(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6853301
(24)【登録日】2021年3月15日
(45)【発行日】2021年3月31日
(54)【発明の名称】車両バッテリプリチャージ機能
(51)【国際特許分類】
B60W 10/26 20060101AFI20210322BHJP
B60W 10/08 20060101ALI20210322BHJP
B60W 10/06 20060101ALI20210322BHJP
B60W 20/13 20160101ALI20210322BHJP
B60K 6/445 20071001ALI20210322BHJP
B60L 50/16 20190101ALI20210322BHJP
B60L 50/61 20190101ALI20210322BHJP
B60L 58/13 20190101ALI20210322BHJP
【FI】
B60W10/26 900
B60W10/08 900
B60W10/06 900
B60W20/13ZHV
B60K6/445
B60L50/16
B60L50/61
B60L58/13
【請求項の数】19
【外国語出願】
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2019-103730(P2019-103730)
(22)【出願日】2019年6月3日
(62)【分割の表示】特願2016-527399(P2016-527399)の分割
【原出願日】2014年10月24日
(65)【公開番号】特開2019-194077(P2019-194077A)
(43)【公開日】2019年11月7日
【審査請求日】2019年7月3日
(31)【優先権主張番号】14/066,609
(32)【優先日】2013年10月29日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】507342261
【氏名又は名称】トヨタ モーター エンジニアリング アンド マニュファクチャリング ノース アメリカ,インコーポレイティド
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100092624
【弁理士】
【氏名又は名称】鶴田 準一
(74)【代理人】
【識別番号】100114018
【弁理士】
【氏名又は名称】南山 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100160716
【弁理士】
【氏名又は名称】遠藤 力
(74)【代理人】
【識別番号】100180806
【弁理士】
【氏名又は名称】三浦 剛
(72)【発明者】
【氏名】ヘラルド エフ.ステファノン
(72)【発明者】
【氏名】上岡 清城
【審査官】
冨永 達朗
(56)【参考文献】
【文献】
特開2011−219039(JP,A)
【文献】
国際公開第2008/041319(WO,A1)
【文献】
特開2010−274805(JP,A)
【文献】
特開2010−120597(JP,A)
【文献】
特開2010−221745(JP,A)
【文献】
特開2008−308030(JP,A)
【文献】
特開2008−291791(JP,A)
【文献】
特開2001−003779(JP,A)
【文献】
特開2014−187853(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60W 10/26
B60K 6/445
B60L 50/16
B60L 50/61
B60L 58/13
B60W 10/06
B60W 10/08
B60W 20/13
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハイブリッド車をプリチャージするためのシステムであって、
充電状態を有するバッテリと、
変速機と、
後退走行操作を実行するために前記バッテリを予め充電するプリチャージロジックが使用される位置を保存するように構成されたメモリと、
前記変速機に接続され、トルクを前記変速機に出力するように構成されたエンジンと、
前記バッテリ及び前記変速機に接続され、前記変速機からの前記トルクを、前記バッテリを再充電するための電力に変換するように構成された電動発電機と、
オン状態及びオフ状態を有する作動装置と、
前記バッテリ及び前記エンジンに接続され、且つ、前記作動装置がオン状態に切り替えられたとき且つ前記ハイブリッド車が前記保存された前記位置にいるときに、前記後退走行操作に電力を供給するための所要の充電状態に到達するまで前記バッテリを予め前記エンジンによって充電させ、且つ、前記トルクを前記電力に変換する前記電動発電機によって使用されるハイブリッド車バッテリマネジメントロジックを解除する前記プリチャージロジックを作動するように構成されたハイブリッドコントローラと、
を有するシステム。
【請求項2】
請求項1に記載のシステムであって、前記作動装置は、前記充電状態が前記所要の充電状態に到達したときに、オフ状態に切り替えられる、システム。
【請求項3】
請求項1に記載のシステムであって、前記ハイブリッドコントローラは、前記充電状態が前記所要の充電状態に到達する前に、前記作動装置がオン状態からオフ状態に切り替えられたときに、前記バッテリの充電を停止する、システム。
【請求項4】
請求項1に記載のシステムであって、前記所要の充電状態は、ユーザ入力に基づいて設定される、システム。
【請求項5】
請求項1に記載のシステムであって、充電状態ウィンドウがユーザにより入力された条件に基づき拡大される、システム。
【請求項6】
請求項1に記載のシステムであって、充電状態ウィンドウが自動的に拡大される、システム。
【請求項7】
請求項1に記載のシステムであって、前記作動装置は、前記ハイブリッド車のインストルメントパネルにボタンを有する、システム。
【請求項8】
ハイブリッド車であって、
充電状態を有するバッテリと、
変速機と、
後退走行操作を実行するために前記バッテリを予め充電するプリチャージロジックが使用される位置を保存するように構成されたメモリと、
前記変速機に接続され、前記バッテリを充電するための電力に変換されるトルクを出力するように構成されたエンジンと、
オン状態及びオフ状態を有する作動装置と、
前記作動装置がオン状態に切り替えられたとき且つ前記ハイブリッド車が前記保存された前記位置にいるときに、前記後退走行操作に電力を供給するための所要の充電状態に到達するまで前記バッテリを予め前記エンジンによって充電させ、且つ、前記トルクを前記電力に変換するために使用されるハイブリッド車バッテリマネジメントロジックを解除する前記プリチャージロジックを作動し、
前記エンジンに前記充電状態が前記所要の充電状態に到達するまで前記バッテリを予め充電させるように構成されたプロセッサと、
を有するハイブリッド車。
【請求項9】
請求項8に記載のハイブリッド車であって、前記後退走行操作は、斜面に後退で並列駐車する、ハイブリッド車。
【請求項10】
請求項8に記載のハイブリッド車であって、前記後退走行操作は、前記ハイブリッド車に取り付けられたトレーラーとともに後退する、ハイブリッド車。
【請求項11】
請求項8に記載のハイブリッド車であって、所要の充電状態ウィンドウがインストルメントパネルを介してユーザにより入力された条件に基づき拡大される、ハイブリッド車。
【請求項12】
請求項8に記載のハイブリッド車であって、所要の充電状態ウィンドウが自動的に拡大される、ハイブリッド車。
【請求項13】
ハイブリッド車をプリチャージするための方法であって、
後退走行操作を実行するためにバッテリを予め充電するプリチャージロジックが使用される位置をメモリに保存するステップと、
作動装置からのオン信号を受け取るステップと、
エンジン及び前記バッテリと接続したハイブリッドコントローラを使用して、前記作動装置がオン状態に切り替えられたとき且つ前記ハイブリッド車が前記保存された前記位置にいるときに、前記後退走行操作に電力を供給するための所要の充電状態に到達するまで前記バッテリを予め前記エンジンによって充電させ、且つ、変速機からのトルクを電力に変換するために使用されるハイブリッド車バッテリマネジメントロジックを解除する前記プリチャージロジックを作動するステップと、
前記ハイブリッド車バッテリマネジメントロジックを解除するステップと、
前記エンジンを使用して、前記バッテリの充電状態が前記所要の充電状態に到達するまで、前記バッテリを充電するステップと、
を有する方法。
【請求項14】
請求項13に記載の方法であって、
前記ハイブリッドコントローラによって、前記ハイブリッド車の現在位置は、前記後退走行操作を実行するために前記バッテリを予め充電する前記プリチャージロジックが使用される前記位置であると決定するステップをさらに有し、
前記ハイブリッドコントローラによって、前記ハイブリッド車の前記現在位置は、前記後退走行操作を実行するために前記バッテリを予め充電する前記プリチャージロジックが使用される前記位置であると決定するステップに応答して、前記プリチャージロジックを作動する、方法。
【請求項15】
請求項13に記載の方法であって、前記所要の充電状態は、自動的に決定される、方法。
【請求項16】
請求項13に記載の方法であって、前記所要の充電状態は、ユーザ定義条件から決定される、方法。
【請求項17】
請求項13に記載の方法であって、前記充電状態が前記所要の充電状態に到達したときに、前記作動装置をオフ状態に切り替えるステップをさらに有する、方法。
【請求項18】
請求項13に記載の方法であって、
前記ハイブリッドコントローラによって、前記ハイブリッド車の現在位置は、前記後退走行操作を実行するために前記バッテリを予め充電する前記プリチャージロジックが使用される位置であると決定するステップをさらに有し、
前記ハイブリッドコントローラによって、前記ハイブリッド車の前記現在位置は前記位置であると決定するステップに応答して、前記プリチャージロジックを作動する、方法。
【請求項19】
請求項13に記載の方法であって、前記オン信号を受け取るステップは、時間又は前記ハイブリッド車の前記位置に応じている、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して、バッテリ充電に関し、特に、ハイブリッド車のバッテリが充電されるときの制御をユーザに提供するシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
ハイブリッド車は、環境影響に関心のある消費者の間で加速度的に普及している。ハイブリッド車は、電気推進システムと連動した内燃エンジンを利用する。このハイブリッドシステムにより、ハイブリッド車は、従来の車両よりも燃費の向上を達成し、内燃エンジンのみを利用した従来の車両を操作するときに通常発生する有毒な副生成物の生成を低減して、個人の二酸化炭素排出量の軽減に役立つ。この電気推進システムは、バッテリにより稼働され、再充電を要する。ハイブリッド車において、ハイブリッドシステム制御ロジックは、バッテリの充電状態を監視して、バッテリの再充電をするときを判定する。ハイブリッドシステム制御ロジックは、エンジンを作動して、必要に応じてバッテリを充電する。特定の性能範囲において、エンジンは、バッテリを充電するためにオンにすることを強いられる。これは、運転手にバッテリの充電状態を常に又は能動的に管理させる必要がなく、車両を運転させることができる。運転手は、バッテリを充電するときを直接制御しない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
通常のハイブリッドシステム制御ロジックは、バッテリを充電するときを自動で判定し、バッテリの充電状態を維持する。しかし、特定の走行操作は、通常のバッテリの充電状態から利用可能な電力よりもより多くの電力を必要としうる。例えば、斜面にある駐車場に後退で並列駐車又はトレーラーとともに後退というように、車両を後退で運転する場合に、車両は、通常の操作で期待されるよりも多くの電力を必要としうる。残念ながら、バッテリの充電状態が減少すると、車両が十分な電力を有さないため、運転手は、このような操作を実行するのが困難になりうる。運転手は、このような操作が実行されるときをより上手く予想又は認識できるかもしれない。このように、望ましい時間でバッテリの充電をするためには、運転手に手動でエンジンを作動させる必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本出願は、ハイブリッド車のバッテリのためのプリチャージ機能を説明する。プリチャージ機能は、バッテリ充電を強いるために通常のハイブリッド車バッテリマネジメントを解除(オーバーライド)することができる。バッテリは、充電状態(State of charge: SOC)が通常のハイブリッド車バッテリマネジメントシステムを用いて最適化された上限閾値充電状態を超えて充電されてもよい。
【0005】
一実施形態において、ハイブリッド車をプリチャージするためのシステムは、充電状態を有するバッテリと、前記バッテリに接続され且つ前記バッテリを充電するように構成されたエンジンと、オン状態及びオフ状態を有する作動装置と、前記バッテリと前記エンジンに接続され、且つ、前記作動装置がオン状態に切り替えられたときに、前記充電状態が所要の充電状態に到達するまで前記バッテリを充電するために、前記エンジンを作動するように構成されたプロセッサと、を有する。
【0006】
別の実施形態において、ハイブリッド車は、充電状態を有するバッテリと、前記バッテリを充電するように構成されたエンジンと、オン状態及びオフ状態を有する作動装置と、前記作動装置がオン状態に切り替えられたときに、前記充電状態が所要の充電状態に到達するまで、前記エンジンを作動するように構成されたプロセッサと、を有する。
【0007】
さらに別の実施形態において、ハイブリッド車をプリチャージするための方法は、作動装置からのオン信号を受け取るステップと、エンジン及びバッテリと連動したプロセッサを使用して、前記作動装置がオン状態のときに、前記エンジンを作動するステップと、前記エンジンを使用して、前記バッテリの充電状態が所要の充電状態に到達するまで、前記バッテリを充電するステップと、を有する。
【0008】
本開示の他のシステム、方法、機能、及び利点は、以下の図面及び詳細な説明の審査の上で、当業者に明らかであり又は明らかになる。このような追加的なシステム、方法、機能及び利点の全ては、本明細書中に含まれ、本開示の対象の範囲内にあり、添付のクレームにより保護されることを意図する。図面に表す構成要素は、同一縮尺である必要はなく、本開示の重要な機能を効果的に図示するために強調されてもよい。複数の図面中、同種の参照番号は、異なる図を通して同種の部品を指し示す。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の一実施形態によるハイブリッド車の動力伝達装置の図である。
【
図2A】本発明の一実施形態による通常の後退中におけるエンジンと2つの電動発電機との関係のノモグラフである。
【
図2B】本発明の一実施形態による低充電状態で後退中におけるエンジンと2つの電動発電機との関係のノモグラフである。
【
図3】本発明の一実施形態によるプリチャージロジックのフローチャートである。
【
図4】本発明の一実施形態による充電状態の履歴のグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明のあらゆる機能の実施形態を実施する装置、システム及び方法は、図面を参照するとともに後述される。図面及び関連する記述は、本出願のいくつかの実施形態を説明するために与えられるが、本出願の範囲を限定するものではない。複数の図面を通して、参照番号は再利用され、参照される要素間の対応を示す。
【0011】
一実施形態において、
図1に示すように、本出願は、ハイブリッド車を含む。ハイブリッド車100は、駆動力ユニット105及び車輪170を含む。駆動力ユニット105は、エンジン110、電動発電機191、電動発電機192、バッテリユニット195、バッテリモジュール196、インバータボックス197、ブレーキペダル130、ブレーキペダルセンサ140、変速機120、ハイブリッド制御モジュール107、ボタン180、センサ182及びシフタ184を含む。ハイブリッド制御モジュール107は、メモリ160及びプロセッサ150を含む。
【0012】
エンジン110は、主に車輪170を駆動する。エンジン110は、内燃エンジンであってもよい。内燃エンジンは、ガソリン、エタノール、ディーゼル、バイオ燃料又は燃焼に適した他のタイプの燃料といったような燃料を燃焼する。エンジン110によるトルク出力は、変速機120により受信される。電動発電機191と192は、同様に変速機120へトルクを出力することもできる。エンジン110と電動発電機191及び192は、遊星ギヤ(
図1に図示しない)を通して連結されてもよい。変速機120は、車輪170に印加トルクを送る。エンジン110によるトルク出力は、車輪170に対する印加トルクに直接転換されない。
【0013】
電動発電機191及び192は、走行モードでトルクを出力するモーターとして機能し、且つ、再生モードでバッテリユニット195を再充電する発電機として機能する。電動発電機191及び192からの、又は電機191及び192に対して送られる電力は、インバータボックス197を経由してバッテリユニット195を通過する。ブレーキペダルセンサ140は、ブレーキペダル130に加わる圧力を検出でき、車輪170に対する印加トルクにさらに作用しうる。シフタ184は、運転手に前方向と後方向の間で切り替えさせる。
【0014】
センサ182は、ハイブリッド車100の操作を補助しうる1つ又は複数のあらゆるセンサであってもよい。センサ182は、変速機120の出力軸に接続される速度センサであってもよく、プロセッサ150により車両速度に変換される速度入力を検出する。センサ182は、ハイブリッド車の車体に接続される加速度センサであってもよく、減速トルクに応じてハイブリッド車100の実際の減速を検知する。センサ182は、ハイブリッド車100が走行する路面のグレードを検出可能なグレードセンサであってもよい。センサ182は、ハイブリッド車100の位置を検出可能なGPSユニットであってもよい。
【0015】
ボタン180は、ハイブリッド車100のインストルメントパネル(
図1に図示しない)にあるボタンであってもよく、又は、ハンドルの上若しくは近く又はダッシュボードの上のように運転手の手が届く範囲に配置されてもよい。ボタン180は、オン状態及びオフ状態を有するスイッチ又は他の同様な装置であって、オン又はオフの状態を示す信号を送信可能な装置であってもよい。任意の選択で、ボタン180は、オン又はオフとして解釈しうる信号を送信可能な表示スクリーン上のタッチセンサー領域であってもよい。プロセッサ150は、表示スクリーンに接続され、ボタン180からの信号を検知してプリチャージロジックを作動してもよい。
【0016】
変速機120は、ハイブリッド車に適した変速機である。変速機120は、電動発電機191及び192とともにエンジン110と連動する電気式無段変速機(Electrically Controlled Variable Transmission:ECVT)となりうる。変速機120は、エンジン110及び電動発電機191と192の組合せからトルク出力を送ることができる。プロセッサ150は、変速機120を制御し、メモリ160に保存されたデータを用いて車輪170に送られる印加トルクを決定する。例えば、プロセッサ150は、特定の車両スピードで、エンジン110が車輪170に対する印加トルクのごく一部を与えるべきとする一方で、電動発電機191が印加トルクの大部分を与えるべきと決定をしてもよい。プロセッサ150及び変速機120は、車両速度とは無関係にエンジン110のエンジン速度を制御することができる。
【0017】
バッテリユニット195は、車両で利用できる再充電可能なバッテリであり、且つ、複数の電池を含めてもよい。バッテリモジュール196は、バッテリユニット195の充電状態及び/又はハイブリッド車100の充電状態を判定するプロセッサ150に送信される変数を測定可能である。バッテリモジュール196は、バッテリユニット195の電圧、電流、気温、電荷受容性、内部抵抗、自己放電、磁気特性、健康状態及び/又は他の状態又は変数を測定してもよい。他の実施形態において、充電状態は、クーロンカウンティング、量子機構、インピーダンス分光法又は比重計により判定される。他の実施形態において、バッテリモジュール196は、バッテリマネジメントシステム(BMS)であって、内蔵のセンサ及びプロセッサを使用してバッテリユニット195の充電状態を判定する。別の実施形態において、ハイブリッド車100は、BMSを含まなくてもよく、且つ、プロセッサ150は、バッテリモジュール196からのセンサデータを使用してハイブリッド車100の充電状態を判定してもよい。
【0018】
一実施形態において、プロセッサ150は、バッテリユニット195又はハイブリッド車100の現在の充電容量に対して、バッテリユニット195又はハイブリッド車100に保存される電力値に基づき、車両の充電状態のパーセンテージ又は割合を判定してもよい。蓄積エネルギーは、充電、回生ブレーキ又は他の手段を通して得られてもよい。別の実施形態において、充電状態は、バッテリユニット195又はハイブリッド車100のための基準容量に対する蓄積エネルギー値に基づき判定されてもよい。さらに別の実施形態において、充電状態は、バッテリユニット195又はハイブリッド車100と関連付けた別の所定値に対するパーセンテージ又は割合として測定されてもよい。従来技術において知られている充電状態のパーセンテージ、値又は数を判定する他のシステム又は方法は、本開示の範囲を限定することなく使用されてもよい。
【0019】
従来の車両は、トルク変換装置又はクラッチを使用し、後退に切り替えたときにエンジンからのトルクを逆作動する。しかし、ハイブリッド車は、後退ギヤを有しないECVTを使用する。エンジンは、後退ギヤなしで、一方向のみにトルクを生成し、エンジンは、車両を後退するために使用できない。代わりに、電動発電機が遊星ギヤを通して車輪に接続される。逆作動するために、電動発電機は、逆トルクを生成する。エンジンは、ハイブリッド車が後退するときには使用されない。このように、ハイブリッド車は、後退のためにはバッテリ電力にのみ依存する。
【0020】
バッテリユニットが十分な充電状態を有するとき、ハイブリッド車は、後退操作を実行してもよい。斜面にある駐車場に後退で並列駐車又は取り付けられたトレーラーとともに後退というように、特定の後退操作は、より多くの電力を必要とし、より高い充電状態を要する。充電状態が不十分なとき、ハイブリッド車は、バッテリユニットを再充電し且つ充電状態を増やすため、通常はエンジンをオンにする。ハイブリッド車は、通常運転中の充電状態を管理し、燃焼効率を考慮しながら最低限の充電状態を維持する。しかし、ハイブリッド車は、運転手が後退走行操作の実行を望むときを予測しない。
【0021】
図2Aと
図2Bは、エンジン及びMG1とMG2とラベル付けされた2つの電動発電機のトルクの間の関係を示すノモグラフを表す。エンジンは、
図1中のエンジン110と対応しえ、MG1及びMG2は、
図1中の電動発電機191と192に対応しうる。エンジン、MG1及びMG2は、遊星ギヤにより接続されているので、エンジン、MG1及びMG2は、完全に他から独立してトルクを生成することはできない。より具体的には、エンジン、MG1及びMG2は、遊星ギヤにより接続されているので、これらの要素のうちの一つがそのrpm(revolutions per minute:毎分あたりの回転数)を変化させると、他の要素にも影響する。y軸は、正及び負のrpmに対応する。MG2は、さらに車輪に接続されているので、MG2のrpmもまた、車両速度と直接関係する。MG2が正のrpmを有するとき、車両は前方向に走行する。MG2が負のrpmを有するとき、車両は後退する。矢印は、正又は負のいずれのトルクも描写する。
【0022】
図2Aは、車両の通常後退のノモグラフ200を表す。エンジンは、車両を後退させる負トルクを生成できず、且つ、それ故に、エンジンが停止する。エンジンは、0rpmを有し、且つ、0トルクを生成する。ハイブリッドシステムは、充電状態を監視し、且つ、バッテリは、通常は後退するための十分な充電状態を有するため、エンジンは、バッテリを再充電する必要がない。変速機の出力軸に接続されたMG2は、ハイブリッド車を後退走行に変える負トルク202を生成する。十分な充電状態で、MG2は、ハイブリッド車が後退操作を実行できる十分な負トルクを生成する。
【0023】
図2Bは、充電状態が後退操作を実行するのに不十分であるときの場合のノモグラフ250を表す。充電状態が低過ぎるとき、ハイブリッドシステムは、通常はエンジンをオンにしてバッテリを再充電する。エンジンは、正のrpmを有し、幾分かの正トルク254を生成する。MG1は、正のrpmと負のトルク252を有するとバッテリを再充電する。しかし、遊星ギヤにより、エンジンが正トルク254を生成し、且つ、MG1が負トルク252を生成するとき、逆トルク258が生成される。MG1からの逆トルク258は、MG2からの所望の負トルク256を効果的に相殺する。完全に相殺されないとしても、負トルク256は、斜面上で後退するとき、逆トルク258及び重力の力の両方に打ち勝つのに不十分であるかもしれない。これは、エンジン回転、MG1及びMG2の回転をもたらすが、ハイブリッド車の動作はもたらさない。このように、ハイブリッド車は、MG1、MG2及びエンジンが作動する間に燃料を燃焼するが、後退走行をするわけではないので、運転手を苦しい状況に置く。運転手は、次いで、シフト操作の選択肢を駐車として放置し、動かないままでバッテリを再充電する。
【0024】
この苦境を防止するために、運転手は、運転手が後退操作を実行する前に、ハイブリッド車100にバッテリユニット195をプリチャージさせたいと思うかもしれない。後退操作を見込んで、運転手は、ハイブリッドシステムにバッテリを充電することを指示したいと思うかもしれないが、現在のハイブリッドシステムは、その選択肢を運転手に与えない。むしろ、運転手は、通常運転から十分にバッテリが充電されることを望んだであろう。さもなければ、運転手は、再充電のために駐車場で無為に時を過ごすことになる。ハイブリッド車100は、手動でプリチャージを強いるという選択肢を運転手に有利に提示し、ハイブリッドシステムの通常のバッテリマネジメントを解除する。
【0025】
図3は、本開示の一実施形態によるプリチャージの方法を描くフローチャート300を表す。ステップ310は、運転手及び/又はプロセッサ150により作動装置からオン信号を受け取る。ハイブリッド車100において、ボタン180は、オン状態に切換可能であり、あるいはプロセッサ150に信号を送信する。
【0026】
運転手は、ボタン180を介してプリチャージロジックをオンにする決定をしてもよい。別の実施形態において、プロセッサ150は、特定の条件に合致したときにプリチャージロジックを自動的に作動してもよい。メモリ160は、運転手からの手動入力からの、又は、行動履歴からのいずれかで、プリチャージ機能が共通に使用される位置を保存してもよい。例えば、運転手は、丘の上に住んでいる可能性があり、丘の上で縦列駐車をする前にプリチャージを要する。センサ182は、GPSユニットであってもよく、ハイブリッド車が丘に近付いていくとプロセッサ150に警告する。プロセッサ150は、周辺をさらに考慮して、プリチャージが必要か否かを判定する。例えば、運転手は、センサ182により検出されたトレーラーパークの近くにいる可能性があるが、トレーラーを後退牽引することを見越してプリチャージを始動してもよい。位置を保存することで、プロセッサ150は、その位置の周辺又はその位置にいるときにプリチャージロジックを自動的に開始してもよい。
【0027】
プロセッサ150は、運転手が通常帰宅する時刻のように特定の時刻にプリチャージロジックをさらに自動的に開始してもよい。また、プロセッサ150は、センサ182により検出された急峻の程度のように、プリチャージを要し得る他の条件をチェックする。
【0028】
プリチャージロジックを作動することに加えて、運転手は、望ましい充電状態に設定したいと思うかもしれない。ハイブリッドシステムは、
図4中の充電状態ウィンドウ410のような通常の充電状態ウィンドウを有し、充電状態ウィンドウは、メモリ160又は無線接続された別のメモリに保存されてもよい。通常の充電状態ウィンドウ又はエリアは、通常の操作中に充電状態を区切る。充電状態が充電状態ウィンドウの最小又は下限閾値に到達したときに、プロセッサ150は、エンジン110を作動してバッテリユニット195を再充電する。充電状態が充電状態ウィンドウの最大又は上限閾値に到達したときに、プロセッサ150は、エンジン110をオフにしてバッテリユニット195の充電を停止する。充電状態ウィンドウは、事前に決定され、且つ、バッテリユニット195の寿命を最大にすることに基づき設定してもよい。充電状態ウィンドウは、事前にベンチテストされ、且つ、通常の走行操作に適するものが決定されてもよい。
【0029】
所要の充電状態は、充電状態ウィンドウの上限閾値と同じであってもよい。しかし、運転手は、
図4中の所要の充電状態420のように、所要の充電状態を上限閾値を超えて設定したいと思うかもしれない。運転手は、ハイブリッド車100内のインターフェースを介して設定してもよく、又は、プリチャージロジックは、事前に設定された過充電閾値を有してもよい。運転手は、過充電がバッテリユニット195の寿命に悪影響を及ぼし得ることについて通知される義務があってもよい。
【0030】
図3に戻ると、ステップ320で、ボタン180がオン状態にあるときに、プロセッサ150は、エンジン110を作動する。プリチャージロジックが作動すると、故にプロセッサ150は、バッテリユニット195を充電するためにエンジン110をオンにする。
【0031】
ステップ330で、バッテリユニット195は、充電状態が所要の充電状態に到達するまで、エンジン110により充電される。所要の充電状態は、通常の充電状態ウィンドウの上限閾値、又は、バッテリ195が過充電となるようなより高い充電状態であってもよい。一旦バッテリユニット195が所要の充電状態に到達すると、プリチャージロジックは停止され、且つ、エンジンは切られて充電を停止してもよい。
【0032】
また、運転手は、プリチャージを早めに終了する選択肢を有する。運転手は、ボタン180を押してオフ状態にする。プリローンチロジックは、次いで停止される。また、エンジン110は切られて充電を停止する。しかし、通常のハイブリッドシステムロジックは、通常のハイブリッドシステムロジックに従い、エンジン110を維持して充電を続ける決定をしてもよい。
【0033】
図4は、充電状態レベルの変化を図示する充電状態グラフ400を表す。充電状態ウィンドウは、40%と80%の間にある。ハイブリッドシステムは、充電状態が60%を下回ると大抵は充電され、又は、それを超えると大抵は充電されなくなるように、維持することが望ましい充電状態レベルとして60%を設定してもよい。別の実施形態において、充電状態ウィンドウは、複数の異なる閾値を有してもよく、且つ、望ましい充電状態レベルは、必要に応じて異なる値としてもよい。
【0034】
充電状態曲線430により示すように、充電状態レベルは、ハイブリッド車が走行するにつれて変動する。時刻t
0の時点で、運転手は、ボタン180を押してプリチャージロジックを作動する。充電状態レベルは、所要の充電状態420、
図4中の90%まで上昇する。このように、プリチャージロジックは、望ましいレベルまで充電状態を運転手に手動で充電させ、充電状態ウィンドウ410を超えてもよい。所要の充電状態420により、ハイブリッド車は、後退操作を実行することができる。
【0035】
当業者は、本明細書中に開示された実施例と関連して記載されたロジカルブロック、モジュール及びアルゴリズムステップのあらゆる具体例が、電子機器、コンピュータソフトウェア又は両方の組合せとして実装されてもよいことを理解する。さらに、本発明は、プロセッサ又はコンピュータに特定の機能を実施又は実行させる機械可読媒体にも組み込むことができる。
【0036】
ハードウェアとソフトウェアの互換性を明確に説明するために、あらゆる具体的な構成要素、ブロック、モジュール、回路及びステップは、これらの機能性に関し、概して上述された。かかる機能性は、ハードウェア又はソフトウェアとして実装され、特定のアプリケーション及びシステム全体に課される設計上の制約に依存する。熟練の技術者は、各々の実施形態について異なる方法で記載された機能性を実装するかもしれないが、このような実装判断は、開示された装置及び方法の範囲からの逸脱を招くものとして解釈されるべきではない。
【0037】
本明細書中に開示された実施例と関連して説明されたあらゆる具体的なロジカルブロック、ユニット、モジュール及び回路は、本明細書に記載の複数の機能を実行するように設計された汎用プロセッサ、デジタルシグナルプロセッサ(DSP)、特定用途向け集積回路(Application Specific Integrated Circuit:ASIC)、FPGA(フィールド・プログラマブル・ゲート・アレイ)又は他のプログラム可能なロジックデバイス、個別のゲート、トランジスタロジック、個別のハードウェア構成要素、又はこれらのいずれかの組合せとともに、実装され又は実行されてもよい。汎用プロセッサは、マイクロプロセッサであってもよいが、選択的に、プロセッサは、いかなる従来のプロセッサ、コントローラ、マイクロコントローラ又はステートマシンであってもよい。また、プロセッサは、計算装置の組合せとして実装されてもよく、例えば、DSPとマイクロプロセッサの組合せ、複数のマイクロプロセッサ、DSPコアと連動する1つ又は複数のマイクロプロセッサ、又は、その他このような設計として実装されてもよい。
【0038】
本明細書中に開示された実施例と関連して説明された方法又はアルゴリズムの複数のステップは、ハードウェアの中、プロセッサにより実行されるソフトウェアモジュールの中、又はこの2つの組合せの中に直接組み込まれてもよい。方法又はアルゴリズムの複数のステップは、実施例中で与えられた順番から交互に実行されてもよい。ソフトウェアモジュールは、RAMメモリ、フラッシュメモリ、ROMメモリ、EPROMメモリ、EEPROMメモリ、レジスタ、ハードディスク、リムーバブルディスク、CD−ROM又は他のいかなる形態をした従来の記憶媒体に内在してもよい。典型的な記憶媒体は、プロセッサが記憶媒体からの、又は、に対して情報を読み取る又は書き込むことができるようにプロセッサと接続している。別の実施形態において、記憶媒体は、プロセッサと一体化されていてもよい。プロセッサと記憶媒体は、特定用途向け集積回路に内在してもよい。特定用途向け集積回路は、ワイヤレスモデムに内在してもよい。別の実施形態において、プロセッサと記憶媒体は、ワイヤレスモデムの中に別個の構成要素として内在してもよい。
【0039】
開示された実施例についての先の説明は、開示された方法や装置を当業者に製造又は使用可能にさせるために与えられる。これらの実施例に対するあらゆる変更は、当業者にとって明白であり、且つ、本明細書中に定義された原理は、開示の方法及び装置の精神又は範囲から逸脱することなく、他の実施例に適用されてもよい。説明された実施形態は、全側面における具体例としてのみに考えられ、且つ、限定的ではなく、発明の範囲は、それ故に、前述の明細書よりもむしろ添付のクレームにより示される。クレームと同等の意味及び範囲内になる全ての変更は、これらの範囲内に包含される。
本明細書に開示される発明は以下の実施形態を含む。
(1)ハイブリッド車をプリチャージするためのシステムであって、
充電状態を有するバッテリと、
前記バッテリに接続され且つ前記バッテリを充電するように構成されたエンジンと、
オン状態及びオフ状態を有する作動装置と、
前記バッテリ及び前記エンジンに接続され、且つ、前記作動装置がオン状態に切り替えられたときに、前記充電状態が所要の充電状態に到達するまで前記バッテリを充電するために、前記エンジンを作動するように構成されたプロセッサと、
を有するシステム。
(2)上記(1)に記載のシステムであって、前記作動装置は、前記充電状態が前記所要の充電状態に到達したときに、オフ状態に切り替えられる、システム。
(3)上記(1)に記載のシステムであって、前記プロセッサは、前記充電状態が前記所要の充電状態に到達する前に、前記作動装置がオン状態からオフ状態に切り替えられたときに、前記バッテリの充電を停止する、システム。
(4)上記(1)に記載のシステムであって、前記所要の充電状態は、前記プロセッサにより決定される最大の充電状態よりも大きい、システム。
(5)上記(1)に記載のシステムであって、充電状態ウィンドウがユーザによる条件入力に基づき拡大される、システム。
(6)上記(1)に記載のシステムであって、充電状態領域が自動的に拡大される、システム。
(7)上記(1)に記載のシステムであって、前記作動装置は、前記ハイブリッド車のインストルメントパネルにボタンを有する、システム。
(8)ハイブリッド車であって、
充電状態を有するバッテリと、
前記バッテリを充電するように構成されたエンジンと、
オン状態及びオフ状態を有する作動装置と、
前記作動装置がオン状態に切り替えられたときに、前記充電状態が所要の充電状態に到達するまで、前記エンジンを作動するように構成されたプロセッサと、
を有する車。
(9)上記(8)に記載のハイブリッド車であって、前記所要の充電状態は、前記車に後退走行操作を実行することを許可する、車。
(10)上記(9)に記載のハイブリッド車であって、前記後退走行操作は、斜面に後退で並列駐車する、車。
(11)上記(9)に記載のハイブリッド車であって、前記後退走行操作は、前記車に取り付けられたトレーラーとともに後退する、車。
(12)上記(8)に記載のハイブリッド車であって、所要の充電状態領域がインストルメントパネルを介してユーザによる条件入力に基づき拡大される、車。
(13)上記(8)に記載のハイブリッド車であって、所要の充電状態ウィンドウが自動的に拡大される、車。
(14)ハイブリッド車をプリチャージするための方法であって、
作動装置からのオン信号を受け取るステップと、
エンジン及びバッテリと連動したプロセッサを使用して、前記作動装置がオン状態のときに、前記エンジンを作動するステップと、
前記エンジンを使用して、前記バッテリの充電状態が所要の充電状態に到達するまで、前記バッテリを充電するステップと、
を有する方法。
(15)上記(14)に記載の方法であって、前記作動装置は、前記ハイブリッド車のインストルメントパネルにボタンを有する、方法。
(16)上記(14)に記載の方法であって、前記所要の充電状態は、自動的に決定される、方法。
(17)上記(14)に記載の方法であって、前記所要の充電状態は、ユーザ定義条件から決定される、方法。
(18)上記(14)に記載の方法であって、前記作動装置は、前記充電状態が前記所要の充電状態に到達したときに、オフ状態に切り替える、方法。
(19)上記(14)に記載の方法であって、前記所要の充電状態は、前記プロセッサにより決定される最大の充電状態よりも高い、方法。
(20)上記(14)に記載の方法であって、前記オン信号を受け取る前記ステップは、前記オン信号を発する時間又は位置に応じて前記作動装置から前記オン信号を受け取るステップ、をさらに有する、方法。