(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記混合気噴出部に重なる前記燃焼板の部分を燃焼領域、前記第1炎孔列と前記第2炎孔列とのうち燃焼領域のX軸方向外側の側縁に最寄りの炎孔列を外側炎孔列として、外側炎孔列には前記間引き部分を設けないことを特徴とする請求項1記載の全一次燃焼式バーナ。
前記燃焼板に臨ませて設けられる点火電極と接地電極との間の放電ギャップが前記第1炎孔列と前記第2炎孔列とのうちの一つの特定炎孔列に属する前記間引き部分ではない所定の炎孔間部分に対向すると共に、当該炎孔間部分に、炎孔よりも小さな点火炎孔が設けられることを特徴とする請求項1又は2記載の全一次燃焼式バーナ。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のバーナとして、特許文献1により、炎孔がスリット状であって、炎孔の長手方向をX軸方向、短手方向をY軸方向として、Y軸方向に所定ピッチで並ぶ複数の炎孔から成る炎孔列をX軸方向に複数並設したものが知られている。尚、このものでは、全ての炎孔列で炎孔のY軸方向位置が揃っている。
【0003】
また、このものでは、燃焼板のX軸方向複数個所に、炎孔列間のX軸方向間隔が広くなるように2列程度の炎孔列を間引いた間引き部分を設けている。これによれば、間引き部分が混合気の還流域となって、保炎効果が得られる。
【0004】
然し、このように炎孔列の間引き部分を設けたのでは、炎孔列形成部分の面積が狭くなる。これでは、高負荷燃焼時に、炎孔列形成部分で集中して混合気が噴出して、火炎が長くのびる。そのため、被加熱物に火炎が触れないように、バーナと被加熱物との間の距離を長くする必要があって、燃焼装置が大型化する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、以上の点に鑑み、高負荷燃焼時の火炎の長大化を生ずることなく保炎効果を得られるようにした全一次燃焼式バーナを提供することをその課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明は、バーナボディの混合気噴出部を覆う
板金製の燃焼板を備え、燃焼板に形成したスリット状の多数の炎孔から混合気を噴出させて燃焼させる全一次燃焼式バーナであって、炎孔の長手方向をX軸方向、短手方向をY軸方向として、Y軸方向に所定ピッチで並ぶ複数の炎孔から成る炎孔列をX軸方向に複数並設するものにおいて、炎孔列として、第1炎孔列と、各炎孔の位置が第1炎孔列の各炎孔の位置からY軸方向に半ピッチずれた第2炎孔列とが設けられて、第1炎孔列と第2炎孔列とがX軸方向に交互に並設され、第1炎孔列と第2炎孔列との少なくとも一方の炎孔列のY軸方向複数個所に、炎孔間のピッチが前記所定ピッチの2倍となるように各1個の炎孔を間引いた間引き部分が設けられ、各間引き部分が、当該間引き部分を設けた炎孔列に属する、当該間引き部分のY軸方向両側に位置する2個の炎孔と、当該間引き部分を設けた炎孔列のX軸方向一側に隣接する炎孔列に属する、当該間引き部分の中心に対しY軸方向両側に夫々半ピッチずれた2個の炎孔と、当該間引き部分を設けた炎孔列のX軸方向他側に隣接する炎孔列に属する、当該間引き部分の中心に対しY軸方向両側に夫々半ピッチずれた2個の炎孔との計6個の炎孔で囲われるようにすることを特徴とする。
【0008】
本発明によれば、間引き部分を囲う6個の炎孔から噴出する混合気の一部が間引き部分に還流して、保炎作用が確実に得られる。そして、従来例の如く炎孔列を間引くのではなく、第1炎孔列と第2炎孔列との少なくとも一方の炎孔列のY軸方向複数個所で各1個の炎孔を間引くだけであるため、燃焼板全体からほぼ均等に混合気が噴出する。従って、燃焼板の限られた領域で集中的に混合気が噴出することはなく、高負荷燃焼時にも火炎が長大化しない。その結果、バーナと被加熱物との間の距離を長くせずに済み、燃焼装置の大型化を回避できる。
【0009】
ところで、混合気噴出部に重なる燃焼板の部分を燃焼領域として、燃焼領域のX軸方向外側の側縁に近い部分では周囲に熱が奪われやすく、保炎性が悪くなる。従って、本発明においては、第1炎孔列と第2炎孔列とのうち燃焼領域のX軸方向外側の側縁に最寄りの炎孔列を外側炎孔列として、外側炎孔列には間引き部分を設けないことが望ましい。これにより、側縁に近い部分での保炎性を確保できる。
【0010】
また、本発明においては、燃焼板に臨ませて設けられる点火電極と接地電極との間の放電ギャップが第1炎孔列と第2炎孔列とのうちの一つの特定炎孔列に属する間引き部分ではない所定の炎孔間部分に対向すると共に、当該炎孔間部分に、炎孔よりも小さな点火炎孔を設けることが望ましい。これによれば、放電ギャップの位置が多少ばらついても、点火炎孔からの混合気が放電ギャップに供給されるため、点火性能を確保できる。更に、点火炎孔を小さくすることで、点火炎孔の追加による熱分布の崩れを抑制できる。
【0011】
更に、本発明においては、燃焼板の混合気が噴出する側の面に耐熱繊維布を重ね合せてもよい。これによれば、炎孔から耐熱繊維布を介して混合気が噴出するようになり、噴出混合気の炎孔を中心としたY軸方向の流速分布がなだらかになる。そのため、間引き部分にも僅かながら火炎が形成されて保炎性が高まり、耐リフト性が向上する。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1乃至
図4は、本発明の実施形態の全一次燃焼式バーナ1を備える燃焼装置を示している。バーナ1は、内部に混合気(燃料ガスと一次空気との混合ガス)が供給されるバーナボディ2を備えている。バーナボディ2は、下面が開放された箱状のボディ本体21と、ボディ本体21の下面に装着した額縁状の板枠22とを有しており、板枠22の中央開口部で混合気噴出部23が構成される。バーナ1は、更に、板枠22上に混合気噴出部23を覆うように取付けた板金製の燃焼板3を備えており、燃焼板3に形成した多数の炎孔31から下向きに混合気が噴出して全一次燃焼(二次空気が不要な燃焼)する。尚、板枠22の外形は矩形であって、その周縁のフランジ部22aのうち長辺に沿う部分の下面には、バーナボディ2への入熱を抑制するために断熱材24が設けられている。
【0014】
また、ボディ本体21の上部には、混合気を供給するファン4を接続する流入口25が開設されている。流入口25には、ファン4停止時にバーナボディ2内に残留する混合気がファン4側に逆流することを阻止する逆止弁26が装着されている。逆止弁26は、流入口25に嵌め込まれる樹脂製の弁筐261と、バーナボディ2内を向く弁筐261の開口部に開閉自在に軸着された樹脂製の弁板262とで構成されている。
【0015】
燃焼装置は、バーナ1から噴出する混合気の燃焼空間を囲う、バーナ1の下側に設けられた燃焼筐5を備えている。燃焼筐5内の下部には、被加熱物たる給湯用の熱交換器6が収納されている。熱交換器6は、並設した多数の吸熱フィン61とこれら吸熱フィン61を貫通する複数の吸熱パイプ62とを備えるフィンアンドチューブ型熱交換器で構成されている。
【0016】
吸熱フィン61の並設方向を横方向として、燃焼筐5の横方向一側と他側の側板51,52の外面には、隣り合う2本の吸熱パイプ62,62の接続路を各側板51,52との間に画成する接続蓋63が複数取付けられており、全ての吸熱パイプ62が直列に接続される。また、上流端の吸熱パイプ62に接続される接続路を横方向一側の側板51との間に画成する接続蓋63には入水口64が設けられている。
【0017】
また、燃焼筐5のバーナ1と熱交換器6との間の部分には、燃焼筐5を冷却するウォータジャケット7が設けられている。このウォータジャケット7は、燃焼筐5の後板53に設けられた横方向にのびる水管から成る上下3本の第1ジャケット部7
1と、燃焼筐5の前板54に設けられた横方向にのびる水管から成る上下3本の第3ジャケット部7
3と、燃焼筐5の横方向一側の側板51に設けられた、上下3本の第1ジャケット部7
1と上下3本の第3ジャケット部7
3とを接続する前後方向にのびる上下3本の第2ジャケット部7
2と、燃焼筐5の横方向他側の側板52の後方寄りの部分に設けられた、熱交換器6を通過した水を上下3本の第1ジャケット部7
1に導く上下方向に長手の流入側ジャケット部7inと、燃焼筐5の横方向他側の側板52の前方寄りの部分に設けられた、上下3本の第3ジャケット部7
3からの水が流入する上下方向に長手の流出側ジャケット部7outとで構成され、流出側ジャケット部7outの上部に、給湯路を接続する出湯口71が設けられている。これにより、熱交換器6を通過した水(温水)は、流入側ジャケット部7inから第1ジャケット部7
1と第2ジャケット部7
2と第3ジャケット部7
3とを介して流出側ジャケット部7outに流れ、出湯口71から給湯路に供給される。
【0018】
尚、第2ジャケット部7
2は、燃焼筐5の横方向一側の側板51とこれに取付けた蓋板72との間に画成される。また、流入側と流出側の各ジャケット部7in,7outも、燃焼筐5の横方向他側の側板52とこれに取付けた蓋板73,74との間に画成される。更に、流出側ジャケット部7outの上部から後方にのびる第4ジャケット部7
4が設けられている。
【0019】
また、燃焼筐5の前板54には、燃焼筐5内に突出して燃焼板3に臨む点火電極81と接地電極82とフレームロッド83とを有する電極部品8が装着されている。そして、点火電極81と接地電極82との間の放電ギャップに発生させる火花放電でバーナ1に点火するようにしている。尚、電極部品8には、燃焼筐5内を視認できる覗き窓84が付設されている。
【0020】
次に、燃焼板3について
図5を参照して詳述する。燃焼板3に形成する炎孔31はスリット状である。そして、炎孔31の長手方向をX軸方向、短手方向をY軸方向として、燃焼板3には、Y軸方向に所定ピッチで並ぶ複数の炎孔31から成る炎孔列がX軸方向に複数並設されている。炎孔列としては、第1炎孔列32
1と、各炎孔31の位置が第1炎孔列32
1の各炎孔31の位置からY軸方向に半ピッチずれた第2炎孔列32
2とが設けられ、第1炎孔列32
1と第2炎孔列32
2とがX軸方向に交互に並設されている。
【0021】
また、第1炎孔列32
1と第2炎孔列32
2との一方の炎孔列(本実施形態では第2炎孔列32
2)のY軸方向複数個所に、炎孔31,31間のピッチが上記所定ピッチの2倍となるように各1個の炎孔31を間引いた間引き部分33を設けている。各間引き部分33は、当該間引き部分33を設けた第2炎孔列32
2に属する、当該間引き部分33のY軸方向両側に位置する2個の炎孔31,31と、当該間引き部分33を設けた第2炎孔列32
2のX軸方向一側に隣接する第1炎孔列32
1に属する、当該間引き部分33の中心に対しY軸方向両側に夫々半ピッチずれた2個の炎孔31,31と、当該間引き部分33を設けた第2炎孔列32
2のX軸方向他側に隣接する第1炎孔列32
1に属する、当該間引き部分33の中心に対しY軸方向両側に夫々半ピッチずれた2個の炎孔31,31との計6個の炎孔31で囲われる。そのため、これら6個の炎孔31から噴出する混合気の一部が間引き部分33に還流して、保炎作用が確実に得られる。
【0022】
そして、従来例の如く炎孔列を間引くのではなく、第2炎孔列32
2のY軸方向複数個所で各1個の炎孔31を間引くだけであるため、燃焼板3全体からほぼ均等に混合気が噴出する。従って、燃焼板3の限られた領域で集中的に混合気が噴出することはなく、高負荷燃焼時にも火炎が長大化しない。その結果、バーナ1と被加熱物たる熱交換器6との間の距離を長くしなくても、火炎が熱交換器6に触れることはなく、燃焼装置の大型化を回避できる。
【0023】
ところで、バーナボディ2の混合気噴出部23に重なる燃焼板3の部分を燃焼領域として、燃焼領域のX軸方向外側の側縁に近い部分では周囲に熱が奪われやすく、保炎性が悪くなる。そこで、本実施形態では、燃焼領域のY軸方向外側の側縁に最寄りの炎孔列である外側炎孔列を、間引き部分33を設けない第1炎孔列32
1としている。これにより、燃焼領域のX軸方向外側の側縁に近い部分での保炎性を確保できる。尚、外側炎孔列を第2炎孔列32
2とすることも可能である。この場合、外側炎孔列となる第2炎孔列32
2には、他の第2炎孔列32
2と異なり間引き部分33を設けない。
【0024】
また、点火電極81と接地電極82との間の放電ギャップは、第1炎孔列32
1と第2炎孔列32
2とのうちの一つの特定炎孔列32A(本実施形態では
図5で下から2番目の第1炎孔列32
1)に属する間引き部分33ではない所定の炎孔31,31間部分に対向している。そして、当該炎孔31,31間部分に、炎孔31よりも小さな点火炎孔34を設けている。これにより、放電ギャップの位置が多少ばらついても、点火炎孔34からの混合気が放電ギャップに供給されるため、点火性能を確保できる。更に、点火炎孔34を小さくすることで、点火炎孔34の追加による熱分布の崩れを抑制できる。
【0025】
尚、本実施形態では、放電ギャップに対向する♯1の点火炎孔34に加えて、これと点対称の♯2の点火炎孔34と、♯1の点火炎孔34に対しX軸方向に対称の♯3の点火炎孔34と、♯1の点火炎孔34に対しY軸方向に対称の♯4の点火炎孔34とを設けている。これにより、燃焼板3を左右反転し或いは上下反転して板枠22上に取付けても、何れかの点火炎孔34が放電ギャップに対向する。そのため、燃焼板3を方向性を気にせずに取付けることができ、組立性が向上する。
【0026】
ところで、上記第1実施形態では、第2炎孔列32
2にのみ間引き部分33を設けているが、
図6に示す第2実施形態の如く、第1炎孔列32
1と第2炎孔列32
2との両者に間引き部分33を設けてもよい。但し、第1炎孔列32
1に設ける間引き部分33の位置と第2炎孔列32
2に設ける間引き部分33の位置はY軸方向にずらす。そして、第1炎孔列32
1に設ける各間引き部分33が、当該間引き部分33を設けた第1炎孔列32
1に属する、当該間引き部分33のY軸方向両側に位置する2個の炎孔31,31と、当該間引き部分33を設けた第1炎孔列32
1のX軸方向一側に隣接する第2炎孔列32
2に属する、当該間引き部分33の中心に対しY軸方向両側に夫々半ピッチずれた2個の炎孔31,31と、当該間引き部分33を設けた第1炎孔列32
1のX軸方向他側に隣接する第2炎孔列32
2に属する、当該間引き部分33の中心に対しY軸方向両側に夫々半ピッチずれた2個の炎孔31,31との計6個の炎孔31で囲われ、また、第2炎孔列32
2に設ける各間引き部分33が、当該間引き部分33を設けた第2炎孔列32
2に属する、当該間引き部分33のY軸方向両側に位置する2個の炎孔31,31と、当該間引き部分33を設けた第2炎孔列32
2のX軸方向一側に隣接する第1炎孔列32
1に属する、当該間引き部分33の中心に対しY軸方向両側に夫々半ピッチずれた2個の炎孔31,31と、当該間引き部分33を設けた第2炎孔列32
2のX軸方向他側に隣接する第1炎孔列32
1に属する、当該間引き部分33の中心に対しY軸方向両側に夫々半ピッチずれた2個の炎孔31,31との計6個の炎孔31で囲われるようにする。これにより第1実施形態のものと同様の作用効果を得られる。
【0027】
次に、
図7に示す第3実施形態について説明する。第3実施形態の上記第1、第2実施形態との相違点は、燃焼板3の混合気が噴出する側の面に金属繊維等の耐熱繊維で織られた耐熱繊維布35を重ね合せたことである。尚、燃焼板3は、第1、第2実施形態と同様のものを用いている。
【0028】
第3実施形態では、混合気が炎孔31から耐熱繊維布35を介して噴出することになり、噴出混合気の炎孔31を中心としたY軸方向の流速分布がなだらかになる。そのため、第1、第2実施形態の間引き部分33にも僅かながら火炎が形成される。これにより保炎性が高まり、耐リフト性が向上する。
【0029】
以上、本発明の実施形態について図面を参照して説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、上記第1実施形態では、間引き部分33のY軸方向位置が全ての第2炎孔列32
2において同一であるが、第2炎孔列32
2ごとに間引き部分33のY軸方向位置を異ならせてもよい。また、上記実施形態は、混合気を下向きに噴出するバーナ1に本発明を適用したものであるが、混合気を上向きに噴出するバーナにも同様に本発明を適用できる。