(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
排水を排出するとともに排水の一部を貯留するための筒部、前記筒部の上部に設けられた上流側接続部、及び前記筒部の周面に設けられた下流側接続部を有する金属部材と、
前記筒部の内部に挿入され、前記筒部の内部に、前記上流側接続部から下方に排水を導く上流側通路と、前記金属部材とともに形成され前記上流側通路に連続して前記下流側接続部まで上方に排水を導く下流側通路とを形成する樹脂部材と、を備え、
前記上流側接続部には、ねじ部が設けられ、前記ねじ部が設けられた部分の前記上流側接続部の肉厚は、前記筒部の肉厚よりも大きく設定され、
前記筒部の下端には、前記樹脂部材を挿入可能な開口部が形成されるとともに、前記開口部を覆う着脱可能な蓋部が設けられている、
ことを特徴とする排水装置。
前記樹脂部材及び前記金属部材のいずれか一方には、前記金属部材の軸線を中心とする回転方向に関して前記樹脂部材を前記金属部材に対して位置決めするための爪部が設けられ、前記樹脂部材及び前記金属部材のいずれか他方には、前記爪部を受け入れるための受部が設けられている、
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の排水装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような排水装置では、サイフォン体は、ディップチューブ延長管との接続部分と、下流側パイプとの接続部分とによって支持されている。このため、堅牢な排水装置を得るには、これらの接続部分における強度を確保することが重要となる。
しかしながら、上記の構造の排水装置では、ディップチューブ延長管との接続部分も、下流側パイプとの接続部分も樹脂で形成されており、必要な支持強度を確保することができない。
一方、強度を確保するためサイフォン体を例えば金属等の材料で形成しようとすると、サイフォン体の内部の形状が複雑であるため、製造が難しい。更に、接続部分における必要な強度を確保するために接続部分を強固に構成しようとすると、接続部分の寸法が大きくなり、排水装置の外観を損なうことになる。
【0005】
本発明の目的は、外観を損なうことなく接続部分の強度を確保することができる排水装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するために、本発明の排水装置は、排水を排出するとともに排水の一部を貯留するための筒部、筒部の上部に設けられた上流側接続部、及び筒部の周面に設けられた下流側接続部を有する金属部材と、筒部の内部に挿入され、筒部の内部に、上流側接続部から下方に排水を導く上流側通路と、
金属部材とともに形成され上流側通路に連続して下流側接続部まで上方に排水を導く下流側通路とを形成する樹脂部材と、を備え、上流側接続部には、ねじ部が設けられ、ねじ部が設けられた部分の上流側接続部の肉厚は、筒部の肉厚よりも大きく設定され、筒部の下端には、樹脂部材を挿入可能な開口部が形成される
とともに、開口部を覆う着脱可能な蓋部が設けられている、ことを特徴としている。
【0007】
このように構成された本発明においては、金属部材が筒部、上流側接続部、及び下流側接続部を有する、つまりこれらの筒部、上流側接続部、及び下流側接続部が金属で形成されているので、上流側接続部及び下流側接続部が堅固になり、排水装置の支持強度が向上する。また、ねじ部が設けられた部分の上流側接続部の肉厚が筒部の肉厚よりも大きく設定されているので、上流側接続部の接続強度が確保され、排水装置の支持強度が確保される。一方、筒部は、ねじ部が設けられた部分の上流側接続部の肉厚よりも小さい肉厚に設定されているので、筒部の重量が軽くなるから、上流側接続部及び下流側接続部にかかる荷重も小さくなり、これによっても上流側接続部及び下流側接続部において排水装置を支持しやすくなる。
【0008】
また、このとき、金属部材の内部に樹脂部材が設けられ、樹脂部材によって上流側通路
が、樹脂部材及び金属部材によって下流側通路が形成されているので、筒部内部の複雑な流路形状が樹脂で容易に成形可能になる。また、金属部材の内部に樹脂部材が設けられることによって排水装置全体の重量が軽くなるから、上流側接続部及び下流側接続部にかかる荷重も小さくなり、これによっても上流側接続部及び下流側接続部において排水装置を支持しやすくなる。
一方、樹脂部材の外側に金属部材が設けられているので、排水装置の外観が良好になる。
【0009】
そして、金属部材の筒部の下端には、樹脂部材を挿入可能な開口部が形成されているので、樹脂部材を金属部材の筒部に下から挿入可能となる。ここで、樹脂部材を筒部の上側から挿入しようとすると、筒部の上部に樹脂部材を受け入れるための開口を形成する必要があり、筒部の上部の寸法に制限が生じる。これに加えて、筒部の上部に上流側接続部のねじ部を形成する場合、筒部の上部の寸法、特に径方向の寸法が大きくなってしまう。本発明では、樹脂部材を金属部材の下端の開口部から挿入するので、筒部上部の寸法の自由度が高くなるから、筒部上部の寸法を小さくしてねじ部の必要な肉厚を確保することも可能になり、必要な強度が確保される。
以上のような構成により、排水装置の外観を損なうことなく必要な接続強度を確保することが可能になる。
【0010】
本発明において、好ましくは、開口部を覆う着脱可能な蓋部を更に有する。
このように構成された本発明においては、蓋部を取り外せば、金属部材の開口部が開放され、樹脂部材の下部に外部からアクセス可能になる。よって排水装置内部の掃除が容易になる。
【0011】
本発明において、好ましくは、樹脂部材が金属部材の開口部から下方に抜けるのを防止する抜け止めを更に有する。
このように構成された本発明においては、金属部材の下端に開口部が設けられているため、蓋部を取り外すと、樹脂部材が下方に落下するおそれがある。本発明では、抜け止めを有することにより、蓋部を取り外した際に樹脂部材が金属部材から下方に抜けてしまうのが防止されるから、排水装置内部の掃除が容易になる。
【0012】
本発明において、好ましくは、抜け止めは、樹脂製のCリングである。
このように構成された本発明においては、抜け止めが樹脂製のCリングであるから、簡単な構造で樹脂部材が金属部材から抜けてしまうのが防止される。
【0013】
本発明において、好ましくは、樹脂部材及び金属部材のいずれか一方には、金属部材の軸線を中心とする回転方向に関して樹脂部材を金属部材に対して位置決めするための爪部が設けられ、樹脂部材及び金属部材のいずれか他方には、爪部を受け入れるための受部が設けられている。
このように構成された本発明においては、樹脂部材及び金属部材のいずれか一方に爪部が、いずれか他方に受部が設けられているので、爪部を受部内に配置することにより、樹脂部材の金属部材に対する回転方向の向きが決まる。これにより、例えばメンテナンス等で樹脂部材を金属部材から外して再度取り付ける場合に、誤取付が防止される。
【0014】
本発明において、好ましくは、金属部材は、ステンレス鋼、青銅、耐脱亜鉛処理を施した黄銅のいずれかで形成される。
このように構成された本発明においては、金属部材がステンレス鋼、青銅、耐脱亜鉛処理を施した黄銅のいずれかで形成されるので、耐食性が高い金属部材が形成される。よって、必要な耐食性を確保するのに必要な金属部材の肉厚を薄くすることが可能であるから、排水装置の軽量化が促進され、上流側接続部及び下流側接続部にかかる荷重も小さくなり、これによっても上流側接続部及び下流側接続部において排水装置を支持しやすくなる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の好ましい実施形態を添付図面を参照して説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る排水装置1が取り付けられた状態を示す斜視図である。本実施形態の排水装置1は、洗面台のボウル2から排出される排水を、建物の壁面等の配管(図示せず)へ排出するためにボウル2と壁面の配管との間に取り付けられる。ボウル2の排水口4には、下方に延びるとともに排水装置1の上流側に配置される上流側パイプ6が接続されている。また、建物の壁面等の配管には、横方向(水平方向)に延びるとともに排水装置1の下流側に配置される下流側パイプ8が接続されている。
【0017】
図2は、本実施形態に係る排水装置1の縦断面図である。この
図2に示すように、排水装置1は、金属で形成された金属部材10と、金属部材10の内部に挿入された樹脂部材12とを有する。
金属部材10は、全体が、例えばステンレス鋼、青銅、耐脱亜鉛処理を施した黄銅等の金属材料で形成されており、排水を排出するとともに排水の一部を貯留するための筒部14と、筒部14の上部に設けられた上流側接続部16と、筒部14の周面に設けられた下流側接続部18と、を有する。
【0018】
筒部14は、上端が閉鎖され下端が開放された、筒状部材である。
筒部14の上端には上方に突出するように上流側接続部16が一体的に形成されている。また、筒部14の上端には、下方に突出するように、樹脂部材14を筒部14に取り付けるための取付機構20が一体的に形成されている。上流側接続部16と取付機構20には、これらの両方を上下方向に貫通するように、上流側挿入孔22が形成されており、この上流側挿入孔22には上流側パイプ6が挿入されている。
【0019】
図3は、
図2の領域IIIの部分拡大図であり、上流側接続部16の部分を拡大した図である。この
図3に示すように、取付機構20は、筒部14の上面から筒部14の軸線方向内方、つまり軸線方向下方に突出するように筒状に形成されている。取付機構20の下端近傍の外周面には、樹脂部材12との密封性を確保するためのOリング24が配置される第1の段差26が形成されている。また、第1の段差26の上方の外周面には、樹脂部材12の形状に対応した第2の段差28及び第3の段差29が形成されている。第1及び第2の段差26,28により、取付機構20の外周面は、上方に向かうにつれて直径が段階的に大きくなっている。
また、取付機構20において第2の段差28から上方の部分には、その外周上の一部が径方向に直交する方向の平面で切り欠かれた切欠部30が形成されている(
図5参照)。切欠部30は、第2の段差28の位置から筒部14の内部空間の上端まで延びている。切欠部30は、取付機構20の周方向に関して下流側接続部18に最も近い位置に形成されており、切欠部30の平面は、下流側接続部18の軸線方向にほぼ直交する。
【0020】
図2に戻って、筒部14の下端には、樹脂部材12を下から挿入可能な開口部32が形成されている。筒部14の下端の内面、つまり開口部32の近傍の内面には、ねじ34が形成されている。また、筒部14の下端には、開口部32を覆う蓋部36が設けられている。蓋部36の外周にはねじ38が形成されており、開口部32のねじ34と螺合することにより、筒部14の下端に着脱可能に取り付けられている。
【0021】
また、筒部14においてねじ34の上方且つ樹脂部材12の下方には、内周面に周方向全周に延びる凹部40が形成されている。凹部40には、樹脂部材12が金属部材10の開口部32から下方に抜けるのを防止する抜け止めとして、樹脂製のCリング42がはめ込まれている。Cリング42は、凹部40内に取り付けられたとき、筒部14の内周面よりも径方向内方(内側)に突出するように配置されており、Cリング42の上面には、樹脂部材12の下面が当接可能になっている。
【0022】
上流側接続部16は、
図3に示すように、筒部14の上端面から上方に突出するとともに、中央に上流側挿入孔22が形成された筒状に形成されている。上流側接続部16の外周面には、ねじ部44が形成されている。
ここで、ねじ部44のねじ山における上流側接続部16の直径D
1は、筒部14の直径D
2よりも小さく設定されている。これにより、上流側接続部16と筒部14との間には、肩部46が形成されている。また、ねじ部44のねじ山から上流側接続部16の内周面、すなわち上流側挿入孔22の内周面までの、上流側接続部16の肉厚T
1は、筒部14の肉厚T
2よりも大きく設定されている。
【0023】
上流側接続部16のねじ部44には、上流側ナット48のねじ部50が螺合されている。上流側ナット48の外周面の直径D
3は、筒部14の直径D
2にほぼ等しく設定されている。また、上流側接続部16の上面と上流側ナット48の内面との間にはOリング52が設けられている。このOリング52により、上流側接続部16と上流側挿入孔22との間がシールされている。このような構造により、排水装置1の上部が上流側パイプ6に支持・接続される。
【0024】
下流側接続部18は、
図2及び
図3に示すように、筒部14の周面から横方向(水平方向)に延び、その中央には、筒部14の内部空間と連通する下流側接続孔54が形成されている。下流側接続孔54の最上部は、取付機構20の最下端よりも上方に位置しており、下流側接続孔54の最下部は、取付機構20の最下端よりも下方に位置している。
また、下流側接続部18の外周面にはねじ部56が形成されている。このねじ部56には、下流側ナット58のねじ部60が螺合されている。そして、下流側接続部18の端部と、下流側パイプ8の端部に形成されたフランジ部62との間には、シール部材64が配置され、このシール部材64により、下流側接続部18と下流側パイプ8との間がシールされている。
このような構造により、排水装置1の側方部が下流側パイプ8に支持・接続される。
【0025】
図4は、本実施形態に係る樹脂部材12の斜視図である。この
図4に示すように、樹脂部材12は、全体が樹脂材料で一体的に形成されており、筒部14の上側に配置された上側部分66と、上側部分66に連続して形成された下側部分68と、下側部分68の更に下側に設けられ樹脂部材12の下側部分68を位置決めする位置決め部70と、を有する。
【0026】
上側部分66は、筒状に形成され、その断面形状が筒部14の断面形状に対応している。つまり、上側部分66の断面形状は、筒部14と同様に円形であり、その外径は筒部14の内径にほぼ等しい。したがって、樹脂部材12を金属部材10に挿入したとき、上側部分66は、その全外周面が筒部14の内周面にほぼ当接される。
上側部分66の内周面には、取付機構20の第1の段差26及び第2の段差28にそれぞれ対向する第1の段部72及び第2の段部74が設けられている。これにより、上側部分66の内周面の直径は、上方に向かうにつれて段階的に大きくなっている。第1の段部72は、第1の段差26に対向し、その間にはOリング24が配置され、第2の段部74は、第2の段差28に対向している。また、上側部分66の上端面76は、第3の段差29に対向している。
【0027】
図5は、
図2のV−V線に沿った横断面図である。この
図5及び前述の
図4に示すように、上側部分66の上端面76には、上端面76から上方に突出する爪部78が延びている。爪部78は、上端面76の円周上の一部に設けられており、
図5に示すように、樹脂部材12が金属部材10内に挿入されたとき、取付機構20の切欠部30に受け入れられる。したがって、本実施形態では、切欠部30は、爪部78を受け入れるための受部として機能する。
【0028】
図6は、
図2のVI−VI線に沿った横断面図である。この
図6及び前述の
図4に示すように、下側部分68は、上側部分66から連続して形成され、上側部分66の外壁と同じ円弧半径を有する円筒面80と、円筒面80の両端に接続するとともに、筒部14の内部の空間を仕切る仕切り面82とを有する。
円筒面80は、樹脂部材12が金属部材10に挿入されたとき、下流側接続部18から遠い側に位置するように、つまり爪部78と半径方向反対側に設けられている。円筒面80は、上側部分66と同じ円弧半径を有するので、樹脂部材12が金属部材10に挿入されたとき、円筒面80の全外周面が筒部14にほぼ当接する。また、円筒面80の内壁には、下流側接続部18の下流側接続孔54の内周面最下部と同じ高さ位置に、段差部81が形成されている。この段差部81により、円筒面80の内壁の円弧半径は、段差部81の上方の部分の方が下方の部分よりも小さくなっている。
【0029】
仕切り面82は、筒部14の内周面の直径方向、つまり上側部分66及び下側部分68の直径方向に上下方向に沿って、筒部14の内部の空間を縦に半分に仕切るように延びている。したがって
図6に示すように、筒部14が円形の断面形状であるのに対して、下側部分68の断面形状は、円筒面80のみが筒部14の断面形状に対応した形の、半円形状になっており、筒部14の断面形状の約半分に対応する形状となっている。よって下側部分68の断面積は、上側部分66の断面積の約半分であり、また筒部14の断面積の約半分にほぼ等しい。
仕切り面82の上端は、上側部分66の下端に連続するように湾曲している。
【0030】
位置決め部70は、下側部分68の円筒面80の下端に連続して形成された環状部分であり、その半径は、上側部分66の半径と同じであり、また下側部分68の円筒面80の円弧半径と同じである。したがって樹脂部材12が金属部材10に挿入されたとき、位置決め部70の全外周面が筒部14の内周面にほぼ当接する。この位置決め部70により、下側部分68の下部の外周面が筒部14の内周面に当接した状態で保持され、下側部分68の筒部14内部における位置が位置決めされる。
ここで、下側部分68の下端は、断面半円形に形成される一方で、位置決め部70は断面円形に形成されているので、下側部分68の仕切り面82の下端と位置決め部70の上端の間には、半円形の開口部84が形成される。
【0031】
このような下側部分68の構造により、筒部14の内部には、上流側接続部16から樹脂部材12に流入した排水を下方に導く上流側通路86と、上流側通路86から流入した排水を上方へ下流側接続部18まで導く下流側通路88と、が形成される。
上流側通路86は、上側部分66の内壁で囲まれた空間と、下側部分68の円筒面80の内面及び仕切り面82の内面、つまり下側部分68の内壁で囲まれた空間とによって形成されている。したがって、上流側通路86は上側部分66の上端から下側部分68の下端まで全周が樹脂材料で形成される。また、上流側通路68は、下側部分68において流路断面積が小さくなっているとともに、下流側接続部18から半径方向に遠い側において筒部14の内周面に当接するように設けられ、したがって筒部14の中心に対して偏芯して設けられている。
【0032】
下流側通路88は、下側部分68の仕切り面82の外壁と、金属部材10の内周面とで囲まれた空間によって形成されている。したがって、下流側通路88は、下側部分66の上端から位置決め部70の上端まで、下流側接続部18から半径方向に遠い側において樹脂材料で形成され、下流側接続部18から半径方向に近い側において金属材料で形成される。下流側通路88の流路断面積は、上流側通路86の下側部分66の流路断面積とほぼ等しく設定され、したがって筒部14の断面積の約半分に設定されている。下流側通路88は、下流側接続部18に近い側に配置され、したがって筒部14の中心に対して偏芯して設けられている。
【0033】
次に、金属部材10に樹脂部材12を挿入して排水装置1を組み立てる手順について説明する。
図7は、本実施形態に係る排水装置1において樹脂部材12を金属部材10に挿入する様子を示す縦断面図であり、
図8は、本実施形態に係る排水装置1において金属部材10に蓋部36を取り付ける様子を示す縦断面図である。
まず、樹脂部材12を金属部材10に挿入する際には、
図7に示すように、蓋部36を取り外し、Cリング42を凹部40から取り外した状態で、筒部14の下端の開口部32に下方から樹脂部材12を金属部材10に挿入する。このとき、樹脂部材12の爪部78が切欠部30に受け入れられることにより、樹脂部材12が金属部材10の軸線を中心とする回転方向に関して、金属部材10内で位置決めされる。その後、
図8に示すように、凹部40にCリング42を取り付けて樹脂部材12が金属部材10から下方に抜けるのを防止する。そして、蓋部36を筒部14の下端に取り付けることにより開口部32を覆う。
【0034】
次に、排水装置1の内部における排水の流れについて説明する。
図9は、本実施形態に係る排水装置1の排水の流れを示す縦断面図であり、
図10は、本実施形態に係る排水装置1に排水が貯留した状態を示す縦断面図である。排水装置1に排水が流入した場合、
図9に示すように、上流側パイプ6からの排水は、樹脂部材12の上側部分66から下側部分68の上流側通路86へ流入し、下側部分68の仕切り面82の下端よりも下方の領域を通って開口部84から下流側通路88に流入し、下流側パイプ8へ排出される。
【0035】
排水装置の流れが止まった状態では、
図10に示すように、筒部14内部には、排水の一部が貯留される。排水は、筒部14の下流側接続孔54の最下部の高さ位置まで貯留しており、この高さ位置つまり喫水面の高さ位置は、樹脂部材12の円筒面80の段差部81の高さ位置にほぼ一致する。
【0036】
したがって、樹脂部材12の上端、つまり上側部分66の上端は、排水が流れている場合でも流れていない場合でも、常に喫水面よりも上方に位置している。また、樹脂部材12の下端、つまり位置決め部70の下端及び仕切り面82の下端は、常に喫水面よりも下方に位置している。なお、位置決め部70の上端も、常に喫水面よりも下方に位置している。よって、樹脂部材12と金属部材10との間の境界端面は、喫水面付近に配置されず、喫水面に露出しない。
また、下流側通路88において下流側接続部18に近い側の面は、金属材料10で形成されているので、喫水面付近に位置する下流側接続部18の内周面最下部とこれに連続する下流側通路88の外周面との接続部分は金属部材10のみで形成されている。
【0037】
このように構成された本実施形態によれば、次のような優れた効果を得ることができる。
筒部14、上流側接続部16、及び下流側接続部18が金属材料で形成されているので、上流側接続部16及び下流側接続部18を堅固に形成することができ、排水装置1の支持強度を向上させることができる。また、ねじ部44が設けられた部分の上流側接続部16の肉厚T
1が筒部14の肉厚T
2よりも大きく設定されているので、上流側接続部16の接続強度を確保でき、排水装置1の支持強度を確保することができる、一方で、筒部14の肉厚T
2が筒部14の上流側接続部16の肉厚T
1より小さいので、筒部14の重量を軽くすることができる。これにより、上流側接続部16及び下流側接続部18にかかる荷重を小さくすることができるので、これによっても上流側接続部16及び下流側接続部18における排水装置1の支持強度を確保することができる。
【0038】
樹脂部材12が上流側通路86及び下流側通路88が形成しているので、筒部14の内部に複雑な流路形状を容易に成形することができる。また、金属部材10の内部に樹脂部材12を挿入することによって排水装置1全体の重量を軽くすることができるから、上流側接続部16及び下流側接続部18にかかる荷重をより小さくすることができ、上流側接続部16及び下流側接続部18における排水装置1の支持強度を確保することができる。
一方、樹脂部材12の外側に金属部材10を設けているので、排水装置1の外観を良好にすることができる。
【0039】
筒部14の下端に、樹脂部材12を挿入可能な開口部32を形成したので、樹脂部材12を金属部材10の筒部14に下から挿入することができる。ここで、樹脂部材を筒部の上側から挿入しようとした場合、筒部の上部に樹脂部材を受け入れるための開口を形成する必要がある。このため、筒部の上部の径寸法を樹脂部材の径寸法に合わせて形成しなければならず、筒部の上部の上流側接続部の径寸法を大きくしなければならない。これに加えて、上流側接続部にねじ部を形成する際には、必要な強度を確保するためにはねじ部の肉厚を大きくしなければならず、上流接続部の形状が更に大きくなってしまう。本実施形態では、樹脂部材12を金属部材10の下端の開口部32から挿入するので、筒部14上部の寸法の自由度が高くなるから、ねじ部44に必要な肉厚T
1を確保しながら径寸法が大きくなるのを防止できる。よって、排水装置1の外観を損なうことなく必要な接続強度を確保することができる。
【0040】
筒部14に、開口部32を覆う着脱可能な蓋部36を設けたので、蓋部36を取り外せば、金属部材10の開口部32が開放され、樹脂部材12の下部に外部からアクセス可能になる。よって排水装置1内部を容易に掃除することができる。
【0041】
筒部14の下端にCリング42を設けたので、蓋部36を取り外した際に樹脂部材12が金属部材10から下方に抜けてしまうのを、簡単な構造で防止することができる。よって排水装置1内部の掃除を容易に行うことができる。
【0042】
樹脂部材12には、爪部78を形成し、金属部材10の取付機構20に切欠部30を形成したので、金属部材10の軸線を中心とする回転方向に関して樹脂部材12を金属部材12に対して位置決めすることができる。よって、例えばメンテナンス等で樹脂部材12を金属部材10から外して再度取り付ける場合に、誤取付を防止することができる。
【0043】
金属部材10が、ステンレス鋼、青銅、耐脱亜鉛処理を施した黄銅のいずれかで形成されるので、耐食性が高い金属部材10が形成される。よって、所定の耐食性を確保するのに必要な金属部材10の肉厚を薄くすることができるから、排水装置1の軽量化を促進することができる。これにより、上流側接続部16及び下流側接続部18にかかる荷重も小さくなり、上流側接続部16及び下流側接続部18における排水装置1の支持強度を向上させることができる。
【0044】
本発明は、以上の実施の形態に限定されることなく、例えば、以下のような態様であってもよい。
金属材料は、ステンレス鋼、青銅、耐脱亜鉛処理を施した黄銅のいずれかで形成されていたが、これに限らず、金属材料であれば任意の材料を採用することができる。
前述の実施形態では、爪部78が樹脂部材12に設けられ、受部である切欠部30は金属部材10に設けられていたが、逆に、樹脂部材に受部が設けられ、金属部材に爪部が設けられていてもよい。要するに、樹脂部材及び金属部材のいずれか一方に爪部が設けられ、いずれか他方に受部が設けられていればよい。