特許第6853142号(P6853142)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6853142
(24)【登録日】2021年3月15日
(45)【発行日】2021年3月31日
(54)【発明の名称】電気回路遮断装置
(51)【国際特許分類】
   H01H 39/00 20060101AFI20210322BHJP
【FI】
   H01H39/00 C
【請求項の数】7
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2017-157847(P2017-157847)
(22)【出願日】2017年8月18日
(65)【公開番号】特開2019-36481(P2019-36481A)
(43)【公開日】2019年3月7日
【審査請求日】2020年6月3日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002901
【氏名又は名称】株式会社ダイセル
(74)【代理人】
【識別番号】100087642
【弁理士】
【氏名又は名称】古谷 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100098408
【弁理士】
【氏名又は名称】義経 和昌
(72)【発明者】
【氏名】藤原 友秀
【審査官】 関 信之
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−049300(JP,A)
【文献】 特表2013−522834(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01H 39/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
合成樹脂からなるハウジング内において、前記ハウジングの第1端部側からハウジング軸方向反対側の第2端部側に向かって順に、点火器、合成樹脂からなる棒状発射体、電気回路の一部を形成させるための導体片および閉鎖されたガス充填空間が配置され、前記閉鎖されたガス充填空間のガス出口と前記導体片の間に閉鎖された絶縁空間を有しており、
前記導体片が、両端側の第1接続部、第2接続部および中間部分の切断部からなる板片であり、前記切断部の面が前記ハウジングの軸方向に直交して配置されているものであり、
前記棒状発射体が、先端面に突起部を有しており、前記突起部が前記導体片の切断部の一部を貫通して前記絶縁空間内に位置されているものであり、
前記閉鎖されたガス充填空間のガス出口が、前記棒状発射体の先端面の突起部と同軸上に間隔をおいて前記絶縁空間に面して配置されているものである、電気回路遮断装置。
【請求項2】
前記閉鎖されたガス充填空間が、前記ガス出口が前記絶縁空間に面するように配置されたガスボンベである、請求項1記載の電気回路遮断装置。
【請求項3】
合成樹脂からなるハウジング内において、前記ハウジングの第1端部側からハウジング軸方向反対側の第2端部側向かって順に、点火器、閉鎖されたガス充填空間を備えた、合成樹脂からなる棒状発射体、電気回路の一部を形成させるための導体片が配置され、前記ハウジングの第2端部と前記導体片の間に閉鎖された絶縁空間を有しており、
前記導体片が、両端側の第1接続部、第2接続部および中間部分の切断部からなる板片であり、前記切断部の面が前記ハウジングの軸方向に直交して配置されているものであり、
前記棒状発射体が、先端面側に形成された中空部内に前記ガス充填空間を有し、前記導体片の切断部の面とハウジング軸方向に対向して配置されているものであり、
前記絶縁空間を形成するハウジングの第2端部側が、前記棒状発射体の先端面に対向する位置に固定された突起部を有しているものである、電気回路遮断装置。
【請求項4】
前記閉鎖されたガス充填空間を備えた、合成樹脂からなる棒状発射体が、
前記ハウジングの第1端部側のロッド部と、前記ロッド部と接続された前記ハウジングの第2端部側の先端拡径部を有しているものであり、
前記先端拡径部の外径が前記ロッドの外径よりも大きくなっており、前記先端拡径部内部に閉鎖されたガス充填空間を有しているものである、請求項3記載の電気回路遮断装置。
【請求項5】
前記棒状発射体の先端面側の外径(D1)と前記絶縁空間の内径(d1)が、d1>D1の関係を有しており、d1−D1から求められる間隙の大きさが、ガスが移動できる最小間隔である、請求項1〜4のいずれか1項記載の電気回路遮断装置。
【請求項6】
前記棒状発射体と前記ハウジング内壁面の間に金属からなるシリンダーが配置されているものである、請求項1〜5のいずれか1項記載の電気回路遮断装置。
【請求項7】
前記導体片の切断部が、前記棒状発射体の先端面に対向する位置に脆弱部を有しているものである、請求項1〜6のいずれか1項記載の電気回路遮断装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車や家庭電化製品などの電気回路に使用することができる電気回路遮断装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車や家庭電化製品などの電気回路自体や前記電気回路を含むシステム全体の異常時などにおいて、電気回路を遮断することで大きな被害を未然に防止する電気回路遮断装置が使用されており、電気自動車の電気回路では電気回路遮断装置の重要性が特に大きくなっている。
電気回路遮断装置は、ハウジング内に点火器、発射体(ピストン)、導体などが収容されたものが知られている(特許文献1〜6)。
【0003】
特許文献1、2では、ハウジングの材質として、金属、セラミックス、ポリマーが例示されており、特定のポリマーが好ましいと記載されている(特許文献1の2〜3頁、特許文献2の2頁)。
特許文献4では、ケーシング13はステンレスからなるものである(段落番号0011)。
特許文献5では、ケース30は、電気絶縁性を有し、かつ強度の高い材料(例えば樹脂材料)によって形成されている(段落番号0034)。
ポリマー材料(樹脂材料)を使用したときは、例えば、特許文献1、2、5のそれぞれの図1などからも理解できるとおり、必要な強度を付与する点から、ハウジング(ケーシング)を厚肉にする必要がある。
ステンレスのケーシング13を使用したときは、質量の増加が大きくなるほか、絶縁ケース14を組み合わせて配置する必要があるため、構造および組み立てが複雑になる。
特許文献6は、金属製のシリンダーを使用して樹脂製のハウジングを補強することで、特許文献1〜5にはない作用効果が得られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許出願公開第2005/0083164号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第2005/0083165号明細書
【特許文献3】米国特許出願公開第2012/0234162号明細書
【特許文献4】特開平11−232979号公報
【特許文献5】特開2014−49300号公報
【特許文献6】特開2016−85947号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、電気回路遮断装置が作動して電気回路が遮断されたときにアークが発生しても直ちに消弧できる電気回路遮断装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明(第1実施形態)は、合成樹脂からなるハウジング内において、前記ハウジングの第1端部側からハウジング軸方向反対側の第2端部側に向かって順に、点火器、合成樹脂からなる棒状発射体、電気回路の一部を形成させるための導体片および閉鎖されたガス充填空間が配置され、前記閉鎖されたガス充填空間のガス出口と前記導体片の間に閉鎖された絶縁空間を有しており、
前記導体片が、両端側の第1接続部、第2接続部および中間部分の切断部からなる板片であり、前記切断部の面が前記ハウジングの軸方向に直交して配置されているものであり、
前記棒状発射体が、先端面に突起部を有しており、前記突起部が前記導体片の切断部の一部を貫通して前記絶縁空間内に位置されているものであり、
前記閉鎖されたガス充填空間のガス出口が、前記棒状発射体の先端面の突起部と同軸上に間隔をおいて前記絶縁空間に面して配置されているものである、電気回路遮断装置を提供する。
【0007】
ハウジングは合成樹脂からなるものであり、外形は取り付け部位に応じて適宜決定されるものである。
ハウジングは、点火器、発射体、シリンダー、導体片などの部品を収容したり、取り付けたりすることができる形状、構造および大きさのものである。
【0008】
点火器は、公知の電気回路遮断装置で使用されている点火器のほか、自動車のエアバッグ装置のガス発生器で使用する点火器などである。
点火器は、点火薬を備えた点火部と通電するための導電ピンを備えたものであり、作動時には、外部電源から通電することで点火薬を燃焼させ、燃焼ガスや火炎などの燃焼生成物を発生させるものである。
【0009】
導体片は、公知の電気回路遮断装置で使用されているものと同じものを使用することができる。
導体片は、両端側の接続部(第1接続部と第2接続部)と中間部分の切断部からなる板片であり、電気回路に取り付けたとき、電気回路の一部を形成するためのものである。
導体片の形状は、ハウジングに対する取り付け部分の形状および構造に対応した形状になっている。
【0010】
棒状発射体は、点火器の作動により発生した燃焼生成物の圧力を受けて、ハウジング内を軸方向に第2端部側に移動し、導体片を切断して、電気回路を遮断するためのものである。
棒状発射体は、棒状発射体の先端面に突起部を有している。突起部は、鋭利な先端部を有している棒状突起部が好ましい。
また突起部は、鋭利な先端部を有し、周壁部に複数の貫通孔を有する筒状突起部でもよい。前記筒状突起部であると、ガスが筒状突起部の内部を通った後、前記貫通孔から流出される。
棒状発射体は、突起部が導体片の切断部の一部を貫通してハウジング軸方向に配置されている。
棒状発射体の先端面(突起部が形成されている面で、突起部を除いた面)は、切断部と当接されていてもよいし、間隔をおいて対向されていてもよい。
棒状発射体は、ハウジングと同じ合成樹脂からなるものを使用することができる。
【0011】
閉鎖されたガス充填空間は、ハウジングの第2端部側の内部に形成されたガス充填空間でもよいし、別部材からなる容器内にガスが充填されたものでもよい。
ガス充填空間内に充填するガスは、酸素を含まないガスであればよく、アルゴンガス、ヘリウムガスなどの不活性ガス、窒素ガスなどを使用することができる。
絶縁空間は、合成樹脂のハウジングで囲まれた空間であり、作動時には棒状発射体が移動する空間である。
閉鎖されたガス充填空間は、ガス出口が絶縁空間に面しかつ前記突起部と軸方向に対向するように配置されている。
【0012】
第1実施形態の装置では、点火器が作動すると棒状発射体が軸方向に移動して、先端面が導体片の切断部を切断したあと、突起部が閉鎖されたガス充填空間のガス出口を破壊して、絶縁空間内にガスを流出させる。
このように切断部が切断されることで、電気的に不通となり、電気回路が遮断されると共に、絶縁空間内にガスが流出されるため、アークが発生しても速やかに消弧される。
【0013】
第1実施形態の電気回路遮断装置の好ましい実施形態は、前記閉鎖されたガス充填空間が、前記ガス出口が前記絶縁空間に面するように配置されたガスボンベであるものである。
ガスボンベを使用したとき、ガス出口を破裂板で閉塞しておくことで、作動時には棒状発射体の先端面の突起部で破壊され、ガスが流出されるようにすることができる。
【0014】
本発明(第2実施形態)は、合成樹脂からなるハウジング内において、前記ハウジングの第1端部側からハウジング軸方向反対側の第2端部側向かって順に、点火器、閉鎖されたガス充填空間を備えた、合成樹脂からなる棒状発射体、電気回路の一部を形成させるための導体片が配置され、前記ハウジングの第2端部と前記導体片の間に閉鎖された絶縁空間を有しており、
前記導体片が、両端側の第1接続部、第2接続部および中間部分の切断部からなる板片であり、前記切断部の面が前記ハウジングの軸方向に直交して配置されているものであり、
前記棒状発射体が、先端面側に形成された中空部内に前記ガス充填空間を有し、前記導体片の切断部の面とハウジング軸方向に対向して配置されているものであり、
前記絶縁空間を形成するハウジングの第2端部側が、前記棒状発射体の先端面に対向する位置に固定された突起部を有しているものである、電気回路遮断装置を提供する。
【0015】
第2実施形態の電気回路遮断装置は、第1実施形態の電気回路遮断装置とは閉鎖されたガス充填空間の形態と突起部の位置が異なっており、その他は同じものである。
第2実施形態の電気回路遮断装置では、閉鎖されたガス充填空間が棒状発射体の先端面側の中空部内に形成されている。
このため、前記ガス充填空間を穿孔してガスを流出させるための筒状突起部は、前記棒状発射体の先端面に対向する位置(すなわち、前記ガス充填空間)に固定されている。
【0016】
第2実施形態の装置では、点火器が作動すると棒状発射体が軸方向に移動して、先端面が導体片の切断部を切断し、絶縁空間内を移動する。その後、棒状発射体内部の閉鎖されたガス充填空間のガス出口を絶縁空間内に配置された突起部が破壊して、絶縁空間内にガスを流出させる。
このように切断部が切断されることで、電気的に不通となり、電気回路が遮断されると共に、絶縁空間内にガスが流出されるため、アークが発生しても速やかに消弧される。
【0017】
第2実施形態の電気回路遮断装置の好ましい実施形態は、前記閉鎖されたガス充填空間を備えた、合成樹脂からなる棒状発射体が、
前記ハウジングの第1端部側のロッド部と、前記ロッド部と接続された前記ハウジングの第2端部側の先端拡径部を有しているものであり、
前記先端拡径部の外径が前記ロッドの外径よりも大きくなっており、前記先端拡径部内部に閉鎖されたガス充填空間を有しているものである。
【0018】
棒状発射体として先端面側の外径が大きなものを使用すると、閉鎖されたガス充填空間の容積を増加させることができ、アーク発生防止効果を高めることができるので好ましい。
【0019】
第1実施形態および第2実施形態の電気回路遮断装置の好ましい実施形態は、前記棒状発射体の先端面側の外径(D1)と前記絶縁空間の内径(d1)が、d1>D1の関係を有しており、d1−D1から求められる間隙の大きさが、ガスが移動できる最小間隔であるものである。
【0020】
上記d1−D1から求められる間隙は、ガスが移動して消弧できる間隔の内の最小間隔であればよい。前記間隔を最小間隔に維持することで、電気回路遮断装置を小型化することができる。
【0021】
第1実施形態および第2実施形態の電気回路遮断装置の好ましい実施形態は、前記棒状発射体と前記ハウジング内壁面の間に金属からなるシリンダーが配置されているものである。
【0022】
ハウジングを補強するための金属からなるシリンダーは、ステンレス、アルミニウムなどの金属、炭素繊維強化樹脂などの繊維強化樹脂からなるものから選ばれるものを使用することができる。
ハウジング内壁面とシリンダーの外周面は、互いに接触していることが好ましい。
シリンダーの内周面と棒状発射体の外周面は、互いに接触していてもよいが、作動時に移動し易くするため、僅かな隙間が形成されて配置されていることが好ましい。
シリンダーの幅方向の断面形状と棒状発射体の断面形状は、同じであることが好ましいが、部分的に異なっていてもよい。
【0023】
第1実施形態および第2実施形態の電気回路遮断装置の好ましい実施形態は、前記導体片の切断部が、前記棒状発射体の先端面に対向する位置に脆弱部を有しているものである。
【0024】
前記脆弱部は、切断部に形成された溝、傷などである。前記脆弱部があると、作動時に切断され易くなるので好ましい。
【発明の効果】
【0025】
本発明の電気回路遮断装置は、電気回路を確実に遮断できると共に、アークが発生しても直ちに消弧することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】(a)は本発明の電気回路遮断装置の一実施形態の軸方向断面図、(b)は(a)の作動後の状態を示す軸方向断面図。
図2図1の部分拡大図。
図3】(a)は本発明の電気回路遮断装置の別実施形態の軸方向断面図、(b)は(a)の作動後の状態を示す軸方向断面図。
【発明を実施するための形態】
【0027】
(1)図1の電気回路遮断装置
図1図2により本発明の電気回路遮断装置1の実施形態を説明する。
合成樹脂からなるハウジング(樹脂ハウジング)10は、第1端部11から第2端部12まで貫通された筒状空間13を有している。
ハウジング10は、組み立て作業を簡単にするため、必要に応じて厚さ方向または長さ方向に分割できるようになっていてもよい。
【0028】
ハウジング10の筒状空間13内には、第1端部11側から第2端部12側に向かって順に、点火器20、合成樹脂からなる棒状発射体40、導体片50、閉鎖されたガス充填空間となるガスボンベ70が配置されている。
ガスボンベ70と導体片50の間には、閉鎖された絶縁空間60が形成されている。絶縁空間60は、作動時における棒状発射体40(先端拡径部42と突起部45)の移動空間であり、作動時に切断された導体片50の切断部53が保持される空間である。
るものである。
【0029】
第1端部11は、点火器20が取り付けられることで閉塞されており、点火器20と第1端部11の間には、使用時において電源とリードワイヤで接続されたコネクタ嵌め込み部15が形成されている。
点火器20は、点火部21と導電ピン23を有する点火器本体の一部が樹脂で包囲された樹脂部22を有しており、樹脂部22から点火部21が突き出されたものである。
【0030】
図1(a)に示す棒状発射体40は、特開2016−85947号公報の図1図2(a)に示されているものと同じものを使用することができる。
棒状発射体40は、ロッド部41と、ロッド部41の先に形成された先端拡径部42を有している。先端拡径部42の外径は、ロッド部41の外径よりも大きくなっている。
図2に示す棒状発射体40の先端拡径部42の外径(D1)と絶縁空間60の内径(d1)は、d1>D1の関係を有しており、d1−D1から求められる間隙が存在している。
ロッド部41の幅方向の断面形状は円形であり、先端拡径部42の幅方向の断面形状は四角形(好ましくは正方形)または円形であるが、正方形がより好ましい。
なお、ロッド部41には、一部の外径が小さくなったくびれ部または環状溝部を形成して、ゴム(例えばシリコーンゴム)や合成樹脂からなるOリングを嵌め込むこともできる。
棒状発射体40は、先端面(先端拡径部42の先端面)42aから突き出された先端が鋭利な形状の突起部45を有している。
突起部45は樹脂製のものであり、先端が鋭利な形状の円柱形状または角柱形状のもの、先端が鋭利な形状の円柱形状または角柱形状のもので、縦方向にガス通路となる複数の溝を有しているもの、先端が鋭利な形状の円筒状または角筒状のもの、先端が鋭利な形状の円筒状または角筒状のもので、周壁面に厚さ方向に貫通したガス通路となる複数の貫通孔を有しているものを使用することができる。
【0031】
導体片50は、装置1を電気回路に取り付けたとき、電気回路の一部を形成させるためのものである。
導体片50は、両端側の第1接続部51、第2接続部52と中間部分の切断部53からなる板片である。
第1接続部51と第2接続部52は、電気回路において他の導体(例えば、リードワイヤ)と接続するためのものであり、切断部53は、作動時において切断されて電気回路を遮断できるようにするためのものである。
導体片50と棒状発射体40は、棒状発射体40の先端面42aが切断部53に当接され、かつ突起部45が切断部53の一部を貫通して配置されている。突起部45は絶縁空間60内に位置している。
突起部45が一部を貫通した切断部53の幅(w1)と突起部45の幅w2(または外径)は、w2/w1が0.05〜0.1程度であることが好ましい。
【0032】
図2に示すとおり、切断部53は、第1端部11側の第1面54に形成された2本の第1脆弱部54a、54bを有し、第2端部12側の第2面55に形成された2本の第2脆弱部55a、55bを有している。
第1脆弱部54a、54bは、切断部53の幅方向に形成された同じ深さ、同じ幅、同じ長さの溝である。
第2脆弱部55a、55bは、切断部53の幅方向に形成された同じ深さ、同じ幅、同じ長さの溝である。
第1脆弱部54a、54bの溝幅は、第2脆弱部55a、55bの溝幅よりも狭くなっているため、第1面54の強度よりも第2面55の強度の方が小さくなっている。
【0033】
棒状発射体40の先端面42aの突起部45と軸方向に対向する位置に閉鎖されたガス充填空間となるガスボンベ70が配置されている。
ボンベ70の閉塞されたガス出口71は絶縁空間60に面しており、突起部45と軸方向に間隔をおいて対向配置されている。
ガス出口71の内径は、切断部53(作動時の切断片53a)の長さよりも短くなっている。
【0034】
図1に示す電気回路遮断装置1は、ハウジング10と棒状発射体40の間において補強のための金属製のシリンダーを配置することができる。金属製シリンダーは、例えば特開2016−85947号公報の図1図2に示すものと同じシリンダーを使用することができる。
【0035】
次に、図1に示す電気回路遮断装置1を電気自動車の電気回路の一部に配置したときの動作を説明する。
図1に示す電気回路遮断装置1は、異常電流を検知するセンサーなどと組み合わせて、例えば電気回路に異常電流が流れたときに自動的に作動を開始するようにすることができるほか、人為的に作動するようにすることもできる。
【0036】
電気回路遮断装置1を電気回路に配置するときは、導体片50の第1接続部51の穴51aと第2接続部52の穴52aにおいて電気回路を構成するリードワイヤと接続する。
電気回路に異常が生じたときには、点火器20が作動して、点火部21から燃焼ガスを含む燃焼生成物が発生する。
点火部21は筒状空間13に面しているため、発生した燃焼生成物は筒状空間13内を直進して、発射体40のロッド部41に衝突する。
【0037】
燃焼生成物による圧力を受けた発射体40は、軸方向に移動して先端拡径部42により導体片50の切断部53を切断する。
その後、図1(b)に示すとおり、棒状発射体40と切断部53の切断片53aが絶縁空間60内を移動して、切断片53aは先端拡径部の先端面42aにより絶縁空間の第2開口部12側の端部面となるガス出口71に押しつけられた状態になって電気絶縁的に保持される(切断片53aの長さ>ガス出口71の内径)。なお、切断片53aは長方形、ガス出口71は円形であるから、切断片53aによりガス出口71が閉塞されることはない。
この動作により導体片50の両端にある第1接続部51と第2接続部52は電気的に不通状態となるため、装置1を配置した電気回路は遮断される。
さらにこのような動作過程において、ガスボンベ70の閉塞されたガス出口71は突起部45に破壊されて開口し、内部から高圧ガスが噴出される。このとき、棒状発射体40の先端拡径部42と絶縁空間60の間に存在する隙間(例えば、d1−D1から求められる隙間)を通ってガスが移動するため、アークが発生した場合でも直ちに消弧される。
従来、十分な消弧効果を得るためには、作動前の切断部53から絶縁空間60の第2開口部12側の端部面となるガス出口71までの距離(以下「消弧距離」という)を長くする必要があるが、本発明ではガスにより消弧することができるため、前記消弧距離を短くすることができ、それにより電流回路遮断装置1自体をより小さく、かつ軽量にすることができる。
【0038】
(2)図3の電気回路遮断装置
図3により本発明の電気回路遮断装置100の実施形態を説明する。
合成樹脂からなるハウジング(樹脂ハウジング)100内には、第1端部111側が開口され、第2端部112側が閉塞された筒状空間113が存在している。
ハウジング100は、組み立て作業を簡単にするため、必要に応じて厚さ方向または長さ方向に分割できるようになっていてもよい。
ハウジング100の筒状空間113内には第1端部111から軸方向反対側の第2端部112に向かって順に、点火器120、合成樹脂からなる棒状発射体140、電気回路の一部を形成させるための導体片150、ハウジングの第2端部112と導体片150の間に閉鎖された絶縁空間160が配置されている。
【0039】
第1端部111は組み立て前の段階では開口されており、前記開口部は点火器120が取り付けられることで閉塞されている。
点火器120と第1端部111の開口部の間には、使用時において電源とリードワイヤで接続されたコネクタ嵌め込み部115が形成されている。
点火器120は、点火部121と導電ピン123を有する点火器本体の一部が樹脂で包囲された樹脂部122を有しており、樹脂部122から点火部121が突き出されたものである。
【0040】
図3に示す棒状発射体140は、特開2016−85947号公報の図1図2(a)に示されているものを一部改変したものを使用することができる。
棒状発射体140は、ロッド部141と、ロッド部141の先に形成された先端拡径部142を有している。先端拡径部142の外径は、ロッド部141の外径よりも大きくなっている。
棒状発射体140は、先端拡径部142の先端面142a側にガス充填空間130を有している。ガス充填空間130は、棒状発射体140の先端拡径部142内に形成された閉鎖空間内にガスが充填された空間であり、ヘリウム、アルゴンなどの不活性ガス、窒素ガスなどが充填されている。
ガス充填空間130にガスを充填する方法は、予め形成されているガス充填孔を介してガスを充填した後、充填孔に差し込んだ樹脂製のピンと共に先端拡径部142を溶融させて閉塞する方法を適用することができる。
なお、ガス充填空間130に代えて、ガス充填空間130内に小型ガスボンベを配置することもできる。
棒状発射体140の先端拡径部142の外径(D1)と絶縁空間160の内径(d1)は、d1>D1の関係を有しており、d1−D1から求められるガスが通過できる間隙が存在している。
ロッド部141の幅方向の断面形状は円形であり、先端拡径部142の幅方向の断面形状は四角形(好ましくは正方形)または円形であるが、正方形がより好ましい。
なお、ロッド部141には、一部の外径が小さくなったくびれ部または環状溝部を形成して、ゴム(例えばシリコーンゴム)や合成樹脂からなるOリングを嵌め込むこともできる。
【0041】
導体片150は、装置100を電気回路に取り付けたとき、電気回路の一部を形成させるためのものである。
導体片150は、両端側の第1接続部151、第2接続部152と中間部分の切断部153からなる板片である。切断部153は、図2と同じ脆弱部を有している。
第1接続部151と第2接続部152は、電気回路において他の導体(例えば、リードワイヤ)と接続するためのものであり、切断部153は、作動時において切断されて電気回路を遮断できるようにするためのものである。
導体片150と棒状発射体140は、棒状発射体140の先端面142aが切断部153にハウジング軸方向に対向して当接されている。
【0042】
絶縁空間160は、棒状発射体140の先端面142aに対向する第2端部112側の閉塞面161に固定された突起部145を有している。
突起部145は樹脂製のものであり、先端が鋭利な形状の円柱形状または角柱形状のもの、先端が鋭利な形状の円柱形状または角柱形状のもので、縦方向にガス通路となる複数の溝を有しているもの、先端が鋭利な形状の円筒状または角筒状のもの、先端が鋭利な形状の円筒状または角筒状のもので、周壁面に厚さ方向に貫通したガス通路となる複数の貫通孔を有しているものを使用することができる。
【0043】
図3に示す電気回路遮断装置100は、図1に示す電気回路遮断装置1と同様にハウジング100と棒状発射体140の間において補強のためのシリンダーを配置することができる。シリンダーは、例えば特開2016−85947号公報の図1図2示すものと同じシリンダーを使用することができる。
【0044】
次に、図3に示す電気回路遮断装置100を電気自動車の電気回路の一部に配置したときの動作を説明する。
図3(a)に示す電気回路遮断装置100は、異常電流を検知するセンサーなどと組み合わせて、例えば電気回路に異常電流が流れたときに自動的に作動を開始するようにすることができるほか、人為的に作動するようにすることもできる。
【0045】
電気回路遮断装置100を電気回路に配置するときは、導体片150の第1接続部151の穴(図示せず)と第2接続部152の穴(図示せず)において電気回路を構成するリードワイヤと接続する。
電気回路に異常が生じたときには、点火器120が作動して、点火部121から燃焼ガスを含む燃焼生成物が発生する。
点火部121は、筒状空間113に面しているため、発生した燃焼生成物は筒状空間113内を直進して、発射体140のロッド部141に衝突する。
【0046】
燃焼生成物による圧力を受けた発射体140は、軸方向に移動して先端拡径部142により導体片150の切断部153を切断する。
その後、図3(b)に示すとおり、棒状発射体140と切断部153の切断片153aが絶縁空間160内を移動した後、絶縁空間160の閉塞面161に固定された突起部145に衝突する。衝突により突起部145は切断片153aに突き刺さって貫通した後、先端拡径部142にも突き刺さってガス充填空間130を開口するため、内部のガスが放出される。
切断片153aは先端拡径部の先端面142aにより絶縁空間の閉塞面161に押しつけられた状態になって電気絶縁的に保持される。
この動作により導体片150の両端にある第1接続部151と第2接続部152は電気的に不通状態となるため、装置100を配置した電気回路は遮断される。
さらにこのような動作過程において、ガス充填空間130は突起部145に破壊されて開口し、内部のガスが噴出される。このとき、棒状発射体140の先端拡径部142と絶縁空間160の間に存在する隙間(例えば、d1−D1から求められる隙間)を通ってガスが移動するため、アークが発生した場合でも直ちに消弧される。
従来、十分な消弧効果を得るためには、作動前の切断部153から絶縁空間160の第2開口部112側の端部面161までの距離(以下「消弧距離」という)を長くする必要があるが、本発明ではガスにより消弧することができるため、前記消弧距離を短くすることができ、それにより電流回路遮断装置1自体をより小さく、かつ軽量にすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明の電気回路遮断装置は、各種電気回路に配置することができ、特に自動車のバッテリー(例えば、リチウムイオンバッテリー)を含む電気回路用、電気自動車の電気回路用および家庭電化製品の電気回路用、発電所、太陽光発電装置、各種工場における分電盤、産業用リチウムイオン電池、産業用鉛蓄電池などの産業用電池を使用した定置型電池として適している。
【符号の説明】
【0048】
1、100 電気回路遮断装置
10、110 ハウジング
20、120 点火器
45、145 突起部
50、150 導体片
60、160 絶縁空間
70 ガスボンベ
130 ガス充填空間
図1
図2
図3