(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
(1)本発明のブロー成形方法では、前記冷却媒体が前記パリソン内を旋回することが好ましい。
この構成によれば、冷却媒体が旋回してよく流れるから、冷却媒体のよどみがさらに抑制されて、パリソンの効果的な冷却ができる。
【0011】
(2)本発明のブロー成形方法は、前記ブローピンが、一方向に前記冷却媒体を噴出する構成とされていることが好ましい。
この構成では、ブローピンが、一方向に冷却媒体を噴出する構成とされているから、簡単な構成で、冷却媒体の流れを確実につくることができる。
【0012】
次に、本発明のブロー成形方法を具体化した実施例1について、図面を参照しつつ説明する。
【0013】
<実施例1>
本実施例1のブロー成形品を成形するブロー成形方法は、ブロー成形金型内のパリソンにブローピンにて、冷却媒体を吹き込みつつ排出する際、冷却媒体がパリソンの内側面に沿って流れるようにすることを特徴とする。
【0014】
まず、本実施例のブロー成形方法について、その流れを説明する。
ブロー成形方法には、ブロー成形装置を用いる。ブロー成形装置は、パリソン3と呼ばれる筒状の溶融樹脂を押し出す押し出し機1と、パリソン3をその両側から挟む一対の金型7と、一対の金型7を接近・離反させて型閉じ・型開きさせる金型駆動機構(図示しない)とを備えている。
【0015】
本実施例のブロー成形方法には、押し出し工程、パリソン吸着工程、パリソン切断工程、パリソン搬送工程、プリブロー工程、型閉じ工程、本ブロー工程、型開き工程、2次冷却工程が備えられている。
図1には、押し出し工程が示されている。この工程では、
図1に示すように、押し出し機1により筒状の溶融樹脂を押し出してパリソン3とする。
図1の左図は、押し出しの途中の状態を示し、
図1の右図は、押し出しが完了した状態を示す。パリソン3の具体的な形態は、特には限定されないが、例えば、
図1に示されるように、下端に向かうにつれて徐々に拡径する形態とされており、下端側は、垂直方向に対して傾斜している。
【0016】
次に、
図2の左図に示すパリソン吸着工程が行われる。この工程では、パリソン3は、ロボットハンド5により吸着された状態で把持される。この際に、パリソン3の上下端を開放したままで、パリソン3の上端部付近を吸着により把持する真空吸引方式が採用されている。
その後、
図2の右図に示すパリソン切断工程が行われる。この工程では、所定の長さにパリソン3が切断される。1つのパリソン3の長さは、製品15のサイズに応じて適宜調整される。
【0017】
次に、
図3に示すパリソン搬送工程が行われる。パリソン3は、ロボットハンド5によって、一対の金型7の間に位置するまで搬送される。このとき、金型7は型開き状態とされている。
続いて、
図4に示すプリブロー工程が行われる。まず、
図4の左図に示すように、パリソン3の下側からプリブローピン9が挿入される。そして、
図4の中図に示すように、パリソン3の上下に位置するピンチ板を閉じる。この状態で、
図4の右図に示すように、プリブローピン9からパリソン3の内部に冷却媒体を吹き込んで、パリソン3を少し膨らませる(プリブローする)。
【0018】
続いて、
図5に示す型閉じ工程が行われる。
図5の左図の状態から、金型駆動機構によって、一対の金型7を接近させて型閉じを行い、
図5の右図の状態にする。
【0019】
次に、
図6に示す本ブロー工程が行われる。この工程では、
図6の左図に示すように、型閉じ状態で、ブローピン13をパリソン3に打ち込む。なお、金型7には、ブローピン13が差し込み可能(挿通可能)な孔(図示せず)が形成されている。続いて、
図6の右図に示すように、この状態で、ブローピン13からパリソン3の内部に冷却媒体を吹き込んで、パリソン3を膨らませる(本ブローする)。
【0020】
その後、
図7に示す型開き工程が行われる。この工程では、型開きして、製品15を取り出す。そして、
図8に示すように、製品15からバリを切り取る。続いて、
図9に示す2次冷却工程が行われる。この工程では
図9の左図に示すように、製品15を冷却用の金型17に入れる。そして、
図9の中図に示すように、2次冷却が終了した後に、製品15を冷却用の金型17から取り出し、
図9の右図に示すように、室温にて養生する。
【0021】
ここで、実施例1の特徴を説明する。実施例1では、
図6の本ブローの際に、冷却媒体がパリソン3の内側面3A,3Bに沿って流れるようにしている。この特徴を、
図10を参照して説明する。
図10は、金型7内のパリソン3の内部を模式的に示している。一対の金型7の片方の金型7からは、パリソン3に対して、3本のブローピン13A,13B,13Cが挿入されている。3本のブローピン13A,13B,13Cのうち、ブローピン13A,13Bは、吹き込み専用に用いられ、ブローピン13Cは、吹き込み及び排気のいずれにも使用される。
【0022】
ブローピン13A,13B,13Cのうち、少なくとも、ブローピン13A,13Bは、一方向に冷却媒体を噴出可能に構成されている。すなわち、冷却媒体を放射状に拡散して噴出するのではなく、一方向に流れる冷却媒体を噴出するようにされている。例えば、具体的には、ブローピン13A,13Bは、
図11に示すように、先端部分が尖った棒状であり、内部は冷却媒体が流通可能に中空とされ、先端部近傍に、単一の吹き出し穴19A,19Bが形成されている。ブローピン13A,13Bの先端部分は、パリソン3に挿入し易いように鋭角に尖っており、その角度は、樹脂の種類等に応じて適宜選択される。
【0023】
単一の吹き出し穴19A,19Bから冷却媒体が噴出されると、一方向に向かう冷却媒体を噴出可能となる。吹き出し穴19A,19Bは、略円形をなしている。吹き出し穴19A,19Bを、略円形とすることで、噴出された冷却媒体の流れの乱れが抑制される。仮に吹き出し穴19A,19Bを、矩形にすると、角部付近で冷却媒体の流れが乱れやすい。よって、パリソン3の内側面3Aに沿った冷却媒体の流れをつくるためには、吹き出し穴19A,19Bが略円形であることが好ましい。
【0024】
パリソン3に対して挿入されたブローピン13Aの吹き出し穴19Aは、ブローピン13Aが挿入された近傍のパリソン3の内側面3Aに沿った方向に向いている。すなわち、ブローピン13Aは、内側面3Aに沿う循環方向に開口している。
同様にして、パリソン3に対して挿入されたブローピン13Bの吹き出し穴19Bは、ブローピン13Bが挿入された近傍のパリソン3の内側面3Bに沿った方向に向いている。すなわち、ブローピン13Bは、内側面3Bに沿う循環方向に開口している。
また、実施例1では、ブローピン13Aの吹き出し穴19Aが向いた方向と、ブローピン13Bの吹き出し穴19Bが向いたとは、逆方向に向くようにされている。このようにすると、
図10の破線で示した旋回する冷却媒体の流れができる。
ブローピン13Cは、パリソン3の角部付近に挿入されている。ブローピン13Cは、排気にも用いるが、ブローピン13Cを、パリソン3の角部に挿入することで、冷却媒体のよどみができやすい部分の排気が効率的にできる。
【0025】
なお、
図10に示すように、ブローピン13A,13Bは、パリソン3の内側面3A,3Bの近傍に挿入される。一般的にパリソン3の内部では、冷却媒体のよどみは、パリソン3の内側面3A,3Bの近傍で起きやすい。実施例1では、ブローピン13A,13Bをパリソン3の内側面3A,3Bの近傍に挿入することで、内側面3A,3Bに冷却媒体を這わせるようにして流すことができるから、冷却媒体のよどみを効果的に抑制することができる。また、ブローピン13A,13Bは、対向するパリソン3の内側面3A,3Bの近傍にそれぞれ挿入されることが好ましい。このような位置関係に、ブローピン13A,13Bを挿入することで、パリソン3の内部を大きく回る冷却媒体の流れができ、冷却効率が向上する。
【0026】
ここで、実施例1の作用効果について従来例との比較しつつ説明する。
図12に従来例を示す。なお、従来例において、上記実施例1と略同じ構成部位には同符号を付ける。
従来、本ブローの際には、
図13に示すブローピン21が用いられていた。ブローピン21は、先端部分が尖った棒状であり、内部は冷却媒体が流通可能に中空とされ、先端部近傍に、複数の小型の吹き出し穴21Aが放射方向に全周に亘って形成されている。このようにブローピン21では、冷却媒体を放射状に拡散して噴出するようにされている。
【0027】
図12の従来例の場合、本ブローの際には、金型7からは、パリソン3に対して、3本のブローピン21,21,25が挿入さる。本ブローの初期状態では、3本のブローピン21,21,25から、冷却媒体が吹き込まれ、途中でブローピン25は、排気用に切り替えられる。ブローピン21,21から、パリソン3に冷却媒体を吹き込むと、ブローピン21,21の近傍のみに冷却媒体が流れていた。よって、
図12の符号23で示すパリソン3の隅付近では、冷却媒体のよどみができて、冷却媒体の循環がほとんどされず、熱がこもっていた。よって、パリソン3の冷却効率が低かった。このように冷却効率が低いため、サイクルタイムが長くなり、生産性が低下していた。また、製品15の冷却過程において、内部に局所的に温度が高いところができて、寸法変化が起きやすく、寸法が安定しなかった。
【0028】
一方、実施例1では、次の作用効果を奏する。すなわち、
図10に示すように、本ブローの際には、金型7からは、パリソン3に対して、3本のブローピン13A,13B,13Cが挿入さる。本ブローの初期状態では、3本のブローピン13A,13B,13Cから、冷却媒体が吹き込まれ、途中でブローピン13Cは、排気用に切り替えられる。この状態では、冷却媒体は、
図10に示すように、パリソン3の内側面3A,3Bに沿って流れる。具体的には、冷却媒体は、パリソン3内を旋回し、冷却媒体のよどみは、ほとんど発生しない。よって、パリソン3の効果的な冷却ができる。このように冷却効率が高いため、サイクルタイムを短くすることができ、生産性が向上する。また、製品15の冷却過程において、局所的に温度が高いことに起因する寸法変化が抑制されて、寸法精度が向上する。
【0029】
また、実施例1では、ブローピン13A,13Bの構成を改良するという、簡易な手段により、パリソン3の効果的な冷却ができる。よって、実施例1はコスト的に非常に有利である。
実施例1では、ブローピン13A,13Bにそれぞれ単一の吹き出し穴19A,19Bを形成している。単一の吹き出し穴19A,19Bは形成しやすいため、ブローピン13A,13Bの作製コストが低減される。
また、単一の吹き出し穴19A,19Bは、略円形をなしているから、矩形よりも形成しやすい。しかも、略円形の単一の吹き出し穴19A,19Bは、開口部が大きく、小型の複数の穴を用いた場合よりも吹き出した冷却媒体の乱れが少なく、冷却媒体の流れを形成しやすい。
また、実施例1では、ブローピン13A,13Bは、対向するパリソン3の内側面3A,3Bの近傍にそれぞれ挿入されており、
図10に示すように、パリソン3の内部を大きく回る冷却媒体の流れができ、冷却効率が極めて高い。仮に、パリソン3の内部に、複数の小さい旋回する冷却媒体の流れを形成した場合には、旋回する冷却媒体の流れ同士が近接する部分では冷却媒体のよどみができやすい。実施例1では、旋回する冷却媒体の流れは、1つであるから、冷却媒体のよどみは発生しにくい。
【0030】
<他の実施例>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施例に限定されるものではなく、例えば次のような実施例も本発明の技術的範囲に含まれる。
【0031】
(1)実施例1では、ブローピン13は、3つとしたが、ブローピン13の数は、特に限定されない。
(2)実施例1では、ブローピン13の吹き出し穴は、特定形状のものを示したが、製造される製品15の大きさ・形態等に応じて適宜変更できる。
(3)実施例1では、パリソン3をロボットハンドにより把持する際に、真空吸引方式が採用されていることとしたが、パリソンを挟み込んで把持するピンチ方式を採用してもよい。
(4)実施例1では、ブローピン13A,13Bは、循環方向に開口していることとしたが、開口は循環方向に限定されず、ブローされた冷却媒体が内側面に衝突後、内側面に沿う循環方向に流れるような方向であってもよい。
(5)本発明において、冷却媒体は、エア(空気)に限定されず、ミスト等であってもよい。
(6)なお、ブローピン13A,13Bは、軸周りに回転可能な構成としてもよい。