【実施例】
【0102】
後述する実施例は、本発明の様々な代表的な実施形態および態様を例示するために提供され、特に示さない限り、本発明の範囲を限定するとは意図されない。
【0103】
後述する実施例で使用される全ての試薬、出発物質および溶媒は、商業的な供給業者(例えばSigma−Aldrich、St.Louis、MOおよびその関連会社)から購入し、別段の指示がない限り、さらに精製せずに使用した。
【0104】
以下の略語は、別段の指示がない限り、以下の意味を有する。
AcOH 酢酸
BP 血圧
BSA ウシ血清アルブミン
CHO チャイニーズハムスター卵巣
DA ドーパミン
DAT ドーパミントランスポーター
DCM ジクロロメタン
DIPEA N,N−ジイソプロピルエチルアミン
DMEM ダルベッコ変法イーグル培地
DMF N,N−ジメチルホルムアミド
DMSO ジメチルスルホキシド
EDTA エチレンジアミン四酢酸
EtOAc 酢酸エチル
EtOH エタノール
FBS ウシ胎仔血清
hDAT ヒトドーパミントランスポーター
HEPES 4−(2−ヒドロキシエチル)−1−ピペラジンエタンスルホン酸
hNET ヒトノルエピネフリントランスポーター
hSERT ヒトセロトニントランスポーター
5−HT 5−ヒドロキシトリプタミン
IPA イソプロピルアルコール
IPAc 酢酸イソプロピル
MeCN アセトニトリル
MeOH メタノール
MSA 多系統萎縮症
NA ノルアドレナリン
NE ノルエピネフリン
NET ノルエピネフリントランスポーター
NF 国内処方集グレード(National Formulary grade)
PAF 原発性自律神経不全症
PBS リン酸緩衝食塩水
PD+ パーキンソン病+nOHの症状
SBP 収縮期血圧
SERT セロトニントランスポーター
TFA トリフルオロ酢酸
THF テトラヒドロフラン
Tris トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン
【0105】
本明細書で使用されているが、定義されていない他の略語は、それらが属する分野の当業者により理解されるそれらの通常の意味を有する。
【0106】
別段の指示がない限り、
1H NMRスペクトルを、400MHz Varian AS400分光計で記録した。化学シフトを、内部標準としてのテトラメチルシラン(TMS)に対するppmでのδ値として報告する。結合定数(J値)をヘルツ(Hz)で与え、多重度は、以下の略語を使用して報告する:s=一重線、d=二重線、t=三重線、q=四重線、m=多重線、br=幅広、nd=決定していない。
【0107】
(実施例1)
4−(2−ヒドロキシメチルフェニル)ピペリジン−1−カルボン酸tert−ブチルエステルの調製
4−(2−カルボキシフェニル)ピペリジン−1−カルボン酸t−ブチルエステル(5.0g、16mmol、1.0当量)およびTHF(130mL、1.7mol)を、窒素下で室温にて混合した。ボランジメチルスルフィド複合体(2.9mL、33mmol、2.0当量)を一滴ずつ添加し、混合物を5分間攪拌し、次に、還流で1時間加熱した。混合物を室温まで冷却し、MeOH(40mL)を一滴ずつ添加することにより反応をクエンチした。次に、混合物を回転蒸発により濃縮し、得られた物質をMeOH(2×40mL)で共沸させた。次に、混合物をEtOAc(100mL)で希釈し、水性塩酸溶液(1M;2×50mL)、次に水性飽和重炭酸ナトリウム溶液(2×50mL)、次に飽和水性塩化ナトリウム溶液(1×50mL)で洗浄した。有機層を無水硫酸ナトリウム上で乾燥させ、濾過し、in vacuoで濃縮して、4−(2−ヒドロキシメチルフェニル)ピペリジン−1−カルボン酸t−ブチルエステル(4.8g)を透明薄黄色油状物として得、これは静置すると凝固した。
1H NMR (CDCl
3) δ (ppm) 7.34-7.22 (m, 3H); 7.19 (dt, J = 1.6 Hz, 7.2, 1H); 4.73 (s, 2H); 4.32-4.14 (m, 2H); 3.00 (tt, J = 4.0 Hz, 12.0, 1H); 2.80 (t, J = 11.6 Hz, 2H); 1.78-1.56 (m, 4H); 1.47 (m, 9H).
【0108】
(実施例2)
4−[2−(トルエン−4−スルホニルオキシメチル)フェニル]ピペリジン−1−カルボン酸tert−ブチルエステルの調製
4−(2−ヒドロキシメチルフェニル)ピペリジン−1−カルボン酸t−ブチルエステル(0.4g、1.0mmol、1.0当量)およびトリエチレンジアミン(220mg、2.0mmol、1.4当量)を、DCM(11mL、170mmol)中に溶解した。混合物を窒素下で0℃にて冷却し、p−トルエンスルホニルクロリド(290mg、1.5mmol、1.1当量)を添加した。得られた混合物を0℃で60分間攪拌した。混合物をEtOAc(50mL)で希釈し、水(2×25mL)で洗浄した。有機層を無水硫酸ナトリウム上で乾燥させ、濾過し、回転蒸発により濃縮して、表題の化合物(500mg)を得、これをさらに精製せずに使用した。
1H NMR (CDCl
3) δ (ppm) 7.81 (t, J = 2.0 Hz, 1H); 7.79 (t, J = 2.0 Hz, 1H); 7.37-7.32 (m, 4H); 7.25-7.21 (m, 1H); 7.21-7.13 (m, 1H), 5.12 (s, 2H); 4.34-4.12 (m, 2H); 2.81-2.61 (m, 3H); 2.45 (s, 3H); 1.70-1.52 (m, 4H); 1.48 (s, 9H).
【0109】
(実施例3)
4−[2−(2,4,6−トリフルオロフェノキシメチル)フェニル]ピペリジントリフルオロ酢酸塩の調製
4−[2−(トルエン−4−スルホニルオキシメチル)フェニル]ピペリジン−1−カルボン酸tert−ブチルエステル(2.1g、4.7mmol、1.0当量)を、MeCN(46mL、890mmol)中に溶解し、炭酸カリウム(1.9g、14mmol、3.0当量)および2,4,6−トリフルオロフェノール(1.0g、7.0mmol、1.5当量)に添加した。混合物を50℃で一晩振盪し、次に、室温まで冷却した。上清を、炭酸カリウムおよび他の固体から分離した。TFA(7mL、90mmol、20.0当量)を上清に添加し、混合物を室温で一晩振盪した。次に、溶液を濃縮し、残留物を1:1酢酸/水(5.0mL)中に溶解した。追加の酢酸(2.0mL)を添加し、混合物を濾過し、分取HPLCにより精製して、表題の化合物(1.3g、97.5%純度)を得た。MS m/z:[M+H]
+ C
18H
18F
3NOの計算値322.13;実測値322.2。
1H NMR (CDCl
3) δ (ppm) 9.83 (br.s, 1H); 9.32 (br.s, 1H); 7.46-7.39 (m, 2H); 7.32 (d, J = 6.8 Hz, 1H); 7.26-7.21 (m, 1H); 6.76-6.66 (m, 2H); 5.07 (s, 2H); 3.69-3.50 (m, 2H); 3.38 (t, J = 11.6 Hz, 1H); 3.20-3.02 (m, 2H); 2.19 (q, J = 12.8 Hz, 2H); 2.12-2.01 (m, 2H).
【0110】
(実施例4)
4−(2−ヒドロキシメチルフェニル)ピペリジン−1−カルボン酸tert−ブチルエステルの調製
4−(2−カルボキシフェニル)ピペリジン−1−カルボン酸tert−ブチルエステル(5.0g、160mmol、1.0当量)およびTHF(100mL、1.0mol)を、窒素下で室温にて混合した。THF中のボラン−THF複合体(1.0M、32.7mL、32.7mmol、2.0当量)を、1滴ずつ10分間にわたり添加した(5℃発熱、ガス発生)。反応混合物を室温で5分間攪拌し、次に、50℃で1時間加熱した。反応混合物を室温まで冷却し、MeOH(30mL)をゆっくりと添加することにより反応をクエンチした(軽度の発熱、顕著なガス発生)。次に、混合物を回転蒸発により濃縮した。得られた物質を、MeOH(2×50mL)で共沸させた。粗生成物をEtOAc(100mL)中に溶解し、飽和水性重炭酸ナトリウム溶液(50mL)および次に、飽和水性塩化ナトリウム溶液(50mL)で洗浄した。有機層を無水硫酸ナトリウム上で乾燥させ、濾過し、in vacuoで濃縮して、4−(2−ヒドロキシメチルフェニル)ピペリジン−1−カルボン酸tert−ブチルエステル(4.4g)を透明薄黄色油状物として得、これは静置すると凝固した。
【0111】
(実施例5)
4−(2−メタンスルホニルオキシメチルフェニル)ピペリジン−1−カルボン酸tert−ブチルエステルの調製
4−(2−ヒドロキシメチルフェニル)ピペリジン−1−カルボン酸tert−ブチルエステル(50.0g、172mmol、1.0当量)を、DCM(500mL、8000mmol)中に溶解した。混合物を窒素下で0℃にて冷却し、メタンスルホン酸無水物(44.8g、257mmol、1.5当量)を1部で添加した。ジイソプロピルエチルアミン(Diisopropylethlyamine)(47.8mL、274mmol、1.6当量)を一滴ずつ5分間にわたり添加し、混合物を0℃で90分間攪拌した。水(400mL、20mol)を添加し、混合物を5分間攪拌した。相を分離し、有機層を水(300mL)で洗浄し、無水硫酸ナトリウム上で乾燥させ、溶媒を除去して、表題の化合物(70g)を濃い油状物として得、これをさらに精製せずに使用した。
1H NMR (400 MHz, DMSO-d
6) δ (ppm) 7.37-7.43 (m, 3H), 7.31 (d, 1H), 7.22 (m, 2H), 5.38 (s, 2H), 4.28 (m, 2H), 2.92-3.10 (m, 1H), 2.92 (s, 3H), 2.80-2.92 (m, 2H), 1.63-1.81 (m, 4H), 1.51 (s, 9H).
【0112】
(実施例6)
4−[2−(2,4,6−トリフルオロフェノキシメチル)フェニル]ピペリジン−1−カルボン酸tert−ブチルエステルの調製
4−(2−メタンスルホニルオキシメチルフェニル)ピペリジン−1−カルボン酸tert−ブチルエステル(27.0g、60.6mmol、1.0当量)をMeCN(540mL)中に溶解し、炭酸カリウム(25g、180mmol、3.0当量)および2,4,6−トリフルオロフェノール(13.5g、90.9mmol、1.5当量)に添加した。混合物を50℃で6時間激しく攪拌し、加熱から取り出し、一晩攪拌した。混合物を室温で冷却し、EtOAc(700mL)および水(700mL)で希釈した。相を分離し、有機層を水性水酸化ナトリウム溶液(1.0M;2×400mL)および飽和水性塩化ナトリウム溶液(1×400mL)で洗浄し、次に、無水硫酸ナトリウム上で乾燥させた。次に、溶媒を除去して、粗製の4−[2−(2,4,6−トリフルオロフェノキシメチル)フェニル]ピペリジン−1−カルボン酸tert−ブチルエステル(25.0g)を得た。粗生成物をより小スケールの生成物(run)と混合して全部で30gにし、クロマトグラフィー(ヘキサン中の0〜10%EtOAc)により精製して、4−[2−(2,4,6−トリフルオロフェノキシメチル)フェニル]ピペリジン−1−カルボン酸tert−ブチルエステル(22.0g)を得た。
【0113】
(実施例7)
4−[2−(2,4,6−トリフルオロフェノキシメチル)フェニル]ピペリジン塩酸塩の調製
4−[2−(2,4,6−トリフルオロフェノキシメチル)フェニル]ピペリジン−1−カルボン酸tert−ブチルエステル(22.0g、31.3mmol、1.0当量)を、EtOH中の1.25M HCl(250mL、310mmol、10.0当量)と混合した。混合物を室温で8時間攪拌し、次に、−10℃で約48時間保存した。ほとんどの溶媒を回転蒸発により除去した。得られた濃いスラリーにEtOAc(80mL)を添加し、続いて、室温で2時間攪拌した。結晶の最初の生成物(crop)を濾過により単離し、濾過ケークをEtOAc(20mL)で洗浄し、乾燥させて、表題の化合物(8.5g、>99%純度)を白色固体として得た。濾液のHPLCは、生成物の約25%の面積を示す。二番目の生成物については、溶媒を回転蒸発により除去し、得られた固体(約10g)をEtOAc(40mL)中にスラリー化し、最初に室温、次に60℃、再び室温にして、表題の化合物を塩酸塩(1.7g、>99%純度)として得た。
【0114】
2ロットの塩酸塩(18.5g、51.7mmol)を、EtOAc(75mL、770mmol)と混合した。得られた、濃いが自由流動性のスラリーを65℃で30分間加熱し、室温まで冷却し、濾過した。フラスコおよび濾過ケークをEtOAc(20mL)で洗浄し、固体を室温で高真空下にて一晩乾燥させて、結晶塩酸塩(18.2g、99.3%純度)を得た。
【0115】
(実施例8)
4−[2−(2,4,6−トリフルオロフェノキシメチル)フェニル]ピペリジン塩酸塩の調製
塩化アセチル(83.5mL、1170mmol)を、EtOH(140mL、2.4mol)にゆっくりと添加した。EtOH(100mL、2.0mol)中に溶解した4−[2−(2,4,6−トリフルオロフェノキシメチル)フェニル]ピペリジン−1−カルボン酸tert−ブチルエステル(55.0g、117mmol)を添加し、得られた混合物を室温で6時間攪拌した。ほとんどの溶媒を回転蒸発により除去した。得られた濃いスラリーにEtOAc(300mL)を添加し、続いて約100mLまで部分的に溶媒を除去した。EtOAc(200mL)を添加し、得られたスラリーを1時間攪拌し、濾過し、乾燥させて、表題の化合物(28.0g、約99%純度)を得た。濾液を濃縮して濃いペーストにし、IPAc(100mL)を添加し、1時間攪拌し、濾過し、乾燥させて、5.0gの塩酸塩(約99%純度)をさらに得た。
【0116】
2ロットの塩酸塩(83.0g、230mmol、約99%純度)をEtOAc(250mL、2.6mol)と混合した。得られたスラリーを70℃で加熱し、次に室温までゆっくりと冷却し、続いて一晩攪拌した。得られた自由流動性のスラリーを濾過し、濾過ケークをEtOAc(50mL)で洗浄し、次に、高真空下で約48時間乾燥させて、結晶塩酸塩(81.0g、>99%純度)を得た。
【0117】
結晶塩酸塩(50.0g、1.40mol、>99%純度)をIPA(250mL、3.3mol)中に溶解し、得られたスラリーを75℃まで加熱した。水(25mL、1.4mol)を添加した。5分で完全な溶解が観察され、溶液の内部温度は65℃であった。溶液を室温までゆっくりと冷却し、次に、室温で一晩攪拌した。得られた固体を濾過し、空気下で2時間乾燥させて、半乾燥生成物を得た。次に、固体を室温で高真空下にて約48時間乾燥させて、表題の結晶塩酸塩(44.1g、99.5%純度)を得た。この物質を、実施例9および10で説明するPXRDおよびDSC解析において使用した。
【0118】
(実施例9)
粉末X線回折
粉末X線回折パターンを、Cu Kα(30.0kV、15.0mA)照射を使用したRigaku Miniflex PXRD回折計により得た。1分当たり2°(2θ)の連続スキャンモードで0.03°のステップサイズにて2〜40°の範囲にわたり2シータ角度で作動するゴニオメーターにより、解析を行った。試料を石英標本ホルダー上に粉末化物質の薄層として調製した。器具を金属ケイ素標準で±0.02°の2シータ角度内に較正した。相対的強度に対する粒径干渉を低減させるために、試料を試験前に手で粉砕した。実施例8の結晶塩酸塩の代表的なPXRDパターンは、米国特許第8,304,433号B2の
図1に示されている。降順の相対的強度のPXRDピークを、表1に示す。全てのPXRDピーク強度を、各ピークの対応するバックグラウンド強度を引くことにより補正した。
【表1-2】
【0119】
一実施形態では、本発明で用いられる結晶塩酸塩は、4.44±0.20、10.22±0.20、17.16±0.20および21.78±0.20の2θ値での回折ピークを含むことで特徴付けられる粉末x線により特徴付けられる。別の実施形態では、結晶塩酸塩は、8.11±0.20、13.18±0.20、16.06±0.20、18.38±0.20、23.76±0.20、26.32±0.20、27.24±0.20、29.60±0.20および31.94±0.20から選択される2θ値に1つまたは複数の追加の回折ピークを有することによりさらに特徴付けられる。
【0120】
(実施例10)
示差走査熱量測定
示差走査熱量測定(DSC)を、TA Instruments モデルQ−100モジュールおよびThermal Analystコントローラーを使用して行った。データを収集し、TA Instruments Thermal Solutionsソフトウェアを使用して解析した。実施例8の結晶塩酸塩の2.8mgの試料を、正確に秤量して覆ったアルミニウムパンに入れた。22℃で5分間の等温平衡化期間後、試料を10℃/分の線形加熱ランプを使用して22℃から250℃まで加熱した。代表的なDSC温度記録は、米国特許第8,304,433号B2の
図2に示されている。DSC温度記録は、結晶塩酸塩が優れた熱安定性を有し、融点が約196.9℃であることを示す。
【0121】
一実施形態では、本発明で用いられる結晶塩酸塩は、約197±2℃の融点を有する示差走査熱量測定トレースにより特徴付けられる。
【0122】
(実施例11)
放射リガンド結合および神経伝達物質取り込みアッセイ
ヒト組換えおよびラットネイティブモノアミントランスポーターでの4−[2−(2,4,6−トリフルオロフェノキシメチル)フェニル]ピペリジンのin vitro薬理学を、Smithら、Inter. J. Neuropsychopharmcol.(2015年)1〜11頁;およびTsurudaら、J. Pharmacol. Toxicol. Meth.(2010年)61巻:192〜204頁で説明する通りに特徴付けた。また、例えば、米国特許第8,304,432号B2および同第8,304,433号B2を参照されたい。放射リガンドは、市販のものを使用した(Perkin Elmer LifeSciencesまたはGE Healthcare Life Sciences)。
【0123】
簡潔に説明すると、ヒト組換えSERT(HEK293−hSERT)、NET(HEK293−hNET)もしくはDAT(CHO−K1−hDAT)を安定にトランスフェクトしたHEK293(ヒト胚腎臓293)またはCHO−K1(チャイニーズハムスター卵巣−K1)細胞から調製した膜を、50mM Tris−HCl、120mM NaCl、5mM KCl、0.025% BSA、100μMアスコルビン酸、pH7.4中で、4−[2−(2,4,6−トリフルオロフェノキシメチル)フェニル]ピペリジンならびにSERTについては[
3H]−シタロプラム(1.0nM)、NETについては[
3H]−ニソキセチン(2.0nM)およびDATについては[
3H]−WIN35428(3.0nM)の非存在下または存在下にて22℃で1時間インキュベートした。ラット皮質膜調製物を、SERTについては[
3H]−シタロプラム(2.0nM)またはNETについては[
3H]−ニソキセチン(4.0nM)と共に22℃で1時間インキュベートした。神経伝達物質取り込みアッセイにおいて、HEK293−hSERT、hNETまたはhDAT細胞を、それぞれ、7.5mM HEPES、12.5mM Tris−HCl、2.2mMリン酸ナトリウム、120mM NaCl、5mM KCl、0.4mM MgCl
2、7.5mMグルコース、1.7mM CaCl
2、250μMアスコルビン酸、150μMパージリン、0.025% BSA、pH7.4中で、4−[2−(2,4,6−トリフルオロフェノキシメチル)フェニル]ピペリジンの非存在下または存在下にて37℃で30分間事前インキュベートし、その後、[
3H]−5−HT(20nM)、[
3H]−NE(40nM)または[
3H]−DA(100nM)と10分間インキュベートした。ラット皮質シナプトソームを[
3H]−5−HTまたは[
3H]−NEと6分間、および線条体シナプトソームを[
3H]−DAと6分間インキュベートした。結合および取り込みアッセイを迅速に濾過することにより停止させ、液体シンチレーション分光学により放射能を決定した。最終[
3H]−神経伝達物質濃度は、各々のK
mより有意に低く、pIC
50は、およそ機能的pK
iであった。NETについての選択性(有効数字1桁に丸められた)は、以下の通りに決定した。
選択性=10
(NETのpKiまたはpIC50−SERTまたはDATのpKiまたはpIC50)
【0124】
4−[2−(2,4,6−トリフルオロフェノキシメチル)フェニル]ピペリジンのin vitro薬理学プロファイルは、表2で示す通り、ヒトおよびげっ歯類モノアミントランスポーターで同様であった。
【表2】
【0125】
表2のデータは、4−[2−(2,4,6−トリフルオロフェノキシメチル)フェニル]ピペリジンが、NETおよびSERTの強い阻害剤であるが、DATの阻害剤ではなく、NETの阻害は、SERTの阻害より4倍高い力価であったことを示す。同様に、4−[2−(2,4,6−トリフルオロフェノキシメチル)フェニル]ピペリジンは、ラット皮質シナプトソームへの[
3H]−NEおよび[
3H]−5−HT取り込み両方の強い阻害剤であり、ヒトトランスポーターで観察されたのと同様に、SERTよりNETについて明白な機能的選択性(10倍)がある。機能的阻害研究と一致して、4−[2−(2,4,6−トリフルオロフェノキシメチル)フェニル]ピペリジンは、ヒトNETおよびSERTへの結合について高いアフィニティを示したが、DATについては示さなかった(表2)。ラット皮質から調製した膜におけるラットネイティブNETおよびSERTについての見かけの結合アフィニティ値は、種依存性の欠如と一致して、ヒトトランスポーターでの対応する値と同様(重複する信頼区間)であった(表2)。
【0126】
(実施例12)
ex vivoトランスポーター占有研究
成体雄Sprague Dawleyラット(Charles River)を、制御実験室条件(21±1℃の温度)下で12:12時間明暗周期にて収容した。施設への到着に際して、動物が食物および水を自由に摂取できるようにし、動物を保持室に少なくとも48時間慣れさせた。投与前の15〜18時間、動物を絶食させたが、水は自由に摂取させた。
【0127】
ラット(n=6/時点/用量レベル)に、4−[2−(2,4,6−トリフルオロフェノキシメチル)フェニル]ピペリジンの単回経口用量(0.3、1、5、10、30および60mg/kg)を与え、投与後特定の時点(5mg/kg用量レベルについては0.5、2、4、6および8時間;0.3、1、10、30および60mg/kg用量レベルについては2時間)で断頭により安楽死させた。ex vivoトランスポーター占有およびPK評価のために、同じ動物から脊髄を解剖した。リン酸緩衝食塩水を使用した水圧押し出しにより脊髄を回収し、腰部区分を解剖してドライアイス上で凍結した。残りの脊髄区分を収集し、PK解析のために水(25% w/w)中でホモジナイズした。解析するまで全ての試料を−80℃で保存した。
【0128】
ラット脊髄におけるNETおよびSERT占有を決定するために、Bourdetら、J. Pharm. Exp. Ther.(2012年)341巻:137〜145頁で以前に説明される通り、動態放射リガンド結合アッセイを使用した。PK/PDパラメータを、コンパートメントモデリングアプローチ(WinNonlin 5.0.1版、Pharsight Corporation)により見積もった。一次吸収および排出での1コンパートメントおよび2コンパートメントPKモデルを評価した。1コンパートメントモデルを選択した。薬力学モデルは、中心PKコンパートメントに直結した効果コンパートメントE
maxモデルであった(WinNonlin PKモデル3、PDモデル101)。モデルの選択は、目視検査での適合度、赤池情報量規準に基づき、ガウス・ニュートン最小法を使用して誤差平方和を加重した。以下のパラメータを推定した。
k01(時間
−1):一次吸収速度定数
V/F(L/kg):経口バイオアベイラビリティで割った中心コンパートメントの体積
k10(時間
−1):中心コンパートメントからの排出速度定数
E
max(%占有):脊髄における最大SERTまたはNET占有
EC
50(ng/mL):50%SERTまたはNET占有を伴う血漿4−[2−(2,4,6−トリフルオロフェノキシメチル)フェニル]ピペリジン濃度
k
eo(時間
−1):中心薬物動態コンパートメントと薬力学効果コンパートメントとの間の一次平衡速度定数
【0129】
PKおよびPDパラメータ推定値は、表3に示すNETおよびSERT占有についての効果コンパートメントPK/PD解析から導出した。
【表3】
【0130】
表3に示す通り、占有について見積もられたEC
50は、ラット脊髄においてNETについて11.7ng/mLおよびSERTについて50.8ng/mLであった。血漿タンパク質結合における種差を説明すると(ラットおよびヒトにおいて、それぞれ、90.2%および79.1%)、見積もられたヒト血漿EC
50値は、NETについて5.5ng/mLおよびSERTについて23.9ng/mLであった。
【0131】
(実施例13)
麻酔下ラットにおける心血管モデル
これらの研究は、麻酔下ラットにおける心拍数(HR)および平均動脈圧(MAP)に対する4−[2−(2,4,6−トリフルオロフェノキシメチル)フェニル]ピペリジンの単回投与の効果を評価するために行った。この心血管モデルを使用して、4−[2−(2,4,6−トリフルオロフェノキシメチル)フェニル]ピペリジンの、末梢においてノルエピネフリントランスポーターを阻害する能力を反映する代替尺度として、HRに対する固有の効果およびチラミン昇圧応答の阻害を評価した。
【0132】
A. 実験設計
250〜350gの体重の正常血圧の雄Sprague−Dawleyラットを、チオブタバルビタール(Inactin)の腹腔内注射(IP)により麻酔した。手術中および研究期間中、全ての動物を完全麻酔下(すなわち、足指つまみ試験に応答がないこと)で維持した。右総頸動脈および頸静脈を単離し、カテーテル処置した。研究中、気道を開放したままにするために、気管に挿管した。手術完了後、動脈カテーテルを圧力変換器に接続し、ベースライン血圧[収縮期(SBP)、平均動脈(MAP)および拡張期(DBP)]および心拍数(HR)を、Notocord−HEMデータ取得システムを使用して記録した。少なくとも60分間のベースライン(すなわち、最後の10分間は安定であった)後、ビヒクル(10% Tween20、2mL/kg、IP)を投与し、少なくとも10分間、任意の可能性のある効果をモニターした。この期間後、ラットにビヒクルまたは4−[2−(2,4,6−トリフルオロフェノキシメチル)フェニル]ピペリジン(0.01〜30mg/mL、2mL/kg、IP)のいずれかを注射し、MAPおよびHRの変化を25分間モニターした。次に、ラットに、頸静脈カテーテルを介して、5分間隔で与える非累積的ボーラス用量のチラミン(0.03、0.1、0.3および1mg/kg、1mL/kg、IV)を静脈内負荷した。チラミンの最後の用量後、さらなる10分間データ取得を継続し、その後、実験を終えた。動物の別々の群において、血液を収集して、投与後15分および60分の血漿中の4−[2−(2,4,6−トリフルオロフェノキシメチル)フェニル]ピペリジンの濃度を評価した。15分から得られた遊離血漿濃度を、MAPおよびHRに対する濃度応答曲線(CRC)を構築するために使用し、60分からの濃度を、チラミンCRCのために使用した。動物を二酸化炭素窒息により安楽死させ、続いて開胸術を行った。
【0133】
B. データ解析
固有の血行動態効果を、チラミン負荷前に4−[2−(2,4,6−トリフルオロフェノキシメチル)フェニル]ピペリジンにより誘導されたMAPまたはHRの最大変化として報告した。チラミン効果の阻害を、ビヒクル対照群における1mg/kg用量のチラミンへの応答について正規化した。MAP、HRおよびチラミン応答の阻害の変化の濃度応答曲線(CRC)を、Prism 5.00TM(GraphPad,Inc.)を使用したロジスティック式への反復曲線フィッティングを通して解析した。使用した式は、以下の通りであった。
Y=(Bottom+Top−Bottom)/(1+10^((LogEC50−X)*HillSlope))
式中、Xは、用量の対数であり、Yは、応答であり、Yは、Bottom(全てについて0に制約される)で開始し、シグモイド形でTopへと上がる。MAPまたはHRの変化がより高い用量(複数可)で低減した場合、より低い用量で起こった最大効果を全ての続くより高い用量に持ち越すことにより、Top(すなわち、最大有効性)のより正確な推定値を得た。チラミンCRCについては、Topを100に制約した。昇圧効果の力価を、10mmHgのMAPの変化をもたらした遊離血漿濃度であるMAP PC
10として報告し、HR効果の力価を、25bpmのHRの変化をもたらした遊離血漿濃度であるHR PC
25として報告した。最後に、チラミン効果を阻害する力価を、SBPのチラミン誘導(1mg/kg、IV)増大の50%阻害をもたらした濃度であるTyr EC
50として報告した。
【0134】
ラット皮質シナプトソームにおけるラットセロトニントランスポーター(rSERT)による標識5−HT取り込みの阻害の測定から得た阻害力価(pIC
50値)を、この式:
Y=(10^(−x))×(10^9)
を使用してIC
50値に変換した。
【0135】
C. 結果
4−[2−(2,4,6−トリフルオロフェノキシメチル)フェニル]ピペリジン(0.01〜30mg/kg、IP)は、麻酔下のラットにおいてMAPおよびHRを用量依存的に増大した。各用量について対応する遊離血漿濃度に対してプロットすると、見積もられたMAPおよびHRの力価は、101.4nM(MAP EC
10)および8.6nM(HR EC
25)であった。MAPおよびHRの最大変化は、それぞれ、13.2(4.4〜22.1)mmHgおよび28.1(22.4〜33.7)bpmであった。また、4−[2−(2,4,6−トリフルオロフェノキシメチル)フェニル]ピペリジンは、SBPのチラミン誘導増大を阻害した。1mg/kgの静脈内投与したチラミンへの応答の阻害%として表すと、4−[2−(2,4,6−トリフルオロフェノキシメチル)フェニル]ピペリジンの見積もられた力価は、0.86nMであった。
【0136】
D. 結論
麻酔下のラットにおける心血管モデルでは、4−[2−(2,4,6−トリフルオロフェノキシメチル)フェニル]ピペリジンは、チラミン昇圧応答の強い阻害および末梢におけるNETの阻害と一致する頻脈を示した。
【0137】
(実施例14)
経口投与溶液の調製
4−[2−(2,4,6−トリフルオロフェノキシメチル)フェニル]ピペリジン塩酸塩の経口投与溶液を、2工程で調製した。最初に、3mg/mL水性ストック溶液を調製し、次に、様々な用量強度を有する濾過したリンゴジュース中の経口溶液を投与前に調製した。
【0138】
A. ストック溶液の調製
4−[2−(2,4,6−トリフルオロフェノキシメチル)フェニル]ピペリジン塩酸塩(500mg、89.9%純度)を、250mL透明ガラス瓶に添加した。注射用滅菌水(150mL)を添加し、瓶に蓋をした。固体物質が観察されなくなるまで(約20分間)、瓶を円運動で穏やかに旋回させた。また、必要な場合、瓶を超音波処理してもよい。瓶に標識し、ストック溶液(3mg/mL)を2時間以内に使用するか、または使用するまで2〜8℃の冷蔵庫で保存した。最初の調製の6日以内に使用しなかったあらゆるストック溶液は捨てた。
【0139】
B. 経口投与溶液の調製
7つの異なる用量強度を有する経口投与溶液を、臨床研究のパートAまたはパートBのいずれかにおける使用のために調製した。調製した用量強度および各用量強度を調製するために使用した量は、表4および5に示す通りであった。
【表4】
【表5】
【0140】
経口投与溶液を調製するために、ストック溶液(3mg/mL)を冷蔵庫から取り出し、任意の沈殿について目視でチェックした。沈殿が存在する場合、ストック溶液を再調製した。
【0141】
リンゴジュース(少なくとも40mL、Mottの100%オリジナルリンゴジュース)を50mLシリンジに引き、シリンジフィルター(25mm PVDFシリンジフィルター、0.2μm、Pall Life Sciences)をシリンジに取り付けた。リンゴジュースを、シリンジフィルターを通して濾過し、最初の3mLは捨て、残りのリンゴジュースは125mL琥珀色瓶に収集した。
【0142】
次に、表4または5に示すストック溶液(3mg/mL)の量(ストック体積)を新しい125mL琥珀色瓶に添加し、表4または5に示す濾過したリンゴジュースの対応する量(リンゴジュース体積)を瓶に添加した。瓶に蓋をし、内容物を、2分間を超えて円運動で旋回させることにより混合した。得られた溶液を、患者への投与前に周囲室温で最長18時間保存した。患者への投与前に、経口溶液の10mLアリコートを、新しい125mL琥珀色瓶に移した。
【0143】
(実施例15)
経口投与錠剤の調製
微結晶セルロース(4.476kg;AVICEL Microcrystalline Cellulose、NF、Ph.Eur Type PH−112)および無水ラクトース(2.450kg;無水 60M NF、EP)をブレンド容器に充填し、20rpmで5分間ブレンドした。得られた混合物を二重PE内張容器に移し(「プレミックス1」)、2つの部分に分け、1つの部分は約1kgの重さであり(「プレミックス1A」)、他の部分は残りを含んだ(「プレミックス1B」)。プレミックス1Aの約2分の1をビンに添加し、続いて4−[2−(2,4,6−トリフルオロフェノキシメチル)フェニル]ピペリジン塩酸塩(38.93g;製粉済み)を添加し、次に、プレミックス1Aの第2の半分を添加した。得られた混合物を20rpmで10分間ブレンドし、次に、二重PE内張容器に移した(「活性プレミックス2」)。プレミックス1Bの約2分の1を、1.0mmスクリーンを備えたミルに1000rpm(800〜1200rpm)で通し、前に押し出し、続いて活性プレミックス2、および次にプレミックス1Bの第2の半分を通した。製粉化物質を二重PE内張容器に収集した(「製粉化プレミックス3」)。製粉化プレミックス3を40メッシュのハンドスクリーンに通し、ふるいにかけた物質をブレンドビンに移し、20rpmで10分間ブレンドした(「活性ブレンド」)。大さじ1杯の活性ブレンドを取り出し、ポリエチレン袋中でステアリン酸マグネシウム(35.0g、NF)と手動にて混合した。次に、この混合物を40メッシュのハンドスクリーンに通した。次に、スクリーンにかけた混合物をブレンドビンに戻し、混合物全体を20rpmで5分間ブレンドした(「最終ブレンド」)。最終ブレンドを、錠剤プレス機を使用して200mgの錠剤に圧縮し、錠剤を除塵機(deduster)および金属探知機に通した。許容される錠剤を二重PE内張容器に収集した。
【0144】
精製水(1.587kg、USP)を、清浄なステンレス鋼溶液調製容器に添加し、ミキサースピードを、渦を形成するように調節した。ポリビニルアルコールベースのフィルムコーティング(280.0g;OPADRY II Pink 85G64744、Colorcon,Inc.、West Point、PA)を、混合タンク中の渦に添加し、渦がなくなるように混合スピードを低減し、混合を少なくとも45分間または目視観測により色が均一に分散されるまで継続した。穏やかな混合を、コーティングプロセスの前およびその間維持した。上述の調製した錠剤をコーティングパンに充填し、パンスピードを10rpmに設定した。コーティング溶液をコーティングパンにポンピングした。コーティング溶液をコーティングパンにポンピングしながら、コーティング溶液の重さ変化をモニターし、コーティング懸濁物利用に基づいて4%の錠剤乾燥重量増大が達成されたら、コーティング溶液の添加を停止した。得られた桃色の錠剤は、約1mgの4−[2−(2,4,6−トリフルオロフェノキシメチル)フェニル]ピペリジン(遊離塩基当量)を含有した。
【0145】
また、約5mgの4−[2−(2,4,6−トリフルオロフェノキシメチル)フェニル]ピペリジン(遊離塩基当量)を含有する黄色錠剤を、同様の手技および以下の量の物質を使用して調製した:微結晶セルロース(4.320kg);無水ラクトース(2.450kg);4−[2−(2,4,6−トリフルオロフェノキシメチル)フェニル]ピペリジン塩酸塩(194.7g);ステアリン酸マグネシウム(35.0g);精製水(1.587kg);およびポリビニルアルコールベースのフィルムコーティング(280.0g;OPADRY II Yellow 85G620027)。
【0146】
(実施例16)
nOHを有する被験体における臨床研究
4−[2−(2,4,6−トリフルオロフェノキシメチル)フェニル]ピペリジン塩酸塩(「研究化合物」)でフェーズ2臨床試験研究が行われている。研究は、nOHを有する被験体における研究化合物対プラセボの多施設ランダム化2部制一重(パートA)および二重盲検(パートB)研究である。また、研究化合物の有効性、安全性および耐容性を評価するための非盲検拡張研究が行われる(パートC)。パートAは、1日目にプラセボで開始し、2日目に1用量の1mgの研究化合物が続き、安全性、耐容性および昇圧効果の決定に基づいて最大で10mgの最大用量まで毎日上昇するより高い用量の研究化合物に進む、毎日の単回上昇用量設計に従う。パートBは、概して耐容性が良好であることおよびパートAから所与の被験体にとって昇圧効果を有することが決定された用量を評価する、ランダム化プラセボ対照並行設計に従う。パートCは、パートAで応答者であることが確認された被験体において1日1回最長20週間投与される研究化合物の有効性(慢性昇圧応答、nOHの症状)、安全性および耐容性を評価するための非盲検拡張研究である。
【0147】
この研究に含まれる被験体は、純粋自律神経不全症、多系統萎縮症またはパーキンソン病(すなわち、PD+症状)のための症候性起立性低血圧と診断された40〜80歳(両端の値を含む)の男性または女性である。スクリーニング時に、洞性不整脈およびバルサルバ手技を含む、自律神経機能不全の診断を確認するための自律神経機能試験を行う。被験体は、(1)起立の5分以内にSBPの30mmHg以上の降下を示さなければならず;(2)バルサルバ手技のフェーズIV中にBPオーバーシュートの非存在下により決定される自律神経反射不全を示さなければならず;(3)起立時にめまい、意識朦朧または失神を経験しなければならず;(4)自律神経障害の他の特定可能な原因を有してはならない。
【0148】
A. 用量上昇研究(パートA)
パートAでは、全ての用量(研究化合物およびプラセボ)は、経口投与溶液を使用して、一重盲検様式(すなわち、被験体は盲検のまま)で投与される。最大30人までの被験体が、パートAに登録される。パートAの開始2日前に、被験体を臨床研究センター(CRC)に収容し、彼らは全用量上昇期間中そこに留まる。1日目に、被験体は単回用量のプラセボを受容する。2日目に、被験体は単回の1mg用量の研究化合物を受容する。各続く日に、被験体は、後述する事前設定停止基準が起こらない限り、単回の上昇用量の研究化合物を以下の通り受容する:3日目に2.5mg;4日目に5mg;5日目に10mg:
(a)続く次の用量の投与が安全性への懸念を引き起こし得るという研究者(スポンサーと協力関係にある)からの決定;
(b)1時間にわたりさらに2回繰り返される座位でのSBP≧180mmもしくはDBP≧110mm;
(c)研究者により決定される耐容できない副作用;または
(d)被験体が、プロトコールにより特定される最大用量の研究薬物治療を受容する。
【0149】
被験体が上述の基準のいずれかに適合すると、さらなる用量上昇は行われない。クリニックでの投与後観察日の後、被験体はCRCから解放される。
【0150】
研究者(スポンサーと協力関係にある)の決定に基づいて臨床的に有意義なSBPの増大を示さない被験体または停止基準に達する前に研究薬物を中止した被験体は、研究パートBに継続されない。研究パートBに継続するために、被験体は、全ての4つの研究化合物用量を完了する必要はない。座位BPの有効な増大をもたらし、かつ概して耐容性が良好と考えられる、少なくとも1回の研究化合物用量を受容した全ての被験体は、研究パートBおよび/またはパートCに参加するのに適格である。
【0151】
B. ウォッシュアウト期間
パートAの完了後、被験体は、ウォッシュアウト期間(最短8日で、36日を超えない)を受ける。解放から最初の72時間の間毎日、次に残りのウォッシュアウト期間の間少なくとも毎週、研究者または被指名人は、電話で被験体と接触して、被験体の健康状態を再調査する。電話で報告されるあらゆる有害事象を記録し、研究者により決定される通り医学的に適宜追跡する。研究者の指揮下で、被験体は、処方される他の薬物治療を使用して、ウォッシュアウト期間中のnOH症状を管理する。
【0152】
C. ランダム化二重盲検並行設計研究(パートB)
ウォッシュアウト期間後、被験体は、パートBの開始2日前にCRCに戻ってもよく、ランダム化されて、単回用量のプラセボまたは研究化合物のいずれかを受容する。パートBにおける処置割り当ては二重盲検であり、研究化合物は、CRCで指定された非盲検薬剤師により経口溶液として調製される。パートBでは、研究者とスポンサーとの間の協力で、被験体は、パートA中に決定された用量に対して匹敵するピーク曝露を達成して座位BPの有効な増大をもたらし、かつ概して耐容性が良好と考えられる研究化合物用量を受容する。表6で示す通り、パートBについて選択される個別化用量は、パートAで投与された最終用量に対応する研究化合物への匹敵する曝露を達成するように薬物動態モデリングを使用して決定される。
【表6】
【0153】
D. 非盲検拡張研究(パートC)
パートCについて、研究化合物は、非盲検40カウント高密度ポリエチレン瓶に包装された1mgまたは5mg錠剤として提供される。1日目に、患者は、パートA中に耐容された最高用量と等しい用量を受容する。2日目およびその後に、患者は、パートCの1日目に投与された用量の50%と等しい用量(1mg未満の端数は切り上げる)を受容する。例えば、パートAでの最高用量が10mg/日であった場合、パートCの1日目に患者は10mgを受容し、2日目およびその後に患者は5mg/日を受容する。同様に、パートAでの最高用量が5mg/日であった場合、パートCの1日目に患者は5mgを受容し、2日目およびその後に患者は3mg/日を受容する。患者が以前に観察された仰臥位高血圧(SBP≧180mmHgまたはDBP≧110mgHg)の存在もしくは悪化または非耐容性を示唆する他の有害事象を発症した場合、用量を3日間保留し、前の用量レベルの50%の用量レベル(1mg未満の端数は切り上げる)で再開する。用量を低減した後に仰臥位高血圧または他の有害事象が持続する場合、その患者における投与は中止し、主研究者により決定される通り、適切な代替療法およびケアを患者に提供する。加えて、患者が自宅に居る間に用量低減が起こる場合、患者に、用量低減の2週間以内に来院を依頼する。
【0154】
E. 研究評価
1. 有効性評価
座位および立位収縮期血圧ならびに起立性低血圧症状評価(OHSA)質問票の完了を、有効性を評価するために使用する。パートCについて、1日目の投与前に24時間の期間;ならびに15日目、29日目、85日目および169日目の来院前に72〜48時間、2時間毎に血圧測定するために利用可能であれば、外来血圧モニタリングを使用する。加えて、血圧は、少なくとも10分間の仰臥位(30度上昇)について毎朝食前に20〜30分間測定する。
【0155】
2. 安全性評価
有害事象、臨床研究試験(血液学、血清化学および検尿を含む)、生命徴候、12リードECG、同時薬物治療の使用および身体検査を、安全性を評価するために使用する。
【0156】
3. 薬物動態(PK)評価
パートAでは、研究化合物血漿濃度の評価のための血液試料を、投与前(用量前30分以内かつ立位BPの評価および起立性評価の直後に)ならびに3日目(2.5mg)および4日目(5mg)の投与に際して立位BPの評価および起立性評価の直後に用量後6〜8時間の間に再び採取する。1つの追加のPK試料を、被験体が停止基準または用量上昇シークエンスの終わりに達した後、最後に投与された用量後に、用量後24時間で採取する。
【0157】
パートBでは、PKのための血液試料を、投与前(用量前30分以内)、投与後6〜8時間の間(単一の時点)および投与後24時間に採取する。全てのPK試料を、適宜、BPの評価および起立性評価後収集する。各血液収集についての実際の収集時間を記録する。
【0158】
パートCでは、血液試料を、1日目および2日目の投与30分前ならびに1日目の用量後6〜9時間の間に再び収集する。また、患者が来院したとき、血液試料を収集する。
【0159】
4. 薬力学(PD)評価
パートAでは、NEおよびジヒドロキシフェニルグリコール(DHPG)の解析のための血液試料を、投与1日目(プラセボ)、3日目(2.5mg)および4日目(5mg)に、投与前2回(用量前30分以内かつ仰臥位および立位BPの各評価ならびに起立性評価の直後に)および用量後6〜8時間の間にもう1回(立位BPの評価および起立性評価の直後に)を含む時点で収集する。2つの追加のPD試料を、被験体が停止基準または用量上昇シークエンスの終わりに達した後、最後に投与された用量後に、用量後24時間で採取する(仰臥位および立位)。
【0160】
パートBでは、NEおよびDHPGの解析のための血液試料を、投与1日目に、投与前2回(用量前30分以内かつ仰臥位および立位BPの各評価ならびに起立性評価の直後に)および用量後6〜8時間の間にもう1回(立位BPの評価および起立性評価の直後に)を含む時点で収集する。
【0161】
パートCでは、血液試料を、1日目および2日目の投与30分前ならびに1日目の用量後6〜9時間の間に再び収集する。また、患者が来院したとき、血液試料を収集する。
【0162】
F. 研究エンドポイント
パートAおよびパートBの両方について、主要研究エンドポイントは、薬物投与後6〜8時間での座位収縮期血圧のプラセボとの差である。パートAについて、プラセボは1日目来院を指し、プラセボとの差は、プラセボ投与(1日目)に対する各研究化合物投与日(2〜5日目)からの時間に対応した差を指す。パートCについて、主要研究エンドポイントは、4週での「めまい、意識朦朧、失神の感覚またはブラックアウトしそうな感覚」(OHSA質問1)についてのリカート尺度の改善である。
【0163】
二次エンドポイントは、用量後6〜8時間での立位SBPのプラセボからの変化;「めまい、意識朦朧、失神の感覚またはブラックアウトしそうな感覚」についてのリカート尺度の改善(質問前の週の平均についての患者の症状等級付け);他の質問票スコア;起立SBPの増大(起立中1、3、5および10分での曲線下面積尺度);座位SBPの増大(薬物投与後10時間の曲線下面積);および起立性起立試験中の起立持続期間を含む。
【0164】
パートAの予備的結果を、表7に示す。表7では、チェック印(レ)は、患者に4−[2−(2,4,6−トリフルオロフェノキシメチル)フェニル]ピペリジン塩酸塩を投与したときに、プラセボに対して用量関連改善が観察されたことを示す。表7中の全ての患者は、5mg/日のパートAの最大用量を受容した5番の患者を除いては、10mg/日のパートAの最大用量を受容した。
【表7】
【0165】
表7のデータは、パートAを完了した患者のうち、12人の患者のうちの10人(83%)が、(a)座位収縮期血圧;(b)起立時間;または(c)めまいもしくは意識朦朧のうちの少なくとも1つにおいてプラセボと比較して改善を示したことを実証する。4人の患者(表7で示さず)は、既存の仰臥位高血圧(3人の患者)または心房細動(1人の患者)のために、パートAを中止したか、または十分に評価されなかった。パートAを完了したMSA患者のうち、6人の患者のうちの6人(100%)は、表7の少なくとも1つのカテゴリーにおいてプラセボと比較して改善を示した。