(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記位置決めピンの胴体部の底面は基台と接触しておらず、第2の窪みの側面と該位置決めピンの胴体部の側面とは接触していないことを特徴とする請求項4又は請求項5記載の枠体付きガラス。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前述したような位置決めピンを枠付きガラスに設ける場合は、枠体に接着用テープや接着材で固定したり、流動状態の樹脂で枠体を押出成型や射出成型する際に一体化させたりする手法が知られている。
【0006】
上記の手法のうち、接着用テープや接着材を用いる手法は簡便であり、平面の基台上に位置決めピンを接着したり、窪みのある基台に接着材を充填し当該窪みに位置決めピンを挿入したりすることで、該位置決めピンを枠体に固定することが出来る。しかし一方で、車体への取り付け時や搬送過程で位置決めピンが接着位置からズレてしまう場合があったため、上記の窪みのある基台を用い、当該窪みと位置決めピンとの間に隙間を設けないようにすることで、上記のようなズレを防いでいた。
【0007】
通常、枠体付きガラスの枠体や位置決めピン、及び上記の基台は樹脂材を使用していることから、接着材を使用しても乾燥の為に加熱工程を用いることは少ない。また、上記の窪み内で位置決めピンが接着位置から位置ズレするのを防ぐために、該位置決めピンと窪みとの間は隙間がないようにすることから、窪みは位置決めピンによって密閉された状態となる。そのため、位置決めピンを窪みに固定する際に接着材が乾燥し難くなり、位置決めピンの固定を完了するまでに要する時間が長くなってしまうという問題があった。
【0008】
そこで本発明は、位置決めピンを枠付きガラスに接着材で取り付ける際に、固定に要する時間を短縮可能な手法を得ることを目的とした。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題に対して鋭意検討を行った結果、胴体部と突起部を有する位置決めピンと、該位置決めピンの胴体部を接着する窪みを設けた基台を備えた枠体において、窪みと位置決めピンの胴体部との接着部の間に隙間を設け、当該隙間において接着材を部分的に露出させることによって、接着材で固定に要する時間を短縮可能であることがわかった。また、前述したように窪みと位置決めピンの胴体部との接着部の間に隙間があると、位置決めピンが接着位置からズレてしまうという問題があるが、窪みの周縁を一部突出させた突出部を設け、該突出部と位置決めピンの胴体部とを接触させることによって上記の問題を解消した。
【0010】
すなわち本発明は、ガラス板と、該ガラス板の周縁に一体化された樹脂製の枠体と、該ガラス板を車体へ取り付ける為の位置決めピンと、を有する枠体付きガラスにおいて、該枠体は、該位置決めピンを接着する基台を備えたものであり、該位置決めピンは、胴体部と突起部を有し、該基台は、該位置決めピンの胴体部を挿入可能な窪みを有し、該窪みは、該窪みを開口方向から見た時、該窪みの周縁が該窪みの中心方向へ突出した突出部を有し、該突出部は、該位置決めピンの胴体部に設けた爪部の周縁と接触するものであり、該窪みの底面と該位置決めピン該爪部の下面との間に接着層を有し、該接着層は空気に露出する露出部を窪みの周縁と爪部の周縁との間に有するものである枠体付きガラスである。
【発明の効果】
【0011】
本発明により、位置決めピンを枠付きガラスに接着材で取り付ける際に、固定に要する時間を短縮可能な手法を得ることが可能となった。
【発明を実施するための形態】
【0013】
1:用語の説明
(各方向)
本明細書では、
図1の(b)〜(d)に示したように、位置決めピン1を基台2に接着した状態で、位置決めピン1の先端側をZプラス方向、該基台2側をZマイナス方向と記載する。また、Zプラス方向を「上」、Zマイナス方向を「下」と記載することもある。また、X軸及びY軸はZ軸とそれぞれ直交する軸であればよく、特に限定するものではない。例えば
図1、
図3に記載したように基台2の短軸側をX軸、長軸側をY軸としてもよい。
【0014】
(開口方向)
「開口方向」とは、窪みが開口する方向を示しており、例えば
図1ではZマイナスからZプラスへ向かう向きを指すものとする。また、前述したように下から上へ向かう方向としてもよい。また、「開口方向から見る」とは、Zプラス側からZマイナス側を見る事であり、上から下を見る事としてもよい。
【0015】
(窪みの中心方向)
「窪みの中心方向」とは、開口方向から見た時の窪みの中心を指すものとする。例えば、
図1ではX−Y面における窪みの中心としてもよい。
【0016】
(各面)
本明細書では、開口方向側から見た時、各部材の面のうち最も上側にある面を「上面」、該上面と対向する面を「下面」と記載する。また、各部材の下面のうち、最も下側にある面を「底面」と記載することもある。また、該上面や該下面と交わる面のうち、各部材の周縁を含む面を「側面」と記載する。
【0017】
また、本発明の基台は窪みを有する。該窪みは部品ではなく、該基台の1以上の面に囲まれた空間である。該窪みを囲む面のうち、開口方向側から見た時に最も下側にある面を、便宜上窪みの「底面」と記載する。また、該窪みの周縁を含み該底面交わる面を、窪みの「側面」と記載することもある。
【0018】
2:枠体付きガラス
以下に、
図1、
図2を参照しながら本発明を説明する。
図1は本発明の好適な実施形態のひとつであり、それぞれ(a)開口方向(Zプラス方向)から見た概略図、(b)
図1(a)のA−A´断面の断面概略図、(c)
図1(a)のB−B´断面の断面概略図、及び(d)別の実施形態の(c)同様のB−B´断面の断面概略図である。また、
図2は枠体付きガラスを位置決めピン1側の上方から見た時の概略図である。また、
図3は本発明の基台2の実施形態を示す概略平面図である。なお、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
【0019】
(枠体付きガラス)
枠体付きガラスとは、
図2に示したように、所定形状のガラス板4の周縁部に樹脂製の枠体3を一体成型した車両用の部材である。ガラス板4としては、フラットなガラス板の他に、曲げ加工された曲げガラス板、強化ガラス板、着色ガラス板、合わせガラス板等を用いることが出来る。
【0020】
また、枠体3は流動状態の樹脂を、ガラス板の周縁部に押出成型又は射出成型することによって得ることが可能である。そのため、使用する樹脂は加熱環境下で流動性を持ち、冷却後に固化するものであればよい。例えば、スチレン系、オレフィン系、塩化ビニル系、ウレタン系等の熱可塑性エラストマーを用いることが可能である。
【0021】
基台2は、枠体3の表面に基台2の窪み20が露出するように枠体3に設けられる。ガラス板4の周縁部に枠体3を一体成型する際に、該基台2を構成する予め成型した部品を同時に一体成型しても、枠体3を成型後に枠体3上に該基台2を構成する部品を固定してもよい。また、上記の枠体3の成型は、通常所定形状の金型を用いて該金型内部に樹脂を流動させて行うが、この時予め基台2の形状を成型可能な金型を用いてもよい。この方法で該基台2を成型した場合、該枠体3と該基台2とは同じ樹脂によって構成されたものとなる。
【0022】
また、枠体付きガラスは上記基台2に位置決めピン1が固定される。該位置決めピン1によって、図示しない車体に該枠体付きガラスを取り付けることが可能となる。そのため、位置決めピン1の先端は、通常ガラス板4のガラス面と反対方向を向くように固定される。
【0023】
また、枠体付きガラスは、ガラス板4のZマイナス方向の表面に、装飾モール(図示しない)を設けてもよい。一般的に、装飾モールは車体の外観品質を向上させることを目的として設けられるものであり、枠体3表面に一体成型されたり、接着材や両面テープ等で枠体3表面に固定されたりする。装飾モールの材質は特に限定されるものではないが、例えばステンレス鋼等の金属や、塩化ビニル、ポリプロピレン等の樹脂が挙げられる。
【0024】
(位置決めピン1)
位置決めピン1の形状は、枠体付きガラスを車体へ取り付け可能であれば特に限定するものではない。例えば、
図1の(a)〜(d)に記載したように、突起部11と、該突起部11の下に基台2に取り付け可能な胴体部10と、を有するのが好ましい。また、位置決めピン1の材質は特に限定するものではないが、例えばポリアセタール樹脂やナイロン等のポリアミド樹脂が挙げられる。
【0025】
(胴体部10)
胴体部10は、
図1の(b)〜(d)に示したように、該胴体部10を一部X−Y面上に突出させた平板状の爪部12を設ける。該爪部12の周縁と窪み20(
図1では20a)の側面とが接触するように位置決めピン1を設置すると、該胴体部10又は該爪部12と該窪み20の側面とを一部非接触にすることが可能となる。該爪部12の下面と窪みの底面(図では24a)との間に接着層5を形成すると、
図1の(a)、(c)、(d)に示したように上記の非接触部分において該接着層5が大気中に露出する。該接着層5が大気中に露出することによって、接着層5の乾燥にかかる時間を短くすることが可能となり、該位置決めピン1の固定にかかる時間を短くすることができる。また、この「固定」とは全ての接着材が乾燥を終えている必要はなく、例えば搬送等によって弱い力が加わる場合に接着した位置からズレない程度であればよい。また、位置決めピン1の接着時に余剰の接着材が生じた場合、余剰分が上記の非接触部分へ流れ込むため、位置決めピン1が余剰の接着材によって浮き上がるという問題を抑制することが可能となる。
【0026】
また、
図1の(b)〜(d)に示したように、該胴体部10は、該突起部11の外周より外周が小さい首部10aを有するのが好ましい。該位置決めピン1を車体へ取り付ける際、該車体に弾性体や爪を設け、該首部10aが引っ掛かり易い構造とすると、該位置決めピン1を抜け難くすることが可能である。
【0027】
また、
図1の(b)、(c)に示したように、該胴体部10は、脚部10bを有してもよい。該脚部10bは爪部12よりも下側へ突出したものであり、
図1の(d)のように、脚部10bを設けなくともよい。また、該脚部10bの側面は窪み20の周縁と接触しないことが好ましい。該脚部10bを設けると、余剰の接着材が生じた場合、該接着材が該脚部10bの側面に沿って下方へ流れ易くなるため、該爪部12の下面と窪み20の底面との間で接着材が溜まって、位置決めピン1を浮かせてしまうという問題を抑制することが可能となる場合がある。また、該脚部10bの底面と、基台2とを接触させないことによって、より上記の問題を抑制する効果が高くなるため好ましい。
【0028】
(基台2)
本発明の基台2は、該基台2の表面に位置決めピン1の胴体部10を挿入可能な窪み20を有する。前述したように、該基台2は基台2を構成する部品を枠体3上に固定するもの(図示せず)でも、
図1に示すように、該基台2を構成する予め成型した部品を枠体3の成型時に枠体3と一体成型されるものでもよい。
【0029】
基台2の材質は特に限定するものではない。前述した枠体3と同様に、例えばスチレン系、オレフィン系、塩化ビニル系、ウレタン系等の熱可塑性エラストマーを用いることが可能である。
【0030】
(窪み20)
窪み20は基台2表面に形成された、上方向へ開口した開口部であり、該窪み20内に位置決めピン1の胴体部10が挿入され固定される。該窪み20の形状は位置決めピン1の胴体部10の形状に合わせればよく、特に限定するものではない。また、例えば窪み20を形成する面が曲面でも平面でもよい。また、例えば、開口方向から見た時の周縁の形状が、円形や楕円に複数の突出部21を有する形状や、矩形や多角形に突出部21を有する形状等が挙げられる。
【0031】
窪み20は、該窪み20の周縁22が突出した突出部21を有し、該位置決めピン1の胴体部10の爪部12と該突出部21とが接触する。また、該突出部21は、上から見た時、窪み20の中心方向へ突出する。窪み20は、
図3の(a)、(c)に記載したように第2の窪み20bを有するものでも、
図3の(b)に記載したように窪み20を1つだけ有するものでもよい。上記の突出部21によって、窪み20の突出部21ではない周縁22と、位置決めピン1の胴体部10の爪部12の周縁との間に隙間を形成することが可能となる。
【0032】
位置決めピン1の胴体部10の爪部12の周縁との間に隙間を設け、さらに位置決めピン1が接着位置からズレるのを防止可能であれば、突出部21の数は限定されるものではなく1個でも複数でもよい。例えば、
図1の(a)〜(d)、及び
図3の(a)のように、突出部21のみが位置決めピン1の胴体部10の爪部12の周縁と接触するよう4個の突出部21を設けたり、
図3の(b)のようにX軸方向は位置決めピン1の胴体部10の爪部12の周縁が窪み20の周縁22と接し、Y軸方向は突出部21と接するように2個の突出部21を対向して設けたりする等、位置決めピン1の胴体部10の形状等に応じて複数の突出部21の数及び位置を適宜決定すればよい。
【0033】
また、
図3の(c)に記載したように、窪み20は、該窪み20を開口方向から見た時、該窪み20の周縁22がスリット23を有するのが好ましい。通常、位置決めピン1を接着する際は接着材を塗布するが、位置決めピン1は軽量であるため、接着材の量が過剰になると固定されるまでの間に位置決めピン1が浮き上がってしまう場合がある。そこで、スリット23を設けることにより、余剰の接着材を基台2の外へ流し出すことが可能となり、上記のような位置決めピン1の浮き上がりを防ぐことが可能となる。なお、
図3では第2の窪み20bにもスリットを設けている。当該スリットは、第1の窪み20aの第1底面24a上に余剰な接着材がある場合、該接着材を下方へ流し第2の窪み20bへ流入させることが可能である。また、スリット23は複数設けてもよい。
【0034】
(接着層5)
接着層5は、位置決めピン1の胴体部10の爪部12の下面と窪み20の底面24との間に設けられる層であり、
図1(a)、(c)、(d)に示すように、少なくとも一部が空気中に露出する露出部51を窪み20の周縁22と爪部12の周縁との間に有する。当該露出部51に露出した接着層5が迅速に乾燥、固化することによって、位置決めピン1の胴体部10との接触部分を素早く固定することが可能になると考えられる。
【0035】
接着層5に用いる接着材は、空気と接触して硬化や乾燥することが可能なものであればよい。例えば、シアノアクリレート系の瞬間接着材、ウレタン系接着材等が挙げられ、特にシアノアクリル酸エチルを含む接着材が好ましい。
【0036】
(好適な実施形態)
本発明の基台2の好適な実施形態のひとつは、
図1の(a)〜(c)に示したように、前記窪み20は第1の窪み20aであり、該第1の窪み20aは該第1の窪み20aの底面24aが部分的に窪んだ第2の窪み20bを有し、前記突出部21が、該第1の窪み20aの周縁22に設けられたものであることを特徴とする。また、開口方向から見た時、該第1の窪み20aの開口部の面積>該第2の窪み20bの開口部の面積、とするのが好ましい。
【0037】
図1(a)のA−A´断面の断面概略図である
図1(b)は、突出部21と位置決めピン1の胴体部10の爪部12の周縁とが接触している。当該突出部21によって、位置決めピン1の位置ズレを抑制している。また、底面24a上の接着層5は空気中に露出しておらず、爪部12によって密閉された状態となっている。
【0038】
図1(a)のB−B´断面の断面概略図である
図1(c)は、第1の窪み20aの周縁22と位置決めピン1の胴体部10の爪部12の周縁との間に隙間を有し、接触していない。また、底面24a上の接着層5は空気中に露出して露出部51となり、乾燥し易いことから位置決めピン1の固定に要する時間を短縮することが可能となる。
【0039】
本実施形態では、第1底面24aの表面に接着層5を形成し、該接着層5を介して前記位置決めピン1の胴体部10の爪部12の下面を接着するのが好ましい。また、この時、
図1では位置決めピン1は爪部12の下面で底面24aに接着され、該位置決めピン1の胴体部10の脚部10bの底面は基台2と接触していない。また、第2の窪み20bの側面と該位置決めピン1の胴体部10の脚部10bの側面とは接触していない。該第2の窪み20bを設け、上記のように第2の窪み20bの側面と位置決めピン1の胴体部10の側面との間に隙間を持たせることによって、余剰の接着材が当該隙間から第2の窪み20bへ流れて行き、位置決めピン1が余剰の接着材によって浮き上がるのを防ぎ、また、接着材を無駄なく接着することが可能となる。すなわち、前記位置決めピン1の胴体部10の底面は基台2と接触しておらず、第2の窪み20bの側面と該位置決めピン1の胴体部10の側面とは接触していないのが好ましい。