(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6853295
(24)【登録日】2021年3月15日
(45)【発行日】2021年3月31日
(54)【発明の名称】射出成形用組成物のためのバインダー
(51)【国際特許分類】
B28B 1/24 20060101AFI20210322BHJP
C08L 33/02 20060101ALI20210322BHJP
C08L 23/16 20060101ALI20210322BHJP
C08L 23/26 20060101ALI20210322BHJP
C08L 57/02 20060101ALI20210322BHJP
C08K 3/00 20180101ALI20210322BHJP
B22F 3/02 20060101ALI20210322BHJP
C22C 1/04 20060101ALI20210322BHJP
C22C 1/05 20060101ALI20210322BHJP
【FI】
B28B1/24
C08L33/02
C08L23/16
C08L23/26
C08L57/02
C08K3/00
B22F3/02 M
B22F3/02 S
C22C1/04 D
C22C1/05 A
【請求項の数】16
【外国語出願】
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2019-77557(P2019-77557)
(22)【出願日】2019年4月16日
(65)【公開番号】特開2019-194009(P2019-194009A)
(43)【公開日】2019年11月7日
【審査請求日】2019年4月16日
(31)【優先権主張番号】18170805.8
(32)【優先日】2018年5月4日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】599044744
【氏名又は名称】コマディール・エス アー
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 茂樹
(74)【代理人】
【識別番号】100064621
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 政樹
(72)【発明者】
【氏名】ダミアン・カルティエ
(72)【発明者】
【氏名】ジョナタン・デュマン
【審査官】
今井 淳一
(56)【参考文献】
【文献】
特表2016−523799(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2012/0235330(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B28B 1/24
B22F 3/02
C08K 3/00
C08L 23/16
C08L 23/26
C08L 33/02
C08L 57/02
C22C 1/04
C22C 1/05
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
40〜55体積%の高分子基材と、35〜45体積%のワックスの混合物又はワックスとパーム油の混合物と、及び少なくとも5体積%の少なくとも1種類の界面活性剤とを成分として含有する射出成形用組成物のためのバインダーであって、
前記高分子基材は、エチレン及びメタクリル酸又はアクリル酸のコポリマー、エチレンとプロピレンのコポリマー、及び/又は無水マレイン酸がグラフトされたポリプロピレンと、及びイソプロピルアルコール、プロピルアルコール、テレピン及びこれらの混合物からなる群から選ばれた溶媒内において溶解可能であり、酢酸酪酸セルロース、ポリビニルブチラール及びコポリアミドからなる群から選ばれたポリマーとによって作られ、
当該バインダーの各成分の量は、それらの成分の合計が当該バインダーの100体積%であるような量である
バインダー。
【請求項2】
前記高分子基材は、
2〜7体積%のエチレン及びメタクリル酸又はアクリル酸のコポリマーと、
0〜40体積%のエチレンとプロピレンのコポリマーと、
0〜35体積%の無水マレイン酸がグラフトされたポリプロピレンと、
ここで、前記エチレンとプロピレンのコポリマー及び前記無水マレイン酸がグラフトされたポリプロピレンの合計量は、30〜40体積%であり、
バインダーの100体積%までの6〜15体積%のイソプロピルアルコール、プロピルアルコール、テレピン及びこれらの混合物からなる群から選ばれた溶媒内において溶解可能なポリマーと
を含有し、
当該バインダーの各成分の量は、これらの成分の和が当該バインダーの100体積%であるようにされる
請求項1に記載のバインダー。
【請求項3】
前記高分子基材は、エチレンとプロピレンのコポリマー及び無水マレイン酸がグラフトされたポリプロピレンの混合物を含有する
請求項1又は2に記載のバインダー。
【請求項4】
前記高分子基材は、
2〜7体積%のエチレン及びメタクリル酸又はアクリル酸のコポリマーと、
25〜30体積%のエチレンとプロピレンのコポリマーと、
5〜10体積%の無水マレイン酸がグラフトされたポリプロピレンと、及び
バインダーの100体積%までの6〜15体積%のイソプロピルアルコール、プロピルアルコール、テレピン及びこれらの混合物からなる群から選ばれた溶媒内において溶解可能なポリマーと
を含有する請求項3に記載のバインダー。
【請求項5】
前記エチレンとプロピレンのコポリマーは、エチレンとプロピレンのランダムな統計コポリマーであり、融点が140〜150℃である
請求項1〜4のいずれかに記載のバインダー。
【請求項6】
前記エチレン及びメタクリル酸又はアクリル酸のコポリマーは、3〜10重量%のメタクリル酸又はアクリル酸コモノマーを含有する
請求項1〜5のいずれかに記載のバインダー。
【請求項7】
前記無水マレイン酸がグラフトされたポリプロピレンは、グラフト率が1〜2%であり
、融点が100〜140℃である
請求項1〜6のいずれかに記載のバインダー。
【請求項8】
前記イソプロピルアルコール、プロピルアルコール、テレピン及びこれらの混合物からなる群から選ばれた溶媒内において溶解可能なポリマーは、当該ポリマーの重量に対して、ブチリル含有量が37〜53重量%であり、アセチル含有量が2〜13重量%であり、融点が125〜165℃であり、分子量が16000〜40000である酢酸酪酸セルロースである
請求項1〜7のいずれかに記載のバインダー。
【請求項9】
前記ワックスは、カルナウバワックス、パラフィンワックス又はこれらの混合物である
請求項1〜8のいずれかに記載のバインダー。
【請求項10】
前記ワックスとパーム油の混合物におけるワックスは、カルナウバワックスである
請求項1〜9のいずれかに記載のバインダー。
【請求項11】
前記界面活性剤は、N,N’−エチレンビス(ステアルアミド)、ステアリン酸とパルミチン酸の混合物又はこれらの混合物である
請求項1〜10のいずれかに記載のバインダー。
【請求項12】
前記界面活性剤は、イソプロピルアルコール、プロピルアルコール、テレピン及びこれらの混合物からなる群から選ばれた溶媒内において溶ける
請求項1〜11のいずれかに記載のバインダー。
【請求項13】
成形された金属又はセラミックスの部品を製造することが意図された射出成形用供給原料である組成物であって、
76〜96重量%の無機粉末と、及び
4〜24重量%の請求項1〜12のいずれかに記載のバインダーと
を含有する組成物。
【請求項14】
前記無機粉末は、酸化物粉末、窒化物粉末、炭化物粉末、金属粉末又はこれらの混合物からなる群から選ばれる
請求項13に記載の組成物。
【請求項15】
前記無機粉末は、アルミナ粉末、酸化ジルコニウム粉末、炭化クロム粉末、炭化チタン粉末又は炭化タングステン粉末、金属性タングステン又は窒化ケイ素粉末、ステンレス鋼粉末、金属性チタン粉末又はこれらの粉末の混合物からなる群から選ばれる
請求項14に記載の組成物。
【請求項16】
重量%で、
76〜88%のアルミナ及び12〜24%のバインダーか、
76〜88%のアルミナ、0.1〜0.6%の酸化マグネシウム及び12〜24%のバインダーか、
58〜86.5%の酸化ジルコニウム、3.9〜4.6%の酸化イットリウム、0.18〜18.5%のアルミナ及び9〜22%のバインダーか、
61.5〜84%の酸化ジルコニウム、3.9〜4.6%の酸化イットリウム、0.2〜9%のアルミナ、2〜5.5%の酸化鉄、酸化コバルト、酸化クロム、酸化チタン、酸化マンガン、酸化亜鉛又はこれらの酸化物の混合物からなる群から選ばれる無機顔料及び9〜22%のバインダーか、
88〜91%のクロム又は炭化チタン及び9〜12%のバインダーか、
93〜96%の炭化タングステン又は金属性タングステン及び4〜7%のバインダーか、あるいは
78〜85%の窒化ケイ素及び15〜22%のバインダー
を含有する請求項15に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、射出成形用のバインダー組成物、及び成形された金属又はセラミックス製の部品を製造することが意図された射出成形用組成物(供給原料)に関する。
【背景技術】
【0002】
装飾品や腕時計産業のための硬質材、さらには、医療用装置、エレクトロニクス、テレフォニー、道具、機械的切断において用いるインサートのような技術的アプリケーションのための硬質材の製造において、消費者向け製品の産業、特に、一般的な名称の無機「セラミックス」と全般的に呼ばれている硬質材の製造において、粉末冶金技術が導入されている。得られる合成無機材料は、材料の性質にかかわらず、ここでは「セラミックス」と呼ぶ。例えば、サファイア、ルビー、人工ダイヤモンド、サファイアガラス、セラミックス、マイクロ磁石、金属、合金である。
【0003】
概して、基本原料は、性質が異なり、少なくとも、一方では、セラミックス粉末を含有し、他方では、樹脂やプラスチック材料のような有機バインダーを含有する。これによって、すべての原料の混合物によって作られる成分の注入及び良好な抵抗が可能になる。この混合物は他の添加剤を含有していてもよい。また、これらの原料は、固体、粉末、液体又はペーストのような異なるテクスチャを有していることができる。また、混合物の構造は、その混合物が作られるとき、特に、樹脂のいくつかの相補的な成分が重合反応を行うときに、変わることができる。なお、これに限定されない。
【0004】
無機セラミックス製部品の製造プロセス全体は、少なくとも以下のステップを備える。
− 原料を用意するステップ
− 原料を混合すること、又は/及び必要であれば2種類ずつ(又はそれより多く)あらかじめ混合することを行うステップ
− 均質化するステップ
− 粒状化するステップ
− 特に、プレス用のチャンバー内において、前記均質化するステップと前記粒状化するステップによって得られる粉末又は供給原料のペレットの特定量をプレスして、「緑色部分」として知られるブランクを作るステップ
このプレス操作は、圧力の下で、特に、前記均質化するステップと前記粒状化するステップから得られた粉末又は供給原料ペレットの特定量を加熱する手段を備えるねじインジェクター内において、射出成形によって行うことができる。
− 適切な溶媒内における混合物の特定の構成物質の燃焼(熱的デバインド)及び/又は溶解(溶媒デバインド)のための温度制御されたデバインドを行うステップ
− 第2の熱的デバインドプロセスのために、デバインドの後に前記緑色部分を熱処理して、仕上がり部品に最終的なコヒーレンシーを与える焼結させるステップ
この熱処理は寸法を収縮させて、最終的な寸法構成を備えた部品を得ることを可能にする。
− 部品の表面仕上げ処理を行うステップ
【0005】
本発明は、セラミックス又は金属を得るために粉末冶金学的混合を促進させる射出成形用組成物のための最適化されたバインダーを提供して、収縮係数が制御された高度に複製可能な品質の生産物を得ることを特定の目的とする。
【0006】
例として、出願人による国際特許出願WO2014/191304が既に知られている。これは、焼結された無機粉末及び有機バインダーを含有する成型されたセラミックス又は金属製の部品を製造するための射出成形用組成物(供給原料)を開示しており、この有機バインダーは、実質的に、エチレン及びメタクリル酸のコポリマー、ポリエチレン、ポリプロピレン、アクリル樹脂及びワックスの混合物によって形成されている。
【0007】
このような供給原料には多くの利点がある。特に、前記の供給原料は良好な均質性と良好な流動率を与え、これによって、より複雑な形の金属又はセラミックス製の部品の製造を可能にする。また、前記の供給原料は、(取り扱い及び様々な仕上げ操作にて)発生する応力に対する緑色部分とバインダーの機械抵抗を向上させ、溶媒デバインドを行うことを可能にし、これによって、単純な熱処理によって除去できる非汚染性の溶媒を用いて有機バインダー部分を除去することができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、溶媒デバインドを効率的にし、審美的な品質が向上した部品を得るように、注入される組成物の粘性を向上させた新規な供給原料を提案することによって前記課題を解決することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
このような状況を鑑み、本発明は、40〜55体積%の高分子
基材と、35〜45体積%のワックスの混合物又はワックスとパーム油の混合物と、及び少なくとも5体積%の少なくとも1種類の界面活性剤とを成分として含有する射出成形用組成物のためのバインダーに関する。前記高分子
基材は、エチレン及びメタクリル酸又はアクリル酸のコポリマー、エチレンとプロピレンのコポリマー、及び/又は無水マレイン酸がグラフトされたポリプロピレンと、及びイソプロピルアルコール、プロピルアルコール、テレピン及びこれらの混合物からなる群から選ばれた溶媒内において溶解可能であり、酢酸酪酸セルロース、ポリビニルブチラール及びコポリアミドからなる群から選ばれたポリマーとによって作られ、当該バインダーの各成分の量は、それらの成分の合計が当該バインダーの100体積%であるような量である。
【0010】
本発明は、さらに、成形された金属又はセラミックスの部品の製造のために意図された射出成形用組成物(供給原料)であって、76〜96重量%の無機粉末と、及び4〜24重量%の上で定められたバインダーとを含有するものに関する。
【0011】
本発明に係る射出成形用組成物によって、注入される組成物の粘性を改善させ、溶媒デバインドを効率的にし、審美的な品質が向上した部品を得ることが可能になる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明によると、射出成形用組成物のためのバインダーは、以下の成分を含有する。
− 40〜55体積%、好ましくは、45〜54体積%、の高分子
基材
− 35〜45体積%、好ましくは、39〜42体積%、のワックスの混合物又はワックスとパーム油の混合物
− 少なくとも5体積%、好ましくは、5〜15体積%、の少なくとも1種類の界面活性剤
ここで、前記高分子
基材は、エチレン及びメタクリル酸又はアクリル酸のコポリマー、エチレンとプロピレンのコポリマー及び/又は無水マレイン酸グラフトされたポリプロピレンと、及びイソプロピルアルコール及び/又はプロピルアルコール及び/又はテレピンに溶け、酢酸酪酸セルロース、ポリビニルブチラール及びコポリアミドからなる群から選ばれるポリマーとによって形成されており、各バインダー成分の量は、これらの量の合計が当該バインダーの100体積%となるようにされる。
【0013】
好ましくは、本発明のバインダーの高分子
基材は、2〜7体積%のエチレン及びメタクリル酸又はアクリル酸のコポリマーと、0〜40体積%のエチレンとプロピレンのコポリマーと、0〜35体積%の無水マレイン酸がグラフトされたポリプロピレンとを含有しており、ここで、前記エチレンとプロピレンのコポリマー及び前記無水マレイン酸がグラフトされたポリプロピレンの合計量は、30〜40体積%であり、さらに、バインダーの100体積%までの6〜15体積%のイソプロピルアルコール及び/又はプロピルアルコール及び/又はテレピン内において溶解可能なポリマーを含有し、各バインダー成分の量は、それらの合計が当該バインダーの100体積%であるようにされる。
【0014】
好ましくは、前記高分子
基材は、エチレンとプロピレンのコポリマー及び無水マレイン酸がグラフトされたポリプロピレンの混合物を含有する。
【0015】
好ましくは、本発明のバインダーの高分子
基材は、2〜7体積%のエチレン及びメタクリル酸又はアクリル酸のコポリマーと、25〜30体積%のエチレンとプロピレンのコポリマーと、5〜10体積%の無水マレイン酸がグラフトされたポリプロピレンと、及びバインダーの100体積%までの6〜15体積%のイソプロピルアルコール及び/又はプロピルアルコール及び/又はテレピン内において溶解可能なポリマーとを含有する。
【0016】
さらに好ましくは、本発明のバインダーの高分子
基材は、3〜5体積%のエチレン及びメタクリル酸又はアクリル酸のコポリマーと、26〜29体積%のエチレンとプロピレンのコポリマーと、6〜8体積%の無水マレイン酸がグラフトされたポリプロピレンと、及びバインダーの100体積%までの6〜12体積%のイソプロピルアルコール及び/又はプロピルアルコール及び/又はテレピン内において溶解可能なポリマーとを含有する。
【0017】
好ましくは、エチレン−プロピレンのコポリマーは、エチレンとプロピレンの(ランダムな)統計コポリマーであり、融点が140〜150℃であり、この融点は、前記コポリマーが含有するエチレンとプロピレンの百分率に応じて変わる。例えば、酸化物と窒化物粉末の場合、前記エチレンとプロピレンの統計コポリマーは、好ましくは、より多くのプロピレンを含有し融点が約147℃である。金属粉末の場合、前記エチレンとプロピレンの統計コポリマーは、好ましくは、より多くのエチレンを含有し融点が約140℃である。
【0018】
好ましくは、前記エチレン及びメタクリル酸又はアクリル酸のコポリマーは、3〜10重量%のメタクリル酸又はアクリル酸のコモノマーを含有する。
【0019】
好ましくは、前記無水マレイン酸がグラフトされたポリプロピレンは、グラフト率が1〜2%、融点が100〜140℃である。
【0020】
好ましくは、前記イソプロピルアルコール及び/又はプロピルアルコール及び/又はテレピン内において溶解可能なポリマーは、当該ポリマーの重量に対して、ブチリル含有量が37〜53重量%であり、アセチル含有量が2〜13重量%であり、融点が125〜165℃であり、分子量が16000〜40000である酢酸酪酸セルロースである。
【0021】
好ましくは、前記ワックスは、カルナウバ(Carnauba)ワックス、パラフィンワックス又はこれらの混合物である。前記ワックスがパーム油との混合物である場合、前記ワックスは、好ましくは、カルナウバワックスである。
【0022】
別の好ましい特徴によると、前記界面活性剤は、N,N’−エチレンビスステアルアミド、ステアリン酸とパルミチン酸の混合物(ステアリン)又はこれらの混合物である。
【0023】
別の特徴によると、前記界面活性剤は、イソプロピルアルコール及び/又はプロピルアルコール及び/又はテレピン内において溶ける。
【0024】
本発明は、さらに、76〜96重量%の無機粉末と、及び4〜24重量%の上で定められたバインダーとを含有している、成形された金属又はセラミックスの部品を製造することが意図された射出成形用組成物(供給原料)に関する。
【0025】
特定の特徴によると、前記射出成形用組成物の前記無機粉末は、酸化物粉末、窒化物粉末、炭化物粉末、金属粉末又はこれらの混合物からなる群から選ぶことができ、好ましくは、前記無機粉末は、アルミナ粉末、酸化ジルコニウム粉末、炭化クロム粉末、炭化チタン粉末又は炭化タングステン粉末、金属性タングステン粉末又は窒化ケイ素粉末、ステンレス鋼粉末、金属性チタン粉末、又はこれらの混合物からなる群から選ばれる。
【0026】
射出成形用組成物の好ましい実施形態において、前記射出成形用組成物は、重量%で、
* 76〜88%のアルミナ及び12〜24%の上で定められている本発明に係るバインダーか、
* 76〜88%のアルミナ、0.1〜0.6%の酸化マグネシウム及び12〜24%の本発明のバインダーか、
* 58〜86.5%の酸化ジルコニウム、3.9〜4.6%の酸化イットリウム、0.18〜18.5%のアルミナ及び9〜22%の本発明のバインダーか、
* 61.5〜84%の酸化ジルコニウム、3.9〜4.6%の酸化イットリウム、0.2〜9%のアルミナ、2〜5.5%の酸化鉄、酸化コバルト、酸化クロム、酸化チタン、酸化マンガン、酸化亜鉛又はこれらの酸化物の混合物からなる群から選ばれる無機顔料及び9〜22%の本発明のバインダーか、
* 88〜91%の炭化クロム又は炭化チタン及び9〜12%の本発明のバインダーか、
* 93〜96%の炭化タングステン又は金属性タングステン及び4〜7%の本発明のバインダーか、あるいは
* 78〜85%の窒化ケイ素及び15〜22%の本発明のバインダー
を含有する。
【0027】
本発明に係る成形された金属又はセラミックスの部品を製造することが意図された射出成形用組成物(供給原料)は、同じ剪断速度に対して、既知の供給原料よりも粘性が低い。したがって、本発明の組成物は、射出成形するときに、特に、壁の間が狭い領域にて、各箇所への充填を改善させることができる。また、本発明に係る組成物は、特に、イソプロピルアルコール及び/又はプロピルアルコール及び/又はテレピン溶媒内におけるバインダー成分の改善された除去を通して、部品のより効率的な溶媒デバインドを可能にする。沸点が97℃であるプロピルアルコールは、特に、カルナウバワックス(融点が82℃)の改善された除去を通して、効率を改善するためにより高い温度でデバインドすることを可能にする。
【0028】
本発明の組成物は、さらに、目に見える亀裂や溶接線がないような表面の外観が改善された成型された改善され焼結された部品を得ることを可能にする。
【0029】
本発明について、以下の例を用いて詳細に説明する。なお、これに限定されない。
【0030】
例
バインダーのポリマー部分が約150℃の温度で無機粉末と混合され、プレ混合物を作る。前記プレ混合物にワックスと界面活性剤が加えられ、約180℃まで温度が上げられて、一種の均質ペーストを形成する。これは冷却され粒状化されて固化する。そして、既知の射出成形技術による成形された部品の製造に用いることができる供給原料を形成するように維持される。
【0031】
この技術は、通常、空洞が形成された型内における高圧の熱間射出成形操作を伴う。部品は空洞内で冷却され、その後に型から取り出される。これらのプロセスはすべて、約170〜180℃で行われる。そして、緑色部分は焼結される前にイソプロピルアルコールにおいてデバインドされる。デバインドは、部品から有機バインダーの部分を除去し、凝集を維持するためにちょうど十分な量のバインダーを残す。すなわち、緑色部分の成型された形を残す。バインダーは、典型的には、部品が浸された溶媒を加熱することによって緑色部分から除去される。この操作によって、バインダーコンパウンドの少なくとも40%が溶かされなければならない。本発明のバインダーを用いて、緑色部分は、典型的には、イソプロピルアルコール溶媒内に浸され、約70℃の温度まで加熱される。この温度で、界面活性剤及びイソプロピルアルコールに溶けるポリマーが化学的に溶ける間に、ワックス混合物又はワックスと油の混合物が熱によって分解する。溶媒デバインド操作が完了すると、部品が多孔性になる。そして、この部品は高温炉内に配置される。その目的は、第1に、残りのバインダーを除去することである(典型的には、400℃未満の温度での、熱的デバインド)。この操作は、溶媒デバインド時にこの部品内にて形成された多孔性によって促進される。そして、第2に、この部品を高温で焼結させることである。
【0032】
上記の方法によって、無機粉末の性質に応じて以下の表1において示した組成を有する本発明の様々なバインダーによって部品を作った。
【0034】
これらの部品は商業的に入手可能である。エチレン−プロピレンコポリマー(ランダムポリプロピレンコポリマー)は、Total Refining & Chemicalsによって流通されているPPR 10232である。無水マレイン酸がグラフトされたポリプロピレンは、DuPont(商標)によって流通しているFusabond(登録商標)P353である。酢酸酪酸セルロースは、Eastman(商標)によって流通しているCAB-551-0.01である。
【0035】
有機粉末としてSaint-Gobain Zir Blackの黒色の酸化ジルコニウムZrO
2粉末を用いる上の例1にしたがって組成物を作った。この組成物の粘性を直径1mm、長さ20mmのInstron Ceast SR20の毛管レオメーターを用いて測定した。
【0036】
比較のために、国際特許出願WO2014/191304の例1に開示された供給原料組成物の粘性を同じSaint-Gobain Zir Blackの黒色の無機の酸化ジルコニウムZrO
2粉末とともに測定した。
【0039】
本発明に係る射出成形用組成物は、同じ剪断速度に対して、既知の供給原料よりも粘性が低い。
【0040】
また、以下のように、イソプロピルアルコール溶媒内におけるデバインドの際のバインダーの除去が改善される。国際特許出願WO2014/191304に記載されたバインダーの約45%が溶媒内において除去され、他方、本発明のバインダー、特に、酢酸酪酸セルロース、の少なくとも50%が除去された。金属粉末の場合には、除去の百分率は65%にまで達することがある。
【0041】
得られた成型され焼結された部品は、表面外観が向上しており、目に見える亀裂や溶接線が発生していない。