(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6853418
(24)【登録日】2021年3月15日
(45)【発行日】2021年3月31日
(54)【発明の名称】媒体分離型圧力トランスミッタ
(51)【国際特許分類】
G01L 19/06 20060101AFI20210322BHJP
G01L 19/04 20060101ALI20210322BHJP
G01L 19/14 20060101ALI20210322BHJP
G01L 23/26 20060101ALI20210322BHJP
G01L 13/00 20060101ALI20210322BHJP
G01L 13/02 20060101ALI20210322BHJP
【FI】
G01L19/06 A
G01L19/04
G01L19/14
G01L23/26
G01L13/00 B
G01L13/02 A
【請求項の数】15
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2020-518053(P2020-518053)
(86)(22)【出願日】2018年9月27日
(65)【公表番号】特表2020-535437(P2020-535437A)
(43)【公表日】2020年12月3日
(86)【国際出願番号】EP2018076316
(87)【国際公開番号】WO2019063715
(87)【国際公開日】20190404
【審査請求日】2020年4月1日
(31)【優先権主張番号】102017122607.9
(32)【優先日】2017年9月28日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】300002160
【氏名又は名称】ティーディーケイ・エレクトロニクス・アクチェンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】TDK ELECTRONICS AG
(74)【代理人】
【識別番号】110002664
【氏名又は名称】特許業務法人ナガトアンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】ボール, ベンヤミン
(72)【発明者】
【氏名】イーレ, ヤン
(72)【発明者】
【氏名】フンデルトマルク, ベルト
(72)【発明者】
【氏名】ポルダー, ベルント
(72)【発明者】
【氏名】ヴォールゲムート, クリスティアーン
【審査官】
森 雅之
(56)【参考文献】
【文献】
特許第4988732(JP,B2)
【文献】
特開昭57−76431(JP,A)
【文献】
実開平2−124527(JP,U)
【文献】
特許第4712220(JP,B2)
【文献】
特許第4563312(JP,B2)
【文献】
特開2009−58366(JP,A)
【文献】
特開2012−189349(JP,A)
【文献】
特許第5739039(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01L
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
差圧、相対圧又は絶対圧を決定するための圧力トランスミッタであって、
−その内部に配置されたハウジング壁(GW)を含むハウジング(GH)と、
−センサ素子(SE)と、
−前記センサ素子及びその電気的接続部のキャリヤとして機能するセラミック基板(KS)と、
−前記ハウジング又は前記ハウジング壁(GW)の内部に配置された加熱素子(H,A−F)と、を含み、
前記センサ素子(SE)は、前記セラミック基板(KS)の凹部として構成されていると共にメンブレン(MB)によって覆われたトランスミッタユニット内に配置されており、結果として生じるキャビティ(OF)はオイルによって充填されており、前記加熱素子(H,A−F)は、位置F(F)において前記トランスミッタユニットの前記オイル中に配置されている、
圧力トランスミッタ。
【請求項2】
前記加熱素子(H,A−F)は、前記セラミック基板(KS)の内部の位置A(A)又はその上の位置(B)に配置されている、請求項1に記載の圧力トランスミッタ。
【請求項3】
前記加熱素子(H,A−F)は、前記ハウジングの内部の位置C(C)又は前記ハウジング壁の内部の位置D(D)に配置されている、請求項1又は2に記載の圧力トランスミッタ。
【請求項4】
前記センサ素子は、前記セラミック基板の凹部内に位置しており、前記凹部はメンブレン(MB)によって覆われていると共に、結果として生じるキャビティ(OF)はオイルによって充填されており、前記メンブレンの上方には圧力接続ポート(DS)が装着されており、前記加熱素子(H,A−F)は、位置E(E)において前記圧力接続ポートの外面に配置されている、請求項1〜3のいずれか1項に記載の圧力トランスミッタ。
【請求項5】
前記加熱素子(H,A−F)は導電性プラスチックを含む、請求項1〜4のいずれか1項に記載の圧力トランスミッタ。
【請求項6】
前記加熱素子(H,A−F)は、正の温度係数を有する抵抗要素を含む、請求項1〜5のいずれか1項に記載の圧力トランスミッタ。
【請求項7】
前記加熱素子(H,A−F)は、位置(D)において前記ハウジング壁の部分(複数)に一体化されており、マイクロ波放射の生成に適合している、請求項1〜6のいずれか1項に記載の圧力トランスミッタ。
【請求項8】
前記加熱素子(H,A−F)は、前記圧力トランスミッタ(DT)から独立した電力供給を備える構成とされている、請求項1〜7のいずれか1項に記載の圧力トランスミッタ。
【請求項9】
前記センサ素子はMEMS部材として形成されている、請求項1〜8のいずれか1項に記載の圧力トランスミッタ。
【請求項10】
第1の加熱素子(H,A−F)とは異なる場所に配置されていると共に請求項2〜7を満足する別の加熱素子(H,A−F)を有する、請求項1〜9のいずれか1項に記載の圧力トランスミッタ。
【請求項11】
原動機付き車両における冷間エンジン始動の際に圧力を測定するために形成されており、前記加熱素子(H,A−F)は、前記圧力トランスミッタ(DT)を、最初の圧力測定を行い得る所定の作動温度まで加熱するために形成されている、請求項1〜10のいずれか1項に記載の圧力トランスミッタ。
【請求項12】
前記加熱素子(H,A−F)は、20〜160℃の温度までの加熱のために形成されている、請求項1〜11のいずれか1項に記載の圧力トランスミッタ。
【請求項13】
請求項1〜12のいずれか1項に記載の圧力トランスミッタの原動機付き車両における使用。
【請求項14】
前記圧力トランスミッタ(DT)の起動の際、前記加熱素子(H,A−F)は、前記圧力トランスミッタ(DT)を加熱するために、所定の作動温度に達するまでスイッチオンされる、請求項1〜12のいずれか1項に記載の圧力トランスミッタを作動させるための方法。
【請求項15】
前記加熱素子(H,A−F)は、作動温度に達した際にスイッチオフされる、請求項14に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、腐食性の、凍結した又は高粘性の媒体中で使用するための、媒体分離型圧力トランスミッタに関する。
【背景技術】
【0002】
困難な又は極端な条件にある媒体中での圧力センサを用いた圧力測定においては、凝縮物、凍結した又は高粘性の媒体が、使用される圧力センサの測定信号を歪ませる可能性がある。そのような媒体は、特に、高温の、粘性の、低粘性で低温の、水性の又は油性の相、低温で高粘性の油、凍結した水又は燃料であり得る。歪んだ測定の結果は、以下のようなものであり得る:不十分な排ガス浄化、エンジン損傷、あるいは一般的に、監視されるべきプロセスの他の要素の損傷内燃機関の排ガスを清浄に保つことに対する要求が増大しているため、例えば、冷間エンジン始動の直後に種々の媒体中で正確な圧力測定を実行することが必要とされている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の課題は、上述した問題を回避すると共に、例えば冷間エンジン始動の直後に既に、エンジンに関連する媒体中で正確な圧力測定を行うことができ、且つ、圧力センサの耐用年数を延ばすことができる圧力センサを提供することである。特に、圧力センサは、腐食性の媒体の圧力測定に適していなければならない。
【課題を解決するための手段】
【0004】
当該課題は、請求項1による圧力トランスミッタによって解決される。従属請求項は、有利な実施例を提示する。
【0005】
課題を解決するために、差圧、相対圧又は絶対圧を測定することが可能な圧力トランスミッタが提案される。この圧力トランスミッタは、ハウジング壁を含むハウジングを含む。ハウジング壁は、絶対圧の測定のためには密閉されていてもよく、あるいは、相対圧又は差圧の測定のためには、例えば大気圧条件を基準圧力として使用するために開口を含んでいてもよい。ハウジング内には、センサ素子、セラミック基板及び圧力接続ポートが配置されている。
【0006】
センサ素子は、圧力に起因するメンブレンの撓みを決定する部材である。これは、例えば、圧電効果を利用することによる、又は、例えば抵抗素子を用いてメンブレンの伸びを測定することによる、直接的な圧力決定など、様々な技術的な変形例において実施することができる。
【0007】
センサ素子の方向を定めるため、以下においては、センサ素子のうちメンブレンが位置する側はセンサ素子の上面と呼ばれ、反対側はセンサ素子の下面と呼ばれる。下面には、センサ素子内に媒体通路が位置しており、当該媒体通路によって、圧力を導く媒体は、下面からメンブレンにアクセス可能となる。センサ素子は、MEMS部材として形成され得る。
【0008】
セラミック基板は、センサ素子及びその電気的接続部のキャリヤとして機能する。電気的接続部は、セラミック基板の上面上に配置されることができ、圧力センサからの測定信号を導出する機能を果たし、この測定信号は外部で処理され、当該信号に圧力が割り当てられる。
【0009】
絶対圧の測定のために、センサ素子の媒体通路はセラミック基板によって閉鎖され、又は、センサ素子は背面で上において閉鎖されている。セラミック基板の上には、メンブレンで覆われた凹部内にセンサ素子が装着されている。センサ素子の上面、セラミック基板の凹部及びメンブレンは、オイルで満たされたキャビティを包囲している。セラミック基板、メンブレン及びオイルは、センサ素子を腐食性の媒体から保護すると共に、監視されるべき
系内の媒体の圧力をセンサ素子に伝達する、トランスミッタユニットを形成する。
【0010】
トランスミッタユニット上には、例えば金属から形成された圧力接続ポートが配置されており、当該ポート内において、場合によっては腐食性である媒体が、メンブレンに導かれる。圧力接続ポートは、凹部上のメンブレンの上方に固定されていると共に、ハウジング壁を貫いて突出しており、その結果、監視されるべき
系又は媒体搬送
系と、直接的に接続されることができる。差圧を測定するために、第2のトランスミッタユニット及び第2の圧力接続ポートが、センサ素子の下面に装着され得る。
【0011】
他の例において、大気に対する相対圧が測定されなければならない場合、ハウジングには開口が含まれ、下面に配置されたセンサ素子の媒体通路は、絶対圧測定の場合のように、セラミック基板又はセンサ素子の下側の閉鎖部によって遮断されない。
【0012】
更に、加熱素子が、圧力トランスミッタの構成要素である。それは、正確な測定を可能とする作動温度を圧力センサ内で達成するという目的で、圧力トランスミッタ内の様々な位置に装着され得る。圧力トランスミッタを加熱することによって、生じ得る固体の及び液体の凝縮物は、溶かされ、場合によっては、気化され、場合によっては存在する高粘度の媒体と共に、圧力トランスミッタから排出され、場合によっては、ベークアウトされる。加熱素子によって、センサ素子を損傷又は破壊し得る氷の結晶の形成を防止することも可能である。
【0013】
加熱素子は、例えば、圧力トランスミッタを凍結温度よりもかなり高い温度まで加熱するために形成されている。例えば、20℃〜50℃、特に160℃までの温度への加熱が企図されている。
【0014】
加熱素子のための様々な可能な位置は、全て圧力センサの内側にあり、以下において、例示的な位置が、非網羅的なリストに列挙されている:
加熱素子は、
−セラミック基板の上又は内部(位置A及びB)に配置されることができ、ここでは、好ましくは、電気的接続部の近傍に装着されている。セラミック基板は、層状セラミックとして形成されていてもよい。加熱素子は、例えば、セラミック基板の内部又は表面上の層の上に印刷されていてもよい。
−ハウジング内、例えばハウジング壁の内側(位置C)であって、加熱素子は、接着、クランプ又は半田付けによって、ハウジングの構成要素と直接的に接触する。
−ハウジング壁の内部(位置D)
−圧力接続ポート(位置E)であって、加熱素子は当該圧力接続ポートの外側のセクションを覆っている。加熱素子は、ゲル境界に一体化されていてもよい。
【0015】
加熱素子の様々な実施形態は、導電性プラスチック、例えば蛇行形状の抵抗、又は、正の温度係数を有する抵抗を含むことができる。抵抗のあり得る蛇行形状の利点は、抵抗がより長く、したがってより高い値を有し、その結果、より高い熱出力が得られることである。正の温度係数を有する抵抗の使用により、加熱素子の熱出力の外的制御はもはや必要ではない。
【0016】
別の実施形態において、加熱素子は、センサのハウジング内に一体化されていると共に、マイクロ波を生成及び放射することができるように形成されており、当該マイクロ波によって、圧力センサ全体、その個々の構成要素又は測定されるべき媒体が、選択的に加熱される。それにより、加熱は所望の場所で、例えば媒体中で直接的に行われ、消費される加熱出力は、より最適に使用され得る。そのような加熱素子は、センサの異なる部位に配置することもできる。
【0017】
加熱素子の電流供給は、様々な方法で行われ得る。その際、例えば、圧力センサの電力供給、並びに、付加的でセンサ素子から独立した電力供給の変形例の可能性が存在する。エネルギー供給の分離は、測定信号が加熱素子への電流供給によって損なわれないという利点を有する。
【0018】
上述した加熱素子に加えて、圧力センサは、説明された構造のうちの1つを有する別の加熱素子を含んでもよい。これは、記載された位置のうちの1つであって、第1の加熱素子の位置とは異なる位置に、装着され得る。複数の加熱素子を使用することにより、圧力センサは、より均一に、したがってより効率的に加熱され得る。
【0019】
上述した圧力トランスミッタは、例えば、原動機付き車両において使用するために、特に原動機付き車両の排ガス領域、例えばディーゼル粒子センサ又は尿素センサの領域において使用するために形成されている。
【0020】
本発明の別の態様によれば、上述した圧力トランスミッタを作動させるための方法が提示される。この方法によれば、圧力トランスミッタの起動の際、加熱素子は、設定された作動温度に達するまで、圧力トランスミッタを加熱するためにスイッチオンされる。設定された作動温度において、最初の圧力測定が行われる。加熱素子は、エネルギー消費の低減のために、例えば、圧力トランスミッタの作動中、加熱のために可能な限り少なくスイッチオンされる。例えば、加熱素子は、作動温度に達した際にスイッチオフされる、圧力トランスミッタの凍結は、その後、エンジンの熱によって防止される。代替的に、走行中の凍結を防止するために、加熱素子を継続的に作動させることも可能である。
【0021】
以下において、本発明及びその構成要素が、選択された実施例及びそれに付随する概略的な図面に基づいて、詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】1つ又は複数の加熱素子のための種々の位置を有する圧力トランスミッタの概略的な断面図、及び、圧力トランスミッタの他の構成要素に対するそれらの位置の相対的な関係を示している。
【発明を実施するための形態】
【0023】
図1に示された断面図は、圧力トランスミッタDTの概略的な構造を示している。これは、ハウジング壁GWと、ハウジングの内部に配置されたセラミック基板KSと、セラミック基板内に埋め込まれたセンサ素子SEと、メンブレンMBと、圧力接続ポートDSと、を含むハウジングGHを備える。センサ素子は、セラミック基板上の凹部内に位置しており、当該凹部はメンブレンMBで覆われている。センサ素子の上面と、セラミック基板と、メンブレンとの間には、オイルOFで満たされたキャビティが形成されている。メンブレンの上方には圧力接続ポートDSが装着されており、当該ポートを通じて、媒体がメンブレンMBの上に導かれる。
【0024】
更に、1つ又は複数の加熱素子Hの、特に位置A〜Fへのあり得る配置のための種々の変形例が記入されている。加熱素子の記入された例示的な装着位置は、以下のとおりである:加熱素子は、
−セラミック基板の内部又は上(位置A及びB)、
−ハウジングの内部、例えばハウジング壁の内側(位置C)、
−ハウジング壁の内部(位置D)、
−圧力接続ポートの上(位置E)、又は、
−セラミック基板の上の凹部内のオイル中(位置F)
に配置され得る。
【0025】
加熱素子及びそのあり得る位置の全ての図示は、純粋に概略的であり、互いに対して又は図示されたそれぞれの部材の大きさに対して、縮尺どおりではない。
【0026】
図2は、センサ素子SEの拡大断面図を示している。ここでは、センサ素子のメンブレンMSを認識することができ、これは、ここではセンサ素子の上面OSを形成している。上面の反対側において、センサ素子の下面USには、下方からのセンサ素子のメンブレンMSへの媒体通路MGが配置されている。
【0027】
図1及び2に示されたセンサ素子の形態は、例示的且つ概略的なものにすぎない。圧力トランスミッタ素子の構築のために他の形態又は材料も用いられ得る。
【符号の説明】
【0028】
A セラミック基板上の加熱素子
B セラミック基板内の加熱素子
BL 換気
C ハウジングの内部の加熱素子
D ハウジング壁の内部の加熱素子
DS 圧力接続ポート
DT 圧力トランスミッタ
DZ 圧力導入
E 圧力接続ポートの上の加熱素子
F オイル中の加熱素子
GH ハウジング
GW ハウジング壁
H 加熱素子
KS セラミック基板
MG 媒体通路
MS センサ素子のメンブレン
MB メンブレン
OF オイル
OS センサ素子の上面
SE センサ素子
US センサ素子の下面