(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6853323
(24)【登録日】2021年3月15日
(45)【発行日】2021年3月31日
(54)【発明の名称】光学装置
(51)【国際特許分類】
G02B 13/00 20060101AFI20210322BHJP
F21S 2/00 20160101ALI20210322BHJP
F21Y 115/10 20160101ALN20210322BHJP
【FI】
G02B13/00
F21S2/00 330
F21S2/00 340
F21Y115:10
【請求項の数】11
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2019-183553(P2019-183553)
(22)【出願日】2019年10月4日
(65)【公開番号】特開2020-64289(P2020-64289A)
(43)【公開日】2020年4月23日
【審査請求日】2019年10月4日
(31)【優先権主張番号】10-2018-0122263
(32)【優先日】2018年10月15日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】507098483
【氏名又は名称】ヒュンダイ・モービス・カンパニー・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000154
【氏名又は名称】特許業務法人はるか国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】リ ヒュン ス
【審査官】
下村 一石
(56)【参考文献】
【文献】
特開2006−210295(JP,A)
【文献】
特開平01−123209(JP,A)
【文献】
特開2013−214449(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2009/0279296(US,A1)
【文献】
韓国公開特許第10−2015−0116607(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 9/00−17/08
G02B21/02−21/04
G02B25/00−25/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光を照射する光照射部と、
前記光照射部の光出射側に配置され、前記光照射部に第1焦点を形成する第1非球面レンズ部と、
前記光照射部の光出射側に配置され、前記光照射部に前記第1焦点と重なるように第2焦点を形成する第2非球面レンズ部とを含み、
前記第1非球面レンズ部の第1焦点距離と前記第2非球面レンズ部の第2焦点距離とは、互いに異なって形成され、
前記第2非球面レンズ部の前記第2焦点距離は、前記第1非球面レンズ部の前記第1焦点距離より長く形成され、
前記第1非球面レンズ部の前記第1焦点距離をf1とし、前記第1非球面レンズ部の幅の半分をbとし、前記第2非球面レンズ部の前記第2焦点距離をf2とし、前記第1非球面レンズ部と前記第2非球面レンズ部との間の間隔をdとする場合、
前記第1非球面レンズ部と前記第2非球面レンズ部との間隔d=b(f2−f1)/f1
であることを特徴とする光学装置。
【請求項2】
前記第2非球面レンズ部は、前記第1非球面レンズ部の両側にそれぞれ配置されることを特徴とする請求項1に記載の光学装置。
【請求項3】
前記第2非球面レンズ部は、主光軸を基準として両側が対称に形成されることを特徴とする請求項2に記載の光学装置。
【請求項4】
前記第1非球面レンズ部は、前記光照射部側に第1非球面部が形成され、前記光照射部の反対側に第1平面部が形成されることを特徴とする請求項1に記載の光学装置。
【請求項5】
前記第2非球面レンズ部は、前記光照射部側に第2非球面部が形成され、前記光照射部の反対側に第2平面部が形成されることを特徴とする請求項4に記載の光学装置。
【請求項6】
前記第1非球面レンズ部は、縦方向の長さが横方向の長さより長く形成されることを特徴とする請求項1に記載の光学装置。
【請求項7】
前記第1非球面レンズ部は、縦方向の長さが横方向の長さより3倍以上長く形成されることを特徴とする請求項6に記載の光学装置。
【請求項8】
前記第2非球面レンズ部は、縦方向の長さが横方向の長さより長く形成されることを特徴とする請求項6に記載の光学装置。
【請求項9】
前記第2非球面レンズ部は、縦方向の長さが横方向の長さより3倍以上長く形成されることを特徴とする請求項8に記載の光学装置。
【請求項10】
前記光照射部は、LED素子であることを特徴とする請求項1に記載の光学装置。
【請求項11】
前記光照射部は、
光を照射するLED素子と、
前記LED素子から照射される光が透光し、前記第1焦点と前記第2焦点とを重なって形成するオプティック部とを含むことを特徴とする請求項1に記載の光学装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学装置に関し、より詳細には、設計自由度と光効率を向上させ、部品数を低減できる光学装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、プロジェクション光学系は、単一の非球面レンズを用いて光学系を構成する。単一の非球面レンズは、1つの焦点距離を有する非球面レンズである。
【0003】
最近は、横方向の長さが縦方向の長さより長く形成される横スリムレンズを複数用いて横スリム型光学系を構成する。
【0004】
しかし、従来は、複数の横スリムレンズが複数用いられるので、設計自由度と光効率が低下することがあった。また、光学系の部品数と製造費用が増加することがあった。したがって、これを改善する必要性が要請される。
【0005】
本発明の背景技術は、特許文献1(2013.09.27.公開、発明の名称:自動車の照明装置)に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】大韓民国公開特許公報第2013−0106105号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記の問題点を改善するためになされたものであって、その目的は、設計自由度と光効率を向上させ、部品数を低減できる光学装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る光学装置は、光を照射する光照射部と、前記光照射部の光出射側に配置され、前記光照射部に第1焦点を形成する第1非球面レンズ部と、前記光照射部の光出射側に配置され、前記光照射部に前記第1焦点と重なるように第2焦点を形成する第2非球面レンズ部とを含むことを特徴とする。
【0009】
前記第1非球面レンズ部の第1焦点距離と前記第2非球面レンズ部の第2焦点距離とは、互いに異なって形成される。
【0010】
前記第2非球面レンズ部の前記第2焦点距離は、前記第1非球面レンズ部の前記第1焦点距離より長く形成される。
【0011】
前記第1非球面レンズ部の前記第1焦点距離をf1とし、前記第1非球面レンズ部の幅の半分をbとし、前記第2非球面レンズ部の前記第2焦点距離をf2とし、前記第1非球面レンズ部と前記第2非球面レンズ部との間の間隔をdとする場合、前記第1非球面レンズ部と前記第2非球面レンズ部との間隔d=b(f2−f1)/f1であってもよい。
【0012】
前記第2非球面レンズ部は、前記第1非球面レンズ部の両側にそれぞれ配置される。
【0013】
前記第2非球面レンズ部は、主光軸を基準として両側が対称に形成される。
【0014】
前記第1非球面レンズ部は、前記光照射部側に第1
非球面部が形成され、前記光照射部の反対側に第1平面部が形成される。
【0015】
前記第2非球面レンズ部は、前記光照射部側に第2
非球面部が形成され、前記光照射部の反対側に第2平面部が形成される。
【0016】
前記第1非球面レンズ部は、縦方向の長さが横方向の長さより長く形成される。
【0017】
前記第1非球面レンズ部は、縦方向の長さが横方向の長さより3倍以上長く形成される。
【0018】
前記第2非球面レンズ部は、縦方向の長さが横方向の長さより長く形成される。
【0019】
前記第2非球面レンズ部は、縦方向の長さが横方向の長さより3倍以上長く形成される。
【0020】
前記光照射部は、LED素子であってもよい。
【0021】
前記光照射部は、光を照射するLED素子と、前記LED素子から照射される光が透光し、前記第1焦点と前記第2焦点とが重なって形成されるオプティック部とを含むことができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、光照射部に第1焦点と第2焦点とが重なって形成されるので、第1非球面レンズ部と第2非球面レンズ部に入射する光の損失が減少するに伴い、光強度が増加することができる。また、光強度の増加に伴い、LED素子の個数を減少させることができる。
【0023】
また、本発明によれば、第1非球面レンズ部の第1焦点距離と第2非球面レンズ部の第2焦点距離とが異なって形成されるので、1つの光学装置で実現可能な光強度の範囲を増大させることができる。したがって、設計自由度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】本発明の一実施形態に係る光学装置を示す斜視図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係る光学装置の第1非球面レンズ部と第2非球面レンズ部を示す正面図である。
【
図3】本発明の一実施形態に係る光学装置における第1非球面レンズ部と第2非球面レンズ部の設計因子を示す図である。
【
図4】本発明の一実施形態に係る光学装置における光損失の原理を概略的に示す図である。
【
図5】本発明の一実施形態に係る光学装置における非球面レンズ部の厚さと焦点距離との関係を示す表である。
【
図6】本発明の一実施形態に係る光学装置における焦点距離とレンズ厚さとの関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、添付した図面を参照して、本発明に係る光学装置の一実施例を説明する。光学装置を説明する過程において、図面に示された線の厚さや構成要素の大きさなどは、説明の明瞭性と便宜上誇張されて示されていてもよい。また、後述する用語は、本発明における機能を考慮して定義された用語であって、これは、使用者、運用者の意図または慣例によって異なる。そのため、これらの用語に対する定義は、本明細書全般にわたる内容に基づいて行われなければならない。
【0026】
図1は、本発明の一実施形態に係る光学装置を示す斜視図であり、
図2は、本発明の一実施形態に係る光学装置の第1非球面レンズ部と第2非球面レンズ部を示す正面図であり、
図3は、本発明の一実施形態に係る光学装置における第1非球面レンズ部と第2非球面レンズ部の設計因子を示す図であり、
図4は、本発明の一実施形態に係る光学装置における光損失の原理を概略的に示す図である。
【0027】
図1〜
図4を参照すれば、本発明の一実施形態に係る光学装置は、光照射部10と、第1非球面レンズ部20と、第2非球面レンズ部30とを含む。
【0028】
光照射部10は、光を照射する。光照射部10は、LED素子11(LED)であってもよい。また、光照射部10は、光を照射するLED素子11と、LED素子11から照射される光を透光させ、第1非球面レンズ部20によって形成される第1焦点P1と、第2非球面レンズ部30によって形成される第2焦点P2とが重なるオプティック部13とを含むことができる。オプティック部13は、光が透過可能な透光性材質で形成される。光照射部10は、光学装置の設計や大きさなどに応じて適切に選択可能である。
【0029】
第1非球面レンズ部20は、光照射部10の光出射側に配置され、縦方向の長さが横方向の長さに比べて長く形成され(L1>L2)、光照射部10に第1焦点P1が形成される。第1非球面レンズ部20は、光照射部10側に第1
非球面部21が形成され、光照射部10の反対側に第1平面部23が形成される。第1非球面レンズ部20は、縦方向が横方向に比べて長く形成される第1縦スリム非球面レンズである。
【0030】
第2非球面レンズ部30は、光照射部10の光出射側に配置され、縦方向の長さが横方向の長さに比べて長く形成され(L3>L4)、光照射部10に第1焦点P1と重なるように第2焦点P2を形成する。第2非球面レンズ部30は、光照射部10側に第2
非球面部31が形成され、光照射部10の反対側に第2平面部33が形成される。光照射部10に第1焦点P1と第2焦点P2とが重なって形成されるので、第1非球面レンズ部20と第2非球面レンズ部30に出射される光の損失が減少する。その結果、光強度(intensity)は増加することができる。
【0031】
第2非球面レンズ部30は、第1非球面レンズ部20の両側にそれぞれ配置される。したがって、第1非球面レンズ部20の両側から第2非球面レンズ部30を介して均一な光強度の光が出射できる。
【0032】
第1非球面レンズ部20の第1焦点距離f1と第2非球面レンズ部30の第2焦点距離f2とは、互いに異なって形成される。例えば、第2非球面レンズ部30の第2焦点距離f2は、第1非球面レンズ部20の第1焦点距離f1より長く形成される。また、第1非球面レンズ部20の第1焦点距離f1は、第2非球面レンズ部30の第2焦点距離f2より長く形成されてもよい。ここで、第1非球面レンズ部20の第1焦点距離f1は、第1
非球面部21の中心部と光照射部10との間の最短距離で定義される。第2非球面レンズ部30の焦点距離は、第2
非球面部31の中心部と光照射部10との間の最短距離で定義される。
【0033】
第2非球面レンズ部30の第2
非球面部31は、第1非球面レンズ部20の第1
非球面部21より光照射部10から遠く配置される。
【0034】
第2非球面レンズ部30は、主光軸xを基準として両側が対称に形成される。このとき、第2
非球面部31は、主光軸xを基準として対称の形態に形成される。すなわち、第2非球面レンズ部30が主光軸xを基準として回転対称形に形成される。
【0035】
第1非球面レンズ部20と第2非球面レンズ部30との間隔は、以下のように規定される。
【0036】
第1非球面レンズ部20の第1焦点距離をf1とし、第1非球面レンズ部20の幅aの半分(a/2)をbとし、第2非球面レンズ部30の第2焦点距離をf2とし、第1非球面レンズ部20と第2非球面レンズ部30との間の間隔をdと定義する。
【0037】
このとき、第2非球面レンズ部30の端部分と焦点とを連結する延長線Lfと焦点との関係は、長方形の公式により(b+d)/f2=b/f1の関係になる。したがって、第1非球面レンズ部20と第2非球面レンズ部30との間隔dはd=b(f2−f1)/f1になる。
【0038】
第1非球面レンズ部20と第2非球面レンズ部30が前記数式により設定される場合、光学装置が前記数式で標準化される。したがって、光学装置の設計が容易になり、設計時間が短縮できる。
【0039】
第1非球面レンズ部20は、縦方向の長さL1が横方向の長さL2より3倍以上長く形成される。また、第2非球面レンズ部30は、縦方向の長さL3が横方向の長さL4より3倍以上長く形成される。
【0040】
上記のように構成される本発明の一実施形態に係る光学装置の一例に関して説明する。
【0041】
図5は、本発明の一実施形態に係る光学装置における非球面レンズ部の厚さと焦点距離との関係を示す表であり、
図6は、本発明の一実施形態に係る光学装置における焦点距離とレンズ厚さとの関係を示すグラフである。
【0042】
図5〜
図6を参照すれば、第1非球面レンズ部20と第2非球面レンズ部30は、縦方向の長さが横方向の長さより3倍以上長く形成される。この時、共通の焦点を有する2つの非球面レンズ部20、30を1つのモジュールに適用する場合、非球面レンズ部20、30の厚さが増加するほど、非球面レンズ部20、30の焦点距離f1,f2が減少する。また、非球面レンズ部20、30の屈折率が増加するに伴い、非球面レンズ部20、30の厚さが減少する。
【0043】
第1非球面レンズ部20の最小焦点距離f1が35mmに設定されたときに、70mm以上の第1非球面レンズ部20の厚さが適用され、第2非球面レンズ部30は、厚さが80mm以上必要になることにより、最小50mmの焦点距離f2が確保される(
図6参照)。
【0044】
この時、第1非球面レンズ部20の片側入射角は約15.9゜程度になり、第2非球面レンズ部30の片側入射角は38.6゜程度になる。これは、一般的な第1非球面レンズ部20の厚さが70mmの場合、片側入射角38゜程度形成されるので、光学装置の光効率の補償が可能になることが分かる。ここで、片側入射角は、レンズ部において主光軸xからレンズ部の一側端部(幅方向の半分)まで光の入射するときの角度を意味する。
【0045】
一方、一般的な縦スリム光学系は、中心光度が約35,000cdであり、光効率が20%程度の性能を有する。しかし、本発明の一実施形態に係る光学装置は、中心光度が約60,000cdであり、光効率が31%程度の性能を有する。したがって、本発明に係る光学装置の光効率は、従来に比べて約50%程度の光効率が上昇可能なため、光効率が上昇するだけ、LED素子11の設置個数を減少させることができる。
【0046】
上記のように、光照射部10に第1焦点P1と第2焦点P2とが重なって形成されるので、第1非球面レンズ部20と第2非球面レンズ部30に入射する光の損失が減少するに伴い、光強度が増加することができる。また、光強度の増加に伴い、LED素子の個数を減少させることができる。
【0047】
また、第1非球面レンズ部20の第1焦点距離f1と第2非球面レンズ部30の第2焦点距離f2とが異なって形成されるので、1つの光学装置で実現可能な光強度の範囲を拡大させることができる。したがって、設計自由度を向上させることができる。
【0048】
本発明は、図面に示された実施例を参照して説明されたが、これは例示的なものに過ぎず、当該技術の属する分野における通常の知識を有する者であれば、これより多様な変形および均等な他の実施例が可能であることを理解するであろう。
【0049】
したがって、本発明の真の技術的保護範囲は、請求の範囲によって定められなければならない。
【符号の説明】
【0050】
10:光照射部
11:LED素子
13:オプティック部
20:第1非球面レンズ部
21:第1
非球面部
23:第1平面部
30:第2非球面レンズ部
31:第2
非球面部
33:第2平面部
x:主光軸
P1:第1焦点
P2:第2焦点
f1:第1焦点距離
f2:第2焦点距離