【実施例1】
【0013】
本願発明に関わる除雪機の除雪部を説明する。
図1に除雪機を除雪部側から見た全体図を示す。
図2に除雪部(オーガ)の構成を示す。除雪作業は螺旋翼刃形状のオーガ1を回転させながら降積雪場所に食い込ませ前進させる。オーガ1は雪を削雪すると共に雪を中央のブロワ2に収集し、ブロワ2によりシュータ3から左右、遠近、作業者の意図する場所に投雪させる(
図1)。
【0014】
オーガ1はオーガ翼11をオーガシャフト12の回りに翼補強板13で溶接固着形成し、オーガシャフト12の一端をベベルギヤ式オーガミッション14の左右両出力軸に、左右一対且つ左右対称にフランジ固定している。オーガ翼11は積もり雪を削雪すれば良いことから、路面保護、パワートレイン保護、などの意味からいたずらに強度や硬度を上げることはせず、軟鋼板で作られており消耗部品扱いにしている。オーガ翼11は積もり雪を削雪したり掻き崩したりする翼刃として以外に、削雪した雪をオーガ中央、オーガミッション14奥のブロワ2へ、オーガケース15面と除雪進行する削雪面をガイドとして移送する螺旋コンベアとしての働きをする(
図2)。ブロワ2はオーガ翼11により削雪、収集した雪を回転遠心力と遠心圧縮機としての圧縮送風力とによりブロワケース21周方向出口に吐出させ半円筒状のシュータ3をガイドとして投雪させる。シュータ3は左右、上下(遠近)方向の調整が出来、自由に投雪場所を設定できる。
【0015】
オーガ1はオーガミッション14を中心に、除雪機進行方向に対し左右対称に構成されており
図2では符号の区別をしている。(即ち左側部品L、右側部品R) オーガ翼11は削雪効果、コンベア搬送効果、製造技術などから、形状は現在ほぼオーガシャフト12を軸対称とする2条巻きの構成に淘汰している。左側オーガ翼11Lは中央から外側に2条左巻きに、右側オーガ翼11Rは中央から外側に2条右巻きに形成されている。オーガミッション14から左右に伸びるオーガシャフト12L−Rの回りにオーガ翼11L−Rの螺旋翼刃形状を2条に固定する翼補強板13L−Rは中央オーガミッション14側から外側に向かって第1翼補強板131L−R、第2翼補強板132L−R、第3翼補強板133L−R、第4翼補強板134L−R、第5翼補強板135L−R、の5組、オーガシャフト軸対称に一対ずつ形成している。これも淘汰された構成であるが、小型除雪機では4組の物もある。この構成で回転は雪面に対し上から下へと喰らい込む方向で、削雪すると同時に雪はオーガ1中央、ブロワ2へと移送される。オーガ1のこの構成と一連の除雪動作が、単にオーガ1に雪が付着する以上に、付着し始めたオーガ1への雪付着を益々増幅させ(
図5下図片側)、やがてシュータ3内の雪詰まりに至る原因になっている。
【0016】
本願発明の実施例を
図3で説明する。実施は左右対称の為、右側の符号は省略している。
左側の第一翼補強板131L−R、第2翼補強板132L−R、第3翼補強板133L−R、第4翼補強板134L−R、のそれぞれのオーガシュフト12L−Rとの接合側からオーガ翼11L−Rの接合側にかけての長さ部分の一部又は全長部分に、高分子量ポリエチレンシート製の第1補強板難着雪カバー51L−R、第2補強板難着雪カバー52L−R、第3補強板難着雪カバー53L−R、第4補強板難着雪カバー54L−Rを嵌め込むように形成しいる。但し第一翼補強板131L−Rだけはフランジとの溶接固着部分がある為、その固着部分の前後2箇所に難着雪カバー51L−Rを形成している。更に、難着雪カバーを形成した翼補強板間のオーガシャフト12L−R部に第1オーガシャフト難着雪カバー41L−R、第2オーガーシャフト難着雪カバー42L−Rを同じように嵌め込むように形成している。以上の構成でオーガ1への雪付着も、シュータ3内の雪詰まりも解消することが出来た。特に金属に付着しやすいような新雪、こしまり雪、春先のくされ雪(湿り雪)などでは絶大な効果を発揮する。
【0017】
本出願人は結果的には単純なこの発明を、降積雪シーズンを通した試験観察と幾つかの対策の上、雪付着と雪詰まりのメカニズムを解明した。雪付着はまず摺動抵抗のほとんど無いオーガシャフト12から始まる。付着が始まるとオーガ翼11のコンベア作用によりオーガ中央方向へと付着成長していく。オーガシャフト12は付着成長した付着雪の固まりを支える芯の働きをし、翼補強板13はその筋の働きをし、やがて中央部、オーガミッション14両出力軸フランジ面をピークとした略スロープ状の付着雪の固まりになりブロワ2の入り口を塞ぐ(
図5下図片側)。これに対しオーガ翼11は積雪を削接しつつ絶えず雪面と摺っているため付着することはほとんど無い。入り口が塞がれたブロワ2の吐出力は大きく低下し、又シュータ3内に送り込む雪も少なくなることから、シュータ3内の排出力が低下し投雪力がなくなり、上部からシュータ3内雪付着が始まり、やがてブロワケース21迄付着し、シュータ3内完全雪詰まりになり、エンジンストップに至る。この間、数秒程度の現象である。
【0018】
本願発明の優れたところは、雪付着はもとよりその成長を抑えたことにある。雪付着を防ごうとする方策としては当然のことながら、付着する部分の表面を付着しにくいように処理しようとするのが自然な発想である(特許文献1、特許文献2)。本出願人もまた各々付着面に低吸着、低摩擦のフィルムやシート(例えばフッ素系樹脂)などを貼り付けるような試みから始まった。しかし幾度の実地評価からそれだけでは根本解決にはならないと判断、更に回数を重ねた実験観察の結果、前記雪付着−雪詰まりメカニズムの認識に至り、それまでシュータ3及びブロワケース21の雪詰まりに直接関係ないと見られていた、回転刃の作業部であるオーガ1に着目した。雪詰まりは雪付着とその成長を根本原因とする結果であり、それを止める対策が本発明である。特に雪付着最大成長するオーガ1中央部、オーガミッション14両側の第1翼補強板難着雪カバー51L−R、第2補強板難着雪カバー52L−Rと、第1オーガシャフト難着雪カバー41L−Rが最も根本的な対策要因になっている。
【0019】
本願発明の効果を
図5に示す。上段はオーガ1の片側に難着雪カバー4、5をつけ、もう片側は付けない状態を示す。この状態で除雪作業させたオーガ1の状態を下段(写真)に示す。発明の効果は一目瞭然である。更に実作業観察を続けた結果、難着雪カバー4、5で全く雪が付着しなくなるのではなく、付着がある程度成長した後落下するという、付着−成長−落下−再生の自浄作用を行っていることも解った。難着雪カバー4、5を形成後は雪付着成長の芯と筋が無くなったことにより、わずかでも成長すると自重落下するようになった。難着雪カバー5を付けていない第5翼補強板135Lには雪が付着したままであるが、この部分は問題にならない。オーガ1の外側ほど雪付着による除雪機作動の弊害は少ない。
【0020】
除雪機の雪付着をテーマとした研究などはないが、着雪防災研究分野では一世紀以上の歴史がある。特に雪国における電線着雪被害についての研究については、日本が半世紀に渡って世界をリードしてきた(非特許文献1)。この中で本出願人は同じ雪を扱う者同志として、電線着雪のメカニズムがオーガ1の雪付着のメカニズムに非常に酷似していることを発見した。オーガ雪付着は電線着雪に例えると強風雪時の着雪に相当する。電線の何カ所かで着雪が始まると、強風により雪がその回りに電線の捻れに沿って回転着雪成長進行し、やがて電柱間、鉄塔間の丸ごと円柱状の雪の固まりになる。このメカニズムの解明から着雪成長を止める難着雪リングが生まれた。これと以前からあった電線表面を覆う難着雪テープとで、着雪がある程度成長すると落下させることが出来、現在、電線着雪被害はほとんど無くなっている。オーガ1への雪付着とその成長は、この電線での風はオーガシャフト12の回転そのもの、電線の捻れはオーガ翼11の螺旋コンベア作用とすると、電線の着雪成長と同じメカニズムである。このことから本発明の翼補強板難着雪カバー5は電線対策での難着雪リングに、オーガシャフト難着雪カバー4は電線対策での難着雪テープに相当し、付着成長途中の雪を落下させる効果も電線対策のそれと同じであり、本発明の信憑性を証明しているといえる。
【0021】
難着雪カバー4、5の材料としては高分子量又は超高分子量ポリエチレンを使用した。
難着雪効果としてはフッ素系樹脂以上に、これが最も優れていることはスキー、スノーボードの世界では常識である。加えてエンジニアプラスチック素材としての強度、耐摩耗性、耐温度性を有し、ハードな消耗交換部品として充分である。その上、剛性も高くシート材というよりはむしろ薄板、樹脂板バネ材といっても良い程である、この素材の特質を生かし、難着雪カバー4、5のオーガ各部への表面形成方法として、翼補強板断面及びオーガーシャフト径の適サイズの円筒巻き素材から所定長さに裁断後、それぞれの装着場所に嵌め込むようにした。その程度で難着雪カバーとしての固定は充分である。この方法にすることで消耗部品としての交換脱着作業を非常に簡単にすることが出来た。これに対し開発当初、試作試験でも行った貼り付けなどによる表面に密着させる形成方法は、難着雪効果としては非常に高くなるがそこまでする必要はなく、むしろ交換時の引き剥がしが困難になる場合が有り、メインテナンス性に問題がある。これ以外にもポリエチレンシートを形成する方法を幾つか試みたが、難着雪効果の必要充分であることと冬期の厳しい作業性を考慮し前記方法としている。
【0022】
実施例では大型除雪機の場合で難着雪カバー4、5の形成を、第1補強板難着雪カバー51L−R、第2補強板難着雪カバー52L−R、第3補強板難着雪カバー53L−R、第4補強板難着雪カバー54L−Rと、第1オーガシャフト難着雪カバー41L−R、第2オーガーシャフト難着雪カバー42L−Rとしたが、出願人が発見した原理「着雪成長を途中で止め落下させる、着雪自浄作用」が最も高いのは第1補強板難着雪カバー51L−R、第2補強板難着雪カバー52L−R、と第1オーガシャフト難着雪カバー41L−Rの組であり、小型除雪機の場合はこの部分だけでも充分効果はある。大型機でも雪質地域によっては第3と第4補強板難着雪カバーを省略してもよい。また第5翼補強板とそのオーガシャフト部に難着雪カバーを形成すれば雪付着対策はより高くなるが、交換するときの手間が増えることになり、一長一短である。
【0023】
以上、本願発明により冬季の降積雪時期、必要な時いつでも速やかに除雪作業が安心して出来るようになった。厳しい環境の中、一刻を争う除雪作業中に、雪付着や雪詰まりで作業中断になるようなアクシデントに見舞われることが無くなり、不安無く除雪作業が出来るようになった。冬季の除雪作業は厳しい作業であるがこの発明によりいくらかでも作業快適性に貢献することが出来た。