(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記調整タンク(2)に給水制御可能な給水装置(2b)と、前記回収タンク(4)の培養排液(B)中の養分を検出する第二養分濃度センサ(4s)とを設け、この第二養分濃度センサ(4s)の検出値と対応して定めた基準濃度に前記給水装置(2b)の給水量を調節して前記回収タンク(4)の培養排液(B)を再利用することを特徴とする請求項1に記載の養液栽培システム。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、作物が吸収消費する量は養分毎に異なる上に、養液タンク内の濃度センサによる養液濃度の検出では、混合養分の成分別濃度を把握できないので適正濃度範囲内の個別調整ができず、溶液の循環を繰り返すうちに、作物の生育に必要な養分が少なくなるとともに、作物にあまり吸収されない成分の濃度が高くなることがあり、養分不足により作物の生育が遅くなったり、品質が低下する問題が生じ、また、養分によっては、濃度が高くなり過ぎると作物の吸水や成長を阻害するものがあり、生育不良や品質の低下がより発生しやすくなる。
その一方で、特定の成分濃度を検出するには、各成分に対応するセンサを設ける必要があり、各種センサを設けることに伴って制御装置が複雑化すると共に、栽培施設の全体の部品数が増加するので、栽培コストが増大する問題がある。
【0005】
本発明の目的は、
栽培棚に供給する培養液について、簡易なセンサ構成によって適正な養分配合を可能とする養液栽培システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に係る発明は、養分濃度センサ(2s)を備えて水と養分とによる培養液(A)を所定の基準濃度に調整可能な調整タンク(2)と、この調整タンク(2)から前記培養液(A)を受けて栽培作物(P)に供給する栽培棚(3)と、この栽培棚(3)の培養排液(B)を回収する回収タンク(4)とを備えて前記調整タンク(2)で再利用可能に培養液を循環する養液栽培システムにおいて、前記栽培作物(P)の生育阻害成分であって養分として検知される第一特定成分と反応する識別試薬を溶液中に供給する試薬供給装置(T)と、前記識別試薬の反応結果に基づいて前記第一特定成分の濃度を検出する第一特定濃度検出センサ(S1)と、この第一特定濃度検出センサ(S1)の検出濃度が所定値以上の場合に作動する報知部材(R)とを備えることを特徴とする。
【0007】
さらに、前記回収タンク(4)から前記培養排液(B)を受け、また、廃棄経路に至る排出弁(V2)を備えるサンプリングタンク(5)と、機器制御装置(C)とを設け、前記試薬供給装置(T)と前記第一特定濃度検出センサ(S1)とを前記サンプリングタンク(5)に配置し、このサンプリングタンク(5)に一定期間ごとに前記培養排液(B)を受けて前記試薬供給装置(T)と前記第一特定濃度検出センサ(S1)とを作動させた後に前記廃棄経路に排出制御することを特徴とする。
【0010】
請求項
2に係る発明は、請求項
1に記載の構成において、
前記調整タンク(2)に給水制御可能な給水装置(2b)と、前記回収タンク(4)の培養排液(B)中の養分を検出する第二養分濃度センサ(4s)とを設け、この第二養分濃度センサ(4s)の検出値と対応して定めた基準濃度に前記給水装置(2b)の給水量を調節して前記回収タンク(4)の培養排液(B)を再利用することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
請求項1に係る発明は、電気伝導センサ等の簡易な養分濃度センサ(2s)に基づいて調整タンク(2)において栽培作物(P)の生育に必要な養分と水とを調整することができ、この培養液を栽培棚(3)、回収タンク(4)の順に循環することによって作物栽培が継続され、この間において、試薬供給装置(T)と第一特定濃度検出センサ(S1)とにより、硫酸マグネシウム等の培養液中の生育阻害成分の生成量を硝酸カルシウム等の識別試薬による反応物を介して高精度で把握することができ、蓄積によって生育阻害成分が許容限度を超えた場合の報知部材(R)の作動に基づいて培養液の適正化処理を行うことにより、栽培作物(P)の生育に必要な養分が不足した状態で培養液が循環し続けることを防止できるので、高機能センサを要することなく、生育不良や作物の品質の低下が防止される。
【0012】
加えて、一定期間ごとにサンプリングタンク(5)に抽出した培養排液(B)に識別試薬を投入して反応結果について濃度検出を行い、その後に培養排液(B)を廃棄経路に排出することにより、試薬や反応物が培養液の循環経路に混入することを防止できるので、作物の生育に悪影響を与えることが防止される。
【0015】
請求項
2に係る発明は、請求項
1に係る発明の効果に加え、回収タンク(4)内の培養液の養分濃度に応じて調整タンク(2)内の培養液の養分濃度を調整することにより、回収タンク(4)の培養排液を混ぜることで作物の生育に適した養分濃度にすることができるので、養分過多による生育不良や品質の低下が防止される。
【発明を実施するための形態】
【0017】
上記技術思想に基づいて具体的に構成された実施の形態について以下に図面を参照しつつ説明する。
養液栽培システム1は、
図1(a)のシステム系統図に示すように、培養液の水と養分を調整する調整タンク2と、この調整タンク2から培養液Aを受けて栽培作物Pに供給する栽培棚3と、この栽培棚3から使用済み培養液Bを回収する回収タンク4と、さらに再利用可能な培養液Cを調整タンク2に循環可能に連結構成される。
【0018】
詳細には、調整タンク2は、養分濃度センサ2sを備えて所定濃度に培養液Åを調整するべく、水と養分とをそれぞれ調節可能に構成する。培養液Aは、簡易な電気伝導センサによって検出される電気伝導率を示すEC値に基づいて、水と養分を供給することにより、栽培作物Pに必要な成分調整精度を確保することができる。
【0019】
回収タンク4は、排出弁V2の開閉制御によって培養排液Bを廃棄経路に排出可能に構成し、長期の培養液循環によってリサイクル利用が限界になった場合の報知装置Rのアラーム作動に基づいて培養排液Bを排出することによって養分の適正管理を可能とする。
【0020】
一般に養液栽培では、栽培作物Pは、生育のために培養液中から養分を吸収するが、培養液中の養分は基本的に不足が生じないように調整タンク2で追加している。栽培作物Pが吸収する養分は、生育時期(茎葉部が成長する段階、開花する時期、実をつける時期など)や、場所の環境(気温、湿度、日射量など)によって変動するので、養分の一部が栽培作物Pに吸収される量が減ると、培養液中の一部の養分の濃度が高まる。これにより、培養液は、EC値は高いが栽培作物Pが必要とする養分が不足した状態になり、リサイクル利用の限界を迎えることになる。
【0021】
しかしながら、上記のリサイクル限界を迎えた培養液と、必要な養分が含まれる培養液の違いを判断するには、特定の養分の濃度を検出するセンサ、あるいは検出機器が必要になる。こうした機器は、養液栽培システムに組み込まれていないことが多く、また高価であるので、従来は作業者が養液を少量抽出して検査機関に送り、検査結果によりリサイクル可能か否かを把握していた。検査機関に送ってから検査結果が出るまでに時間を要するので、その間にリサイクル限界を迎えると、栽培作物Pが養分不足で生育不良を起こす問題があった。こうした検査を行なわず、培養液を定期的に入れ替える方法もあるが、交換時期によっては十分リサイクル可能な培養液を廃棄することになり、コストの増大を招く問題がある。一方、交換時期によってはリサイクル限界に到達したまま培養液を使い続ける時期が生じるので、栽培作物Pが養分不足で生育不良を起こす問題がある。
【0022】
(サンプリングタンク)
報知装置Rのアラーム作動のために、
図1(b)のサンプリングタンク構成図に示すように、アクリル等の透明容器によってサンプリングタンク5を形成し、試薬供給装置Tと透過光センサによる第一特定濃度検出センサS1を設け、回収タンク4に付帯して構成する。
【0023】
試薬供給装置Tは、養分濃度センサ2sの誤検知要因となる硫酸マグネシウム等の培養液中の生育阻害成分である第一特定成分と反応する硝酸カルシウム等の識別試薬を回収タンク4から取込んだ培養排液に添加し、硫酸イオンとの反応析出物である硫酸カルシウムを透過光によって検出する第一特定濃度検出センサS1を備え、排出弁V2によって反応液を排出可能に構成する。
【0024】
上記構成のサンプリングタンク5により、硫酸マグネシウム等の培養液中の生育阻害成分の生成量を、専門的な高度の分析処理を要することなく、硝酸カルシウム等の識別試薬による反応物による濁りを介して高精度で把握することができ、生育阻害成分の許容限度を超えた場合の報知部材Rのアラーム作動時に、培養排液Bを廃棄して供給するべき培養液Aの交換等の適正化操作を行うことにより、作物の生育に必要な養分が不足した状態で培養液が循環し続けることを防止できるので、高機能センサを要することなく、生育不良や作物の品質の低下が防止される。
【0025】
(目盛式サンプリングタンク)
また、
図2のサンプリングタンクの別の構成図に示すように、サンプリングタンク5に目盛5aを設けることにより、透過光センサS1によることなく、反応析出物の沈殿量に基づいて生育阻害成分の蓄積量を的確に把握して対応することができる。
【0026】
(ナトリウムイオン対応)
また、培養排液Bのリサイクルよって培養液に蓄積される栽培作物Pの吸収阻害成分であるナトリウムイオンが過大になった場合のアラーム作動のために、
図3に示すように、ナトリウムイオン計による特定濃度検出による養液栽培システム11を構成する。
【0027】
養液栽培システム11は、培養液中で栽培作物Pの吸収阻害要因となる硫酸ナトリウム、塩化ナトリウム等の第二特定成分の濃度を検出するナトリウムイオン計による第二特定濃度検出センサS2を回収タンク4に設け、その検出濃度が所定値以上の場合に報知部材Rがアラーム作動するように構成することにより、原水Wに含まれるナトリウムイオンが長期使用で蓄積限度(例えば、ナトリウムイオンがリットル中100mg)を超えると収量低下を生じることから、培養液廃棄により、吸水阻害、生育時の蛋白質合成阻害を防止して生育の健全化を図ることができる。
【0028】
また、ナトリウムイオン計を硫酸イオン計とすることにより、硫酸イオンの過剰蓄積に対処することができる。このように、簡易な電気伝導率センサによるEC値による養分濃度を成分別に検出して養液管理が可能となる。
【0029】
(回収液基準)
次に、回収タンク4に回収した培養排液Bに基づいて給液調整する循環システムについて説明する。
回収培養液濃度による給液調整例12の要部構成を
図4に示すように、回収タンク4に第二養分濃度センサ4sを設けて検出したドレインEC値の基準超過に応じて調整タンク2の基準のEC値を低減し、栽培棚3に送る培養液の給液量を増加することにより、安定した給液管理が可能となる。
【0030】
詳細には、調整タンク2に給水する給水装置2bと、回収タンク4の第二養分濃度センサ4sとを設け、この第二養分濃度センサ4sの検出値と対応して調整タンク2の養分濃度センサ2sによる養分濃度基準を変更し、この基準濃度になるように給水装置2bの給水量を調節する。
【0031】
このように、回収タンク4内の培養液の養分濃度に対応して調整タンク2内の培養液の養分濃度を調整することにより、回収タンク4から調整タンク2に培養液を移動させて混ぜることで作物の生育に適した養分濃度にすることができるので、養分過多による生育不良や品質の低下が防止される。
【0032】
すなわち、第二養分濃度センサ4sの検出する養分濃度が高いほど、養分が作物に吸収されずに戻ってくることから、調整タンク2に水を足してタンク内の培養液の養分濃度を下げておき、回収タンク4内の培養液を調整タンク2に戻すことで、培養液中の養分濃度を基準値に近付けることができる。
【0033】
たとえば、調整タンク2の基準EC値を2.5に設定する。このとき、回収タンク4内の養液のドレインEC値が3.5未満であるときは、回収タンク4から調整タンク2に送られる養液に標準量の原水を供給して混和させれば、溶液中の養分が植物の生育に適した濃度となるので、基準EC値及び原水の供給量は変化させない。
【0034】
しかしながら、ドレインEC値が3.5以上4.0未満であるときは、回収タンク4内の養液に溶け込んでいる養分が多いので、基準EC値が2.5になるように原水を投入すると、養分の濃度が高くなる。この養液を栽培作物に供給すると、養分過多による生育不良や品質の低下が発生し得る。これを防止するには、基準EC値を2.0程度まで下げて、原水をより多く供給させ、養液中の養分の濃度が一定値を超えないようにする。このときの原水の供給量は、標準量に比べておおよそ5%増加させる。
【0035】
また、ドレインEC値が4.0以上4.5未満であるときは、基準EC値を1.7〜1.8程度まで下げ、さらに原水の供給量を増加させる。このときの原水の供給量は、標準量に比べておおよそ10%増加させる。
【0036】
また、ドレインEC値が4.5以上であるときは、基準EC値を1.5程度まで下げ、さらに原水の供給量を増加させる。このときの原水の供給量は、標準量に比べておおよそ20%増加させる。
【0037】
なお、上記の基準EC値、ドレインEC値、及び原水の供給量は、あくまで参考値であり、養液に使用する養分や養液を供給する作物、及び作物の生育段階に合わせて、増減値は変更されるものとする。
また、ドレインEC値が3.5を大きく下回った時は、養液中の養分が不足する可能性があるので、原水に加えて養分を調整タンク2に供給する構成としてもよい。
【0038】
一方、ドレインEC値が4.5を大きく上回ったとき(例えば、5.5以上)は、原水の供給量が膨大になり、調整タンク2の容量を上回りかねないので、調整タンク2に供給する前に、養液の一部を回収タンク4から廃棄する構成としてもよい。また、このように養液中の養分が過度に高くなるときは、養液中の養分が作物に吸収されていない等の問題が生じている可能性があるので、報知装置Rを作動させる、またはメール等を送信する等の方法で濃度の異常を作業者に報知すると、作物の生育に適さない養液の供給が防止される。
【0039】
(天窓開閉制御)
次に、栽培設備の天窓21の開度調節機構を
図5に示すように、開閉ロッド21aをラックアンドピニオン機構22を介して電動進退制御する天窓21の開度は、開度計や駆動モータにポジションメータを備えない場合について、モータの通電時間に基づいて算出され、この算出開度は、風の負荷等の影響による開度変化を受けて誤差を含み、その累積によって誤差が拡大することから、一定時間毎に天窓21を全閉(モータ付属のリミットスイッチで停止)する制御を加える。
【0040】
天窓21を開くとき、ポジションメータ無しで所定の開度とする方法について説明する。天窓21が全閉から全開になるまでに駆動モータが60秒作動するものを例とすると、天窓21を10%開放するときは、駆動モータが約6秒間作動したところで停止させる。なお、実際は駆動モータの駆動開始から天窓21の開放に十分な回転数に到達するまでに若干のタイムラグがあるので、駆動モータの回転数が規定回転数に到達するまでにかかった時間を駆動モータの作動時間に追加するものとしてもよい。
【0041】
この全閉制御により、大きな誤差を有する状況においても、全閉状態を数分間維持することにより、全閉状態を開度0%として誤差をリセットすることができるので、外部条件の影響を最小限に抑えることができ、低コストで高精度の開閉制御が可能となる。
また、モータの動作回数が正逆転を合わせて所定回数(例:50回)に達したときに天窓21を全閉することによっても、前記制御と同様に、誤差の累積を抑えることができ、高精度の開閉制御が可能となる。
【0042】
(遮光カーテン開閉制御)
次に、栽培設備上部を覆う遮光カーテンの開閉制御について、室内湿度の低下に応じて遮光カーテンを閉じることで遮光率を増加するように湿度対応制御を行う。
例えば、湿度60%未満で遮光カーテン制御をオンとして遮光開度60%、また、50%、40%の湿度低下と対応して遮光開度を70%、80%に増加して湿度対応制御することにより、低湿度による作物の蒸散過多(萎れ)を抑制して作物の生理障害の低減が可能となる。
【0043】
また、室温の上昇に応じて遮光カーテンを閉じて遮光率を増加する。
例えば、室温が28℃超で遮光カーテン制御をオンとして遮光開度60%、また、30℃で遮光開度を70%、35℃超で80%として室温対応制御することにより、室温上昇による作物の蒸散過多(萎れ)を抑制して作物の生理障害の低減が可能となる。
【0044】
また、日射量対応制御については、日中の日射量の最大と最小およびその継続時間を計測し、その最大と最小の値および時間により、遮光カーテンの遮光状態を維持するように制御し、
図6の遮光カーテンの日射量対応の制御例に示すように、日射量の上下が大きい日の遮光カーテン開閉変化を抑えて安定的に制御することにより、作物体の温度の急変化、蒸散量過多・過少を抑制することができる。
【0045】
なお、日中の日射量の最大、最小、及びこれらの継続時間については、季節や当日の天気によって大幅に変動するので、各季節の数日分のデータから得るものとする。同じ施設で過去に同様の栽培作物Pを栽培したのであれば、過去のデータを基準とする。複数年分のデータがあれば、実際に栽培をする時期に近い環境のデータを用いると、より効果的な遮光カーテンの開閉制御が可能になる。
【0046】
遮光カーテンは、日射量が多いと閉じて栽培作物Pの過剰な光合成を防止すると共に、日射量が少ないと開いて栽培作物Pの光合成を促すものである。このため、まず、遮光カーテンを開閉する基準となる日射量を決める必要がある。例えば、この開閉基準値を600Wとする。現在の日射量が開閉基準値を超えているとき、即ち600W以上であるときは、日射量が多過ぎると判断して遮光カーテンを閉じる。一方、日射量が開閉基準値未満であるとき、即ち600Wを下回ったときは、遮光カーテン越しでは光合成に必要な日射量を得られないと判断して遮光カーテンを開放する。これにより、少なくとも日中において、栽培作物Pの栽培に適した日射量を確保することができる。
【0047】
しかしながら、雲が全天を覆っておらず、短時間で日射を遮ったり通したりする天候においては、日射量が短時間、例えば10分程度の間隔で開閉基準値を超えたり下回ったりを繰り返すことになる。栽培設備に設ける遮光カーテンは相応に長く、全開から全閉、または全閉から全開にするには、数分、設備の大きさによっては十数分を要するので、日射量が短時間で変化するたびに開閉していると、日射量が多くなるときに遮光カーテンが開くことになり、設備内の気温が過度に上昇したり、栽培作物Pが過度に光合成をして蒸散過多が発生したりして、生育不良を起こすことがある。逆に、日射量が少なくなったときに遮光カーテンが閉められ、十分な日光が設備内に取り込めず、光合成が十分にできず、やはり生育不良を起こすことがある。
【0048】
これを防止すべく、
図6に示すとおり、遮光カーテンを閉めた状態で、日射量が所定時間(例:15分)内に開閉基準値を超えたり下回ったりを繰り返すときは、日射量が600Wを下回っても遮光カーテンを開放しない構成とする。
【0049】
これにより、短時間のうちに日射量が600Wを再度超えても、遮光カーテンは閉まった状態であるので、強い日光が設備内に入り込むことを防止でき、気温の上昇や過度の光合成による蒸散過多の発生が防止され、栽培作物Pの生育が安定する。
【0050】
また、遮光カーテンを開けた状態で、日射量が所定時間(例:15分)内に開閉基準値を超えたり下回ったりを繰り返すときは、日射量が600Wを上回っても遮光カーテンを閉じない構成とする。
【0051】
これにより、短時間のうちに日射量が600Wを再度下回っても、遮光カーテンは開いた状態であるので、日光を設備内に取り込むことができるので、光合成不足による生育不良の発生が防止され、栽培作物Pの生育が安定する。
【0052】
(天窓開閉制御/雨天対応)
降雨時は、
図7の温室構成の側面図と降雨時の風速対応最大開度の制御例に示すように、風上側と風下側の天窓SL1,SL2別に、風速計WV1,WV2による風速に対応して最大開度を設定することにより、無風であれば天窓を少し大きく開け、風速上昇に伴って雨の吹き込みを抑えるように天窓開度を小さくすることにより、降雨時における天窓開度を最大限に確保して温室内の温湿度の変動を小さくすることができる。
【0053】
設備内に雨が入り込むと、栽培作物Pに計画外の水が供給されるので、水分過多による根枯れなどの生育障害が発生するおそれがある。また、野外から入り込む雨水は殺菌されていないので、大量に設備内に入り込むと栽培作物Pが菌類やウィルスに汚染され、生育障害を起こしたり、枯れてしまうおそれがある。栽培設備は基本的に閉鎖環境であるので、一旦菌やウィルスに汚染されると設備内全体に蔓延する可能性が高い。また、設備内に雨水が溜まると蒸発し、設備内の湿度を上昇させるが、日照時に設備内が高温化しやすくなり、栽培作物Pが萎れるなどの障害が発生するおそれがある。さらに、強風が吹き込むと、栽培作物Pの姿勢が生育や栽培途中の作業(不要な葉や実の除去、生育状況の測定など)に適さない姿勢になり、作業能率の低下や収穫物の品質の低下が発生するおそれや、花や果実が吹き飛ばされてしまうがある。
【0054】
一方、天窓を完全に閉めてしまうと、栽培作物Pの生育により生じる熱や水蒸気により、設備内の温度や湿度が上昇しやすくなる。これにより、栽培作物Pの生育が阻害され、生育不良や収穫物の品質低下が生じる問題がある。エアコン等を用いれば、温度及び湿度を適正に管理できるが、余分に配電設備が必要になると共に、電力消費等が増大する問題がある。
【0055】
これを防止すべく、上記のとおり風速に合わせて天窓の最大開度を変更することにより、設備内への雨水の浸入量を抑制しつつ、外気の取り込みを可能とすることができる。
【0056】
風速に合わせた天窓の開度の一例として、風上側の風力が2km/s未満で、風下側の風力が3km/s未満であるときは、雨に晒されやすい風上側の天窓の最大開度は、全開時の5%までとし、雨に晒されにくい風下側の天窓の最大開度は、全開時の15まで%とする。なお、ここに示す最大開度は一例であり、また、1時間当たりの雨量が1mm程度の弱い雨を想定している。1時間当たりの雨量がより多いときは、最大開度は上記の数字未満になるよう、自動的に制御されるものとしてもよい。
【0057】
また、風上側の風力が2km/s以上4km/s未満で、風下側の風力が3km/s以上6km/s未満であるときは、風上側の天窓の最大開度は、全開時の3%までとし、風下側の天窓の最大開度は、全開時の10%までとする。
【0058】
また、風上側の風力が4km/s以上6km/s未満で、風下側の風力が6km/s以上8km/s未満であるときは、風上側の天窓は多少なりとも開いていると風圧により隙間から雨水が入り込むおそれが高いので全閉とし、風下側の天窓の最大開度は、全開時の5%までとする。
【0059】
そして、風上側の風力が6km/s以上で、風下側の風力が8km/s以上であるときは、強風により栽培作物Pの姿勢が乱れたり、花や果実が吹き飛ばされる可能性があるので、風上側、風下側のいずれの天窓も全閉とし、風の流入を防止する。
上記により、設備内への雨水や強風の進入を防止しつつ、設備内の温度や湿度が上昇することを抑えられる。
【0060】
(構成の要点)
上述の構成の養液栽培システムの構成の要点をまとめると、次のとおりである。
第一に、調整タンク2、栽培棚3、回収タンク4による培養液循環式作物栽培システムにおいて、栽培作物Pの生育阻害成分であって養分として検知される第一特定成分と反応する識別試薬を溶液中に供給する試薬供給装置Tと、識別試薬の反応結果に基づいて第一特定成分の濃度を検出する第一特定濃度検出センサS1と、この第一特定濃度検出センサS1の検出濃度が所定値以上の場合に作動する報知部材Rとを設けて作物栽培システムを構成することにより、電気伝導センサ等の簡易な養分濃度センサ2sに基づいて調整タンク2において栽培作物Pの生育に必要な養分と水とを調整することができ、この培養液を栽培棚3、回収タンク4の順に循環することによって作物栽培が継続され、この間において、試薬供給装置Tと第一特定濃度検出センサS1とにより、硫酸マグネシウム等の培養液中の生育阻害成分の生成量を硝酸カルシウム等の識別試薬による反応物を介して高精度で把握することができ、蓄積によって生育阻害成分が許容限度を超えた場合の報知部材Rの作動に基づいて培養液の適正化処理を行うことにより、栽培作物Pの生育に必要な養分が不足した状態で培養液が循環し続けることを防止できるので、高機能センサを要することなく、生育不良や作物の品質の低下が防止される。
【0061】
第二に、回収タンク4から培養排液Bを受け、また、廃棄経路に至る排出弁V2を備えるサンプリングタンク5と、機器制御装置Cとを設け、試薬供給装置Tと第一特定濃度検出センサS1とをサンプリングタンク5に配置し、このサンプリングタンク5に一定期間ごとに培養排液Bを受けて試薬供給装置Tと第一特定濃度検出センサS1とを作動させた後に廃棄経路に排出制御するように構成することにより、一定期間ごとにサンプリングタンク5に抽出した培養排液Bに識別試薬を投入して反応結果について濃度検出を行い、その後に培養排液Bを廃棄経路に排出することにより、試薬や反応物が培養液の循環経路に混入することを防止できるので、作物の生育に悪影響を与えることが防止される。
【0062】
第三に、培養液循環式作物栽培システムにおいて、回収タンク4内で栽培作物Pの吸収阻害要因となる第二特定成分の濃度を検出する第二特定濃度検出センサS2と、この第二特定濃度検出センサS2の検出濃度が所定値以上の場合に作動する報知部材Rとを設けて構成することにより、電気伝導センサ等の簡易な養分濃度センサ2sによって調整タンク2において栽培作物Pの生育に必要な養分と水とを調整することができ、この培養液を栽培棚3、回収タンク4の順に循環することによって作物栽培が継続され、この間において、第二特定濃度検出センサS2により、硫酸ナトリウム等の培養液の吸収阻害成分の生成量を高精度で把握することができ、吸収阻害成分の許容限度を超えた場合の報知部材Rの作動時に、培養液の適正化処理を行うことにより、栽培作物Pの生育に必要な養分が不足した状態で培養液が循環し続けることを防止できるので、高機能センサを要することなく、生育不良や作物の品質の低下が防止される。
【0063】
第四に、回収タンク4の排出口を開閉制御可能な排出弁V2と、この排出弁V2から排出液を受ける廃棄経路と、第一特定濃度検出センサS1または第二特定濃度検出センサS2の一方または両方が所定値以上の濃度を検出した場合に、排出弁V2を排出制御する制御装置Cとを設けることにより、培養液中の第一特定成分または第二特定成分の一方または両方が所定濃度以上になると培養液を回収タンク4から溶液を排出して、循環に適さない培養液を使用し続けることを防止できるので、生育不良や作物の品質の低下が防止され、また、所定期間循環した古い培養液を自動的に排出することにより、作業者が培養液の交換作業を行う必要がなくなるので、作業者の労力が軽減されると共に、システム運用の省力化が図られる。
【0064】
第五に、調整タンク2に給水制御可能な給水装置2bと、回収タンク4の培養排液B中の養分を検出する第二養分濃度センサ4sとを設け、この第二養分濃度センサ4sの検出値と対応して定めた基準濃度に給水装置2bの給水量を調節して回収タンク4の培養排液Bを再利用する構成により、回収タンク4内の培養液の養分濃度に応じて調整タンク2内の培養液の養分濃度を調整し、回収タンク4の培養排液を混ぜることで作物の生育に適した養分濃度にすることができるので、養分過多による生育不良や品質の低下が防止される。