【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成31年度、総務省、5Gの普及・展開のための基盤技術に関する研究開発の委託事業、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、実施の形態に係る抵抗素子について、図面を参照しながら具体的に説明する。なお、以下で説明する実施の形態は、いずれも包括的又は具体的な例を示すものである。以下の実施の形態で示される数値、形状、材料、構成要素、構成要素の配置位置及び接続形態などは、一例であり、本開示を限定する主旨ではない。
【0014】
また、以下の実施の形態において、「上方」及び「下方」という用語は、絶対的な空間認識における上方向(鉛直上方)及び下方向(鉛直下方)を指すものではない。また、「上方」及び「下方」という用語は、2つの構成要素が互いに間隔をあけて配置されて2つの構成要素の間に別の構成要素が存在する場合のみならず、2つの構成要素が互いに密着して配置されて2つの構成要素が接する場合にも適用される。
【0015】
また、本明細書及び図面において、x軸、y軸及びz軸は、三次元直交座標系の三軸を示している。各実施の形態では、z軸方向を鉛直方向とし、z軸に垂直な方向(xy平面に平行な方向)を水平方向としている。また、以下で説明する実施の形態において、z軸正方向を上方と記載し、z軸負方向を下方と記載する場合があり、z軸正方向側の面を上面と記載し、z軸負方向側の面を下面と記載する場合がある。
【0016】
また、本明細書において、「平面視」とは、抵抗素子が備える基板をz軸正方向から当該基板面側を見たときのことであり、このときの図を平面図という。また、断面図とは、断面に表れる面のみを示す図である。
【0017】
また、本明細書において、電気的な接続を単に接続とも記す。
【0018】
また、本明細書において、シリコンをSi、シリコンカーバイドをSiC、窒化アルミニウムをAlN、窒化ガリウムをGaN、窒化インジウムをInN、窒化インジウムガリウムをInGaN、窒化アルミニウムガリウムをAlGaN、窒化アルミニウムインジウムガリウムをAlInGaN、水素をH、ヘリウムをHe、ほう素をB、フッ化ほう素をBF
2、窒化シリコンをSiN、酸化シリコンをSiO
2、酸窒化シリコンをSiON、チタンをTi、アルミニウムをAl、クロムをCr、金をAu、窒化チタンをTiN、アルミニウムをAl、タングステンをW、モリブデンをMo、タンタルをTa、窒化タンタルをTaN、白金をPt、パラジウムをPd、ニッケルをNi、鉄をFe、銀をAg、銅をCu、窒化タングステンシリサイドをWSiNと示すこともある。
【0019】
(実施の形態1)
まず、
図1を参照しながら、実施の形態1に係る抵抗素子100の構成について説明する。
【0020】
図1は、実施の形態1に係る抵抗素子100の平面図及び断面図である。より具体的には、
図1の(a)は、抵抗素子100の平面図であり、
図1の(b)は、
図1の(a)のI−I線における抵抗素子100の切断面を示す断面図である。
【0021】
抵抗素子100は、基板101と、第1窒化物半導体層102と、第2窒化物半導体層103と、2次元電子ガス層107と、第1電極113と、第2電極114と、絶縁層(以下第1絶縁層106と記載)と、を備える。抵抗素子100は、抵抗値安定化構造を有する。抵抗素子100は、素子分離層104を有してもよい。
【0022】
基板101は、Si基板によって構成される。基板101は、例えば、Sapphire、SiC、GaN、AlN等の基板によって構成されてもよい。基板101は、下記構成要素を積載するための支持部材である。
【0023】
第1窒化物半導体層102は、基板101の上方に設けられた層である。本実施の形態においては、第1窒化物半導体層102は、基板101の上面に接して設けられる。第1窒化物半導体層102は、GaNによって構成される。第1窒化物半導体層102は、例えば、III族窒化物半導体材料であるInGaN、AlGaN、AlInGaN等によって構成されてもよい。
【0024】
第2窒化物半導体層103は、第1窒化物半導体層102の上方に設けられた層である。本実施の形態においては、第2窒化物半導体層103は、第1窒化物半導体層102の上面に接して設けられる。第2窒化物半導体層103は、AlGaNによって構成される。第2窒化物半導体層103は、例えば、III族窒化物半導体であるGaN、InGaN、AlGaN、AlInGaN等によって構成されてもよい。第2窒化物半導体層103は、第1窒化物半導体層102と比べてバンドギャップが大きい。
【0025】
また、上述のように、第2窒化物半導体層103は、AlGaNによって構成されてもよいが、これに限られない。第2窒化物半導体層103は、AlGaNの層と他の層とを含む積層体としてもよい。第2窒化物半導体層103は、例えば、他の層として、最上層(すなわち、第2窒化物半導体層103の上方側の面)にGaNから構成されるキャップ層を含んでもよい。また、第2窒化物半導体層103は、例えば、他の層として、第1窒化物半導体層102と接する層(すなわち、第1窒化物半導体層102と第2窒化物半導体層103との界面)にAlNから構成される層を含んでもよい。
【0026】
2次元電子ガス層107は、第1窒化物半導体層102と第2窒化物半導体層103との界面の第1窒化物半導体層102側に設けられた層である。上述のように、第2窒化物半導体層103がAlGaNであり、第1窒化物半導体層102がGaNである場合に、AlGaN及びGaNの格子定数の差から発生するピエゾ分極電荷と、AlGaN及びGaNのバンドギャップの差と、によりAlGaN/GaN界面近傍のGaN層側に高濃度の電子を有する2次元電子ガス層107が発生する。また、平面視で第1電極113と第2電極114との間に設けられた2次元電子ガス層107は、電気抵抗要素として機能する。
【0027】
素子分離層104は、抵抗素子100を、当該抵抗素子100以外の素子から分離するための層である。素子分離層104は、第1窒化物半導体層102及び第2窒化物半導体層103の一部を、イオン注入により不活性化することで得られる。イオンとして、H、He、B又はBF
2などが用いられる。
【0028】
なお、素子分離層104は、熱酸化により絶縁化された層であってもよい。
【0029】
素子分離層104は、第1窒化物半導体層102を囲うように設けられている。本実施の形態においては、素子分離層104は、第1窒化物半導体層102、第2窒化物半導体層103及び2次元電子ガス層107を囲うように設けられている。
【0030】
第1電極113は、第1窒化物半導体層102の上方に設けられ、かつ、2次元電子ガス層107とオーミック接続された電極である。第2電極114は、第1窒化物半導体層102の上方であって、平面視で第1電極113と間隔を空けた位置に設けられ、かつ、2次元電子ガス層107とオーミック接続された電極である。本実施の形態においては、第1電極113及び第2電極114は、第2窒化物半導体層103の上面に接して設けられる。また、間隔を空けて設けられた2つの電極間に位置する2次元電子ガス層107が電気抵抗要素となる。
【0031】
第1電極113及び第2電極114は、Ti及びAlの少なくともいずれか一方を含む積層構造から構成される。第1電極113及び第2電極114は、例えば、Cr及びAuの少なくともいずれか一方を含む積層構造から構成されてもよい。第1電極113及び第2電極114は、例えば、Ti、Al、Cr及びAuのうち少なくとも2つを含む積層構造から構成されてもよい。なお、第1電極113と第2電極114とは、同じ積層構造であってもよく、異なる積層構造であってもよい。
【0032】
第1絶縁層106は、第2窒化物半導体層103の上面に接して、平面視で第1電極113と第2電極114との間に設けられる。なお、第1絶縁層106が設けられる領域は、平面視で第1電極113と第2電極114との間に限られない。
図1の(a)が示すように、第1絶縁層106は、平面視で第1電極113及び第2電極114をそれぞれ囲うように、設けられてもよい。また、
図1の(b)が示すように、第1電極113及び第2電極114の上方には、第1絶縁層106が設けられず、開口部が設けられている。そのため、第1電極113及び第2電極114のそれぞれの上面は、露出している。
【0033】
第1絶縁層106は、SiNによって構成される。第1絶縁層106は、例えば、SiO
2、SiON、AlN等によって構成されてもよい。
【0034】
また、平面視で第1電極113と第2電極114との間の第1絶縁層106の上方には、導電層は、配置されない。さらに、導電層は、第2窒化物半導体層103よりも上方であって、かつ、平面視で第1電極113と第2電極114との間である領域には、配置されなくてもよい。
【0035】
ここで、導電層とは、例えば、電界効果トランジスタにおけるゲート電極などの導電性の部材、又は、第1電極113及び第2電極114へ電力供給するための配線層である。第1電極113と第2電極114との間の第1絶縁層106の上方に、このような導電層が配置されると、導電層の周りに電界が生じるため、2次元電子ガス層107の抵抗値が変化し、安定しない。本実施の形態においては、このような導電層が配置されないため、2次元電子ガス層107の抵抗値が変化し難くなる。すなわち、変動の少ない安定した抵抗値を示す抵抗素子100を提供することができる。
【0036】
抵抗値安定化構造は、上記電気抵抗要素の抵抗値が一定となるように機能する。抵抗値安定化構造が設けられることで、さらに、2次元電子ガス層107の抵抗値が変化し難くなる。
【0037】
さらに、以下では、抵抗値安定化構造について、実施の形態1の各変形例を用いて詳細に説明する。
【0038】
(実施の形態1の変形例1)
本変形例においては、抵抗値安定化構造は、SiNからなる第1絶縁層の組成比Si/Nが1.1以上、2.3以下となる構造である。なお、本変形例では、実施の形態1と共通の構成要素については、その詳細な説明を省略する。
【0039】
まず、
図2A及び
図2Bを用いて、実施の形態1に係る抵抗素子100で起こり得る課題について説明する。
【0040】
図2Aは、実施の形態1に係る抵抗素子100における電圧印加前後の断面図である。より具体的には、
図2Aの(a)は、電圧印加前の断面図であり、
図2Aの(b)は、電圧印加後の断面図である。
図2Aの(a)が示すように、第2窒化物半導体層103の表面(より具体的には、第2窒化物半導体層103と第1絶縁層106との界面)には、酸化層又は欠陥といった電子トラップの原因となる表面準位108が形成されている。第1電極113と第2電極114との間に一定の電圧を印加したとき、その電位差により2次元電子ガス層107を電子が流れる。このとき電圧印可により発生する電界で2次元電子ガス層107中の電子が加速され、表面準位108に電子がトラップされる場合がある(
図2Aの(b)参照)。トラップされた電子109は、下方の2次元電子ガス層107を空乏化させるため、2次元電子ガス層107のキャリア濃度が下がる。
【0041】
図2Bは、実施の形態1に係る抵抗素子100における電圧印加前後の電流電圧特性を示す概念図である。上述の通り、電圧印加により、2次元電子ガス層107のキャリア濃度が下がるため、抵抗素子100の抵抗値が上昇してしまう場合がある。
【0042】
そこで、本変形例においては、絶縁層に関する構造である抵抗値安定化構造が設けられる。
【0043】
図3は、実施の形態1の変形例1に係る抵抗素子100aの断面図及び抵抗値変動率を示す図である。より具体的には、
図3の(a)は、抵抗素子100aの断面図であり、
図1の(b)に相当する図である。
図3の(b)は、抵抗素子100aに50V印加したときの抵抗値変動率及び第1絶縁層106aの組成比Si/Nの関係を示す図である。
【0044】
変形例1に係る抵抗素子100aは、基板101と、第1窒化物半導体層102と、第2窒化物半導体層103と、素子分離層104と、第1絶縁層106aと、2次元電子ガス層107と、第1電極113と、第2電極114と、を備える。抵抗素子100aは、抵抗値安定化構造を有する。抵抗素子100aにおいては、平面視で第1電極113と第2電極114との間の第1絶縁層106aの上方には導電層は、配置されない。
【0045】
本変形例に係る第1絶縁層106aは、窒化シリコン(SiN)からなる。また、第1絶縁層106aと第2窒化物半導体層103との界面の第1絶縁層106aの組成比Si/Nが1.1以上、2.3以下である。例えば、当該界面から10nm以内の領域において、第1絶縁層106aの組成比Si/Nが1.1以上、2.3以下である。本変形例に係る抵抗値安定化構造は、第1絶縁層106aが上記構成となる構造である。
【0046】
ここで、抵抗値変動率とは、電圧印加前後の抵抗値の変化率を示す値である。
図3の(b)が示すように、Si/Nが大きくなると抵抗値変動率は抑制される。これは、以下のように説明される。SiNのSiが余剰となることでSiNにSiダングリングボンドが多数存在し、Siダングリングボンドが表面準位108の一因となっている表面酸化層の酸素をゲッタリングすることで、表面準位108がキャンセルされる。表面準位108がキャンセルされることで、
図2Aが示すような、トラップされた電子109の発生が抑制され、抵抗値変動率が抑制される。
【0047】
また、Si/Nを1.1以上とすることで、抵抗値変動率が20%を十分下回る値となる。抵抗値変動率が20%以下となることで、商品の要求仕様を十分に満たすことができる。なお、Si/Nを1.2以上とすることで、抵抗値変動率を10%以下とすることができ、さらに、Si/Nを1.5以上とすることで、抵抗値変動率を5%以下とすることができる。これにより、より難易度の高い商品の要求仕様を十分に満たすことができる。
【0048】
ここで、本変形例に係る抵抗素子100aと同一基板(基板101)に形成された、電界効果トランジスタ200について説明する。上述の背景技術で説明されたように、FETと抵抗素子とを備えた集積回路が知られている。
図4Aは、実施の形態1の変形例1に係る抵抗素子100aと同一基板(基板101)に形成された電界効果トランジスタ200の平面図及び断面図である。より具体的には、
図4Aの(a)は、電界効果トランジスタ200の平面図であり、
図4Aの(b)は、
図4Aの(a)のIV−IV線における電界効果トランジスタ200の切断面を示す断面図である。
【0049】
電界効果トランジスタ200は、基板101と、第1窒化物半導体層102と、第2窒化物半導体層103と、2次元電子ガス層107と、ソース電極110と、ゲート電極111と、ドレイン電極112と、第1絶縁層106aと、第2絶縁層126と、素子分離層104と、を備える。
【0050】
例えば、同じ符号が付された構成要素は、抵抗素子100aと電界効果トランジスタ200とにおいて、同時に形成されてもよい。
【0051】
電界効果トランジスタ200において、第1絶縁層106aは、第2窒化物半導体層103の上面と接するように設けられる。第1絶縁層106aの開口部には、ソース電極110とドレイン電極112とが設けられる。ソース電極110とドレイン電極112とは、2次元電子ガス層107とオーミック接続された電極である。ソース電極110とドレイン電極112との間には、第2窒化物半導体層103とショットキー接合したゲート電極111が設けられる。なお、ゲート電極111と第2窒化物半導体層103とは、pn接合であってもよい。また、ゲート絶縁層が設けられた構成であってもよい。ゲート絶縁層は、ゲート電極111と第2窒化物半導体層103との間に挿入され、MIS(metal−insulator−semiconductor)構造が構成されてもよい。
【0052】
さらに、第2絶縁層126は、第1絶縁層106a、ソース電極110、ゲート電極111及びドレイン電極112の上方に設けられる。第2絶縁層126は、SiNによって構成される。第2絶縁層126は、例えば、SiO
2、SiON、AlN等によって構成されてもよい。ここで、第2絶縁層126と、第1絶縁層106aとは、同一材料、かつ、同一組成としてもよいが、これに限られない。
【0053】
図4Aの(b)には、電界効果トランジスタ200のゲート・ドレイン間のリーク電流の経路が示される。リーク電流の経路は、ドレイン電極112から2次元電子ガス層107を通りゲート電極111に至る経路と、ドレイン電極112から第1絶縁層106aを通りゲート電極111に至る経路と、を含む。
【0054】
ここで、
図4Bは、実施の形態1の変形例1に係る第1絶縁層106aの抵抗率と組成比Si/Nとの関係を示す図である。Si/Nが大きくなると抵抗率が下がる。そのため、Si/Nが大きくなりすぎると、第1絶縁層106aを通るリーク電流が増加し、ゲート・ドレイン間における逆方向リークが増大してしまう。ここで、Si/Nを2.3以下とすることで、抵抗率を1.7×10
2Ω・cm以上とすることができる。これにより、ゲート・ドレイン間の逆方向リークにおける、第1絶縁層106aを通る電流量を、全体のリーク電流量(2次元電子ガス層107を通る経路と、第1絶縁層106aを通る経路との合計)の10%以下とすることができる。つまり、商品の要求仕様を十分に満たすことができる。なお、Si/Nを2.0以下とすることで、抵抗率を3.0×10
2Ω・cm以上とすることができ、さらに、Si/Nを1.8以下とすることで、抵抗率を4.0×10
2Ω・cm以上とすることができる。これにより、より難易度の高い商品の要求仕様を十分に満たすことができる。
【0055】
上記構成とすることで、Siダングリングボンドによって表面準位がキャンセルされるため、2次元電子ガス層107の抵抗値が変化し難くなる。すなわち、変動の少ない安定した抵抗値を示す抵抗素子100aを提供することができる。
【0056】
また、組成比Si/Nを上記比率とすることで、難易度の高い商品の要求仕様を十分に満たすことができる。
【0057】
(実施の形態1の変形例2及び変形例3)
実施の形態1の変形例1においては、抵抗値安定化構造は、SiNからなる絶縁層の組成比Si/Nが1.1以上、2.3以下となる構造であったが、これに限られない。
【0058】
変形例2においては、抵抗値安定化構造は、第1ホール注入電極を有する構造である。また、変形例3においては、抵抗値安定化構造は、第1ホール注入電極及び第2ホール注入電極を有する構造である。なお、本変形例では、実施の形態1及び変形例1と共通の構成要素については、その詳細な説明を省略する。
【0059】
図5は、実施の形態1の変形例2に係る抵抗素子100b及び実施の形態1の変形例3に係る抵抗素子100cの断面図である。より具体的には、
図5の(a)は、実施の形態1の変形例2に係る抵抗素子100bの断面図である。
図5の(b)は、実施の形態1の変形例3に係る抵抗素子100cの断面図である。
【0060】
まず、
図5の(a)を用いて、変形例2に係る抵抗素子100bについて説明する。
【0061】
変形例2に係る抵抗素子100bは、実施の形態1に係る抵抗素子100が備える構成要素と、第1ホール注入電極115と、を有する。変形例2に係る抵抗素子100bにおいては、平面視で第1電極113と第2電極114との間の第1絶縁層106の上方には導電層は、配置されない。
【0062】
第1ホール注入電極115は、第1電極113と第2電極114との間の第1電極113側の第2窒化物半導体層103の上面に接して設けられる。本変形例においては、
図5の(a)が示すように、第1ホール注入電極115は、第2窒化物半導体層103と、第1電極113の一部との間に挿入されている。第1ホール注入電極115は、第1電極113と電気的に接続される。
【0063】
また、第1ホール注入電極115は、p型のGaNによって構成される。第1ホール注入電極115は、例えば、p型のIII族窒化物半導体であるInGaN、AlGaN、AlInGaN等によって構成されてもよい。本変形例に係る抵抗値安定化構造は、第1ホール注入電極115が上記構成を有する構造である。
【0064】
第1ホール注入電極115は、第2電極114に対して第1電極113が高電位になったときに第2窒化物半導体層103にホールを注入する。
【0065】
具体的には以下の通りである。第1電極113の電位が第2電極114の電位よりも高くなることで、電流が第1電極113から第2電極114に向かって流れる。そうすると、第1ホール注入電極115からホールが注入され、当該ホールは、第2窒化物半導体層103の表面準位にトラップされた電子109をキャンセルすることができる。
【0066】
上述の通り、トラップされた電子109は、2次元電子ガス層107の抵抗値を上昇させる要因となり得る。
【0067】
上記構成とすることで、トラップされた電子109をキャンセルすることができるため、2次元電子ガス層107の抵抗値が変化し難くなる。すなわち、変動の少ない安定した抵抗値を示す抵抗素子100bを提供することができる。
【0068】
なお、本変形例に係る抵抗素子100bにおいては、第2電極114よりも第1電極113に高い電位が与えられるように、抵抗素子100bが使用されることがよい。そうすると、第1ホール注入電極115からホールが注入され、第2窒化物半導体層103の表面準位にトラップされた電子109をキャンセルすることができ、変動の少ない安定した抵抗値を示す抵抗素子100bとなる。
【0069】
続いて、
図5の(b)を用いて、変形例3に係る抵抗素子100cについて説明する。
【0070】
変形例3に係る抵抗素子100cは、実施の形態1に係る抵抗素子100が有する構成要素と、第1ホール注入電極115と、第2ホール注入電極116と、を有する。変形例3に係る抵抗素子100cにおいては、平面視で第1電極113と第2電極114との間の第1絶縁層106の上方には導電層は、配置されない。
【0071】
変形例3に係る第1ホール注入電極115は、変形例2に係る第1ホール注入電極115と同様の構成である。
【0072】
第2ホール注入電極116は、第1電極113と第2電極114との間の第2電極114側の第2窒化物半導体層103の上面に接して設けられる。本変形例においては、
図5の(b)が示すように、第2ホール注入電極116は、第2窒化物半導体層103と、第2電極114の一部との間に挿入されている。第2ホール注入電極116は、第2電極114と電気的に接続される。
【0073】
また、第2ホール注入電極116は、p型のGaNによって構成される。第2ホール注入電極116は、例えば、p型のIII族窒化物半導体であるInGaN、AlGaN、AlInGaN等によって構成されてもよい。本変形例に係る抵抗値安定化構造は、第1ホール注入電極115及び第2ホール注入電極116が上記構成を有する構造である。
【0074】
第2ホール注入電極116は、第1電極113に対して第2電極114が高電位になったときに第2窒化物半導体層103にホールを注入する。
【0075】
本変形例においては、第1電極113の電位が第2電極114の電位よりも高くなることで、第1ホール注入電極115からホールが注入され、第2電極114の電位が第1電極113よりも高くなることで、第2ホール注入電極116からホールが注入される。いずれの場合においても、注入されたホールは、第2窒化物半導体層103の表面準位にトラップされた電子109をキャンセルすることができる。つまり、ホール注入が両電極(第1電極113及び第2電極114)から行われる。
【0076】
上記構成とすることで、トラップされた電子109をキャンセルすることができるため、2次元電子ガス層107の抵抗値がより変化し難くなる。
【0077】
すなわち、変動の少ない安定した抵抗値を示す抵抗素子100cを提供することができる。
【0078】
なお、本変形例に係る抵抗素子100cにおいては、ホール注入が両電極から行われることとなり、抵抗素子100cを双方向に電流を流す素子として使用することができる。
【0079】
(実施の形態1の変形例4及び変形例5)
抵抗値安定化構造は、上記実施の形態1及び各変形例に示された構造に限られない。
【0080】
変形例4においては、抵抗値安定化構造は、第1電子引き抜き電極を有する構造である。また、変形例5においては、抵抗値安定化構造は、第1電子引き抜き電極及び第2電子引き抜き電極を有する構造である。なお、本変形例では、実施の形態1及び各変形例と共通の構成要素については、その詳細な説明を省略する。
【0081】
図6は、実施の形態1の変形例4に係る抵抗素子100d及び実施の形態1の変形例5に係る抵抗素子100eの断面図である。より具体的には、
図6の(a)は、実施の形態1の変形例4に係る抵抗素子100dの断面図である。
図6の(b)は、実施の形態1の変形例5に係る抵抗素子100eの断面図である。
【0082】
まず、
図6の(a)を用いて、変形例4に係る抵抗素子100dについて説明する。
【0083】
変形例4に係る抵抗素子100dは、実施の形態1に係る抵抗素子100が備える構成要素と、第1電子引き抜き電極117と、を有する。変形例4に係る抵抗素子100dにおいては、平面視で第1電極113と第2電極114との間の第1絶縁層106の上方には導電層は、配置されない。
【0084】
第1電子引き抜き電極117は、第1電極113と第2電極114との間の第1電極113側の第2窒化物半導体層103の上面に接して設けられる。本変形例においては、
図6の(a)が示すように、第1電子引き抜き電極117は、第2窒化物半導体層103と、第1電極113の一部との間に挿入されている。第1電子引き抜き電極117は、第1電極113と電気的に接続される。
【0085】
また、第1電子引き抜き電極117は、第2窒化物半導体層103とショットキー接合する。第1電子引き抜き電極117は、Niを含む積層構造によって構成される。第1電子引き抜き電極117は、例えば、Ti、TiN、Hf、Pd及びPtの少なくともいずれか1つを含む積層構造によって構成されてもよい。本変形例に係る抵抗値安定化構造は、第1電子引き抜き電極117が上記構成を有する構造である。
【0086】
第1電子引き抜き電極117は、第2電極114に対して第1電極113が高電位になったときに第2窒化物半導体層103から電子を引き抜く。
【0087】
具体的には以下の通りである。第1電極113の電位が第2電極114の電位よりも高くなることで、電流が第1電極113から第2電極114に向かって流れる。そうするとショットキー接合する第1電子引き抜き電極117が表面準位にトラップされた電子109を引き抜くことができる。
【0088】
上述の通り、トラップされた電子109は、2次元電子ガス層107の抵抗値を上昇させる要因となり得る。
【0089】
上記構成とすることで、トラップされた電子109を引き抜くことができるため、2次元電子ガス層107の抵抗値が変化し難くなる。すなわち、変動の少ない安定した抵抗値を示す抵抗素子100dを提供することができる。
【0090】
続いて、
図6の(b)を用いて、変形例5に係る抵抗素子100eについて説明する。
【0091】
変形例5に係る抵抗素子100eは、実施の形態1に係る抵抗素子100が備える構成要素と、第1電子引き抜き電極117と、第2電子引き抜き電極118と、を有する。変形例5に係る抵抗素子100eにおいては、平面視で第1電極113と第2電極114との間の第1絶縁層106の上方には導電層は、配置されない。
【0092】
変形例5に係る第1電子引き抜き電極117は、変形例4に係る第1電子引き抜き電極117と同様の構成である。
【0093】
第2電子引き抜き電極118は、第1電極113と第2電極114との間の第2電極114側の第2窒化物半導体層103の上面に接して設けられる。本変形例においては、
図6の(b)が示すように、第2電子引き抜き電極118は、第2窒化物半導体層103と、第2電極114の一部との間に挿入されている。第2電子引き抜き電極118は、第2電極114と電気的に接続される。
【0094】
また、第2電子引き抜き電極118は、Niを含む積層構造によって構成される。第2電子引き抜き電極118は、例えば、Ti、TiN、Hf、Pd及びPtの少なくともいずれか1つを含む積層構造によって構成されてもよい。本変形例に係る抵抗値安定化構造は、第1電子引き抜き電極117及び第2電子引き抜き電極118が上記構成を有する構造である。
【0095】
第2電子引き抜き電極118は、第1電極113に対して第2電極114が高電位になったときに第2窒化物半導体層103から電子を引き抜く。
【0096】
本変形例においては、第1電極113の電位が第2電極114の電位よりも高くなることで、第1電子引き抜き電極117が電子を引き抜き、第2電極114の電位が第1電極113よりも高くなることで、第2電子引き抜き電極118が電子を引き抜く。
【0097】
上記構成とすることで、トラップされた電子109を引き抜くことができるため、2次元電子ガス層107の抵抗値がより変化し難くなる。
【0098】
すなわち、変動の少ない安定した抵抗値を示す抵抗素子100eを提供することができる。
【0099】
(実施の形態1の変形例6)
抵抗値安定化構造は、上記実施の形態1及び各変形例に示された構造に限られない。
【0100】
変形例6においては、抵抗値安定化構造は、応力緩衝層を有する構造である。なお、本変形例では、実施の形態1及び各変形例と共通の構成要素については、その詳細な説明を省略する。
【0101】
図7Aは、実施の形態1の変形例6に係る抵抗素子100fの断面図である。
図7Aには、外部から加えられる応力Pが記されている。
【0102】
変形例6に係る抵抗素子100fは、実施の形態1に係る抵抗素子100が備える構成要素と、応力緩衝層119と、を有する。変形例6に係る抵抗素子100fにおいては、平面視で第1電極113と第2電極114との間の第1絶縁層106の上方には導電層は、配置されない。
【0103】
応力緩衝層119は、第1絶縁層106の上方に設けられた層である。応力緩衝層119の平面視形状は、第1絶縁層106の平面視形状と一致してもよい。応力緩衝層119は、外部からの応力を緩和するための層である。本変形例に係る抵抗値安定化構造は、応力緩衝層119が上記構成を有する構造である。
【0104】
ここで、抵抗素子100fに対して、外部から加えられる応力について説明する。抵抗素子100fが製造される過程において、例えば、半導体チップ組立に使用する封止材料が形成される際に、抵抗素子100fに対して、外部から応力が加えられる。当該応力が電流電圧特性に与える影響について、
図7Bを用いて説明する。
【0105】
図7Bは、実施の形態1の変形例6に係る抵抗素子100fにおける、外部から応力が加えられる前後の電流電圧特性を示す概念図である。本変形例においては、AlGaN(第2窒化物半導体層103)/GaN(第1窒化物半導体層102)界面のGaN層(第1窒化物半導体層102)側に発生する2次元電子ガス層107は、ピエゾ分極電荷に起因している。そのため、当該応力が加えられると、キャリア濃度が変化し、2次元電子ガス層107の抵抗値が変動する。
【0106】
応力緩衝層119は、ポリイミドによって構成される。応力緩衝層119は、例えば、フッ素系樹脂、BCB(ベンゾシクロブテン)樹脂、感光性絶縁層等によって構成されてもよい。また、応力緩衝層119は、外部からの応力Pを緩和するために十分な程度の弾性を有する材料によって構成されてもよい。本変形例に係る抵抗値安定化構造は、応力緩衝層119が上記構成を有する構造である。
【0107】
上記構成とすることで、外部からの応力が緩和されるため、2次元電子ガス層107のキャリア濃度が応力によって変化することを抑制できる。
【0108】
すなわち、変動の少ない安定した抵抗値を示す抵抗素子100fを提供することができる。
【0109】
(実施の形態1の変形例7)
抵抗値安定化構造は、上記実施の形態1及び各変形例に示された構造に限られない。
【0110】
変形例7においては、抵抗値安定化構造は、第1窒化物半導体層を囲うように設けられた、不活性イオンを含む素子分離層を有する構造である。なお、本変形例では、実施の形態1及び各変形例と共通の構成要素については、その詳細な説明を省略する。
【0111】
まず、
図8A及び
図8Bを用いて、実施の形態1に係る抵抗素子100で起こり得る課題について説明する。
【0112】
図8Aは、実施の形態1に係る抵抗素子100における不活性イオンの移動を説明する図である。より具体的には、
図8Aの(a)は、抵抗素子100の平面図である。
図8Aの(b)は、
図8Aの(a)におけるVIII−VIII線における不活性イオンの移動前の抵抗素子100の切断面を示す断面図である。
図8Aの(c)は、
図8Aの(a)におけるVIII−VIII線における不活性イオンの移動後の抵抗素子100の切断面を示す断面図である。なお、
図8Aの(c)には、不活性イオンの移動の方向Mが矢印で示されている。
【0113】
素子分離のために注入された不活性イオンは、熱処理などにより移動することがある。移動した不活性イオンが2次元電子ガス層107に到達すると、抵抗素子100において、不活性イオンが移動した領域120が形成される。移動した不活性イオンは、2次元電子ガス層107中のキャリアを不活性化するため、電気抵抗成分として機能する電気抵抗要素の領域を狭めることになる。
【0114】
図8Bは、実施の形態1に係る抵抗素子100における不活性イオン移動前後の電流電圧特性を示す概念図である。上述の通り、不活性イオンの移動により、2次元電子ガス層107のキャリア濃度が下がるため、抵抗素子100の抵抗値が上昇してしまう場合がある。
【0115】
そこで、本変形例においては、素子分離層に関する構造である抵抗値安定化構造が設けられる。
【0116】
図9は、実施の形態1の変形例7に係る抵抗素子100gの平面図及び断面図である。より具体的には、
図9の(a)は、抵抗素子100gの平面図であり、
図9の(b)は、
図9の(a)のIX−IX線における抵抗素子100gの切断面を示す断面図である。
【0117】
変形例7に係る抵抗素子100gは、基板101と、第1窒化物半導体層102と、第2窒化物半導体層103と、素子分離層104gと、第1絶縁層106gと、2次元電子ガス層107と、第1電極113と、第2電極114と、を備える。抵抗素子100gは、抵抗値安定化構造を有する。抵抗素子100gにおいては、平面視で第1電極113と第2電極114との間の第1絶縁層106gの上方には導電層は、配置されない。
【0118】
素子分離層104gは、平面視で第1窒化物半導体層102を囲うように設けられた、不活性イオンを含む層である。また、素子分離層104gの上面と基板101の上面との距離d1は、2次元電子ガス層107の下面と基板101の上面との距離d2よりも小さい。つまり、本変形例においては、素子分離層104gと2次元電子ガス層107とは、接触しない。本変形例に係る抵抗値安定化構造は、素子分離層104gが上記構成を有する構造である。
【0119】
また、第1絶縁層106gは、第2窒化物半導体層103の上面、及び、第1窒化物半導体と2次元電子ガス層107と第2窒化物半導体層103との側面を覆うように構成されてもよい。
【0120】
このような、本変形例に係る抵抗素子100gは、以下の例によって作製される。まず、第1窒化物半導体層102と第2窒化物半導体層103とが、順に、基板101の上面に積層される(このとき2次元電子ガス層107も形成される)。次に、第1窒化物半導体層102及び第2窒化物半導体層103の一部は、エッチングされる。具体的には、2次元電子ガス層107が側面に露出するように、第2窒化物半導体層103から第1窒化物半導体層102の途中まで、第1窒化物半導体層102と第2窒化物半導体層103とがエッチングされる。このとき、第1窒化物半導体層102と第2窒化物半導体層103とにおいて、メサ構造122が形成される。ここで、エッチングされずに残った第1窒化物半導体層102がイオン注入され、第1窒化物半導体層102が不活性化されることで、素子分離層104gが形成される。
【0121】
抵抗素子100gにおいては、イオン注入された領域(つまり素子分離層104g)と2次元電子ガス層107とが接触することがないため、2次元電子ガス層107に不活性イオンが移動することを抑制することができる。すなわち、変動の少ない安定した抵抗値を示す抵抗素子100gを提供することができる。
【0122】
(実施の形態1の変形例8)
抵抗値安定化構造は、上記実施の形態1及び各変形例に示された構造に限られない。
【0123】
変形例8においては、抵抗値安定化構造は、高抵抗層を有する構造である。なお、本変形例では、実施の形態1及び各変形例と共通の構成要素については、その詳細な説明を省略する。
【0124】
まず、
図10A及び
図10Bを用いて、実施の形態1に係る抵抗素子100で起こり得る課題について説明する。
【0125】
図10Aは、実施の形態1に係る抵抗素子100における電気抵抗を説明する図である。より具体的には、
図10Aの(a)は、抵抗素子100の平面図である。
図10Aの(b)は、
図10Aの(a)におけるX−X線における抵抗素子100の切断面を示す断面図である。
【0126】
常温時において、2次元電子ガス層107を電気抵抗要素とした抵抗素子100の電流経路は、第1電極113及び第2電極114の一方と、2次元電子ガス層107と、第1電極113及び第2電極114の他方と、を経由する経路である。
【0127】
しかし、例えば、基板101がSi基板である場合、高温時において、基板101の抵抗値が下がる。そのため、2次元電子ガス層107を電気抵抗要素とした抵抗素子100の電流経路として、新たに、第1電極113及び第2電極114の一方と、基板101と、第1電極113及び第2電極114の他方と、を経由する電流経路が発生する場合がある。
【0128】
図10Bは、実施の形態1に係る抵抗素子100における常温時及び高温時の電流電圧特性を示す概念図である。上述の通り、高温時の抵抗素子100の抵抗値は、常温時の抵抗素子100の抵抗値よりも低くなり、その結果、高温時の抵抗素子100の電流値は、常温時の抵抗素子100の電流値よりも高くなる場合がある。
【0129】
そこで、本変形例においては、高抵抗層に関する構造である抵抗値安定化構造が設けられる。
【0130】
図11は、実施の形態1の変形例8に係る抵抗素子100hの断面図である。より具体的には、
図11は、
図1の(b)に相当する図である。
【0131】
本変形例に係る抵抗素子100hは、実施の形態1に係る抵抗素子100が備える構成要素と、高抵抗層123と、を有する。本変形例に係る抵抗素子100hにおいては、平面視で第1電極113と第2電極114との間の第1絶縁層106の上方には導電層は、配置されない。
【0132】
高抵抗層123は、基板101と第1窒化物半導体層102との間に設けられた層である。高抵抗層123は、基板101よりも高い電気抵抗率を有する。高抵抗層123の電気抵抗率は、例えば、1000Ωcm以上であってもよい。高抵抗層123は、第1窒化物半導体層102よりバンドギャップの大きな層(例えば、AlGaN層、AlN層)でもよく、AlN/AlGaNからなる超格子構造を有する層でもよい。また、高抵抗層123は、ヘリウム又は水素などの軽元素を高加速度で第1窒化物半導体層102における基板101側の領域に注入した層でもよく、基板101の上面にエピタキシャル成長された絶縁層でもよい。本変形例に係る抵抗値安定化構造は、高抵抗層123が上記構成を有する構造である。
【0133】
この構造では、高温時に基板101が低抵抗化しても、高抵抗層123には電流が流れないため、抵抗素子100hの抵抗値の変動を抑えることができる。
【0134】
すなわち、変動の少ない安定した抵抗値を示す抵抗素子100hを提供することができる。
【0135】
(実施の形態1の変形例9)
抵抗値安定化構造は、上記実施の形態1及び各変形例に示された構造に限られない。
【0136】
変形例9においては、抵抗値安定化構造は、低温特抵抗素子部を有する構造である。なお、本変形例では、実施の形態1及び各変形例と共通の構成要素については、その詳細な説明を省略する。
【0137】
まず、低温特抵抗素子部が用いられる背景について説明する。
【0138】
2次元電子ガス層を抵抗要素とする抵抗素子は、特許文献1にも示されているように、温度上昇に伴う抵抗値上昇が大きい(つまり、2次元電子ガス層の温度係数が大きい)という特徴がある。これは温度上昇に伴い、2次元電子ガス層の移動度が低下するためである。この変動をうまく利用するような回路構成とする場合は、上記の抵抗値上昇は問題ないが、単純に一定の抵抗値を示す抵抗素子として使用する場合は、上記の抵抗値上昇は問題となる。
【0139】
続いて当該問題を解消するための、本変形例について説明する。
【0140】
図12は、実施の形態1の変形例9に係る抵抗素子100iの平面図及び断面図である。より具体的には、
図12の(a)は、抵抗素子100iの平面図であり、
図12の(b)は、
図12の(a)のXII−XII線における抵抗素子100iの切断面を示す断面図である。
【0141】
本変形例に係る抵抗素子100iは、実施の形態1に係る抵抗素子100が備える構成要素と、低温特抵抗素子部300と、2つの配線層125と、を有する。本変形例に係る抵抗素子100iにおいては、平面視で第1電極113と第2電極114との間の第1絶縁層106の上方には導電層は、配置されない。
【0142】
低温特抵抗素子部300は、基板101の上方に設けられる。
図12が示すように、低温特抵抗素子部300は、素子分離層104と、第1絶縁層106と、薄膜抵抗層124と、第3電極130と、第4電極131と、を有する。
【0143】
薄膜抵抗層124は、素子分離層104の上方に設けられた層である。薄膜抵抗層124は、2次元電子ガス層107よりも温度係数の小さい材料によって構成される。薄膜抵抗層124は、例えば、TiNによって構成されるメタル抵抗である。薄膜抵抗層124は、例えば、Al、Au、W、Ti、Mo、Ta、TaN、Pt、Pd、Ni、Cr、Fe、Ag、Cu、SiN又はAlN等によって構成されてもよい。薄膜抵抗層124は、温度係数が負であるSiからなる半導体抵抗であってもよい。薄膜抵抗層124は、例えば、Si組成比が高いSiN、WSiN等によって構成されてもよい。薄膜抵抗層124は、所望の抵抗値となるように、幅、厚さ及び長さが決定される。薄膜抵抗層124の上方には、第3電極130及び第4電極131が積層されている。
【0144】
第3電極130と、第4電極131とは、薄膜抵抗層124の上方に設けられた引き出し電極である。第3電極130と第4電極131との間には、平面視で、間隔が空けられている。第3電極130と第4電極131とは、薄膜抵抗層124と電気的に接続されている。
【0145】
第3電極130と、第4電極131とは、電気伝導を有する材料によって構成される。第3電極130と、第4電極131とは、例えば、金属によって構成されてもよい。また、第3電極130と、第4電極131とは、例えば、Ti、Al、Cr及びAuのうち少なくとも1つを含む積層構造から構成されてもよい。なお、第3電極130と、第4電極131とは、同じ材料で構成されてもよいが、これに限られない。
【0146】
第1絶縁層106は、素子分離層104の上面に接して、平面視で第3電極130と第4電極131との間に設けられる。また、第1絶縁層106は、薄膜抵抗層124と、第3電極130及び第4電極131のそれぞれとを囲うように設けられている。
【0147】
このように構成された低温特抵抗素子部300の温度係数は、2次元電子ガス層107の温度係数よりも小さい(温度上昇による抵抗値上昇が小さい)。もしくは、低温特抵抗素子部300の温度係数は、負となる(温度上昇により抵抗値が減少する)。
【0148】
低温特抵抗素子部300の温度係数は、2次元電子ガス層107の温度係数よりも小さい。すなわち、低温特抵抗素子部300の抵抗値は、高温時においても、2次元電子ガス層107の抵抗値よりも、上昇し難い。
【0149】
また、第1電極113は、第3電極130と接続され、第2電極114は、第4電極131と接続されている。具体的には、2つの配線層125によって、それぞれの電極は、接続されている。例えば、2つの配線層125のうち一方が第1電極113と第3電極130とを接続し、他方が第2電極114と第4電極131とを接続する。換言すると、本変形例においては、第1電極113、2次元電子ガス層107及び第2電極114と、低温特抵抗素子部300とは、並列に接続されている。2つの配線層125は、第1絶縁層106の上方に跨って、各電極を接続してもよい。2つの配線層125の各々は、離間して設けられる。
【0150】
2つの配線層125は、電気伝導を有する材料によって構成される。2つの配線層125は、例えば、金属によって構成されてもよい。2つの配線層125は、例えば、Al、Au、Ag及びCuのうち少なくとも1つを含む積層構造から構成されてもよい。なお、2つの配線層125のそれぞれは、同じ材料で構成されてもよいが、これに限られない。本変形例に係る抵抗値安定化構造は、低温特抵抗素子部300が上記構成を有する構造である。
【0151】
これにより、2次元電子ガス層107の電気抵抗要素と低温特抵抗素子部300とによる合成抵抗値は、2次元電子ガス層107の電気抵抗要素の単独の抵抗値に比べ、高温時においても、変化し難い。
【0152】
すなわち、変動の少ない安定した抵抗値を示す抵抗素子100iを提供することができる。
【0153】
(実施の形態1の変形例10)
抵抗値安定化構造は、上記実施の形態1及び各変形例に示された構造に限られない。
【0154】
変形例10においては、抵抗値安定化構造は、第1電極及び第2電極に関する構造である。なお、本変形例では、実施の形態1及び各変形例と共通の構成要素については、その詳細な説明を省略する。
【0155】
図13は、実施の形態1の変形例10に係る抵抗素子100jの平面図及び断面図である。より具体的には、
図13の(a)は、抵抗素子100jの平面図であり、
図13の(b)は、
図13の(a)のXIII−XIII線における抵抗素子100jの切断面を示す断面図である。
【0156】
変形例10の抵抗素子100jは、基板101と、第1窒化物半導体層102と、第2窒化物半導体層103と、素子分離層104と、第1絶縁層106と、2次元電子ガス層107と、第1電極113jと、第2電極114jと、を備える。抵抗素子100jは、抵抗値安定化構造を有する。抵抗素子100jにおいては、平面視で第1電極113jと第2電極114jとの間の第1絶縁層106の上方には導電層は、配置されない。
【0157】
本変形例においては、第1電極113j及び第2電極114jの各々は、2次元電子ガス層107に接触するように第2窒化物半導体層103の上面から第1窒化物半導体層102の一部まで埋め込まれている。また、言い換えると、第1電極113j及び第2電極114jの各々は、第2窒化物半導体層103の上面から2次元電子ガス層107に到達するまで埋め込まれている。
【0158】
この場合においても、平面視で間隔を空けて設けられた第1電極113j及び第2電極114jの間にある2次元電子ガス層107が抵抗要素となる。
【0159】
この構成にすると、第1電極113j及び第2電極114jの抵抗成分から、第1電極113j及び第2電極114jのサイズにより変動する接触抵抗成分を除去することができ、抵抗値を安定化することができる。また、第1電極113jと第2電極114jとの距離が、一定となる。本変形例に係る抵抗値安定化構造は、第1電極113j及び第2電極114jが上記構成となる構造である。
【0160】
これにより、2次元電子ガス層107の抵抗値が、第1電極113j及び第2電極114jのサイズに依存し難い。
【0161】
すなわち、変動の少ない安定した抵抗値を示す抵抗素子100jを提供することができる。
【0162】
(実施の形態1の変形例11)
抵抗値安定化構造は、上記実施の形態1及び各変形例に示された構造に限られない。
【0163】
変形例11においては、抵抗値安定化構造は、第1絶縁層に関する構造である。なお、本変形例では、実施の形態1及び各変形例と共通の構成要素については、その詳細な説明を省略する。
【0164】
図14は、実施の形態1の変形例11に係る抵抗素子100kの平面図及び断面図である。より具体的には、
図14の(a)は、抵抗素子100kの平面図であり、
図14の(b)は、
図14の(a)のXIV−XIV線における抵抗素子100kの切断面を示す断面図である。
【0165】
抵抗素子100kは、基板101と、第1窒化物半導体層102と、第2窒化物半導体層103と、素子分離層104と、第1絶縁層106kと、第2絶縁層126と、2次元電子ガス層107と、第1電極113と、第2電極114と、を備える。抵抗素子100kは、抵抗値安定化構造を有する。抵抗素子100kにおいては、平面視で第1電極113と第2電極114との間の第1絶縁層106kの上方には導電層は、配置されない。
【0166】
本変形例においては、第1絶縁層106kは、平面視で第1電極113及び第2電極114の各々と間隔を空けて設けられる。つまり、第1絶縁層106kは、第1電極113及び第2電極114と接触しない。
【0167】
第2絶縁層126は、第2窒化物半導体層103の上方に、第1絶縁層106kと第1電極113及び第2電極114との隙間を埋めるように設けられる。また、第2絶縁層126は、平面視で第1電極113及び第2電極114をそれぞれ囲うように、設けられる。
【0168】
第2絶縁層126は、第1絶縁層106kの上方に設けられてもよい。
図14の(b)が示すように、第1電極113及び第2電極114の上方には、第2絶縁層126が設けられず、開口部が設けられている。そのため、第1電極113及び第2電極114のそれぞれの上面は、露出している。
【0169】
第2絶縁層126は、SiNによって構成される。第2絶縁層126は、例えば、SiO
2、SiON、AlN等によって構成されてもよい。ここで、第2絶縁層126と、第1絶縁層106kとは、同一材料、かつ、同一組成としてもよいが、これに限られない。本変形例に係る抵抗値安定化構造は、第1絶縁層106kが上記構成となる構造である。
【0170】
ここで、本変形例に係る抵抗素子100kの製造方法について簡単に説明する。第1電極113及び第2電極114が2次元電子ガス層107とオーミック接続するためには500℃程度の熱処理が必要である。例えば、第1電極113及び第2電極114が第1絶縁層106kと接触する場合、この熱処理の際、第1電極113及び第2電極114を構成する金属が、第1絶縁層106k中に熱拡散することがある。第1絶縁層106k中に金属が拡散した場合、第1電極113及び第2電極114の間のショート又は第1絶縁層106kの破壊耐圧が低下するなど、抵抗素子100kの信頼性に悪影響を及ぼす可能性がある。そこで、本変形例に係る抵抗素子100kの製造方法では、上記構成のように、第1絶縁層106kは、第1電極113及び第2電極114と接触しないように形成され、次に、上記熱処理が行われる。その後、第2絶縁層126が形成される。
【0171】
これにより、熱処理による第1絶縁層106k中への金属の拡散が抑制され、信頼性の高い抵抗素子100kが得られる。
【0172】
(実施の形態2)
ここで実施の形態1及び各変形例の抵抗素子が用いられる電力増幅回路について、説明する。なお、本実施の形態では、実施の形態1及び各変形例と共通の構成要素については、その詳細な説明を省略する。
【0173】
図15Aは、実施の形態2に係る電力増幅回路500が示される回路図である。
図15Bは、実施の形態2に係る電力増幅回路500の利得の温度依存性を示す図である。なお、
図15Bにおける温度とは、電力増幅回路500の温度である。
【0174】
電力増幅回路500は、実施の形態1で示した抵抗素子100と、抵抗素子100が備える基板101の上方に設けられた電界効果トランジスタ401と、コンデンサ403と、を有する。
【0175】
電界効果トランジスタ401は、ソース電極、ドレイン電極及びゲート電極を有する。抵抗素子100が備える第1電極113及び第2電極114の一方はゲート電極と、他方はコンデンサ403を介してドレイン電極と電気的に接続される。
【0176】
電力増幅回路500は、電界効果トランジスタ401のゲート電極及びドレイン電極に接続されるゲート端子404及びドレイン端子405と、抵抗402と、を有してもよい。本実施の形態においては、抵抗素子100は、
図15Aが示す抵抗402である。
【0177】
ここで負帰還回路について説明する。出力信号を帰還抵抗で減衰させて入力側に帰還入力する負帰還回路は、高周波回路の安定化に用いられる。負帰還回路において、帰還抵抗値が小さくなると電力増幅回路500の安定性が増し、利得が減少する。
【0178】
本実施の形態においては、抵抗402とコンデンサ403とで構成される負帰還回路は、信号増幅器用の電界効果トランジスタ401のゲート端子404とドレイン端子405とに接続される。
【0179】
半導体を用いた電力増幅回路500は、高温時にキャリア移動度の低下により利得が低下する。例えば、抵抗402に比べてより温度係数が小さい抵抗を有する比較例の回路では、
図15Bが示すように、高温時での利得低下が大きい。しかし、電力増幅回路500は、温度係数が大きい2次元電子ガス層107を備える抵抗素子100を有する。そのため、電力増幅回路500では、高温時に2次元電子ガス層107の抵抗値が上昇し、負帰還回路における帰還量が小さくなるため、高温時での利得低下が緩和される。
【0180】
(実施の形態3)
ここで実施の形態1及び各変形例の抵抗素子が用いられる電力増幅回路について、説明する。実施の形態2においては、抵抗素子は、負帰還回路を構成したが、これに限られない。実施の形態3においては、抵抗素子は、電界効果トランジスタのゲート電圧を与え、ドレイン電流を設定するバイアス回路を構成する。なお、本実施の形態では、実施の形態1及び各変形例と共通の構成要素については、その詳細な説明を省略する。
【0181】
図16Aは、実施の形態3に係る電力増幅回路500aが示される回路図である。
図16Bは、実施の形態3に係る電力増幅回路500aが有する電界効果トランジスタ406のゲート電圧の温度依存性及び電界効果トランジスタ406のドレイン電流の温度依存性を示す図である。より具体的には、
図16Bの(a)は、電界効果トランジスタ406のゲート電圧の温度依存性を示し、
図16Bの(b)は、電界効果トランジスタ406のドレイン電流の温度依存性を示す。なお、
図16Bにおける温度とは、電力増幅回路500aの温度である。
【0182】
電力増幅回路500aは、電界効果トランジスタ406と、バイアス回路と、を有する。電力増幅回路500aは、第1ゲートバイアス端子407と、第2ゲートバイアス端子408と、第1抵抗409と、第2抵抗410と、電界効果トランジスタ406のゲート電極及びドレイン電極に接続されるゲート端子404a及びドレイン端子405aと、を有してもよい。
【0183】
バイアス回路は、実施の形態1で示した抵抗素子100を含む。バイアス回路は、電界効果トランジスタ406のゲート電圧を与え、ドレイン電流を設定する。
【0184】
抵抗素子100は、第1抵抗409及び第2抵抗410の少なくとも一方である。
【0185】
電界効果トランジスタ406は、抵抗素子100が備える基板101の上方に設けられる。電界効果トランジスタ406は、ソース電極、ドレイン電極及びゲート電極を有する。
【0186】
第1ゲートバイアス端子407は第2ゲートバイアス端子408より高い電圧が印加され、ゲートバイアス端子の一方は接地されていても良い。
【0187】
例えば、第2抵抗410が抵抗素子100であり、第1抵抗409の温度係数が第2抵抗410の温度係数より小さい場合について説明する。この場合、
図16Bが示すように、温度上昇により電界効果トランジスタ406のゲート電圧は上昇し、両者の温度係数が等しい場合と比べ、高温時における、電界効果トランジスタ406のドレイン電流を増加させることができる。
【0188】
また例えば、第1抵抗409が抵抗素子100であり、第1抵抗409の温度係数が第2抵抗410の温度係数より大きい場合について説明する。この場合、温度上昇により電界効果トランジスタ406のゲート電圧は下降し、両者の温度係数が等しい場合と比べ、高温時における、電界効果トランジスタ406のドレイン電流を減少させることができる。
【0189】
上記構成とすることで、電界効果トランジスタ406のドレイン電流を容易に制御することが可能となる。
【0190】
なお、第1抵抗409及び第2抵抗410のそれぞれが、抵抗素子100であってもよい。この場合、第1抵抗409と第2抵抗410との温度係数は、異なっていてもよい。
【0191】
(実施の形態4)
実施の形態1及び各変形例では、平面視で第1電極と第2電極との間の第1絶縁層の上方には導電層は、配置されない抵抗素子の例が示された。しかしながら、これに限られない。実施の形態4においては、抵抗素子は、導電制御層を備える点が実施の形態1とは異なる。なお、本実施の形態では、実施の形態1及び各変形例と共通の構成要素については、その詳細な説明を省略する。
【0192】
図17は、実施の形態4に係る抵抗素子100mの平面図及び断面図である。より具体的には、
図17の(a)は、抵抗素子100mの平面図であり、
図17の(b)は、
図17の(a)のXVII−XVII線における抵抗素子100mの切断面を示す断面図である。
【0193】
抵抗素子100mは、抵抗素子部1000と、導電制御層(以下、第1導電制御層127と記載)と、を備える。抵抗素子100mは、抵抗値安定化構造を有する。抵抗素子部1000は、基板101と、第1窒化物半導体層102と、第2窒化物半導体層103と、素子分離層104と、第1絶縁層106と、2次元電子ガス層107と、第1電極113と、第2電極114と、を有する。
【0194】
第1導電制御層127は、平面視で第1電極113と第2電極114との間の絶縁層(第1絶縁層106)の上方に設けられる。本実施の形態においては、第1導電制御層127は、絶縁層(第1絶縁層106)に接して設けられる。なお、第1導電制御層127は、第2窒化物半導体層103よりも上方であって、かつ、平面視で第1電極113と第2電極114との間である領域に設けられてもよい。また、平面視で第1電極113と第2電極114とが並ぶ方向(
図17においては、x軸方向の長さ)の第1導電制御層127の長さは、第1電極113と第2電極114との間隔の1/2以上である。また、
図17が示すように、当該方向の第1導電制御層127の長さは、第1電極113と第2電極114との間隔の3/4以上であってもよい。
【0195】
第1導電制御層127は、抵抗素子部1000の外部から供給される電圧に応じて、2次元電子ガス層107に電界を与えて電気抵抗要素の抵抗値を制御する。つまり、第1導電制御層127は、意図的に、電気抵抗要素の抵抗値を制御することができる。
【0196】
図18は、実施の形態4に係る抵抗素子100mの第1導電制御層127に電位を与えた場合の2次元電子ガス層107の発生状況を示す図である。より具体的には、
図18の(a)は、第1導電制御層127が正の電位を与えられた場合を示す図であり、
図18の(b)は、第1導電制御層127が負の電位を与えられた場合を示す図である。例えば、
図18の(a)が示すように、第1導電制御層127が正の電位を与えられた場合、第1窒化物半導体層102と第2窒化物半導体層103との界面の伝導帯がフェルミ準位より下がることで、2次元電子ガス層107中では、キャリアがより多く発生する。逆に、
図18の(b)が示すように、第1導電制御層127が負の電位を与えられた場合、各構成要素のバンドが持ち上がり(つまり、各構成要素のエネルギー準位が高くなるようにシフトし)、伝導帯がフェルミ準位より上側(高いエネルギー側)になるため2次元電子ガス層107中では、キャリアが減少する。このように、第1導電制御層127に与える電位を変化させることで、2次元電子ガス層107の抵抗値は、任意の値を示す。
【0197】
すなわち、所望の抵抗値を有する抵抗素子100mを提供することができる。また、本実施の形態に係る抵抗素子100mは、可変抵抗素子であるともいえる。
【0198】
第1導電制御層127は、抵抗素子部1000の外部から、電圧が供給される。例えば、第1導電制御層127は、抵抗素子部1000の外部から固定電位を供給されてもよく、抵抗素子部1000の外部から制御電位を供給されてもよい。第1導電制御層127が与えられる電位は、グランド電位であってもよい。また、第1導電制御層127は、第1電極113及び第2電極114から、電圧が供給されない。
【0199】
なお、本実施の形態に係る第1導電制御層127は、電界効果トランジスタのゲート電極ではない。上記記載のように、本実施の形態においては、第1導電制御層127は、2次元電子ガス層107に電界を与えて電気抵抗要素の抵抗値を制御するが、第1電極113と第2電極114との間の導通を遮断しないので、抵抗素子100mは、ノーマリーオフ型の電界効果トランジスタではない。
【0200】
また、第1導電制御層127は、第1絶縁層106の上方に設けられ、第2窒化物半導体層103から絶縁されているので、抵抗素子100mは、接合型の電界効果トランジスタではない。よって、抵抗素子100mの抵抗値を制御するための第1導電制御層127に与える電位は僅かで良く、抵抗素子100mは、制御回路に利用しやすい可変抵抗素子である。
【0201】
なお、第1電極113と第2電極114とが並ぶ方向の第1導電制御層127の長さが長いほど、平面視したときに、第1導電制御層127が2次元電子ガス層107を覆う面積が大きくなる。そのため、第1導電制御層127の長さが長いほど、2次元電子ガス層107に、容易に電界を与えることが可能になるため、より容易に、2次元電子ガス層107の抵抗値を制御できる。
【0202】
なお、本実施の形態に係る抵抗値安定化構造は、実施の形態1の各変形例で示した抵抗値安定化構造が用いられてもよい。本実施の形態においては、例えば、第1導電制御層127に電位が与えられることで、2次元電子ガス層107の抵抗値を所望の値とし、さらに、抵抗値安定化構造は、所望の値となった抵抗値を一定にするために用いられる。
【0203】
(実施の形態4の変形例1)
実施の形態4では、抵抗素子が1つの導電制御層を備える例が示されたが、これに限られない。本変形例においては、抵抗素子が複数の導電制御層を備える点が実施の形態4とは異なる。なお、本変形例では、実施の形態4と共通の構成要素については、その詳細な説明を省略する。
【0204】
図19は、実施の形態4の変形例1に係る抵抗素子100nの平面図及び断面図である。より具体的には、
図19の(a)は、抵抗素子100nの平面図であり、
図19の(b)は、
図19の(a)のXIX−XIX線における抵抗素子100nの切断面を示す断面図である。
【0205】
抵抗素子100nは、実施の形態4に係る抵抗素子100mが備える構成要素と、第2絶縁層126と、第2導電制御層128と、を備える。
【0206】
第2絶縁層126は、第1絶縁層106と第1導電制御層127との上方に設けられる。
図19が示すように、第2絶縁層126は、第1導電制御層127を覆うように、設けられる。また、第2絶縁層126は、平面視で第1電極113及び第2電極114をそれぞれ囲うように、設けられる。
図19の(b)が示すように、第1電極113及び第2電極114の上方には、第2絶縁層126が設けられず、開口部が設けられている。そのため、第1電極113及び第2電極114のそれぞれの上面は、露出している。
【0207】
第2絶縁層126は、SiNによって構成される。第2絶縁層126は、例えば、SiO
2、SiON、AlN等によって構成されてもよい。ここで、第2絶縁層126と、第1絶縁層106とは、同一材料、かつ、同一組成としてもよいが、これに限られない。
【0208】
第2導電制御層128は、平面視で第1電極113と第2電極114との間の絶縁層(第2絶縁層126)の上に設けられる。また、平面視で第1電極113と第2電極114とが並ぶ方向(
図19においては、x軸方向の長さ)の第2導電制御層128の長さは、第1電極113と第2電極114との間隔の1/2以上である。また、平面視で、第1導電制御層127と、第2導電制御層128とは、重なるように配置されてもよい。
【0209】
第2導電制御層128は、抵抗素子部1000の外部から供給される電圧に応じて、2次元電子ガス層107に電界を与えて電気抵抗要素の抵抗値を制御する。
【0210】
実施の形態4で示したように、第1導電制御層127と第2導電制御層128とに与える電位を変化させることで、2次元電子ガス層107の抵抗値が任意の値を示す。
【0211】
すなわち、所望の抵抗値を有する抵抗素子100nを提供することができる。また、本実施の形態に係る抵抗素子100nは、可変抵抗素子であるともいえる。
【0212】
なお、第2導電制御層128に与えられる電位は、第1導電制御層127の電位と実質的に同一でもよく、異なってもよい。
【0213】
また、ここで、本変形例に係る抵抗素子100nと、電界効果トランジスタ200nとが、同一基板(本変形例においては、基板101)上に設けられた例について示す。
【0214】
図20は、実施の形態4の変形例1に係る抵抗素子100nと電界効果トランジスタ200nとの平面図及び断面図である。より具体的には、
図20の(a)は、抵抗素子100nと電界効果トランジスタ200nとの平面図であり、
図20の(b)は、
図20の(a)のXX−XX線における抵抗素子100nと電界効果トランジスタ200nとの切断面を示す断面図である。
【0215】
本変形例に係る電界効果トランジスタ200nは、抵抗素子100nが備える基板101の上方に設けられる。つまり、抵抗素子100nと電界効果トランジスタ200nとは、同一基板上に設けられる、ワンチップ型の半導体である。
【0216】
電界効果トランジスタ200nは、基板101と、第1窒化物半導体層102と、第2窒化物半導体層103と、2次元電子ガス層107と、ソース電極110と、ゲート電極111と、ドレイン電極112と、第1絶縁層106と、第2絶縁層126と、素子分離層104と、フィールドプレート電極129と、を備える。
【0217】
なお、実施の形態1の変形例1で示した電界効果トランジスタ200が備える構成要素については、詳細な説明は省略する。
【0218】
本変形例においては、抵抗素子100nと電界効果トランジスタ200nとは、素子分離層104で電気的に分離されている。
【0219】
フィールドプレート電極129は、電界集中を緩和することで、電界効果トランジスタ200nの耐圧を向上させる。
【0220】
図20が示すように、例えば、同じ符号が付された構成要素は、抵抗素子100nと電界効果トランジスタ200nとにおいて、同時に形成されてもよい。
【0221】
抵抗素子100nの第1電極113及び第2電極114と、電界効果トランジスタ200nのソース電極110及びドレイン電極112とは、同じ積層構造でもよく、同一工程で同時形成されてもよい。
【0222】
抵抗素子100nの第1導電制御層127と電界効果トランジスタ200nのゲート電極111とは同じ積層構造でもよく、同一工程で同時形成されてもよい。
【0223】
抵抗素子100nの第2導電制御層128と電界効果トランジスタ200nのフィールドプレート電極129とは同じ積層構造でもよく、同一工程で同時形成されてもよい。
【0224】
このように、本変形例に係る抵抗素子100nと電界効果トランジスタ200nとは、同一基板上に設けられることが可能である。また、抵抗素子100n及び電界効果トランジスタ200nの各々が有する構成要素は、同一工程で同時形成されてもよいため、抵抗素子100nと電界効果トランジスタ200nとは、容易に製造されることができる。
【0225】
(実施の形態5)
ここで実施の形態4及び実施の形態4の変形例1に係る抵抗素子が用いられる電力増幅回路について、説明する。なお、本実施の形態では、実施の形態4及び実施の形態4の変形例1と共通の構成要素については、その詳細な説明を省略する。
【0226】
図21Aは、実施の形態5に係る電力増幅回路500bが示される回路図であり、
図21Bは、実施の形態5に係る電力増幅回路500bの利得の温度依存性を示す図である。なお、
図21Bにおける温度とは、電力増幅回路500bの温度である。
【0227】
電力増幅回路500bは、実施の形態4で示した抵抗素子100mと、抵抗素子100mが備える基板101の上方に設けられた電界効果トランジスタ411と、コンデンサ413と、を有する。
【0228】
電界効果トランジスタ411は、ソース電極、ドレイン電極及びゲート電極を有する。抵抗素子100mが備える第1電極113及び第2電極114の一方はゲート電極と、他方はコンデンサ413を介してドレイン電極と電気的に接続される。
【0229】
また、電力増幅回路500bは、電界効果トランジスタ411のゲート電極及びドレイン電極に接続されるゲート端子414及びドレイン端子415と、電圧発生回路417と、抵抗412と、を有してもよい。本実施の形態においては、抵抗素子100mは、
図21Aが示す抵抗412である。抵抗素子100mが備える第1導電制御層127は、導電制御層416である。
【0230】
導電制御層416は、電圧発生回路417に接続される。電圧発生回路417は、負の温度係数を持つ。
【0231】
一例として、電圧発生回路417は、抵抗418と、ダイオード419と、を有する。抵抗418は、抵抗418の一方の端子が正のバイアス印加端子420に接続され、他方の端子が導電制御層416に接続される。ダイオード419は、ダイオード419のアノードが導電制御層416に接続され、ダイオード419のカソードが接地される。
【0232】
本実施の形態においては、抵抗412とコンデンサ413とで構成される負帰還回路は、信号増幅器用の電界効果トランジスタ411のゲート端子414とドレイン端子415とに接続される。
【0233】
ここで、抵抗412に比べてより温度係数が小さい抵抗を有する比較例の回路では、
図21Bが示すように、高温時での利得低下が大きい。しかし、電力増幅回路500bでは、実施の形態2に係る電力増幅回路500と同様に、高温時に、抵抗素子100mが備える2次元電子ガス層107の抵抗値が上昇し、負帰還回路における帰還量が小さくなるため、高温時での利得低下が緩和される。
【0234】
さらに、本実施の形態においては、電圧発生回路417が負の温度係数を持つため、高温時においては、導電制御層416に印加される電圧が低下する。これにより、2次元電子ガス層107の抵抗値が上昇して、負帰還回路における帰還量が小さくなり、高温時の利得低下が緩和される。従って、負帰還回路の抵抗412に温度係数の大きな2次元電子ガス層107を備える抵抗素子100mが用いられ、さらに、電圧発生回路417により2次元電子ガス層107に与える電界を変化させることにより、高温時に、利得の低下を抑制する事が出来る。
【0235】
(実施の形態6)
ここで実施の形態4及び実施の形態4の変形例1に係る抵抗素子が用いられる電力増幅回路について、説明する。実施の形態5においては、抵抗素子は、負帰還回路を構成したが、これに限られない。実施の形態6においては、抵抗素子は、電界効果トランジスタのゲート電圧を与え、ドレイン電流を設定するバイアス回路を構成する。なお、本実施の形態では、実施の形態4及び各変形例と共通の構成要素については、その詳細な説明を省略する。
【0236】
図22Aは、実施の形態6に係る電力増幅回路500cが示される回路図である。
図22Bは、実施の形態6に係る電力増幅回路500cが有する電界効果トランジスタ421の制御電圧とドレイン電流との関係を示す図である。
【0237】
電力増幅回路500cは、電界効果トランジスタ421と、バイアス回路と、を有する。電力増幅回路500cは、第1ゲートバイアス端子422と、第2ゲートバイアス端子423と、第1抵抗424と、第2抵抗427と、導電制御層425と、制御端子426と、電界効果トランジスタ421のゲート電極及びドレイン電極に接続されるゲート端子414c及びドレイン端子415cと、を有してもよい。
【0238】
バイアス回路は、実施の形態4で示した抵抗素子100mを含む。バイアス回路は、電界効果トランジスタ421のゲート電圧を与え、ドレイン電流を設定する。
【0239】
抵抗素子100mは、第1抵抗424及び第2抵抗427の少なくとも一方である。本実施の形態においては、第1抵抗424が抵抗素子100mである。また、抵抗素子100mが備える第1導電制御層127は、導電制御層425である。導電制御層425は、制御端子426に接続される。
【0240】
電界効果トランジスタ421は、抵抗素子100mが備える基板101の上方に設けられる。電界効果トランジスタ421は、ソース電極、ドレイン電極及びゲート電極を有する。
【0241】
第1ゲートバイアス端子422は第2ゲートバイアス端子423より高い電圧が印加され、ゲートバイアス端子の一方は接地されていても良い。
【0242】
本実施の形態においては、さらに、
図22Bが示すように、制御端子426に印加される電圧(制御電圧)が変化することにより、第1抵抗424の抵抗値が変化し、電界効果トランジスタ421のゲート電圧が変化し、ドレイン電流が変化する。つまり、制御端子426に印加される電圧の制御により電界効果トランジスタ421のドレイン電流を制御することが可能となる。
【0243】
さらに、ここで、以下の条件である場合について説明する。具体的には、電界効果トランジスタ421がノーマリーオンタイプの電界効果トランジスタであり、第2ゲートバイアス端子423には負の電位が与えられている場合である。この場合、制御端子426に、正の電位が与えられることで、電界効果トランジスタ421のドレイン電流値を制御することができる。
【0244】
なお、第2抵抗427が抵抗素子100mであってもよい。その際は、制御端子426に印加される電圧に対するドレイン電流の変化は、逆の極性となる。
【0245】
(実施の形態7)
ここで実施の形態4及び実施の形態4の変形例1に係る抵抗素子が用いられる電力増幅回路について、説明する。実施の形態6においては、抵抗素子が備える導電制御層は、制御端子に接続されたがこれに限られない。実施の形態7においては、抵抗素子が備える導電制御層は、正の温度係数を持つ電圧発生回路に接続される。なお、本実施の形態では、実施の形態4及び各変形例と共通の構成要素については、その詳細な説明を省略する。
【0246】
図23Aは、実施の形態7に係る電力増幅回路500dが示される回路図である。
図23Bは、実施の形態7に係る電界効果トランジスタ428のゲート電圧の温度依存性及び電界効果トランジスタ428のドレイン電流の温度依存性を示す図である。なお、
図23Bにおける温度とは、電力増幅回路500dの温度である。
【0247】
より具体的には、
図23Bの(a)は、電界効果トランジスタ428のゲート電圧の温度依存性を示し、
図23Bの(b)は、電界効果トランジスタ428のドレイン電流の温度依存性を示す。
【0248】
電力増幅回路500dは、電界効果トランジスタ428と、バイアス回路と、を有する。電力増幅回路500dは、第1ゲートバイアス端子429と、第2ゲートバイアス端子430と、第1抵抗431と、第2抵抗433と、導電制御層432と、電圧発生回路434と、電界効果トランジスタ428のゲート電極及びドレイン電極に接続されるゲート端子444及びドレイン端子445と、を有してもよい。
【0249】
バイアス回路は、実施の形態4で示した抵抗素子100mを含む。バイアス回路は、電界効果トランジスタ428のゲート電圧を与え、ドレイン電流を設定する。
【0250】
抵抗素子100mは、第1抵抗431及び第2抵抗433の少なくとも一方である。本実施の形態においては、第1抵抗431が抵抗素子100mである。また、抵抗素子100mが備える第1導電制御層127は、導電制御層432である。導電制御層432は、電圧発生回路434に接続される。
【0251】
電圧発生回路434は、正の温度係数を持つ。一例として、電圧発生回路434は、ダイオード436と、抵抗437と、を有する。ダイオード436は、ダイオード436のアノードが正のバイアス印加端子435に接続され、ダイオード436のカソードが導電制御層432に接続される。抵抗437は、抵抗437の一方の端子が導電制御層432に接続され、他方の端子が接地される。
【0252】
第1ゲートバイアス端子429は、第2ゲートバイアス端子430より高い電圧が印加され、ゲートバイアス端子の一方は接地されていても良い。
【0253】
電界効果トランジスタ428は、抵抗素子100mが備える基板101の上方に設けられる。電界効果トランジスタ428は、ソース電極、ドレイン電極及びゲート電極を有する。
【0254】
実施の形態3に係る電力増幅回路500aで示したように、第1抵抗431及び第2抵抗433の温度係数の制御により、電界効果トランジスタ428のドレイン電流を容易に制御することが可能となる。
【0255】
さらに、本実施の形態においては、電圧発生回路434が正の温度係数を持つため、高温時においては、導電制御層432に印加される電圧が上昇する。その結果、第1抵抗431の抵抗が低下する事により、
図23Bが示すように、電界効果トランジスタ428のゲート電圧が上昇する。ここで、ゲート電圧が固定された比較例の回路について説明する。例えば、
図23Bが示すように、ゲート電圧が固定された比較例の回路においては、高温時の電流低下が大きい。これに対して、本実施の形態に係る電界効果トランジスタ428は、高温時の電流低下を抑制することができる。
【0256】
なお、第2抵抗433が抵抗素子100mであってもよい。その際は、導電制御層432が負の温度係数を持つ電圧発生回路に接続された場合に、同様の効果がある。
【0257】
(その他の実施の形態)
以上、本開示に係る抵抗素子等について、実施の形態及び各変形例に基づいて説明したが、本開示は、これらの実施の形態及び各変形例に限定されるものではない。本開示の主旨を逸脱しない限り、当業者が思いつく各種変形を実施の形態に施したものや、実施の形態及び各変形例における一部の構成要素を組み合わせて構築される別の形態も、本開示の範囲に含まれる。
【0258】
具体的には、実施の形態1の変形例1で示した抵抗値安定化構造と、実施の形態1の変形例2又は変形例3で示した抵抗値安定化構造とが、組み合わされた抵抗値安定化構造であってもよい。この場合、Siダングリングボンドによって表面準位がキャンセルされ、かつ、トラップされた電子がキャンセルされることで、2次元電子ガス層の抵抗値がさらに変化し難くなる。そのため、さらに、変動の少ない安定した抵抗値を示す抵抗素子を提供することができる。
【0259】
また、他の具体例としては、実施の形態1の変形例1で示した抵抗値安定化構造と、実施の形態1の変形例4又は変形例5で示した抵抗値安定化構造とが、組み合わされた抵抗値安定化構造であってもよい。この場合、Siダングリングボンドによって表面準位がキャンセルされ、かつ、トラップされた電子が引き抜かれることで、2次元電子ガス層の抵抗値がさらに変化し難くなる。そのため、さらに、変動の少ない安定した抵抗値を示す抵抗素子を提供することができる。
【0260】
なお、実施の形態2及び3においては、電力増幅回路は、実施の形態1に係る抵抗素子100を有する例が示されたが、これに限られない。例えば、実施の形態2及び3に係る電力増幅回路は、実施の形態1の各変形例に係る抵抗素子を有してもよい。
【0261】
また、実施の形態5、6及び7においては、電力増幅回路は、実施の形態4に係る抵抗素子100mを有する例が示されたが、これに限られない。例えば、実施の形態5、6及び7に係る電力増幅回路は、実施の形態4の変形例1に係る抵抗素子100nを有してもよい。
【0262】
また、
図15A、
図16A、
図21A、
図22A及び
図23Aの回路図においては、電界効果トランジスタは、Nチャネルの接合型の電界効果トランジスタの記号によって記されているが、これに限られるものではない。例えば、これらの回路図における電界効果トランジスタ(すなわち、実施の形態2、3、5、6及び7の電界効果トランジスタ)は、Pチャネルの接合型の電界効果トランジスタであってもよく、Nチャネル型のMOS(metal oxide semiconductor)型の電界効果トランジスタであってもよく、Pチャネル型のMOS型の電界効果トランジスタであってもよい。なお、上記MOS型の電界効果トランジスタにおいては、ゲート電極の材料は、金属で構成されてもよく、半導体で構成されてもよい。
【0263】
また、上記の実施の形態は、請求の範囲又はその均等の範囲において種々の変更、置き換え、付加、省略などを行うことができる。