(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6853529
(24)【登録日】2021年3月16日
(45)【発行日】2021年3月31日
(54)【発明の名称】車両内装用表皮材
(51)【国際特許分類】
B60Q 3/217 20170101AFI20210322BHJP
B60Q 3/54 20170101ALI20210322BHJP
B60Q 3/62 20170101ALI20210322BHJP
B60Q 3/78 20170101ALI20210322BHJP
F21V 8/00 20060101ALI20210322BHJP
D03D 15/54 20210101ALI20210322BHJP
D03D 15/47 20210101ALI20210322BHJP
D03D 15/60 20210101ALI20210322BHJP
G02B 6/00 20060101ALI20210322BHJP
F21Y 115/10 20160101ALN20210322BHJP
【FI】
B60Q3/217
B60Q3/54
B60Q3/62
B60Q3/78
F21V8/00 282
D03D15/00 102Z
D03D15/00 D
D03D15/02 B
G02B6/00 326
F21Y115:10
【請求項の数】7
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2016-241508(P2016-241508)
(22)【出願日】2016年12月13日
(65)【公開番号】特開2018-95078(P2018-95078A)
(43)【公開日】2018年6月21日
【審査請求日】2019年9月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】000241500
【氏名又は名称】トヨタ紡織株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】309042783
【氏名又は名称】大喜株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094190
【弁理士】
【氏名又は名称】小島 清路
(74)【代理人】
【識別番号】100151644
【弁理士】
【氏名又は名称】平岩 康幸
(73)【特許権者】
【識別番号】510045438
【氏名又は名称】TBカワシマ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094190
【弁理士】
【氏名又は名称】小島 清路
(72)【発明者】
【氏名】山田 孝政
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 篤彦
(72)【発明者】
【氏名】山本 岳由
(72)【発明者】
【氏名】坂井 宏彦
(72)【発明者】
【氏名】江河 弘征
【審査官】
下原 浩嗣
(56)【参考文献】
【文献】
特開2009−084738(JP,A)
【文献】
実開昭61−201001(JP,U)
【文献】
国際公開第2016/059225(WO,A2)
【文献】
米国特許出願公開第2014/0211498(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60Q 3/217
B60Q 3/54
B60Q 3/62
B60Q 3/78
D03D 15/47
D03D 15/54
D03D 15/60
F21V 8/00
G02B 6/00
F21Y 115/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂製の車両内装用基体に接合される車両内装用表皮材において、
前記車両内装用表皮材は、経糸又は緯糸として、合成樹脂繊維と側面発光型光ファイバーとを用いて製織された織物を備え、
前記合成樹脂繊維の繊度(dS)と、前記側面発光型光ファイバーの繊度(df)との比(dS/df)が1.5〜7.0であり、
隣り合う前記合成樹脂繊維の間に前記側面発光型光ファイバーが織り込まれ、且つ、前記合成樹脂繊維及び前記側面発光型光ファイバーが前記車両内装用基体に接合形成されることにより、前記側面発光型光ファイバーが前記車両内装用表皮材の車室内側の最外表面に表出しないことを特徴とする車両内装用表皮材。
【請求項2】
前記合成樹脂繊維がマルチフィラメントであり、前記マルチフィラメントの繊度(dS1)と、前記側面発光型光ファイバーの繊度(df)との比(dS1/df)が2.0〜7.0である請求項1に記載の車両内装用表皮材。
【請求項3】
隣り合う前記マルチフィラメントの間に、2〜5本の前記側面発光型光ファイバーが織り込まれている請求項2に記載の車両内装用表皮材。
【請求項4】
前記合成樹脂繊維がモノフィラメントである請求項1に記載の車両内装用表皮材。
【請求項5】
前記モノフィラメントの繊度(dS2)と、前記側面発光型光ファイバーの繊度(df)との比(dS2/df)が1.5〜6.0である請求項4に記載の車両内装用表皮材。
【請求項6】
隣り合う前記モノフィラメントの間に、1〜3本の前記側面発光型光ファイバーが織り込まれている請求項4又は5に記載の車両内装用表皮材。
【請求項7】
前記車両内装用基体は、ポリオレフィン系樹脂、ポリアミド系樹脂又は繊維強化樹脂からなり、車両用のドアトリム又はルーフトリムの形状に成形されている請求項1乃至6のうちのいずれか1項に記載の車両内装用表皮材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、合成樹脂繊維であるマルチフィラメント又はモノフィラメントと、側面発光型光ファイバーとにより製織され、車室内の意匠面を形成するとともに、照明として機能する車両内装用表皮材に関する。
【背景技術】
【0002】
インターネットの普及等とともに、光通信などの技術分野において光ファイバーの使用が拡大している。また、一端から入射した光を他端に導いて光を伝送させることができるという光ファイバーの特性に基づき、例えば、各種の照明及びディスプレー等の用途でも用いられている。
【0003】
例えば、経糸又は緯糸として光ファイバーと普通糸とが織られた光ファイバー織物と、光ファイバーの少なくとも一端部に光を照射する光源とを備え、光源からの光を光ファイバー内に入光させることにより、ドアトリム、小物部品等の自動車内装部品として利用することができる照明装置として機能する光ファイバー織物が知られている(例えば、特許文献1参照。)。そして、この光ファイバー織物では、光ファイバーと普通糸を規則的に織り込み、織組織及び発光輝度を所定の状態に制御することにより、光ファイバー織物の発光ムラを低減することができると説明されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−267573号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載された光ファイバー織物では、織組織及び発光輝度を所定の状態に制御することにより、発光ムラを低減することができるかもしれない。しかし、特許文献1では、光ファイバーが自動車内装部品の表面に表出し過ぎ、光ファイバーが摩耗したり、傷付いたりすることを防止すること、及びそのために光ファイバーと普通糸との繊度を適正な範囲とすることについては全く言及されていない。
【0006】
また、従来、車両内装用表皮材は、合成樹脂繊維であるマルチフィラメントを経糸及び緯糸として用いて製織することにより製造されている。この場合、耐摩耗性及び強度の他、見栄え等の観点から、比較的低繊度のマルチフィラメント、例えば、167dtex程度のマルチフィラメントが用いられることが多い。更に、経糸又は緯糸として光ファイバーを用いるときは、この光ファイバーとして、製織が容易な樹脂製の側面発光型光ファイバーを用いることが好ましく、この側面発光型光ファイバーとしては、繊度が607dtexであり、直径が0.25mm程度のものを用いることができる。
【0007】
上述のようなマルチフィラメントと側面発光型光ファイバーとを用いて製織した場合、例えば、
図4に図示される車両内装用表皮材10とすることができる。この車両内装用表皮材10では、3本の側面発光型光ファイバー3の両側に、繊度の小さいマルチフィラメント12が織り込まれる織組織を備え、側面発光型光ファイバー3及びマルチフィラメント12がともに、樹脂製の車両内装用基体4に接合されている。しかし、この形態では、側面発光型光ファイバー3が表皮材の最外表面に多く表出することになり、摩耗及び傷付きに対して不利である。
【0008】
そこで、
図5のように、繊度の小さいマルチフィラメント12が最外表面に表出するような織り組織とすることもできるが、この場合、繊度の小さいマルチフィラメント12が摩耗により細径化されたり、切断されてしまうことが有り得る。また、表皮材が押圧されたときには、
図6のように、繊度の小さいマルチフィラメント12が内方へと押し込まれ、側面発光型光ファイバー3が表皮材の最外表面に表出してしまい、摩耗したり、傷付いたりすることも考えられる。
【0009】
更に、
図4〜6の場合と比べて繊度が大きいものの、
図1の繊度の大きいマルチフィラメント11と比べて繊度が小さい、即ち、
図7のように、繊度が十分に大きくないマルチフィラメント13を用いたときは、このマルチフィラメント13が摩耗した場合に、側面発光型光ファイバー3が表皮材の最外表面に表出してしまい、側面発光型光ファイバー3の摩耗、傷付きが十分に抑えられないかもしれない。一方、
図8のように、繊度が過大なマルチフィラメント14を用いたときは、表皮材としての見栄えが変化してしまい、マルチフィラメントが押圧され、変形したときには、遮光されることもあって、見栄えが低下することも有り得る。
【0010】
本発明は、上述の従来技術の状況に鑑みてなされたものであり、合成樹脂繊維であるマルチフィラメント又はモノフィラメントと、側面発光型光ファイバーとにより製織され、車室内の意匠面を形成するとともに、照明として機能し、光ファイバーが摩耗したり、傷ついたりすることが防止、又は少なくとも抑えられる車両内装用表皮材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、以下のとおりである。
1. 樹脂製の車両内装用基体に接合される車両内装用表皮材において、
前記車両内装用表皮材は、経糸又は緯糸として、合成樹脂繊維と側面発光型光ファイバーとを用いて製織された織物を備え、
前記合成樹脂繊維の繊度(d
S)と、前記側面発光型光ファイバーの繊度(d
f)との比(d
S/d
f)が1.5〜7.0であり、
隣り合う前記合成樹脂繊維の間に前記側面発光型光ファイバーが織り込まれ、且つ、前記合成樹脂繊維及び前記側面発光型光ファイバーが前記車両内装用基体に接合形成されることにより、前記側面発光型光ファイバーが前記車両内装用表皮材の車室内側の最外表面に表出しないことを特徴とする車両内装用表皮材。
2.前記合成樹脂繊維がマルチフィラメントであり、前記マルチフィラメントの繊度(d
S1)と、前記側面発光型光ファイバーの繊度(d
f)との比(d
S1/d
f)が2.0〜7.0である1.に記載の車両内装用表皮材。
3.隣り合う前記マルチフィラメントの間に、2〜5本の前記側面発光型光ファイバーが織り込まれている2.に記載の車両内装用表皮材。
4.前記合成樹脂繊維がモノフィラメントである請求項1に記載の車両内装用表皮材。
5.前記モノフィラメントの繊度(d
S2)と、前記側面発光型光ファイバーの繊度(d
f)との比(d
S2/d
f)が1.5〜6.0である4.に記載の車両内装用表皮材。
6.隣り合う前記モノフィラメントの間に、1〜3本の前記側面発光型光ファイバーが織り込まれている4.又は5.に記載の車両内装用表皮材。
7.前記車両内装用基体は、ポリオレフィン系樹脂、ポリアミド系樹脂又は繊維強化樹脂からなり、車両用のドアトリム又はルーフトリムの形状に成形されている1.乃至6.のうちのいずれか1項に記載の車両内装用表皮材。
【発明の効果】
【0012】
本発明の車両内装用表皮材は、経糸又は緯糸として、合成樹脂繊維と側面発光型光ファイバーとを用いて製織され、合成樹脂繊維の繊度(d
S)と、側面発光型光ファイバーの繊度(d
f)との比(d
S/d
f)が1.5〜7.0である。
このように適正な範囲の繊度の合成樹脂繊維を用いることにより、側面発光型光ファイバーが合成樹脂繊維より内方に位置し、表皮材の最外表面に表出することがなく、乗員及び他の物品との接触により側面発光型光ファイバーが摩耗したり、傷付いたりすることが防止、又は少なくとも抑えられる。また、合成樹脂繊維の繊度が過大であって、表皮材の見栄えが損なわれることがなく、側面発光型光ファイバーからの発光が遮光されて表皮材の意匠性が損なわれることもない。
また、合成樹脂繊維がマルチフィラメントであり、マルチフィラメントの繊度(d
S1)と、側面発光型光ファイバーの繊度(d
f)との比(d
S1/d
f)が2.0〜7.0である場合は、マルチフィラメントの繊度が過小とならず、マルチフィラメントが摩耗したとしても、側面発光型光ファイバーの摩耗、傷付きは十分に抑えられる。
更に、比(d
S1/d
f)が上述の範囲であり、且つ隣り合うマルチフィラメントの間に、2〜5本の側面発光型光ファイバーが織り込まれている場合は、光ファイバーの発光による意匠性が損なわれることがなく、見栄えのよい表皮材とすることができる。
また、合成樹脂繊維がモノフィラメントである場合は、摩耗したり、傷付いたりし難いため、マルチフィラメントと比べて小繊度であったとしても、光ファイバーの摩耗、傷付きが十分に抑えられる。
更に、モノフィラメントの繊度(d
S2)と、側面発光型光ファイバーの繊度(d
f)との比(d
S2/d
f)が1.5〜6.0である場合は、マルチフィラメントと比べて繊度を小さくしても、側面発光型光ファイバーの摩耗、傷付きを十分に抑えることができる。
また、比(d
S2/d
f)が上述の範囲であり、隣り合うモノフィラメントの間に、1〜3本の側面発光型光ファイバーが織り込まれている場合は、モノフィラメントの光沢を利用し、光ファイバーからの光を反射させることで、光ファイバーの本数を減らしたとしても、輝度を十分に確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】合成樹脂繊維としてマルチフィラメントを用いたときの、本発明に係る車両内装用表皮材のマルチフィラメントと光ファイバーとの繊度の差を表す模式的な説明図である。
【
図2】合成樹脂繊維としてモノフィラメントを用いたときの、本発明に係る車両内装用表皮材のモノフィラメントと光ファイバーとの繊度の差を表す模式的な説明図である。
【
図3】
図2において光ファイバーの本数を減らした車両内装用表皮材の模式的な説明図である。
【
図4】繊度が過小のマルチフィラメントを使用し、且つ光ファイバーが最外表面に表出している車両内装用表皮材の模式的な説明図である。
【
図5】繊度が過小のマルチフィラメントを使用し、且つ光ファイバーが最外表面に表出しないように製織された車両内装用表皮材の模式的な説明図である。
【
図6】
図5のマルチフィラメントが摩耗及び/又は押圧され、マルチフィラメントとともに光ファイバーも最外表面に表出してしまった車両内装用表皮材の模式的な説明図である。
【
図7】
図4〜6と比べて繊度が大きいマルチフィラメントが用いられているものの、繊度の大きさが不十分である車両内装用表皮材の模式的な説明図である。
【
図8】マルチフィラメントの繊度が過大であるときの車両内装用表皮材の模式的な説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を、図も参照しながら詳しく説明する。
ここで示される事項は例示的なもの及び本発明の実施形態を例示的に説明するためのものであり、本発明の原理と概念的な特徴とを最も有効に且つ難なく理解できる説明であると思われるものを提供する目的で述べたものである。この点で、本発明の根本的な理解のために必要である程度以上に本発明の構造的な詳細を示すことを意図してはおらず、図面と合わせた説明によって本発明の幾つかの形態が実際にどのように具現化されるかを当業者に明らかにするものである。
【0015】
本発明の車両内装用表皮材10は、樹脂製の車両内装用基体4に接合される。また、経糸又は緯糸として、合成樹脂繊維と側面発光型光ファイバー3とを用いて製織された織物を備える(合成樹脂繊維としてマルチフィラメント11を用いた
図1、及びモノフィラメント2を用いた
図2、3参照)。そして、合成樹脂繊維の繊度(d
s)と、側面発光型光ファイバー3の繊度(d
f)との比(d
s/d
f)が1.5〜7.0であることを特徴とする。
【0016】
車両内装用表皮材10は、経糸又は緯糸として、合成樹脂繊維と側面発光型光ファイバー3とを用いて織製される。合成樹脂繊維と側面発光型光ファイバー3とを、経糸として織り込むか、緯糸として織り込むかは特に限定されず、織組織及び用いる織機の種類等により、適宜設定することができる。車両内装用表皮材10の製織に用いる織機は特に限定されず、例えば、レピア織機(伊国、イテマウィービング社製、型式「G6500、R9500」)、ジャカード織機(仏国、ストーブリ社製、型式「CX880、DX110、LX1602、SXB」)、ドビー織機(仏国、ストーブリ社製、型式「UVIVAL500」)等が挙げられる。
【0017】
また、合成樹脂繊維の繊度(d
s)と、側面発光型光ファイバー3の繊度(d
f)との比(d
s/d
f)は1.5〜7.0であればよいが、合成樹脂繊維がマルチフィラメント11であるかモノフィラメント2であるかによって、比(d
s/d
f)をより適正な範囲に設定することが好ましい。より具体的には、合成樹脂繊維がマルチフィラメント11であるときは、比(d
s/d
f)は、上述の数値範囲内で、より大きい数値範囲とすることが好ましい。一方、モノフィラメント2であるときは、上述の数値範囲内で、より小さい数値範囲とすることが好ましい。
【0018】
例えば、
図1のように、合成樹脂繊維としてマルチフィラメント11を用いた場合は、マルチフィラメント11の繊度(d
S1)と、側面発光型光ファイバー3の繊度(d
f)との比(d
S1/d
f)は2.0〜7.0であることが好ましく、3.0〜7.0であることがより好ましく、4.5〜7.0であることが特に好ましい。このように、合成樹脂繊維がマルチフィラメント11である場合は、モノフィラメント2であるときと比べて、乗員及び他の物品との接触による摩耗、及び押圧による変形を生じ易いため、適正な繊度の範囲内で比較的繊度の大きい繊維を用いることが好ましい。
【0019】
更に、マルチフィラメント11の繊度は特に限定されないが、側面発光型光ファイバー3が車両内装用表皮材10の車室内側の最外表面に表出し、摩耗したり、傷付いたりするのを防止するためには、繊度は1000〜4000dtex、特に2000〜4000dtex、更に2500〜4000dtexであることが好ましい。
【0020】
一方、
図2、3のように、合成樹脂繊維としてモノフィラメント2を用いた場合は、
モノフィラメント2の繊度(d
S2)と、側面発光型光ファイバー3の繊度(d
f)との比(d
S2/d
f)は1.5〜6.0であることが好ましく、1.5〜4.0であることがより好ましく、1.5〜3.5であることが特に好ましい。このように、合成樹脂繊維がモノフィラメント2である場合は、マルチフィラメント11であるときと比べて、乗員及び他の物品との接触による摩耗、及び押圧による変形を生じ難いため、適正な繊度の範囲内で比較的繊度の小さい繊維を用いることが好ましい。
【0021】
また、モノフィラメント2の繊度は特に限定されないが、側面発光型光ファイバー3が車両内装用表皮材10の車室内側の最外表面に表出し、摩耗したり、傷付いたりするのを防止するためには、繊度は1000〜3500dtex、特に1000〜3000dtex、更に1000〜2000dtexであることが好ましい。
【0022】
尚、側面発光型光ファイバー3は、側面発光型光ファイバー3とマルチフィラメント11又はモノフィラメント2とを用いて製織される織物の2重織、3重織などの織組織に基づき、また、糸密度を調整すること等により、車両内装用表皮材10の最外表面には表出せず、より内方側の奥まった位置に織り込まれている形態とすることもできる。
【0023】
更に、側面発光型光ファイバー3の車両内装用表皮材10の車室内側の最外表面への表出は、マルチフィラメント11及びモノフィラメント2の繊度と、側面発光型光ファイバー3の繊度とを、前述のような繊度比とすることにより防止することができるが、側面発光型光ファイバー3の繊度が小さければ、製織時に加わる張力によってマルチフィラメント11が細径化したとしても、その繊維径が側面発光型光ファイバー3の径より小さくなることが防止される。これによっても、側面発光型光ファイバー3が車両内装用表皮材10の車室内側の最外表面に表出することを抑えることができる。また、この側面発光型光ファイバー3の車両内装用表皮材10の最外表面への表出は、織組織及び糸密度、並びに繊度の大小の各々の作用、効果を併せて勘案することによっても、より効率よく防止することができる。
【0024】
また、合成樹脂繊維間に連続して織り込まれる側面発光型光ファイバー3の本数は、特に限定されないが、車両内装用表皮材10の内装材としての意匠性、及び織物としての形態、強度等の観点で1〜5本とすることができる。更に、合成樹脂繊維がマルチフィラメント11であるときは(
図1参照)、連続して織り込まれる側面発光型光ファイバー3の本数は2〜5本とすることができ、3〜4本であることが好ましい。
【0025】
一方、モノフィラメント2の場合は(
図2、3参照)、その光沢を利用し、光ファイバーからの光を反射させて十分な輝度を確保することができる。そのため、連続して織り込まれる側面発光型光ファイバー3の本数は、合成樹脂繊維がマルチフィラメント11であるときと比べて少なくすることができる。具体的には、1〜3本とすることができ、2〜3本であることが好ましい。また、合成樹脂繊維がモノフィラメント2であれば、例えば、
図3のように、側面発光型光ファイバー3が2本であっても、意匠性に優れた、見栄えの良い車両内装用表皮材10とすることができる。
【0026】
マルチフィラメント11及びモノフィラメント2としては、合成樹脂繊維が用いられる。合成樹脂繊維の材質は特に限定されず、各種の合成樹脂からなる繊維を用いることができる。この合成樹脂としては、ナイロン6、ナイロン66等のポリアミド系樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂、ポリアクリル系樹脂、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂などが挙げられる。合成樹脂としては、特にポリアミド系樹脂及びポリエステル系樹脂が好ましい。
【0027】
また、光ファイバーは、通常、コア層とクラッド層とから構成されており、コア層の外周をクラッド層が被覆した構造を有する。そして、コア層及びクラッド層の各々の材質、屈折率、反射率等により、側面から適度に漏光し、発光する側面発光型光ファイバー3とすることができる。更に、コア層及びクラッド層は、それぞれ単層でもよく、複数層が積層された形態であってもよい。光ファイバーとしては、樹脂製光ファイバー、石英系光ファイバー等の各種のものがあるが、本発明では、織物に織り込まれる光ファイバーであるため、柔軟で曲げ衝撃等に優れ、容易に製織することができる樹脂製の側面発光型光ファイバー3が用いられる。
【0028】
更に、既存の樹脂製光ファイバー等の側面発光型光ファイバー3の直径は0.1〜10mm程度であるが、製織のし易さ、発光ムラの低減、又は汎用性の観点から、直径が0.15〜1.5mm、特に0.15〜1.0mm、更には0.15〜0.4mmの側面発光型光ファイバー3を用いることが好ましい。更に、樹脂製の側面発光型光ファイバー3の繊度は、コア層及びクラッド層を構成する各々の樹脂の種類にもよるが、例えば、前述のように、直径が0.25mmであるときに、繊度が607dtexの側面発光型光ファイバー3が挙げられ、好ましい繊度の範囲は、マルチフィラメント11及びモノフィラメント2の各々の繊度との好ましい繊度比により定まることになる。
【0029】
樹脂製光ファイバーのコア層としては、ポリメチルメタクリレート、ポリエチルメタクリレート、ポリエチルアクリレート等のアクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリスチレン樹脂、及びポリオレフィン系樹脂等の優れた透明性を有する樹脂が用いられていることが好ましい。更に、クラッド層としては、フッ化ビニリデン樹脂、フッ化ビニリデンテトラフルオロエチレン共重合樹脂、ポリクロロトリフルオロエチレン樹脂、トリフルオロイソプロピルメタクリレート樹脂等の優れた透明性を有するとともに、コア層より屈折率が小さい樹脂が用いられていることが好ましい。
【0030】
また、車両内装用表皮材10に織り込まれた側面発光型光ファイバー3を発光させるためには、複数本の側面発光型光ファイバー3の先端部が束ねられ、その端面と対向する位置に光源が配置される。光源は特に限定されないが、通常、LEDが用いられる。そして、LED光源から束ねられた側面発光型光ファイバー3の端面に向けて光を照射させ、導光させることで、側面発光型光ファイバー3が発光する。また、複数本の側面発光型光ファイバー3の先端部を束ねる場合、車両内装用表皮材10の形状、寸法(面積)によって、可能であれば、車両内装用表皮材10に織り込まれた全ての側面発光型光ファイバー3を束ねてもよく、所定本数の側面発光型光ファイバー3が束ねられた複数の側面発光型光ファイバー束としてもよい。
【0031】
更に、車両内装用基体4は、通常、合成樹脂製の成形体であり、成形型を用いて加熱、加圧するプレス成形法により、ドアトリム、ルーフトリム等の車両用内装材の形状に成形される。また、合成樹脂は特に限定されず、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂、及びナイロン6、ナイロン66等のポリアミド系樹脂が用いられる。これらの合成樹脂のうちでは、成形のし易さ、強度等の観点でポリプロピレンが好ましい。また、剛性等の物性を向上させるため、ガラス繊維、カーボン繊維等が配合された繊維強化樹脂を用いることもできる。
【0032】
尚、前述の例は単に説明を目的とするものでしかなく、本発明を限定するものと解釈されるものではない。本発明を典型的な実施態様の例を挙げて説明したが、本発明の記述及び図示において使用された文言は、限定的な文言ではなく、説明的および例示的なものであると理解される。ここで詳述したように、その態様において本発明の範囲又は精神から逸脱することなく、添付の特許請求の範囲内で変更が可能である。ここでは、本発明の詳述に特定の構造、材料及び実施態様を参照したが、本発明をここにおける開示事項に限定することを意図するものではなく、寧ろ、本発明は添付の特許請求の範囲内における、機能的に同等の構造、方法、使用の全てに及ぶものとする。
【産業上の利用可能性】
【0033】
本発明は車両内装用基体に接合され、間接的な車室内照明として利用することができる車両内装用表皮材の技術分野において利用することができる。特に、ドアトリム、ルーフトリムなどの車両内装材の表皮材の技術分野において有用である。
【符号の説明】
【0034】
10;車両内装用表皮材、11;適正な繊度のマルチフィラメント、12;繊度が過小なマルチフィラメント、13;繊度が不十分なマルチフィラメント、14;繊度が過大なマルチフィラメント、2;モノフィラメント、3;側面発光型光ファイバー、4;車両内装用基体。