(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記複数のコイルから選ばれる2つを直列に接続して前記フィードバック電流を流したときに、一方のコイルが前記磁気検出素子に及ぼす前記キャンセル磁界の強さと、他方のコイルが前記磁気検出素子に及ぼす前記キャンセル磁界の強さとが相違する、請求項1に記載の磁気平衡式電流センサ。
前記複数のコイルの少なくとも1つの前記コイル配線部は、前記第1方向に沿った方向の巻回軸を有する渦巻き形状の部分を有する、請求項1から6のいずれか一項に記載の磁気平衡式電流センサ。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施の形態について説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る磁気平衡式電流センサの構成を概念的に示す回路図である。
図2は、本発明の一実施形態に係る磁気平衡式電流センサの構成を概念的に示す上面図である。
図3は、(a)
図2のV1−V1線の断面図であり、(b)
図2のV2−V2線の断面図であり、(c)
図2のV3−V3線の断面図である。
【0022】
本発明の一実施形態に係る磁気平衡式電流センサ100は、
図1に示されるような基本構成を備える。本実施形態では、被測定電流からの誘導磁界により特性が変化する4つの磁気検出素子は、いずれも磁気抵抗効果素子である。感度軸方向が互いに反平行である2つの磁気抵抗効果素子G11,G21の一端に入力端子(Vdd)からの配線が接続される。磁気抵抗効果素子G11の他端に対して、磁気抵抗効果素子G11とは感度軸方向が反平行である磁気抵抗効果素子G12の一端が接続され、磁気抵抗効果素子G12の他端は接地されている。同様に、磁気抵抗効果素子G21の他端に対して、磁気抵抗効果素子G21とは感度軸方向が反平行である磁気抵抗効果素子G22の一端が接続され、磁気抵抗効果素子G22の他端は設置されている。こうして4つの磁気抵抗効果素子G11,G21,G12,G22によりブリッジ回路50が形成されている。
【0023】
磁気抵抗効果素子G11と磁気抵抗効果素子G12との間の出力V1および磁気抵抗効果素子G21と磁気抵抗効果素子G22との間の出力V2はオペアンプ43の入力端子にそれぞれ接続される。オペアンプ43の出力はフィードバックコイル42の一端に接続され、フィードバックコイル42を流れる電流はオペアンプ43により制御されている。フィードバックコイル42の他端は抵抗44を介して接地され、抵抗44とフィードバックコイル42との間のグランド端子(GND)に対する電位が出力電圧Voutとなる。
【0024】
オペアンプ43は、ブリッジ回路50の2つの出力(V1,V2)からの電圧を入力として、フィードバックコイル42を流れる電流による誘導磁界と被測定電線201を流れる電流(被測定電流)による誘導磁界とフィードバックコイル42を流れる電流による誘導磁界(本明細書において、被測定電流による誘導磁界との相違を明確にする観点から、「キャンセル磁界」ともいう。)とが相殺して、ブリッジ回路50の2つの出力(V1,V2)からの電圧が等しくなるように、フィードバックコイル42に対して出力する電圧を制御する。
【0025】
このように、磁気平衡式電流センサ100は、被測定電流による誘導磁界をキャンセルするように誘導磁界(キャンセル磁界)を生じさせるフィードバックコイル42の電流値を、磁気検出素子(磁気抵抗効果素子G11,G21,G12,G22)の検出値に基づいて調整することにより、被測定電流に相関性を有する出力電圧Voutを出力する方式の電流センサである。
【0026】
上記の測定原理から明らかなように、フィードバックコイル42から発生させるキャンセル磁界の強さは、被測定電流による誘導磁界の強さとほぼ同等であることが求められる。したがって、想定される被測定電流の大きさに応じて、キャンセル磁界の強さも異なるべきであり、これを実現しうるように、フィードバックコイル42の構造、具体的には、コイルの巻き数や磁気検出素子からの距離は異なることが好ましい。しかしながら、想定される被測定電流の大きさは多様であるから、この多様なニーズに合わせてフィードバックコイル42の構造が異なる磁気平衡式電流センサ100を多数種類用意することは、必ずしも容易なことでなく、経済的観点からも有効とはいえない。
【0027】
本発明の一実施形態に係る磁気平衡式電流センサ100は、次に説明するように、フィードバックコイル42によるキャンセル磁界の強さの範囲を容易に変更できるように、複数のコイルを備える。
【0028】
図3に示されるように、磁気平衡式電流センサ100では、基板SB上に磁気検出素子(磁気抵抗効果素子G11,G21,G12,G22)が設けられている。そして、磁気検出素子(磁気抵抗効果素子G11,G21,G12,G22)を覆うように絶縁層M1が設けられている。磁気抵抗効果素子G12,G22も同様に基板SB上に設けられ、これらを覆うように絶縁層M1が設けられている。
【0029】
図2および
図3に示されるように、磁気平衡式電流センサ100は2つのコイル10,20を有する。そして、
図3(c)に示されるように、2つのコイル10,20は、磁気検出素子(磁気抵抗効果素子G11,G21,G12,G22)の感度軸方向(Y1−Y2方向)を面内方向とする基準面SSから離れた面(具体的には、絶縁層M1のZ1−Z2方向Z2側の面)SAに設けられたスパイラル形状のコイル配線部10C,20Cを個別に有する。磁気平衡式電流センサ100では、2つのコイル配線部10C,20Cはいずれも同一面(面SA)上に位置する。
図2に示されるように、コイル配線部10C,20Cの巻回軸方向である第1方向(Z1−Z2方向)からみたときに、コイル配線部10Cまたはコイル配線部20Cと重なるように、磁気抵抗効果素子G11,G21,G12,G22は配置されている。このように配置されることにより、コイル10,20からなるフィードバックコイル42からのキャンセル磁界の向きが、感度軸方向(Y1−Y2方向)に揃いやすい。
【0030】
2つのコイル10,20のそれぞれは、コイル配線部10C,20Cの一方の端部にその一方の端部が接続される引き出し配線部10L,20Lを有する。引き出し配線部10L,20Lおよびコイル配線部10C,20Cは、絶縁部IMを介して第1方向(Z1−Z2方向)に重なるように積層された交差部XPを有する。V1−V1線の断面図である
図3(a)では交差部XPは2つ表されており、V2−V2線の断面図である
図3(b)では交差部XPは1つ表されている。磁気平衡式電流センサ100では、引き出し配線部10L,20Lは基板SBのZ1−Z2方向Z2側の面に設けられており、絶縁層M1のZ1−Z2方向Z2側の面SAに設けられたコイル配線部10Cと引き出し配線部10Lとは、絶縁層M1に設けられた貫通孔を充填する導電性物質FMにより接続されている。
【0031】
コイル10の両端には、コイル配線部10Cおよび引き出し配線部10Lに電気的に接続される2つの電極部10E1,10E2が設けられている。2つの電極部10E1,10E2は、第1方向(Z1−Z2方向)からみたときのコイル配線部10Cの包絡線EL1よりも外側に位置する。同様に、コイル20の両端には、コイル配線部20Cおよび引き出し配線部20Lに電気的に接続される2つの電極部20E1,20E2が設けられている。2つの電極部20E1,20E2は、第1方向(Z1−Z2方向)からみたときのコイル配線部20Cの包絡線EL2よりも外側に位置する。
【0032】
磁気平衡式電流センサ100は出入力端子30を有し、その一方である入力端子31にはオペアンプ43の出力からの配線(図示せず。)が接続され、他方の端子である出力端子32には抵抗44へとつながる配線(図示せず。)が接続される。
【0033】
磁気平衡式電流センサ100の使用時には、コイル10,20の電極部10E1,10E2,20E1,20E2と出入力端子30(入力端子31、出力端子32)との接続を適切に設定することにより、次に説明するように、同じ電圧を印加した場合であってもキャンセル磁界の強さの範囲が異なる複数種類のフィードバックコイル42を得ることができる。
【0034】
図4は、本発明の一実施形態に係る磁気平衡式電流センサの使用状態の例を示す上面図であり、(a)直列接続、(b)並列接続、および(c)単独使用の状態を示している。
【0035】
図4(a)に示されるように、コイル10の一方の電極部10E1と入力端子31とを配線W1により接続し、コイル10の他方の電極部10E2とコイル20の一方の電極部20E1とを配線W2により接続し、コイル20の他方の電極部20E2と出力端子32とを配線W3により接続することにより、コイル配線部10Cとコイル配線部20Cとが直列に接続されたフィードバックコイル42を備える磁気平衡式電流センサ101が得られる。
【0036】
図4(b)に示されるように、コイル10の一方の電極部10E1と入力端子31とを配線W1により接続し、コイル20の一方の電極部20E1と入力端子31とを配線W2により接続し、コイル10の他方の電極部10E2と出力端子32とを配線W3により接続し、コイル20の他方の電極部20E2と出力端子32とを配線W4により接続することにより、コイル配線部10Cとコイル配線部20Cとが並列に接続されたフィードバックコイル42を備える磁気平衡式電流センサ102が得られる。
【0037】
図4(c)に示されるように、コイル10の一方の電極部10E1と入力端子31とを配線W1により接続し、コイル10の他方の電極部10E2と出力端子32とを配線W2により接続することにより、磁気平衡式電流センサ100はコイル10のみを使用した状態となる。図示しないが、同様に、コイル20の一方の電極部20E1と入力端子31とを配線W1により接続し、コイル20の他方の電極部20E2と出力端子32とを配線W1により接続することによって、磁気平衡式電流センサ103のフィードバックコイル42はコイル20のみを使用した状態となる。
【0038】
入力端子31に加えられる電圧が等しい場合であっても、
図4(a)に示される直列接続の場合にフィードバックコイル42から発生する誘導磁界(キャンセル磁界)の強さ、
図4(b)に示される並列接続の場合のキャンセル磁界の強さおよび
図4(c)に示されるコイル10の単独使用の場合のキャンセル磁界の強さは、互いに異なる。コイル配線部10Cおよびコイル配線部20Cの抵抗率を異ならせれば、
図4(c)と同様の配線でありながら、コイル20の単独使用の場合には、コイル10の単独使用の場合とは異なる強さのキャンセル磁界を発生させることも可能である。
【0039】
ここで、コイル配線部の形状がスパイラル形状の場合には、通常、その一方の端部は巻回されたコイル配線部の内側に位置する。このように、電極部がコイル配線部の内側に位置する内側電極部である場合には、フィードバック電流を流すための配線の端子と内側電極部とを接続するためにワイヤボンディングが行われていた。この内側電極部にワイヤボンディングを行う際に、ボンディングワイヤがコイル配線部に接触すると短絡が生じてしまうため、そのような不具合が防止されるように内側電極部の面積をある程度大きくする必要があった。そのように内側電極部の面積が大きくなる結果として、コイル配線部全体の面積が大きくなってしまい、磁気平衡式電流センサの小型化の阻害要因となっていた。これに対し、本実施形態に係る磁気平衡式電流センサ100のように、電極部10E1,10E2,20E1,20E2がコイル配線部10C,20Cの外側(具体的には、コイル配線部10C,20Cの第1方向(Z1−Z2方向)からみた場合の包絡線EL1,EL2の外側)に位置する場合には、上記のような不具合を防止するために電極部の面積を大きくすることが不要となるため、コイル配線部10C,20Cにおける第1方向(Z1−Z2方向)からみたときの面積を小さくすることができる。それゆえ、本実施形態に係る磁気平衡式電流センサ100は、様々な測定範囲に効率的に対応可能であって、かつ小型化に対応可能である。また、コイル10,20、引き出し配線部10L,20L、電極部10E1,10E2,20E1,20E2等のパターンを変えることなく、配線W1、W2、W3、W4の接続方法を変更するのみで、様々な測定範囲の磁気平衡式電流センサ100を製造することができる。したがって、様々な測定範囲の磁気平衡式電流センサ100をウエハー上に形成する場合であっても、マスクパターンが少なくて済み、効率の良い生産が可能となる。
【0040】
図5は、本発明の他の一実施形態に係る磁気平衡式電流センサの構成を概念的に示す上面図である。
図6は、
図5のV4−V4線の部分断面図である。具体的には、磁気検出素子が配置されている部分の断面図である。
図7は、本発明の他の一実施形態に係る磁気平衡式電流センサ(
図5および
図6に示される磁気平衡式電流センサ)と同様の構造を有する磁気平衡式電流センサの4つのコイルの配置を概念的に示す斜視図である。
【0041】
図5から
図7に示されるように、本発明の他の一実施形態に係る磁気平衡式電流センサ200は、磁気平衡式電流センサ100と同様に複数のコイルを有するが、その数が4つである。具体的には、
図6に示されるように、磁気平衡式電流センサ200は基準面SSからの距離が異なる2種類のコイルとして第1コイルおよび第2コイルを有し、さらに第1コイルは2つのコイル(第1外側コイル11、第1内側コイル12)を有し、第2コイルも2つのコイル(第2外側コイル21、第2内側コイル22)を有する。
【0042】
いずれのコイルのコイル配線部11C,12C,21C,22Cも、2つのスパイラル形状(渦巻き形状)が連結してアラビア数字の8の形状を有する、いわゆる8の字巻きである。このため、いずれのコイル配線部11C,12C,21C,22Cについても、端部は巻回中心近傍に位置するが、それぞれ、引き出し配線部11L1,11L2,12L1,12L2,21L1,21L2,22L1,22L2に接続される。それゆえ、第1外側コイル11の電極部11E1,11E2、第1内側コイル12の電極部12E1,12E2、第2外側コイル21の電極部21E1,21E2、第2内側コイル22の電極部22E1,22E2は、各コイル配線部の包絡線の外に位置する。
【0043】
具体的には、いずれの電極部も、各コイル配線部のX1−X2方向X2側に位置し、Y1−Y2方向に並んで配置されて、電極アレイ部EA1,EA2を構成している。このように、電極アレイ部EA1,EA2に並置される複数の電極部11E1,11E2,12E1,12E2,21E1,21E2,22E1,22E2から選ばれた2つの電極部を出入力端子30に対して電気的に接続し、残りの複数の電極部の間を必要に応じて短絡することにより、様々な測定範囲を有する磁気平衡式電流センサを得ることができる。
【0044】
図5に示されるように、2つのスパイラル形状(渦巻き形状)が隣り合って配置され、キャンセル磁界が最もY1−Y2方向に揃うように生じやすい領域GA(
図5では太線の二点破線により表されている。)内に、4つの磁気抵抗効果素子G11,G21,G12,G22は設けられている。
【0045】
図6に示されるように、磁気平衡式電流センサ200では、基板SBの上に磁気抵抗効果素子G11,G21,G12,G22が形成され、絶縁層M1がその上に形成され、絶縁層M1のZ1−Z2方向Z2側の面(第2面)S2の上に第2コイル(第2外側コイル21、第2内側コイル22)のコイル配線部21C,22Cが形成されている。これらのコイル配線部21C,22Cを覆うように、絶縁層M2が形成されている。絶縁層M2のZ1−Z2方向Z2側の面は、コイル配線部21C,22Cの影響を受けて凹凸を有する。第1方向(Z1−Z2方向)からみて並置されているコイル配線部21Cとコイル配線部22Cとの間に位置するように、第1コイル(第1外側コイル11、第1内側コイル12)のコイル配線部11C,12Cが形成されている。このように、X1−X2方向からみて互い違い(千鳥)になるように第1コイルのコイル配線部11C,12Cと第2コイルのコイル配線部21C,22Cとが配置されることにより、フィードバックコイル42によるキャンセル磁界の向きが感度軸方向(Y1−Y2方向)に揃いやすくなる。なお、
図6に示されるように、第1コイルのコイル配線部11C,12CのZ1−Z2方向Z1側の面が位置する面が第1面S1となる。
【0046】
第1コイル(第1外側コイル11、第1内側コイル12)のコイル配線部11C,12Cが設けられている第1面S1と基準面SSとの距離(第1距離D1)は、第2コイル(第2外側コイル21、第2内側コイル22)のコイル配線部21C,22Cが設けられている第2面S2と基準面SSとの距離(第2距離D2)よりも大きい。このため、第1コイルの1つ(例えば第1外側コイル11)と第2コイルの1つ(例えば第2外側コイル21)とを直列につないでフィードバック電流を流したときに、第1コイルの1つ(第1外側コイル11)が磁気検出素子(磁気抵抗効果素子G11,G21,G12,G22)に及ぼすキャンセル磁界の強さと、第2コイルの1つ(第2外側コイル21)が磁気検出素子(磁気抵抗効果素子G11,G21,G12,G22)に及ぼすキャンセル磁界の強さとは相違する。
【0047】
このように、基準面SSに対する距離が異なる面にコイル配線部11C,12C,21C,22Cを設けることにより、コイル配線部11C,12C,21C,22Cのデザインルール(比抵抗、断面積、巻回数など)は共通であっても、コイル配線部11C,12C,21C,22Cから発生するキャンセル磁界が磁気検出素子(磁気抵抗効果素子G11,G21,G12,G22)に及ぼす強さを、コイル配線部21C,22Cの場合とは相違させることができる。したがって、磁気平衡式電流センサ200は、コンパクトかつシンプルな構造でありながら、多様な測定範囲を設定可能である。
【0048】
図8は、本発明の他の一実施形態に係る磁気平衡式電流センサの使用状態の構成を示すブロック図であり、(a)全直列接続、(b)並列−直列接続、および(c)直列−並列接続の状態を示している。
図9は、本発明の他の一実施形態に係る磁気平衡式電流センサの使用状態の構成を示すブロック図であり、(d)並列(直列)接続、(e)直列接続、および(f)並列接続の状態を示している。
【0049】
磁気平衡式電流センサ200では、
図5に示されるように、全てのコイルの電極部11E1,11E2,12E1,12E2,21E1,21E2,22E1,22E2が出入力端子30(入力端子31、出力端子32)の近傍に並置されているため、これらの電極部と出入力端子30との接続方法を変更するだけで、キャンセル磁界の強さの範囲が異なる様々なフィードバックコイル42を用意することができる。
【0050】
図8(a)に示されるブロック図では、全てのコイルのコイル配線部11C,12C,21C,22Cが直列に接続されている(全直列接続)。
図8(b)に示されるブロック図では、第1コイルのコイル配線部11C,12Cが並列に接続され、その後、第2コイルのコイル配線部21C,22Cが直列に接続されている(並列−直列接続)。
図8(c)に示されるブロック図では、第1コイルのコイル配線部11C,12Cが直列に接続され、その後、第2コイルのコイル配線部21C,22Cが並列に接続されている(直列−並列接続)。
【0051】
図9(d)に示されるブロック図では、第1外側コイル11のコイル配線部11Cと第2外側コイル21のコイル配線部21Cとが直列に接続され(第1直列接続)、第1内側コイル12のコイル配線部12Cと第2内側コイル22のコイル配線部22Cとが直列に接続され(第2直列接続)、これらの第1直列接続と第2直列接続とが並列に接続されている(並列(直列)接続)。
図9(e)に示されるブロック図では、第1外側コイル11のコイル配線部11Cと第1内側コイル12のコイル配線部12Cとが直列に接続され、この直列接続が入力端子31および出力端子32に接続されている(直列接続)。すなわち、この直列接続では、第2コイルは使用されていない。
図9(f)に示されるブロック図では、第1外側コイル11のコイル配線部11Cと第1内側コイル12のコイル配線部12Cとが並列に接続され、この並列接続が入力端子31および出力端子32に接続されている(並列接続)。すなわち、この並列接続では、第2コイルは使用されていない。
【0052】
上記の6種類の接続により形成されたフィードバックコイル42を備える磁気平衡式電流センサ200について、フィードバックコイル42の抵抗値および磁気検出素子の感度軸の位置におけるキャンセル磁界の大きさについてシミュレーションした。その結果を
図10に示した。
図10の横軸は、
図8(a)に示されるブロック図に係るフィードバックコイル42の抵抗値で規格化した各フィードバックコイル42の抵抗値(抵抗値比、単位:%)であり、
図10の縦軸は、
図8(a)に示されるブロック図に係るフィードバックコイル42によるキャンセル磁界の強さで規格化した各フィードバックコイル42によるキャンセル磁界の強さ(磁界強度比、単位:%)である。なお、
図10には、上記の(a)から(f)のいずれのブロック図に係るフィードバックコイル42の結果であるかを識別可能に符号を示した。
【0053】
図10に示されるように、第1コイルのコイル配線部11C,12Cおよび第2コイルのコイル配線部21C,22Cと出入力端子30(入力端子31、出力端子32)との接続関係を変更することにより、様々な強さのキャンセル磁界を発生させることができる。特に、
図8(b)に示されるブロック図に係るフィードバックコイル42の抵抗値と
図8(c)に示されるブロック図に係るフィードバックコイル42の抵抗値とは等しい(抵抗値比にして63%)が、第1面S1と基準面SSとの距離(第1距離D1)と第2面S2と基準面SSとの距離(第2距離D2)とが異なるため、キャンセル磁界の強さは異なる(磁界強度比にして、78.6%と71%)。
【0054】
図示していないが、第2コイルのみが使用され、第1コイルが使用されていない直列接続により形成されたフィードバックコイル42は、
図9(e)に示されるブロック図に基づくフィードバックコイル42と、抵抗値は共通であるが、それぞれのキャンセル磁界が磁気検出素子に及ぼす強さは異なる。
図9(f)に関しても同様に、第2コイルのみを使用する構成とすることにより、抵抗値は共通であるが、それぞれのキャンセル磁界が磁気検出素子に及ぼす強さが異なるフィードバックコイル42を用意することができる。
【0055】
以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするために記載されたものであって、本発明を限定するために記載されたものではない。したがって、上記実施形態に開示された各要素は、本発明の技術的範囲に属する全ての設計変更や均等物をも含む趣旨である。
【0056】
例えば、磁気平衡式電流センサ200では、第1面S1および第2面S2は、いずれも、基準面SSに対して、Z1−Z2方向Z2側に位置しているが、これに限定されない。一方がZ1−Z2方向Z1側に位置し、他方がZ1−Z2方向Z1側に位置していてもよい。磁気検出素子から最遠位に位置するコイルの上に絶縁層が形成されていてもよい。
【0057】
磁気平衡式電流センサ200では、
図6に示されるように、第1コイルのコイル配線部(コイル配線部11C、コイル配線部12C)と、第2コイルのコイル配線部(コイル配線部21C、コイル配線部22C)とに関し、第1距離D1と第2距離D2とが相違している。かかる構成を備えることにより、磁気平衡式電流センサ200では、第1コイルのコイル配線部(コイル配線部11C、コイル配線部12C)および第2コイルのコイル配線部(コイル配線部21C、コイル配線部22C)に流れるキャンセル電流の大きさが等しくても、それぞれのコイルが磁気抵抗効果素子G11,G21,G12,G22に及ぼすキャンセル磁界の強さが異なるようにしているが、これに限定されない。例えば、磁気抵抗効果素子G11,G21,G12,G22と第1コイルのコイル配線部(コイル配線部11C、コイル配線部12C)との間に位置する材料の透磁率と、磁気抵抗効果素子G11,G21,G12,G22と第2コイルのコイル配線部(コイル配線部21C、コイル配線部22C)との間に位置する材料の透磁率とが相違する構造にして、第1コイルのコイル配線部(コイル配線部11C、コイル配線部12C)および第2コイルのコイル配線部(コイル配線部21C、コイル配線部22C)に流れるキャンセル電流の大きさが等しくても、それぞれのコイルが磁気抵抗効果素子G11,G21,G12,G22に及ぼすキャンセル磁界の強さが異なるようにしてもよい。