(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明を実施するための形態について図面を参照しつつ説明する。
【0029】
図1は、本発明の一実施形態に係る誘導加熱装置1の平面図である。
図2は、誘導加熱装置1の側面図である。
図3は、誘導加熱コイル3のうち支持構造4の周辺の主要部を拡大した側面図である。
図4は、支持構造4の周辺の主要部を拡大した断面図である。
図4では、一部の部材を想像線である2点鎖線で示している。
【0030】
図1〜
図4を参照して、本実施形態では、誘導加熱コイル3の軸方向S1が上下方向を向いた状態を基準に説明するけれども、この通りでなくてもよい。誘導加熱コイル3の向きは、限定されない。また、本実施形態では、誘導加熱コイル3の軸方向S1、径方向R1、および、周方向C1を、単に「軸方向S1」、「径方向R1」、および、「周方向C1」ともいう。
【0031】
誘導加熱装置1は、ワーク100を高周波加熱によって加熱することで、ワーク100を熱処理するために設けられている。この熱処理の一例として、焼入処理などを例示することができる。なお、誘導加熱装置1で行われる加熱処理の具体例は、特に限定されない。また、本実施形態では、ワーク100は、磁性を有する部材であり、本実施形態では、金属部品としての歯車である。なお、誘導加熱装置1で加熱されるワーク100は、誘導加熱による加熱が可能な部材であればよい。
【0032】
誘導加熱装置1は、ベース部材2と、誘導加熱コイル3と、誘導コイル3を支持する支持構造4と、を有している。
【0033】
ベース部材2は、誘導加熱装置1のベース部材として設けられており、鉛直に延びている。本実施形態では、ベース部材2は、側壁部材によって形成されている。ベース部材2は、筐体(図示せず)の一部を構成してもよい。ベース部材2が筐体の一部を構成する場合、ベース部材2を含む箱状の筐体が、誘導加熱コイル3を収容する収容室を形成してもよい。
【0034】
誘導加熱コイル3は、交流電力を与えられることでワーク100を通過する磁束を発生させるように構成されている。誘導加熱コイル3は、銅等の導電材料(金属材料)を用いて形成されている。また、誘導加熱コイル3は、中空に形成されており、内部に冷却水通路が形成されている。この冷却水通路は、誘導加熱コイル3の一端から他端まで延びており、図示しないクーラに接続されている。
【0035】
誘導加熱コイル3は、第1中継部5および第2中継部6と、コイル本体7と、コイル本体7から誘導加熱コイル3の径方向R1の外方に延びる延設部81,82と、を有している。
【0036】
第1中継部5は、誘導加熱コイル3への冷却水の入口を形成しており、また、図示しない電源端子に接続される部分を形成している。第2中継部6は、誘導加熱コイル3からの冷却水の出口を形成しており、また、図示しない電源端子に接続される部分を形成している。
【0037】
第1中継部5および第2中継部6は、隣接して配置されている。第1中継部5および第2中継部6は、それぞれ、例えば、側面視でL字状に形成されている。第1中継部5および第2中継部6の一端は、それぞれ、直線状に形成されており、ナットを用いて対応する継手管10,11に接続されている。継手管10,11は、ベース部材2を貫通するように延びている。第1中継部5の中間部は、略90度曲っており、この中間部からコイル本体7の一端7a(本実施形態では、上端)に向けて延びている。第2中継部6の中間部は、略90度曲っており、この中間部からコイル本体7の他端7b(本実施形態では、下端)に向けて延びている。
【0038】
コイル本体7は、所定の太さを有する螺旋状に形成されており、本実施形態では、複数の巻数を有している。コイル本体7に取り囲まれた円筒状空間は、ワーク100を収容可能に構成されており、ワーク100をコイル本体7で取り囲むように構成されている。コイル本体7は、所定のピッチを有しており、このピッチで螺旋状に延びている。コイル本体7の一端7aは、第1中継部5に接続されている。また、コイル本体7の他端7bは、第2中継部6に接続されている。
【0039】
コイル本体7に関連して、ワーク配置領域12が設定されている。ワーク配置領域12は、誘導加熱コイル3によってワーク100を誘導加熱する際にワーク100が配置される領域であり、コイル本体7で取り囲まれた空間に設けられている。ワーク配置領域12は、軸方向S1においてコイル本体7の略中央に設けられている。本実施形態では、コイル本体7のうち、軸方向S1における一端7aおよび他端7bには、ワーク配置領域12が設定されていない。ワーク100は、ワーク配置領域12において図示しない台座に載せられた状態で加熱される。
【0040】
コイル本体7は、複数の巻部13を含んでいる。各巻部13は、コイル本体7の周方向C1に略360度の範囲で形成されており、複数の巻部13が連続することで、コイル本体7が形成されている。各巻部13には、延設部81,82が設けられている。
【0041】
延設部81,82は、それぞれ、対応する巻部13からコイル本体7の径方向外方に延びる平板状に形成されており、本実施形態では、矩形状に形成されている。軸方向S1における延設部81,82のそれぞれの厚みT8は、本実施形態では、コイル本体7の巻部13の厚みT13未満に設定されている。なお、厚みT8は、厚みT13以上であってもよいけれども、短絡防止の観点から、厚みT13未満であることが好ましい。延設部81,82は、各巻部13において、等ピッチ(本実施形態では、180度ピッチ)で配置されている。なお、巻部13毎の延設部の数は、2つに限らず、1つでも3つ以上でもよい。延設部81は、対応する巻部13に例えばろう付けによって固定されている。なお、延設部81,82は、対応する巻部13に固定されていればよく、当該巻部13への固定方法は、限定されない。
【0042】
コイル本体7に設けられた複数の延設部81は、軸方向S1に並んで配置されている。同様に、コイル本体7に設けられた複数の延設部82は、軸方向S1に並んで配置されている。各延設部81,82には、貫通孔部8a(延設部82の貫通孔部8aは図示せず)が形成されている。貫通孔部8aは、後述する支柱20が貫通する部分である。上記の構成を有する誘導加熱コイル3は、支持構造4によって支持されている。
【0043】
支持構造4は、誘導加熱コイル3の通電時における誘導加熱コイル3の各部の動き(伸縮変位等の軸方向変位)を規制しつつ、誘導加熱コイル3を支持するように構成されている。本実施形態では、支持構造4は、誘導加熱コイル3の短絡を防止しつつ、ワーク100に作用する磁界への影響をより小さくしつつ、ワーク100から受ける輻射熱をより少なくするために、径方向R1におけるコイル本体7の外方に配置されている。
【0044】
支持構造4は、複数のユニット14,15を有している。
【0045】
ユニット14,15は、径方向R1におけるコイル本体7の巻部13の外方に配置されている。ユニット14は、誘導加熱コイル3のうちの第2中継部6側を支持するように構成されている。ユニット15は、誘導加熱コイル3のうちの第1中継部5側を支持するように構成されている。本実施形態では、ユニット14,15は、周方向C1に等ピッチで配置されており、対応する延設部81,82からの荷重を受けるように構成されている。なお、ユニット14,15は、互いに同様の構成を有している。よって、以下では、ユニット14の詳細な構成を説明し、ユニット15についての詳細な説明は省略する。
【0046】
ユニット14は、支柱20と、延設部81と重なるように配置された複数の規制部材21と、複数の絶縁部材22と、一端側ユニット23と、他端側ユニット24と、を有している。
【0047】
支柱20は、ユニット14全体を互いに連結するための連結部材である。支柱20は、誘導加熱コイル3の巻部13の径方向外方に配置され誘導加熱コイル3の軸方向S1に延びる柱部材として設けられている。なお、本実施形態では、誘導加熱コイル3の軸方向S1と平行な方向も「軸方向S1」という。支柱20は、本実施形態では、軸方向S1の両端に雄ねじ部20a,20bが形成されたボルト部材である。支柱20の中間部は、雄ねじ部が形成されていてもよいし、円筒形状または多角柱形状に形成されていてもよい。
【0048】
支柱20は、ステンレス材などの金属材料を用いて形成されており、弾性変形可能に、且つ、塑性変形可能に構成されている。なお、支柱20は、金属等、脆性破壊に対する耐性の比較的強い材料で形成されていることが好ましい。また、支柱20は、導電性を有していてもよいし、少なくとも外表面が絶縁材で形成されていてもよい。支柱20は、非磁性であることが、より好ましい。支柱20が非磁性である場合、支柱20が誘導加熱コイル3の磁界によって誘導加熱されてしまうことを抑制できる。このような材料として、本実施形態では、オーステナイト系ステンレス材が用いられている。
【0049】
支柱20は、誘導加熱コイル3の各延設部81の貫通孔部8aを貫通している。支柱20の直径は、貫通孔部8aの直径未満に設定されており、支柱20が直接誘導加熱コイル3に接触しないように構成されている。この支柱20に、複数の絶縁部材22が嵌合している。
【0050】
絶縁部材22は、支柱20と延設部81との間に介在することで、支柱20と延設部81とが短絡することを防止するように構成されている。絶縁部材22は、複数設けられており、軸方向S1に沿って配置されている。絶縁部材22の数は、特に限定されておらず、1つでも、2つ以上でもよい。絶縁部材22の数は、延設部81の数以上設けられていることが好ましい。
【0051】
各絶縁部材22は、同じ構成を有している。これにより、絶縁部材22の製造の手間をより少なくできる。絶縁部材22は、本実施形態では、円筒状に形成されている。なお、絶縁部材22は、支柱20と延設部81とが直接接触することを規制可能な形状であれば、半月状等、他の形状であってもよい。絶縁部材22は、絶縁材で形成されている。本実施形態では、絶縁部材22の材料として、アルミナ等のセラミック材が用いられている。絶縁部材22がセラミックであれば、絶縁部材22の耐熱温度を極めて高くできる。絶縁部材22の材料として、ワーク100からの輻射熱に耐えることのできる硬質の絶縁材料が好ましい。なお、絶縁部材22は、導電部材の表面を絶縁材でコーティングすることで形成されていてもよい。
【0052】
本実施形態では、絶縁部材22は、1つの延設部81に対して少なくとも1つの絶縁部材22が設けられている。各絶縁部材22は、支柱20に嵌合されており、延設部81の対応する貫通孔部8aを貫通している。絶縁部材22の内径は、支柱20の外径よりも大きく設定されている。また、絶縁部材22の外径は、延設部81の貫通孔部8aの内径よりも小さく設定されている。
【0053】
本実施形態では、軸方向S1に隣接する絶縁部材22同士は、突き合わされている。すなわち、絶縁部材22は、軸方向S1に沿って積み重ねられるように配置されており、軸方向S1に隣接する絶縁部材22同士が直接接触している。軸方向S1に隣り合う絶縁部材22間の突き合わせ部(接触部)の位置P22は、誘導加熱コイル3の延設部81の位置から軸方向S1にずらされている。本実施形態では、軸方向S1において、突き合わせ部の位置P22は、隣り合う延設部81,81の略中央に配置されている。絶縁部材22は、軸方向S1の長さが、延設部81の厚みT8より大きく設定されている。本実施形態では、軸方向S1において、絶縁部材22の長さは、1つの規制部材21の長さと1つの延設部81の厚みT8との和と同じに設定されている。
【0054】
また、前述したように、誘導加熱コイル3には、ワーク100を配置するためのワーク配置領域12が設定されている。そして、一部の絶縁部材22としての絶縁部材221,222は、ワーク配置領域12と径方向R1に並ぶように(軸方向S1の位置が重なるように)配置されている。そして、絶縁部材221,222以外の絶縁部材22は、ワーク配置領域12と軸方向S1の位置をずらして配置されている。本実施形態では、2つの絶縁部材221,222の約半分が、ワーク配置領域12と径方向R1に並ぶように配置されている。ワーク100の誘導加熱時、ワーク100からの輻射熱は、ワーク100から周囲に拡がりながら絶縁部材221,222に伝わる。このため、軸方向S1において、ワーク配置領域12の全てと絶縁部材221,222の全てとが位置を揃えられていなくても、ワーク100からの熱は、絶縁部材221,222の全体に略均等に伝わる。
【0055】
なお、絶縁部材221,222は、少なくとも一部がワーク配置領域12と径方向R1に並んでいればよい。また、本実施形態では、2つの絶縁部材221,222がワーク配置領域12と径方向R1に並ぶ形態を例に説明しているけれども、この通りでなくてもよい。例えば、1つまたは3つ以上の絶縁部材22がワーク配置領域12と径方向R1に並んでいてもよい。上記の構成を有する絶縁部材22を取り囲むようにして、複数の規制部材21が配置されている。
【0056】
規制部材21は、軸方向S1における誘導加熱コイル3の動きを規制するために、誘導加熱コイル3の荷重を電気的に絶縁された状態で受けるとともに、一端側ユニット23および他端側ユニット24を介して支柱20に支持された部材である。規制部材21は、軸方向S1における各延設部81および巻部13の位置を規定している。規制部材21は、複数設けられており、軸方向S1に沿って配置されている。規制部材21は、本実施形態では、延設部81と同じ数だけ設けられている。本実施形態では、コイル本体7の他端7b側の1つの規制部材21以外の規制部材21は、誘導加熱コイル3のうち軸方向S1に隣接する部分間としての2つの延設部81,81間に配置されている。本実施形態では、コイル本体7の他端7b側の規制部材21は、1つの延設部81と、後述する端部押さえ部材31との間に配置されている。
【0057】
各規制部材21は、同じ構成を有している。これにより、規制部材21の製造の手間をより少なくできる。規制部材21は、本実施形態では、円筒状に形成されている。なお、規制部材21は、2つの延設部81,81(2つの巻部13,13)間の軸方向S1における距離が変化することを規制可能な形状であれば、半月状等、他の形状であってもよい。規制部材21は、前述した絶縁部材22と同様の材料で形成されており、少なくとも表面が絶縁材で形成されている。本実施形態では、規制部材21の材料と絶縁部材22の材料は、同じである。これにより、規制部材21および絶縁部材22の製造コストをより低減できる。
【0058】
各規制部材21は、絶縁部材22を取り囲むようにして支柱20に嵌合されており、対応する延設部81のそれぞれの表面に接触している。規制部材21の外径は、貫通孔部8aの内径よりも大きく設定されており、本実施形態では、規制部材21の内周部および外周部の双方が、対応する延設部81の表面に接触している。また、規制部材21の内径は、絶縁部材22の外径よりも大きく設定されており、規制部材21が絶縁部材22に接触することが抑制されている。上記の構成により、規制部材21と延設部81とが交互に配置され、これら規制部材21と延設部81の内側に絶縁部材22が配置され、さらに、絶縁部材22の内側に支柱20が通されている。
【0059】
上記の構成を有する絶縁部材22および規制部材21は、一端側ユニット23および他端側ユニット24によって、支柱20および誘導加熱コイル3に連結されている。
【0060】
一端側ユニット23は、軸方向S1におけるコイル本体7の一端7aに設けられており、支柱20の一端部をコイル本体7の一端7aに固定するように構成されている。一端側ユニット23は、支柱20に貫通されている。本実施形態では、一端側ユニット23は、ねじ結合構造であるけれども、支柱20の一端部とコイル本体7の一端7aとを互いに固定できる構成であればよい。
【0061】
一端側ユニット23は、端部押さえ部材25と、ワッシャ26と、スプリングワッシャ27と、固定部材としてのナット28と、を有している。
【0062】
端部押さえ部材25は、コイル本体7の一端7a側の延設部81、および、複数の絶縁部材22のうち軸方向S1の一端に配置された絶縁部材22を受けるように構成されている。端部押さえ部材25は、絶縁部材22と同様の材料で形成されており、少なくとも外表面が絶縁材で形成されている。
【0063】
端部押さえ部材25は、筒状に形成されており、本実施形態では、筒状部29と、フランジ部30と、を有している。
【0064】
筒状部29は、円筒状に形成されており、絶縁部材22に突き合わされている。筒状部29の内径および外径は、絶縁部材22の対応する内径および外径と同じに設定されていることが好ましい。筒状部29は、一端側ユニット23に隣接する規制部材21および延設部81内を通過している。筒状部29の一端に、フランジ部30が配置されている。
【0065】
フランジ部30は、環状の板部分であり、コイル本体7の一端7aにおける延設部81に受けられている。フランジ部30に重ねられた状態で、ワッシャ26が配置されている。ワッシャ26は、スプリングワッシャ27を介して、ナット28からの軸力を受けている。ナット28は、支柱20の一端部の雄ねじ部20aにねじ結合している。この一端側ユニット23と協働するように、他端側ユニット24が配置されている。
【0066】
他端側ユニット24は、軸方向S1におけるコイル本体7の他端7b側に設けられており、支柱20の他端部をコイル本体7およびステー34に固定するように構成されている。他端側ユニット24は、支柱20に貫通されている。本実施形態では、他端側ユニット24は、ねじ結合構造であるけれども、支柱20の他端部と、コイル本体7の他端7bおよびステー34と、を互いに固定できる構成であればよい。
【0067】
他端側ユニット24は、端部押さえ部材31と、固定部材としてのナット32と、ワッシャ33と、ステー34と、ワッシャ35と、スプリングワッシャ36と、固定部材としてのナット37と、を有している。
【0068】
端部押さえ部材31は、複数の絶縁部材22のうち軸方向S1の他端に配置された規制部材21を介して、コイル本体7の他端7b側の延設部81を受けるように構成されている。端部押さえ部材31は、絶縁部材22と同様の材料で形成されており、少なくとも外表面が絶縁材で形成されている。端部押さえ部材31は、環状の板部材で形成されており、コイル本体7のうち軸方向S1の他端側の近傍に位置する規制部材21および絶縁部材22を受けている。端部押さえ部材31の内径および外径は、支柱20の外径と略同じに設定されている。
【0069】
なお、本実施形態では、一端側ユニット23の端部押さえ部材25を、筒状部29とフランジ部30とを有する構成とし、他端側ユニット24の端部押さえ部材31を、板状部材(フランジ部30に相当する部分)で形成する構成とした。しかしながら、この通りでなくてもよい。例えば、一端側ユニット23の端部押さえ部材25と他端側ユニット24の端部押さえ部材31の配置とを入れ替えてもよい。
【0070】
端部押さえ部材31に重ねられた状態で、ナット32が、支柱20の雄ねじ部20bにねじ結合されている。ナット32は、一端側ユニット23のナット28と協働して、スプリングワッシャ27、ワッシャ26、端部押さえ部材25、複数の延設部81、複数の絶縁部材22および複数の規制部材21を締結し、さらに、支柱20に固定されている。これにより、一端側ユニット23および他端側ユニット24を用いた、支柱20と、絶縁部材22と、規制部材21と、コイル本体7と、の互いの結合が実現されている。
【0071】
ナット32は、ワッシャ33を介して、ステー34に連結されている。
【0072】
ステー34は、支柱20を支持するとともにベース部材2に支持される部材である。ステー34は、金属部材、合成樹脂部材等の構造材で形成されている。ステー34が配置される箇所は、コイル本体7の外部である。そして、ステー34は、コイル本体7によって生じる磁界からは離隔されていることが好ましく、また、オーステナイト系ステンレス等の非磁性の材料で形成されていることが好ましい。ステー34は、例えば、L字状のステンレス板で形成されている。ステー34は、水平に延びる平板部38を有している。この平板部38には、支柱20に嵌合される貫通孔部38aが形成されている。また、ステー34の一端部は、ベース部材2に固定されている。ステー34は、ワッシャ33,35に挟まれている。
【0073】
ワッシャ35は、スプリングワッシャ36を介してナット37に受けられている。ナット37は、支柱20の雄ねじ部20bにねじ結合されている。この構成により、ナット32,37間で、ステー34が支柱20に締結されている。そして、ナット37は、ステー34と支柱20とを結合するように構成されているけれども、コイル本体7と、絶縁部材22と規制部材21と、の互いの結合には寄与していない。このような構成により、コイル本体7と支持構造4とが結合されたサブアセンブリを組み立て、その後に当該サブアセンブリをステー34に固定することが可能である。
【0074】
以上説明したように、本実施形態によると、支柱20によって支持された規制部材21が誘導加熱コイル3の伸縮等の動きを規制するように構成されている。この構成であれば、規制部材21によって、誘導加熱コイル3の収縮等の動き(軸方向変位)を確実に防止できる。これにより、誘導加熱コイル3の巻部13間の短絡を防止できるので、誘導加熱コイル3における絶縁のために誘導加熱コイル3の表面をワニスおよびガラステープ等の被膜で固める必要がないので、誘導加熱コイル3の表面をガスの発生する被膜で形成しなくて済む。以上の次第で、絶縁のために誘導加熱コイル3の表面をガスの発生する被膜で形成することなく、且つ、誘導加熱コイル3の通電時において誘導加熱コイル3の動きを抑制できる、誘導加熱コイル3の支持構造4を実現できる。
【0075】
例えば、誘導加熱コイルの隣り合う巻部の互いの対向面の全面間に絶縁部材を介在させる場合、巻部の形状に沿った専用の形状に絶縁部材を形成する必要がある。このため、誘導加熱コイルの巻部の径が変更された場合、絶縁部材の形状も変更する必要がある。一方、本実施形態によると、規制部材21は、誘導加熱コイル3の一部(延設部81,81)を受ける構成であり、このような規制部材21を含む支持構造4は、複数の部材を組み立てることで形成されている。このような構成であれば、誘導加熱コイル3の巻部13の直径が変更されても、支持構造4の構成を変更せずに済み、直径の異なる誘導加熱コイル3へ支持構造4をそのまま適用可能である。
【0076】
また、本実施形態によると、誘導加熱コイル3の巻数は、複数であり、規制部材21は、誘導加熱コイル3のうち軸方向S1に隣接する延設部81,81間に配置されている。この構成によると、誘導加熱コイル3のうち軸方向S1に隣接する延設部81,81間に、規制部材21が介在することで、これら隣接する延設部81,81(巻部13,13)同士の軸方向S1における相対位置が変化することを、より確実に規制できる。さらに、誘導加熱コイル3のうち軸方向S1に隣接する延設部81,81間に規制部材21が配置されることで、誘導加熱コイル3の支持構造4を、誘導加熱コイル3の隣接する延設部81,81間の隙間部分に配置できる。これにより、誘導加熱コイル3の支持構造4が誘導加熱コイル3の径方向R1に張り出す量をより少なくできる。よって、誘導加熱コイル3および支持構造4全体としての形状をよりコンパクトにできる。
【0077】
また、本実施形態によると、ワーク100を加熱するための磁束を発生させるコイル本体7から離隔した箇所において、規制部材21が誘導加熱コイル3を受けるように構成できる。これにより、規制部材21が誘導加熱のための磁束に影響を与えることをより確実に抑制できる。また、誘導加熱によって加熱されたワーク100からの輻射熱がより届きにくい箇所に、延設部81および規制部材21を配置できる。これにより、規制部材21における熱負荷をより小さくできるので、支持構造4の寿命をより長くできる。
【0078】
また、本実施形態によると、規制部材21は、筒状に形成され支柱20に嵌合されている。この構成によると、規制部材21によって、支柱20を保護することができる。これにより、ワーク100からの輻射熱等によって支柱20に生じる負荷をより低減できる。また、規制部材21および支柱20を全体としてよりコンパクトに配置できる。
【0079】
また、本実施形態によると、誘導加熱コイル3の延設部81と支柱20とを絶縁部材22によって絶縁できる。これにより、誘導加熱コイル3が短絡することを防止できる。
【0080】
また、本実施形態によると、軸方向S1において、隣接する絶縁部材22,22間の突き合わせ部の位置P22は、誘導加熱コイル3の延設部81の位置から軸方向S1にずらされている。この構成によると、絶縁部材22の突き合わせ部と誘導加熱コイル3の延設部81とを可及的に離隔して配置できる。これにより、誘導加熱コイル3において、絶縁部材22同士の突き合わせ部が原因の短絡をより確実に防止できる。さらに、絶縁部材22が複数に分割されているので、各絶縁部材22内での熱の分布の偏りが小さい。このため、各絶縁部材22内での熱の偏りに起因する熱衝撃(内力)が小さくて済む。
【0081】
また、本実施形態によると、絶縁部材221,222は、ワーク配置領域12と径方向R1に並ぶように配置されている。また、絶縁部材221,222以外の他の絶縁部材22は、ワーク配置領域12と軸方向S1の位置をずらして配置されている。この場合、ワーク配置領域12と径方向R1に並ぶように配置された絶縁部材221,222は、誘導加熱によってワーク100が加熱されたときに当該ワーク100から輻射熱を受けて高温になる。しかしながら、絶縁部材221,222は、全体が高温となるので、内部での熱の分布の偏りが小さい。このため、絶縁部材221,222のそれぞれの内部での熱の偏りに起因する熱衝撃(内力)が小さくて済む。また、絶縁部材221,222以外の他の絶縁部材22は、ワーク配置領域12からより離隔して配置されることとなる。このため、絶縁部材221,222以外の絶縁部材22は、ワーク100から受ける輻射熱の熱量が少なくて済むので、全体が高温とならずに済み、内部での熱の分布の偏りが小さい。このため、絶縁部材221,222以外の絶縁部材22内での熱の偏りに起因する熱衝撃(内力)が小さくて済む。その結果、複数の絶縁部材22の何れも、熱に起因する負荷が小さくて済むので、支持構造4の寿命をより長くできる。
【0082】
また、本実施形態によると、ステー34は、支柱20および規制部材21を介して誘導加熱コイル3を支持することができる。これにより、誘導加熱コイル3の収縮を規制するための構成と、誘導加熱コイル3を支持するための構成とを、同じにできる。よって、誘導加熱コイル3の支持構造4をより簡素にできる。
【0083】
以上、本発明の実施形態について説明したけれども、本発明は上述の実施の形態に限られない。本発明は、請求の範囲に記載した限りにおいて様々な変更が可能である。なお、以下では、上述の実施形態と異なる点について主に説明し、同様の構成には図に同様の符号を付して詳細な説明は省略する。
【0084】
(1)上述の実施形態では、軸方向S1における誘導加熱コイル3の他端側(下端側)に設けられたステー34によってコイル本体7が支持される形態を例に説明した。しかしながら、この通りでなくてもよい。例えば、
図5に示すように、ステー34に加えてステー34Aがさらに設けられてもよい。ステー34Aは、軸方向S1における誘導加熱コイル3の一端側に配置されている。ステー34Aは、例えば、ステー34と同様の形状に形成されており、平板部38Aを有している。
【0085】
平板部38Aには、支柱20の雄ねじ部20aに貫通される貫通孔部38aAが形成されている。ステー34Aは、一対のワッシャ40,41に挟まれている。そして、一方のワッシャ41にスプリングワッシャ42が重ねられており、さらに、支柱20の雄ねじ部20aにナット43がねじ結合されている。これにより、ナット28,43によって、ステー34Aが支柱20に固定されている。ステー34Aは、ベース部材2(
図5では図示せず)に、ねじ部材等の固定部材を用いて固定される。この場合、誘導加熱コイル3を、ステー34,34Aによって両端支持(本実施形態では、上下両端支持)することができる。よって、支持構造4は、より安定した姿勢で誘導加熱コイル3を支持できる。
【0086】
なお、上記の変形例において、ステー34を省略し、ステー34Aによって誘導加熱コイル3が吊り下げ姿勢で支持されてもよい。
【0087】
(2)また、上記実施形態では、誘導加熱コイル3の巻数が複数である形態を例に説明した。しかしながら、この通りでなくてもよい。例えば、
図6(A)および
図6(B)に示すように、誘導加熱コイル3に代えて、巻数が1である誘導加熱コイル3Bに支持構造4Bが採用されてもよい。巻数が1である誘導加熱コイル3Bにおいても、巻部13Bにおいて、ローレンツ力等が原因で、巻部13Bが直線状の中継部5B,6Bに対して軸方向S1に変位することがある。誘導加熱コイル3Bの巻部13Bは、円弧状に1つ設けられており、この巻部13Bに取り囲まれた箇所に、ワーク配置領域12が設けられる。巻部13Bには、延設部81,82が設けられる。
【0088】
支持構造4Bのユニット14Bは、例えば、1つの延設部81を支持するように構成され、さらに、支持構造4Bのユニット15Bは、例えば、1つの延設部82を支持するように構成される。この場合、支持構造4Bのユニット14Bは、一対の規制部材21と、3つの絶縁部材22と、を有している。一方の規制部材21は、延設部81と、端部押さえ部材25Bとの間に配置されている。端部押さえ部材25Bは、端部押さえ部材25に代えて設けられており、端部押さえ部材25と同様の材料によって円環状に形成されており、一方の規制部材21および一端側の絶縁部材22を受けている。他方の規制部材21は、延設部81と、端部押さえ部材31との間に配置されている。3つの絶縁部材22は、端部押さえ部材25B,31の間に配置されている。そして、絶縁部材221は、ワーク配置領域12と径方向R1に並ぶように配置される。一方、絶縁部材221以外の他の絶縁部材22は、ワーク配置領域12と軸方向S1の位置をずらして配置されている。
【0089】
この場合、絶縁部材221は、全体が高温となるので、内部での熱の分布の偏りが小さい。このため、絶縁部材221の内部での熱の偏りに起因する熱衝撃(内力)が小さくて済む。また、絶縁部材221以外の絶縁部材22は、ワーク配置領域12からより離隔して配置されることとなる。このため、絶縁部材221以外の絶縁部材22は、ワーク100から受ける輻射熱の熱量が少なくて済むので、全体が高温とならずに済み、内部での熱の分布の偏りが小さい。このため、絶縁部材221以外の絶縁部材22内での熱の偏りに起因する熱衝撃(内力)が小さくて済む。その結果、複数の絶縁部材22の何れも、熱に起因する負荷が小さくて済むので、支持構造4Bの寿命をより長くできる。なお、
図6(A)および
図6(B)で示す変形例では、絶縁部材22を3つ設けたけれども、1つの絶縁部材が端部押さえ部材25B,31間に配置されてもよい。
【0090】
(3)また、上述の実施形態では、誘導加熱コイル3の延設部81を支持する形態を説明した。しかしながら、この通りでなくてもよい。例えば、
図7の模式的な一部断面図に示すように、誘導加熱コイル3のコイル本体7の巻部13間に配置される規制部材21Cが設けられてもよい。
【0091】
ユニット14Cは、支柱20と、規制部材21Cと、一端側ユニット23Cと、他端側ユニット24と、を有している。一端側ユニット23Cは、端部押さえ部材25に代えて、円環状の端部押さえ25Cが設けられている点以外は、一端側ユニット23と同様の構成である。規制部材21Cは、支柱20に嵌合される筒状の本体部45と、この本体部45から延び、コイル本体7の巻部13を受けるブロック状の受け部46と、を含んでいる。
【0092】
本体部45の一端は端部押さえ部材25Cに受けられており、本体部45の他端は端部押さえ部材31に受けられている。受け部46は、巻部13の数に1を足した数だけ設けられている。コイル本体7の一端部7aおよび他端部7bに隣接する受け部46は、コイル本体7を挟むようにして、対応する巻部13を受けている。軸方向S1における中間部の受け部46は、それぞれ、軸方向S1に隣接する巻部13間に配置されており、対応する2つの巻部13に接触している。これにより、各巻部13が軸方向S1に変位することは、規制されている。
【0093】
規制部材21Cは、規制部材21と同様の材料で形成されている。なお、規制部材21Cは、コイル本体7からの軸方向S1の荷重を受けるため、表面に絶縁層が形成された金属材料で形成されていてもよい。規制部材21Cが金属材料で形成される場合、規制部材21Cは、オーステナイト系ステンレス材等の非磁性の材料で形成されていることが、より好ましい。
【0094】
上記
図7に示す変形例では、規制部材21Cにおいて、本体部45と受け部46とが一体成形されている形態を例に説明した。しかしながら、この通りでなくてもよい。
【0095】
(4)例えば、
図8(A)および
図8(B)に示すように、規制部材21Cにおいて、本体部45と受け部46とが別部材によって形成されていてもよい。この場合、受け部46は、本体部45に形成された溝状の保持部47に圧入等によって固定されている。
図8(A)に示す変形例では、受け部46は、巻部13のうち軸方向S1を向く側面を受けている。一方、
図8(B)に示す変形例では、受け部46は、巻部13の外周面に形成された溝状の保持部48に差し込まれることによって巻部13(コイル本体7)を支持するとともに、当該巻部13の軸方向変位を規制している。
【0096】
(5)また、
図9(A)および
図9(B)に示すように、複数(
図9では2つ)の支柱20に支持された梁状の受け部46Dを有する規制部材21Dが設けられてもよい。規制部材21Dは、規制部材21Cと同様の材料で形成されている。規制部材21Dは、2つの支柱20,20に嵌合される筒状の本体部45D,45Dと、これらの本体部45D,45Dから延びて、コイル本体7の巻部13を受ける梁状の受け部46Dと、を含んでいる。
【0097】
受け部46Dは、複数設けられている。軸方向S1の中間部の受け部46Dは、2つの巻部13に挟まれるように配置され、対応する巻部13を、周方向C1の2箇所で受けている。
【0098】
さらに、
図9(A)および
図9(B)に示す変形例では、支柱20,20とこれらの支柱20,20に支持された規制部材21Dとは、一対設けられている。すなわち、4つの支柱20および2つの規制部材21Dが設けられている。そして、一方の規制部材21Dと他方の規制部材21Dとは、周方向C1に離隔して配置されている。これにより、各巻部13が軸方向S1に変位することは、規制されている。
【0099】
規制部材21Dであれば、受け部46Dが本体部45D,45Dによって両端支持されている。これにより、規制部材21Dは、コイル本体7を支持する剛性をより高くできる。その結果、規制部材21Dは、軸方向S1におけるコイル本体7の動きをより確実に規制できる。さらに、一対の規制部材21D,21Dによって、巻部13は、多点支持(本変形例では、4点支持)される。これにより、規制部材21Dは、軸方向S1におけるコイル本体7の動きをより確実に規制できる。
【0100】
(6)なお、上述の変形例の構成は、誘導加熱コイル3の巻数が1の場合でも、複数の場合でも、同様に適用できる。
【0101】
(7)また、上述の実施形態および変形例では、支柱と規制部材とが別体である場合を説明した。しかしながら、支柱と規制部材とは一体成形されていてもよい。
【0102】
(8)また、上述の実施形態および変形例では、誘導加熱コイルの3,3Bの表面が絶縁被膜ではない形態を例に説明した。しかしながら、この通りでなくてもよい。例えば、誘導加熱コイルの表面が絶縁被膜で形成された誘導加熱コイルに対しても、本発明を適用できる。
【0103】
(9)また、上述の実施形態および変形例では、誘導加熱コイル3,3Bの巻部13,13Bが円形状である形態を例に説明した。しかしながら、この通りでなくてもよい。例えば、螺旋状の誘導加熱コイルの巻数が1の場合以外、複数の場合以外であっても、当該誘導加熱コイルが本発明の支持構造で支持されてもよい。誘導加熱コイルとして、円の一部の形状である円弧状の巻部を含む誘導加熱コイル、一部が直線に形成された巻部を含む誘導加熱コイルの支持に、本発明の支持構造が適用されてもよい。
【0104】
(10)以上、本発明の実施形態および変形例について説明した。しかしながら、本発明は、支柱と、この支柱に支持された規制部材と、を有していればよく、他の構成については、特に限定されない。