特許第6853110号(P6853110)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6853110
(24)【登録日】2021年3月15日
(45)【発行日】2021年3月31日
(54)【発明の名称】燃焼装置
(51)【国際特許分類】
   F23N 5/24 20060101AFI20210322BHJP
   F23N 5/20 20060101ALI20210322BHJP
【FI】
   F23N5/24 Z
   F23N5/20 A
【請求項の数】1
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2017-99511(P2017-99511)
(22)【出願日】2017年5月19日
(65)【公開番号】特開2018-194247(P2018-194247A)
(43)【公開日】2018年12月6日
【審査請求日】2020年1月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】000115854
【氏名又は名称】リンナイ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000305
【氏名又は名称】特許業務法人青莪
(72)【発明者】
【氏名】大畑 寛之
(72)【発明者】
【氏名】赤木 万之
【審査官】 西山 真二
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−351502(JP,A)
【文献】 韓国公開特許第10−2012−0065509(KR,A)
【文献】 特開平2−161211(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F23N 5/20
F23N 5/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃焼室に配置した複数のバーナを有するバーナユニットと、バーナユニットに燃焼用空気を供給する燃焼ファンと、バーナユニットに燃料ガスを供給するガス供給路に設けられた比例弁と、比例弁よりも下流側のガス供給路の部分に設けられ、燃料ガスを供給するバーナの組合せを変更してバーナユニット全体の燃焼能力を複数段に切換える能力切換弁とを備え、最低段の燃焼能力で燃焼量を所定の点火燃焼量にしてバーナユニットに点火するようにした燃焼装置であって、点火後の燃焼初期段階に、最低段以外の所定段の燃焼能力で燃焼量が所定の共鳴音発生領域に入っているときに共鳴音が発生するものにおいて、
点火後、要求燃焼量が所定段より1段低い燃焼能力での上限燃焼量を上回る共鳴音発生領域に入っているか否かを判別し、要求燃焼量がこの共鳴音発生領域に入っている場合は、点火後所定時間経過するまで、所定段よりも1段低い燃焼能力で燃焼量を点火燃焼量より高い所定の待機燃焼量に維持し、その後、所定段の燃焼能力に切換えて、燃焼量を要求燃焼量にするようにし、所定段より1段低い燃焼能力で燃焼量を一時的に当該燃焼能力での上限燃焼量よりも高くすることを可能として、待機燃焼量を要求燃焼量に一致させることを特徴とする燃焼装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃焼室に配置した複数のバーナを有するバーナユニットと、バーナユニットに燃焼用空気を供給する燃焼ファンと、バーナユニットに燃料ガスを供給するガス供給路に設けられた比例弁と、比例弁よりも下流側のガス供給路の部分に設けられ、燃料ガスを供給するバーナの組合せを変更してバーナユニット全体の燃焼能力を複数段に切換える能力切換弁とを備える燃焼装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の燃焼装置では、爆発的な点火を防止するため、最低段の燃焼能力で燃焼量を比較的低い所定の点火燃焼量にしてバーナユニットに点火し、その後、最低段より高い段の燃焼能力に切換えるようにしている。但し、点火後、燃焼室内の温度がある程度上昇するまでの燃焼初期段階では、最低段以外の所定段(例えば、最高段)の燃焼能力で燃焼量が所定の共鳴音発生領域に入っているときに共鳴音が発生することがある。
【0003】
そのため、従来、点火後、燃焼室の温度がある程度上昇するのに必要な所定時間経過するまでは、最低段の燃焼能力で燃焼量を点火燃焼量に維持し、共鳴音の発生を抑制した燃焼装置も知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
然し、このものでは、要求燃焼量(例えば、バーナで加熱する被加熱物が給湯用熱交換器である場合は、熱交換器から設定温度の温水を出湯するのに必要な燃焼量)が高くても、点火後所定時間経過するまでは、燃焼量がかなり低く抑えられて要求燃焼量との差が大きくなり、出湯温が低くなって使用者に迷惑をかけてしまう。また、燃焼量がかなり低く抑えられるので、燃焼室の温度がある程度上昇するまでに時間がかかり、上記所定時間を長く設定せざるを得なくなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平2−161211号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、以上の点に鑑み、燃焼初期段階での燃焼量を点火燃焼量より高くして、且つ、共鳴音の発生を抑制できるようにした燃焼装置を提供することをその課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明は、燃焼室に配置した複数のバーナを有するバーナユニットと、バーナユニットに燃焼用空気を供給する燃焼ファンと、バーナユニットに燃料ガスを供給するガス供給路に設けられた比例弁と、比例弁よりも下流側のガス供給路の部分に設けられ、燃料ガスを供給するバーナの組合せを変更してバーナユニット全体の燃焼能力を複数段に切換える能力切換弁とを備え、最低段の燃焼能力で燃焼量を所定の点火燃焼量にしてバーナユニットに点火するようにした燃焼装置であって、点火後の燃焼初期段階に、最低段以外の所定段の燃焼能力で燃焼量が所定の共鳴音発生領域に入っているときに共鳴音が発生するものにおいて、点火後、要求燃焼量が所定段より1段低い燃焼能力での上限燃焼量を上回る共鳴音発生領域に入っているか否かを判別し、要求燃焼量がこの共鳴音発生領域に入っている場合は、点火後所定時間経過するまで、所定段よりも1段低い燃焼能力で燃焼量を点火燃焼量より高い所定の待機燃焼量に維持し、その後、所定段の燃焼能力に切換えて、燃焼量を要求燃焼量にするようにし、更に、所定段より1段低い燃焼能力で燃焼量を一時的に当該燃焼能力での上限燃焼量よりも高くすることを可能とし、待機燃焼量を要求燃焼量に一致させることを特徴とする。
【0008】
本発明によれば、要求燃焼量が所定段より1段低い燃焼能力での上限燃焼量を上回る共鳴音発生領域に入っていても、点火後所定時間経過するまで、燃焼能力を所定段より1段低い燃焼能力にして、燃焼量を待機燃焼量に維持するため、共鳴音の発生を抑制できる。そして、待機燃焼量は、点火燃焼量より高いため、燃焼量を点火燃焼量に維持する場合に比して要求燃焼量との差が小さくなり、使用者にかける迷惑の程度を軽減できる。更に、燃焼量を点火燃焼量に維持する場合に比して、燃焼室の温度が共鳴音の発生が抑制される温度まで早く上昇するため、待機燃焼量に維持する上記所定時間を短く設定でき、この点でも使用者にかける迷惑の程度を軽減できる。
【0010】
更に、本発明では、上記の如く所定段より1段低い燃焼能力で燃焼量を一時的に当該燃焼能力での上限燃焼量よりも高くすることを可能とし、待機燃焼量を要求燃焼量に一致させるため、使用者に迷惑をかけることがない。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の実施形態の燃焼装置の構成を示す模式図。
図2】バーナ全体の燃焼量とファン回転数との関係を表す燃焼特性ラインを各段の燃焼能力について示したグラフで、(a)は待機燃焼量を第2段の燃焼能力での上限燃焼量に設定した場合を示す図、(b)は待機燃焼量を要求燃焼量に設定した場合を示す図。
図3】実施形態の燃焼装置で行う点火後初期制御の内容を示すフロー図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1は、給湯用熱源機から成る本発明の実施形態の燃焼装置を示している。この燃焼装置は、燃焼筐1で囲われる燃焼室2を備えている。燃焼室2の下部には、第1バーナ3と第2バーナ3とを有するバーナユニット3が配置されている。尚、第1バーナ3は、並設した5本の単位バーナ3aで構成され、第2バーナ3は、並設した10本の単位バーナ3aで構成されている。また、第1バーナ3に臨む点火電極31を備えている。そして、点火電極31への高電圧印加源であるイグナイタ32への通電により点火電極31でスパークさせて第1バーナ3に点火し、その後、第2バーナ3に火移りさせるようにしている。
【0013】
また、燃焼室2の上部には、被加熱物たる給湯用の熱交換器4が配置されている。更に、燃焼筐1の下面には、バーナユニット3に燃焼用空気を供給する燃焼ファン5が接続されている。そして、バーナユニット3からの燃焼ガスにより熱交換器4の上流側の給水管4aからの水を加熱し、熱交換器4の下流側の出湯管4bに所定の設定温度に加熱された温水が出湯されるようにしている。熱交換器4を通過した燃焼ガスは、燃焼筐1の上部に開設した排気口1aから外部に排出される。
【0014】
バーナユニット3に燃料ガスを供給するガス供給路6には、電磁開閉弁から成る元弁61と、その下流側の比例弁62とが介設されている。また、比例弁62の下流側のガス供給路6の部分は、第1バーナ3に連なる第1分岐路6aと、第2バーナ3に連なる第2分岐路6bとに分岐されている。これら第1と第2の各分岐路6a,6bには、夫々電磁開閉弁から成る第1と第2の各能力切換弁63,63が介設されている。そして、第1、第2能力切換弁63,63の開閉で燃料ガスを供給するバーナの組合せを変更して、バーナユニット全体の燃焼能力を複数段に切換えるようにしている。
【0015】
具体的に説明すれば、第1能力切換弁63を開弁して第1バーナ3のみに燃料ガスを供給することにより、バーナユニット全体の燃焼能力を最低段たる第1段の能力(単位バーナ5本分の能力)に切換え、第2能力切換弁63を開弁して第2バーナ3のみに燃料ガスを供給することにより、バーナユニット全体の燃焼能力を第2段の能力(単位バーナ10本分の能力)に切換え、第1と第2の両能力切換弁63,63を開弁して第1と第2の両バーナ3,3に燃料ガスを供給することにより、バーナユニット全体の燃焼能力を最高段たる第3段の能力(単位バーナ15本分の能力)に切換えるようにしている。
【0016】
燃焼装置は、更に、燃焼ファン5、元弁61、比例弁62、能力切換弁63,63及びイグナイタ32を制御する制御手段たるマイクロコンピュータから成るコントローラ7を備えている。コントローラ7は、給湯負荷に応じた要求燃焼量(設定温度の温水を出湯するのに必要な燃焼量)を演算し、この要求燃焼量に合わせて第1と第2の能力切換弁63,63を開閉制御して、バーナユニット全体の燃焼能力を切換え、切換えた燃焼能力で要求燃焼量に等しい燃焼量が得られ、且つ、この燃焼量に応じた適切な量の空気が供給されるように、燃焼ファン5の回転数と比例弁62に通電する比例弁電流とを要求燃焼量に応じて可変する制御を行う。
【0017】
図2は、各段の燃焼能力で得られるバーナユニット全体の燃焼量と燃焼ファン5の回転数(ファン回転数)との関係を表す燃焼特性ラインを示している。この燃焼特性ラインは、第1段の燃焼能力ではラインL1、第2段の燃焼能力ではラインL2、第3段の燃焼能力ではラインL3になる。ここで、ファン回転数の下限値Nminに対応する比例弁電流の下限値とファン回転数の上限値Nmaxに対応する比例弁電流の上限値は、各段の燃焼能力で比例弁電流を上限値にしたときの燃焼量がそれより1段高い燃焼能力で比例弁電流を下限値にしたときの燃焼量を上回るように設定され、能力順位で隣接する燃焼能力間で重ね代を持つことになる。
【0018】
そして、コントローラ7は、要求燃焼量が現時点の燃焼能力の上限燃焼量(ファン回転数を上限値Nmaxにしたときに得られるバーナユニット全体の燃焼量)を上回ったときに、燃焼能力を1段高くする能力アップ制御を行い、要求燃焼量が現時点の燃焼能力の下限燃焼量(ファン回転数を下限値Nminにしたときに得られるバーナユニット全体の燃焼量)を下回ったときに、燃焼能力を1段低くする能力ダウン制御を行う。これによれば、一旦能力ダウン制御が行われると、要求燃焼量が重ね代以上増加しない限り能力アップ制御は行われず、また、一旦能力アップ制御が行われると、要求燃焼量が重ね代以上減少しない限り能力ダウン制御は行われず、要求燃焼量の微小変化で能力アップ制御と能力ダウン制御が短時間で繰り返される現象(ハンチング)が抑制される。
【0019】
ところで、給湯開始時は、一般的に、第1段の燃焼能力で、燃焼量を比較的低い所定の点火燃焼量Qigにして第1バーナ3に点火し、その後、要求燃焼量に応じた能力切換と燃焼量の調節とを行う。然し、本実施形態の燃焼装置においては、点火後、燃焼室2内の温度がある程度上昇するまでの燃焼初期段階では、第3段の燃焼能力で燃焼量が比較的大きな所定の共鳴音発生領域QWに入っているときに共鳴音が発生する。尚、第2段の燃焼能力の上限燃焼量Q2maxは、共鳴音発生領域QWの下限より大きいが、第2段の燃焼能力では、燃焼していない第1バーナ3に流れる空気によって燃焼振動が軽減されるため、第2段の燃焼能力で燃焼量が共鳴音発生領域QWの下限より大きくなっても共鳴音は発生しない。
【0020】
ここで、本実施形態では、上記共鳴音の発生を抑制するために、第1バーナ3に点火後、図3に示す点火後初期制御を行うようにした。この点火後初期制御では、先ず、STEP1で要求燃焼量Qdeを算出し、次に、STEP2で要求燃焼量Qdeが第2段の燃焼能力での上限燃焼量Q2maxを上回る共鳴音発生領域QWに入っているか否か、即ち、要求燃焼量Qdeが第2段の燃焼能力での上限燃焼量Q2maxを上回っているか否かを判別する。Qde≦Q2maxであれば、STEP3に進み、燃焼量が要求燃焼量Qdeになるように通常の能力切換と燃焼量調節とを行う。
【0021】
一方、図2に示す如くQde>Q2maxであれば、STEP4に進んで、第2段の燃焼能力に切換えると共に燃焼量を点火燃焼量Qigよりも高い所定の待機燃焼量Qweに調節し、更に、STEP5でバーナ点火後所定時間(例えば、5秒)経過したか否かを判別し、所定時間経過するまではSTEP4に戻ることを繰り返して、第2段の燃焼能力で燃焼量を待機燃焼量Qweに維持する。そして、バーナ点火後所定時間経過したとき、STEP6に進んで、第3段の燃焼能力に切換えると共に燃焼量を要求燃焼量Qdeまで増加し、その後STEP3に進む。
【0022】
以上の点火後初期制御によれば、要求燃焼量Qdeが第2段の燃焼能力での上限燃焼量Q2maxを上回っている場合、バーナ点火後所定時間経過するまで第2段の燃焼能力で燃焼量を待機燃焼量Qweに維持するため、共鳴音の発生を抑制できる。そして、待機燃焼量Qweは、点火燃焼量Qigより高いため、燃焼量を点火燃焼量Qigに維持する場合に比して要求燃焼量Qdeとの差が小さくなり、点火後初期制御中の設定温度と出湯温との差を小さくして使用者にかける迷惑の程度を軽減できる。更に、燃焼量を点火燃焼量Qigに維持する場合に比して、燃焼室2の温度が共鳴音の発生が抑制される温度まで早く上昇するため、待機燃焼量Qweに維持する上記所定時間を短く設定でき、この点でも使用者にかける迷惑の程度を軽減できる。
【0023】
ここで、待機燃焼量Qweは、図2(a)に示す如く、第2段の燃焼能力での上限燃焼量Q2maxに設定することが望ましい。これによれば、要求燃焼量Qdeと待機燃焼量Qweとの差をより小さくして、点火後初期制御中の設定温度と出湯温との差を一層小さくすることができる。
【0024】
また、一時的であれば、第2段の燃焼能力で燃焼量を上限燃焼量Q2maxより高くしても、耐久性に悪影響は及ばない。そのため、待機燃焼量Qweを、図2(b)に示す如く要求燃焼量Qdeに一致させてもよい。これによれば、点火初期制御中から設定温度の温水を出湯でき、使用者に迷惑をかけることがない。
【0025】
以上、本発明の実施形態について図面を参照して説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、上記実施形態は、燃焼能力を3段に切換えるものであるが、4段以上に切換えるものであって、燃焼初期段階に第4段以上の燃焼能力で共鳴音が発生する燃焼装置や、燃焼能力を2段に切換えるものであって、燃焼初期段階に第2段の燃焼能力で共鳴音が発生する燃焼装置にも同様に本発明を適用できる。更に、上記実施形態の燃焼装置は、給湯用熱源機であるが、暖房用といった給湯以外の用途の燃焼装置にも同様に本発明を適用できる。
【符号の説明】
【0026】
2…燃焼室、3…バーナユニット、3,3…バーナ、5…燃焼ファン、6…ガス供給路、Q2max…第2段の燃焼能力(所定段より1段低い燃焼能力)での上限燃焼量、QW…共鳴音発生領域、Qig…点火燃焼量、Qde…要求燃焼量、Qwe…待機燃焼量。
図1
図2
図3