特許第6853224号(P6853224)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6853224
(24)【登録日】2021年3月15日
(45)【発行日】2021年3月31日
(54)【発明の名称】運搬用台車
(51)【国際特許分類】
   B62B 3/02 20060101AFI20210322BHJP
   B62B 5/00 20060101ALI20210322BHJP
【FI】
   B62B3/02 H
   B62B5/00 J
【請求項の数】3
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2018-153489(P2018-153489)
(22)【出願日】2018年8月17日
(65)【公開番号】特開2020-26251(P2020-26251A)
(43)【公開日】2020年2月20日
【審査請求日】2020年3月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】597048986
【氏名又は名称】株式会社シィップ
(74)【代理人】
【識別番号】110003063
【氏名又は名称】特許業務法人牛木国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100080089
【弁理士】
【氏名又は名称】牛木 護
(74)【代理人】
【識別番号】100161665
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 知之
(74)【代理人】
【識別番号】100188994
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 裕介
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 義信
【審査官】 林 政道
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭63−196777(JP,U)
【文献】 特開2005−059636(JP,A)
【文献】 特開2012−101712(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62B 1/00− 5/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
台車本体と、前記台車本体の下部に取り付けられた複数の自在車輪と、前記台車本体の下部に取付けられた固定車輪装置と、前記固定車輪装置を昇降させる昇降手段とを備え、
前記固定車輪装置は、前記台車本体の下部に取り付けられた基台と、前記基台に揺動自在に取り付けられたアーム部と、前記アーム部に取り付けられた固定車輪と、前記基台と前記アーム部との間に連結されて、前記固定車輪を下方に付勢する付勢手段とを備え、
前記昇降手段は、前記台車本体の下部に配置された複数の案内部材と、一端を前記アーム部側に取り付けられ、他端を前記基台側に取り付けられ、中間部分を前記案内部材に案内された線材と、前記案内部材の少なくとも一つを移動させて、前記案内部材の間隔を可変させて前記線材の張力を調節して、前記線材を介して前記固定車輪を昇降させる移動手段とを備えたことを特徴とする運搬用台車。
【請求項2】
前記線材は、前記自在車輪と前記固定車輪が走行面に同時に接地している状態では弛緩した状態であることを特徴とする請求項1に記載の運搬用台車。
【請求項3】
前記付勢手段は、弾性復元力の向きが走行面と平行となるように配置されたことを特徴とする請求項1又は2に記載の運搬用台車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、資材等を積載して運搬する運搬用台車に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、建築現場等で各種資材等を積載して運搬する台車として特許文献1に記載された運搬用台車が知られている。この運搬用台車は、荷台裏面の4つのコーナー付近に設けられ、車輪の進行方向を自在に変更可能な自在車輪と、自在車輪の略中央部に設けられ、車輪の進行方向が固定されている固定車輪とを備えている。
【0003】
運搬用台車の方向転換時には、荷台が固定車輪を支点として回転することとなり、回転操作性が良く、また、斜面等で直進走行する場合には、固定車輪が直進しようするため、直進安定性に優れていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−80517号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の台車は、固定車輪を中心に台車を旋回させる場合に、固定車輪と走行面との間に摩擦力が発生し、特に重量物の運搬時に台車を旋回させるには、摩擦力に抗した旋回力の付与が必要であった。また、台車の旋回時には、固定車輪と床面との間の摩擦により、走行面に固定車輪のタイヤ跡を残す可能性があった。
【0006】
そこで、本発明は、上述の課題を解決するために、固定車輪を昇降可能とする運搬用台車を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る運搬用台車は、台車本体と、前記台車本体の下部に取り付けられた複数の自在車輪と、前記台車本体の下部に取付けられた固定車輪装置と、前記固定車輪装置を昇降させる昇降手段とを備え、前記固定車輪装置は、前記台車本体の下部に取り付けられた基台と、前記基台に揺動自在に取り付けられたアーム部と、前記アーム部に取り付けられた固定車輪と、前記基台と前記アーム部との間に連結されて、前記固定車輪を下方に付勢する付勢手段とを備え、前記昇降手段は、前記台車本体の下部に配置された複数の案内部材と、一端を前記アーム部側に取り付けられ、他端を前記基台側に取り付けられ、中間部分を前記案内部材に案内された線材と、前記案内部材の少なくとも一つを移動させて、前記案内部材の間隔を可変させて前記線材の張力を調節して、前記線材を介して前記固定車輪を昇降させる移動手段とを備えたことを特徴とする。
【0008】
また、本発明に係る運搬用台車は、前記線材は、前記自在車輪と前記固定車輪が走行面に同時に接地している状態では弛緩した状態であることを特徴とする。
【0009】
また、本発明に係る運搬用台車は、前記付勢手段は、弾性復元力の向きが走行面と平行となるように配置されたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明の運搬用台車によれば、固定車輪が昇降可能な運搬用台車を提供することができる。
【0011】
また、本発明の運搬用台車によれば、線材が弛んでいる分、固定車輪は固定車輪装置の自重で降下するため、付勢手段の付勢力は少なくて済むので、固定車輪に掛かる付勢力によって運搬用台車が浮き上がるのを防ぎ、運搬用台車に積み重ねた資材等を安定して運搬することができる。
【0012】
また、本発明の運搬用台車によれば、付勢手段の弾性復元力を、車輪の付勢力とは異なる方向にすることで、車輪に掛かる過剰な付勢力によって運搬用台車が浮き上がるのを防ぎ、運搬用台車の運搬や積み重ねを安定させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の実施例1を示す運搬用台車の左後側斜視図である。
図2】同、運搬用台車の右後側斜視図である。
図3】同、固定車輪の降下状態を示す運搬用台車の断面図である。
図4】同、図3の状態から固定車輪をさらに降下させた状態を示す運搬用台車の断面図である。
図5】同、固定車輪の上昇状態を示す運搬用台車の断面図である。
図6】同、固定車輪装置を省略した台車本体の底面側斜視図である。
図7】同、固定車輪装置の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明における好適な実施の形態について、添付図面を参照して説明する。尚、以下に説明する実施の形態は、特許請求の範囲に記載された本発明の内容を限定するものではない。また、以下に説明される構成の全てが、本発明の必須要件であるとは限らない。
【実施例1】
【0015】
図1図7において、1は運搬用台車であって、この運搬用台車1は、台車本体2と、自在車輪3と、固定車輪装置4と、操作ハンドル5を備えている。
【0016】
台車本体2は、前側杆11、後側杆12、左側杆13および右側杆14を有し、平面視略矩形の枠状に形成されている。前側杆11、後側杆12、左側杆13および右側杆14は四角筒状に形成されている。前側杆11と後側杆12は同一の長さに形成され、左側杆13と右側杆14は同一の長さに形成されている。左側杆13および右側杆14は、前側杆11および後側杆12よりも長く形成されている。
【0017】
前側杆11は、左前挿入部15と右前挿入部16に接続されており、後側杆12は、左後挿入部17と右後挿入部18に接続されている。左側杆13は、左前挿入部15と左後挿入部17に接続されており、右側杆14は、右前挿入部16と右後挿入部18に接続されている。
【0018】
左前挿入部15、右前挿入部16、左後挿入部17および右後挿入部18は略四角筒状に形成され、上側が完全に開口し、下側が底部(図示せず)により一部閉塞されている。左前挿入部15、右前挿入部16、左後挿入部17および右後挿入部18には、手押し棒(図示せず)や金属製のパイプ(丸パイプや角パイプ)(図示せず)を挿入し、この手押し棒等を把持して力を付与し、運搬用台車1を移動させたり停止させたりすることもできるようになっている。手押し棒等は、底部により左前挿入部15、右前挿入部16、左後挿入部17および右後挿入部18から下側に抜け落ちないようになっている。
【0019】
左前挿入部15の外面19の前側および左側には、運搬用台車1が他の物に衝突した際に、衝撃を和らげる緩衝部材20が設けられている。また、右前挿入部16の外面21であって前側および右側にも緩衝部材22が設けられている。また、左後挿入部17の左側外面23と、右後挿入部18の右側外面24にも緩衝部材25,26が設けられている。
【0020】
左側杆13と右側杆14には、平面視矩形状の載置台部27が固定されている。載置台部27の上面28は平坦に形成されており、左側杆13の上面29および右側杆14の上面30と略面一となっている。この載置台部27に資材等が積載される。前側杆11と載置台部27との間には隙間31が形成され、後側杆12と載置台部27との間にも同様に隙間32が形成されている。
【0021】
前側杆11の下面と載置台部27の下面には、車輪3を取り付ける左前載置板部33と右前載置板部34が固定されている。左前載置板部33と右前載置板部34は、略矩形板状に形成されている。左前載置板部33の下面に左前の車輪3が固定されており、右前載置板部34の下面に右前の車輪3が固定されている。
【0022】
後側杆12の下面と載置台部27の下面には、車輪3を取り付ける左後載置板部35と右後載置板部36が固定されている。左後載置板部35と右後載置板部36は、略矩形板状に形成されている。左後載置板部35の下面に左後の車輪3が固定されており、右後載置板部36の下面に右後の車輪3が固定されている。
【0023】
自在車輪3は、回転・旋回自在であり、4つの自在車輪3は全て同一形状である。
【0024】
本実施例の運搬用台車1は、複数台を積み重ねることが可能であり、上側の運搬用台車1の車輪3が隙間31,32に配置され、左前載置板部33、右前載置板部34、左後載置板部35および右後載置板部36に載置される。隙間31,32は、前側杆11、後側杆12、左側杆13、右側杆14および載置台部27により囲まれているため、上側の運搬用台車1の車輪3が下側の運搬用台車1から脱落しないようになっている。
【0025】
図3〜5、及び図7に示すように固定車輪装置4は、4つの自在車輪3の中心位置となるように、載置台部27の下面の中央部分に配置されている。固定車輪装置4は、運搬用台車1の前後方向にのみ走行可能とするものである。
【0026】
固定車輪装置4は、載置台部27の下面の中央部分に設けられた基台37と、基台37に回動自在に支持されたアーム部38と、アーム部38の先端に備えた一対の固定車輪39とを備えている。
【0027】
基台37は、載置台部27の下面に備えた基礎フレーム40に取り付けられている。図6に示すように基礎フレーム40は、載置台部27の下面の中央部分に台車1の左右方向と平行なL型鋼からなる前側フレーム41と、載置台部27の下面の後端部分に台車1の左右方向と平行なL型鋼からなる後側フレーム42と、前側フレーム41と後側フレーム42の間にそれぞれ台車1の前後方向と平行に備えたL型鋼からなる左側フレーム43及び右側フレーム44とを備え、左側フレーム43と右側フレーム44は左右方向に間隔を有して備えており、左側フレーム43と右側フレーム44のそれぞれ下面部には取付穴45,46が穿設されており、基台37を左側フレーム43と右側フレーム44にボルト・ナット等の固定手段(図示せず)により取り付けることができる。
【0028】
基台37は、左右一対の金属製の板材からなる側面片47A,47Bと、側面片47A,47Bの上部同士を連結する上部連結杆48と、側面片47の下部同士を連結する下部連結杆49とを備えている。側面片47A,47Bは、上部を水平に折り曲げた取付部50A,50Bと、下部を後方へ延設した後端部51A,51Bとを備えている。基台37の取付部50A,50Bは、ボルト・ナット等の固定手段(図示せず)を介して左側フレーム43と右側フレーム44に取り付けられる。尚、前記下部連結杆49は、後端部51A,51B同士を連結するものである。
【0029】
アーム部38は、上面部52と、上面部52の左右両端をそれぞれ下方に延設した左側面部53及び右側面部54とを備えた一枚の金属製の板材から形成されており、左側面部53と右側面部54の基端53A,54Aは、それぞれ軸部55A,55Bによって基台37の側面片47A,47Bに回動自在に軸支されているとともに、左側面部53の先端53Bと右側面部54の先端54Bは、固定車輪39の車軸56によって連結されている。
【0030】
また、基台37とアーム部38は、アーム部38の左側面部53と右側面部54の中間同士を連結するアーム部側ピン57と、下部連結杆49には付勢手段である引張コイルばね58の両端が連結されている。
【0031】
ここで、側面片47A,47Bの軸部55A,55Bの下には、側面片47A,47Bのどちらか一方又は両方(本実施例では、左側の側面片47A)に螺合された雄螺子部材からなる回転規制部59を備えている。
【0032】
そして、アーム部38は、軸部55A,55Bを中心に後方(図3図5中、反時計回り)に回転すると回転規制部59に当接して後方への回転が規制されるとともに、上方(図3図5中、時計回り)に回転すると上部連結杆48に当接して上方への回転が規制される。
【0033】
上述の構成により、アーム部38を回転規制部59と上部連結杆48との間で回動自在に規制して、アーム部38の先端53B,54Bを軸部55A,55Bより前方で回動させる構成とするとともに、アーム部38の中間部分と、側面片47A,47Bにおける軸部55A,55Bより下方とを引張コイルばね58で弾性的に連結させる構成により、引張コイルばね58の略水平方向後方の弾性復元力によりアーム部38の先端53B,54Bが軸部55A,55Bを回転中心として下向きに回転移動すると、アーム部38の先端53B,54B側に備えた固定車輪39が軸部55A,55Bを回転中心とした回転軌跡Xに沿って下向きに回転移動して走行面F,Sに接地すると、アーム部38を介して引張コイルばね58の上述の弾性復元力が固定車輪39に下向きの付勢力として付与される。ここで付勢力の向きを下向きと表現しているが、付勢力の向きは、固定車輪39の接地時の回転軌跡Xの接線方向とほぼ等しいため、固定車輪39の降下に伴い回転軌跡Xの接線方向に対応して略垂直下向きから後方斜め下向きへと変化するものである。
【0034】
アーム部38の上面部52には、第1チェーンボルト60を備えるとともに、上部連結杆48の後面部に備えた取付板61の上部に第2チェーンボルト62を備えている。前側フレーム41の前方には、第1スプロケット63が取り付けられている。後側フレーム42の前方には、第2スプロケット64が移動手段としてのトグルクランプ65を介して取り付けられている。トグルクランプ65は、後側フレーム42に形成された取付穴66に挿通された状態で後側フレーム42に取り付けられている。
【0035】
トグルクランプ65は、ハンドル部67の回動操作に基づき所定のトグル機構(リンク機構)(図示せず)を介してシャフト68を基礎フレーム40内部に向けて進退可能に備えている。図3に示すように、ハンドル部67を上方向に回動させて略水平状態となった時にはシャフト68は前側に進出し、図5に示すように、ハンドル部67を下方向に回動させて下向きの状態となった時にはシャフト68は後側に後退するものである。尚、トグルクランプ65についての詳細な説明は、公知の技術なのでここでの説明は省略する。シャフト68の先端には、第2スプロケット64が取り付けられている。
【0036】
そして、線材としてのローラーチェーン69(以下、チェーン69という)は、第1チェーンボルト60、第1スプロケット63、第2スプロケット64、第2チェーンボルト62に掛け渡されている。チェーン69は、第1スプロケット63と第2スプロケット64の外周に巻き掛けられて係合されることで第1スプロケット63と第2スプロケット64間に架設されて、基礎フレーム40内に案内される。尚、前側フレーム41の中央部分には、チェーン69を基礎フレーム40内に案内する開口部70が形成されている。
【0037】
図3に示すように第2スプロケット64を前方に移動させて、第1スプロケット63と第2スプロケット64の間隔を間隔L1まで狭めてチェーン69を弛緩させると固定車輪39は自重により降下して降下状態となり、また、図5に示すように第2スプロケット64を後方に移動させて、第1スプロケット63と第2スプロケット64の間隔を間隔L2まで広げてチェーン69を緊張状態させたまま後方へ引っ張ると固定車輪39は上昇状態となる。なお、間隔L1と間隔L2の関係は、L1<L2である。
【0038】
チェーン69、第1スプロケット63、第2スプロケット64、トグルクランプ65によって、固定車輪装置4の固定車輪39を昇降させる昇降手段71が構成される。
【0039】
また、図3に示すように自在車輪3と固定車輪装置4が平坦な走行面F(図中では、水平な走行面)に同時に接地している状態では、引張コイルばね58がほぼ走行面Fと平行な状態(図中では、ほぼ水平な状態)となり、かつチェーン69は弛緩した状態となっている。
【0040】
ハンドル部67には、ハンドル部67より長い全長を有する円筒状の延長ハンドル体72が外嵌されており、延長ハンドル体72は中間部分を下向きに折り曲げられている。また、隙間32の中央部分の上部には、トグルクランプ65を上方から保護するカバー体73が設けられている
【0041】
操作ハンドル5は、台車本体2の左後端部に設けられた左ハンドル5Aと、台車本体2の右後端部に設けられた右ハンドル5Bから構成されている。左ハンドル5Aと右ハンドル5Bは、左右一対となっている。
【0042】
尚、自在車輪3に対する固定車輪39の相対的な上下方向の移動量について説明すると、本実施例では図4に示すように固定車輪39が降下状態における前側の自在車輪3と後側の自在車輪3とを結ぶ仮想線(図中、一点鎖線Y)に対する固定車輪39の垂直下向きの移動量M1を50mmとし、図5に示す固定車輪39が上昇状態での固定車輪39の上向きの移動量M2を10mmとしているが、移動量M2については、固定車輪39が僅かでも走行面F,Sから離間していれば、運搬用台車1は自在車輪3のみでの走行が可能となり、移動量M1より小さく設定することが可能である。尚、移動量M1及び移動量M2は適宜変更可能である。
【0043】
図6に示すように左側杆13の内側には、第1前側ガイドピン74と第1後側ガイドピン75とを前後方向に間隔を有して備えており、右側杆14の内側には、第2前側ガイドピン76と第2後側ガイドピン77とを前後方向に間隔を有して備えている。そして、図3図5に示すように固定車輪装置4は、各前側ガイドピン74,76と各後側ガイドピン75,77の間に配置されている。そして、運搬用台車1を運搬するために、フォークリフトやハンドリフト等のリフト装置の爪部を運搬用台車1の下部に挿入する際、運搬用台車1の左側から挿入するには、左前側ガイドピン74と左後側ガイドピン75のそれぞれ外側を通過するように爪部を挿入し、また運搬用台車1の右側から挿入するには、右前側ガイドピン76と右後側ガイドピン77のそれぞれ外側を通過するように爪部を挿入することで、リフト装置の爪部を固定車輪装置4に接触させることなく挿入することができる。尚、第2チェーンボルト62を左側杆13及び右側杆14の下面より上方に備えたことで、リフト装置の爪部がチェーン69に接触するのを防ぐことができる。
【0044】
以上の構成の運搬用台車の作用・効果について説明する。図3に示すように、ハンドル部67を略水平状態とし、シャフト68を第1スプロケット63へ向けて進出させて、第1スプロケット63と第2スプロケット64との間隔を狭めて、第1スプロケット63と第2スプロケット64に掛け渡されたチェーン69を弛緩させた状態にしておくと、固定車輪装置4の固定車輪39は、アーム部38を介して引張コイルばね58の付勢力や固定車輪39等の自重によって下方に付勢されるので、固定車輪装置4を走行面F,Sに常時接地させることができる。アーム部38は、先端53B,54Bを下げるように傾斜させて設けられている。
【0045】
また、図4に示すように、運搬用台車1が水平な走行面Fから傾斜を有する走行面Sを移動する場合でも、チェーン69の弛みによってアーム部38の回動動作に遊びが生じており、そのため生じるアーム部38及び固定車輪39の自重による固定車輪39の自然的な降下と、引張コイルばね58の付勢力による固定車輪39の強制的な降下の2つの降下作用により、固定車輪装置4の固定車輪39の上下位置を自動的に走行面F,Sに合せて調節して固定車輪装置4を接地させることができる。
【0046】
尚、固定車輪装置4の固定車輪39の降下には、アーム部38を介して引張コイルばね58による下方への付勢力に加えて、アーム部38及び固定車輪39の自重による自然落下も働くので、引張コイルばね58の付勢力だけによる固定車輪39の降下と比べて、引張コイルばね58のバネ定数を小さく設定することができる。
【0047】
また、図5に示すように、固定車輪装置4を上昇させる場合は、操作ハンドル5側から作業者が延長ハンドル体72を前方に踏み込むと、ハンドル部67は下向きとなりシャフト68が後退すると、第2スプロケット64によってチェーン69は緊張状態のまま後方へ引っ張られ、固定車輪39は走行面F,Sから離間した上昇状態となる。
【0048】
ここで、ハンドル部67を下向きにするには、アーム部38及び固定車輪39の自重と、引張コイルばね58の付勢力に抗して延長ハンドル体72を足で踏み込む必要があり、引張コイルばね72のバネ定数を小さくして、さらに、アーム部38に穴74(図7参照)を形成して軽量化を図ることで、延長ハンドル体72の操作を容易にすることができる。尚、図5に示す状態からハンドル部67を略水平状態に戻すと、固定車輪39が降下して、運搬用台車1を図3に示す降下状態に戻すことができる。
【0049】
以上のように、本実施例の運搬用台車1では、台車本体2と、台車本体2の下部に取り付けられた複数の自在車輪3と、台車本体2の下部に取付けられた固定車輪装置4と、固定車輪装置4を昇降する昇降手段71とを備え、固定車輪装置4は、台車本体2の下部に取り付けられた基台37と、基台37に揺動自在に取り付けられたアーム部38と、アーム部38に取り付けられた固定車輪39と、基台37とアーム部38との間に連結されて、固定車輪39を下方に付勢する付勢手段58とを備え、昇降手段71は、台車本体2の下部に配置された複数の案内部材である第1スプロケット63及び第2スプロケット64と、一端をアーム部38側に取り付けられ、他端を基台37側に取り付けられ、中間部分を第1スプロケット63及び第2スプロケット64に案内された線材であるチェーン69と、案内部材の少なくとも一つである第2スプロケット64を移動させて、第1スプロケット63と第2スプロケット64の間隔を可変させてチェーン69の張力を調節して、チェーン69を介して固定車輪39を昇降させる移動手段であるトグルクランプ65とを備えたことにより、固定車輪が昇降可能な運搬用台車を提供することができる。
【0050】
また、本実施例の運搬用台車1では、チェーン69は、自在車輪3と固定車輪39が走行面F,Sに同時に接地している状態では弛緩した状態であることにより、チェーン69が弛んでいる分、固定車輪39はアーム部38及び固定車輪39の自重で降下するため、引張コイルばね58の付勢力は少なくて済むので、固定車輪39に掛かる付勢力によって運搬用台車1が浮き上がるのを防ぎ、運搬用台車1に積み重ねた資材等を安定して運搬することができる。
【0051】
また、本実施例の運搬用台車1では、引張コイルばね58は、弾性復元力の向きが走行面F,Sと平行となるように配置されたことにより、引張コイルばね58の弾性復元力を、固定車輪39の付勢力とは異なる方向にすることで、固定車輪39に掛かる過剰な付勢力によって運搬用台車1が浮き上がるのを防ぎ、運搬用台車1の運搬や積み重ねを安定させることができる。
【0052】
尚、本発明は、上記実施例に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内で種々の変形実施が可能である。例えば、第2スプロケットを移動させる機構は、トグルクランプに限定されるものではない。また、昇降手段において、チェーンと各スプロケットの組み合わせ以外に、歯付ベルトやワイヤー等の線材と滑車の組み合わせでもよいものとする。また、スプロケットの個数やチェーンとスプロケットのレイアウトは適宜変更可能である。さらに、第1スプロケットを移動させる構成でもよいし、第1スプロケット及び第2スプロケットの双方を移動させる構成でもよい。
【符号の説明】
【0053】
1 運搬用台車
2 台車本体
3 自在車輪
4 固定車輪装置
37 基台
38 アーム部
39 固定車輪
58 引張コイルばね(付勢手段)
63 第1スプロケット(案内部材)
64 第2スプロケット(案内部材)
65 トグルクランプ(移動手段)
69 チェーン(線材)
71 昇降手段
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7