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特許6853199移動対象物の通過を検出するセンサ装置、方法、システム及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6853199
(24)【登録日】2021年3月15日
(45)【発行日】2021年3月31日
(54)【発明の名称】移動対象物の通過を検出するセンサ装置、方法、システム及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   G01V 8/12 20060101AFI20210322BHJP
   G01S 17/08 20060101ALI20210322BHJP
【FI】
   G01V8/12 A
   G01S17/08
【請求項の数】10
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2018-457(P2018-457)
(22)【出願日】2018年1月5日
(65)【公開番号】特開2019-120583(P2019-120583A)
(43)【公開日】2019年7月22日
【審査請求日】2019年12月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】000208891
【氏名又は名称】KDDI株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100135068
【弁理士】
【氏名又は名称】早原 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】南 雄也
(72)【発明者】
【氏名】宇都宮 栄二
【審査官】 藤原 伸二
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許第5321490(US,A)
【文献】 特開2000−011293(JP,A)
【文献】 特表2016−506500(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01V 8/12−8/26
G01S 15/00−15/62
G01S 17/00−17/58
JSTPlus/JST7580(JDreamIII)
Google
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
時間間隔tmで連続的に照射波光を送信しその反射波光を受信するセンサデバイスを有するセンサ装置であって、
ンサデバイスの測定可能幅wの中で、照射波光の複数回の送信に対して各反射波光を受信できるように、移動対象物の想定速度vと時間間隔tmとを乗算した進行距離(v・tm)に対する、当該測定可能幅wの割合(w/(v・tm))の逆正弦関数の角度よりも小さくなる照射角θ(<sin-1(w/(v・tm)))を決定する照射角決定手段と、
移動対象物の進行方向に対する通過路の側辺から、前記センサデバイスの照射波光の向きを、前記照射角θに制御する照射角制御手段と
を有することを特徴とするセンサ装置。
【請求項2】
前記照射角決定手段は、時間間隔tmの照射回数n回(n≧2)によって前記移動対象物の通過を検出する場合、前記進行距離(v・tm)にn−1を更に乗算した照射角θ(<sin-1(w/((n−1)・v・tm)))を決定する
ことを特徴とする請求項に記載のセンサ装置。
【請求項3】
前記センサデバイスは、反射波光に基づいて距離を測定可能であり、
移動対象物が通過していない場合に測定した定常距離L0を予め記憶する定常距離記憶手段と、
前記センサデバイスによって測定された距離の中で、定常距離L0でない距離のみを測定距離Lとして出力する測定距離出力手段と
を更に有することを特徴とする請求項1又は2に記載のセンサ装置。
【請求項4】
前記測定距離出力手段によって時系列の順に測定距離が出力された際に、
時刻tの測定距離Lt
時刻t+nの測定距離Lt+n
時刻t+2nの測定距離Lt+2n
(測定距離Lt+測定距離Lt+n) /2=平均距離At
(測定距離Lt+n+測定距離Lt+2n)/2=平均距離At+n
平均距離At−平均距離At+n=負:センサデバイスからの遠ざかり
平均距離At−平均距離At+n=正:センサデバイスへの近づき
のようにセンサデバイスとの遠近移動を判定する遠近移動判定手段と、
移動対象物の進行の向きに対してセンサデバイスからの遠ざかりが判定された場合に、前記平均距離の移動差が所定距離閾値以上となった際に移動通過を検出し、移動対象物の進行の逆向きに対してセンサデバイスへの近づきが判定された場合に、前記平均距離の移動差が所定距離閾値以上となった際に移動通過を検出する移動通過検出手段と
を更に有することを特徴とする請求項に記載のセンサ装置。
【請求項5】
前記移動通過検出手段によって前記移動通過が検出された移動通過回数を計数する移動通過回数計数手段と、
前記移動通過回数を、ネットワークを介してサーバへ送信する移動通過回数送信手段と
を更に有することを特徴とする請求項に記載のセンサ装置。
【請求項6】
前記遠近移動判定手段は、前記測定距離出力手段から照射回数m回で連続して前記測定距離が出力されなかった際に、m回の各時刻の測定距離のデータを初期化する
ことを特徴とする請求項又はに記載のセンサ装置。
【請求項7】
前記センサデバイスは、距離センサであって、赤外線センサ、超音波センサ、又は、デプス(深度)カメラであることを特徴とする請求項1からのいずれか1項に記載のセンサ装置。
【請求項8】
時間間隔tmで連続的に照射波光を送信しその反射波光を受信するセンサデバイスを有するセンサ装置における移動対象物の移動通過検出方法であって、
前記センサ装置は、
センサデバイスの測定可能幅wの中で、照射波光の複数回の送信に対して各反射波光を受信できるように、移動対象物の想定速度vと時間間隔tmとを乗算した進行距離(v・tm)に対する、当該測定可能幅wの割合(w/(v・tm))の逆正弦関数の角度よりも小さくなる照射角θ(<sin-1(w/(v・tm)))を決定する第1のステップと、
移動対象物の進行方向に対する通過路の側辺から、前記センサデバイスの照射波光の向きを、前記照射角θに制御する第2のステップと
を実行することを特徴とするセンサ装置における移動対象物の移動通過検出方法。
【請求項9】
時間間隔tmで連続的に照射波光を送信しその反射波光を受信するセンサデバイスを、通過路の側辺に配置したシステムであって、
ンサデバイスの測定可能幅wの中で、照射波光の複数回の送信に対して各反射波光を受信できるように、移動対象物の想定速度vと時間間隔tmとを乗算した進行距離(v・tm)に対する、当該測定可能幅wの割合(w/(v・tm))の逆正弦関数の角度よりも小さくなる照射角θ(<sin-1(w/(v・tm)))で、移動対象物の進行方向に対する通過路の側辺から、照射波光を照射するように当該センサデバイスを配置することを特徴とするシステム。
【請求項10】
時間間隔tmで連続的に照射波光を送信しその反射波光を受信するセンサデバイスについて、移動対象物の進行方向に対する通過路の側辺から、前記センサデバイスの照射波光の照射角θを決定するプログラムであって、
ンサデバイスの測定可能幅wの中で、照射波光の複数回の送信に対して各反射波光を受信できるように、移動対象物の想定速度vと時間間隔tmとを乗算した進行距離(v・tm)に対する、当該測定可能幅wの割合(w/(v・tm))の逆正弦関数の角度よりも小さくなる照射角θ(<sin-1(w/(v・tm)))を決定する
ようにコンピュータを機能させることを特徴とするプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動対象物の通過を検出するセンサの技術に関する。
【背景技術】
【0002】
図1は、従来技術における移動対象物の通過を検出するシステム構成図である。
【0003】
従来、図1のように、複数の超音波センサを用いて、所定領域を通過する人数を計数する技術がある(例えば特許文献1参照)。この技術によれば、通路上方に設置された複数の超音波センサが、少なくとも2列以上で通路下方へ超音波を送信し、その反射波を受信する。このとき、各センサは、超音波の送信後その反射波を受信するまでの時間を測定し、当該センサと人(移動対象物)との間の距離を測定する。
また、測定した距離の時系列変化から、移動対象物が、例えば人のような被計数物か否かも判定する。被計数物と認定した場合に、近接する複数のセンサの検知状況から、累積的な移動通過回数を1増分する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第2963236号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前述した従来技術によれば、人が移動する通路上方に、複数のセンサを設置する必要があり、比較的大きい規模の設置スペースを必要とする。また、複数のセンサを設置するためには、電力の確保も必要となり、例えば登山道などの屋外で利用する場合、インフラ設備を整備する必要もある。
【0006】
そこで、本発明は、1個のセンサ装置のみで、且つ、通路の側辺から移動対象物の通過を検出することができるセンサ装置、方法、システム及びプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によれば、時間間隔tmで連続的に照射波光を送信しその反射波光を受信するセンサデバイスを有するセンサ装置であって、
ンサデバイスの測定可能幅wの中で、照射波光の複数回の送信に対して各反射波光を受信できるように、移動対象物の想定速度vと時間間隔tmとを乗算した進行距離(v・tm)に対する、当該測定可能幅wの割合(w/(v・tm))の逆正弦関数の角度よりも小さくなる照射角θ(<sin-1(w/(v・tm)))を決定する照射角決定手段と、
移動対象物の進行方向に対する通過路の側辺から、センサデバイスの照射波光の向きを、照射角θに制御する照射角制御手段と
を有することを特徴とする。
【0009】
本発明のセンサ装置における他の実施形態によれば、
照射角決定手段は、時間間隔tmの照射回数n回(n≧2)によって移動対象物の通過を検出する場合、進行距離(v・tm)にn−1を更に乗算した照射角θ(<sin-1(w/((n−1)・v・tm)))を決定することも好ましい。
【0010】
本発明のセンサ装置における他の実施形態によれば、
センサデバイスは、反射波光に基づいて距離を測定可能であり、
移動対象物が通過していない場合に測定した定常距離L0を予め記憶する定常距離記憶手段と、
センサデバイスによって測定された距離の中で、定常距離L0でない距離のみを測定距離Lとして出力する測定距離出力手段と
を更に有することも好ましい。
【0011】
本発明のセンサ装置における他の実施形態によれば、
測定距離出力手段によって時系列の順に測定距離が出力された際に、
時刻tの測定距離Lt
時刻t+nの測定距離Lt+n
時刻t+2nの測定距離Lt+2n
(測定距離Lt+測定距離Lt+n) /2=平均距離At
(測定距離Lt+n+測定距離Lt+2n)/2=平均距離At+n
平均距離At−平均距離At+n=負:センサデバイスからの遠ざかり
平均距離At−平均距離At+n=正:センサデバイスへの近づき
のようにセンサデバイスとの遠近移動を判定する遠近移動判定手段と、
移動対象物の進行の向きに対してセンサデバイスからの遠ざかりが判定された場合に、平均距離の移動差が所定距離閾値以上となった際に移動通過を検出し、移動対象物の進行の逆向きに対してセンサデバイスへの近づきが判定された場合に、平均距離の移動差が所定距離閾値以上となった際に移動通過を検出する移動通過検出手段と
を更に有することも好ましい。
【0012】
本発明のセンサ装置における他の実施形態によれば、
移動通過検出手段によって移動通過が検出された移動通過回数を計数する移動通過回数計数手段と、
移動通過回数を、ネットワークを介してサーバへ送信する移動通過回数送信手段と
を更に有することも好ましい。
【0013】
本発明のセンサ装置における他の実施形態によれば、
遠近移動判定手段は、測定距離出力手段から照射回数m回で連続して測定距離が出力されなかった際に、m回の各時刻の測定距離のデータを初期化する
ことも好ましい。
【0014】
本発明のセンサ装置における他の実施形態によれば、
センサデバイスは、距離センサであって、赤外線センサ、超音波センサ、又は、デプス(深度)カメラであることも好ましい。
【0015】
本発明によれば、時間間隔tmで連続的に照射波光を送信しその反射波光を受信するセンサデバイスを有するセンサ装置における移動対象物の移動通過検出方法であって、
センサ装置は、
センサデバイスの測定可能幅wの中で、照射波光の複数回の送信に対して各反射波光を受信できるように、移動対象物の想定速度vと時間間隔tmとを乗算した進行距離(v・tm)に対する、当該測定可能幅wの割合(w/(v・tm))の逆正弦関数の角度よりも小さくなる照射角θ(<sin-1(w/(v・tm)))を決定する第1のステップと、
移動対象物の進行方向に対する通過路の側辺から、センサデバイスの照射波光の向きを、照射角θに制御する第2のステップと
を実行することを特徴とする。
【0016】
本発明によれば、時間間隔tmで連続的に照射波光を送信しその反射波光を受信するセンサデバイスを、通過路の側辺に配置したシステムであって、
ンサデバイスの測定可能幅wの中で、照射波光の複数回の送信に対して各反射波光を受信できるように、移動対象物の想定速度vと時間間隔tmとを乗算した進行距離(v・tm)に対する、当該測定可能幅wの割合(w/(v・tm))の逆正弦関数の角度よりも小さくなる照射角θ(<sin-1(w/(v・tm)))で、移動対象物の進行方向に対する通過路の側辺から、照射波光を照射するように当該センサデバイスを配置することを特徴とする。
【0017】
本発明によれば、時間間隔tmで連続的に照射波光を送信しその反射波光を受信するセンサデバイスについて、移動対象物の進行方向に対する通過路の側辺から、センサデバイスの照射波光の照射角θを決定するプログラムであって、
ンサデバイスの測定可能幅wの中で、照射波光の複数回の送信に対して各反射波光を受信できるように、移動対象物の想定速度vと時間間隔tmとを乗算した進行距離(v・tm)に対する、当該測定可能幅wの割合(w/(v・tm))の逆正弦関数の角度よりも小さくなる照射角θ(<sin-1(w/(v・tm)))を決定する
ようにコンピュータを機能させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明のセンサ装置、方法、システム及びプログラムによれば、1個のセンサ装置のみで、且つ、通路の側辺から移動対象物の通過を検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】従来技術における移動対象物の通過を検出するシステム構成図である。
図2】本発明におけるセンサ装置の機能構成図である。
図3】本発明におけるセンサ装置の第1の配置方法を表す説明図である。
図4】本発明におけるセンサ装置の第2の配置方法を表す説明図である。
図5】移動通過と検出しない具体例の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて詳細に説明する。
【0021】
図2は、本発明におけるセンサ装置の機能構成図である。
【0022】
図2によれば、センサ装置1は、基本的に、センサデバイス10と、照射角決定部11と、照射角制御部12とを有する。また、オプション的に、定常距離記憶部13と、測定距離出力部14と、遠近移動判定部15と、移動通過検出部16と、移動通過回数計数部17と、移動通過回数送信部18とを有する。これら機能構成部は、センサ装置に搭載されたコンピュータを機能させるプログラムを実行することによって実現される。また、これら機能構成部は、全体的なシステムとしても理解できると共に、それら処理の流れは、移動通過検出方法として理解できる。
【0023】
[センサデバイス10]
センサデバイス10は、時間間隔tmで連続的に照射波光を送信しその反射波光を受信する。このとき、センサデバイス10は、反射波光に基づく「距離」を測定可能なものである。測定された距離は、照射角決定部11へ出力される。
【0024】
センサデバイス10は、距離センサであって、例えば赤外線センサ、超音波センサ、又は、デプス(深度)カメラであってもよい。
赤外線センサ:赤外光を発光し、その反射光を受光する
超音波センサ:超音波を送信し、その反射波を受信する
デプスカメラ:赤外光を発光し、その反射光から奥行き画像を取得する
尚、「照射波光」「反射波光」とは、これら距離センサ全てについて、送受信する超音波/赤外線/レーザ光を総称した意味である。
【0025】
但し、赤外線センサや超音波センサは、周辺環境から反射波光に対する影響を受けやすい。また、デプスカメラは、正確に深度を計測するために高コストとなる。いずれのセンサを選択するかは、通路の周辺環境に基づく。
【0026】
[照射角決定部11]
照射角決定部11は、想定される移動速度vの移動対象物に対して、センサデバイス10の測定可能幅wの中で、照射波光の複数回の送信に対して各反射波光を受信することができる「照射角θ」を決定する。
決定された照射角θは、照射角制御部12へ出力される。
【0027】
図3は、本発明におけるセンサ装置の第1の配置方法を表す説明図である。
図3(a)は、移動対象物の移動方向を平行とし、移動向きを角度0°とした照射角θに向けて配置されたセンサデバイスを表す。
図3(b)は、センサデバイスの測定距離が時系列に長くなるほど、センサ装置1から見て移動対象物が遠ざかる方向へ移動していることを表す。
図3(c)は、図3(b)に基づく移動通過の判定を表す。
【0028】
図4は、本発明におけるセンサ装置の第2の配置方法を表す説明図である。
図4(a)は、移動対象物の移動方向を平行とし、移動逆向きを角度0°とした照射角θに向けて配置されたセンサデバイスを表す。
図4(b)は、センサデバイスの測定距離が時系列に長くなるほど、センサ装置1から見て移動対象物が近づく方向へ移動していることを表す。
図4(c)は、図4(b)に基づく移動通過の判定を表す。
【0029】
照射角決定部11は、移動対象物の想定速度vと時間間隔tmとを乗算した進行距離(v・tm)に対する、当該センサデバイス10の測定可能幅wの割合(w/(v・tm))の逆正弦関数の角度よりも小さくなるように、照射角θを決定する。
θ < sin-1(w/(v・tm))
w:センサデバイス10の測定可能幅
tm:センサがpingを送信可能な最小単位時間間隔
v:移動対象物の想定速度
w及びtmは、センサデバイスの技術仕様に基づく。
【0030】
図3(a)及び図4(a)によれば、以下のように表現される。
sinθ = w/w'
w' = w/sinθ=v・tm
w' > v・tm
w' > w/sinθ=v・tm
sinθ < (w/(v・tm)) (0°<θ<90°)
尚、最大距離Lmaxと通路幅hとの関係は、以下の式で表現される。
sinθ = h/Lmax
h = Lmax・sinθ
h < Lmax・sinθ (0°<θ<90°)
【0031】
他の実施形態として、センサデバイス10は、1つの移動対象物に対して、照射回数n(n≧2)回を照射可能とし、それによって過去n回の距離に基づいて照射角θを決定することも好ましい。
照射角決定部11は、時間間隔tmの照射回数n回(n≧2)によって移動対象物の通過を検出する場合、進行距離(v・tm)にn−1を更に乗算する。
θ < sin-1(w/((n−1)・v・tm))
n:照射回数
【0032】
図3(a)及び図4(a)によれば、以下のように表現される。
w' > (n−1)・v・tm
w' > w/sinθ=(n−1)・v・tm
sinθ < (w/((n−1)・v・tm)) (0°<θ<90°)
【0033】
前述した式に、具体的な数値を当てはめて説明する。
センサデバイスの測定可能幅:w=0.2m
センサがpingを送信可能な最小単位時間間隔:tm=0.15秒
移動対象物の想定速度:v=0.8m/秒
(人における平地の一般的な歩行速度1.3m/秒から悪路を考慮)
照射回数:n=3回
sinθ < (w/((n−1)・v・tm))
sinθ < (0.2/((2)・0.8・0.15))
sinθ < 0.83
θ < sin-1 0.83
θ < 56°
この場合、センサ装置1のセンサデバイス10は、移動対象物の進行方向に対する通過路の側辺から、センサデバイス10の照射波光の向きを、照射角56°に制御する。
【0034】
[照射角制御部12]
照射角制御部12は、移動対象物の進行方向に対する通過路の側辺から、センサデバイス10の照射波光の向きを、照射角θに制御する。
センサ装置1から見て移動対象物が遠ざかる方向へ移動している場合は、センサデバイス10は、図3のような照射角θに制御され、逆に、近づく方向へ移動している場合は、センサデバイス10は、図4のような照射角θに制御される。
【0035】
[定常距離記憶部13]
定常距離記憶部13は、移動対象物が通過していない場合に測定した定常距離L0を予め記憶する。この定常距離L0は、測定距離出力部14から参照される。
定常距離は、例えばセンサデバイス10から通路の反対側壁までの距離や、通路側壁がない場合におけるセンサデバイス10の測定可能な限界距離となる。
センサデバイス10が、定常距離を測定したということは、照射波光が移動対象物に当たらなかったことを意味する。
【0036】
[測定距離出力部14]
測定距離出力部14は、センサデバイス10によって測定された距離の中で、定常距離L0でない距離のみを測定距離Lとして出力する。
測定距離出力部14は、センサデバイスの測定可能幅wの中で、時系列に測定距離を順に出力する。
時刻tの測定距離Lt
時刻t+nの測定距離Lt+n
時刻t+2nの測定距離Lt+2n
・・・・・
測定距離Lは、遠近移動判定部15へ出力される。
【0037】
[遠近移動判定部15]
遠近移動判定部15は、以下のようにセンサデバイス10との遠近移動を判定する。
(測定距離Lt+測定距離Lt+n) /2=平均距離At
(測定距離Lt+n+測定距離Lt+2n)/2=平均距離At+n
平均距離At−平均距離At+n=負:センサデバイスからの遠ざかり
平均距離At−平均距離At+n=正:センサデバイスへの近づき
【0038】
図3(b)(c)によれば、照射角θは、移動対象物に対して時系列に3回分の距離が測定されている。
時刻t :160cm
時刻t+n :182cm
時刻t+2n:202cm
このとき、隣り合う時刻における平均距離を算出する。
時刻tとt+nとの平均距離 :xt=171cm
時刻t+nとt+2nとの平均距離:xt+n=192cm
そして、後時刻の平均距離と先時刻の平均距離との差を算出する。
xt+n−xt = 192cm−171cm = +21cm
ここで、平均距離の差が「+」であるので、センサ装置1から見て移動対象物が遠ざかる方向へ移動していることを意味する。
【0039】
図4(b)(c)でも、照射角θは、移動対象物に対して時系列に3回分の距離が測定されている。
時刻t :202cm
時刻t+n :182cm
時刻t+2n:160cm
このとき、隣り合う時刻における平均距離を算出する。
時刻tとt+nとの平均距離 :xt=192cm
時刻t+nとt+2nとの平均距離:xt+n=171cm
そして、後時刻の平均距離と先時刻の平均距離との差を算出する。
xt+n−xt = 171cm−192cm = −21cm
ここで、平均距離の差が「−」であるので、センサ装置1から見て移動対象物が近づく方向へ移動していることを意味する。
【0040】
また、遠近移動判定部15は、測定距離出力部14から照射回数m回で連続して測定距離が出力されなかった際に、m回の各時刻の測定距離のデータを初期化する。これによって、遠近移動判定部15は、m回の測定距離の中でのみ、遠近移動を判定することができる。
【0041】
[移動通過検出部16]
移動通過検出部16は、以下の場合に移動通過を検出する。
図3(b)のように、移動対象物の進行の向きに対してセンサデバイスからの遠ざかりが判定された場合に、平均距離の移動差が所定距離閾値以上となった際に移動通過を検出する。
図4(b)のように、移動対象物の進行の逆向きに対してセンサデバイスへの近づきが判定された場合に、平均距離の移動差が所定距離閾値以上となった際に移動通過を検出する。
図3(c)及び図4(c)について、平均距離の差が、所定閾値(例えば20cm)以上となる場合、移動対象物の移動通過が完了したと判定する。
【0042】
図5は、移動通過と検出しない具体例の説明図である。
【0043】
例えば1つの移動対象物に対してn回の照射回数を想定している場合、m回で連続して測定距離が出力されないならば、測定距離のデータをリセットする。
図5によれば、定常距離が500cmと記憶されているために、m回連続して定常距離500cm以上が測定されたならば、データを初期化する。
m回は、オペレーションによって、n回との関係によって設定することができる。m<nであってもよいし、m=n、m>nであってもよい。
【0044】
[移動通過回数計数部17]
移動通過回数計数部17は、移動通過検出部16によって移動通過が検出された移動通過回数を計数する。これは、通路の通行人数として計数することができる。
【0045】
[移動通過回数送信部18]
移動通過回数送信部18は、移動通過回数を、ネットワークを介してサーバ2へ送信する。
例えば登山道などの通行人数を管理する場合であっても、センサ装置1をその登山道に設置するだけで、携帯電話網のようなネットワークを介して、サーバ2で管理することができる。
【0046】
以上、詳細に説明したように、本発明のセンサ装置、方法、システム及びプログラムによれば、1個のセンサ装置のみで、且つ、通路の側辺から移動対象物の通過を検出することができる。
本発明によれば、人が移動する通路上方に複数のセンサを設置する必要もなく、1つのセンサ装置の照射角θを決定するだけであり、極めて安価に設置することができる。また、1つのセンサしか設置しないために、センサ装置に搭載するバッテリのみで、他の電力の確保も必要ない。即ち、例えば登山道などの屋外で利用する場合であっても、インフラ設備を整備する必要もない。
【0047】
前述した本発明の種々の実施形態について、本発明の技術思想及び見地の範囲の種々の変更、修正及び省略は、当業者によれば容易に行うことができる。前述の説明はあくまで例であって、何ら制約しようとするものではない。本発明は、特許請求の範囲及びその均等物として限定するものにのみ制約される。
【符号の説明】
【0048】
1 センサ装置
10 センサデバイス
11 照射角決定部
12 照射角制御部
13 定常距離記憶部
14 測定距離出力部
15 遠近移動判定部
16 移動通過検出部
17 移動通過回数計数部
18 移動通過回数送信部
2 サーバ
図1
図2
図3
図4
図5