(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来技術では、中間部品を弾性変形および塑性変形させる際に加える力の僅かな変化で、開口部を囲む第2材料製部品の壁に過大な力が加わり、第2材料製部品が破損するおそれがある。
【0006】
そこで本発明は、軸部材に外挿される外挿部材の破損を抑制できる時計部品、ムーブメントおよび時計を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の時計部品は、軸部材と、前記軸部材に外挿される外挿部材と、前記軸部材と前記外挿部材との間に介在し、前記外挿部材よりも延性の高い延性材料により形成され、前記外挿部材に向かって突出して接触する突起部を有する中間部材と、を備えることを特徴とする。
【0008】
本発明によれば、外挿部材よりも延性の高い延性材料により形成された中間部材が軸部材と外挿部材との間に介在するので、外挿部材を軸部材の外側に直接圧入する場合と比較して、中間部材を塑性変形および弾性変形させることにより、外挿部材に発生する応力を緩和することができる。しかも、中間部材は、外挿部材に接触する突起部を有するので、中間部材と外挿部材とは、突起部の先端において接触する。このため、外挿部材において発生する応力を、突起部の先端を変形させることにより逃がすことができる。よって、外挿部材に発生する応力を低減できる。したがって、軸部材に外挿される外挿部材の破損を抑制できる。
【0009】
上記の時計部品において、前記突起部は、前記軸部材周りの周方向に延在する、ことが望ましい。
【0010】
本発明によれば、突起部が周方向に延在しているので、突起部を周方向で均一に外挿部材に接触させることができる。したがって、外挿部材を軸部材に対して安定して固定することができる。
【0011】
上記の時計部品において、前記中間部材は、前記軸部材周りの周方向に並ぶ複数の前記突起部を有する、ことが望ましい。
【0012】
本発明によれば、複数の突起部が軸部材の軸線方向に並ぶ場合と比較して、中間部材の厚みが軸線方向において小さい場合に突起部を形成しやすく好適である。
【0013】
上記の時計部品において、前記軸部材に外挿され、前記外挿部材および前記中間部材に対して前記軸部材の軸線方向の一方側から当接する当接部材を備え、前記軸部材は、前記外挿部材および前記中間部材に対して前記軸線方向の他方側から当接する鍔部を備える、ことが望ましい。
【0014】
本発明によれば、当接部材と鍔部とにより、外挿部材および中間部材を軸線方向で挟むことができる。これにより、外挿部材および中間部材のガタツキを抑制することができる。
【0015】
上記の時計部品において、前記当接部材は、前記中間部材における前記突起部よりも前記軸部材の径方向の内側の箇所に押し込まれる凸部を備える、ことが望ましい。
【0016】
本発明によれば、中間部材に凸部が押し込まれることで、中間部材が塑性流動する。凸部は、中間部材における突起部よりも径方向の内側の箇所に押し込まれるので、中間部材は、突起部が径方向の外側に向けて変位するように塑性流動する。これにより、突起部を外挿部材に確実に接触させることができるので、軸部材と外挿部材とを確実に固定することができる。
【0017】
上記の時計部品において、前記中間部材は、前記外挿部材に対して前記軸部材の軸線方向の一方側から当接する当接部を備え、前記軸部材は、前記外挿部材および前記中間部材に対して前記軸線方向の他方側から当接する鍔部を備える、ことが望ましい。
【0018】
本発明によれば、当接部と鍔部とにより、外挿部材を軸線方向で挟むことができる。これにより、外挿部材のガタツキを抑制することができる。
【0019】
本発明のムーブメントは、上記の時計部品を備えることを特徴とする。
本発明の時計は、上記のムーブメントを備えることを特徴とする。
【0020】
本発明によれば、外挿部材の破損が抑制された時計部品を備えるので、優れた品質を有するムーブメントおよび時計を提供できる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、軸部材に外挿される外挿部材の破損を抑制できる時計部品を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。なお以下の説明では、同一または類似の機能を有する構成に同一の符号を付す。そして、それら構成の重複する説明は省略する場合がある。
【0024】
最初に、各実施形態に共通する時計1およびムーブメント2の構成を説明した後、各実施形態の時計部品について説明する。
[時計]
図1は、時計の外観図である。なお、以下に示す各図では、図面を見やすくするため、時計部品のうち一部の図示を省略しているとともに、各時計部品を簡略化して図示している場合がある。
図1に示すように、本実施形態の時計1は、ムーブメント2や文字板3、各種指針4〜6等が時計ケース7内に組み込まれて構成されている。
【0025】
時計ケース7は、胴11と、裏蓋(不図示)と、ガラス12と、を備えている。胴11の側面のうち、3時位置(
図1の右側)にはりゅうず15が設けられている。りゅうず15は、胴11の外側からムーブメント2を操作するためのものである。りゅうず15は、胴11内に挿通された巻真19に固定されている。
【0026】
[ムーブメント]
図2は、ムーブメントを表側から見た平面図である。
図2に示すように、ムーブメント2は、ムーブメント2の基板を構成する地板21に複数の歯車体等が回転可能に支持されて構成されている。なお、以下の説明では、地板21に対して時計ケース7のガラス12側(文字板3側)をムーブメント2の「裏側」と称し、裏蓋側(文字板3側とは反対側)をムーブメント2の「表側」と称する。
【0027】
地板21には、上述した巻真19が組み込まれている。巻真19は、日付や時刻の修正に用いられる。巻真19は、その軸線周りに回転可能、かつ軸線方向に移動可能とされている。巻真19は、おしどり23、かんぬき24、かんぬきばね25および裏押さえ26を含む切換装置によって、軸線方向の位置が決められている。
巻真19を回転させると、つづみ車(不図示)の回転を介してきち車31が回転する。きち車31の回転により丸穴車32および角穴車33が順に回転し、香箱車34に収容されたぜんまい(不図示)が巻き上げられる。
【0028】
香箱車34は、地板21と香箱受35との間で回転可能に支持されている。二番車41、三番車42、四番車43は、地板21と輪列受22との間で回転可能に支持されている。
ぜんまいの復元力により香箱車34が回転すると、香箱車34の回転により二番車41、三番車42および四番車43が順に回転する。香箱車34、二番車41、三番車42および四番車43は、表輪列を構成する。
【0029】
上述した表輪列のうち、二番車41には、分針5(
図1参照)が取り付けられている。二番車41の回転に伴って回転する筒車(不図示)には、上述した時針4が取り付けられている。また、秒針6(
図1参照)は、四番車43の回転に基づいて回転するように構成されている。
【0030】
図3は、ムーブメントのうち、調速脱進機を含む部分(
図2のIII−III線に相当する部分)の断面図である。
図3に示すように、ムーブメント2には、調速脱進機51が搭載されている。調速脱進機51は、てんぷ52、がんぎ車53およびアンクル54を有している。
【0031】
てんぷ52は、がんぎ車53を調速する(がんぎ車53を一定速度で脱進させる)。てんぷ52は、てん真61、てん輪62およびひげぜんまい63を主に有している。
てん真61は、地板21とてんぷ受65との間で、第1軸線O1回りに回動可能に支持されている。てん真61は、ひげぜんまい63から伝えられた動力によって第1軸線O1回りに一定の振動周期で往復回動する。
【0032】
てん真61の裏側端部には、振り座67が外嵌されている。振り座67は、第1軸線O1と同軸上に配置された筒状に形成されている。振り座67の大つば67aにおいて、第1軸線O1周りの周方向の一部には、振り石68が設けられている。振り石68は、例えばムーブメント2の表裏方向に延びる半円柱形状に形成されている(
図4参照)。振り石68は、大つば67aから裏側に突出している。
一方、振り座67の小つば67bにおいて、第1軸線O1周りの周方向で振り石68に対応する位置にはツキガタ66が形成されている。ツキガタ66は、小つば67bの一部が第1軸線O1における径方向の内側に窪んで形成されている。
【0033】
てん輪62は、リング状に形成されている。てん輪62は、てん真61における振り座67よりも表側に位置する部分に、圧入等によって固定されている。
【0034】
ひげぜんまい63は、ムーブメント2の表裏方向から見た平面視で渦巻状の平ひげである。ひげぜんまい63は、てん輪62よりも表側に配置されている。ひげぜんまい63の内端部は、ひげ玉69を介しててん真61に連結されている。ひげ玉69は、てん真61に外挿されて固定されている。ひげぜんまい63の外端部は、ひげ持70を介しててんぷ受65に接続されている。ひげぜんまい63は、四番車43からがんぎ車53に伝えられた動力を蓄え、てん真61に伝える役割を果たしている。
【0035】
図4は、調速脱進機の平面図である。
図4に示すように、がんぎ車53は、がんぎ真71と、がんぎかな72と、がんぎ歯車73と、を有している。
【0036】
図3に示すように、がんぎ真71は、地板21と輪列受22との間で第2軸線O2回りに回転可能に支持されている。
がんぎかな72は、がんぎ真71に形成されている。がんぎかな72は、上述した四番車43に噛合している。すなわち、がんぎ車53は、四番車43の回転に伴い第2軸線O2回りに回転する。
【0037】
がんぎ歯車73は、がんぎ真71におけるがんぎかな72に対して裏側に位置する部分に外挿されて固定されている。がんぎ歯車73には、第2軸線O2の径方向に突出する歯部73aが、第2軸線O2周りの周方向で間隔をあけて複数形成されている(
図4参照)。
【0038】
アンクル54は、てんぷ52とがんぎ車53との間を接続している。具体的に、アンクル54は、アンクル真81と、アンクル体82と、一対のつめ石83と、剣先85と、を備えている。
アンクル真81は、地板21とアンクル受75との間で第3軸線O3回りに回動可能に支持されている。
【0039】
図4に示すように、アンクル体82は、第3軸線O3の径方向のうち、アンクルビーム91およびアンクルサオ93により、ムーブメント2の表裏方向から見た平面視でT字状に形成されている。アンクルビーム91は、第3軸線O3の径方向に沿って延在している。アンクルビーム91における延在方向の両端部には、上述したつめ石83がそれぞれ取り付けられている。各つめ石83は、アンクル54の往復回動に伴いがんぎ車53の歯部73aに交互に係合する。
【0040】
アンクルサオ93は、アンクルビーム91の延在方向における中央部から、第3軸線O3の径方向のうちアンクルビーム91に対して交差する方向に片持ちで延在している。アンクルサオ93の先端部には、てんぷ52の振り座67(
図3参照)と係脱可能なアンクルハコ95が形成されている。アンクル体82において、アンクルビーム91とアンクルサオ93との接続部分は、上述したアンクル真81に外挿されて固定されている。
【0041】
[時計部品]
続いて、上述したてんぷ52やがんぎ車53、アンクル54等として適用可能な時計部品の各実施形態について説明する。
【0042】
(第1実施形態)
最初に、第1実施形態の時計部品100について説明する。
図5は、第1実施形態に係る時計部品の断面図である。
図5に示すように、時計部品100は、軸部材110と、軸部材110に外挿された外挿部材120と、軸部材110と外挿部材120との間に介在する中間部材130と、を備えている。軸部材110は、例えばてん真61やがんぎ真71、アンクル真81である。また、外挿部材120は、例えばひげ玉69やがんぎ歯車73、アンクル体82である。時計部品100は、軸部材110の軸線C回りに回動可能または回転可能に設けられる。なお、以下の説明では、軸線Cに沿う軸線方向を軸線C方向といい、軸線C方向に直交して軸線Cから放射状に延びる方向を径方向といい、軸線C周りの周方向を単に周方向という。
【0043】
軸部材110は、径方向の外側に向かって突出した鍔部111を備えている。鍔部111は、周方向に沿って円環状に延びている。鍔部111の外径は、外挿部材120の後述する挿通孔121の内径よりも大きい。鍔部111は、軸線C方向の一方側に向く主面111aを備えている。主面111aは、軸線C方向に直交する平面状に形成されている。主面111aは、外挿部材120および中間部材130に対して軸線C方向の他方側から接触している。
【0044】
外挿部材120は、脆性材料により形成されている。脆性材料は、例えばシリコンや石英、セラミックス等である。外挿部材120は、軸部材110が挿通された挿通孔121を備えている。挿通孔121は、軸線C方向に沿って一定の内径で延在している。外挿部材120における挿通孔121の周縁部123は、略一様の厚さに形成されている。
【0045】
中間部材130は、外挿部材120よりも延性の高い延性材料により形成されている。延性の高い材料とは、引張試験における破断歪みが大きい材料である。延性材料としては、例えば真鍮や金、鉛等の金属材料や、樹脂材料を用いることができる。なお、中間部材130は、軸部材110よりも延性の高い延性材料により形成されていることが望ましい。中間部材130は、円環状に形成された基部131と、基部131の外周部から径方向の外側に向かって突出した突起部133と、を備え、これらが一体的に形成されている。
【0046】
基部131は、軸線C方向に沿って一様に延びている。基部131における軸線C方向の両端面は、軸線Cに直交する平面状に形成されている。基部131は、略一様の厚さに形成されている。基部131の厚さ(軸線C方向における寸法)は、外挿部材120における挿通孔121の周縁部123の厚さと略一致している。基部131の外径は、外挿部材120の挿通孔121の内径よりも小さい。基部131は、軸部材110に外挿されている。本実施形態では、基部131は、軸部材110の外側に圧入されている。基部131における軸線C方向の他方側に向く端面は、軸部材110の主面111aに面接触している。
【0047】
突起部133は、一対設けられている。一対の突起部133は、軸線C方向に配列されているとともに、周方向にそれぞれ延在している。各突起部133は、径方向における内側から外側に向かうに従い軸線C方向の幅が狭まるように突出している。各突起部133は、周方向から見た断面視で三角形状に形成されている。突起部133の高さ(径方向における寸法)は、例えば2〜50μm程度である。各突起部133の先端部(径方向の外側の端部)は、外挿部材120の挿通孔121の内周面に接触している。基部131と外挿部材120との間において、突起部133の軸線C方向の両側には、空隙が形成されている。突起部133は、周方向に延在しているので、例えば旋盤加工により形成される。
【0048】
なお、図示の例では、突起部133は、一対設けられ、軸線C方向に配列されているが、これに限定されず、3個以上設けられていてもよいし、1個設けられていてもよい。突起部133が1個設けられる場合、突起部133の軸線C方向における寸法は、基部131の軸線C方向の寸法と一致していてもよいし、基部131の軸線C方向の寸法よりも小さくてもよい。
【0049】
軸部材110には、最初に中間部材130が圧入された後、外挿部材120が軸部材110に外挿される。外挿部材120は、軸線C方向において、中間部材130を挟んで軸部材110の鍔部111とは反対側から軸部材110に外挿される。つまり、外挿部材120は、鍔部111に軸線C方向の変位を規制された中間部材130に外挿される。この際、外挿部材120は、中間部材130の突起部133の先端を径方向の内側に向かって変形させながら、中間部材130の外側に圧入される。
【0050】
なお、外挿部材120が中間部材130に外挿された後、図中の2点鎖線で示す治具J等を中間部材130に対し軸線C方向に押し込んで、中間部材130を軸線C方向に圧縮してもよい。これにより、中間部材130が塑性変形して、軸部材110および外挿部材120がかしめにより固定される。この場合には、中間部材130の外径は、外挿部材120の挿通孔121の内径よりも小さく設定され、中間部材130の塑性流動により突起部133の先端を外挿部材120の挿通孔121の内周面に接触させてもよい。
【0051】
図6は、中間部材に対する治具の押し込み量と第1部材に発生する応力との関係のシミュレーション結果を示すグラフである。
図6の横軸は、中間部材に対する治具Jの押し込み量である。
図6の縦軸は、外挿部材120に生じる応力である。
図6における実施例1は、突起部133が一対設けられた場合のデータである。
図6における実施例2は、突起部133が1個設けられた場合のデータである。
図6における比較例は、中間部材が突起部を備えていない場合のデータである。つまり、比較例の構成では、中間部材が外挿部材120の挿通孔121の内周面の略全面に接触する。
【0052】
図6に示すように、各実施例の構成では、比較例の構成と比較して、治具の押し込み量に対する外挿部材120に生じる応力が小さい。すなわち、中間部材130は、突起部133を備えることで、外挿部材120に対して応力を発生させにくくすることができる。これにより、軸部材110および外挿部材120が中間部材130のかしめにより固定される場合、中間部材130が突起部133を備えることで、外挿部材120に生じる応力を低減させて外挿部材120の破損を抑制できる。また、外挿部材120が中間部材130の外側に圧入される場合、圧入時の力の加わり方にばらつきが生じても、外挿部材120に生じる応力の変化を低減させて外挿部材120の破損を抑制できる。
【0053】
また、
図6に示すように、突起部133が1個設けられた実施例2の構成では、突起部133が一対設けられた実施例1の構成と比較して、治具Jの押し込み量に対する外挿部材120に生じる応力が小さい。つまり、突起部133の個数は、1個であることが望ましいことがわかる。
【0054】
このように、本実施形態の時計部品100は、軸部材110と外挿部材120との間に介在し、外挿部材120よりも延性の高い延性材料により形成され、外挿部材120に向かって突出して接触する突起部133を有する中間部材130を備える。この構成によれば、外挿部材120よりも延性の高い延性材料により形成された中間部材130が軸部材110と外挿部材120との間に介在するので、外挿部材を軸部材の外側に直接圧入する場合と比較して、中間部材130を塑性変形および弾性変形させることにより、外挿部材120に発生する応力を緩和することができる。しかも、中間部材130は、外挿部材120に接触する突起部133を有するので、中間部材130と外挿部材120とは、突起部133の先端において接触する。このため、外挿部材120において発生する応力を、突起部133の先端を変形させることにより逃がすことができる。よって、外挿部材120に発生する応力を低減できる。したがって、軸部材110に外挿される外挿部材120の破損を抑制できる。
【0055】
また、突起部133は、周方向に延在しているので、突起部133を周方向で均一に外挿部材120に接触させることができる。したがって、外挿部材120を軸部材110に対して安定して固定することができる。
【0056】
そして、上述したムーブメント2および時計1は、外挿部材120の破損が抑制された時計部品100をてんぷ52やがんぎ車53、アンクル54として備えることで、優れた品質を有するムーブメント2および時計1を提供できる。
【0057】
なお、上記実施形態では、突起部133は、周方向から見た断面視で三角形状に形成されているが、これに限定されず、半円形状や台形状に形成されていてもよい。
また、軸部材110の鍔部111は、周方向に沿って環状に延在しているが、これに限定されず、例えば周方向に間欠的に設けられていてもよい。
【0058】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態の時計部品200について説明する。
図7は、第2実施形態に係る中間部材を軸線方向から見た平面図である。
図5に示す第1実施形態では、突起部133は、軸線C周りの周方向に延在している。これに対して
図7に示す第2実施形態では、突起部233は、軸線C方向に延在している点で、第1実施形態と異なっている。
【0059】
図7に示すように、中間部材230は、基部131と、複数の突起部233と、を備えている。複数の突起部233は、周方向に略等ピッチで配列されている。各突起部233は、径方向における内側から外側に向かうに従い、周方向の幅が狭まるように突出している。各突起部233は、軸線C方向から見て三角形状に形成されている。各突起部233の先端部(径方向外側の端部)は、外挿部材120の挿通孔121の内周面に接触している。基部131と外挿部材120(
図5参照)との間において、突起部233の周方向両側には、空隙が形成されている。
【0060】
このように、本実施形態の中間部材230は、周方向に並ぶ複数の突起部233を有する。この構成によれば、複数の突起部が軸線C方向に並ぶ場合と比較して、中間部材230の厚みが軸線C方向において小さい場合に突起部233を形成しやすく好適である。
【0061】
(第3実施形態)
次に、第3実施形態の時計部品300について説明する。
図8は、第3実施形態に係る時計部品の断面図である。
図8に示す第3実施形態では、時計部品300が、中間部材130を挟んで軸部材110の鍔部111とは反対側に配置された環状部材340(当接部材)を備える点で、第1実施形態と異なっている。
【0062】
図8に示すように、時計部品300は、軸部材110と、外挿部材120と、中間部材130と、環状部材340と、を備えている。
環状部材340は、例えば鉄等の金属材料により形成されている。環状部材340は、軸部材110に外挿されている。環状部材340は、円環状に形成された主部341と、主部341から軸線C方向に突出した凸部343と、を備え、これらが一体的に形成されている。
【0063】
主部341は、軸部材110の外側に圧入されている。主部341は、略一様の厚さに形成されている。主部341の外径は、外挿部材120の挿通孔121の内径よりも大きい。主部341は、外挿部材120および中間部材130に対して、軸線C方向における軸部材110の鍔部111とは反対側から当接している。これにより、主部341と軸部材110の鍔部111とは、外挿部材120および中間部材130を挟持して、外挿部材120および中間部材130の軸部材110からの脱落を防止している。
【0064】
凸部343は、主部341の内周部から軸部材110の鍔部111側に向かって突出している。凸部343は、周方向に沿って延在している。凸部343の軸線C方向における寸法は、中間部材130の軸線C方向における寸法よりも小さい。凸部343の内径は、環状部材340の主部341の内径、および中間部材130の内径と略一致している。凸部343の外径は、中間部材130の基部131の外径よりも小さい。
【0065】
図9は、第3実施形態に係る時計部品の製造方法を説明する断面図である。
図9に示すように、凸部343は、環状部材340を軸部材110の外側に圧入する過程で、中間部材130の内周部に押し込まれる。これにより、中間部材130は、軸線C方向に圧縮されるとともに、図中の矢印に示すように径方向の外側に向かって塑性流動し、突起部133の先端が外挿部材120の挿通孔121の内周面に密着する。
【0066】
このように、本実施形態の時計部品300は、軸部材110に外挿され、外挿部材120および中間部材130に対して軸線C方向の一方側から当接する環状部材340を備え、軸部材110は、外挿部材120および中間部材130に対して軸線C方向の他方側から当接する鍔部111を備える。この構成によれば、環状部材340と鍔部111とにより、外挿部材120および中間部材130を軸線C方向で挟むことができる。これにより、外挿部材120および中間部材130のガタツキを抑制することができる。
【0067】
また、環状部材340は、中間部材130における突起部133よりも径方向の内側の箇所(すなわち基部131)に押し込まれる凸部343を備える。中間部材130に凸部343が押し込まれることで、中間部材130が塑性流動する。凸部343は、中間部材130における突起部133よりも径方向の内側の箇所に押し込まれるので、中間部材130は、突起部133が径方向の外側に向けて変位するように塑性流動する。これにより、突起部133を外挿部材120に確実に接触させることができるので、軸部材110と外挿部材120とを確実に固定することができる。
【0068】
(第4実施形態)
次に、第4実施形態の時計部品400について説明する。
図10は、第4実施形態に係る時計部品の断面図である。
図10に示す第4実施形態では、中間部材430が外挿部材120に対して軸部材110の鍔部111とは反対側から当接する当接部435を備える点で、第1実施形態と異なっている。
【0069】
図10に示すように、時計部品400は、軸部材110と、外挿部材120と、中間部材430と、を備えている。
中間部材430は、外挿部材120よりも延性の高い延性材料により形成されている。中間部材430は、基部131と、突起部133と、当接部435と、を備え、これらが一体的に形成されている。
【0070】
当接部435は、円環状に形成されている。当接部435は、略一様の厚さに形成されている。当接部435の外径は、外挿部材120の挿通孔121の内径よりも大きい。当接部435の内径は、基部131の内径と略一致している。当接部435は、基部131を挟んで軸線C方向における軸部材110の鍔部111とは反対側に設けられ、基部131と接続している。当接部435は、外挿部材120に対して、軸線C方向における軸部材110の鍔部111とは反対側から当接している。これにより、当接部435と軸部材110の鍔部111とは、外挿部材120を挟持して、外挿部材120の軸部材110からの脱落を防止している。
【0071】
このように、本実施形態の時計部品400では、中間部材430が外挿部材120に対して軸線C方向の一方側から当接する当接部435を備え、軸部材110は、外挿部材120に対して軸線C方向の他方側から当接する鍔部111を備える。この構成によれば、当接部435と鍔部111とにより、外挿部材120を軸線C方向で挟むことができる。これにより、外挿部材120のガタツキを抑制することができる。
【0072】
なお、本発明は、図面を参照して説明した上述の実施形態に限定されるものではなく、その技術的範囲において様々な変形例が考えられる。
例えば、上記実施形態においては、香箱車を備える機械式時計に本発明を適用した場合について説明したが、これに限らず、アナログクォーツ式の時計に本発明を適用してもよい。
【0073】
また、上記実施形態では、時計部品100,200,300,400は、てんぷ52やがんぎ車53、アンクル54として適用可能としたが、これに限定されない。時計部品100,200,300,400は、例えば、脆性材料により形成された歯車やレバー、ジャンパ等の脆性材部品と、その脆性材部品が固定された軸部材と、を備える時計部品に適用してもよい。
【0074】
その他、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、上記した実施の形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能である。