特許第6853460号(P6853460)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6853460
(24)【登録日】2021年3月16日
(45)【発行日】2021年3月31日
(54)【発明の名称】成形機の運転停止方法
(51)【国際特許分類】
   B29B 7/80 20060101AFI20210322BHJP
   B29B 7/88 20060101ALI20210322BHJP
   B29B 7/94 20060101ALI20210322BHJP
   B29C 45/17 20060101ALI20210322BHJP
   B29C 45/47 20060101ALI20210322BHJP
   B29C 48/27 20190101ALI20210322BHJP
   B29C 48/29 20190101ALI20210322BHJP
   B29C 44/00 20060101ALI20210322BHJP
【FI】
   B29B7/80
   B29B7/88
   B29B7/94
   B29C45/17
   B29C45/47
   B29C48/27
   B29C48/29
   B29C44/00 D
【請求項の数】2
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2016-238811(P2016-238811)
(22)【出願日】2016年12月8日
(65)【公開番号】特開2018-94732(P2018-94732A)
(43)【公開日】2018年6月21日
【審査請求日】2019年7月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】591038451
【氏名又は名称】株式会社マルヤス
(74)【代理人】
【識別番号】100082429
【弁理士】
【氏名又は名称】森 義明
(74)【代理人】
【識別番号】100162754
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 真樹
(72)【発明者】
【氏名】野村 俊夫
【審査官】 今井 拓也
(56)【参考文献】
【文献】 実公昭63−050096(JP,Y1)
【文献】 特開2000−189794(JP,A)
【文献】 特開2009−190222(JP,A)
【文献】 特公平03−060126(JP,B2)
【文献】 特開平04−125121(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29B 7/80
B29B 7/88
B29B 7/94
B29C 45/17
B29C 45/47
B29C 48/27
B29C 48/29
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状のシリンダ、前記シリンダの内部に配設された搬送スクリュおよび前記シリンダの後端に設けられ、前記搬送スクリュを回転可能に支持するモーター、前記シリンダの後端部上面に形成されている原料投入口に取り付けられているホッパ、前記シリンダの前端部に設けられた金型および前記シリンダの周囲に配設された加熱ヒーターを備える成形機の運転停止方法であって、
予定した操業を終えた後、基材樹脂と、常温では液体であり、気化温度が前記基材樹脂の軟化温度よりも低い発泡剤とを含む注入剤を前記ホッパから前記シリンダ内に注入するとともに、前記搬送スクリュで前記注入剤を加熱混錬しつつ前記シリンダの前方へと送り出し、
前記加熱ヒーターで前記基材樹脂を加熱溶融させるとともに前記発泡剤を気化させることによって前記シリンダの内部で基材樹脂が溶融している領域全体に発泡体を形成し、然る後、
前記加熱ヒーターをオフにすることを特徴とする成形機の運転停止方法。
【請求項2】
筒状のシリンダ、前記シリンダの内部に配設された搬送スクリュおよび前記シリンダの後端に設けられ、前記搬送スクリュを回転可能に支持するモーター、前記シリンダの後端部上面に形成されている原料投入口に取り付けられているホッパ、前記シリンダの前端部に設けられた金型および前記シリンダの周囲に配設された加熱ヒーターを備える成形機の運転停止方法であって
材樹脂を前記ホッパから前記シリンダ内に注入し、
その先端部分に細径の散布孔が穿設されている発泡剤散布具を前記原料投入口近傍または前記ホッパ上方に配置し、
予定した操業を終えた後、該発泡剤散布具に、常温では液体であり気化温度が前記基材樹脂の軟化温度よりも低い発泡剤を圧送し、前記圧送により前記原料投入口近傍に存在している前記基材樹脂または前記ホッパに貯留されている前記基材樹脂に前記発泡剤を散布または噴霧し、
前記発泡剤が散布または噴霧された前記基材樹脂を前記搬送スクリュで加熱混錬しつつ前記シリンダの前方へと送り出し、
前記加熱ヒーターで前記基材樹脂を加熱溶融させるとともに前記発泡剤を気化させることによって前記シリンダの内部で基材樹脂が溶融している領域全体に発泡体を形成し、然る後、
前記加熱ヒーターをオフにすることを特徴とする成形機の運転停止方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、押出成形機や射出成形機といった各種成形機の運転を停止した後、運転を再開させた時に成形不良が発生するのを防止できる成形機の運転停止方法に関する。
【背景技術】
【0002】
樹脂製品を成形するための装置として押出成形機や射出成形機といった成形機が知られている。一例として押出成形機を取り上げてその構造について簡単に説明すると、押出成形機1は、図3に示すように、筒状のシリンダ2、シリンダ2の内部に配設された搬送スクリュ3およびシリンダ2の後端に設けられ、搬送スクリュ3を回転可能に支持するモーター4により大略構成されている(非特許文献1参照)。
【0003】
シリンダ2の後端部上面には、原料投入口2aが形成されており、この原料投入口2aにホッパ5が取り付けられている。また、シリンダ2の前端部には、金型(ダイス)6が取り付けられており、シリンダ2の周囲には、加熱ヒーター7が配設されている。
【0004】
ホッパ5に原料樹脂Xを投入すると、原料投入口2aからシリンダ2内に引き込まれた原料樹脂Xが搬送スクリュ3の回転によってシリンダ2の前方へと順次送られる。この過程で、原料樹脂Xは加熱ヒーター7からの熱を受けて溶融し、搬送スクリュ3の回転によって均一に混錬され、金型(ダイス)6に送り込まれて押し出されることにより樹脂成形品を得ることができる。
【0005】
なお、「シリンダ内に送り込まれた原料樹脂を加熱ヒーターで加熱することによって溶融し、これを搬送スクリュの回転によって均一に混錬し、これを金型に送り出すことによって所定形状の樹脂成形品を得る」という点は、射出成形など他の成形機においても共通するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【非特許文献1】インターネット<URL:http://www.ensinger.jp/blog-eng/archives/337>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
予定していた操業が終わると、搬送スクリュ3を停止し、加熱ヒーター7をオフにすることにより押出成形機1の運転を停止させる。すると、シリンダ2内の溶融状態の原料樹脂Xは、温度が少しずつ低下していき、最も冷えやすい箇所であるシリンダ2の内壁と接している表面側がまず最初に硬化し、その後、少しずつ中心に向かって硬化していく。
【0008】
ここで、原料樹脂Xのような合成樹脂にあっては、溶融状態から固体へと変化(固化)する際にその体積を収縮させる。したがって、シリンダ2内の溶融状態の原料樹脂Xが冷却により固化すると、固化後の原料樹脂Xとシリンダ2の内壁との間には、原料樹脂Xの体積収縮によって極く僅かな隙間Aが生じる(図3の円内参照)。この隙間Aには、ホッパ5側から外気が流れ込んで空気層が形成される。
【0009】
原料樹脂Xが体積収縮した後のシリンダ2の内壁には、通常、原料樹脂Xは付着していないが、極く稀に少量の原料樹脂Xが取り残されていることがあり(以下、「残留樹脂X’」という。)、この残留樹脂X’の存在が、以下に述べるような押出成形機1の再運転時の成形不良を引き起こす原因となってしまう。
【0010】
すなわち、押出成形機1の運転を再開するに際して加熱ヒーター7をオンにすると、シリンダ2内の固化状態の原料樹脂Xは、体積が大きいことから、全体がゆっくりと昇温していく。やがて、固化状態の原料樹脂Xが軟化温度まで到達すると溶融し、シリンダ2と搬送スクリュ3との間の空間は、この溶融した原料樹脂Xによって再び隙間なく満たされる。
【0011】
一方、シリンダ2の内壁に付着している残留樹脂X’は、体積が非常に小さく、また、加熱ヒーター7からの熱がシリンダ2から直接加わることとも相俟って温度が急激に上昇する。したがって、シリンダ2内の原料樹脂Xが軟化点に到達するよりも先に残留樹脂X’が軟化温度に到達し(さらには、この軟化温度をはるかに超える温度にまで上昇し)、隙間Aに入り込んだ空気中の酸素と反応して焼け焦げて炭化(或いは、焼け焦げるまではいかなくとも熱分解して組成が変性)してしまう。
【0012】
やがて、上述したように原料樹脂Xが再び溶融してシリンダ2と搬送スクリュ3との間の空間を満たし、搬送スクリュ3の回転によって前方へと送られ始めると、シリンダ2に付着した焼け焦げた(或いは熱分解した)残留樹脂X’には、この溶融した原料樹脂Xがシリンダ2内を前方へと送り出されることによる摩擦力が常時加わることとなる。
【0013】
このように、シリンダ2の内壁に付着した残留樹脂X’には、加熱溶融した原料樹脂Xがシリンダ2内を前方へ送り出されることによる摩擦力が常時加わることになるが、何らかのタイミングでこの焼け焦げた(或いは熱分解した)残留樹脂X’が製品成形中にシリンダ2の内壁から剥がれ落ちることがあり、この剥がれ落ちた残留樹脂X’が溶融状態の原料樹脂Xと一緒に金型(ダイス)6へと送られ、これが製品の表面に黒点となって現れて不良品になってしまうという問題がある。そして、この問題は、押出成形機に限って生じる問題ではなく、射出成形機をはじめ、他の成形機においても同様に生じる問題である。
【0014】
本発明は、かかる従来の問題点に鑑みてなされたものであり、成形機の運転を停止させた後、運転を再開した時に不良品を生じさせることのない成形機の運転停止方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
請求項1に記載した発明は、「筒状のシリンダ12、シリンダ12の内部に配設された搬送スクリュ14およびシリンダ12の後端に設けられ、搬送スクリュ14を回転可能に支持するモーター16、シリンダ12の後端部上面に形成されている原料投入口12aに取り付けられているホッパ18、シリンダの前端部に設けられた金型20およびシリンダ12の周囲に配設された加熱ヒーター22を備える成形機10の運転停止方法であって、
予定した操業を終えた後、基材樹脂26と、常温では液体であり、気化温度が基材樹脂26の軟化温度よりも低い発泡剤28とを含む注入剤24をホッパ18からシリンダ12内に注入するとともに、搬送スクリュ14で注入剤24を加熱混錬しつつシリンダ12の前方へと送り出し、加熱ヒーター22で基材樹脂26を加熱溶融させるとともに発泡剤28を気化させることによってシリンダ12の内部で基材樹脂26が溶融している領域Z全体に発泡体30を形成し、然る後、加熱ヒーター22をオフにする」ことを特徴とする。
【0016】
請求項2に記載した発明は、「筒状のシリンダ12、シリンダ12の内部に配設された搬送スクリュ14およびシリンダ12の後端に設けられ、搬送スクリュ14を回転可能に支持するモーター16、シリンダ12の後端部上面に形成されている原料投入口12aに取り付けられているホッパ18、シリンダ12の前端部に設けられた金型20およびシリンダ12の周囲に配設された加熱ヒーター22を備える成形機10の運転停止方法であって、
基材樹脂26をホッパ18からシリンダ12内に注入し、
その先端部分に細径の散布孔42が穿設されている発泡剤散布具40を原料投入口12a近傍または前記ホッパ18上方に配置し、
予定した操業を終えた後、該発泡剤散布具40に、常温では液体であり気化温度が基材樹脂26の軟化温度よりも低い発泡剤28を圧送し、前記圧送により原料投入口12a近傍に存在している基材樹脂26またはホッパ18に貯留されている基材樹脂26に発泡剤28を散布または噴霧し、
発泡剤28が散布または噴霧された基材樹脂26を搬送スクリュ14で加熱混錬しつつシリンダ12の前方へと送り出し、
加熱ヒーター22で基材樹脂26を加熱溶融させるとともに発泡剤28を気化させることによってシリンダ12の内部で基材樹脂26が溶融している領域Z全体に発泡体30を形成し、然る後、加熱ヒーター22をオフにする」ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
請求項1および2に記載の成形機10の運転停止方法では、上記のようにシリンダ12の内部に発泡体30を形成した後、加熱ヒーター22をオフにするようにしている。ここで、発泡体30は、加熱ヒーター22で基材樹脂26を加熱溶融させるとともに発泡剤28を気化させることによって形成したものであることから、溶融した基材樹脂26の内部には、気化した発泡剤28が全体的に均一に分散している。つまり、発泡体30には、気化した発泡剤28による外方向への膨張力が発生しており、この膨張力により、発泡体30がシリンダ12の内壁を常時押圧している。
【0018】
このような発泡体30がシリンダ12内に形成された状態で加熱ヒーター22をオフにすると、発泡体30を構成している溶融状態の基材樹脂26がまず固化し始めるが、発泡剤28の気化温度は基材樹脂26の軟化温度よりも低いため、基材樹脂26が固化し始める温度では、気化した発泡剤28は気体のまま存在することとなる。つまり、発泡体30の膨張力は依然維持されたままの状態が続き、この膨張力によって基材樹脂26固化時の体積収縮が抑止される。
【0019】
したがって、シリンダ12と冷却固化後の発泡体30との間には、基材樹脂26の体積収縮に伴う隙間Aが形成されるようなことはなく、シリンダ12の内壁に従来のような残留樹脂X’が付着するようなこともなく、成形機10の運転を停止させた後、運転を再開した時に不良品を生じさせることがない。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】この発明にかかる第1実施例の運転停止方法を示す図である。
図2】この発明にかかる第2実施例の運転停止方法を示す図である。
図3】従来技術を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本願発明の「成形機10の運転停止方法」は、押出成形機や射出成形機といった各種成形機の運転を停止する際に適用されるものであり、注入剤24を成形機10内に注入する「注入剤24の注入工程」と、注入剤24を成形機10内に注入した後に行われる「発泡体30の形成工程」と、「発泡体30の冷却工程」とで大略構成されている。
【0022】
なお、以下には、成形機10として押出成形機10を使用した場合を代表例として説明するが、本願発明は、押出成形機や射出成形機のように原料樹脂を加熱溶融して金型で所定形状の樹脂成形品を形成するものであればどのような成形機10にも適用することができる。
【0023】
まず、成形機10としての押出成形機10の構造について簡単に説明すると、押出成形機10は、図1に示すように、筒状のシリンダ12、シリンダ12の内部に配設された搬送スクリュ14およびシリンダ12の後端に設けられ、搬送スクリュ14を回転可能に支持するモーター16により大略構成されている。
【0024】
シリンダ12の後端部上面には、原料投入口12aが形成されており、この原料投入口12aにホッパ18が取り付けられている。シリンダ12の前端部には、金型(ダイス)20が設けられており、シリンダ12の周囲には、加熱ヒーター22が配設されている。
【0025】
以上のように構成されている押出成形機10の運転を停止する際には、注入剤24を調整し、これをホッパ18に投入する。ここで、注入剤24は、基材樹脂26と発泡剤28とを混合したものであり、この注入剤24がシリンダ12内で加熱されることによって発泡体30が形成されることになる(この点については後述する)。
【0026】
基材樹脂26は、粒状(ペレット状)の熱可塑性樹脂で、成形機10で成形中の原料樹脂を利用してもよいし、これとは異なる種類の汎用の熱可塑性樹脂を利用してもよい。後者の場合、例えば、成形中の原料樹脂とは色彩の異なる熱可塑性樹脂を使用すれば、金型(ダイス)20から出てくる樹脂成形品の色の変化を確認することによってシリンダ12の先端まで発泡体30(後述)が形成されているかどうかを目視で容易に判断できるという利点がある。
【0027】
発泡剤28は、シリンダ12内で加熱溶融した基材樹脂26の体積を膨張させるためのもので、常温では液体であるが、シリンダ12内では加熱ヒーター22からの熱を受けて気化するものが選択され、その気化温度は、基材樹脂26の融点(軟化温度)よりも低いものが選択される。
【0028】
例えば、基材樹脂26として「高密度ポリエチレン」を選択した場合には、その気化温度が高密度ポリエチレンの融点(120〜140度)よりも低いものが発泡剤28として選択され、基材樹脂26として「ポリプロピレン」を選択した場合には、その気化温度がポリプロピレンの融点(168℃)よりも低いものが発泡剤28として選択される。
【0029】
このような発泡剤28の具体例としては、たとえば水や汎用のプラスチック洗浄液などを使用することができ、本実施例では、株式会社マルヤス製のプラスチック洗浄液(商品名:ゲル・クリーン+(プラス))が用いられている。このプラスチック洗浄液は、基材樹脂26への浸透性を高める界面活性剤および炭化物や汚れを分解するアルカリ剤を水に添加することによって調整されている。
【0030】
(注入剤の調整工程)
注入剤24を調整する際には、1キログラムの基材樹脂26に対して発泡剤を5〜30ccの割合で添加し、両者を十分に混合する。注入剤24が調整された状態では、基材樹脂26の表面全体が発泡剤28で僅かに濡れた状態となっている。なお、発泡剤28の添加量が多すぎると、シリンダ12内に送り込まれた注入剤24を搬送スクリュ14で送り出す際に、注入剤24同士が滑って前方へ効果的に送り出すことができないという問題がある。
【0031】
(注入剤24の注入工程)
以上のように調整された注入剤24を、予定していた操業を終えた後の押出成形機10のシリンダ12内に注入するには、注入剤24をホッパ18に投入すればよい。ホッパ18に投入された注入剤24は、搬送スクリュ14の回転によって原料投入口12aからシリンダ12内に引き込まれ、シリンダ12の前方へと送られる。注入剤24がシリンダ12の前方へと送られると、注入剤24は加熱ヒーター22からの熱を受けて少しずつ温度上昇して、後述するように、シリンダ12内で発泡体30が形成される。
【0032】
(発泡体30の形成工程)
注入剤24を構成している基材樹脂26は、加熱ヒーター22からの熱を受けつつシリンダ12内を搬送スクリュ14によって前方へと送られ、原料投入口12aからある程度進んだところ(本実施例の場合は3分の1ほど進んだところ)で軟化温度に到達して溶融する。この溶融した基材樹脂26は、高い粘性を有する流動体であり、シリンダ12と搬送スクリュ14との間の空間が溶融した基材樹脂26によって隙間なく充填されることとなる。
【0033】
一方、発泡剤28は、基材樹脂26と同様、加熱ヒーター22からの熱を受けて徐々に温度上昇し、基材樹脂26が軟化温度に到達するよりも手前の位置で気化温度に到達してシリンダ12内で気化する。この気化した発泡剤28は、液体状態の体積を1とした場合にその体積を1000倍近くにまで膨張させる。そして、気化後の発泡剤28は,搬送スクリュ14の回転によって溶融した基材樹脂26内に混ぜ込まれるとともに混練されて全体に均一に拡散される。これにより、シリンダ12内に発泡体30が形成されることとなる。
【0034】
シリンダ12内に形成された発泡体30においては、図1の円内に示すように、気化後の発泡剤28からなる独立気泡が、溶融した基材樹脂26内に全体に均一に分散している。そして、気化後の発泡剤28による膨張力により、発泡体30には、外方に膨張する方向の力が発生しており、この膨張力により発泡体30がシリンダ12の内壁を常時押圧している。
【0035】
(発泡体30の冷却工程)
以上のようにしてシリンダ12内の先端部分にまで発泡体30が形成されると、これが金型(ダイス)20へと押し出される。すると、搬送スクリュ14の回転を停止させ、然る後、加熱ヒーター22をオフにする。
【0036】
加熱ヒーター22をオフにすると、シリンダ12内の流動状態の発泡体30は、熱の供給が断たれるために少しずつ温度が低下していき、最も冷えやすい箇所であるシリンダ12の内壁と接する表面側の基材樹脂26がまず最初に固化し始める。
【0037】
溶融状態の基材樹脂26には、従来技術で述べたのと同様、固化することによってその体積を収縮させる方向の力(収縮力)が発生することとなる。ところが、上述したように、発泡体30には気化後の発泡剤28による膨張力が発生しており、この膨張力が上記収縮力に打ち勝って基材樹脂26の体積収縮を阻害するとともに、この膨張力がシリンダ12の内壁を押圧し続けている状態で基材樹脂26が固化することとなる。
【0038】
したがって、シリンダ12と冷却固化後の発泡体30との間には、基材樹脂26の体積収縮に伴う隙間Aが形成されるようなことはなく、その結果、シリンダ12の内壁に従来のような残留樹脂X’が付着するようなこともなく、成形機10の運転を停止させた後、運転を再開した時に不良品を生じさせることがない。
【0039】
このように、本実施例の成形機10の運転停止方法によれば、シリンダ12の内壁と冷却固化後の発泡体30との間には、従来技術で述べたような隙間Aが生じることがなく(つまり、シリンダ12の内壁に少量の残留樹脂X’が付着するようなことはなく)、その結果、従来技術で述べたような成形機10の運転を再開させた時の成形不良を引き起こすようなことがない。
【0040】
また、発泡体30を構成している発泡剤28がプラスチック洗浄液である場合には、含有する界面活性剤やアルカリ剤の作用により、シリンダ12や搬送スクリュ14の表面の清掃が同時に行われるという利点もある。
【0041】
なお、上述実施例では、注入剤24をシリンダ12内に連続的に注入することによりシリンダ12内で基材樹脂26が溶融している領域(以下、「溶融領域Z」という)全体に発泡体30を形成するようにしたが、溶融領域Zのうち、少なくとも金型(ダイス)20側の端部と原料投入口12a側の端部とに発泡体30を形成しておけば、以下に述べるように成形不良を生じさせることがない。金型(ダイス)20側の端部と原料投入口12a側の端部とに発泡体30を形成する方法としては、注入剤24と基材樹脂26とを、注入剤24‐基材樹脂26‐注入剤24の順で一定量ずつ注入する方法が考えられる。
【0042】
この実施例において、溶融領域Zの中央部分に存在するのは基材樹脂26であり、この部分が冷却固化すると、従来技術と同様、体積収縮により隙間Aが形成されてシリンダ12の内壁に残留樹脂X’が付着する可能性がある。しかし、上述したように、溶融領域Zの金型(ダイス)20側の端部と、原料投入口12a側の端部に発泡体30が形成されており、外部の空気が隙間Aに流入することはないので、従来のように、加熱ヒーター22による再加熱時に隙間Aに入り込んだ空気中の酸素と反応して焼け焦げて炭化(或いは、焼け焦げる所まではいかなくとも熱分解して組成が変性)してしまうようなことがなく、成形不良を生じさせることはない。
【0043】
また、上述実施例では、注入剤24の調整工程において、基材樹脂26と発泡剤28とを予め混合することによって注入剤24を調整し、これをシリンダ12内に注入するようにしていたが、成形機10内で注入剤24を調整するようにしてもよい。
【0044】
シリンダ12内で注入剤24を調整する方法としては、例えば、図2に示すような発泡剤散布具40を使用してシリンダ12内の基材樹脂26に発泡剤28を散布する方法が考えられる。
【0045】
発泡剤散布具40は、先端が閉じられたパイプ状(或いはチューブ状)の部材であり、その先端部分外面には、複数の細径の散布孔42が穿設されている。発泡剤散布具40の他端側には、図示しないタンクが接続されており、タンク内に貯留されている発泡剤28を発泡剤散布具40の先端側へ向けて圧送できるようになっている。
【0046】
発泡剤散布具40は、その先端部分がホッパ18側からシリンダ12側へと向けて挿入されており、その先端部分は原料投入口12a近傍に配置されている。
【0047】
発泡剤散布具40を用いて成形機10の運転を停止させる際には、基材樹脂26をホッパ18に投入する。すると、基材樹脂26が搬送スクリュ14の回転によってシリンダ12内に引き込まれる。
【0048】
然る後、発泡剤28を圧送すると、発泡剤散布具40の先端から液滴状の発泡剤28が散布される。原料投入口12a近傍の基材樹脂26と散布された発泡剤28とは、搬送スクリュ14の回転により攪拌・混合され、シリンダ12内で注入剤24が調整されつつシリンダ12の前方へと送られ、上述同様、シリンダ12内に発泡体30が形成される。発泡体30が形成されたことを確認した後は、搬送スクリュ14の回転を止め、然る後、加熱ヒーター22をオフにすればよい。なお、発泡剤散布具40の先端に形成する散布孔42をさらに小さくすることにより、霧状の発泡剤28を噴霧するようにしてもよい。また、発泡剤散布具40をホッパ18の上方に配置し、ホッパ18に貯留されている基材樹脂26に発泡剤28を散布または噴霧するようにし、これをシリンダ12内に送るようにしてもよい。
【0049】
これらの実施例においても、上述実施例と同様、シリンダ12の内壁と固化後の発泡体30との間に従来技術で述べたような隙間Aが生じることはなく(つまり、シリンダ12の内壁に少量の残留樹脂X’が付着するようなことはなく)、その結果、従来技術で述べたような成形機10の運転を再開させた時に成形不良を引き起こすようなことはない。
【符号の説明】
【0050】
1:(押出)成形機、2:シリンダ、2a:原料投入口、3:搬送スクリュ、4:モーター、5:ホッパ、6:金型(ダイス)、7:加熱ヒーター、10:(押出)成形機、12:シリンダ、12a:原料投入口、14:搬送スクリュ、16:モーター、18:ホッパ、20:金型(ダイス)、22:加熱ヒーター、24:注入剤、26:基材樹脂、28:発泡剤、30:発泡体、40:発泡剤散布具、42:散布孔、A:隙間、X:原料樹脂、X’:残留樹脂、Z:溶融領域


図1
図2
図3