準する自動測定用ターゲットは、機器ターゲット2c、2dに限定されることなく、シールド掘削機1に取り付けられた機器ターゲット2a〜2dの中から複数を選択すれば良い。しかし、本実施形態の機器ターゲット2c、2dのように、スプリングラインよりも上方に配置されているものを自動測定用ターゲットとすると好適である。すなわち、図3に示すように、トンネル底部に設置したトータルステーション6から機器ターゲット2a〜2dへの視界が後方台車12によって遮られる場合でも、トータルステーション8が設置される支持具7はスプリングラインよりも上方に配置されているため、支持具7に設置したトータルステーション8から機器ターゲット2c、2dへの視界が確保される。従って、長距離に亘って自動測定を継続することができる。
【0036】
そして、測量装置9は、シールド掘削機位置算出部91は、トータルステーション位置算出部93によって算出されたトータルステーション8の位置と、自動測定によって測定されたトータルステーション8と機器ターゲット2c、2dとのそれぞれの角度及び距離とを用いて、シールド掘削機1の位置及び姿勢を算出する。
【0037】
シールド掘削機位置算出部91によって算出されたシールド掘削機1の位置及び姿勢は、記憶部94に測量結果943として記憶されると共に、端末装置10に送信され、表示部102に測量結果として表示される。これにより、測定者は、測量結果をその場で確認することができる。この自動測定工程は、日常掘進管理測量等の次回の人為測定まで自動測定を継続される。
【0038】
なお、本実施形態では、人為計測用ターゲット(機器ターゲット2a、2b)及び自動測定用ターゲット(機器ターゲット2c、2d)の数をそれぞれ2個としたが、それぞれ3以上設けるようにしても良い。また、人為計測用ターゲットと自動測定用ターゲットとの一部もしくは全部を共通化するようにしても良い。そして、人為計測用ターゲットと自動測定用ターゲットとを共通化した場合には、測量装置9においてターゲット位置算出部92を省略することができる。
【0039】
また、本実施形態では、日常掘進管理測量において、トータルステーション6を用いて既知点3、5の測量を実施するように構成され、記憶部94には、既知点3、5の位置の座標履歴が既知点情報942として記憶される。これにより、既知点3、5の座標履歴をシステム上で確認でき、シールドの影響がなくなって、座標の動きが収束したことを確認できる。また、測量間違いや、既知点3、5の移動等によって、急に座標に動きがあった場合は、警告する可能になる。
【0040】
さらに、トータルステーション6、8に、可視レーザー光を投射する装置を設け、測距測角用の光と同一方向に可視レーザー光を投射するように構成すると良い。これにより、可視レーザー光で障害物を簡単に特定できるため、ホースやケーブルなどの障害物を容易にずらすことができ、測量時間の短縮につながる。
【0041】
また、本実施の形態では、支持具7をシールドトンネル11の内壁に取付けたが、支持具7の設置位置は、後方台車12に接触せず、機器ターゲットが視準しやすい位置であれば、どこに設置しても良い。
【0042】
以上説明したように、本実施形態は、自動追尾機能を備えたトータルステーション6、8によってシールド掘削機1に設けられた機器ターゲット2a〜2dを視準し、測定した機器ターゲット2a〜2dの位置に基づいてシールド掘削機1の位置及び姿勢を測定するシールド測量方法であって、シールドトンネル11内の既知点5に設置したトータルステーション6を測定者が操作して、シールド掘削機1に設けられた機器ターゲット2a、2bと共に、シールドトンネル11内の既知点3に設置した基準ターゲット4を視準することで、機器ターゲット2a〜2bの位置を測定する人為測定工程と、機器ターゲット2a、2bの位置からシールド掘削機1位置及び姿勢を算出し、そこから機器ターゲット2c、2dの位置を算出する工程と、シールドトンネル11の内壁に取付けられた支持具7にトータルステーション8を設置する盛り替え工程と、人為測定工程によって位置を測定した機器ターゲット2c、2dを視準することで、支持具7に設置したトータルステーション8の位置及び姿勢を測定する位置測定工程と、支持具7に設置したトータルステーション8によって、シールド掘削機1に設けられた機器ターゲット2c、2dを自動追尾機能で視準させ、機器ターゲット2c、2dの位置を自動で測定する自動測定工程と、を具備し、シールド掘削機1の停止中に人為測定工程、盛り替え工程及び位置測定工程を実施することで、自動測定工程によって移動中のシールド掘削機1の位置及び姿勢を測定させる。
この構成により、シールドトンネル11の内壁に取付けられた支持具7に設置したトータルステーション8によって、移動中のシールド掘削機1の位置及び姿勢を測定することができるため、盛り替え頻度(トータルステーション8を設置する頻度)を減少させることができ、測量精度を向上させることができる。また、人為測定に用いるトータルステーション6と、自動測定に用いるトータルステーション8とを兼用することができるため、コストダウンが可能になる。
【0043】
さらに、本実施形態において、支持具7は、スプリングラインよりも上方の、シールド掘削機1の後方台車12と接触しない位置に配置されている。
この構成により、後方台車12によって遮られることなく、支持具7に設置したトータルステーション8によって機器ターゲット2c、2dを視準しやすくなるため、盛り替え頻度(トータルステーション8を設置する頻度)を減少させることができる。
【0044】
さらに、本実施形態において、機器ターゲット2a〜2dは、人為測定工程で使用する複数の人為測定用ターゲット(機器ターゲット2a、2b)と、自動測定工程で使用する複数の自動測定用ターゲット(機器ターゲット2c、2d)とを具備する。
この構成により、自動測定工程において、人為測定工程で視準した機器ターゲット2a、2bを使用しなくても良いので、トータルステーション8の設置の自由度が高く使いやすい。
【0045】
さらに、本実施形態において、複数の人為測定用ターゲット(機器ターゲット2a、2b)は、スプリングラインよりも下方に、複数の自動測定用ターゲット(機器ターゲット2c、2d)は、スプリングラインよりも上方にそれぞれ配置されている。
この構成により、人為測定工程で視準したスプリングラインよりも下方の機器ターゲット2a、2bを使用しなくても、自動測定工程では、スプリングラインよりも上方に配置された機器ターゲット2c、2dを使用することができる。従って、自動測定工程において、支持具7に設置したトータルステーション8から機器ターゲット2c、2dへの視界が確保され、長距離に亘って自動測定を継続することができる。
【0046】
なお、本発明が上記各実施形態に限定されず、本発明の技術思想の範囲内において、各実施形態は適宜変更され得ることは明らかである。
【符号の説明】
【0047】
1 シールド掘削機
2a〜2d 機器ターゲット
3、5 既知点
4 基準ターゲット
6、8 トータルステーション
7 支持具
9 測量装置
10 端末装置
11 シールドトンネル
12 後方台車
91 シールド掘削機位置算出部
92 ターゲット位置算出部
93 トータルステーション位置算出部
94 記憶部
941 ターゲット配置情報
942 既知点情報
943 測量結果
101 操作部
102 表示部
図1
図2
図3