(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、光走査用制御装置に搭載されているレーザモジュールは、熱に弱く高熱にさらされると、レーザ光の劣化や応答性の悪化などの不具合を生じさせる虞があることが知られている。またレーザモジュールは、熱源部材の一つである。
【0005】
しかし、従来の網膜走査型投影装置では、ICチップなど他の熱源部材からの熱がレーザモジュールへ伝達することを抑制する構造や、レーザモジュール自身の熱を効果的に放熱する構造については考慮されていない。
【0006】
特に光走査用制御装置を備える網膜走査型投影装置においては、光走査用制御装置は利用者が携帯する部材となるため効果的に熱を放熱させる構造が望まれている。
【0007】
開示の技術は、上述した事情に鑑みて成されたものであり、レーザモジュールへの熱伝達抑制構造と、レーザモジュールの熱を放熱させる放熱構造とを備えた光走査用制御装置及び網膜走査型投影を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記目的を達成するために、以下の如き構成を採用した。
【0009】
本発明は、画像信号に応じたレーザ光を画像光として出射する光走査用制御装置(10)であって、
金属製の筐体(11)と、
前記筐体(11)のベース部(11a)上に当接され、且つ前記筐体(11)内
で前記ベース部の平面と平行な方向における一側に配置される前記レーザ光を出射するレーザモジュール(125)と、
前記筐体(11)内
で前記ベース部の平面と平行な方向における前記レーザモジュールと反対側に配置される電源部(16)と、
前記レーザモジュール(125)の前記ベース部(11a)側と反対側に配置される前記画像光を前記レーザモジュール(125)から出射させる熱源部材(14)を有する電子回路基板(12)と、
を有しており、
前記熱源部材(14)は、前記電子回路基板(12)の前記レーザモジュール(125)と対向する面と反対側の面で、且つ前記レーザモジュール(125)の直上位置を避けた位置に配置している。
【0010】
なお、上記括弧内の参照符号は、理解を容易にするために付したものであり、一例にすぎず、図示の態様に限定されるものではない。
【発明の効果】
【0011】
開示の技術によれば、レーザモジュールへの熱伝達抑制構造と、レーザモジュールの熱を放熱させる放熱構造とを備えた光走査用制御装置及び網膜走査型投影を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
[第1の実施形態]
以下、第1の実施形態に係る光走査用制御装置が適用される網膜走査型投影装置を、
図1を参照して説明する。
図1は、本実施形態の網膜走査型投影装置の概略構成を示す図である。
【0014】
本実施形態の網膜走査型投影装置1は、マクスウェル視を利用した網膜走査型ヘッドマウントディスプレイである。マクスウェル視とは、画像データに基づく画像光(以下、画像用光線とも云う)を一旦瞳孔の中心で収束させてから網膜上に投影することで、利用者の水晶体の機能に影響されずに利用者に画像データが表す画像を視認させる方法である。
【0015】
網膜走査型投影装置1の全体的な構成について説明する。
図1に示すように、光走査用制御装置10と、伝送ケーブル20と、ヘッドマウント部HMを有する。
【0016】
光走査用制御装置10は、利用者の衣服のポケットなどに収納して携行可能な程度の大きさとされ、画像信号に応じた強度のレーザ光を画像光として出射する。光走査制御装置10の詳細は後述する。
【0017】
伝送ケーブル20は、光走査用制御装置10から出射された画像光を光走査部30まで伝送する。
【0018】
ヘッドマウント部HMは、光走査部30と、眼鏡型フレーム40と、撮像ユニット50と、を含む。
【0019】
光走査部30は、伝送ケーブル20によって伝送された画像光を走査して利用者の眼球(網膜)に照射することで、利用者の網膜上に画像光が示す画像を投影させる。
【0020】
眼鏡型フレーム40は、利用者の頭部に装着可能に構成されている。撮像ユニット50は、カメラ等を有する。光走査部30及び撮像ユニット50は、眼鏡型フレーム40に具備されている。
【0021】
ここで、画像光とは、光走査部30により利用者の網膜上に投影される画像の元になる情報に基づき生成される光である。画像の元になる情報は、文字、数字等の記号であっても良いし、画像であっても良い。
【0022】
光走査用制御装置10は、利用者が操作可能な筐体11と、電子回路基板12と、操作部13と、を備える。操作部13は、筐体11の側面部に設けられる。操作部13は、電源13a、フェイズスイッチ部13b、及び画像の大きさを調整させる調整部13cなどを有している。電子回路基板12は、筐体11内に収納されるものであり、光走査用制御装置10の動作を実現させるための複数のICチップ14が搭載されている。
【0023】
光走査用制御装置10には、外部入力端子15(
図2参照)が設けられている。光走査用制御装置10は、外部入力端子15を介して図示しないパーソナルコンピュータなどの外部機器からの送信されるコンテンツ情報等の受信を行っている。なお、コンテンツ情報とは、利用者の網膜に投影される情報であり、例えば文字や画像、動画等である。具体的には、コンテンツ情報は、例えば、パソコン等で使用される文書ファイルや画像ファイル、動画ファイル等である。
【0024】
本実施形態の光走査用制御装置10は、2系統からの画像信号が入力可能な構成とされている。1つは撮像ユニット50から入力される画像信号であり、もう1つは外部機器から入力される画像信号である。
【0025】
上記の点から本実施形態の操作部13は、撮像ユニット50からの画像信号を網膜に投影させるか、外部機器からの画像信号を網膜に投影させるかを利用者に選択させる選択スイッチ(不図示)を有している。
【0026】
図2は、第1の実施形態の網膜走査型投影装置を説明する図である。
図2では、ヘッドマウント部HMの構成と、電子回路基板12に実装された回路ブロックとを示している。
【0027】
初めに、ヘッドマウント部HMについて説明する。
本実施形態のヘッドマウント部HMは、光走査部30、MEMS(Micro Electro Mechanical System)インタフェース部42、撮像ユニット50、光学系部60を備えている。
【0028】
光走査部30は、例えばMEMS(Micro Electro Mechanical System)ミラーである。光走査部30は、例えば、眼鏡型フレーム40のツル41に配置されている。光走査部30は、後述するレーザモジュール125から出射された画像光を、駆動制御信号に基づいて、水平方向及び垂直方向に走査する。駆動制御信号は、後述するMEMSドライバ123から出力される。
【0029】
また、画像光を走査して眼球Gの網膜G1に画像を投影する方法として、画像を投影する領域の左上から右下に向かって光を高速に走査し、画像を表示させる方法(例えばラスタースキャン)が実施できる。
【0030】
光走査部30から出射された画像光は、光学系部60により収束され、網膜G1へ投影される。なお、光学系部60は、眼鏡型フレーム40のレンズ部に配置されてよい。
【0031】
MEMSインタフェース部42は、光走査部30(MEMSミラー)の動作(振れ角)を検知し、光走査部30の傾きに応じた動作情報(動作信号)を後述の主制御部121へ出力する。なお、本実施形態のMEMSインタフェース部42は、温度センサ(不図示)を有し、光走査部30の温度を検知し、温度情報を主制御部121へ出力してよい。
【0032】
本実施形態の撮像ユニット50は、撮像装置51と、カメラインタフェース部52とを含む。
【0033】
撮像装置51は、CMOSなどのカメラである。カメラインタフェース部52は、撮像装置51から出力されたカメラの画像信号を、後述の主制御部121へ出力する。
【0034】
次に、光走査用制御装置10の電子回路基板12の回路ブロックについて説明する。
【0035】
電子回路基板12には、主制御部121、レーザ制御部122、MEMSドライバ123、レーザドライバ124、レーザモジュール(光源)125が実装されている。
【0036】
主制御部121は、CPU(CentralProcessing Unit)等のプロセッサ並びにRAM(Random Access Memory)及びROM(Read Only Memory)等により実現される。主制御部121には、撮像ユニット50から出力されたカメラの画像信号と、外部入力端子15を介して外部機器から出力されたコンテンツ情報(画像信号)の2系統の画像信号が入力される。主制御部121は、入力された画像信号の処理と、光走査部30(MEMSミラー)の駆動制御を行う。
【0037】
また、主制御部121は、MEMSインタフェース部42から取得した光走査部30の動作情報や温度情報等に基づいて、光走査部30(MEMSミラー)の駆動と、レーザモジュール125の画像光の出射を制御する。
【0038】
主制御部121は、光走査部30の駆動を制御する駆動制御信号をMEMSドライバ123へ出力する。MEMSドライバ123は、受信した駆動制御信号を光走査部30へ出力する。
【0039】
また、主制御部121は、入力された画像信号をレーザドライバ124へ出力する。レーザドライバ124は、画像信号に基づいてレーザ光の点灯及び消灯を制御する出射制御信号を生成し、生成した出射制御信号をレーザモジュール125へ出力する。
【0040】
レーザ制御部122は、CPU等のプロセッサ並びにRAM及びROM等により実現される。レーザ制御部122は、操作部13から電源ON信号や、ズームイン信号又はズームアウト信号などが入力されると、信号に応じた制御信号をレーザモジュール125へ出力する。なお、本実施形態のレーザ制御部122は、操作部13の選択スイッチにおいて、2系統の画像信号のうち何れかの画像信号の選択を受け付けると、選択に応じて、制御信号をレーザモジュール125へ出力する。
【0041】
レーザモジュール125は、主制御部121の指示の下、例えば単一又は複数の波長のレーザ光Lを光走査部30へ出力(出射)する。このレーザ光Lは、ユーザの眼球Gの網膜G1に画像を投影するための画像用光線である。なお、レーザモジュール125から出射されたレーザ光Lは、伝送ケーブル20を介して光走査部30へ伝送される。
【0042】
レーザモジュール125は、例えば赤色レーザ光(波長:610nm〜660nm程度)、緑色レーザ光(波長:515nm〜540nm程度)、及び青色レーザ光(波長:440nm〜480nm程度)を出射する。赤色、緑色、及び青色レーザ光を出射する。本実施形態のレーザモジュール125は、例えばRGB(赤・緑・青)それぞれのレーザダイオードチップと3色合成デバイスとマイクロコリメートレンズと、が集積された光源等により実現される。
【0043】
また、レーザモジュール125は、光量センサ125a、温度センサ125bを備えている。光量センサ125aは、レーザモジュール125の各レーザダイオードの光量を検知し、検知した光量情報をレーザ制御部122へ出力する。温度センサ125bは、レーザモジュール125の各レーザダイオードの温度を検知し、検知した温度情報をレーザ制御部122へ出力する。
【0044】
レーザ制御部122は、光量センサ125aから取得した光量情報に基づいて、レーザモジュール125の各レーザダイオードの光量を制御する信号を生成し、レーザモジュール125へ出力する。すると、網膜G1に投影される画像の輝度を適切に制御できる。
【0045】
<光走査用制御装置>
次に、
図3、
図4を参照しながら光走査用制御装置10について説明する。
図3は、本実施形態に係る光走査用制御装置の内部構成を説明する内部透過側面図である。
図4(A)は、
図3に示す光走査用制御装置10の電子回路基板12と電源部16を取外した状態を示す平面図である。
図4(B)は、
図3に示す光走査用制御装置10の内部構成を例示する平面図である。なお、
図4では説明の関係上、筐体11の蓋部11cを取外した状態を示している。
【0046】
光走査用制御装置10は、利用者が操作可能な金属製の筐体11を備えている。使用する金属は、例えばアルミ、銅、鉄などである。筐体11は、ベース部11a、側面部11b、蓋部11cを有しており、内部に空間Kを形成している。筐体11は平面視が矩形状とされているが、この限りではない。なお、側面部11bにおいて、図示上の左側(矢印X2側)に位置する側面部11bを側面部11b1と表記し、右側(矢印X1側)に位置する側面部11bを側面部11b2と表記する。
【0047】
筐体11の空間K内には、電子回路基板12、電源部16、レーザモジュール125、蓄電装置としてのバッテリ17、熱源となる複数のICチップ14を有している。
【0048】
レーザモジュール125は、上記したようにレーザ光を出射する部材であり、それ自体が熱源部材である。本実施形態のレーザモジュール125は、筐体11のベース部11a上に当接される。したがって、レーザモジュール125が発する熱は、直接金属製の筐体11へ伝熱され、筐体11によって放熱される。
【0049】
また、本実施形態のレーザモジュール125は、ベース部11aの一側に寄せた配置とされている。図示例のレーザモジュール125は、筐体11の側面部11b1近傍(矢印X2側)に配置される。
【0050】
電子回路基板12には、複数の熱源部材となるICチップ14が搭載されている。電子回路基板12は、レーザモジュール125のベース部11a側と反対側(上面側、矢印Y1側)に配置されている。電子回路基板12は、レーザモジュール125より大きな矩形状に形成されている。そのため、レーザモジュール125の直上位置には、電子回路基板12の一側端部(矢印X2側)の一部が存在する配置となる。
【0051】
本実施形態の電子回路基板12は、複数のICチップ14がレーザモジュール125と反対側の面(上面)で、且つレーザモジュール125の直上位置を避けた位置に配置されている。即ち、熱源部材であるICチップ14の熱が、レーザモジュール125へ伝達されることを最小限に抑制できる配置構成である。したがって、レーザモジュール125が高熱にさらされることにより、レーザ光の劣化や応答性の悪化などの不具合が生じることを防止できる。
【0052】
電源部16は、電子回路基板12のレーザモジュール125が近接配置される側面部11b1と反対側の側面部11b2近傍(矢印X1側)に配置される。
【0053】
バッテリ17は、電源部16へ電源供給を行う。バッテリ17は、ベース部11aと電子回路基板12のレーザモジュール125側面との間に配置され、レーザモジュール125と隣接した位置に配置される。バッテリ17は、それ自体が熱源部材である。したがって本実施形態のバッテリ17は、筐体11のベース部11a上に当接されることが好ましい。一般的にバッテリ17は、熱に弱いことが知られているが、本実施形態のバッテリ17は、筐体11のベース部11aに当接されて、バッテリ17の熱を筐体11を介して外部へ放熱できる。また、バッテリ17のベース部11a側と反対側(上側、矢印Y1側)に配置される電子回路基板12は、バッテリ17側面に熱源部材となるICチップ14が配置されていないため、ICチップ14の熱が、バッテリ17へ伝達されることを最小限に抑制できる配置構成である。
【0054】
一般的なバッテリ17には、該バッテリ17の短手方向の側面に厚みを有する保護回路部としての保護ICが取付けられている。したがって、バッテリ17の収納に必要な厚みは、保護IC18の厚みが影響してしまう。しかし本実施形態のバッテリ17には、保護IC18を取付けていない。本実施形態の保護ICは、電源部16に取付け配置されている。したがって、薄型のバッテリ17を使用することで、バッテリ17の収納に必要な厚みを最小限にして筐体11を小型化することができる。
【0055】
ICチップ14は、例えば
図4(B)に示す配置で実施される。熱源部材となるICチップ14は、例えばレーザドライバ、HDMI(登録商標)(High-Definition Multimedia Interface)レシーバ、歪み補正回路、アナログディジタルコンバータ(ADC)、主制御装置、レーザ制御装置などである。
【0056】
なお、図示例の電子回路基板12と電源部16とは、着脱可能に分割した構成とされているが、一体化した構成で実施してもよい。
【0057】
[第2の実施形態]
次に、
図5を参照しながら第2の実施形態に係る光走査用制御装置を説明する。
図5は、第2の実施形態に係る光走査用制御装置の内部構成を説明する内部透過側面図である。また、本実施形態の光走査用制御装置は、第1の実施形態と略同様の技術的思想を有しているため、共通する事項の説明は省略する。
【0058】
本実施形態の光走査用制御装置10は、複数のICチップ14及び/又は保護IC18と、筐体11の蓋部11cの裏面との間に熱伝達部材19が介在されている点が他の実施形態と相違する。熱伝達部材19は、シリコン系の放熱シートである。勿論、放熱グリスやグラファイトシートであってもよい。
【0059】
熱伝達部材19は、ICチップ14(保護IC18を含む)の上面と蓋部11cの裏面とに互いに接触するように設置される。したがって熱伝達部材19は、ICチップ14及び保護IC18が発する熱を筐体11へ伝達して、筐体11から放熱させることができる。斯すると、ICチップ14及び保護IC18からレーザモジュールへ伝達される熱を最小限に抑制することに寄与できる。
【0060】
(変形例1)
次に、
図6を参照しながら第2の実施形態に係る光走査用制御装置の変形例1を説明する。
図6(A)は、第2の実施形態に係る光走査用制御装置の変形例1を説明する内部透過側面図である。
図6(B)は、
図6(A)に示す光走査用制御装置の筐体の蓋部の裏面側の構成を例示する図である。
【0061】
図5で説明した熱伝達部材19の熱伝達率は、筐体11の金属に比して低いことで知られている。したがって、変形例1では筐体11の蓋部11cの裏面に、内方(矢印Y2方向)に向かって突起する突部11dが形成されており、突部11dとICチップ14との間に熱伝達部材19を介在させる構成とした。突部11dは、筐体11と同じ金属製で構成されている。
【0062】
上記構成により熱伝達率の比較的低い熱伝達部材19の厚みを薄くでき、ICチップ14及び保護IC18が発する熱を低い熱抵抗で筐体11側へ伝達して、筐体11の放熱力を向上させることができる。
【0063】
なお本実施形態の突部11dは、すべてのICチップ14に対応して設けられることが好ましいが、
図6(B)に示すように特に発熱量の高いICチップ14に対して、対応する位置と形状と数で設けられていてよい。
図6(B)に示す突部11dは、複数のICチップ14のうちHDMIレシーバ、歪み補正回路、アナログディジタルコンバータ(ADC)、主制御装置の4つのICチップに対応するように形成されている。
【0064】
(変形例2)
また、本実施形態の光走査用制御装置10は、筐体11の外周面に放熱フィン部を設けて実施することができる。すると筐体11の放熱効率を向上できる。放熱フィン部は、通常使用されるヒートシンクの様なフィンであってよい。
【0065】
以上、各実施形態に基づき本発明の説明を行ってきたが、上記実施形態にあげた構成、その他の要素との組み合わせなど、ここで示した要件に本発明が限定されるものではない。これらの点に関しては、本発明の主旨をそこなわない範囲で変更することが可能であり、その応用形態に応じて適切に定めることができる。