(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
水供給手段に連結された一次側配管部、個別作動式のスプリンクラーヘッドに連結された二次側配管部、及び前記一次側配管部と前記二次側配管部との間を常態として閉状態に仕切る弁部を有し、前記水供給手段から前記スプリンクラーヘッドへの水供給路を構成し、前記一次側配管部及び前記二次側配管部の双方に常態として水を充填する送水配管と、
管路を介して前記二次側配管部に連結され、前記二次側配管部の内部を吸引することで前記二次側配管部内に充填された水を常態として負圧状態に維持する吸引ポンプと、を備えた湿式スプリンクラーシステムにおいて、
前記管路の鳥居配管に形成され、前記吸引ポンプによる吸引方向上流側から下流側に向けて配管が立ち上がる立ち上がり配管部と、
前記立ち上がり配管部よりも前記吸引方向上流側に設けられ、前記管路内の負圧状態を負圧値として検出する負圧センサと、
前記立ち上がり配管部よりも前記吸引方向上流側に設けられ、前記管路内に大気を導入するためのものであり、常態として閉状態とされる大気導入弁と、
前記負圧センサで検出された前記管路内の負圧値が予め設定された規定値以上である場合に前記大気導入弁を開動作して前記管路内に大気を導入する制御部と、を備えたことを特徴とする湿式スプリンクラーシステム。
前記制御部は、前記大気導入弁を予め設定された規定時間だけ開動作した後、前記大気導入弁を閉動作することを特徴とする請求項1に記載の湿式スプリンクラーシステム。
前記制御部は、前記大気導入弁を閉動作した後、前記負圧センサで検出された前記管路内の負圧値が前記規定値未満とならない場合に、前記大気導入弁を再び開動作することを特徴とする請求項2に記載の湿式スプリンクラーシステム。
【背景技術】
【0002】
従来より、大規模なビルディングを中心として消火用のスプリンクラーヘッドを天井部に配置したスプリンクラーシステムが普及している。このスプリンクラーヘッドのうち、例えば火災の熱によって閉塞部が溶融し、これにより水噴射可能となるものを個別作動式スプリンクラーヘッドと呼んでいる。スプリンクラーシステムでは、このようなスプリンクラーヘッドに水供給手段からの水を供給する送水配管中に、スプリンクラーヘッドへの水の供給を開閉する弁部を設ける。
【0003】
この送水配管中、弁部より水供給手段に連結された側を一次側配管部、スプリンクラーヘッドに連結された側を二次側配管部としたとき、一次側配管部だけでなく、二次側配管部にも常態として水を充填する形式のスプリンクラーシステムを湿式スプリンクラーシステムと呼んでいる。湿式スプリンクラーシステムでは、スプリンクラーヘッドの直上まで水が充填されているため、火災発生時の水噴射応答に優れる。但し、スプリンクラーヘッドが暴発した場合に水損のおそれがある。
【0004】
そのため、本発明者は、下記特許文献1に記載される湿式スプリンクラーシステムを提案した。この湿式スプリンクラーシステムでは、二次側配管部に管路を連結し、その管路に吸引ポンプを設け、その吸引ポンプで二次側配管部の内部を吸引することで二次側配管部内に充填された水を常態として負圧状態に維持する。これにより、スプリンクラーヘッドが暴発しても二次側配管部内の水がスプリンクラーヘッドから漏れることがなく、水損を抑制することができる。なお、下記特許文献1では、個別作動式スプリンクラーヘッドよりも早く火災状態を感知する火災感知センサを設け、このセンサから送出される火災信号に基づいて水供給手段及び弁部の開閉を制御するようにしている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、例えば複数の棟の湿式スプリンクラーシステムの二次側配管部内の水を単一の吸引ポンプで負圧状態に維持しようとする場合などでは、二次側配管部と吸引ポンプを連結する管路に、例えば鳥居配管ができてしまうこともある。鳥居配管は、例えば立ち上がり配管部(縦管ともいう)と立ち下がり配管部(縦管)の間に横引き配管部が配置されて、全体が鳥居のような形状をなす配管構造である。このような構造の管路内に水が貯まると、立ち上がり配管部で貯水が揚水される。このとき、配管の構造上、どうしても貯水中に空気が流入しやすく、貯水中に空気が流入した状態で、立ち上がり配管部の全揚程が吸引ポンプの水頭より大きくなると、貯水を吸引ポンプ側に吸引することができないから、管路内の負圧状態が小さくなる。そして、そのようになると、送水配管中、二次側配管部内の水を負圧状態に維持することができなくなるおそれがある。
【0007】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、二次側配管部と吸引ポンプを連結する管路内の貯水中に空気が流入した場合でも二次側配管部内の水を負圧状態に維持することが可能な湿式スプリンクラーシステムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため請求項1に記載の発明は、水供給手段に連結された一次側配管部、個別作動式のスプリンクラーヘッドに連結された二次側配管部、及び前記一次側配管部と前記二次側配管部との間を常態として閉状態に仕切る弁部を有し、前記水供給手段から前記スプリンクラーヘッドへの水供給路を構成し、前記一次側配管部及び前記二次側配管部の双方に常態として水を充填する送水配管と、管路を介して前記二次側配管に連結され、前記二次側配管部の内部を吸引することで前記二次側配管部内に充填された水を常態として負圧状態に維持する吸引ポンプと、を備えた湿式スプリンクラーシステムにおいて、前記管路の鳥居配管に形成され、前記吸引ポンプによる吸引方向上流側から下流側に向けて配管が立ち上がる立ち上がり配管部と、前記立ち上がり配管部よりも前記吸引方向上流側に設けられ、前記管路内の負圧状態を負圧値として検出する負圧センサと、前記立ち上がり配管部よりも前記吸引方向上流側に設けられ、前記管路内に大気を導入するためのものであり、常態として閉状態とされる大気導入弁と、前記負圧センサで検出された前記管路内の負圧値が予め設定された規定値以上である場合に前記大気導入弁を開動作して前記管路内に大気を導入する制御部と、を備えたことを特徴とする。
【0009】
この構成において、管路内の負圧値が予め設定された規定値以上である場合とは、管路内の真空度が予め設定された真空度より低いことを意味する。即ち、負圧状態を負圧値で表すと、真空度が高いほど、負圧値は、例えば数直線上で小さくなるから、負圧状態を表す負圧値が規定値以上であることは、真空度が予め設定された真空度より低いことになる。
【0010】
この構成によれば、管路内に水が貯まり、その貯水中に空気が流入すると、立ち上がり配管部での揚水とそれに伴う気泡膨張によって管路内の負圧値が大きくなる。この管路内の負圧値が予め設定された規定値以上となると大気導入弁が開動作されて管路内に大気が導入される。これにより、立ち上がり配管部よりも吸引方向上流側から管路内に勢いよく大気が導入され、これに伴って貯水が立ち上がり配管部を越えて吸引ポンプ側に吸引される。この吸引された水を排水すれば、管路内の水が少なくなり、立ち上がり配管部で揚水する必要がなくなり、管路内を規定の負圧状態に戻すことができる。従って、管路内の貯水中に空気が流入した場合であっても、その水を排水して、送水配管中の二次側配管部を負圧状態に維持することが可能となる。
【0011】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の湿式スプリンクラーシステムにおいて、前記制御部は、前記大気導入弁を予め設定された規定時間だけ開動作した後、前記大気導入弁を閉動作することを特徴とする。
【0012】
この構成によれば、管路内に大気を勢いよく導入した後、速やかに管路内を閉状態とすることができるので、管路内の負圧状態を不要に小さく(負圧値を大きく)することがなく、送水配管中の二次側配管部を負圧状態に維持することができる。
【0013】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の湿式スプリンクラーシステムにおいて、前記制御部は、前記大気導入弁を閉動作した後、前記負圧センサで検出された前記管路内の負圧値が前記規定値未満とならない場合に、前記大気導入弁を再び開動作することを特徴とする。
【0014】
この構成によれば、1回の大気導入で、管路内の水を十分に排水できない場合であっても、管路内に貯まった水を次第に排水することができ、これにより送水配管中の二次側配管部を負圧状態に維持することが可能となる。
【発明の効果】
【0015】
以上説明したように、本発明によれば、管路内に水が貯まり、その貯水中に空気が流入するような場合に、立ち上がり配管部よりも吸引方向上流側から管路内に勢いよく大気を導入し、これに伴って吸引ポンプ側に吸引された水を排水することで、管路内を規定の負圧状態に戻すことができ、従って管路内に水が貯まった場合であっても、送水配管中の二次側配管部を負圧状態に維持することができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下の実施の形態では、本発明を具体化するための装置や方法を例示する。しかしながら、本発明の技術的思想は、構成部品の材質や形状、配置等を下記に特定するものでない。本発明の技術的思想は、特許請求の範囲に技術的範囲内で種々の変更を加えることができる。
【0018】
以下に、本発明の湿式スプリンクラーシステムの実施形態について図面を参照して詳細に説明する。
図1は、この実施形態の湿式スプリンクラーシステムの全体構成図である。この実施形態の湿式スプリンクラーシステムは、2棟のビルディング10A、10Bの湿式スプリンクラーシステムを単一の水供給手段(送水ポンプ)12及び吸引ポンプ14で制御しようとするものである。なお、水供給手段には、例えば屋上部に設置したタンクからの重力による給水を用いることもできる。
【0019】
各棟10A、10Bにおける湿式スプリンクラーシステムの構成は、前述した特許文献1と同等である。各棟各階の天井部には、火災時に水を噴射する個別作動式のスプリンクラーヘッド16が多数設けられている。これらのスプリンクラーヘッド16には、図の左の棟10Aの地下に設けられた消火水槽18内の水が水供給手段である送水ポンプ12から供給される。そのため、送水ポンプ12と各スプリンクラーヘッド16の間には水供給路として送水配管20が設けられている。この送水配管20は、各棟10A、10Bを貫通する給水本管22から各階毎に分岐され、その分岐管24が各階のスプリンクラーヘッド16に連結されている。この分岐管24の水供給方向上流部に、電動弁28及び警報弁30で構成される弁部26が各階毎に設けられている。
【0020】
また、各棟10A、10Bの各階には、個別作動式のスプリンクラーヘッド16よりも早く火災状態を感知する火災感知センサ34が設けられており、各火災感知センサ34が火災状態を感知すると火災信号が送水制御盤32に向けて出力される。送水制御盤32は、この火災感知センサ34からの火災信号を受信したときに、電動弁28を開動作する。そのため、火災発生時には、個別作動式のスプリンクラーヘッド16が水を噴射する以前に、スプリンクラーヘッド16側に加圧水が供給される。なお、送水配管20における各階の分岐管24の末端には、分岐管24に試験的に水を流したり、この分岐管24に水を注入したりするための試験弁36が設けられている。
【0021】
この送水配管20では、前述した弁部26よりも水供給方向上流側、つまり水供給手段である送水ポンプ12側を一次側配管部38、弁部26よりも水供給方向下流側、つまりスプリンクラーヘッド16側を二次側配管部40としている。この実施形態のスプリンクラーシステムは、湿式スプリンクラーシステムであるから、二次側配管部40には、常態として水が充填されている。この状態から、火災感知センサ34が火災状態を感知し、送水制御盤32により送水ポンプ12が作動され且つ電動弁28が開動作されると、二次側配管部40に高圧の水が供給される。その後、個別作動式スプリンクラーヘッド16が作動すると、その個別作動式スプリンクラーヘッド16から速やかに水が噴射される。そして、所定量の水が所定時間送水されると警報弁30が警報信号を出力する。
【0022】
一方、前述のように、湿式スプリンクラーシステムでは、二次側配管部40に水が充填されているので、後述する二次側配管部40内の充填水を負圧状態に維持する負圧状態確保手段がない場合、スプリンクラーヘッド16に暴発が生じると、水損が発生する。なお、暴発とは、外的衝撃などによりスプリンクラーヘッド16の分解部分が破壊されることを意味する。スプリンクラーヘッド16の分解部分とは、平常時、水を閉塞している閉塞部構造の一部であり、分解部分に設けられた可溶片が火災時の熱で溶融すると、分解して落下することからそう呼ばれている。また、水損とは、放水によって家財・電気製品などに損害が生じることを意味する。
【0023】
この負圧状態確保手段として、各棟各階の全ての二次側配管部40は管路42に連結され、この管路42に吸引ポンプ14が接続されている。管路42は、各棟各階の二次側配管部40に連結される各階連結配管部44と、各階連結配管部44が連結されて各棟10A、10Bを上下に貫通する下り配管部46と、
図1の右側の棟10Bの下り配管部46を左側の棟10Aの下り配管部46に連結する地上連結配管部(一部、地下配管部もある)48を有する。また、吸引ポンプ14は、
図1の左側の棟10Aの消火水槽18の上方に設けられている。この吸引ポンプ14で、管路42を介して二次側配管部40の内部を吸引することにより、二次側配管部40内に充填されている水を負圧状態とすることができる。そのため、スプリンクラーヘッド16が暴発しても、そのスプリンクラーヘッド16までの二次側配管部40内の水は管路42を通じて吸引ポンプ14により吸引され、水損が生じない。
【0024】
この吸引ポンプ14には、例えばドイツ国 Speck Pumpen Vakuumtechnik GmbH社の真空ポンプ(欧州特許番号 EP1518055)を適用することができる。この真空ポンプは、気体のみならず液体をも排出可能に構成されたものであり、吸引・排出する流体に水などの液体が混ざった高負荷の状態においても長時間使用可能な実用的なポンプである。
【0025】
この吸引ポンプ14の作動状態は、
図1の左側の棟10Aに設けられた吸引制御盤50によって制御される。具体的には、後述するように、管路42に負圧センサ52を設け、この負圧センサ52で検出される負圧状態が予め設定された規定状態になるように吸引ポンプ14を作動する。また、各階連結配管部44には、吸引開閉弁56が設けられており、同じく吸引制御盤50によって作動状態が制御される。この吸引開閉弁56は、常態として開状態に維持されており、火災発生時には、吸引制御盤50によって閉動作される。これにより、火災時に、二次側配管部40に供給される送水ポンプ12からの給水が管路42内に流入するのを防止する。また、二次側配管部40と各階連結配管部44との連結部における二次側配管部40内の水位を監視し、その水位が予め設定された規定状態となるように送水ポンプ12や電動弁28を制御する。
【0026】
この実施形態では、前述のように、吸引ポンプ14は、
図1の左側の棟10Aの消火水槽18の上方に設けられているので、
図1の右側の棟10Bからの地上連結配管部48は、地上部において長く引き回される。この実施形態では、種々の障害を回避するために、鳥居配管58が計5箇所設けられているものとした。鳥居配管58の高さは、分かりやすく、全て1mであるものとした。鳥居配管58は、前述のように、立ち上がり配管部60と立ち下がり配管部62の間に横引き配管部64が設けられて、全体として鳥居形状をなす配管構造である。一般的に、鳥居配管には不都合が多いので、極力回避するようにしているが、場合によっては回避できない場合もある。
【0027】
この実施形態では、
図1の右側の棟10Bにおいて、下り配管部46の下端部、つまり鳥居配管58の立ち上がり配管部60より吸引方向上流側に負圧センサ52が設けられ、その上方には、管路42の下り配管部46内に大気を導入する大気導入弁54が設けられている。従って、この大気導入弁54も、鳥居配管58の立ち上がり配管部60より吸引方向上流側に設けられている。負圧センサ52は、管路42内、特に立ち上がり配管部60より吸引方向上流側の下り配管部46内の負圧状態を負圧値として検出し、吸引制御盤50に出力するものである。また、大気導入弁54は、常態として閉状態に維持され、吸引制御盤50からの電気信号によって開動作される。なお、吸引方向上流側とは、吸引される側を、吸引方向下流側とは、吸引する側を示す。また、負圧センサ52は、できるだけ下方に、大気導入弁54は、できるだけ上方に配置するのが望ましい。
【0028】
この管路42の地上連結配管部48と、吸引ポンプ14、負圧センサ52、大気導入弁54を抜き出して模式的に表したのが
図2(A)である。この実施形態の地上連結配管部48には、5箇所の鳥居配管58が形成され、更に吸引ポンプ14の手前側で、
図1の左側の棟10Aの下り配管部46に連結するための立ち上がり配管部60が形成されているので、計6箇所の立ち上がり配管部60がある。これら全ての立ち上がり配管部60の高さを1mとし、吸引ポンプ14が創生する負圧値をゲージ圧で−0.06MPaとする。
【0029】
なお、周知のように、例えば管路内の負圧状態は、一般に、大気圧を0とする、ゲージ圧で表される。即ち、大気圧より圧力の小さい負圧状態は、負値で表されるために、一般に負圧と称される。これに対し、絶対真空を0とする絶対圧は、絶対圧=ゲージ圧+大気圧(=絶対圧0.101MPa)で表される。また、真空度は、絶対真空に近いほど「真空度が高い」、大気圧に近いほど「真空度が低い」と表現されることが多い。しかしながら、旧来、真空度を表す「Torr」も、負圧状態が大きいほど、即ち絶対真空に近いほど、数値は小さくなる。従って、何れの場合も、負圧状態を数値(負圧値)で表示すると、負圧状態が大きいほど、即ち絶対真空に近いほど、負圧値は小さくなる。従って、以下に、負圧値が予め設定された規定値以上であることは、真空度が予め設定された真空度より低いことを意味する。
【0030】
図2(A)は、例えば前述のスプリンクラーヘッド暴発時のように管路42内に水が入り、地上連結配管部48に貯まった水が吸引ポンプ14によって吸引されている状態を示している。このように管路42内に水が貯まった場合、微小な漏洩部68から、貯水中に空気が流入するのは回避しにくい。貯水中に混入した空気の気泡は、負圧状態が大きいほど、つまり負圧値が小さいほど、膨張する。この膨張した空気(低圧空気)は鳥居配管58の上部(横引き配管部64)に溜まるから、管路42内の貯水は、立ち上がり配管部60の吸引方向上流側、例えば鳥居配管58同士の間の下方横引き配管部66に貯まった状態で分断される。
【0031】
水は、−0.01MPaで約1m引き上げられるから、1mの立ち上がり配管部60が計6箇所あると、6箇所の立ち上がり配管部60で1mずつ揚水するために吸引ポンプ14が創生する負圧状態が消費され、それより吸引方向上流側、つまり下り配管部46内は負圧状態にならない。換言すれば、立ち上がり配管部60の全揚程が吸引ポンプ14の水頭より大きくなると、それより吸引方向上流側は負圧状態とならない。従って、
図2(A)の状態では、地上連結配管部48内の水は吸引ポンプ14側に吸引されず、管路42の下り配管部46より吸引方向上流側、つまり二次側配管部40内は負圧状態とならない。
【0032】
そこで、この実施形態では、負圧センサ52で検出される負圧値が予め設定された負圧規定値、例えば−0.05MPaになると吸引制御盤50により大気導入弁54があらかじめ設定された規定時間(例えば3分間)開動作される。
図2では、理解を容易にするために、地上連結配管部48の吸引方向直上に大気導入弁54を示しているが、負圧状態にある管路42内に立ち上がり配管部60より吸引方向上流側で大気が導入されると、大気は管路42内に勢いよく流れ込む。すると、その導入大気の流れに押されるようにして、下方横引き配管部66内の貯水が各鳥居配管58の立ち上がり配管部60及び横引き配管部64を越えて吸引ポンプ14側に吸引されると共に、吸引ポンプ14直上の立ち上がり配管部60も越えて吸引ポンプ14側に吸引される。
【0033】
この吸引ポンプ14の直前の立ち上がり配管部60を越えて吸引された水は吸引ポンプ14が連結されている
図1の左側の棟10Aの下り配管部46から排水されるので、
図2(C)に示すように、管路42内の水が少なくなる。例えば、
図2(D)に示すように、下方横引き配管部66に空気の通り道ができれば、立ち上がり配管部60で揚水する必要がなくなり、管路42内を規定の負圧状態に戻すことができる。従って、管路42内に水が貯まった場合であっても、その水を排水して、送水配管20中の二次側配管部40を負圧状態に維持することが可能となる。
【0034】
この大気導入弁54の開動作規定時間、つまり大気導入時間は、例えば3分程度と比較的小さいので、管路42内の負圧状態が不足して(負圧値が大きくなりすぎて)二次側配管部40内が負圧状態でなくなるのを回避することができる。また、大気導入弁54を閉じた後、例えば管路42内の状態が安定する規定時間(例えば1分間)が経過しても、負圧センサ52で検出された管路42内の負圧値が、前述した負圧規定値、即ち−0.05MPa未満とならない場合には、吸引制御盤50により大気導入弁54が再び開動作される。即ち、
図2(C)に示すように、下方横引き配管部66に水が充満していると、負圧センサ52で検出される負圧値は−0.05MPa未満とならないから、大気導入弁54が再び開動作され、これにより管路42内の水は少なくなる。
【0035】
そして、負圧センサ52で検出される管路42内の負圧値が負圧規定値以上となるまで、大気導入弁54の短時間の開動作が繰り返されるので、管路42内の水は次第に少なくなり、例えば
図2(D)に示すように、下方横引き配管部66に空気の通り道ができる。従って、1度の大気導入で管路42内の水を十分に排水できない場合であっても、大気導入を繰り返すことにより、管路42内の水を次第に排水して管路42内の負圧状態を規定状態に戻すことができ、これにより送水配管20中の二次側配管部40を負圧状態に維持することができる。
【0036】
一般に、管路内の貯水を空気で排出(ブロー)する場合、空気を加圧して供給する。しかし、二次側配管部40の内部を吸引ポンプ14で吸引する湿式スプリンクラーシステムでは、管路42内が負圧状態であるから、貯水部の吸引方向上流側に大気導入弁54を設け、この大気導入弁54を開動作して大気を管路42内に導入すれば、管路42内の負圧と大気圧との圧力差で大気が管路42内に勢いよく流れ込み、これによって貯水を排出することが可能となる。
【0037】
このように、この実施形態の湿式スプリンクラーシステムでは、二次側配管部40に連結された管路42に吸引ポンプ14を設け、二次側配管部40の内部を吸引することで二次側配管部40内に充填された水を常態として負圧状態に維持する場合に、管路42の立ち上がり配管部60よりも吸引方向上流側に、管路42内の負圧状態を負圧値として検出する負圧センサ52、及び管路42内に大気を導入するための常時閉の大気導入弁54を設けた。そして、負圧センサ52で検出された管路42内の負圧値が予め設定された規定値以上である場合に、大気導入弁54を開動作して管路42内に大気を導入する。従って、立ち上がり配管部60での揚水によって管路42内の負圧値が規定値以上となると、立ち上がり配管部60よりも吸引方向上流側から管路42内に勢いよく大気が導入され、管路42内の水が少なくなり、立ち上がり配管部60で揚水する必要がなくなり、管路42内を規定の負圧状態に戻すことができる。従って、管路42内の貯水中に空気が流入した場合であっても、その水を排水して、送水配管20中の二次側配管部40を負圧状態に維持することが可能となる。
【0038】
また、大気導入弁54を予め設定された規定時間だけ開動作した後、大気導入弁54を閉動作することにより、管路42内に大気を勢いよく導入した後、速やかに管路42内を閉状態とすることができる。そのため、管路42内の負圧状態を不要に小さく(負圧値を大きく)することがなく、送水配管20中の二次側配管部40を負圧状態に維持することができる。
【0039】
また、大気導入弁54を閉動作した後、負圧センサ52で検出された管路42内の負圧値が規定値未満とならない場合に、大気導入弁54を再び開動作することにより、1回の大気導入で、管路42内の水を十分に排水できない場合であっても、管路42内に貯まった水を次第に排水することができ、これにより送水配管20中の二次側配管部40を負圧状態に維持することが可能となる。
【0040】
また、回避できない鳥居配管58の立ち上がり配管部60であっても、管路42内の水を排水して送水配管20中の二次側配管部40を負圧状態に維持することができる。
【0041】
なお、前述した実施形態では、送水制御盤32と吸引制御盤50を個別としたが、これらを統合しても差し支えない。
【0042】
本発明が上記していない様々な実施の形態等を含むことは勿論である。従って、本発明の技術的範囲は上記の説明から妥当とされる特許請求の範囲に記載された発明特定事項によってのみ定められるものである。