特許第6853520号(P6853520)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6853520
(24)【登録日】2021年3月16日
(45)【発行日】2021年3月31日
(54)【発明の名称】浮上搬送装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/677 20060101AFI20210322BHJP
   B65G 49/06 20060101ALI20210322BHJP
   B65G 51/03 20060101ALI20210322BHJP
   B65G 51/01 20060101ALI20210322BHJP
【FI】
   H01L21/68 A
   B65G49/06 Z
   B65G51/03 A
   B65G51/01
【請求項の数】4
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2018-175852(P2018-175852)
(22)【出願日】2018年9月20日
(65)【公開番号】特開2020-47820(P2020-47820A)
(43)【公開日】2020年3月26日
【審査請求日】2019年9月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】509154420
【氏名又は名称】株式会社NSC
(73)【特許権者】
【識別番号】515149638
【氏名又は名称】株式会社京マシナリー
(72)【発明者】
【氏名】竹内 一馬
(72)【発明者】
【氏名】天ヶ瀬 聡
(72)【発明者】
【氏名】入江 央
【審査官】 宮久保 博幸
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−186325(JP,A)
【文献】 特開2016−121015(JP,A)
【文献】 特開2013−095617(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0097160(US,A1)
【文献】 特開2004−345744(JP,A)
【文献】 特開2005−350174(JP,A)
【文献】 特開2013−159407(JP,A)
【文献】 国際公開第2014/132339(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/677
B65G 49/06
B65G 51/01
B65G 51/03
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラス基板を浮上させた状態で搬送する浮上搬送装置であって、
表面上に水膜を形成するように構成された水膜形成プレートを有する水浮上搬送部と、
前記水浮上搬送部の後段に配置され、前記ガラス基板にエアを噴射するように構成されたエアナイフと、
前記エアナイフの後段に配置され、前記ガラス基板に下方からエアを噴射する噴射孔が形成された浮上搬送プレートを有するエア浮上搬送部と、
前記水浮上搬送部および前記エア浮上搬送部において、前記ガラス基板の搬送方向に沿って、前記ガラス基板の下面に接触するように配置されるベルトが張架された搬送ローラと、
を少なくとも備える浮上搬送装置。
【請求項2】
前記エア浮上搬送部は、第1のエア浮上搬送部と、第2のエア浮上搬送部と、
を有し、
第1のエア浮上搬送部は、前記エアナイフと前記第2のエア浮上搬送部の間に配置され、
前記第2のエア浮上搬送部は、前記浮上搬送プレートの表面にエアを吸引する吸引孔が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の浮上搬送装置。
【請求項3】
前記第1のエア浮上搬送部は、前記エアナイフと接する領域にエアを吸引する吸引孔を備えることを特徴とする請求項2に記載の浮上搬送装置。
【請求項4】
前記エアナイフは、前記ガラス基板の両主面にエアを噴射することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の浮上搬送装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラス基板等の薄型基板を浮上させた状態で搬送するための浮上搬送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶ディスプレイ等のフラットパネルディスプレイは、近年、薄型化の要請がますます強くなっている。一般的に、液晶パネルは、ウェットエッチングによって薄型化処理が行われる。エッチング処理によって薄型化処理が行われた液晶パネルの板厚は、約0.1〜0.3mm程度である。
【0003】
エッチング処理後の液晶パネルは、機械的強度が低下しているため、取り扱いが難しくなる。例えば、基板の搬送時に細かな傷がついてしまうと、その傷を起点に破損してしまうおそれがある。また、薄型基板の場合、搬送時の撓みも破損の原因となることがある。
【0004】
基板の搬送は、ローラ上に載置された状態で行われることが一般的であるが、ローラとの接触は、基板に傷がつく原因となる。また、ローラの配置間隔が広くなると、搬送中にローラ間で基板が撓んでしまい、基板搬送中に落下してしまうおそれがある。ローラの間隔を狭めようとしても、駆動機構やギアの関係により、十分にローラの間隔を狭めることができないことがあった。
【0005】
このため、非接触状態で搬送することが可能な浮上搬送装置を用いて薄型基板を搬送することが考えられていた。浮上搬送装置は、多孔質パッドからの加圧気体の噴射と真空吸引のバランスを制御することによって、薄型基板を一定の高さに浮上させることができるとされている(例えば、特許文献1参照)。浮上搬送装置を用いることで、ガラス基板を非接触状態かつ撓み等を発生させずに搬送することが可能になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2016−121015号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、エッチング処理後の基板は、処理液等によって濡れた状態となっている。浮上搬送装置を用いて濡れた状態の基板を搬送した場合、真空吸引を行う吸引孔によって基板に付着した水が吸引されてしまい、吸引孔が閉塞してしまう。このため、浮力と吸引力のバランスを維持できず、搬送不良を引き起こしてしまう。
【0008】
このような不具合を防止するため、浮上搬送装置で基板を搬送する前に基板を乾燥させる必要がある。しかし、乾燥処理の際も、基板を破損させないように搬送する必要があるため、従来の乾燥装置や搬送機構を使用することは困難であった。
【0009】
本発明の目的は、薄型基板を浮上させた状態で搬送する浮上搬送装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る浮上搬送装置は、被処理基板を浮上させた状態で搬送する浮上搬送装置であって、水浮上搬送部、エアナイフ、エア浮上搬送部および搬送ローラを備えている。水浮上搬送部は、表面上に水膜を形成するように構成された水膜形成プレートを有している。エアナイフは、水浮上搬送部の後段に配置され、被処理基板にエアを噴射するように構成される。エア浮上搬送部は、エアナイフの後段に配置され、被処理基板に下方からエアを噴射する噴射孔が形成された浮上搬送プレートを有している。搬送ローラは、水浮上搬送部およびエア浮上搬送部において、被処理基板の搬送方向に沿って配置される。
【0011】
水浮上搬送部は、水膜形成プレート上の水膜によって被処理基板を浮上させた状態で支持するように構成される。なお、本発明における浮上とは、被処理基板の一部が搬送ローラによって支持される状態を含むものとする。水浮上搬送部だけでは、被処理基板を搬送することは難しく、搬送ローラによって、浮上搬送装置の搬送方向に沿って被処理基板を搬送するように構成される。
【0012】
エアナイフは、エアを噴射することによって、被処理基板を乾燥するように構成される。この際、被処理基板は、水浮上搬送部の水膜との表面張力によって保持されているため、エアナイフからのエアによる浮き上がりや撓み等の不具合を防止することが可能になる。
【0013】
エア浮上搬送部は、エアナイフを通過した被処理基板の下方からエアを噴射することによって、被処理基板を浮上させた状態で搬送するように構成される。また、エア浮上搬送部においても、搬送ローラによって被処理基板が搬送される。エアナイフで処理された被処理基板は、水滴が除去された状態となっているため、基板に付着した水分によって、エアの噴射孔が閉塞するおそれはない。エア浮上搬送部によって、安定した搬送が行われることにより、後処理工程への搬送や被処理基板の梱包等の作業が容易になる。
【0014】
また、エア浮上搬送部は、第1のエア浮上搬送部および第2のエア浮上搬送部を有すことが好ましい。第1のエア浮上搬送部は、エアナイフと第2のエア浮上搬送部の間に配置される。第2のエア浮上搬送部は、表面にエアを吸引する吸引孔が形成されている浮上搬送プレートを有している。
【0015】
被処理基板の浮上搬送は、エアの噴出と吸引のバランスを制御することにより搬送する方が安定するが、エアナイフを通過した基板に水滴が付着していた場合、吸引孔の閉塞に繋がるおそれがある。このため、エアの噴射のみで被処理基板を搬送する第1のエア浮上搬送部を一定距離通過させた後で、第2のエア浮上搬送部によって搬送することで、より安定した搬送を行うことが可能になる。
【0016】
また、第1の浮上搬送部は、エアナイフと接する領域にエアを吸引する吸引孔を備えることが好ましい。エアナイフを被処理基板が通過する際に、水浮上搬送部を通過した被処理基板の先端部が浮き上がってしまうことがある。このため、第1の浮上搬送部の吸引孔により被処理基板を吸引することにより、被処理基板を安定して搬送することが可能になる。
【0017】
また、エアナイフは、被処理基板の両主面にエアを噴射することが好ましい。両主面にエアを噴射することにより、エア浮上搬送部への水分の持ち込みを防止し、より安定した搬送を行うことができる。また、下面からのエアの噴射による基板の浮き上がりや撓みは、水浮上搬送部によって抑制することが可能である。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、ガラス基板等の薄型基板を浮上搬送させることが可能な浮上搬送装置を提供することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の一実施形態に係る浮上搬送装置を備えたエッチング装置の概略図である。
図2】本発明の一実施形態に係る浮上搬送装置を備えたエッチング装置の概略側面図である。
図3】エッチング装置のエッチングチャンバの構成を示す図である。
図4】天井部の扉体が開かれた状態を示す図である。
図5】浮上搬送ユニットの構成を示す図である。
図6】水浮上搬送部で搬送されるガラス基板の状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
ここから、図面を用いて本発明の一実施形態に係る浮上搬送ユニットついて説明する。図1および図2は、浮上搬送ユニット60を備えたガラス基板のエッチング装置10の概略図ある。エッチング装置10は、搬入部12、前水洗チャンバ14、第1のエッチングチャンバ161、第2のエッチングチャンバ162、後水洗チャンバ18、搬送ローラ30および浮上搬送ユニット60を備えている。
【0021】
搬送ローラ30は、図2に示すように、エッチング装置10の長さ方向に沿って配置されており、ガラス基板24を水平方向に搬送するように構成される。搬送ローラ30は、ガラス基板24の搬送方向に沿って一定間隔で配置され、ガラス基板24を下方から支持することによって搬送するように構成される。ガラス基板24の搬送速度は、ガラス基板24の大きさや板厚、エッチング液の噴射圧力、エッチング液の組成等を考慮して、適宜設定することが好ましい。エッチング装置10は、搬送ローラ30によって搬送されているガラス基板24に対して、エッチング液を噴射することによって薄型化等のエッチング処理を行うように構成される。
【0022】
搬入部12は、ガラス基板24を搬送ローラ30に載置することによってガラス基板24をエッチング装置10に導入するように構成される。ガラス基板24は、搬送ローラ30によって水平方向に搬送されながら各チャンバを通過することによってエッチング処理が行われ、所望の板厚になるまでエッチング処理される。ガラス基板24は、所定間隔を設けて順次エッチング装置10に投入される。
【0023】
前水洗チャンバ14は、搬入部12の後段に配置されている。前水洗チャンバ14は、搬送ローラ30によって搬送されているガラス基板24に対して、搬送ローラ30の上下に配置されたスプレイユニット32より洗浄液を噴射するように構成される。乾燥したガラス基板に対してエッチング液を接触させてしまうと、ガラス基板が白濁してしまうおそれがある。このため、エッチング装置10では、エッチングチャンバの前段にて洗浄液を噴射するように構成される。本実施形態では、洗浄液として市水を使用している。
【0024】
第1のエッチングチャンバ161および第2のエッチングチャンバ162は、実質的に同一の構成であり、搬送されているガラス基板24にエッチング液を噴射するように構成される。各エッチングチャンバ161,162においては、搬送ローラ30の上下にスプレイユニット32が配置されており、スプレイユニット32より搬送ローラ30上のガラス基板24にエッチング液が噴射される。
【0025】
スプレイユニット32は、送液配管34に複数の噴射ノズル36が配置されており、ガラス基板24に均一にエッチング液が噴射されるように構成される。エッチング液は、組成が調整されたエッチング液が収容されたタンク等から供給されるように構成される。スプレイユニット32が往復移動することによって、ガラス基板24により均一にエッチング液を噴射するとともに、ガラス基板24の上面にエッチング液が滞留するのを防止することができる。なお、スプレイユニット32の配置や噴射ノズル36の数は被処理基板の大きさやエッチング量に応じて、適宜変更することができる。
【0026】
各エッチングチャンバで噴射されたエッチング液は、図3に示すように、エッチングチャンバの下部に配置された排出口38より排出される。排出口38から排出されたエッチング液は、不図示のタンクに回収され、タンクから再びスプレイユニット32に供給されるように構成される。
【0027】
本実施形態におけるエッチング液は、少なくともフッ酸が含まれており、塩酸や硫酸等の無機酸や界面活性剤が含まれていてもよい。エッチング液の組成や液温はエッチング量や被処理基板の種類に応じて適宜変更することが可能である。また、エッチング装置10は、2つのエッチングチャンバを有しているが、エッチングチャンバの数は被処理基板や設置場所等を考慮して変更することが可能である。
【0028】
各エッチングチャンバ161,162は、図1および図3に示すように、断面視円弧状の天井部40により覆われている。天井部40は、透明部材42、枠体44および保護フィルム46を備えている。透明部材42は、エッチング液に耐性のある樹脂部材で構成されており、断面視円弧状を呈する。透明部材42として使用する樹脂部材の一例としては、ポリエチレン系樹脂、フッ素系樹脂、ポリプロピレン系樹脂等が挙げられる。透明部材42は、熱加工により所望の曲面形状に加工することが可能である。
【0029】
枠体44は、処理チャンバの強度を保つために、透明部材42の外壁側に取り付けられている。枠体44は、鉄等の金属部材で構成されており、格子状に配置されている。透明部材42の外壁側に枠体44が取り付けられているため、透明部材42の内壁側には余計な構造物を配置する必要がなくなる。このため、飛散したエッチング液が内壁側の凹凸状の箇所に溜まるといった不具合が解消され、天井部40の壁面に沿ってエッチング液を排出することが可能になる。さらに、天井部40に構造物が少ないことにより、エッチングチャンバ内の視認性を向上させることもできる。
【0030】
保護フィルム46は、透明部材42の内面側に貼り付けられている透明フィルムである。保護フィルム46としては、ポリメチルペンテンフィルムを使用することができる。ポリメチルペンテンフィルムは、透明フィルムであり、耐薬品性も有しているため、エッチングチャンバの内壁に貼り付けられても劣化することがない。また、ポリメチルペンテンは、表面張力が低いため、内壁に飛散したエッチング液が壁面に沿って流れやすくなる。
【0031】
ポリメチルペンテンフィルムを使用する場合、ポリメチルペンテン樹脂を引き延ばし、適用する部品に好適な所定の大きさに裁断された後、コロナ表面処理機によって表面改質処理が施される。表面改質処理は、真空管方式、サイリスタ―方式等の公知のコロナ放電処理装置を使用して行うことができる。この実施形態では、放電電極とポリメチルペンテンフィルムとの間に0.1〜10mm程度の距離を設け、印加電圧を0.1〜50kVをかけて処理している。ポリメチルペンテンフィルムにおける表面改質処理が施された面が他の透明樹脂との貼り付け面となり、この貼り付け面に粘着剤の層が形成される。
【0032】
図4(A)に示すように、透明部材42には、開閉可能な扉体50が設けられている。扉体50は、天井部40に形成された開口部52を選択的に開放または閉塞する。閉塞時には、扉体50が開口部52に嵌め込まれて、エッチングチャンバが密閉される。開口部52の周縁部には、シール材が配置されており、エッチングチャンバの密閉性を向上させている。
【0033】
扉体50は、天井部40と同様に透明部材42によって形成されており、湾曲形状を呈している。さらに、扉体50の内面側にも、保護フィルム46が貼り付けられている。これにより、扉体50においてエッチング液が滞留するおそれが軽減され、天井部40に沿ってエッチング液が落下する。
【0034】
扉体50は、開口部52の端部において、ヒンジ部54によって回動自在に支持されている。なお、ヒンジ部54も透明部材42で構成される。扉体50は、図4(A)に示すように、上方に向かって回動させて開けることが可能である。扉体50は、把持部56を備えており、把持部56を作業員等が持ち上げることで、ヒンジ部54を中心に扉体50が回動するように構成される。なお、扉体50は、上方に開けられた状態で固定することが可能な固定機構よって固定されることが好ましい。
【0035】
扉体50の湾曲形状により、扉体50が開放された状態でも扉体50の内壁側に付着したエッチング液がエッチング装置10の周辺に付着することがない。また、図4(B)に示すように、エッチング液は、扉体50の湾曲形状に沿って流れるため、最終的に開口部52よりエッチングチャンバ内に落下する。これにより、エッチング装置10の周辺部の汚損を防止することができる。
【0036】
前水洗チャンバ14および第1のエッチングチャンバ161等の隣接する2つの処理チャンバは、図2に示すように隔壁によって分離されている。なお、隔壁を含むエッチングチャンバの筐体(天井部40は除く)は、ポリ塩化ビニル等の耐フッ酸性を有する樹脂によって形成される。隔壁にはガラス基板24が通過するために、2つの処理チャンバを連通するスリット部22が形成されている。スリット部22は、ガラス基板24が通過できる程度の高さに形成されており、4〜10mmの高さで形成されていることが好ましい。
【0037】
後水洗チャンバ18は、第2のエッチングチャンバ162の後段に配置されている。後水洗チャンバ18は、前水洗チャンバ14と同様にガラス基板24に対して上下方向から洗浄液を噴射することによって、エッチング液を洗い流すように構成される。洗浄液は、前水洗チャンバ14と同様に市水が使用されている。
【0038】
後水洗チャンバ18の最下流部には、絞りローラ26が配置されている。絞りローラ26は、搬送ローラ30の上部に配置された円柱状部材であり、ガラス基板24の上面に沿って回転し、ガラス基板24上の水を物理的に除去するように構成される。
【0039】
絞りローラ26の後段部において、後水洗チャンバ18の搬出口上部にリキッドカッタ28が配置されている。リキッドカッタ28は、ガラス基板24の上部にエアを噴射して、洗浄水を除去する。リキッドカッタ28を配置することで、多量の洗浄水がガラス基板24上に残った状態で浮上搬送ユニット60にガラス基板24が搬送されることを防止することが可能になる。リキッドカッタ28からのエアの噴射圧力や噴射角度はガラス基板の板厚やサイズに応じて、適宜調整される。
【0040】
後水洗チャンバ18を通過したガラス基板24は、浮上搬送ユニット60によって搬送される。図5に示すように、浮上搬送ユニット60は、水浮上搬送部62、エアナイフ64、第1のエア浮上搬送部66、第2のエア浮上搬送部68、補助ローラ70および搬送ベルト72を備えており、図示矢印方向に、ガラス基板24を搬送する。水浮上搬送部62、エアナイフ64、第1のエア浮上搬送部66および第2の浮上搬送部68は、ガラス基板24の搬送方向に沿って配置されている。
【0041】
水浮上搬送部62は、後水洗チャンバ18から搬送されたガラス基板24をエアナイフ64まで搬送するように構成される。水浮上搬送部62は、3つの水膜形成プレート621〜623を備えている。各水膜形成プレート621〜623は、同一機構の基板であるが、エアナイフ64の配置により、形状は異なるものである。各水膜形成プレート621〜623は、ガラス基板24の搬送方向と直交する方向において、所定量離間して配置されている。
【0042】
図6(A)に示すように、水膜形成プレート621の主面上には、水噴出孔80が形成されており、所定量の水を噴出するように構成される。水噴出孔80から噴出した水は、水膜形成プレート621の主面上に溜まり、水膜を形成する。水膜形成プレート621は、表面に水膜を形成し、ガラス基板24を浮上させるように構成される。ガラス基板24の搬送中は、水膜の高さを一定にするために水噴出孔80が継続的に水を噴出している。なお、水膜形成プレートの構成は、これには限定されず、表面の孔部から水が噴出するような多孔質基板を用いても良い。
【0043】
また、水膜形成プレート621〜623の間には、補助ローラ70および搬送ベルト72が配置されている。補助ローラ70は、不図示の駆動機構により回転するローラである。搬送ベルト72は、一対の補助ローラ70に張架された無端ベルトである。搬送ベルト72は、ガラス基板24の下面に接触するように配置されており、ガラス基板24を図示ブロック矢印方向に搬送するように構成される。
【0044】
後水洗チャンバ18を通過したガラス基板24は、洗浄水が付着した状態で搬送されるので、ガラス基板24と浮上搬送部の張り付きによりエアによる浮上搬送を行うことは困難である。このため、水膜上に浮上させた状態で搬送ベルト72によって搬送する。ガラス基板24は、搬送ベルト72と接触した状態であるが、水膜上に浮上しているので、局所的に圧力が加わるといったことはない。
【0045】
エアナイフ64は、上エアナイフ641および下エアナイフ642を備えており、水浮上搬送部62を通過したガラス基板24に対してエアを噴射するように構成される。上エアナイフ641および下エアナイフ642は、それぞれガラス基板24の主面にエアを噴射することによって、ガラス基板24に付着した水滴を除去するように構成される。
【0046】
上エアナイフ641は、エア供給管651から共有されるエアをエア噴射部652からガラス基板24の上側の主面に噴射するように構成される。エアの噴射圧力や噴射角度は、ガラス基板24の板厚やサイズによって適宜調整される。本実施形態では、図6(A)に示すように、水浮上搬送部側62側に上エアナイフ641の先端部が向くように配置される。
【0047】
下エアナイフ642は、上エアナイフ641の下部に配置され、ガラス基板24の下面にエアを噴射するように構成される。下エアナイフ642は、図6(B)に示すように、エア供給管74、エア噴出部76およびスリットノズル78を備えている。下エアナイフ642のエア噴射部76は、水膜形成プレート621の主面よりも低い位置に配置され、下方からガラス基板24の下側の主面にエアを噴射する。
【0048】
エア供給管74は、エア噴射部76に向かって垂直方向に延びており、不図示のエア供給源から供給されるエアが通過する。エア噴射部76は、下エアナイフ642に先端部においてエアを噴出する開口部である。また、エア噴射部76は、スリットノズル78を収容する収容部77を備えている。収容部77は、スリットノズル78が収容部77内で回転可能に支持するように構成される。
【0049】
スリットノズル78は、下エアナイフ642の先端部に配置されおりた円筒部材であり、エア供給管74からエアが供給される。スリットノズル78は、エア供給管74側およびエア噴射部76側にそれぞれスリットが形成されており、エア噴射部76側のスリットからエアを噴射するように構成される。エア噴射部76側のスリットの幅は、0.1〜0.5mmの範囲に調整される。
【0050】
スリットノズル78は、収容部77内で回転可能であるため、ガラス基板24のサイズや板厚等に応じて、エアの噴射角度を調節することが可能である。また、スリットノズル78で噴射角度を調整することができるので、下エアナイフ642は、ガラス基板24に対して傾斜して配置する必要がなくなり、水浮上搬送部62および第1のエア浮上搬送部66の隙間に配置することが可能になる。
【0051】
エアナイフ64は、ガラス基板24の搬送方向に対して、平面内において傾斜するように設けられている。本実施形態では、エアナイフ64を傾斜して配置することによってガラス基板24の搬送方向の下流側の第3の水膜形成プレート623側へエアが吹き付けられ、ガラス基板上の水が一か所に移動するので、効率的に乾燥させることができる。なお、下エアナイフ642からのエアによるガラス基板24が浮き上がりや撓みは、ガラス基板24の下面と水膜の表面張力により防止することが可能である。
【0052】
第1のエア浮上搬送部66は、エアナイフ64を通過したガラス基板24に下方からエアを噴射することにより、ガラス基板24を浮上させるように構成される。第1のエア浮上搬送部66は、複数の浮上搬送プレート67が所定の間隙を設けてマトリクス状に配置されている。浮上搬送プレート67は、実質的に同一の構成だが、エアナイフ64に隣接する浮上搬送プレート671〜673は、エアナイフ64の傾斜に応じて、その他の浮上搬送プレートと形状が異なる。
【0053】
浮上搬送プレート67は、主面に複数の噴射孔82が形成されており、所定量の圧縮空気を噴射するように構成される。噴射孔82の孔径のサイズは、0.1〜0.9mmであり、ガラス基板24の搬送方向において所定の間隔で千鳥状に配列されることが好ましい。噴射孔82からのエアの噴射量は、ガラス基板24のサイズや板厚に応じて適宜調整される。
【0054】
エアナイフ64を通過したガラス基板24は、噴射孔82からのエアの噴射によって浮上した状態となり、補助ローラ70および搬送ベルト72によって搬送方向に沿って搬送される。この構成により、第1のエア浮上搬送部66において、ガラス基板24を浮上搬送させることが可能になる。
【0055】
図6(A)に示すように、浮上搬送プレート671〜673は、エアナイフ64と近接する領域に、吸引孔84を備えている。吸引孔84は、浮上搬送プレート671〜673の主面上に形成されており、減圧吸引等によりエアを吸引するように構成される。エアナイフ64を通過したガラス基板24の先端部は、浮上搬送プレート67から噴射されるエアにより浮き上がりが発生することがある。吸引孔84からの吸引することにより、ガラス基板24の浮き上がりを防止することが可能になる。
【0056】
第2のエア浮上搬送部68は、第1のエア浮上搬送部66を通過したガラス基板24を所定量浮上させた状態で搬送するように構成される。第2のエア浮上搬送部68は、多孔質パッド681が搬送方向と直交する方向に3つ配置されている。各多孔質プレート681は、公知の多孔質状の浮上搬送プレートを使用することができる。多孔質プレート681は、表面に形成された孔部からの気体噴射と真空吸引のバランスによりガラス基板24を一定の高さに維持することが可能になる。
【0057】
第2のエア浮上搬送部68は、ガラス基板24を撓ませることなく搬送することができるので、搬送中のガラス基板24の板厚を測定することも可能である。この場合、第2のエア浮上搬送部68の上部に、公知の板厚センサを配置すればよい。エッチング処理後のガラス基板24の板厚をスムーズに計測することで、生産効率を向上させることが可能になる。
【0058】
ガラス基板24は、前水洗チャンバ14、第1のエッチングチャンバ161、第2のエッチングチャンバ162および後水洗チャンバ18を順次通過することによって、エッチング処理が行われる。エッチング装置10にガラス基板24を1回または複数回投入することで、例えば、0.05〜0.3mm程度まで薄型化する。浮上搬送ユニット60は、このように薄型化処理が行われたガラス基板24であっても破損させることなく、安定して搬送させることが可能になる。
【0059】
特に、エッチング処理が行われたガラス基板24は、濡れた状態で浮上搬送ユニット60に搬送されてくるが、水浮上搬送部62を介してエアナイフ64で乾燥処理が行われるため、薄型基板であっても浮き上がりや撓み等を発生させることなく乾燥処理が行われる。また、乾燥処理後にガラス基板24に水滴が付着した場合でも、第1のエア浮上搬送部66で搬送している間に、噴射孔82からのエアにより水滴を除去することで第2のエア浮上搬送部68でガラス基板24の貼付および吸引孔の閉塞を防止し、安定して搬送することが可能になる。噴射孔82は、第2のエア浮上搬送部88の表面の孔部より口径が大きいため、水滴により噴射孔82が閉塞するおそれは少ない。
【0060】
なお、本実施形態はガラス基板を例に説明したが、本発明に係る浮上搬送装置は、ガラス基板の搬送に限定されるものではなく、薄型基板であれば、樹脂基板や積層基板にも適用することが可能である。
【0061】
上述の実施形態の説明は、すべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上述の実施形態ではなく、特許請求の範囲によって示される。さらに、本発明の範囲には、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0062】
10‐エッチング装置
12‐搬入部
14-前水洗チャンバ
161‐第1のエッチングチャンバ
18-後水洗チャンバ
24‐ガラス基板
30-搬送ローラ
60-浮上搬送ユニット
62‐水浮上搬送部
64-エアナイフ
66-第1のエア浮上搬送部
68-第2のエア浮上搬送部
図1
図2
図3
図4
図5
図6