(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に開示の技術によると、ケース嵌合部の外周に軸シール部を嵌着した状態で、ケース嵌合部を取付孔に嵌め込むことになる。この際、取付孔の内周面に凹凸形状が形成されていると、軸シール部が当該凹凸形状に強い力で擦れてしまい、軸シール部が破損等してしまう恐れがある。
【0005】
そこで、本発明は、取付対象部材に形成された取付孔に取付部品を挿入して取付ける際に、環状シール部材が取付孔の内周面に擦れて破損することを抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため,第1の態様は、取付孔が形成された取付対象部材と、環状シール部材と、前記取付孔に挿入され、前記取付孔の内周面との間に前記環状シール部材が介在された状態で前記取付対象部材に取付けられた取付部品とを備え、前記取付部品は、前記取付孔内に挿入された挿入部を含む取付本体を備え、
前記取付本体は、端子を相手側端子に接続可能な状態で保持するハウジング本体であり、前記挿入部は、その挿入方向先端側に位置する挿入先端部と、前記挿入先端部よりも前記挿入方向の基端側に位置し、前記挿入先端部よりも外周側に突出する形状に形成されたシール保持部とを含み、前記環状シール部材は、前記取付孔の内周面と前記シール保持部の外周面との間に設けられ、前記取付孔の内周面には、前記環状シール部材に当接した段差が設けられており、前記取付部品が前記シール保持部の外周側空間を介して前記段差の面に対向しかつ前記挿入方向に対して直交する面を有し、前記環状シール部材が、前記段差の面と、この段差の面に対向する前記取付部品の面との間に設けられているものである。
【0007】
第2の態様は、第1の態様に係るシール構造であって、前記挿入部のうち少なくとも表面部分は、樹脂で形成されているものである。
【0009】
第3の態様は、第1
又は第2の態様に係るシール構造であって、前記シール保持部と前記挿入先端部との間に、前記シール保持部側に向けて徐々に外周側に突出するガイド面が形成されているものである。
【0010】
第4の態様は、第1から
第3のいずれか1つの態様に係るシール構造であって、前記挿入先端部よりも前記挿入方向先端側に、前記挿入部からの前記環状シール部材の抜けを抑制する抜止部が設けられているものである。
【0011】
第5の態様は、第1から
第4のいずれか1つの態様に係るシール構造であって、前記取付孔の内周面に金属が露出しているものである。
【発明の効果】
【0012】
第1の態様によると、挿入部の挿入方向基端側のシール保持部が、挿入部の挿入方向先端側の挿入先端部よりも外周側に突出する形状に形成されている。このため、挿入部を取付孔に挿入する際、環状シール部材が挿入先端部の外周側に位置する初期状態では、環状シール部材は取付孔の内周面に押付けられないか又は弱い力で押付けられる。このため、環状シール部材が取付孔の内周面に擦れて破損することを抑制できる。そして、挿入部を取付孔の奥に挿入し、環状シール部材がシール保持部に相対的に移動すると、シール保持部が環状シール部材を取付孔の内周面に強い力で押付け、環状シール部材がシール保持部と取付孔との間に圧縮状態で介在し、それらの間をシールすることができる。これにより、取付対象部材に形成された取付孔に取付部品を挿入して取付ける際に、環状シール部材が取付孔の内周面に擦れて破損することを抑制することができる。また、取付対象部材の取付孔に取付部品の挿入部を挿入して取付けた状態で、取付孔と挿入部との間をシールすることができる。また、環状シール部材を段差に当接させることで、当該環状シール部材を挿入先端部からシール保持部に向けてより確実に相対的に移動させることができる。
【0013】
第2の態様によると、挿入部のうち少なくとも表面部分は、樹脂で形成されているため、環状シール部材が挿入先端部からシール保持部に相対的に移動する際に、環状シール部材が挿入部に擦れても破損し難い。
【0014】
第2の態様によると、端子を保持するハウジング本体を、取付対象部材に取付ける際に、そのハウジング本体周りで効果的にシールすることができる。
【0015】
第3の態様によると、環状シール部材が挿入先端部からシール保持部に向けて円滑に相対的に移動できる。
【0016】
第4の態様によると、環状シール部材が挿入部から抜け難い。このため、環状シール部材と共に挿入部を取付孔に容易に挿入することができる。
【0017】
第5の態様によると、取付孔の内周面に硬い金属が露出していると、環状シール部材を破損させ易い。挿入部を取付孔に挿入して、環状シール部材を挿入先端部からシール保持部に相対的に移動させるようにすると、環状シール部材が硬い金属に強い力で擦られ難くなり、環状シール部材の破損を有効に抑制することができる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、実施形態に係るシール構造について説明する。
図1はシール構造10を示す分解斜視図であり、
図2は同シール構造を示す分解断面図である。
【0020】
このシール構造10は、取付対象部材20と、取付部品31と、環状シール部材48とを備える。
【0021】
取付対象部材20は、取付孔22が形成された部材である。取付対象部材20は、諸電気要素を収容する筐体の一部であること等が想定される。より具体的には、取付対象部材は、電気自動車において、走行駆動用のモータの筐体、モータを駆動するためのインバータの筐体、インバータに電力を供給するバッテリの筐体であること等が想定される。
【0022】
取付対象部材20は、鋳造により形成された鋳物によって形成されている。このため、取付孔22の内周面には、金属が露出している。取付対象部材20は、鋳物ではない金属(切削加工、プレス加工等された金属)によって形成されていてもよいし、その他、樹脂等によって形成されていてもよい。
【0023】
取付対象部材20は、板状に形成されており、その一方面(
図1及び
図2の上面)から他方面(
図1及び
図2の下面)に向けて貫通するように取付孔22が形成されている。取付対象部材20が筐体の一部であることを想定すると、取付対象部材20の一方面は外向きの面であり、他方面は内向きの面である。ここでは、取付対象部材20の他方面側には、取付孔22の周囲から突出する環状突部21が形成されている。これにより、取付孔22の軸方向の寸法が、取付対象部材20の他の厚み寸法に比べて、大きくなっている。環状突部21が形成されていることは必須ではない。
【0024】
ここでは、取付孔22は、長円形状に形成されている。ここで、長円形状とは、円を一方向に長くした形状をいい、楕円形状及び長方形の対辺のそれぞれに半円形状の直径部分を連結した形状等を含む。もっとも、取付孔22は、円形、三角又は四角等の多角形状等であってもよい。
【0025】
取付孔22の内周面には、段差23が設けられている。より具体的には、取付孔22のうち取付対象部材20の他方面側の内周部が取付対象部材20の一方面側の内周部であるシール接触周面22fよりも取付孔22の内側に突出しており、これらの間に取付対象部材20の一方面側を向く面23fを有する段差23が形成されている。ここでは、段差23の面23fは、取付孔22の軸方向に対して直交しているが、必ずしもその必要は無く、取付孔22の軸方向に対して傾斜していてもよい。また、面23fは、平面である必要は無く、曲面であってもよい。また、段差23は、取付孔22の内周面全体に亘って形成されている必要は無く、取付孔22の内周面に沿って散在するように形成されていてもよい。
【0026】
取付部品31は、取付孔22に対して取付対象部材20の一方面側から他方面側に向けて挿入される。この際、段差23が環状シール部材48に当接して当該環状シール部材48を挿入先端部44からシール保持部42に向けて移動させる。この構成に関する詳細については、後述する。もっとも、かかる段差23が形成されていることは必須ではない。
【0027】
取付部品31は、上記取付孔22に挿入され、取付対象部材20に取付けられる部品である。ここでは、取付部品31は、取付対象部材20の他方面側の端子90(
図6参照)と接続された状態で、取付対象部材20に取付けられる。取付部品31が取付孔22に挿入された状態で、取付孔22の内周面と取付部品31との間に環状シール部材48が介在された状態とされる。つまり、取付対象部材20を含む筐体と取付部品31と環状シール部材48とが一体化された形態で取扱われる。そして、他の配線部品の端部に取付けられた端子92(
図6参照)が、取付対象部材20の一方面側で本取付部品31に接続される。つまり、取付部品31は、取付対象部材20の一方面側の端子92と他方面側の端子90とを電気的に接続する部品、すなわち、取付対象部材20の両面で電気的な接続を中継するコネクタの一種である。かかる取付部品31は、端子台と呼ばれることもある。
【0028】
より具体的には、取付部品31は、取付本体32と、端子50とを備える。取付部品31に環状シール部材48が取付けられた形態で、環状シール部材付取付部品30として取扱われる。
【0029】
取付本体32は、樹脂等によって形成されており、第1端子保持部34と、第2端子保持部37と、挿入部40とを備える。挿入部40の一端部に第1端子保持部34が一体形成され、挿入部40の他端部に第2端子保持部37が一体形成されている。
【0030】
挿入部40は、上記取付孔22内に挿入可能な形状に形成されている。より具体的には、挿入部40は、取付孔22よりも小さい形状に形成されており、取付孔22に対して取付対象部材20の一方面側から他方面側に向けて挿入可能に形成されている。ここでは、挿入部40は、取付孔22の内周形状に応じた短い長円柱形状に形成されている。取付孔が円形又は多角形状に形成されている場合には、挿入部は当該取付孔の形状に応じて短円柱形状又は短い多角柱形状に形成される。
【0031】
挿入部40は、挿入先端部44とシール保持部42とを備える。挿入先端部44は、挿入部40のうち挿入部40の挿入方向の先端側の位置に設けられ、シール保持部42は、挿入部40のうち挿入先端部44よりも前記挿入方向の基端側の位置に設けられている。
【0032】
シール保持部42の外周面は、取付孔22のシール接触周面22fよりも小さく(一回り小さく)形成されており、挿入部40を取付孔22内に挿入した状態で、シール保持部42の外周面とシール接触周面22fとの間にほぼ均等な間隔の環状の隙間が形成される。この環状の隙間の内外周間の寸法は、環状シール部材48の厚み寸法よりも小さく設定されており、当該環状の隙間に環状シール部材48が圧縮状態で配設される。挿入方向におけるシール保持部42の寸法は、同方向における環状シール部材48の寸法と同じかこれよりも大きく設定されることが好ましい。
【0033】
シール保持部42は、挿入先端部44よりも外周側に突出する形状に形成されている。換言すれば、挿入先端部44は、シール保持部42よりも内周側に凹む形状に形成されている。
【0034】
シール保持部42と挿入先端部44との間にガイド面46が形成されている。ガイド面46は、挿入先端部44の外周面からシール保持部42の外周面に向けて徐々に外周側に突出するテーパ形状に形成されている。
【0035】
第1端子保持部34は、端子50の一端部の第1端子部52を相手側の端子に接続可能な状態で保持する部分であり、第2端子保持部37は、端子50の他端側の第2端子部54を他の相手側の端子に接続可能な状態で保持する部分である。
【0036】
すなわち、挿入部40が取付孔22内に挿入された状態で、第1端子保持部34は、取付対象部材20の一方面側に突出するように配設され、第2端子保持部37は、取付対象部材20の他方面側に突出するように配設される。
【0037】
ここで、端子50は、金属板をプレス加工等してL字状に形成した部材である。端子50の一端部には第1端子部52が形成され、他端部には第2端子部54が形成されている。第1端子部52及び第2端子部54のそれぞれには、ボルト挿通孔52h、54hが形成されている。ここでは、3つの端子50が取付本体32内に組込まれている。端子50は、インサート物として取付本体32にインサート成形されていることが好ましい。もっとも、取付本体32が複数の樹脂部分の合体によって構成され、それらの各部を合体させる際に、端子が内部に組込まれてもよい。
【0038】
第1端子保持部34は、複数の基部35と、当該複数の基部35を取り囲む周壁部36とを備えており、上記挿入部40の一端部よりも外周側に張出すように形成されている。このため、挿入部40を取付孔22内に挿入すると、第1端子保持部34のうち挿入部40側を向く面が取付対象部材20の一方面側に当接し、もって、挿入方向における取付本体32の位置決めがなされる。なお、必要に応じて、取付本体32が取付対象部材20等に対してネジ止等されてもよい。
【0039】
複数の基部35は、間隔をあけて直線状に並んで突出するように形成されている。上記各端子50の第1端子部52は、上記各基部35の側方を通って各基部35の上面に延在しており、この状態で、周壁部36によって取り囲まれる。各基部35のうち第1端子部52の内側には、ボルトBが配設されている。他の配線の端部に接続された端子92が、当該第1端子部52に重ね合された状態で、ボルトが端子92に形成された孔及び第1端子部52に形成されたボルト挿通孔52hを通ってボルトBに螺合されることで、第1端子部52と端子92との接続がなされる。
【0040】
第2端子保持部37は、複数の基部38と、複数の仕切部39とを備えており、全体的に挿入部40の他端部と同じ太さかこれよりも細く形成されている。このため、挿入部40を取付孔22に挿入するのに先だって、第2端子保持部37を取付孔22に挿入することができ、そして、挿入部40を取付孔22内に配設すると、第2端子保持部37を取付対象部材20の他方面側に突出させることができる。
【0041】
複数の基部38は、間隔をあけて直線状に並んで突出するように形成されている。仕切部39は、複数の基部38の間、及び、複数の基部38が並ぶ方向の両外側位置に突出するように形成されている。各端子50の第2端子部54は、上記基部38の一側面に沿って配設されている。基部38のうち第2端子部54の内側には、ボルトBが配設されている。そして、取付対象部材20の他方面側の配線の端部に接続された端子90(取付対象部材20が筐体の一部であることを想定すると、当該筐体内の電気要素に接続された端子90)が、当該第2端子部54に重ね合された状態で、ボルトが端子90に形成された孔及び第2端子部54に形成されたボルト挿通孔54hを通ってボルトBに螺合されることで、第2端子部54と端子90との接続がなされる。
【0042】
この取付本体32は、端子50を相手側の端子90、92に接続可能な状態で保持するハウジング本体である。
【0043】
なお、端子50の中間部は、第1端子保持部34と第2端子保持部37との間で挿入部40内に埋設されている。
【0044】
環状シール部材48は、ゴム等の弾性材料によって形成された部材であり、取付孔22の内周面形状に応じた環状に形成されている。ここでは、取付孔22の内周面は、長円形状に形成されているため、環状シール部材48は、長円をなす環状形状に形成されている。上記したように、環状シール部材48の内外周面間の寸法は、シール保持部42の外周面とシール接触周面22fとの間の環状の隙間の内外周間の寸法よりも大きく設定されている。
【0045】
環状シール部材48の内周面の周方向長さ寸法は、挿入先端部44の外周面の周方向長さ寸法と同じであるか大きく(僅かに大きく)設定されていることが好ましい。これにより、環状シール部材48が挿入先端部44に外嵌めされた状態で、シール保持部42側に移動し易い。もっとも、環状シール部材48は、弾性材料によって形成されているため、環状シール部材48の内周面の周方向長さ寸法が、挿入先端部44の外周面の周方向長さ寸法よりも小さくても、環状シール部材48が挿入先端部44に外嵌めされた状態で、環状シール部材48は、挿入先端部44からシール保持部42側に移動することができる。かかる移動が可能な範囲で、環状シール部材48の内周面の周方向長さ寸法が、挿入先端部44の外周面の周方向長さ寸法よりも小さくてもよい。
【0046】
環状シール部材48の内周面の周方向長さ寸法は、シール保持部42の外周面の周方向長さ寸法と同じであるか小さく(僅かに小さく)設定されていることが好ましい。これにより、環状シール部材48がシール保持部42に外嵌めされた状態で、環状シール部材48がシール保持部42に密着し易い。もっとも、取付孔22のシール接触周面22fによって環状シール部材48をシール保持部42の外周面に向けて押すことができるため、環状シール部材48の内周面の周方向長さ寸法は、シール保持部42の外周面の周方向長さ寸法よりも大きくてもよい。
【0047】
この環状シール部材48は、挿入先端部44からシール保持部42に向けて移動可能な状態で上記挿入部40に外嵌めされる。そして、挿入部40を取付孔22に挿入する際に、環状シール部材48が、挿入先端部44からシール保持部42に向けて移動し、シール保持部42と取付孔22との間に圧縮状態で介在するようになっている。
【0048】
ここで、本実施形態では、取付対象部材20の取付孔22のうち取付対象部材20の他方面側の内周部分(ここでは、シール接触周面22fよりも取付孔22の内側に突出した部分、即ち、段差23よりも取付対象部材20の他方面側の部分)が、挿入部40(挿入先端部44及びシール保持部42)の外周部分よりも大きく、かつ、環状シール部材48の外周部分よりも小さく設定されている。具体的には、取付孔22のうち取付対象部材20の他方面側の内周部分、挿入部40の外周部分及び環状シール部材48は、取付孔22の軸方向に沿って見た場合、長円形状を呈しており、取付孔22のうち取付対象部材20の他方面側の内周部分の長径及び短径は、挿入部40の外周部分の長径及び短径よりも大きく、かつ、環状シール部材48の外周部分の長径及び短径よりも小さく設定されている。
【0049】
このように寸法が設定されているため、挿入部40を取付孔22に挿入する際に、挿入先端部44に外嵌めされた環状シール部材48が段差23の面23fに当接され、環状シール部材48の挿入方向への移動が規制される。これにより、環状シール部材48を、挿入先端部44からシール保持部42に向けて好適に移動させることができる。
【0050】
また、上記挿入先端部44よりも挿入方向先端側に、挿入部40からの環状シール部材48の抜けを抑制する抜止部47が形成されている。ここでは、仕切部39の基端部がそれよりも先端側の他の部分よりも幅狭に形成されており、当該基端部とそれよりも先端側の他の部分と間で、挿入方向基端側を向く面を有する段差が抜止部47とされている。そして、挿入先端部44に外嵌めされた環状シール部材48が、挿入方向側で抜止部47に引っ掛かり、もって、環状シール部材48の挿入方向側への抜けが抑制されている。抜止部は、その他、環状の突起形状等であってもよい。
【0051】
以上のように構成された環状シール部材付取付部品30を、取付対象部材20に取付ける手順について説明する。
【0052】
まず、
図1及び
図2に示すように、環状シール部材48が挿入部40に外装されたものを準備する。環状シール部材48は、挿入部40の挿入先端部44において保持されている。また、環状シール部材48の挿入方向側端部は、抜止部47に引っ掛かり、挿入部40の先端側(第2端子保持部37側)への抜けが抑制されている。
【0053】
そして、
図3及び
図4に示すように、第2端子保持部37を先端側にして、挿入部40を取付孔22内に挿入する。挿入部40を取付孔22内にある程度挿入すると、環状シール部材48が取付孔22のシール接触周面22fの内周側に配設され、環状シール部材48のうち挿入方向側の端部が段差23の面23fに当接する。
【0054】
図5に示すように、挿入部40をさらに取付孔22の奥に挿入すると、環状シール部材48がシール接触周面22fの内周側に配設された状態のまま、挿入部40が取付孔22内を進む。挿入部40を基準として見ると、環状シール部材48の内周部がガイド面46に擦れつつ、環状シール部材48が挿入先端部44からシール保持部42に向けて移動する。
【0055】
図6に示すように、第1端子保持部34のうち挿入方向側の部分が取付対象部材20の一方面に当接するまで、挿入部40を取付孔22内に挿入すると、環状シール部材48は、シール保持部42の外周面とシール接触周面22fとの間に形成された環状の隙間に配設され、かつ、シール保持部42の外周面とシール接触周面22fとの間で圧縮された状態となる。この環状シール部材48によって、挿入部40と取付孔22との間のシールがなされ、水の進入等が抑制される。
【0056】
このように構成されたシール構造10によると、挿入部40の挿入方向基端側のシール保持部42が、挿入部40の挿入方向先端側の挿入先端部44よりも外周側に突出する形状に形成されている。このため、挿入部40を取付孔22に挿入する際、環状シール部材48が挿入先端部44に配設された状態では、環状シール部材48は取付孔22の内周面に押付けられない状態となるか又は弱い力で押付けられる。このため、環状シール部材48を取付孔22内に配設する際に、環状シール部材48が取付孔22の内周面に強い力で擦れて破損することを抑制できる。そして、挿入部40を取付孔22内の奥に挿入し、環状シール部材48がシール保持部42に移動すると、シール保持部42が環状シール部材48を取付孔22のシール接触周面22fに強い力で押付ける。この状態では、環状シール部材48がシール保持部42と取付孔22のシール接触周面22fとの間に圧縮状態で介在し、それらの間がシールされる。これにより、取付対象部材20に形成された取付孔22に取付部品31を挿入して取付ける際に、環状シール部材48が取付孔22の内周面に擦れて破損することを抑制できる。
【0057】
また、上記挿入部40は、樹脂によって形成されているため、環状シール部材48が挿入先端部44からシール保持部42に向けて移動する際、環状シール部材48は樹脂表面に対して擦れることになる。樹脂表面には、凹凸が形成され難く、また、金属程には硬くない。このため、環状シール部材48が挿入部40の表面に擦れたとしても、環状シール部材48は破損し難い。なお、この効果を奏するためには、挿入部40の全体が樹脂で形成されている必要は無く、挿入部40のうち少なくとも表面部分が樹脂で形成されていればよい。
【0058】
また、取付孔22の内周面に硬い金属が露出している場合、環状シール部材48が硬い金属表面に対して擦れると、環状シール部材48が破損し易い。特に、取付対象部材20が鋳造により形成された鋳物である場合には、取付孔22の内周面に鋳巣による凹みが表れるため、環状シール部材48がより破損し易くなる。このような場合において、本実施形態では、環状シール部材48が取付孔22の表面になるべく擦れないようにすることができるため、特に有効であるといえる。
【0059】
また、挿入先端部44とシール保持部42との間にガイド面46が設けられているため、環状シール部材48がシール保持部42側に向けて円滑に移動する。なお、ガイド面46が設けられていることは必須ではない。
【0060】
また、上記取付本体32は、端子50を相手方の端子90、92に接続可能な状態で保持するハウジング本体であるため、かかる端子50を保持するハウジング本体を、取付対象部材20に取付ける際に、そのハウジング本体周りで効果的にシールすることができる。
【0061】
また、挿入先端部44よりも挿入方向先端側に、挿入部40からの環状シール部材48の抜けを抑制する抜止部47が設けられているため、挿入部40を取付孔22に挿入する前の状態で、環状シール部材48が挿入部40から抜け難い。このため、挿入部40を環状シール部材48と共に取付孔22に容易に挿入することができる。なお、上記抜止部47は省略されてもよい。例えば、環状シール部材48の緩い締付け力によって、環状シール部材48が挿入先端部44に仮保持されていてもよい。
【0062】
また、上記のような箇所のシール構造として採用される他の例としては、取付孔の外側開口の周縁部で、環状シール部材を取付対象部材の外側の面に押付ける構成(面シール構造と呼ばれることもある)が考えられる。そのようなシール構造では、取付孔の外側開口の周縁部に環状シール部材を保持し、かつ、当該環状シール部材を取付対象部材の外側の面に押付けるためのネジ止構造等を組込む必要がある。そのため、高コスト化、重量化、大型化するシール構造となっていた。
【0063】
これに対し、本実施形態における環状シール部材48は、取付孔22の内周面であるシール接触周面22fと挿入部40のシール保持部42の外周面との間に圧縮状態で介在する構成であるため、低コスト化、軽量化、小型化が可能となる。
【0064】
また、取付孔22の内周面に、環状シール部材48に当接して環状シール部材48を挿入先端部44からシール保持部42に向けて移動させる段差23が設けられているため、環状シール部材48を挿入先端部44からシール保持部42に向けてより確実に移動させることができる。もっとも、段差23が設けられていることは必須ではなく、環状シール部材側に取付孔内の一定位置に留まる突部が設けられていてもよく(後述する第1変形例参照)、また、環状シール部材と取付孔の内周面との間の摩擦力によって環状シール部材が取付孔内の一定位置に止まり、挿入先端部からシール保持部に向けて移動する構成であってもよい。
【0065】
また、上記実施形態では、取付本体32が端子50を保持するハウジングである例で説明したが、必ずしもその必要は無い。
【0066】
例えば、
図7及び
図8に示す変形例では、取付対象部材20に対応する取付対象部材220は、一方に開口する筺状の部材であり、取付部品31に対応する取付部品231は、前記開口を閉じる蓋である。取付部品231に環状シール部材248が取付けられたものが、環状シール部材付取付部品230、すなわち、環状シール部材付の蓋である。
【0067】
取付対象部材220としては、各種電気要素を収容するケースであること等が想定される。取付対象部材220は、金属又は樹脂等によって形成される。取付対象部材220の一方側開口が取付孔222であり、その開口端面の内周側に、内側に凹む環状凹溝223が形成されている。
【0068】
ここでは、取付部品231は、取付本体でもあり、取付対象部材220の開口端面に被さる板状の蓋本体部233と、取付対象部材220の取付孔222内に挿入される挿入部240とを備える。挿入部240のうち挿入方向先端側の部分は、挿入先端部244であり、挿入部240のうち挿入方向基端側の部分は、挿入先端部244よりも外周側に突出したシール保持部242である。挿入先端部244とシール保持部242との間には、シール保持部242側に向けて順次外周側に突出するガイド面246が形成されている。上記取付部品231の挿入部240の外周に、上記環状凹溝223内に配設可能な環状シール部材248が取付けられる。
【0069】
初期状態では、環状シール部材248を挿入先端部244に外嵌めしておく。この際、環状シール部材248は、自らの締付け力によって、挿入先端部244に止まる構成であってもよいし、別途、挿入先端部244の先端側に抜止部を形成しておいてもよい。
【0070】
そして、環状シール部材付取付部品230の挿入部240を取付孔222内に挿入すると、環状シール部材248が環状凹溝223内に嵌まり、当該環状凹溝223の奥側の段差に当接した状態となる。さらに、挿入部240を奥に挿入すると、環状シール部材248が環状凹溝223内に止まった状態で、当該環状シール部材248が挿入先端部244からシール保持部242側に移動する。蓋本体部233の外周部が取付対象部材220の開口端面に当接する迄、挿入部240が挿入されると、環状シール部材248は、シール保持部242の外周面と環状凹溝223の内周面との間に圧縮状態で介在される。これにより、取付対象部材220の開口と蓋本体部233との間の隙間がシールされることになる。
【0071】
なお、上記実施形態及び上記変形例では、取付部品31、231を取付孔22、222に挿入する前の状態で、環状シール部材48、248が挿入部40、240の挿入先端部44、244に仮状態で保持されている例で説明したが、必ずしもその必要は無い。例えば、上記実施形態において、取付部品31を取付孔22に挿入する前の状態で、環状シール部材48が取付対象部材20の取付孔22に取付けられていてもよい。また、上記変形例において、取付部品231を取付孔222に挿入する前の状態で、環状シール部材248が取付対象部材220の取付孔222に取付けられていてもよい。
【0072】
これらの場合においても、取付部品31、231を取付孔22、222に挿入すると、環状シール部材48、248が挿入部40、240の挿入先端部44、244からシール保持部42、242に相対移動する。環状シール部材48、248が挿入先端部44、244の外周に位置する状態では、環状シール部材48、248は取付孔22、222の内周面に押付けられないか又は弱い力で押付けられるため、環状シール部材48、248の破損を抑制できる。また、環状シール部材48、248がシール保持部42、242の外周に位置するようになった状態では、環状シール部材48、248は、シール保持部42、242と取付孔22、222との間に圧縮状態で介在し、それらの間をシールすることができる。
【0073】
なお、上記実施形態及び各変形例で説明した各構成は、相互に矛盾しない限り適宜組合わせることができる。
【0074】
以上のようにこの発明は詳細に説明されたが、上記した説明は、すべての局面において、例示であって、この発明がそれに限定されるものではない。例示されていない無数の変形例が、この発明の範囲から外れることなく想定され得るものと解される。