特許第6853346号(P6853346)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6853346
(24)【登録日】2021年3月15日
(45)【発行日】2021年3月31日
(54)【発明の名称】長さを維持する外科用器具
(51)【国際特許分類】
   A61B 34/30 20160101AFI20210322BHJP
   B25J 17/00 20060101ALI20210322BHJP
【FI】
   A61B34/30
   B25J17/00 G
【請求項の数】18
【全頁数】25
(21)【出願番号】特願2019-511879(P2019-511879)
(86)(22)【出願日】2016年8月31日
(65)【公表番号】特表2019-528139(P2019-528139A)
(43)【公表日】2019年10月10日
(86)【国際出願番号】US2016049775
(87)【国際公開番号】WO2018044306
(87)【国際公開日】20180308
【審査請求日】2019年8月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】518083032
【氏名又は名称】オーリス ヘルス インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】特許業務法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】シュー,トラヴィス
(72)【発明者】
【氏名】メナード,エドワード ジェイ.
(72)【発明者】
【氏名】ウッドリー,ブルース アール.
(72)【発明者】
【氏名】ウィリアムズ,マシュー レーガン
(72)【発明者】
【氏名】ウィッテ,スペンサー ジェームズ
【審査官】 北川 大地
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−193417(JP,A)
【文献】 特開2014−159071(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 34/30
A61B 17/28
B25J 17/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくともNの自由度を有する外科用エフェクタであって、手術部位で対象物の操作をするため前記外科用エフェクタと、
前記外科用エフェクタを制御するように構成された少なくともN+1個の独立して操作可能な入力コントローラと、
回転シャフトの周りを回転可能な少なくとも1つのアーマチュアと、前記少なくとも1つのアーマチュアに結合され、前記少なくとも1つのアーマチュアとともに前記回転シャフトの周りを回転するように構成された差動装置のペアとを含む往復構造と、
複数のケーブルであって、前記入力コントローラの作動が前記ケーブルを操作するように構成され、前記ケーブルはさらに、
前記入力コントローラでの前記ケーブルの操作によって前記外科用エフェクタが動作するように、少なくとも1つのケーブルが少なくとも1つの入力コントローラを前記外科用エフェクタに結合し、
前記入力コントローラでの前記ケーブルの操作によって前記往復構造が動作するように、少なくとも1つのケーブルが前記往復構造を前記入力コントローラの少なくとも1つに結合する、
ように構成された複数のケーブルと、
を備える外科用器具。
【請求項2】
前記少なくともNの自由度が、ピッチ、ヨー、およびグリップの少なくとも1つの組み合わせを含む、請求項1に記載の外科用器具。
【請求項3】
前記入力コントローラが、前記入力コントローラの作動が前記入力コントローラを回転軸の周りで回転させ、前記入力コントローラの前記回転が前記入力コントローラの周りで前記ケーブルをスプーリングまたはスプーリング解除するようにさらに構成される、請求項1または2のいずれかに記載の外科用器具。
【請求項4】
前記入力コントローラの作動が前記外科用エフェクタの動作を引き起こし、前記往復構造内に往復動作を生成する、請求項3に記載の外科用器具。
【請求項5】
前記往復構造は、前記ケーブルの動作が前記往復構造内往復動作を生成すようにさらに構成された、請求項3または4のいずれかに記載の外科用器具。
【請求項6】
前記入力コントローラの作動が前記ケーブルの長さを変えない、請求項1から5のいずれか一項に記載の外科用器具。
【請求項7】
操作軸に沿って前記外科用エフェクタを前記少なくともN+1個の入力コントローラから分離するケーブルシャフトをさらに備える、請求項1から6のいずれか一項に記載の外科用器具。
【請求項8】
前記入力コントローラ、前記往復構造、および前記ケーブルシャフトを取り付けるための支持ブラケットをさらに備える、請求項7に記載の外科用器具。
【請求項9】
マニピュレータであって、前記マニピュレータが前記少なくともN+1個の入力コントローラを制御するための少なくともN+1個のモータをさらに備える、請求項8に記載の外科用器具。
【請求項10】
前記往復構造が、前記支持ブラケットが前記マニピュレータに取り付けられていないときに前記ケーブルの状態を維持するように構成された、請求項9に記載の外科用器具。
【請求項11】
前記支持ブラケットが前記マニピュレータに取り外し可能で取り付け可能である、請求項9または10のいずれかに記載の外科用器具。
【請求項12】
少なくともNの自由度で移動する外科用リストであって、N+1個の外科用ケーブルの少なくとも1つが少なくともN+1個の独立して操作可能な入力コントローラ、回転シャフトの周りを回転可能な少なくとも1つのアーマチュアと、前記少なくとも1つのアーマチュアに結合され、前記少なくとも1つのアーマチュアとともに前記回転シャフトの周りを回転するように構成された差動装置のペアとを含む往復構造、および前記外科用リストのそれぞれに結合され、前記独立して操作可能な入力コントローラが、前記外科用ケーブルの長さを維持するために前記往復構造の反対の動作が発生するように作動時に前記外科用リストの動作を制御するように構成された外科用リスト。
【請求項13】
前記少なくともNの自由度が、ピッチ、ヨー、およびグリップの少なくとも1つの組み合わせを含む、請求項12に記載の外科用リスト。
【請求項14】
前記入力コントローラの作動が前記入力コントローラを回転軸の周りで回転させ、前記入力コントローラの前記回転が前記入力コントローラの周りで前記外科用ケーブルをスプーリングまたはスプーリング解除する、請求項12または13のいずれかに記載の外科用リスト。
【請求項15】
前記入力コントローラの周りの前記外科用ケーブルのスプーリングまたはスプーリング解除が前記外科用リストの動作を生成する、請求項14に記載の外科用リスト。
【請求項16】
前記入力コントローラおよび前記外科用リストを取り付けるための支持ブラケットをさらに備える、請求項12から15のいずれか一項に記載の外科用リスト。
【請求項17】
マニピュレータであって、前記マニピュレータが前記少なくともN+1個の入力コントローラを制御するための少なくともN+1個のモータを備え、前記マニピュレータが前記支持ブラケットに取り外し可能で取り付け可能であるマニピュレータをさらに備える、請求項16に記載の外科用リスト。
【請求項18】
前記往復構造が前記外科用ケーブルの少なくとも1つおよび前記入力コントローラの少
なくとも1つに結合され、前記外科用リストが前記マニピュレータに取り付けられていないとき、前記往復構造が前記外科用ケーブルの長さを一定に維持するように構成された、請求項17に記載の外科用リスト。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この説明は、概して外科用ロボット工学に関し、特にアクティブな張力を伴う外科用リスト(wrist)に関する。
【背景技術】
【0002】
ロボット技術には様々な用途がある。特に、ロボットアームは、人間が通常実行するはずの作業を完了するのを支援する。例えば、工場ではロボットアームを使用して自動車や家電製品を製造している。さらに、科学施設では、ロボットアームを使用して、マイクロプレオートの搬送などの実験手順を自動化している。最近、医師は外科手術の実施を支援するためにロボットアームを使い始めた。例えば、医師は腹腔鏡などの外科用器具を制御するためにロボットアームを使用している。
【0003】
可動チップを備えた腹腔鏡は、低侵襲性の方式で外科手術を実行するのに役立つ。可動チップは、腹壁を通って腸または胃など患者内のより離れた位置に誘導することができる。ロボット制御腹腔鏡の可動チップは、従来の外科手術での外科医の手首を模倣するいくつかの自由度を有する。ロボット式リストまたは単にリストとも呼ばれるこれらの可動チップは、技術と共に進化し、最小限の数のモータを使用しながら、外科用器具として可能な限り多くの自由度で動作を生成するための多様な技術を包含している。
【0004】
このような多くのロボット式リストは、予備張力をかけたケーブルのループを使用する。これにより、各ケーブルにモータで張力をかけられている器具に比較して、器具を最小限のモータで駆動することが可能になる。そのような「閉ループ」ケーブルシステムは、モータトルクをケーブル張力にマッピングすることをより困難にする。これは部分的にはシステムの予荷重のためであり、また部分的には予荷重が引き起こす摩擦のためである。予備張力器具の寿命末期は通常、機械的摩耗、洗浄用化学薬品の効果、およびケーブルの伸長の組み合わせにより、ケーブルの張力が徐々になくなるためである。
【発明の概要】
【0005】
この説明は、外科手術を通して3方向の自由度(DOF)を制御するケーブルの長さおよび張力を維持する自由度(DOF)3のロボット外科用リストに関する。
【0006】
リストを制御する外科用ロボットシステムは、マスタ機器が遠隔位置におけるスレーブ機器の動作を制御するマスタ/スレーブシステムを使用する。概して、スレーブ機器は、例えば、腹腔鏡検査における鉗子など、外科手術用の伝統的な外科用ツールに近似するロボット式外科用器具である。
【0007】
一実施形態では、スレーブ外科用器具は、ピッチ角、第1のヨー角、および第2のヨー角の3つの動作の自由度により手術部位で外科手術を実行するための外科用エフェクタを有する。さらに、外科用エフェクタは、外科用エフェクタのそれぞれのケーブルの相対的なヨー角および張力の基準である「第4の自由度」を有する。外科用エフェクタはまた、外部アームによって制御される操作軸に沿った並進自由度、および外部器具機器マニピュレータによって制御される操作軸周りの回転自由度も有する。
【0008】
外科用エフェクタの自由度を制御するために、外科用器具は4つの入力コントローラ、4本のケーブル、往復パンタグラフ、ケーブルシャフト、および外科用エフェクタのセットを有する。2本のケーブルは、外科用エフェクタを介して2つの入力コントローラのペアを結合し、その結果、それらの作動、例えば、スプーリングまたはスプーリング解除は
、ケーブルのセグメントの長さを操作して、自由度についての外科用エフェクタの動作を生成する。他の2本のケーブルは、外科用エフェクタの動作を生成する作動で往復パンタグラフに往復動作が生成されるように、2つの入力コントローラのペアを往復パンタグラフに結合する。往復パンタグラフは、往復パンタグラフを回転させることによって、各ペアの入力コントローラ間でケーブルの長さを一定に維持する。
【0009】
外科用リストは、ユーザの動作を手術部位での外科手術として解釈するように設計されたコンピュータプログラムによって制御することができる。このコンピュータプログラムは、ユーザの動作を解釈し、ユーザの動作を外科用エフェクタの動作に変換するために入力コントローラのスプーリングおよびスプーリング解除によって4本のケーブルを適切に操作するための命令セットを作成する。
【0010】
開示された実施形態は、添付の図面と共に解釈されるとき、本発明の以下の詳細な説明および添付の請求項からより容易に明らかになる他の利点および特徴を有する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】外科用ロボットシステムの例示的表現を示す図である。
図2】マスタ/スレーブ外科用ロボットシステムの例示的表現を示す図である。
図3】マスタ/スレーブ外科用システムの外科用器具に結合するロボットアームの端部の例示的表現を示す図である。
図4】マスタ/スレーブ外科用システムの外科用器具の例示的表現を示す図である。
図5】例示的な支持ブラケットの等角図であり、その構成要素部品を示している。
図6A】外科用器具の往復パンタグラフの例示的表現を示す図である。
図6B】マスタ/スレーブ外科用システムでの外科用器具の往復パンタグラフの引張状態の例示的表現を示す図である。
図6C】マスタ/スレーブ外科用システムでの外科用器具の異なる引張状態の例示的表現を示す図である。
図7A】外科用エフェクタの例示的表現を示す図である。
図7B】エフェクタハウジングが取り外された外科用エフェクタの例示的表現を示す図である。
図8】マスタ/スレーブ外科用システムでの外科用器具の外科用エフェクタへの入力コントローラの例示的な結合を示す図である。
図9A】ニュートラル状態の外科用エフェクタの一例を示す図である。
図9B】外科用エフェクタの第1および第2のヨー角の増加を示す図である。
図9C】ニュートラル状態の外科用エフェクタの異なる例を示す図である。
図9D】外科用エフェクタのピッチ角の増加を示す図である。
図10A】すべてのケーブル接続を含む外科用器具の一例を示す図である。
図10B】第1のヨー角が増加した場合の外科用器具の往復動作の一例を示す図である。
図10C】第1のピッチ角が増加した場合の外科用器具の往復動作の一例を示す図である。
図11】代替的なリストのケーブル配線を例示する図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(I.外科用ロボットシステム)
図1は、マスタ機器110とスレーブ機器150からなるマスタ/スレーブ外科用ロボットシステム100の例示的表現を示す。概して、マスタ機器は外科用ロボットシステム100のコマンドコンソールである。マスタ機器110は、コンソールベース112、ディスプレイモジュール114、例えばモニタ、および制御モジュール、例えばキーボード
116およびジョイスティック118を含む。一部の実施形態では、マスタ機器110の機能の1つまたは複数は、外科用ロボットシステム100のスレーブ機器150、または外科用ロボットシステム100に通信接続された別のシステムに統合することができる。ユーザ120、例えば医師は、マスタ機器110を使用して人間工学的位置から外科用ロボットシステム100を遠隔制御する。
【0013】
スレーブ機器150は、手術部位158での外科手術のために患者156が位置する手術台154を支持するための台座152を有する。外科用エフェクタ164を操作するため、少なくとも1つの配置可能なベース162に取り付けられた少なくとも1つのロボットアーム160は、台座152および手術台154にごく近接して配置される。ロボットアーム160は、独立して移動できる配置可能なベース162を有するのではなく、台座152に結合されてもよい。台座152および手術台154は、手術台の向きを変えるためのモータ、アクチュエータ、または他の機械的もしくは電気的手段を含むことができる。一部の実施形態では、台座152および手術台154は、異なる手術部位での異なる種類の外科手術のために患者156および手術台の向きを変えるように構成することができる。
【0014】
スレーブ機器150は、中央処理装置、メモリ装置、データバス、および例えば、ロボットマニピュレータからのカメラ画像および追跡センサデータなどの信号の解釈および処理を担う関連データ通信ポートを含むことができる。コンソールベース112は、中央処理装置、メモリ装置、データバス、および例えば、スレーブ機器からのカメラ画像および追跡センサデータなどの信号の解釈および処理を担う関連データ通信ポートを含むことができる。一部の実施形態では、コンソールベース112とスレーブ機器150の両方が負荷分散のために信号処理を実行する。
【0015】
コンソールベース112はまた、制御モジュール116および118を通してユーザ120によって提供されるコマンドおよび命令を処理することができる。図1に示されるキーボード116およびジョイスティック118に加えて、制御モジュールは、他の装置、例えばコンピュータマウス、トラックパッド、トラックボール、制御パッド、ビデオゲームコントローラ、および手のジェスチャおよび指のジェスチャを捕捉するセンサ(例えば、モーションセンサまたはカメラ)を含むことができる。
【0016】
ユーザ120は、速度モードまたは位置制御モードでマスタ機器110を使用して、スレーブ機器150に結合された外科用エフェクタ164を制御することができる。速度モードでは、ユーザ120は、制御モジュールを使用した直接手動制御に基づいて外科用器具のピッチおよびヨー動作を直接制御する。例えば、ジョイスティック118上の動きを、外科用エフェクタ164のヨーおよびピッチの動きにマッピングすることができる。ジョイスティック118は触覚フィードバックをユーザ120に提供することができる。例えば、ジョイスティック118は外科用エフェクタ164が特定の方向にさらに並進または回転できないことを示すために振動する。コマンドコンソール112はまた、外科用エフェクタ164が最大の並進または回転に達したことを示すために視覚的フィードバック(例えばポップアップメッセージ)および/または音声的フィードバック(例えばビープ音)を提供することができる。
【0017】
位置制御モードでは、コマンドコンソール112は、患者の3次元(3D)マップおよび患者の所定のコンピュータモデルを使用してスレーブ機器150を制御する。コマンドコンソール112は、外科用ロボットシステム100のロボットアーム160に制御信号を提供して、手術部位158に対して外科用エフェクタを操作する。3Dマップに依存しているので、位置制御モードでは患者の解剖学的構造の正確なマッピングが必要である。
【0018】
一部の実施形態では、ユーザ120は、マスタ機器110を使用せずに外科用ロボットシステム100のロボットアーム160を手動で操作することができる。外科手術室でのセットアップ中に、ユーザ120は、患者にアクセスするためにロボットアーム160、外科用エフェクタ164、および他の外科用装置を移動することができる。外科用ロボットシステム100は、ロボットアーム160および装置の適切な構成を判定するために、ユーザ120からの力フィードバックおよび慣性制御に依存する場合がある。
【0019】
ディスプレイモジュール114は、電子モニタ、ゴーグルまたはめがねなどの仮想現実表示機器、および/または表示機器の他の手段を含むことができる。一部の実施形態では、ディスプレイモジュール114は、例えば、タッチスクリーンを備えたタブレット機器として制御モジュールと一体化されている。さらに、ユーザ120は、統合ディスプレイモジュール114および制御モジュールを使用して、データを見ることも外科用ロボットシステム100へのコマンドを入力することもできる。
【0020】
ディスプレイモジュール114は、立体機器、例えばバイザまたはゴーグルを使用して3D画像を表示することができる。3D画像は「外科用表示」を提供し、これは手術部位158での患者の解剖学的構造を示すコンピュータ3Dモデルである。「外科用表示」は、患者の内部の仮想環境および患者の内部の外科用エフェクタ164の予測位置を提供する。ユーザ120は、「外科用表示」モデルをカメラによって捕捉された実際の画像と比較して、外科用エフェクタ164が患者内の正しい、またはほぼ正しい位置にあることを頭の中で方向付けて確認できるようにする。「外科用表示」は、手術部位周辺の解剖学的構造、例えば、患者の腸または結腸の形状に関する情報を提供する。ディスプレイモジュール114は、手術部位での解剖学的構造の3Dモデルおよびコンピュータ断層撮影(CT)スキャンを同時に表示することができる。さらに、ディスプレイモジュール114は、外科用エフェクタ164の所定の最適なナビゲーションパスを3DモデルおよびCTスキャン上に重ね合わせることができる。
【0021】
一部の実施形態では、外科手術の状況を示せるように外科用エフェクタのモデルが3Dモデルと共に表示される。例えば、スキャンによって、縫合糸が必要となる可能性のある解剖学的構造の領域を識別する。手術中、ディスプレイモジュール114は、手術部位158での外科用エフェクタの現在の位置に対応する外科用エフェクタ164によって捕捉された参照画像を示すことができる。ディスプレイモジュール202は、ユーザ設定および特定の外科手術に応じて、内視鏡のモデルの異なるビューを自動的に表示することができる。例えば、ディスプレイモジュール202は、外科用エンドエフェクタが患者の手術領域に近づくにつれ、ナビゲーションステップ中に外科用エンドエフェクタの俯瞰透視ビューを示す。
【0022】
(II.スレーブロボット機器)
図2は、一実施形態による外科用ロボットシステム100からのスレーブロボット機器200を示す。スレーブ機器200は、1つまたは複数のロボットアーム、例えばロボットアーム204に結合されたスレーブベース202を含む。スレーブベース202はマスタ機器110と通信で結合されている。スレーブベース202は、ロボットアーム204が患者に外科手術を実行するためにアクセスできるように位置決めすることができ、一方、医師などのユーザはマスタ機器から外科用ロボットシステム100を制御することができる。一部の実施形態では、スレーブベース202は患者を支持するための外科手術台に結合してもよい。明確にする目的で図1には示されていないが、スレーブベース202は、制御電子機器、空気圧技術、電源、光源などのサブシステムを含むことができる。ロボットアーム204は、ジョイント208で結合された複数のアームセグメント206を含み、それはロボットアーム202に多数の自由度を提供する。スレーブベース202は、電源210、空気圧212、ならびに中央処理装置、データバス、制御回路、およびメモ
リなどの構成部品を含む制御およびセンサ電子機器214、ならびにロボットアーム204を移動させるためのモータなどの関連アクチュエータを含むことができる。スレーブベース202の電子機器214はまた、コマンドコンソールから通信された制御信号を処理し送信することができる。
【0023】
一部の実施形態では、スレーブベース202はスレーブロボット機器150を搬送するための車輪216を含む。スレーブロボット機器150の移動性は、外科手術室のスペースの制約に適応するのに役立つほか、外科装置の適切な位置決めおよび移動を容易にする。さらに、移動性は、ロボットアーム204が患者、医師、麻酔科医、または他のいずれかの装置と干渉しないようにロボットアーム204を構成することを可能にする。手術中、ユーザはマスタ機器などの制御機器を使用してロボットアーム204を制御することができる。
【0024】
一部の実施形態では、ロボットアーム204は、ロボットアーム204の位置を維持するためにブレーキとカウンタバランスの組み合わせを使用するセットアップジョイントを含む。カウンタバランスにはガススプリングまたはコイルスプリングを含めることができる。ブレーキ、例えばフェールセーフブレーキは、機械的および/または電気的構成部品を含むことができる。さらに、ロボットアーム204は重力補助受動支持型ロボットアームとすることができる。
【0025】
ロボットアームは外科用器具、例えば、腹腔鏡220と結合することができ、ロボットアームが外科用器具を手術部位に配置する。ロボットアームは、外科用器具とベースの間の通信を可能にする特別に設計された接続装置230を用いて外科用器具に結合することができ、ベースはロボットアームを介して外科用器具を制御するように構成される。
【0026】
(III.器具機器マニピュレータ)
図3は、マスタ/スレーブ外科用システムでのロボットアーム300の端部の一実施形態を示す。各ロボットアームの端部では、機構チェンジャインターフェース(MCI)310が器具機器マニピュレータ(IDM)320をロボットアームに結合することができる。MCI310は、止めねじまたはベースプレートコネクタとすることができる。MCI310は、空気圧、電力、電気信号、および光信号をロボットアームからIDM320に伝達するためのコネクタを含む。
【0027】
MCI310は、IDM320を外科用ロボットシステムの外科用ロボットアームに取り外し可能または固定的に取り付ける。IDMは、外科用ツールの接続装置230を(例えば、以下の図4に記載の支持ブラケットおよび取り付けブラケットを介して)、外科用ツールが外科用ツールの軸の周りを連続的に回転または「転がるように」させることが可能なように、ロボット外科用アームに取り付けるよう構成される。IDM320は多様な外科用器具(図3には図示せず)と共に使用することができ、それはハウジングおよび連長体を含むことができ、腹腔鏡、内視鏡、または外科用器具の他の種類のエンドエフェクタ用とすることができる。
【0028】
(IV.外科用器具)
図4は、マスタ/スレーブ外科用システムでの外科用器具400の例示的表現を示す。外科用器具は、支持ブラケット410および取り付けブラケット450を介してIDM320に結合されている。支持ブラケット410および取り付けブラケット450は円板形状であり、ケーブルシャフト420が支持ブラケットの円板上の中央に位置し、操作軸430に沿って取り付けブラケット450と反対側の支持ブラケット410の平面に対して垂直に外側に延在する。ケーブルシャフト420は外科用エフェクタ440を支持ブラケット410に結合し、ロボットアームおよびIDMを介してスレーブベースによる外科用
エフェクタの制御を可能にする。
【0029】
(V.支持ブラケット)
図5は、支持ブラケットの一実施形態の等角図を示しており、取り付けブラケットは図示されておらず、その構成要素部品を示している。支持ブラケット410は、支持ブラケットを取り付けブラケットに結合するのを支援するために円板の外縁に結合された少なくとも1つの接続用貫通孔512を備えるほぼ円板形状の支持ベース510を含む。一部の実施形態では、支持ブラケットを取り付けブラケットに結合するための接続用貫通孔がない。他の実施形態では、取り付けブラケットはなく、支持ブラケットはIDMに直接結合している。支持ベースの一方の面、これ以後、結合面514は、入力コントローラ520、ガイダンスプーリ530、および往復パンタグラフ540のための支持構造として機能する。支持ベース510の反対側の面、これ以後、操作面516(見えるように示されていない)は、ケーブルシャフト420のための支持構造として機能する。
【0030】
支持ベースの中心には、ケーブルシャフト420を介して入力コントローラ520を外科用エフェクタ440に結合するために、操作軸430に沿って結合面514から操作面516まで支持ベース510を貫通する動作貫通孔518がある。動作貫通孔518は、少なくとも4つのケーブル560セグメントが支持ベース510を通って結合面514から操作面516まで妨げられることなく通過することを可能にするのに十分大きな直径を有する。
【0031】
動作貫通孔の外縁に沿って、2つの外側530a、530dおよび2つの内側530b、530cの4つのガイダンスプーリ530のセットが、結合面の平面の下に少なくとも部分的に凹設されている。各ガイダンスプーリ530の平面は結合面514の平面と直交し、プーリの平面はプーリの円板の平面である。プーリは、各ガイダンスプーリの平面が動作貫通孔518の縁部に対して垂直であり、ガイダンスプーリの少なくとも一部が動作貫通孔内に延在するように配置される。ガイダンスプーリ530は、支持ベース510に結合され、支持ベース510の平面と同一平面上の中心ガイダンス軸の周りを回転するように構成される。一実施形態では、ガイダンスプーリ530はベアリングを介して支持ベース510に接続されている。ガイダンスプーリにより、ケーブル560は、互いに絡み合ったり、または動作貫通孔の縁部を擦ることなく、動作貫通孔518を通って移動することが可能である。
【0032】
操作軸430からガイダンスプーリの平面に沿って外側に向かう線は、2つの外側軸550a、550dおよび2つの内側軸550b、532cの4つのケーブル軸550のセットを生成する。ガイダンスプーリ530は、外側ケーブル軸550a、550dが支持ブラケットの直径に沿って線を形成し、外側ケーブル軸(例えば、550a)と最も近い内側ケーブル軸(例えば、550b)との間の角度が0度と90度の間のゼロではないように位置決めされ、その一例は図5で、約60度であるとして示されている。同様に、2本の内側ケーブル軸(例えば、550bと550c)の間の角度は0度と90度の間の角度であり、その一例は約60度として示されている。
【0033】
(VI.ケーブルシャフト)
ケーブルシャフト420は外科用エフェクタ440を支持ブラケット410に結合し、ロボットアームおよびIDMを介してスレーブベースによる外科用エフェクタの制御を可能にする。一実施形態では、ケーブルシャフトは、アクション端とドライバ端を備える長い中空円筒であり、アクション端は外科用エフェクタ440に結合し、ドライバ端は支持ブラケット510の操作面516に結合する。ケーブルシャフト420が操作軸430に沿って支持ブラケットから直交して延在するように、ケーブルシャフトは支持ブラケット510に結合される。ケーブルシャフト420は、入力コントローラ520を外科用エフ
ェクタ440に結合するケーブル560を収容する。
【0034】
(VII.入力コントローラ)
2つの外側入力コントローラ520a、520dおよび2つの内側入力コントローラ520b、520cは支持ベースに結合されており、結合面514から外向きに直交する方向に延在している。入力コントローラ520は、各入力コントローラがケーブル軸550のうちの1つに沿って操作軸から放射状に等距離で、操作軸430の周囲を同心の半円に沿って配置されている。入力コントローラ520は、円筒の半径が大きいものが上に結合される、逆層状円筒ピラミッドと同様の形状とすることができる。入力コントローラ520の結合された円筒は、結合面514に直交しかつ操作軸430に平行であるその特定の入力コントローラに関連付けられたスプール軸556に沿って中央に整列されている。入力コントローラは、外側入力コントローラ520a、520dの2つのスプール軸556が2つの外側ケーブル軸と同様に支持ブラケットの直径に沿って線を形成するように配置され、それに応じて、操作軸430に対して最も近いそれぞれの内側入力コントローラと同様の角度を形成する。2つの内側入力コントローラも同様に、上述のように、2つの内側ケーブル軸と同様に互いに対してある角度で配置されている。
【0035】
支持ベース510は4つの円形ロータリジョイント570を含む。ロータリジョイント570は、各入力コントローラが、556などのそのスプール軸の周りを回転することを可能にするように構成される。ロータリジョイント570は、各ロータリジョイントの頂部が支持ベース510の結合面514と実質的に同一平面上にあるか、またはそこからわずかにくぼむように形成される。ロータリジョイント570は、ロータリジョイントの回転軸が関連する入力コントローラのスプール軸556と同軸となるように、各入力コントローラがロータリジョイントの中心に結合された状態で入力コントローラ520に同様に配置される。一実施形態では、ロータリジョイントはベアリングである。
【0036】
図5には示されていないが、支持ブラケットはさらに入力コントローラを介して取り付けブラケット450に結合されている。取り付けブラケットは、入力コントローラの上部が取り付けブラケットを通過し、入力コントローラの上部が取り付けブラケットの上部と実質的に同一平面上になるように入力コントローラに結合する。取り付けブラケットはさらに、支持ブラケットのロータリジョイントと同軸の同様のロータリジョイントのセットで構成されており、これにより入力コントローラを回転させることができる。入力コントローラ520および取り付けブラケット450はIDMに結合され、ケーブル560を作動させて外科用エフェクタ440の動作を制御するように構成されており、このことは後のセクションで詳細に説明する。ケーブル560は、ケーブルが少なくとも部分的に入力コントローラの周りを包み込み、スプール軸の周りを回転するときにコントローラの周りをスプーリングまたはスプーリング解除できるように、入力コントローラ520に結合される。各入力コントローラは単一のケーブルに接続されている。
【0037】
(VIII.往復パンタグラフ)
往復パンタグラフ540は、セクションXおよびXIで説明されているように、外科用エフェクタに対し往復して動作するように構成されているので、そのように命名された複数の物理的構成部品を含む物理的構造である。したがって、往復パンタグラフは、外科用器具全体、具体的にはリスト、より具体的にはその中のケーブルの長さを維持することを可能にする。ケーブルは固定クランプやシリンダーの周りのスプーリングなどの従来の技術を使用して締め付けられるが、これは通常の消耗で時間の経過と共に緩む(張力が少なくなる)ことが多い。ケーブルの摩耗によりケーブルの全長が変化する場合があるが、この変化は長さ保持システムを維持するためにIDM、ロボットアーム、および制御コンピュータによって補正される。往復パンタグラフはさらに、入力コントローラおよびIDMによって制御されていないとき、例えば外科用器具がスレーブ外科用機器から取り外され
たとき、外科用器具のケーブルの長さを維持するように構成される。
【0038】
往復パンタグラフは2つの動作モードを有する。アタッチドモード、これはIDMおよびロボットアームが入力コントローラを作動させて外科用エフェクタの動作を制御することができるように、外科用器具がIDMおよびロボットアームに取り付けられる。デタッチモード、これは往復パンタグラフおよび入力コントローラが受動的に外科用エフェクタの外科用ケーブルの長さを維持するように外科用器具がIDMおよびロボットアームから分離され、それによって緩む/脱落するのを防止する。
【0039】
(VIII−A.往復パンタグラフの構築)
往復パンタグラフ540は、内側入力コントローラ524とは反対側の結合面514の半分で支持ベース510に結合されている。図6に拡大図で示されている往復パンタグラフ540は、2つの結合差動装置、回転シャフト、およびアーマチュアを含む。回転シャフトは、回転シャフトの中心軸、これ以後、往復軸558と呼ぶが、これが操作軸430と平行になるように、結合面514から直交して外側に延在する。回転シャフトは操作軸430から放射状に離れて配置されている。加えて、外側スプール軸556と操作軸430と往復軸558との間の角度は約90度であるが、他の実施形態では異なる角度の場合がある。
【0040】
図6Aは、例示的な往復パンタグラフ540の等角図である。往復パンタグラフは、2つの差動装置610aおよび610bを結合するアーマチュア620から構成される。第1の差動装置610aはプーリのペアを結合し、第1のプーリは2つの溝を備える往復リストプーリ612aであり、第2のプーリは1つの溝を備える往復メンバプーリ614aである。第2の差動装置610bも同様に、リストプーリ612bとメンバプーリ614bで構成される。別の実施形態では、往復リストプーリ612aおよび612bは、2つの別々の同軸単一の溝プーリ、または2つのケーブルを考慮に入れた十分な大きさの単一溝を備える単一のプーリを含むことができる。アーマチュア620は、往復リストプーリ612aおよび612bが互いに、かつ往復軸558に同軸であるように、差動装置610aおよび610bを互いに結合する。さらに、アーマチュア620は各差動装置の往復メンバプーリ614aおよび614bを、往復リストプーリ612aおよび612bから等しい距離に結合する。アーマチュア620はさらに、往復メンバプーリ614aおよび614bが往復軸558の周りを互いからゼロ以外の角度で離れて配置されるようにそれらを連結する。他の実施形態では、往復メンバプーリ612は往復リストプーリ614から異なる距離、離れている。往復メンバプーリ614は引張軸630の周りを回転し、引張軸は往復軸558に対して鋭角を形成する。
【0041】
(VIII−B.往復パンタグラフのケーブル配線)
各差動装置610内では、往復リストプーリ612と往復メンバプーリ614がさらにケーブル560によって結合されている。説明のために、ケーブルは、インバウンドセグメント616aおよびアウトバウンドセグメント616bを有し、インバウンドセグメントは往復軸558から引張軸630に向かって延在し、アウトバウンドセグメントは引張軸から往復軸に向かって延在すると説明することができる。ケーブルは使用中に動くので、セグメントの定義は任意であり、ケーブル自体の固定位置にあるのではなく、プーリに対する明確さのためにここで定義されている。
【0042】
インバウンドセグメント616a上で、ケーブルは、往復リストプーリ612の周りでその第1の溝で少なくとも部分的にループする。次に、ケーブルは、往復メンバプーリ614の周りで少なくとも部分的にループし、往復メンバプーリを往復リストプーリ612に結合して、アウトバウンドセグメントに移行する。次に、アウトバウンドセグメント616b上で、ケーブルはさらに少なくとも部分的に往復メンバプーリ614の周りでルー
プし、それによってケーブルの方向を逆にし、その後、ケーブルは引張軸630から離れる方に向けられる。ケーブルのアウトバウンドセグメントは、往復メンバリストプーリ612の第2の溝の周りで少なくとも部分的にループし、その後、往復軸558から離れる方に向けられる。
【0043】
(VIII−C.往復パンタグラフの動作)
図6Bは、入力コントローラが抑制パンタグラフにどのように結合されるかの一例を示す。各入力コントローラ520の最上層、すなわち支持ブラケットの結合面から最も離れた円筒は、IDMが入力コントローラの独立したスプール軸556a、556b、556c、556dの周りの回転を操作できるように、入力コントローラをIDMの対応するアクチュエータに取り外し可能で取り付けるように構成される。さらに、入力コントローラ520の各ペアは、ケーブルのインバウンドセグメントおよびアウトバウンドセグメントが第1の入力コントローラを入力コントローラのペアの第2の入力コントローラに結合するように、往復パンタグラフ540の差動装置610のうちの1つにケーブル560によって結合される。図示の実施形態では、外側520aおよび内側520b入力コントローラは第1のケーブルによってペアにされ、内側520cおよび外側520dは第2のケーブルによってペアにされているが、当業者であれば任意の2つの入力コントローラを一緒にペアにできることを認識されよう。
【0044】
腹腔鏡ツールが手術部位で手術を行うためにIDMに取り付けられている間、往復パンタグラフはアタッチモードにある。アタッチモードの間、往復パンタグラフの差動装置が各ペアの入力コントローラを結合する各ケーブルを一定の長さに維持する。ケーブルの全長は、所与のケーブルに関連付けられた入力コントローラのペアのスプーリングおよびスプーリング解除の相互作用のほか、往復軸周りの抑制パンタグラフの回転によっても操作される。ケーブルの長さを維持するために、差動装置のプーリおよびアーマチュアが往復軸と引張軸の周りを回転し、スプール軸周りの入力コントローラのスプーリングまたはスプーリング解除によって生じる短縮(または延長)を補うために、等しくかつ反対の延長(または短縮)を生成する。
【0045】
図6Bおよび図6Cはこのプロセスを示しており、以下の段落ではさらにインバウンドおよびアウトバウンドケーブルセグメント、往復パンタグラフ、および入力コントローラのペアの間の相互作用を詳細に説明している。明確にするために、これ以後、第1の差動装置内の第1のケーブルのインバウンドセグメントは第1のセグメント660a、第1の差動装置内の第1のケーブルのアウトバウンドセグメントは第2のセグメント660b、第2差動装置内の第2のケーブルのインバウンドセグメントは第3のセグメント660c、および第2の差動装置内の第2のケーブルのアウトバウンドセグメントは第4のセグメント660dである。
【0046】
さらに、第1のコントローラのペアの第1の入力コントローラは第1のセグメント660aの長さを制御し、第1のコントローラのペアの第2の入力コントローラは第2のセグメント660bの長さを制御し、第2のコントローラのペアの第1の入力コントローラは第3のセグメント660cの長さを制御し、そして第2のコントローラのペアの第2の入力コントローラは第4のセグメント660dの長さを制御する。上記のケーブルセグメントの任意のペアは、その時点でペアの一方の入力コントローラで実行されているスプーリング/スプーリング解除に応じて、インバウンド/アウトバウンドセグメントのペアとして説明することができる。図示の実施形態では、内側および外側入力コントローラ(例えば520aと520b)はペアになっているが、当業者ならば、入力コントローラは異なるペアで構成されてもよいことを理解されよう。
【0047】
図示の実施形態では、差動装置によって結合された入力コントローラのペアの所与のケ
ーブルについて、アタッチモードには5つの可能な状態がある。第1の状態では、入力コントローラのペアは同時に、第1のセグメントの長さを減少させ、第2のセグメントの長さを増大させる。第2の状態では、入力コントローラのペアは同時に、第2のセグメントの長さを増大させ、第1のセグメントの長さを減少させる。第3の状態では、入力コントローラのペアは同時に、第1および第2のセグメントをスプーリング解除し、その結果、往復パンタグラフが往復軸の周りを補償回転してケーブルの長さを維持する。第4の状態では、入力コントローラのペアは同時に、第1および第2のセグメントをスプーリングし、その結果、往復パンタグラフが往復軸の周りを補償回転してケーブルの長さを維持する。第5の「ニュートラル」状態では、入力コントローラのペアはケーブルセグメントを操作しない。可能なすべての状態で、入力コントローラのペアの第1の入力コントローラから第2のコントローラまでのケーブルの長さは維持される。
【0048】
図6Bは、第1の660aおよび第2の660bセグメントに関連付けられたケーブルの第1の状態での入力コントローラおよび往復パンタグラフを示す支持ブラケットの平面図である。第1の入力コントローラ520aはケーブルをスプーリング解除し、第1のセグメント660a内で長さ670aを増大させ(矢印で示す)で、一方、第2の入力コントローラ520bは同じケーブルをスプーリングし、第2のセグメント660bの長さ670bを減少させる。これにより、往復メンバプーリ614が引張軸630の周りを回転すること、往復リストプーリ612が往復軸554の周りを回転しないこと、アーマチュア620が往復軸614の周りを回転しないこと、および動作貫通孔518のケーブルの往復動作が生じる。第1の状態のこの実施形態では、往復リストプーリと接触しているケーブルの接触領域640aは変化していない。第2の状態は第1と同様であり、第1および第2の入力コントローラが反対になっている。
【0049】
図6Cは、第3の引張状態にある入力コントローラおよび往復パンタグラフを示す支持ブラケットの平面図である。入力コントローラのペアの第1の入力コントローラ、例えば外側入力コントローラ520a、ペアはそのスプール軸556aの周囲をスプーリングする(第1のセグメント660aの長さ680aを減少させることを試みる)、一方、入力コントローラのペアの第2の入力コントローラ、例えば内側入力コントローラ520bはそのスプール軸556bの周囲をスプーリングする(第3のセグメント660bの長さ680aを減少させることを試みる)。これにより、往復メンバプーリ614が引張軸630の周りを回転すること、往復リストプーリが往復軸558の周りを回転すること、および差動装置が往復軸558の周りを回転することが生じる。第3の状態のこの実施形態では、差動装置は、往復リストプーリとのケーブルの接触領域640bが減少するように、入力コントローラのペアの周りのケーブルセグメントのスプーリングを補償する量だけ往復軸558の周りを回転690し、パンタグラフのケーブルの全長は維持される。第4の状態は第3の状態と同様であり、第1および第2の入力コントローラが、第1および第2のセグメントを同時にスプーリング解除し、スプーリング解除は往復軸の周りの差動装置の回転によってオフセットされる。
【0050】
(IX.外科用エフェクタ)
図7Aは、マスタ/スレーブ外科用システムでの腹腔鏡検査のための外科用エフェクタの実施形態を示す。外科用エフェクタは、2つの作動メンバ710、外科用リスト720、およびエフェクタハウジング730から構成される。図7Bは、エフェクタハウジングが取り外された外科用エフェクタの図である。
【0051】
(IX−A.外科用エフェクタの構築)
2つの作動メンバ710は、外科手術を実行するための既存の外科用ツールのロボットバージョン、例えば、図7Aおよび図7Bに例示する小型ロボット鉗子として設計することができる。各作動メンバは、単一の溝を備えるメンバプーリ712と鉗子の片方714
とから構成される。メンバプーリは外面および内面を有し、内面および外面に直交する、中心に位置する回転軸、これ以後、メンバ軸740の周りを回転することができる。メンバプーリは、内面から外面へと通過し、かつ操作軸430に直交するメンバ軸と同軸で中心に配置されたメンバボア716を有することができる。
【0052】
各鉗子の片方714は、実質的に平坦な側面と丸みを帯びた側面を有し、平坦な側面は外科手術で組織と相互作用するためのものである。実質的に平坦な側面は、外科手術で組織とのより容易な相互作用を可能にするためにテクスチャ加工することができる。別の実施形態では、鉗子は外科手術で針と相互作用するように構成されている。各鉗子の片方714は、鉗子の片方がメンバプーリの縁部に垂直であり、メンバプーリ712の平面のメンバ軸740から放射上に延在するように、メンバプーリ712に独立して結合されている。メンバプーリ712はさらに、鉗子の片方714に結合され、鉗子の片方もメンバ軸740の周りを回転する。
【0053】
作動メンバ710は、メンバプーリの内面がメンバボア716と実質的に同一平面上にあり、メンバ軸740が同軸であるように結合される。作動メンバ710はさらに、各鉗子の片方の平坦な側面が互いに面し、同じ平面上にあるように結合される。
【0054】
外科用リストは4つの溝を備える2つのリストプーリのセットである。第1のリストプーリ722は、第2のリストプーリ724よりも大きい半径を有することができる。リストプーリは前面と後面を有し、前面と後面に直交する中心に配置された回転軸、これ以後リスト軸742の周りを回転することができる。本明細書では、リストプーリの4つの溝は、後側から前側に向かって1から4と呼ばれる。リストプーリ720は、リストプーリの前面から後面へ通過するリスト軸742と同軸の中心に配置されたリストボア726を有することができる。各リストプーリのリスト軸742は、互いに平行であり、メンバ軸740と直交し、かつ操作軸420と直交しているので、3種類の軸は直交セット744である。リストプーリは、前面が同じ平面上にあるように配置され、第1のリストプーリ722は第2のリストプーリ724よりも操作軸430に沿ってケーブルシャフト420のアクション端に近くなっている。
【0055】
エフェクタハウジング730は、リストプーリ720をメンバプーリ712に結合する円筒形保護金属シースとすることができ、シースを通るケーブル560の移動を可能にする。一部の実施形態では、エフェクタハウジングは近位クレビス730bおよび遠位クレビス730cを含むことができ、近位クレビスは接続ピンによって遠位クレビスに結合される。第1のリストプーリ720および第2のリストプーリ722は、リストプーリ720のリストボア726を通りリスト軸742に沿ってハウジングの一方の側からハウジングの他方の側に貫通する独立した止めねじ732によってエフェクタハウジング730に結合される。メンバプーリ712は、メンバプーリ712の中心メンバボア716を通り同軸メンバ軸740に沿ってハウジングの一方の側からハウジングの他方の側に貫通する単一の止めねじ734によってエフェクタハウジングに結合される。メンバプーリ712はさらに、鉗子の片方714が操作軸430に沿ってエフェクタハウジングからケーブルシャフト420のアクティブ端に向かって延在するように、エフェクタハウジングに結合される。ハウジングは、メンバプーリがリストプーリよりも操作軸430に沿ってケーブルシャフト720のアクティブ端に近くなるように、リストプーリ720とメンバプーリ712を結合する。エフェクタハウジング730はリストプーリ720とメンバプーリ714を結合して、操作軸430、メンバ軸740、および平行リスト軸742の直交セットを維持し、すなわちメンバプーリ712の外面、リストプーリ720の前面、および操作軸430は直交744である。
【0056】
(IX−B.外科用エフェクタのケーブル配線)
ハウジング内で、リストプーリ720およびメンバプーリ714はさらに2本のケーブルによって結合されている。一部の実施形態では、エフェクタハウジング内のケーブルは、これ以後、明確にするために第3および第4のケーブルと呼ばれる、入力コントローラを往復パンタグラフに結合する2本のケーブルとは異なる。説明のために、ケーブルは、インバウンドセグメントおよびアウトバウンドセグメントを有し、インバウンドセグメントはケーブルシャフト内でドライバ端からアクション端まで延在し、アウトバウンドセグメントはケーブルシャフト内でアクション端からドライバ端まで延在しているものとして説明することができる。
【0057】
これ以後、第3のケーブルのインバウンドセグメントは第5のセグメント750aであり、第3のケーブルのアウトバウンドセグメントは第6のセグメント750bである。1つの可能なケーブル配線方式によると、インバウンドセグメント650aでは、ケーブルは、第2のリストプーリの周りでその第1の溝で少なくとも部分的にループする。次に、第5のセグメント650aは、ハウジング内の第1のリストプーリ722の第1の溝の周りで少なくとも部分的にループし、第1のリストプーリを第2のリストプーリに結合する。次に、インバウンドセグメントは、第1のメンバプーリ712の第1の溝の周りで少なくとも部分的にループし、第1のリストプーリをメンバプーリに結合する。第1のメンバプーリ712の周りで少なくとも部分的にループするインバウンドセグメント750aは、アクション端から離れる方へケーブルの方向を反転し、アウトバウンドセグメント650bを開始する。アウトバウンドセグメント650bで、ケーブルは第1のリストプーリ722の第3の溝の周りで少なくとも部分的にループする。次に、アウトバウンドセグメント650bは、第2のリストプーリ724の第3の溝の周りで少なくとも部分的にループする。
【0058】
同様に、第4のケーブルのインバウンドセグメントは第7のセグメント750cであり、第4のケーブルのアウトバウンドセグメントは第8のセグメント750dである。上記と同じケーブル配線方式を続けて、インバウンドセグメント750cは、インバウンドルート上のリストプーリ720の第2の溝の周りで少なくとも部分的にループし、第2のメンバプーリ712の周りで少なくとも部分的にループし、方向を反転してアウトバウンドセグメント750dを開始し、リストプーリの第4の溝の周りで少なくとも部分的にループする。
【0059】
図示の実施形態では、インバウンドケーブルは、第2のリストプーリの半分および第1のリストプーリの反対側の半分を少なくとも部分的にループしている。これらの半分が反転できることは当業者には明らかであろう。
【0060】
図示の実施形態では、第3のケーブルは、インバウンドルート上の第1の溝およびアウトバウンドルート上の第3の溝のリストプーリの周りで少なくとも部分的にループし、一方、第4のケーブルは、インバウンドルート上の第2の溝およびアウトバウンドルート上の第4の溝のリストプーリの周りで少なくとも部分的にループする。第3および第4のケーブルのインバウンドおよびアウトバウンドルートの溝が異なる方法で構成できることは当業者には明らかであろう。
【0061】
図8は、入力コントローラ520がどのように外科用エフェクタ440に結合されているかを示す。各入力コントローラ520の底部層は、支持ブラケット410上のロータリジョイント570に結合されている。内側入力コントローラと外側入力コントローラの各ペア(例えば、520aと520b)は、外側入力コントローラのインバウンドセグメントの第5のセグメント750aが外科用エフェクタ440を介して内側入力コントローラのアウトバウンドの第6のセグメント750bに結合するように、動作貫通孔518を貫通するケーブルによって外科用エフェクタ440に結合する。代替構成では、インバウン
ドおよびアウトバウンドセグメントのほか、ペアの入力コントローラも交換可能である。
【0062】
(IX−C 外科用エフェクタの自由度)
説明した構成では、外科用エフェクタは、3つの制御可能な自由度、すなわち図9A図9Dに示す第1のヨー角910、第2のヨー角920、およびピッチ角930を有する。
【0063】
図9Aおよび図9Bに示すように、第1の自由度は、第1のメンバプーリ712がメンバ軸740、すなわちヨー軸の周りで回転912し、鉗子の片方が操作軸430に対して第1のヨー角910を生成するように鉗子の片方714を第1のメンバプーリの平面で動かすときの第1の鉗子の片方714の動作である。
【0064】
同様に、第2の自由度は、第2のメンバプーリ712がメンバ軸710、すなわちヨー軸の周りで回転し、鉗子の片方が操作軸430に対して第2のヨー角920を生成するように第2の鉗子の片方を第2のメンバプーリの平面で動かすときの第2の鉗子の片方714の動作である。
【0065】
図9Cおよび図9Dに示すように、第3の自由度は、第1のリストプーリが第1のリスト軸742、すなわちピッチ軸の周りで回転922し、作動メンバが操作軸430に対して第1のヨー角920を生成するように作動メンバを第1のリストプーリ722の平面で動かすときの作動メンバの動作である。
【0066】
記載の実施形態では、第1および第2のヨー角は同じ平面上にあり、ピッチ角の平面はヨー角の平面に直交している。他の実施形態では、第1のヨー角、第2のヨー角、およびピッチ角は、操作軸に対して異なる向きを有することができる。さらに他の実施形態では、第1および第2のヨー角は同一平面上になくてもよい。
【0067】
外科用エフェクタはまた、2つの追加の自由度、すなわち回転角および並進距離で動くことができる。回転角度は、操作軸の周りでIDMとMCIの回転によって生成される。並進距離は、ケーブルシャフトが操作軸に沿って並進するようにロボットアームの動作によって生成される。
【0068】
(IX.外科用エフェクタの動作)
このシステムの3自由度についての動作は、メンバプーリ714およびリストプーリ720のそれぞれの軸の周りの回転によって生成される。プーリのその軸の周りの回転は、ケーブルの長さを制御するために入力コントローラがケーブルをスプーリングまたはスプーリング解除することにより発生する。
【0069】
図9A図9Dは、ケーブルの長さを制御することによって、3つの制御可能な自由度について外科用エフェクタを動作させる方法をさらに示す。この実施形態では、各入力コントローラは、外科用エフェクタの第3のケーブルの入力または出力セグメント、あるいは第4のケーブルの入力または出力セグメントのいずれかに結合されている。第1のコントローラのペアの第1の入力コントローラは第5のセグメント750aの長さを制御し、第1のコントローラのペアの第2の入力コントローラは第6のセグメント750bの長さを制御し、第2のコントローラのペアの第1の入力コントローラは第7のセグメント750cの長さを制御し、そして第2のコントローラのペアの第2の入力コントローラは第8のセグメント750dの長さを制御する。
【0070】
図9Aは、「ニュートラル」状態の外科用エフェクタを示しており、すなわち第1のヨー角910、第2のヨー角920、およびピッチ角930は操作軸430からのオフセッ
トを有しておらず、ケーブルセグメントの長さは変更されていない。第1のヨー角910は、第7のセグメントの長さが増大920し、一方、第8のセグメントの長さが減少922するように第4のケーブルの長さを制御することによって操作される。この構成により、第4のケーブルが移動し、それにより、第1のメンバプーリがヨー軸740の周りを回転して、片方の鉗子714と操作軸430の間の第1のヨー角910が増大する。往復構成では、第7のセグメントの長さを減少させ、第8のセグメントの長さを増大させることによって、第1のヨー角910を減少させることができる。両方の構成で、外科用ケーブルの全長は維持される。
【0071】
同様に、第2のヨー角は、第5のセグメント750aの長さが増大し、一方、第6のセグメント750bの長さが減少するように第3のケーブルの長さを制御することによって操作される。この構成により、第4のケーブルが移動し、それにより、第2のメンバプーリがヨー軸740の周りを回転して、片方の鉗子と操作軸430の間の第2のヨー角920が増大する。往復構成では、第3のケーブルは、第8のセグメントの長さを増大させ、第7のセグメントの長さを減少させることによってヨー角を減少させることができるように移動する。さらに、ヨー軸の周りの鉗子の片方の動作は、メンバプーリの平面の操作軸から離れたどちらの方向の可能性もある。両方の構成で、外科用ケーブルの全長は維持される。
【0072】
一部の実施形態では、ケーブルのセグメントの長さの操作は、握力などの追加の「自由度」を生成する。これらの実施形態では、第1および第2の自由度についての動作は互いに制限し合う、すなわち、一方の鉗子の片方は他方の鉗子の片方の位置およびヨー角920のためにそのヨー角910を変えることができない場合がある。このことは、例えば、鉗子の片方間に対象物が保持されているために起こる場合がある。第1および第2の自由度が互いに制限するときにシステムで測定される電気的負荷の量は、握力の基準を提供する。
【0073】
図9Cは、ニュートラル状態の外科用エフェクタを示しており、すなわち第1のヨー角910、第2のヨー角920、およびピッチ角930は操作軸430からのオフセットを有しておらず、ケーブルセグメントは入力コントローラによって操作されていない。ピッチ角930は、第3および第4のケーブルの長さを制御することによって操作される。第5および第6のセグメントの長さは増大924し、一方、第7および第8のセグメントの長さは減少926して、第1リストプーリがピッチ軸の周りを回転914するようになる。この構成は、第3および第4のケーブルを移動させ、それにより、第1のリストプーリ722の平面での作動メンバ710と操作軸430の間のピッチ角が増大する。ピッチ角の周りのエフェクタの回転は、第1および第2のケーブルが長さを維持するようなセグメントの長さの増減を補償する。往復構成では、ピッチ角は第5および第6のセグメントの長さを減少させ、一方、第7および第8のセグメントの長さを増大させることによって減少させることができる。すべての構成で、外科用ケーブルの長さは維持される。さらに、ピッチ軸の周りの作動メンバの動作は、リストプーリの平面の操作軸から離れたどちらの方向の可能性もある。
【0074】
上記の説明は、各動作が非同期で独立して制御される、例えば、最初に一方の鉗子の片方を開き、次にリストをピッチングするなど、自由度を制御する構成である。しかしながら、ほとんどのロボット外科手術では、自由度は同時に変化し、例えば、鉗子を開くと同時に手術部位でそれらの向きを回転させる。当業者であれば、3つの制御可能な自由度についての同時動作は、4つのケーブルとセグメントの長さを制御するために入力コントローラのスプーリングおよびスプーリング解除のためのより複雑な制御方式によって達成されることに留意されるであろう。
【0075】
一実施形態では、この制御方式は、ユーザの動作を手術部位での外科用エフェクタの対応する動作に解釈するように構成された、マスタ機器の制御ベース上で実行されるコンピュータプログラムである。コンピュータプログラムは、ケーブルセグメントの長さおよび/または動作を計算するため入力コントローラを回転させるのに必要な電気的負荷を測定するように構成することができる。コンピュータプログラムはさらに、入力コントローラがケーブルセグメントの長さを変更するのに必要な回転量を増減することによって、(例えば、ケーブルがポリマである場合)ケーブル弾性の変化を補償するように構成することができる。張力は、協調してすべての入力コントローラの回転を増減することによって調整することができる。同時に回転を増大させることによって張力を増大させることができ、同時に回転を減少させることによって張力を減少させることができる。コンピュータプログラムはさらに、ケーブルの最小レベルの張力を維持するように構成することができる。いずれかのケーブルの張力が下限最小張力しきい値を下回ることが検知された場合には、コンピュータプログラムは、すべてのケーブルのケーブル張力が下限最小張力しきい値を上回るまで、すべての入力コントローラの回転を協調して増大させることができる。すべてのケーブルの張力が上限最小張力しきい値を上回ることが検知された場合には、コンピュータプログラムは、いずれかのケーブルのケーブル張力が上限最小張力しきい値を下回るまで、すべての入力コントローラの回転を協調して減少させることができる。コンピュータプログラムは、特に作動メンバが対象物を保持しているかまたは一緒に押圧されている状況で、ケーブルセグメントに結合された入力コントローラを作動させるモータの負荷に基づいてオペレータの握力を認識するようさらに構成することができる。より一般的には、コンピュータプログラムはさらに、ロボットアームとIDMを介して外科用器具の並進および回転をさらに制御するように構成することができる。
【0076】
(X.往復動作)
往復パンタグラフは、外科用エフェクタの動作を往復動作により模倣するように構成される。図10A図10Cは、外科用器具での往復動作の例を示す。
【0077】
図10Aは、ニュートラル状態でのスレーブ機器の腹腔鏡の配線例を示す。第1の入力コントローラのペアの外側入力コントローラ520aおよび内側入力コントローラ520bは、第1および第3のケーブルによって結合され、ケーブルセグメントのスプーリングおよびスプーリング解除を制御する。第1のケーブルは、第1の660aケーブルセグメントおよび第2の660bケーブルセグメントを介して往復パンタグラフ540内の入力コントローラのペアを結合する。第3のケーブルは、第5の750aセグメントおよび第6の750bセグメントを介して外科用エフェクタ440内の入力コントローラのペアを結合する。第1および第2のケーブルセグメントの長さは、外側520aおよび内側520b入力コントローラをそれぞれ、スプール軸524の周りを回転させることによって制御される。この回転は、第5および第6のケーブルセグメントの長さを、それぞれ往復動作により同時に変化させる。例えば、第1のセグメント750の長さを増大すると、第5のセグメント662の長さが減少して、入力コントローラ間のケーブルの全長が維持される。
【0078】
第2の入力コントローラのペアの内側入力コントローラおよび外側入力コントローラは、第2および第4のケーブルによって結合され、ケーブルセグメントのスプーリングおよびスプーリング解除を制御する。第1の入力コントローラのペアの内側入力コントローラ520cおよび外側入力コントローラ520dは、第2および第4のケーブルによって結合され、セグメントの長さを制御する。第2のケーブルは、第3の660cケーブルセグメントおよび第4の660dケーブルセグメントを介して往復パンタグラフ540内の入力コントローラのペアを結合する。第4のケーブルは、第7の750cセグメントおよび第8の750dセグメントを介して外科用エフェクタ440内の入力コントローラのペアを結合する。第3および第4のケーブルセグメントの長さは、内側520cおよび外側5
20d入力コントローラをそれぞれ、スプール軸524の周りを回転させることによって制御される。この回転は、第7および第8のケーブルセグメントの長さをそれぞれ往復動作により同時に変化させる。例えば、第3のセグメントの長さを増大すると、第7のセグメントの長さが減少する。
【0079】
図10Bは、外科用エフェクタ440の第1のヨー角910が増大する実施形態を最初に示す。ヨー角は第1の入力コントローラのペア520aおよび520bをスプーリングおよびスプーリング解除することによって制御され、その結果、第5のセグメントの長さは減少1000し、第6のセグメントの長さは増大1002する。ヨー角が増大するにつれて、第1のセグメントの長さは増大1004し、一方、第2のセグメントの長さは減少1006して、抑制パンタグラフ内でメンバプーリが引張軸の周りを回転する。この構成では、第3のケーブルの全長は往復パンタグラフ540内に維持され、第1のケーブルの長さは外科用エフェクタおよびケーブルシャフトに維持される。第2のヨー角は、第3および第4のケーブルのセグメントの長さを操作するために第2のペアの入力コントローラを同様にスプーリングすることによって操作することができる。どちらのヨー角も、入力コントローラでセグメントの長さを反対にして操作することによって減少させることができる。
【0080】
図10Cは、外科用エフェクタ440のピッチ角930が増大する実施形態を示す。外科用エフェクタのピッチ角は、第5のセグメント1010の長さおよび第6のセグメント1012の長さの増大を試みるように第1のケーブルをスプーリング解除し同時に、第7のセグメント1020の長さおよび第8セグメント1022の長さの減少を試みるように第2のケーブルをスプーリングすることによって制御される。外科用エフェクタのピッチ角の変化は、第1および第2のケーブルが長さを維持するようにケーブルのスプーリングおよびスプーリング解除を補償する。ピッチ角930が増大するにつれて、第1のセグメント1014の長さおよび第2のセグメント1016の長さが増大し、一方、第3のセグメント1024および第4のセグメント1026の長さは減少して、抑制パンタグラフ内で、リストプーリおよびアーマチュアが往復軸を回転する1030。この構成では、第3のケーブルの全長は、前述のように往復パンタグラフで維持される。ピッチ角は、入力コントローラでケーブルのセグメントの長さを反対にして操作することによって減少させることができる。
【0081】
(XI.デタッチモード)
手術部位で外科手術を実行している間、往復パンタグラフおよび入力コントローラはアタッチモードで動作しており、入力コントローラは外科用エフェクタの自由度を操作する。
【0082】
入力コントローラおよび往復パンタグラフはまた、入力コントローラが抑制パンタグラフのケーブルの長さを維持するように構成されているデタッチモードで動作することができる。これは外科用器具をIDMおよびロボットアームから着脱するときに役立つ。外科用器具をIDMおよびロボットアームから取り外すために、ケーブルは、外科用器具の使用の間の期間を通して維持される特定の長さを達成するように操作することができる。
【0083】
別の実施形態では、第1から第4までのケーブルの長さは、入力コントローラ以外の機構の作動を介して望ましい結果を達成するためにデタッチモード中に制御される。例えば、機構は、スイッチ、ボタン、レバー、ピンなどとすることができる。一部の実施形態では、代替機構の作動は、任意の保持された対象物をエフェクタから解放したり、ケーブル位置をニュートラルの位置に移動したり、または、エフェクタを取り外しのためにニュートラルの位置に移動したりするなどにすることができる。
【0084】
(XII.代替の実施形態)
図6と同様に構成される、アタッチモードの動作の代替実施形態では、抑制パンタグラフは外科用エフェクタの1自由度が操作できるように、往復軸の周りで物理的に回転することができる。操作される自由度は、入力コントローラペアの結合方法によって異なる。
【0085】
図11は、750a〜750dのラベルが付けられた第5から第8のケーブルセグメントを備える外科用エフェクタを示す。入力コントローラは、差動装置および外科用エフェクタによって2つのペアに結合されている。4つのケーブルセグメントでは、外科用エフェクタの2つのケーブルについて、次の3つの異なるペアリングの可能性がある。(1)第1の入力コントローラのペアをペアリングする第5および第6のセグメント、ならびに第2の入力コントローラのペアをペアリングする第7および第8のセグメント、(2)第5および第7のセグメントは第1の入力コントローラのペアをペアリングし、第6および第8のセグメントは第2の入力コントローラのペアをペアリングする、(3)第5および第8のセグメントは第1の入力コントローラのペアをペアリングし、第6および第7のセグメントは第2の入力コントローラのペアをパート化(part)する。
【0086】
外科用器具は、往復パンタグラフの回転が、一方の入力コントローラのペアをペアリングするケーブルセグメントのスプーリングおよびスプーリング解除を行い、同時に他方の入力コントローラのペアを往復的にスプーリングおよびスプーリング解除するように構成される。この構成では、往復パンタグラフを回転させると、入力コントローラのペアリングに応じて外科用エフェクタの3つの異なる動作が生じる。すなわち、第1の可能なペアリングでピッチ角の操作が生じ、第2の可能なペアリングで同じ方向の両方のヨー角の同時操作が生じ、第3の可能なペアリングで反対方向の両方のヨー角の同時操作が生じる。
【0087】
これらのペアリングの組み合わせは、特定の状況、例えば、緊急解放、停電で外科用器具の潜在的な機械的オーバライドのためのツールに組み込むことができる。例えば、第3のペアリングは、外科用エフェクタに保持されている対象物を自動的に解放させる緊急コマンドを可能にし、緊急の場合に外科用器具をより迅速に取り外すことを可能にする。
【0088】
(XIII.追加の考慮事項)
この開示を読むと、当業者は、本明細書に開示された原理を通して、さらに追加の代替の構造的および機能的設計を理解するであろう。したがって、特定の実施形態および用途を例示し説明してきたが、開示された実施形態は本明細書に開示された厳密な構造および構成部品に限定されないことを理解されたい。添付の特許請求の範囲に定義された趣旨および範囲から逸脱することなく、本明細書に開示された方法および装置の構成、動作および詳細で、当業者に明らかな様々な修正、変更および変形を行うことができる。
【0089】
本明細書で使用されるように、「一実施形態」または「実施形態」への言及は、その実施形態に関連して説明された特定の要素、特徴、構造、または特性が少なくとも1つの実施形態に含まれることを意味する。本明細書の様々な箇所で「一実施形態では」という句が出現していることは、必ずしもすべてが同じ実施形態を指すとは限らない。
【0090】
一部の実施形態は、「結合された」および「接続された」という表現をそれらの派生語と共に使用して説明することができる。例えば、一部の実施形態は、2つ以上の要素が直接的に物理的または電気的に接触していることを示すために「結合された」という用語を使用して説明することができる。しかしながら、「結合された」という用語はまた、2つ以上の要素が互いに直接接触していないが、それでもなお互いに協働または相互作用していることを意味する場合がある。特に明記しない限り、実施形態はこの文脈に限定されない。
【0091】
本明細書で使用されるように、「構成する」、「構成している」、「含む」、「含んでいる」、「有する」、「有している」という用語またはそれらの任意の他の変形は、非排他的包含を含むことを意図している。例えば、要素のリストから構成されるプロセス、方法、物品、または装置は必ずしもそれらの要素のみに限定されず、明示的にリスト表示されていない、またはそのようなプロセス、方法、物品、または装置に固有の他の要素を含むことができる。さらに、そうでないと明示的に述べられていない限り、「または」は包括的な「または」を指し、排他的な、または、を指すのではない。例えば、条件AまたはBは、次のいずれかによって満たされる。Aが真(または存在)でBが偽(または存在しない)、Aが偽(または存在しない)でBが真(または存在)、およびAとBの両方が真(または存在)である。
【0092】
さらに、「a」または「an」の使用は、本明細書の実施形態の要素および構成部品を説明するために採用されている。これは単に便宜上および本発明の一般的な意味を付与するために行われている。この説明は、1つまたは少なくとも1つを含むように読まれるべきであり、そうでないことを意味することが明らかでない限り、単数形は複数形も含む。
図1
図2
図3
図4
図5
図6A
図6B
図6C
図7A-7B】
図8
図9A
図9B
図9C
図9D
図10A
図10B
図10C
図11