特許第6853158号(P6853158)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ コバレントマテリアル株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6853158-シリカ焼結体の製造方法 図000002
  • 特許6853158-シリカ焼結体の製造方法 図000003
  • 特許6853158-シリカ焼結体の製造方法 図000004
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6853158
(24)【登録日】2021年3月15日
(45)【発行日】2021年3月31日
(54)【発明の名称】シリカ焼結体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B28B 7/44 20060101AFI20210322BHJP
   B28B 1/14 20060101ALI20210322BHJP
【FI】
   B28B7/44
   B28B1/14 H
【請求項の数】1
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2017-207947(P2017-207947)
(22)【出願日】2017年10月27日
(65)【公開番号】特開2019-77143(P2019-77143A)
(43)【公開日】2019年5月23日
【審査請求日】2019年12月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】507182807
【氏名又は名称】クアーズテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101878
【弁理士】
【氏名又は名称】木下 茂
(74)【代理人】
【識別番号】100187506
【弁理士】
【氏名又は名称】澤田 優子
(72)【発明者】
【氏名】小林 弘明
(72)【発明者】
【氏名】横山 優
(72)【発明者】
【氏名】ヴァレプ ラメッシュ
【審査官】 田中 永一
(56)【参考文献】
【文献】 特表2017−507051(JP,A)
【文献】 特開昭62−142604(JP,A)
【文献】 実開昭58−190107(JP,U)
【文献】 特開2007−070201(JP,A)
【文献】 特開平10−225917(JP,A)
【文献】 特開2013−163623(JP,A)
【文献】 特開2001−213618(JP,A)
【文献】 特開2018−90440(JP,A)
【文献】 特開2018−168002(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B28B 7/44
B28B 1/00 − 1/54
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリカ粉原料に結合材および硬化性の添加剤を加えたスラリーを、成形型内でゲルキャスティング法により成形し、焼成するシリカ焼結体の製造方法であって、
前記スラリー中のシリカ粉原料として、真球度が0.9以上1以下のシリカ粉がシリカ粉原料全体の90%以上を占め、且つ前記シリカ粉の平均粒径が8μm以下のものを用い、前記結合材としてポリエチレンイミン、前記硬化性の添加剤として、エポキシ樹脂を用い、
前記成形型として、PP(ポリプロピレン)、PE(ポリエチレン)、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)、PMMA(ポリメタクリル酸メチル)、シリコーンゴムのいずれかの樹脂からなり、前記スラリーが充填される型部と、前記型部に連通する充填口及び吸引口とを有し、前記型部内は、前記充填口及び吸引口を介してのみ外気と連通したものを用い、
真空脱泡し、粘度を200mPa・s以上600mPa・s以下とした前記スラリーを形成した後、
前記吸引口から吸引し前記型部内を負圧にし、前記負圧となった型部内に、前記スラリーを充填、乾燥・固化し、脱型した成形体を形成し、
その後、真空雰囲気中で前記成形体を焼成することを特徴とするシリカ焼結体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリカ焼結体の製造方法に関し、複雑形状の、例えばネジ形状のようなシリカ焼結体を製造する際に、クラック等を発生させることなく、完全なシリカ焼結体を得ることのできるシリカ焼結体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
耐摩耗、耐薬品、絶縁性、耐熱性など、従来の金属や樹脂では耐えられない箇所に使えるものとしてセラミックス製のネジが注目されている。
セラミックスからなる被削材にネジ溝を形成する場合、焼結されたセラミックスは非常に硬く、切削による成形は困難である。特に、複雑な形状の成形体、例えば小型のネジを製造する際には、切削の際に薄い部位に応力が生じ、ネジの首下、螺子山、頭部の六角穴、十字穴等にクラックが発生しやすいという課題がある。
【0003】
そのため、特許文献1に開示されるように焼成前の成形体に予め切削加工によってネジ溝を形成しておき(一般にグリーン加工と呼ばれる)、その後、成形体を焼成するという方法が多く採用されている。
しかしながら、焼成前の成形体に切削加工を施したものは、寸法誤差が生じやすく、例えば複雑な形状を有するネジを製造する場合には、高精度なネジを得られないという欠点があった。
【0004】
前記のように切削加工によってネジなどの複雑な構造物を作成する場合には、欠陥を有する成形体が得られやすい。そのため、本願発明者らは、成形型にスラリーを流し込み、ゲルキャスティング法と呼ばれる手法でスラリーをゼリーのように固め成形体を得ることを前提に鋭意研究開発を行った。ゲルキャスティング法とは、スラリー中に溶解させたモノマーをラジカル重合させ、形成されるポリマーネットワークによりセラミックス粒子を固定、固化させ成形体を得る方法である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平6−147211号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前記ゲルキャスティング法により成形体を得る場合、前記のようにスラリーを成形型に流し込むことになる。しかしながら、ネジのような複雑形状の成形型にスラリーを流し込むと、型内においてスラリーが行き渡らない箇所が生じ、欠け状の欠陥、或いは気泡を含む欠陥が生じるといった問題があった。即ち、型内に空気(気泡)が残ることによって、完全な形状の成形体が得られないという課題があった。
前記課題を解決するために本願発明者らは鋭意研究を続けた結果、成形型において、スラリー充填口の他に、吸引口を設けてスラリーを流し込むことにより前記課題を解決できることを知見し本発明をするに至った。
【0007】
本発明は、前記事情の下になされたものであり、例えばネジ等の複雑な形状のセラミックス成形体を製造する際に、クラックを発生させることなく、完全な成形体を得ることのできるセラミックス成形体の製造方法を提供することを目的とする。
より具体的には、例えばネジ形状のようなシリカ焼結体を製造する際に、クラック等を発生させることなく、完全なシリカ焼結体を得ることのできるシリカ焼結体の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するためになされた本発明に係るシリカ焼結体の製造方法は、シリカ粉原料に結合材および硬化性の添加剤を加えたスラリーを、成形型内でゲルキャスティング法により成形し、焼成するシリカ焼結体の製造方法であって、前記スラリー中のシリカ粉原料として、真球度が0.9以上1以下のシリカ粉がシリカ粉原料全体の90%以上を占め、且つ前記シリカ粉の平均粒径が8μm以下のものを用い、前記結合材としてポリエチレンイミン、前記硬化性の添加剤として、エポキシ樹脂を用い、前記成形型として、PP(ポリプロピレン)、PE(ポリエチレン)、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)、PMMA(ポリメタクリル酸メチル)、シリコーンゴムのいずれかの樹脂からなり、前記スラリーが充填される型部と、前記型部に連通する充填口及び吸引口とを有し、前記型部内は、前記充填口及び吸引口を介してのみ外気と連通したものを用い、真空脱泡し、粘度を200mPa・s以上600mPa・s以下とした前記スラリーを形成した後、前記吸引口から吸引し前記型部内を負圧にし、前記負圧となった型部内に、前記スラリーを充填、乾燥・固化し、脱型した成形体を形成し、その後、真空雰囲気中で前記成形体を焼成することを特徴とする。
前記スラリーは、真球度が0.9以上1以下のシリカ粉がシリカ粉原料全体の90%以上を占め、且つ平均粒径が8μm以下のシリカ粉原料を用いて形成されている。
本発明において、真球度とは、ひとつのシリカ粉における最大直径に対する最小直径の比によって表され、真球度の値は、シリカ粉の電子顕微鏡写真において、ランダムに20個のシリカ粉を選んで、それぞれの最大直径と最小直径を測定して算定したものである。また、本発明において平均粒径は、BET法により測定する。
また、成形型は、スラリーを充填し、ゲルキャスティング法により成形体を得るための成形体の成形型であって、前記スラリーが充填される型部と、前記型部に連通する充填口及び吸引口とを有し、前記型部内は、前記充填口及び吸引口を介してのみ外気と連通する。
尚、前記型部内において、前記充填口は一端側に設けられ、前記吸引口は他端側に設けられていることが望ましい。また、前記型部は、少なくとも2つに分割されていることが望ましい。
このように構成された成形型によれば、充填口にスラリーを接続した状態で、吸引口から吸引して型部内を負圧にすることで、型部内に充填口からスラリーを充填することができる。これにより、型部内に気泡が残り難くなり、欠けのない成形品を得ることができる。また、切削によりネジ等の形状を形成するものではないため、クラックや変形の虞がなく、完全な形状のシリカ焼結体を得ることができる。
尚、充填口にスラリーを接続した状態とは、充填口を、スラリーを貯めた容器に漬けても良いし、ホースやパイプなどを接続し、スラリーを吸引できるようにしてもよい。また、充填は、吸引口からの吸引だけでなく充填口からもポンプの力や重力で加圧しながらスラリーを流しても良い。吸引と加圧は、同時に実施しても別々に実施しても良いが、成形型内の圧力が適切に制御されスラリーが隅々までいきわたるようにしなければならない。透明な樹脂製の成形型であれば、充填の様子を見ながら、その力加減を適宜調整することができる。
【0011】
このような方法によれば、型部内に気泡が残り難くなり、欠けのない成形品を得ることができる。また、切削によりネジ等の形状を形成するものではないため、クラックや変形の虞がなく、完全な形状のシリカ焼結体を得ることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、例えばネジ等の複雑な形状のセラミックス成形体を製造する際に、クラックを発生させることなく、完全な成形体を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、本発明に係るセラミックス成形体の成形型の平面図である。
図2図2は、本発明に係るセラミックス成形体の成形型の側面図である。
図3図3は、本発明に係るセラミックス成形体の成型型の応用例を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明に係るセラミックス成形体の成形型、及びその成形型を用いたセラミックス成形体の製造方法の実施の形態について図面に基づき説明する。図1は本発明に係るセラミックス成形体の成形型の一例を示す平面図であり、図2はその成形型の側面図である。また、図3は、量産に適した成形型の一例を示す平面図である。
【0015】
図示する成形型1は、例えばPP(ポリプロピレン)、PE(ポリエチレン)、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)、PMMA(ポリメタクリル酸メチル)、シリコーンゴムのいずれかの樹脂により形成され、ゲルキャスティング法により焼成前の成形体を得るために使用される。
【0016】
前記成形型1は、呼び径Dが例えばM1(1mm)〜M5(5mm)サイズ、首下長さLが30mm以下のネジを成形体とする型であって、ネジ軸方向に2分割されて構成される(下型2と上型3とする)ものに適する。これは、成形体を取り出す際に作業を容易にするためである。特に、前記したような樹脂材料により形成されているため、スラリーが硬化した成形体に対して離形性が良好であり、成形体を容易に脱型することができる。
【0017】
また、ゲルキャスティング法においては、ネジの呼び径DがM1以上の大きさであれば、ネジ山の形状を型から精度良く転写することができる。
また、ネジの呼び径DがM5以下であるのは、M10以上と大きい場合、焼成時の収縮率のバラツキが大きく、法公差の規格に合わない不良品となる虞が高い。
また、ネジの首下長さLが30mm以下であるのは、首下長さが30mmより長いと、焼成時の変形により真直度を満たすことが困難であるためである。
【0018】
図示するように下型2は、スラリーを充填するための径d1(例えば0.5mm)の小孔である充填口4と、充填口4から流入ゲート5を介してスラリーが流れ込む型部6Aとを有する。更に、前記型部6Aにおいてゲート5とは異なる位置に形成された流出ゲート7と、流出ゲート7から型外に連通する径d2(例えば0.5mm)の小孔である吸引口8とを有する。
また、上型3は、前記下型2の型部6Aに対応する型部6Bを有する。図示する例では、型部6A、6Bの形状は皿ネジを例に示しているが、本発明でネジを製造する場合には、その形状に限定されるものではなく、六角穴付きボルト、ナベネジ、トラスネジ、バインドネジ等様々な形状であってもよい。
【0019】
尚、前記のように下型2において、流出ゲート7からの吸引口8を設けるのは、吸引口8から吸引することにより型部6A、6B内を負圧とし、充填口4から流入ゲート5を介して型部6A、6B内の隅々まで材料であるスラリーを導入し、型部6A、6B内に気泡が残らない状態とするためである。
また、前記型部6Aにおける流入ゲート5と流出ゲート7の位置は、限定されるものではないが、型部6Aにおいて互いが最も離れる位置(先端と後端など)が望ましく、そのようにすることで型部6A、6B内におけるスラリーの滞留を無くすことができる。
【0020】
続いて、このように構成された成形型1を用いたセラミックス成形体の製造方法について説明する。
先ず、下型2に上型3を重ね合わせた状態の成形型1を形成し、載置台(図示せず)上において、充填口4を下方に向け、吸引口8を上方に向けて配置する。このとき、充填口4は、後述のスラリー中に浸した状態とする。そして、吸引口8に吸引ポンプ(図示せず)を接続し、所定の吸引力により吸引して型部6A、6B内の空間を負圧とする。
【0021】
型部6A、6B内が負圧になると、充填口4からスラリーが型部6A、6B内に導入される。前記成形型1に供給するスラリー状のセラミックスとしては、特に制限はないが、小さな部品であるネジを量産するため、流動性の良い球状の微粒子が得られるシリカ粉を用いることが好ましい。具体的には、真球度が0.9以上1以下のシリカ粉がシリカ粉原料全体の90%以上を占め、且つ平均粒径が8μm以下のシリカ粉原料を用いてスラリー状に調整したものを使用する。真球度が0.9未満だと、シリカ粉末の充填不良で空隙が発生し、クラックを生じたりや製品強度が低下したりする。平均粒径が8μmより大きいと、シリカ粉末間の空隙が大きいため、同様にクラックを生じたりや製品強度が低下したりする。
【0022】
スラリー状に調整するには、例えば、結合材としてポリエチレンイミンを1wt%添加し、イオン交換水を加え、ボールミルにより例えば50rpmで24時間攪拌する。攪拌後、さらに硬化性の添加剤としてエポキシ樹脂を3wt%添加し、混合するとともに真空脱泡する。
また、流し込み時の粘度としては、200mPa・s以上600mPa・s以下が好ましい。粘度が200mPaより小さい場合には、成形型が撥水性を持つため、スラリーが弾かれて充填不良が発生しやすい。また、粘度が800mPa・s以上の場合には、成形型1にスラリーを流し込む際に気泡を巻き込みやすくなり、得られる成形体に不良が発生しやすい。
【0023】
また、スラリーの充填の際、成形型2に振動を与えると、気泡が抜けやすくなるため好ましい。また、充填口4からのスラリーの導入速度を遅くすることで(具体的には流量20mm/s)、より確実に型部6A、6B内に気泡が残らない状態とすることができる。振動を与える手段としては、成形型1を載置する載置台(図示せず)に超音波振動子(図示せず)を取り付け、前記載置台が微振動するように構成すればよい。
【0024】
型部6A、6B内にスラリー料が充填されると、ゲルキャスティング法により成形品を固化させ、下型2から上型3を引き離す。そして成形品(図示せず)を型から取り外し、流入ゲート5及び流出ゲート7部分から余分な部位(バリ)をカットにより除去する。
【0025】
次いで、乾燥後、電気炉(図示せず)内に焼成前の成形品を配置し、所定雰囲気(大気、Heなどの希ガス雰囲気、窒素などの不活性ガス、真空など)内で例えば1400℃で焼成する。
このようにして、呼び径M1〜M5、首下長さ30mm以下のネジにおいて、クラックの発生しない完全な成形体が得られる。
【0026】
以上のように本発明に係る実施の形態によれば、成形型1に吸引口8と充填口4とを設け、吸引口8から吸引して型部6A,6B内を負圧にすることで、型部6A、6B内に充填口からスラリーを充填するものとした。
これにより、型部6A、6B内に気泡が残り難くなり、欠けのない成形品を得ることができる。また、切削によりネジ等の形状形成するものではないため、クラックや変形の虞がなく、完全な形状のセラミックス成形体を得ることができる。
【0027】
尚、前記実施の形態においては、成形型1内に1つのネジを形成する例を示したが、本発明にあっては、その構成に限定されるものではなく、図3のように成形型1内に複数の型部を設けた構成にも適用することができる。その場合、複数の型部は、小孔(ランナー)を繋げ、充填口4からスラリーが供給されるようにすればよい。また、その場合、充填口4は複数の型部のうち、一端の型部に接続し、吸引口8は複数の型部のうち、他端の型部に接続することが望ましい。そのようにすれば、複数の成形体を同時に形成することができる。
【0028】
また、前記実施の形態には示さなかったが、型部の形状によって、どうしてもスラリーが入り込まない箇所がある場合や、脱気できない箇所がある場合には、そこに充填口或いは吸引口を追加して設けてもよい。また、吸引口の代わりに、ガス溜まりを最後にピペットで吸引できるように開閉可能な小孔を設けてもよい。上記のように、ひとつの成型型に複数の型部を設けたり、気泡を残さずスラリーを均一に充填するために、流入ゲート5や流出ゲート7を複数に増やしても、成形型は樹脂製で形成されているため流路の分割や統合が容易であり、最終的に充填口4と吸引口8は、成形型につき各1ヶ所にまとめることができる。
【0029】
また、前記実施の形態においては、セラミックス成形体として、ネジを成形するものとして説明したが、本発明にあっては、その構成に限定されるものではない。
例えば、板状体、カップ形状、弾丸形状など、あらゆる形状の成形に適用することができる。
【実施例】
【0030】
続いて、本発明に係るセラミックス成形体の成形型、及びその成形型を用いたセラミックス成形体の製造方法について、実施例に基づきさらに説明する。本実施例では、前記実施の形態に示した成形型、及びセラミックス成形体の製造方法を実施し、その効果を検証した。
【0031】
(実施例1)
実施例1では、真球度0.97、平均粒径2μmの球状シリカ粉を原料として結合剤(ポリエチレンイミン(日本触媒製))を1wt%添加し、イオン交換水を加えてスラリー化してボールミルにて50rpmで24時間攪拌した。
攪拌後に、さらに添加剤としてエポキシ樹脂(ナガセケムテックス製)を3wt%添加し、混合するとともに真空脱泡した。
【0032】
また、成形型としては、シリコーン樹脂により呼び径M3、頭部に六角ネジ、ネジの首下20mmのネジ形状の型部を有する型と、シリコーン樹脂により頭部に2.5mmの六角穴を形成した型の2つを組み合わせて用いた。
この成形型にスラリーを鋳込み、乾燥後、型から脱型し、呼び径M3の六角穴付きネジの形状を有する成形体を得た。
そして、この成形体を真空雰囲気中1400℃で焼成することにより完全な形状を有するシリカ焼結体のネジを得た。
【0033】
(比較例1)
比較例1では、石英ガラス製のブロック体に対し、マシニングにより切削し、呼び径M3、ネジの首下が20mmの六角穴付きネジを加工した。
しかしながら、加工作業中において、ネジの首下にクラックが生じ、作業を停止した。
【0034】
以上の実施例の実験結果から、本発明に係るセラミックス成形体の成形型、及びその成形型を用いたセラミックス成形体の製造方法によれば、クラックが発生することなく、完全なセラミックス成形体を得ることができることを確認した。
【符号の説明】
【0035】
1 セラミックス成形体の成形型
2 下型
3 上型
4 充填口
5 流入ゲート
6A 型部
6B 型部
7 流出ゲート
8 吸引口
図1
図2
図3