(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6853548
(24)【登録日】2021年3月16日
(45)【発行日】2021年3月31日
(54)【発明の名称】ドア及びドア装置
(51)【国際特許分類】
E05B 5/00 20060101AFI20210322BHJP
E05B 1/06 20060101ALI20210322BHJP
E05C 3/04 20060101ALI20210322BHJP
【FI】
E05B5/00 A
E05B1/06 103
E05C3/04 E
【請求項の数】6
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2016-227722(P2016-227722)
(22)【出願日】2016年11月24日
(65)【公開番号】特開2018-84082(P2018-84082A)
(43)【公開日】2018年5月31日
【審査請求日】2019年11月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】000204985
【氏名又は名称】大建工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000150718
【氏名又は名称】株式会社長沢製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】特許業務法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岸田 康弘
(72)【発明者】
【氏名】渡部 明丸
(72)【発明者】
【氏名】新井 宏明
【審査官】
砂川 充
(56)【参考文献】
【文献】
実開昭51−33194(JP,U)
【文献】
特開2002−174065(JP,A)
【文献】
特開2004−332519(JP,A)
【文献】
登録実用新案第3171048(JP,U)
【文献】
特表2015−529291(JP,A)
【文献】
特開2013−19228(JP,A)
【文献】
特開2006−257651(JP,A)
【文献】
特開2013−68014(JP,A)
【文献】
特開2010−242370(JP,A)
【文献】
特開2009−144474(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2004/0119294(US,A1)
【文献】
西独国特許出願公開第2826082(DE,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05B 1/00−85/28
E05C 1/00−21/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ラッチ受けを有するドア枠内の開口を開閉するドアであって、
ドア本体と、
前記ドア本体に該ドア本体の戸先端面に対し出没可能に支持され、突出時に前記ラッチ受けに係合するラッチと、
前記ドア本体に揺動可能に支持され、非操作時にはドア本体の厚さ方向の表面と同一面となり、操作時に前記ドア本体の表面から厚さ方向内側に押し込まれるように揺動するプレートハンドルと、
前記プレートハンドルを操作したときに、前記ラッチを前記ラッチ受けとの係合が解除されるように没入方向に移動させるラッチ解除機構とが設けられている
ことを特徴とするドア。
【請求項2】
請求項1記載のドアにおいて、
前記プレートハンドルの揺動方向内側のドア本体には、当該プレートハンドルが前記ドアの面内に押し込まれた際に、前記ドア本体を開閉操作するための手掛かり部が設けられている
ことを特徴とするドア。
【請求項3】
請求項1記載のドアにおいて、
前記プレートハンドルは、前記ドア本体の開口側の端部に設けられている
ことを特徴とするドア。
【請求項4】
請求項1又は3に記載のドアにおいて、
前記プレートハンドルは、前記ドア本体の高さ方向の全体にわたって設けられている
ことを特徴とするドア。
【請求項5】
請求項1又は3に記載のドアにおいて、
前記プレートハンドルは、前記ドア本体の高さ方向の中間位置から下端にわたって設けられている
ことを特徴とするドア。
【請求項6】
ラッチ受けを有するドア枠と、ドア本体を有し、前記ドア枠内の開口を開閉するドアとを備えたドア装置であって、
前記ドア本体には、
前記ドア本体に該ドア本体の戸先端面に対し出没可能に支持され、突出時に前記ラッチ受けに係合するラッチと、
前記ドア本体に揺動可能に支持され、非操作時にはドア本体の厚さ方向の表面と同一面となり、操作時に前記ドア本体の表面から厚さ方向内側に押し込まれるように揺動するプレートハンドルと、
前記プレートハンドルを操作したときに、前記ラッチを前記ラッチ受けとの係合が解除されるように没入方向に移動させるラッチ解除機構とが設けられている
ことを特徴とするドア装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ラッチ受けを有するドア枠内の開口を開閉するドア、及び、当該ドアとラッチ受けを有するドア枠とを含むドア装置に関する。
【背景技術】
【0002】
室内に設置されるラッチ機構を有するドアでは、ドアの面外にレバーハンドルを突設するのが一般的である(例えば、特許文献1及び特許文献2参照)。これらの文献に記載されているドアは、上記レバーハンドルの操作により、ラッチの係合を解除し、ドアの開閉ができるように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平9−203253号公報
【特許文献2】特開2004−68518号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1及び特許文献2に記載されたような従来のドア装置は、レバーハンドルがドア面から離れる方向に向かって突設されているため、室内空間や通路のスペースを損なうという問題がある。また、レバーハンドルに通行人がぶつかる可能性もある。
【0005】
また、一般的に従来のドア装置に係るレバーハンドルは、上下方向の中間位置に設けられるため、身長の低い子供や高齢者にとって操作がしにくいという問題がある。さらに、周囲の壁面やドア面等の意匠性を高める際に、レバーハンドルの存在によってその意匠性が損なわれる場合がある。
【0006】
本発明は斯かる諸点に鑑みてなされたもので、その目的は、体裁がよく、かつ、安全性の高いドアを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために、この発明では、ドア本体に揺動可能に支持され、ドア枠のラッチ受けとドア本体のラッチとの係合の解除操作に係るプレートハンドルを、非操作時にドア本体の厚さ方向の表面と同一面となるように構成した。これにより、体裁がよく、かつ、安全性の高いドアを実現することができる。
【0008】
具体的には、第1の発明に係るドアは、ラッチ受けを有するドア枠内の開口を開閉するものであって、ドア本体と、前記ドア本体に該ドア本体の戸先端面に対し出没可能に支持され、突出時に前記ラッチ受けに係合するラッチと、前記ドア本体に揺動可能に支持され、非操作時にはドア本体の厚さ方向の表面と同一面となるプレートハンドルと、前記プレートハンドルを操作したときに、前記ラッチを前記ラッチ受けとの係合が解除されるように没入方向に移動させるラッチ解除機構とが設けられていることを特徴とする。
【0009】
この第1の発明では、プレートハンドルの非操作時において、プレートハンドルの表面とドア本体の厚さ方向の表面とが同一面となるように構成している。そのため、ハンドルがドア本体の表面から離れる方向に突出せず、ドアの前後にある室内空間や通路等のスペースを損なうことがない。また、従来技術に係るレバーハンドルやプッシュプルハンドルのように、突出したハンドルに人が接触するようなこともない。さらに、突出したハンドルがないため、非常に体裁のよいドアを実現することができる。
【0010】
第2の発明は、第1の発明において、前記プレートハンドルは、操作時に前記ドア本体の表面から厚さ方向内側に押し込まれるように揺動するものであることを特徴とする。
【0011】
この第2の発明では、プレートハンドルがドア本体の厚さ方向内側に押し込まれるように揺動するので、プレートハンドルの表面からの押圧操作によりラッチ解除機構を作動させることができ、ドアの開扉動作に係るプレートハンドルの操作性を高めることができる。具体的には、例えば、操作者(居住者等)は、手の甲で押し込むことにより、ラッチ解除機構を作動させることができるので、荷物を持っているような場合においても、スムーズにドアを開けることができる。
【0012】
第3の発明は、第2の発明において、前記プレートハンドルの揺動方向内側のドア本体には、当該プレートハンドルが前記ドアの面内に押し込まれた際に、前記ドア本体を開閉操作するための手掛かり部が設けられていることを特徴とする。
【0013】
上記のような手掛かり部を設けることにより、引き開き式のドアやスライド式のドアにおいても、プレートハンドルがドアの面内に押し込まれてラッチ解除機構が作動した後に、手掛かり部に手を掛けてドアの開扉操作をすることができるようになる。押し開き式のドアの閉扉操作においても同様である。
【0014】
第4の発明は、第1の発明において、前記プレートハンドルは、前記ドア本体の開口側の端部に設けられている。
【0015】
この第4の発明では、プレートハンドルがドア本体の開口側の端部に設けられることで、ドアの操作位置の把握が容易であるとともに、ハンドル、ラッチ及びラッチ受けの相互間の距離が近くなるため、それらの構成を単純化、簡素化することができる。
【0016】
第5の発明は、第1又は第4の発明において、前記プレートハンドルは、前記ドア本体の高さ方向の全体にわたって設けられている。
【0017】
第6の発明は、第1又は第4の発明において、前記プレートハンドルは、前記ドア本体の高さ方向の中間位置から下端にわたって設けられている。
【0018】
この第5及び第6の発明では、プレートハンドルがドア本体の高さ方向の全体又は中間位置から下端にわたって設けられているので、身長の低い子供や高齢者等にも開閉操作のしやすい使い勝手のよいドアを実現することができる。
【0019】
第7の発明は、ラッチ受けを有するドア枠と、ドア本体を有し、前記ドア枠内の開口を開閉するドアとを備えたドア装置であって、前記ドア本体には、前記ドア本体に該ドア本体の戸先端面に対し出没可能に支持され、突出時に前記ラッチ受けに係合するラッチと、前記ドア本体に揺動可能に支持され、非操作時にはドア本体の厚さ方向の表面と同一面となるプレートハンドルと、前記プレートハンドルを操作したときに、前記ラッチを前記ラッチ受けとの係合が解除されるように没入方向に移動させるラッチ解除機構とが設けられていることを特徴とする。
【0020】
この第7の発明では、第1の発明と同様に、プレートハンドルの非操作時において、プレートハンドルの表面とドア本体の厚さ方向の表面とが同一面となるように構成している。このため、第1の発明と同様に、ドアの開扉操作に係るハンドルがドア本体の表面から離れる方向に突出せず、ドアの前後にある通路やスペースを損なうことがないとともに、通行人に対しての安全性も高く、かつ、非常に体裁のよいドアを実現することができる。
【発明の効果】
【0021】
以上説明したように、本発明に係るドアは、プレートハンドルがドアの厚さ方向の表面と同一面内に設けられているため、体裁がよく、かつ、安全性の高いドアを実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】
図1は、実施形態に係るドア装置を示す正面図である。
【
図3】
図3は、ハンドルユニットを一部分解した分解斜視図である。
【
図4】
図4は、後側プレートハンドルの係止板とフォークの係止爪との位置関係を示す斜視図である。
【
図5】
図5は、前側プレートハンドルの係止板とフォークの係止爪との位置関係を示す斜視図である。
【
図6】
図6は、
図5のVII−VII線断面図であり、ラッチ係合部がラッチ受けに係合された状態を示す図である。
【
図7】
図7は、
図5のVII−VII線断面図であり、ラッチ係合部とラッチ受けとの係合が解除された状態を示す図である。
【
図8】
図8は、引き開き式のドアの場合において、ラッチ解除後の開扉動作について示した図である。
【
図9】
図9は、押し開き式のドアの場合において、ラッチ解除後の開扉動作について示した図である。
【
図10】
図10は、変形例に係るドア装置を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。以下の実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものでは全くない。
【0024】
−ドア装置の構成−
図1は本発明の実施形態に係るドア装置(建具)を示す。このドア装置Aは、例えば建物内の開口に施工されたドア枠1を有する。このドア枠1は、左右に位置する2本の縦枠11,11と、両縦枠11,11の上端部間に横架された上枠12(鴨居)とを備え、このドア枠1の内部に開口部13が形成されている。右側の縦枠11には、上下複数の丁番14,14,…(
図1では2個)が取り付けられており、ドア2のが丁番14,14,…に揺動可能に支持されている。そして、このドア2の揺動によって開口部13が開閉されるようになっている。左側の縦枠11には、有底箱状のラッチ受け9が配設されている。なお、以下の説明において、丁番14,14,…が取り付けられた方の縦枠11側を右とし、他方のラッチ受け9が配設された縦枠11側を左とする。
【0025】
図1及び
図2に示すように、ドア2は、矩形枠状の四方框(芯材)の表裏面にそれぞれMDF等からなる化粧板29,29を一体的に接合したフラッシュパネル構造のドアである。具体的には、四方框は、例えばドア2の左右両端に位置する外側縦框材21,21と、両外側縦框材21,21の上下端間にそれぞれ連結された上下の横桟材22,22とを備えている。さらに、両外側縦框材21,21の間において、上下の横桟材22,22間は、2つの内側縦框材23,24によって連結されている。これらの外側縦框材21,21、上下の横桟材22,22及び2つの内側縦框材23,24は、いずれも同じ平面上に位置しており、その表面及び裏面にそれぞれ化粧板29,29が一体的に接合され、固定されている。
【0026】
ドア2は、左端における上下方向の中間部を内側に向かって正面視矩形状に切り欠いた切欠部25が形成されたドア本体20を有している。左外側縦框材21は、切欠部25と対応する位置(上下方向の中間位置)で上下に分離されている。左内側縦框材23は、上記切欠部25の右側面に沿うように立設されている。さらに、左外側縦框材21と左内側縦框材23との間は、切欠部25の上下側面に沿って延びる内側横桟材26,26によって連結されている。すなわち、切欠部25は、両内側横桟材26,26と、左内側縦框材23とによって区画されている。そして、この切欠部25には、ハンドルユニット3が取り付け固定されている。
【0027】
図3に示すように、ハンドルユニット3は、左右方向に対向配置されたフロント板4及びストップガイド5と、その両者の前後端間をそれぞれ接続し、前後方向に対向する一対のプレートハンドル6,6とが箱形状に配置されている。ハンドルユニット3の前後方向の厚さは、ドア本体20の厚さと略同じである。したがって、ハンドルユニット3が切欠部25に取り付け固定されたとき、プレートハンドル6,6の外表面と化粧板29の前後方向の外表面とは、それぞれ、面一になっている(
図2及び
図6参照)。換言すると、プレートハンドル6,6は、それぞれ、ドア本体20の前後方向の表面(化粧板29の前後方向の外表面)と同一面内に設けられている。なお、本開示において、「同一面内」とは、実質的に同一の面内であることを指すものとする。具体的には、プレートハンドル6,6が、ドア本体20の前後方向の表面に対して若干突出していたり、若干凹んでいたりするものを含む概念である。より具体的には、例えば、化粧板の厚さに応じた幅で、プレートハンドル6,6がドア本体20の前後方向に凹んでいるようなものも含む概念である。「面一」についても、同様である。
【0028】
フロント板4は、上下方向に延びており、その上下方向の高さは、切欠部の上下方向の高さよりも若干高く設定されている。フロント板4には、ハンドルユニット3を切欠部25に取り付ける際に、切欠部25の上下端から突出する位置にねじ孔41,41が形成されている。フロント板4は、このねじ孔41,41に挿入されたねじ42,42によって内側横桟材26又は左外側縦框材21にねじ止め固定されている。また、フロント板4の上下方向の中間位置には、後述するスイングラッチ8のラッチ係合部81a(
図3参照)の出し入れが可能に構成された矩形状のガイド孔43がその厚さ方向(左右方向)に貫通形成されている。
【0029】
ストップガイド5は、上下方向に延びる略矩形状のプレートである。ストップガイド5の左側面は、略曲面状に凹陥する凹陥部51が形成されていて、ドアを開閉させるための手掛かり部を構成している。凹陥部51の開放端側の前後端部51a,51aは、左右方向に若干長めに形成されており、後述するプレートハンドル6の係止段部64が係止できるようになっている。ストップガイド5の高さは、切欠部25の高さより若干低く、その上下方向の端部寄りの位置には、それぞれねじ孔52,52が貫通形成されている。ストップガイド5は、このねじ孔52,52に挿入されたねじ53,53によって左内側縦框材23にねじ止め固定されている。
【0030】
図4及び
図5に示すように、プレートハンドル6の左端部には、上下一対の丁番61,61が突設されており、該丁番61,61を介してフロント板4の前後方向の端部に揺動可能に軸支されている。また、プレートハンドル6の内面中央部には、略球台形状のばね受け62が突設されており、両ばね受け62,62間に、両プレートハンドル6,6間を外側に付勢するスプリングばね69(
図6参照)が介挿されている。
【0031】
プレートハンドル6の右端部は、若干肉厚になっており、その肉厚部分(以下、肉厚部63という)の外側には、ストップガイド5の凹陥部51の前後端部51a,51a(開放側の両端部)に内側から係止される係止段部64が形成されている。このように、係止段部64とストップガイド5とがそれぞれ係止されるため、両プレートハンドル6,6がドア本体20の表面よりも外側に揺動する動きが規制されている(
図3参照)。したがって、一対のプレートハンドル6,6は、操作前の状態(非操作時)においてドア本体20の表面とフラットな状態で保持されるとともに、このフラットな状態からドア本体20の内側に向かって他方のプレートハンドル6と当接するまでの間で押し込み操作をすることができる、すなわち、揺動可能である。
【0032】
なお、ストップガイド5を省いてドア本体20(ドア2)を構成することも可能である。具体的には、上記左内側縦框材23の切欠部25と対応する位置を、ストップガイド5の凹陥部51と同じように略曲面上に凹陥させることにより実現できる。
【0033】
フロント板4の内面(右側面)には、箱状の鍵ボックス7が一体的に突設されている。
図6及び
図7に示すように、箱状の鍵ボックス7には、スイングラッチ8が左右方向に揺動可能に収容されている。スイングラッチ8は、前後方向に見て、逆L字形状のスイングボディ81と、右側が開放された略U字状のフォーク82とによって構成されている。フォーク82とスイングボディ81とは、上下方向に並べて配設されている。詳細は図示しないが、スイングボディ81の上端部は、上側から見てコ字状にかつ前後方向に見て略L字形状に凹陥しており、フォーク82の左下部(中間部)が挿入できるようになっている。そして、スイングボディ81にフォーク82の中間部が挿入された状態で、両者間は連結ピン83を用いて一体的に連結されている。スイングボディ81の左下端部は、ラッチ係合部81aを構成している。また、フォーク82の上下の開放端は、一対の係止爪82a,82bを構成している。
【0034】
ラッチ係合部81aは、スイングラッチ8(スイングボディ81)の揺動により、フロント板4のガイド孔43の外側(左側)への突出と、ガイド孔43の内側(右側)への没入が可能に構成されている。ラッチ係合部81aの左端面は、略矩形状に凹陥しており、この凹陥部にマグネット81bが嵌められ、ねじ止め固定されている。左側の縦枠11に設けられたラッチ受け9の内側には、右前側(右上側)から左奥側(左下側)に向かって傾斜する傾斜面91が形成されており、この傾斜面91に強磁性材からなる吸着板92がねじ止め固定されている。また、スイングボディ81には、連結ピン83の下側に左端面から右側に向かって延びる有底のばね収容孔84が形成され、このばね収容孔84にコイルばね85が挿入されている。このコイルばね85は、ラッチ係合部81aがガイド孔43に没入する没入方向に移動したとき、すなわちラッチ係合部81aとラッチ受け9との係合が解除された場合に、ドア2が開錠状態を保持するように付勢されている。なお、ラッチ係合部81aのマグネット81bと吸着板92との間の吸引力は、上記コイルばね85による付勢力よりも若干大きくなるように設定されている。したがって、ドア本体20がラッチ係合部81aとラッチ受け9とが対向するドアの閉位置に移動すると、マグネット81bが吸着板92に吸引移動することにより、ラッチ係合部81aがラッチ受け9に進入し、ドア2の閉状態(施錠状態)が保持されるようになっている。
【0035】
図4及び
図5に戻り、プレートハンドル6において、それぞれのばね受け62の左側には、係止板65が内側に向かって突設されている。係止板65は、左右方向から見た場合に、基端部から離れる方向の先端部に向かってその厚さが薄くなるように構成されている。係止板65は、一対のプレートハンドル6,6で左右方向の位置が揃えられている一方で、上下方向の位置をずらして配設されている。具体的には、
図5に示すように、前側のプレートハンドル6(以下、プレートハンドル6aともいう)の係止板65(以下、係止板65aともいう)は、プレートハンドル6aがフラットな状態において、その先端部の上面が、施錠状態に係るフォーク82上側の係止爪82aと当接するように配設されている。同様に、
図4に示すように、後側のプレートハンドル6(以下、プレートハンドル6bともいう)の係止板(以下、係止板65bともいう)は、プレートハンドル6bがフラットな状態において、その先端部の上面が、施錠状態に係るフォーク下側の係止爪82bと当接するように配設されている。
【0036】
−ドアの開閉動作−
次に、ドアの開閉動作について詳細に説明する。
【0037】
以下において、後側のプレートハンドル6bを操作して、ドア2を開扉させる場合について詳細に説明する。具体的には、まず、後側のプレートハンドル6bがスプリングばね69の弾性に抗してドア本体20の内側(前側)に向かって押圧操作される。プレートハンドル6bがドア本体20の内側に向かって押し込まれると、プレートハンドル6bに一体形成された係止板65aが左右方向に若干傾斜しながらドア本体20の内側に向かって移動する。すると、係止爪82aが係止板65aの傾斜面を先端部から基端部に向かって摺動し、フォーク82が上側に押し上げられる。これにより、スイングボディ81が
図6の状態から反時計回りに揺動し、ラッチ係合部81a(マグネット81b)が吸着板92から分離される。さらに、プレートハンドル6がドア本体20の内側に向かって押し込まれると、
図7に示すように、ラッチ係合部81aがガイド孔43の内側に引き込まれ、ドア2の開閉が可能な状態となる。この状態を上下方向から見た状態を
図8及び
図9に示している。
【0038】
図8は引き開き式のドアの場合におけるラッチ解除後のドア2の開扉操作について示した図である。また、
図9は押し開き式のドアの場合におけるラッチ解除後のドア2の開扉操作について示した図である。
【0039】
まず、引き開き式のドア2の場合について、
図8を用いて具体的に説明する。プレートハンドル6bがドア本体20の内側に向かって前側のプレートハンドル6aに当接又は近接するところまで押し込まれると、プレートハンドル6bとストップガイド5との間に凹状のスペースが形成される。この凹条スペースに手指を挿入し、手の甲等でラッチ解除状態を保持しながら、指の先端部をストップガイド5の凹陥部51(後端部51a)に掛けてドア本体20を引き寄せる。これにより、ドア本体20が後側に向かって揺動する。この場合、ストップガイド5の凹陥部51(後端部51a)は、手掛かり部としての機能を有する。
【0040】
次に、押し開き式のドア2の場合について、
図9を用いて具体的に説明する。
【0041】
押し開き式のドア2の場合、ドア2の開閉が可能な状態(
図7の状態)になった後もプレートハンドル6b又はドア本体20の後面をそのまま前側に向かって押し進めることにより、ドア本体20を前側に向かって揺動させることができる。
【0042】
なお、引き開き式及び押し開き式のいずれにおいても、ドア2の開扉後、プレートハンドル6bから手指を離すと、スプリングばね69の付勢力によってプレートハンドル6bが操作前の位置に向かって揺動し、両プレートハンドル6a,6bが平行状態に復帰する。
【0043】
また、前側のプレートハンドル6aを操作して、ドア2の開扉させる場合においても、上記後側のプレートハンドル6bの開閉操作と同様であり、ここではその詳細な説明を省略する。
【0044】
次に、ドア2を閉扉操作する場合について詳細に説明する。閉扉操作については、引き開き式のドア2及び押し開き式のドア2ともに同じ操作を行う。具体的には、
図8に示すような状態までプレートハンドル6(6a又は6b)を押し込んだ後、凹条スペースに手指を挿入し、ドア本体20を開口部13が閉鎖される方向に揺動させる。ドア本体20が閉位置まで移動させられると、マグネット81bと吸着板92との間の吸引力により、ラッチ係合部81aがラッチ受け9に係合し、閉扉操作が完了する。
【0045】
以上のように、本実施形態によると、プレートハンドル6の非操作時において、プレートハンドル6の厚さ方向の表面とドア本体20の厚さ方向の表面と同一面となるように構成している。このような構成とすることで、プレートハンドル6がドア本体20の表面から離れる方向に突出しないため、ドア2の前後にある通路やスペースを損なうことがない。また、従来技術に係るレバーハンドルやプッシュプルハンドルのように、突出したハンドルに人が接触するようなこともない。さらに、突出したハンドルがないため、非常に体裁のよいドア2を実現することができる。
【0046】
[その他の実施形態]
なお、上記実施形態では、ドア本体20の上下方向の中間部分に切欠部25が設けられているものとしたが、これに限定されない。例えば、
図10に示すように、ドア本体20の高さ方向の中間位置から下端にわたって切欠部25が設けられるようにしてもよい。この場合、その切欠部25の高さに対応したプレートハンドル6を設ければよい。また、例えば、ドア本体の高さ方向の全体にわたってプレートハンドル6が設けられるようにしてもよい。この場合、内側縦框材23の左側全体にわたって延びるストップガイド5が内側縦框材23に取り付けられる。そして、そのストップガイド5に対応してドア本体の高さ方向の全体にわたるプレートハンドル6が取り付けられる。このように、プレートハンドル6の上下方向の高さを大きくすることで、操作者の身長等に関わらず、すなわち、子供や高齢者等の操作位置が低い方、又は、身長が非常に高い方にも操作しやすいドア2及びドア装置Aを提供することができる。
【0047】
また、上記実施形態では、プレートハンドル6がドア本体20の内側に向かって押し込まれることにより、ラッチ係合部81aと吸着板92との係合が解除される
ものとしたが、これに限定されない。例えば、プレートハンドルをドア本体の外側に向かって揺動させることにより、ラッチ解除機構が作動するようにしてもよい。この場合、図示しないが、例えば、プレートハンドルの表板の一部が切り欠かれている切欠部又はプレートハンドルに表面から内側に向かって傾斜面を有するように凹陥する凹部(以下、総称して手掛かり部という)を設け、その手掛かり部に手を掛けてプレートハンドルをドア本体の外側に向かって揺動できるように構成するとよい。また、例えば、手掛かり部の内側にラッチ解除機構を実現するための押圧式のボタンを設け、そのボタンを押すことにより、ラッチ解除機構が作動するようにしてもよい。このように、本開示において、プレートハンドルを操作するとは、プレートハンドル自体を操作することに加えて、ボタンやレバー等のプレートハンドルに付設された操作機構を操作することを含む概念である。
【0048】
また、上記実施形態では、引き開き式及び押し開き式のドアについて説明したが、本発明は、スライド式の引戸や吊戸にも適用できる。この場合においても、スライド式の引戸や吊戸に係るドア本体に対して、上記実施形態又はその他の実施形態に記載したような構成を設けることにより、同様の効果が得られる。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明は、安全性が高く、室内空間及び通路の設計に係るスペースの制約が緩和されるとともに、ドアのデザイン性を高めることが可能であり、極めて有用であり、産業上の利用可能性が高い。
【符号の説明】
【0050】
A ドア装置
1 ドア枠
2 ドア
6 プレートハンドル
20 ドア本体
51 凹陥部(手掛かり部)
81a ラッチ係合部(ラッチ)