(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6853164
(24)【登録日】2021年3月15日
(45)【発行日】2021年3月31日
(54)【発明の名称】貯湯式給湯機
(51)【国際特許分類】
F24H 9/02 20060101AFI20210322BHJP
F24H 9/16 20060101ALI20210322BHJP
F24H 9/00 20060101ALI20210322BHJP
F24H 1/18 20060101ALI20210322BHJP
【FI】
F24H9/02 301A
F24H9/16 D
F24H9/00 G
F24H1/18 A
【請求項の数】2
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2017-227465(P2017-227465)
(22)【出願日】2017年11月28日
(65)【公開番号】特開2019-95162(P2019-95162A)
(43)【公開日】2019年6月20日
【審査請求日】2020年4月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000538
【氏名又は名称】株式会社コロナ
(72)【発明者】
【氏名】谷地田 貴章
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 隆
(72)【発明者】
【氏名】木村 和人
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 大一郎
【審査官】
古川 峻弘
(56)【参考文献】
【文献】
特開平10−325616(JP,A)
【文献】
特開2002−310511(JP,A)
【文献】
実開昭59−096544(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24H 1/18,9/00−9/02,9/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
湯水を貯湯する貯湯タンクと、前記貯湯タンクの下部に接続された給水管と、前記貯湯タンクの上部に接続された出湯管と、前記貯湯タンク及び前記貯湯タンクと前記出湯管の接続箇所を覆う上部断熱材と、前記貯湯タンク及び前記上部断熱材を囲うケースユニットと、前記ケースユニットの底板には前記ケースユニットに貯まった水を外部に排出する排水口とを備えた貯湯式給湯機において、前記ケースユニットの底板には、前記給水管を収納可能な幅であると共に、前記ケースユニットの底板に貯まった水を前記排水口に誘導する排水誘導路の役割を行う溝部を設け、前記溝部に給水管が収納されるように配設したことを特徴とする貯湯式給湯機。
【請求項2】
前記上部断熱材は、前記貯湯タンク及び前記貯湯タンクと前記出湯管の接続箇所を覆う第一上部断熱材と、前記第一上部断熱材を上から覆う第二上部断熱材とで構成されたことを特徴とする請求項1記載の貯湯式給湯機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、貯湯式給湯機の貯湯効率の向上に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、加熱手段で加熱した熱量を有効に貯湯できているかの指標である貯湯効率を向上することがもとめられている。
図4に基づいて従来の貯湯式給湯機を説明すると、101は貯湯タンク、102は貯湯タンク内に水を給水する給水官、3は貯湯タンク101上部から湯を取り出す出湯管、104は加熱手段、105は貯湯タンク101と加熱手段104を循環可能に接続する循環回路、106は給水管2の途中で分岐する給水バイパス管、107は出湯管103を流れる湯水と給水バイパス管106を流れる市水を適宜の比率で混合して給湯設定温度あるいは風呂設定温度に調整する給湯ミキシング弁、108は貯湯タンク101の放熱を抑制するために側面を覆う側面断熱材、109はタンクジョブを覆って貯湯タンク101及び貯湯タンク101と出湯管103の接続部を覆う上部断熱材である。
【0003】
図5のように貯湯タンク101の周囲を側面断熱材108及び上部断熱材109で覆い放熱を抑制しているが、貯湯タンク101の頂部付近に接続された出湯管103は断熱材を貫通して配設されているため、上部断熱材109は比較的断熱材が薄くなる箇所があり、配管接続部分からの放熱してしまうという課題があった。
【0004】
そこで、特許文献1に開示されているように接続された配管接続部近郊の断熱性能を向上させるために、頂部断熱材を真空断熱材で覆うことで配管からの放熱を抑制しようとするものがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2011−149579号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1のように貯湯頂部断熱材を真空断熱材で覆っていたが、真空断熱材はコストが高く、安価な構成で更なる配管接続部近郊の断熱性能を向上させる課題がある。
【0007】
また、真空断熱材ではなく貯湯タンクを覆う断熱材の厚みを増やし配管接続部近郊を覆って断熱性能が向上するようにしてしまうと、その分ケースユニットのサイズが大きくなり、貯湯式給湯機の設置スペースが増大してしまう等の問題がある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は上記課題を解決するため、湯水を貯湯する貯湯タンクと、前記貯湯タンクの下部に接続された給水管と、前記貯湯タンクの上部に接続された出湯管と、前記貯湯タンク及び前記貯湯タンクと前記出湯管の接続箇所を覆う上部断熱材と、前記貯湯タンク及び前記上部断熱材を囲
うケースユニットと、前記ケースユニットの底板には前記ケースユニットに貯まった水を外部に排出する排水口とを備えた貯湯式給湯機において、前記ケースユニットの底板には、前記給水管を収納可能な幅であると共に、前記ケースユニットの底板に貯まった水を前記排水口に誘導する排水誘導路の役割を行う溝部を設け、前記溝部に給水管が収納されるように配設した。
【0009】
また、前記上部断熱材は、前記貯湯タンク及び前記貯湯タンクと前記出湯管の接続箇所を覆う第一上部断熱材と、前記第一上部断熱材を上から覆う第二上部断熱材とで構成された。
【発明の効果】
【0010】
このように請求項1の発明によれば、上部断熱材の厚さを厚くすることで、比較的断熱材が薄くなってしまう貯湯タンク及び貯湯タンクと出湯管との接続箇所の放熱を抑制することができ、厚くした分だけ貯湯タンクが下方に移動してしまうが、ケースユニットの底板に給水管を配設させることで、ケースユニットのサイズを変えることなく、断熱性能を向上させることができ、安価な構成で断熱性能を向上させることができる
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図4】この発明の実施形態の貯湯タンク上部の構成図
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の貯湯式給湯機の実施形態を
図1に基づいて説明する。
1は湯水を貯湯する貯湯タンク、2は貯湯タンク1の下部に接続された給水管、3は貯湯タンク1の上部に接続された出湯管、4は貯湯タンク1内の湯水を加熱する加熱手段、5は貯湯タンク1下部から加熱手段4に接続される加熱往き管、6は加熱手段4から貯湯タンク1上部に接続される加熱戻り管、7は給水管2に設けられ市水の給水圧を一定の圧力に減圧する減圧弁である。
【0013】
8は給水管2の途中で分岐する給水バイパス管、9は出湯管3を流れる湯水と給水バイパス管8を流れる市水を適宜の比率で混合して給湯設定温度あるいは風呂設定温度に調整する給湯混合弁、10は給湯混合弁9で混合された混合水が流通する給湯管、11は給湯管10からの混合水を給湯する給湯栓、12は出湯管3途中に貯湯タンク1内の圧力が所定値以上になったときに開弁し圧力を逃す開閉弁を兼ねたバネ式の圧力逃し弁であり、圧力を逃すと同時に排出された水を排水することもできる。また、13は圧力逃し弁12の先に接続されたドレンホース、14はドレンホース13から流れた水を外部に排出する排水口である。
【0014】
15は給湯動作と沸き上げ動作の運転制御を担う制御装置であり、制御装置15には沸き上げ運転時の加熱手段の制御をして沸き上げ運転を行わせる沸き上げ運転制御手段16が設けられている。
【0015】
次に、本発明の給湯装置の実施形態を
図2、
図3、
図4に基づいて説明する。
17は貯湯タンク1を収納するケースユニット、18はケースユニットを支える脚部、19は貯湯タンク1及び接続された配管を覆って外部への放熱を防止する成型断熱材であり、詳しくは、上部を覆う第一上部断熱材20、下部を覆う下部断熱材21、側面を左側面断熱材22と右側面断熱材23を向かい合わせで覆うことで、外部への放熱を防止している。また、24は第一上部断熱材20を更に上から覆う第二上部断熱材である。第一上部断熱材20と第二上部断熱材24で上部断熱材を構成している。
【0016】
また、出湯管3は、第一上部断熱材20を貫通し、給湯ミキシング弁9に導v通している。この出湯管3は配管断熱材25に覆われて配管からの放熱を抑制しており、この配管断熱材25の始まり位置は少なくとも第一上部断熱材20内であり、出湯管3が露出しないように断熱されている。
【0017】
そして、第二上部断熱材を設けたことで、その厚さ分だけ貯湯タンク1は下方に移動する。このとき、貯湯タンク1と給水管2が接続する貯湯タンク1の下部に位置するケースユニット17の底板には、給水管2を収納可能な幅であると共に、排水口14に水を誘導する排水誘導路となる溝部26をケースユニット17の下部に設ける。
【0018】
また、この溝部26の深さは、貯湯タンク1に用いられる成型断熱材19もしくは第二上部断熱材24の厚さ程度になるようにするものであり、本発明の実施形態の溝部26の深さは第二上部断熱材24の厚さと同じ長さである。
【0019】
次に貯湯式給湯機の沸き上げ動作について説明する。
沸き上げ要求が発生すると沸き上げ運転制御手段16は、加熱循環ポンプを駆動すると共に、加熱手段4を駆動して、貯湯タンク1の下部から加熱往き管5を介して取り出した貯湯タンク1下部の低温の湯水を加熱手段4で加熱する。そして、予め決められた沸き上げ温度になるよう加熱手段4で加熱された湯水が加熱戻り管6を介して貯湯タンク1の上部から積層状に貯湯し、貯湯タンク1内の上部に高温層、下部に低温層の温度成層を成して沸き上げ運転が行われる。
【0020】
次に貯湯式給湯機の給湯動作について説明する。
給湯栓11が開かれて給湯がされると、給湯管10側の圧力が低下して給水管2からの給水が貯湯タンク1下部から供給され、貯湯タンク1上部の高温層の湯水が出湯管3に押し出される。その一方、給水管2からの給水は給水バイパス管8を介して給湯混合弁9で出湯管3からの湯水と混合されて、給湯管10を介して給湯栓11へ給湯されるものである。
【0021】
次に本発明の実施形態について
図2、
図3、
図4を用いて詳しく説明する。
第二上部断熱材24は、第一上部断熱材20を覆うようにして、第一上部断熱材20が比較的薄くなってしまう出湯管3との接続箇所の放熱を抑制している。
【0022】
このとき、第一上部断熱材20を更に上から覆う第二上部断熱材24を設けたことで、第二上部断熱材24の厚さ分だけ貯湯タンク1は下方へ配置される。
【0023】
このように、第一上部断熱材20を貫通するように出湯管3が貯湯タンク1に接続するため比較的断熱材が薄くなってしまうが、さらに上から覆う第二上部断熱材24を設ける事で、断熱性能を高め、貯湯タンク1の上部及び出湯管3との接続箇所からの放熱を抑制することができる。
【0024】
また、貯湯タンク1を下方へ配置したことで、重心が下に移動する。このように、重心が下にいくことで、地震等の揺れを抑制し、耐震性を向上させることができる。
【0025】
また、本発明の実施形態では、第二上部断熱材24の厚さ分だけ貯湯タンク1は下方へ配置されるので、ケースユニット17の底板に設けた溝部26に給水管2が通るように、給水管2が貯湯タンク1を回り込むように給水管2を配設する。
【0026】
このように、ケースユニット17の底板に設けた溝部26に給水管2が収納されるように配設することで、第二上部断熱材24を追加したことによるケースユニット17の増大を軽減することができる。
【0027】
また、ケースユニット17の底板に溝部26を設けることで、ケースユニット17内で発生したドレン水がケースユニット17の底板に落下すると、排水誘導路の役割を持つ溝部26は、排水口14にドレン水を誘導し、確実には排水することができる。
【0028】
したがって、第一上部断熱材20を覆う第二上部断熱材24を設けたことで、比較的断熱材が薄くなってしまう貯湯タンク1及び貯湯タンク1と出湯管3との接続箇所の放熱を抑制することができる。また、第二上部断熱材24を設けたことで貯湯タンク1が下方に移動しているが、ケースユニット17の底板に給水管2が収納することができる溝部26を設けたことで、第二上部断熱材24を設けたことによりケースユニット17が増大してしまうのを防止することができ、ケースユニット17のサイズは従来のままで、安価な構成で断熱性能を向上させることができる。
【0029】
ここで、溝部26に収納した給水管2はケースユニット17から少し凸の状態になり、外気の影響を受けてしまうが、外部から給水する給水管2の断熱は必要がないので問題ない。
【0030】
また、この溝部26は排出口14にドレン水を導く排出誘導路の役割をはたすので、ケースユニット17の底板に貯まったドレン水は速やかに外部に排水することができ、ドレン水が貯まってしまうことによる腐食の防止をすることができる。
【0031】
なお、本発明は実施形態に限定されるものではなく、要旨を変更しない範囲で改変することを妨げるものではなく、例えば、第一上部断熱材20と第二上部断熱材24を重ねることで、比較的薄い配管接続部の放熱を抑制させているが、第一上部断熱材20の厚みを少なくとも第一上部断熱材20と第二上部断熱材24を重ね合わせた厚みと同等にした一体形成の上部断熱材20でも配管接続部の放熱を抑制させることができる。
【0032】
また、本発明の実施形態では、ケースユニット17の底板に設けた溝部26に給水管2を収納しているが、貯湯タンク1の下部に接続される配管であれば溝部26を設けて収納しても良いものである。例えば、貯湯タンク1下部から加熱手段4に接続される加熱往き管5を収納する溝部を設けても良い。
【0033】
また、本発明の実施形態では加熱手段4をヒートポンプとし、貯湯タンク1内の水を沸き上げていたが、燃焼式や電熱ヒータを用いた加熱手段4でも同等の効果が得ることができる。
【符号の説明】
【0034】
1 貯湯タンク
2 給水管
3 出湯管
13 ドレンホース
14 排出口
17 ケースユニット
20 第一上部断熱材
21 下部断熱材
22 左側面断熱材
23 右側面断熱材
24 第二上部断熱材
25 配管断熱材
26 溝部