特許第6853571号(P6853571)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6853571
(24)【登録日】2021年3月16日
(45)【発行日】2021年3月31日
(54)【発明の名称】電力供給システム
(51)【国際特許分類】
   H02J 50/05 20160101AFI20210322BHJP
   F16H 7/02 20060101ALI20210322BHJP
   F16G 1/28 20060101ALI20210322BHJP
   F16H 55/36 20060101ALI20210322BHJP
【FI】
   H02J50/05
   F16H7/02 A
   F16G1/28 G
   F16G1/28 Z
   F16H55/36 Z
【請求項の数】6
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2017-65596(P2017-65596)
(22)【出願日】2017年3月29日
(65)【公開番号】特開2018-170841(P2018-170841A)
(43)【公開日】2018年11月1日
【審査請求日】2020年3月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】514038443
【氏名又は名称】株式会社ExH
(74)【代理人】
【識別番号】100126000
【弁理士】
【氏名又は名称】岩池 満
(74)【代理人】
【識別番号】100154748
【弁理士】
【氏名又は名称】菅沼 和弘
(72)【発明者】
【氏名】原川 健一
(72)【発明者】
【氏名】宮本 照嗣
【審査官】 下林 義明
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−175869(JP,A)
【文献】 特開2017−043150(JP,A)
【文献】 特開2011−019293(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 50/00 − 50/90
F16H 55/32 − 55/56
F16H 7/00 − 7/24
F16G 1/00 − 17/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電界結合電力伝送技術を適用した電力供給システムであって、
所定の波長の交流電源からの電力を送電する送電部と、
受電電極を有し、前記送電部のうち前記受電電極と対向する部位を送電電極として、当該送電電極と当該受電電極とにより形成される複数の接合容量を介して前記送電部から電力を受電して負荷に供給する受電部と、
を備え、
前記受電電極は、導電体の歯車部材で形成され、
前記送電部は、前記歯車部材の歯に対応する凹凸を有し、前記歯と噛合するように配置されている、
電力供給システム。
【請求項2】
前記歯車部材の前記歯は、前記歯車部材の中心部付近から放射状に延出された複数の板状部材で構成され、隣接する前記板状部材の間には弾性体が充填されている、
請求項1に記載の電力供給システム。
【請求項3】
前記歯車部材及び前記送電部を被う様に配置された導電体をさらに備え、
前記送電電極及び前記受電電極のうち少なくとも一方と、前記導電体と、により形成される複数の接合容量を介して前記送電部から前記受電部に対し電力が伝送される、
請求項1又は2に記載の電力供給システム。
【請求項4】
前記送電電極は、導電体の歯車部材で形成され、
前記受電部は、前記歯車部材の歯に対応する凹凸を有し、前記歯と噛合するように配置されている、
請求項1乃至3のうちいずれか1項に記載の電力供給システム。
【請求項5】
電界結合電力伝送技術を適用した電力供給システムであって、
所定の波長の交流電源からの電力を送電する送電部と、
受電電極を有し、前記送電部のうち前記受電電極と対向する部位を送電電極として、当該送電電極と当該受電電極とにより形成される複数の接合容量を介して前記送電部から電力を受電して負荷に供給する受電部と、
を備え、
前記受電電極は、導電体のプーリーで形成され、
前記送電部は、前記プーリーの歯に対応する凹凸を有し、前記歯と噛合するように配置されたタイミングベルトである、
電力供給システム。
【請求項6】
前記送電電極は、導電体のプーリーで形成され、
前記受電部は、前記プーリーの歯に対応する凹凸を有し、前記歯と噛合するように配置されたタイミングベルトである、
請求項5に記載の電力供給システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力供給システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、電界結合によって電力を供給する技術は公開されおり(例えば特許文献1参照)、本出願人も、機械要素における電界結合電力伝送手段として、軸受け間の電力伝送手段や、伝送レールと移動体との間の電力伝送手段について既に提案している(例えば軸受け間の電力伝送手段については特許文献2乃至5参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2015−099880号公報
【特許文献2】特開2015−154577号公報
【特許文献3】特開2014−147203号明細書及び図面
【特許文献4】特開2015−094901号明細書及び図面
【特許文献5】特開2016−031312号明細書及び図面
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1乃至5を含め、従来より、歯車を用いた機械要素に対し、歯車を介して電力を供給する手法については提案されて来なかった。
【0005】
本発明は、このような状況に鑑みてなされたものであり、歯車を用いた機械要素に対し、歯車を介して電力を供給することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の一態様の電力供給システムは、
電界結合電力伝送技術を適用した電力供給システムであって、
所定の波長の交流電源からの電力を送電する送電部と、
受電電極を有し、前記送電部のうち前記受電電極と対向する部位を送電電極として、当該送電電極と当該受電電極とにより形成される複数の接合容量を介して前記送電部から電力を受電して負荷に供給する受電部と、
を備え、
前記受電電極は、導電体の歯車部材で形成され、
前記送電部は、前記歯車部材の歯に対応する凹凸を有し、前記歯と噛合するように配置されている。
【0007】
また、前記歯車部材の前記歯は、前記歯車部材の中心部付近から放射状に延出された複数の板状部材で構成され、隣接する前記板状部材の間には弾性体を充填させることができる。
【0008】
また、前記歯車部材及び前記送電部を被う様に配置された導電体をさらに備え、
前記送電電極及び前記受電電極のうち少なくとも一方と、前記導電体と、により形成される複数の接合容量を介して前記送電部から前記受電部に対し電力を伝送させることができる。
【0009】
また、前記送電電極は、導電体の歯車部材で形成され、
前記受電部は、前記歯車部材の歯に対応する凹凸を有し、前記歯と噛合するように配置させることができる。
【0010】
また、上記目的を達成するため、本発明の一態様の電力供給システムは、
電界結合電力伝送技術を適用した電力供給システムであって、
所定の波長の交流電源からの電力を送電する送電部と、
受電電極を有し、前記送電部のうち前記受電電極と対向する部位を送電電極として、当該送電電極と当該受電電極とにより形成される複数の接合容量を介して前記送電部から電力を受電して負荷に供給する受電部と、
を備え、
前記受電電極は、導電体のプーリーで形成され、
前記送電部は、前記プーリーの歯に対応する凹凸を有し、前記歯と噛合するように配置されたタイミングベルトとすることができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、歯車を用いた機械要素に対し、歯車を介して電力を供給することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】電界結合電力伝送技術を適用した電力伝送回路において、対向する電極対によって接合容量が形成されていることを示す回路図である。
図2】電極となる金属間の各種状況毎の送電の様子を示すイメージ図と、各種状況毎の等価回路図である。
図3】噛合する歯車の間に蓄えられる電界エネルギーの様子を示す図である。
図4】電界結合電力伝送技術が適用される電力伝送回路のうち、歯車を介して電力を伝送させる場合の例を示す図である。
図5】ラックギヤ及びピニオンギヤに対し、導電性カバーを被せた場合に形成される接合容量を示す図である。
図6】タイミングベルトの内部に、金属製のメッシュで構成されたメッシュ電極と導電線とを組込むことにより、電界結合技術で電力伝送及び通信を実現させた場合の例を示す図である。
図7】タイミングベルトとプーリーとの位置関係を示す図である。
図8】フランジを備えるプーリーにタイミングベルトを噛合させた場合の例を示す図である。
図9】タイミングベルト及びプーリーを2組用いて、送電又は通信を行わせた場合の構成を示すイメージ図である。
図10】本発明の電力供給システムをリニア駆動システムに適用させた場合の構成を示す図である。
図11】本発明の電力供給システムを、曲線部を有するリニア駆動システムに適用させた場合の構成を示す図である。
図12】本発明の電力供給システムを、曲線部を有するリニア駆動システムに適用させるために、2条のラックギヤとデファレンシャルギヤとを用いた場合の構成を示す図である。
図13】本発明の電力供給システムを、従来技術である多方向駆動装置に適用させた場合の例を示す図である。
図14図13の多方向駆動装置に対し本発明の電力供給システムを適用させた場合の構成を示す断面図である。
図15】高周波検知スイッチを用いた一例を示す図である。
図16】高周波検知スイッチを用いた電力供給システムの例として、図15とは異なる例を示す断面構成図である。
図17】光検知スイッチを用いた電力供給システムの例を示す断面構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について図面を用いて説明する。
【0014】
図1は、電界結合電力伝送技術を適用した電力伝送回路において、対向する電極対によって接合容量Ccが形成されていることを示す回路図である。
【0015】
図1に示すように、電界結合電力伝送技術を適用した電力伝送回路は、送電部1と受電部2とを備える。
ここで、電界結合電力伝送技術とは、対向する金属板からなる電極対によって接合容量Ccが形成された状態で、高周波電流を流すことにより非接触の電力電送を実現する技術である。
即ち、交流電源Vfからの電力を送電する送電部1の末端に金属板の送電電極12と、当該電力を受電して負荷Rに供給する受電部2の先端に金属板の受電電極22とを対向させて配置することにより接合容量Ccが形成され、電界結合電力電送技術が実現される。
【0016】
送電部1は、並列共振回路11と、送電電極12と、トランスT1とを備える。送電部1には交流電源Vfが接続されるため、送電部1はここから電力の供給を受けることができる。
並列共振回路11は、コンデンサC1とコイルL2とを備える。並列共振回路11にはトランスT1を介して交流電源Vfが接続される。即ち、コンデンサC1とコイルL2とが相互に並列に接続されることによって並列共振回路11が構成される。
また、コイルL1が一次側巻線として採用され、コイルL2が二次側巻線として採用されることによってトランスT1が構成される。
ここで、コイルL1の巻線数とコイルL2の巻線数との比率は、1:nとなる。このため、一次側の電圧、即ち交流電源Vfの電圧は、トランスT1においてn倍に昇圧されて並列共振回路11に印加されることになる。
また、並列共振回路11の両端には、送電電極12が接続される。
【0017】
受電部2は、並列共振回路21と、受電電極22と、トランスT2とを備える。
並列共振回路21は、コンデンサC2とコイルL3とを備える。並列共振回路21には受電部2の受電電極22が接続される。即ち、コンデンサC2とコイルL3とが相互に並列に接続されることによって並列共振回路21が構成される。
また、コイルL3が一次側巻線として採用され、コイルL4が二次側巻線として採用されることによってトランスT2が構成される。
ここで、コイルL3の巻線数とコイルL4の巻線数との比率は、n:1となる。このため、一次側の電圧、即ち受電部2で受信されて並列共振回路21に印加された電圧は、トランスT2において1/n倍に降圧されて、負荷Rに印加されることになる。
以上のような構成によって電界結合電力伝送技術が実現される。
【0018】
次に、電極となる金属の接合界面における電力伝送について説明する。
図2は、電極となる金属間の各種状況毎の送電の様子を示すイメージ図と、各種状況毎の等価回路図である。
図2Aは、剛体の金属を電極として対向させ、直流電流を流した場合の様子を示すイメージ図と等価回路図である。
機械要素に用いられる歯車は、通常は剛体の金属であるのが一般的である。このように、歯車が剛体の金属で構成される場合には、図2Aに示すように、歯車を精密研磨したとしても、歯車同士が噛合する部分が点接触している。このため、回路に直流電流を流すと、点接触している部分に破線矢印で示す導電電流が集中する。このため、点接触の部分が加熱し、金属原子がマイグレーションしたり、酸化したりしてしまう。さらに、加熱により、点接触の部分が溶着し、移動によって表面が損傷してしまうこともある。
【0019】
しかし、図2Bに示すように、回路に高周波電流を流した場合には、破線矢印で示す導電電流に対し、実線矢印で示す変異電流の割合が大きくなる。特に、点接触の部分の周辺は、極めて金属間の距離が短くなるため接合容量が増大し、変異電流が大きくなる。このため、点接触の部分に電流が集中しなくなる。
また、図2Cに示すように、金属の界面に絶縁層IとしてDLC(Diamond Like Carbon)や硬質アルマイト層等をコーティングすることにより、導電電流を遮断し、実線矢印で示す変位電流のみにすることができる。この状態では、等価回路はキャパシタンスのみとなる。DLCは、エンジンのシリンダーとピストンのコーティングに用いたとしても、すべり性を改善させる等の効果があるため、過酷な環境の下での使用に対する耐性を有している。また、DLCは、ラックギヤとピニオンギヤ等の歯車系に使用したとしても、極めて過酷な条件の下での使用でない限り、ある程度の耐性を有する。
【0020】
また、図2Dに示すように、最悪の場合、凸部の絶縁層が削られ、金属が顔を出すことがある。この場合であっても、金属接点の周りは絶縁層Iが残る。このとき、絶縁層として採用されている素材がDLCであっても、あるいは硬質アルマイトであっても、誘電率は空気よりも高くなるため、接合容量が大きくなり、破線矢印で示す導電電流よりも実線矢印で示す変位電流が支配的となる。図2Dの例では、一方の金属にのみ絶縁層Iがコーティングされているが、他方の面にも絶縁層Iをコーティングすると、電極同士が動いている場合には、金属接点が対向する割合は極めて低くなる。この点について、DLCは、DLC同士の摺動性が高いため、対向する金属の両方に絶縁層Iをコーティングすることができる。
【0021】
以上のような条件の下、噛み合う歯車同士が接する面に絶縁層IとしてDLC膜をコーティングすることにより電力伝送機能を持たせる手法を検討する。
図3は、噛合する歯車の間に蓄えられる電界エネルギーの様子を示す図である。
【0022】
歯車が噛み合う場合、必ず接点において力が伝達される。そのため、図3Aに示すように、ラックギヤ31と、これと噛合するピニオンギヤ41とのいずれの表面に対しても絶縁層Iをコーティングした場合には、ラックギヤ31とピニオンギヤ41とが噛合する付近の部分では弱電界エリアE1が発生する。また、図3Bに示すように、ラックギヤ31とピニオンギヤ41とが噛合する部分では、両者は極めて近接した状態となるため、強電界エリアE2が発生する。さらに、ラックギヤ31及びピニオンギヤ41は、いずれも歯車であるため、夫々の端部は、歯車の歯として互いに噛み合った状態となる。このため、ラックギヤ31とピニオンギヤ41とが接触する部分の面積は広くなり、この部分において接合容量を広く形成させることができる。
【0023】
次に、歯車を介して電力が送電される様子について説明する。
図4は、電界結合電力伝送技術が適用される電力伝送回路のうち、歯車を介して電力を伝送させる場合の例を示す図である。
【0024】
図4Aに示すように、ラックギヤ31に接続された高周波電源Vfから出力された電力は、ピニオンギヤ41を介して、軸受51に接続された負荷Rに供給される。この場合、ピニオンギヤ41の駆動によって搬送される搬送体上に負荷が配置されることになるため、図4Bに示すように、接合容量Ccがギヤ部3に形成され、また接合容量Crが軸受部4に形成され、直列接続となる。このとき、軸受部4側をスリップリング(図示なし)に置き換えることにより、接合容量Crを1か所に形成させることができる。ただし、この場合、回転側のスリップリングと固定側のブラシとの接触部において電力損耗等の問題が生じるため接合容量は小さくなってしまう。
【0025】
次に、ラックギヤ31及びピニオンギヤ41に対し、導電性カバー43を被せた場合について説明する。
図5は、ラックギヤ31及びピニオンギヤ41に対し、導電性カバー43を被せた場合に形成される接合容量を示す図である。
【0026】
図5Aは、ラックギヤ31及びピニオンギヤ41に対し、導電性カバー43を被せた場合の様子を、ラックギヤ31の側面側から見た断面図である。
図5Bは、ラックギヤ31及びピニオンギヤ41に対し、導電性カバー43を被せた場合の様子を、ラックギヤ31の長手方向から見た断面図である。
【0027】
図5Aに示すように、ラックギヤ31及びピニオンギヤ41を囲むように導電性カバー43を被せることにより、導電性カバー43は、ラックギヤ31とピニオンギヤ41との間で形成される接合容量Cc1と、ラックギヤ31と自身との間で形成される接合容量Cc2と、ピニオンギヤ41と自身との間で形成される接合容量Cc3とを統合する。また、図5Bに示すように、導電性カバー43は、回転軸52と自身との間で形成される接合容量Cc4との間で形成される接合容量Cc4についても統合する。このように、導電性カバー43は、接合容量を増大させることができる。
【0028】
さらに、導電性カバー43は、ラックギヤ31及びピニオンギヤ41を物理的に囲むように配置されるため、接合容量Cc1乃至Cc3で発生する電磁エネルギー(図示なし)の外部への放射量を低減させるための壁としても機能する。
また、導電性カバー43は、自身が負荷R(図4参照)に電力送電するための受電電極としても機能する。
また、ピニオンギヤ41を複数配置させたうえで、導電性カバー43でラックギヤ31及び複数のピニオンギヤ41全体をカバーすることにより、接合容量をさらに増大させることができる。なお、この場合、複数配置されるピニオンギヤ41は、必ずしも駆動系と連接している必要はない。
【0029】
また、図4及び図5では、ラックギヤ31に高周波電源Vfが接続され、ピニオンギヤ41に軸受51を介して負荷Rが接続される構成となっているが、この構成に限定されない。ピニオンギヤ41に軸受51を介して高周波電源Vfが接続され、ラックギヤ31に負荷Rが接続される構成としてもよい。つまり、ラックギヤ31側からピニオンギヤ41側に電力を送電する構成としてもよいし、ピニオンギヤ41側からラックギヤ31側に電力を送電する構成とすることができる。
【0030】
また、図4及び図5では、歯車間における電力伝送の例として、ラックギヤ31とピニオンギヤ41との間の電力の伝送を例に挙げて説明してきたが、この例に限定されない。例えば、複数の平歯車(スパーギヤ)の組み合わせであってもよい。この場合、平歯車の歯が対向する面で形成される接合容量や、複数の平歯車全体を覆った導電性カバーと平歯車との間に形成される接合容量を電力の伝送に利用することができる。また、ウオームギア、ハイボイドギヤ、ウォームラックギヤ(加茂精工株式会社製)、ベベルギヤ、笠羽歯車等、他のあらゆる種類の歯車に対しても本発明の電力供給システムを適用することができる。
さらに、本発明の電力供給システムは、チェーンを接続した歯車、導電性のメッシュを内蔵するベルトを用いたものにも適用することができる。また、導電性繊維が織り込まれたベルトクローラ(加茂精工株式会社製)を用いて、接合容量を増大させることもできる。
【0031】
図6は、タイミングベルト32の内部に、金属製のメッシュで構成されたメッシュ電極303と導電線304とを組込むことにより、電界結合技術で電力伝送及び通信を実現させた場合の例を示す図である。
【0032】
図6に示すように、タイミングベルト32は、後述の図7で示すプーリー42に噛合させるための凹凸部を有する弾性体301からなるベルトである。なお、弾性体301の材質は特に限定されないが、例えばクロロプレンゴム等を採用することができる。
弾性体301の凹凸部の表面は、歯布302で被覆されており、弾性体301の凹凸部の内部には、歯布302の近傍にメッシュ電極303が弾性体301と絡み合った状態で組み込まれている。なお、メッシュ電極303を弾性体301の中に組み込まずに歯布302と一体化させる構成としてもよい。
【0033】
また、弾性体301の内部には、導電線304、及び抗張体305も組み込まれている。導電線304は、曲げ性に強い材質で構成されている。なお、導電線304は、複数の導体をより合わせたより線であってもよい。抗張体305は、タイミングベルト32の長手方向への伸びに対する十分な抵抗を与えることのできる部材で構成される。抗張体305には、スチールケーブル等、比較的伸びの小さい材質で構成された部材を採用することができる。なお、導電線304を抗張体305としての機能させることもできる。
【0034】
メッシュ電極303と導電線304とは、コンタクト部306において、接触又は容量結合によって導通が取られている。ここで、メッシュ電極303の重要な役割は、導電線304と導通を取ること、及び後述の図7に示すプーリー42との間で接合容量を形成させることである。このため、メッシュ電極303は、必ずしも連続体である必要はないが、弾性体301と絡み合うことにより弾性体301を補強させる効果を有するため、連続体である方が弾性体301を補強させる効果が高くなる。
また、図6では、1本のタイミングベルト32に、1条のメッシュ電極303が配置されているが、タイミングベルト32に配置されるメッシュ電極303は1条に限定されず、複数条配置させてもよい。なお、複数条のメッシュ電極303を配置させた場合には、各条のメッシュ電極303毎に独立した導電線304を用意する必要がある。特に、電界結合技術によって通信を実現させる場合には、特性インピーダンスが考慮された平行2条のメッシュ電極303で構成させてもよい。
【0035】
図7は、図6のタイミングベルト32とプーリー42との位置関係を示す図である。
【0036】
図7に示すように、タイミングベルト32とプーリー42とを噛合させると、その接触部位の面積は、図4及び図5に示す歯車同士の接触部位の面積に比べて広くなっている。即ち、タイミングベルト32とプーリー42とを接触させる場合には、チェーンと歯車とを接触させる場合と同様に、プーリー42の外周の約半分以上の部位で接触しているため、接合容量を増大させるには好適である。さらに、タイミングベルト32とプーリー42とは強く密着しているため、この性質も接合容量を増大させるために好適となる。
また、タイミングベルト32とプーリー42とを接触させる場合には、チェーンと歯車との場合とは異なり、奥行き(ベルト幅)を長くとることも可能である。このため、接合容量をさらに増大させることもできる。
【0037】
また、タイミングベルト32とプーリー42とを接触させる場合には、プーリー42にフランジ(つば)43を付すこともできる。
図8は、フランジを備えるプーリー42にタイミングベルト32を噛合させた場合の例を示す図である。
【0038】
図8に示すように、フランジ50を備えるプーリーにタイミングベルト32を噛合させると、タイミングベルト32の側面とフランジ50とが接触することになるため、接合容量をさらに増大させることができる。なお、この場合、タイミングベルト32に組み込まれた状態にあるメッシュ電極303(図示なし)は、フランジ50に接触することができるように、タイミングベルトの側面まで伸びた構成となっている。
【0039】
次に、プーリー42を介してタイミングベルト32と回転軸52との間で送電又は通信が行われる際の構成について説明する。
図9は、図7及び図8のタイミングベルト32及びプーリー42を2組用いて、送電又は通信を行わせた場合の構成を示すイメージ図である。
【0040】
図9Aは、回転軸52に固定させたプーリー42aにタイミングベルト32aを噛合させ、さらにその先に絶縁層Iを介してプーリー42b及びタイミングベルト32bを取り付けた場合の構成を示す断面図である。
図9Aに示すように、プーリー42a及びプーリー42bの夫々の両側面には、接触又は容量結合によって送電電極12が取り付けられている。送電電極12には高周波電源Vfが接続されている。この場合、タイミングベルト32a及び32bが受電電極22側となる。
このように、2組のタイミングベルト32(タイミングベルト32a及び32b)とプーリー42(プーリー42a及び42b)とを用いて、タイミングベルト32a及び32bの夫々に対して電力及び通信信号を流すことができる。
【0041】
図9Aでは、プーリー42a及びプーリー42bの夫々の両側面に送電電極12が取り付けられた場合の構成を示しているが、プーリー42a及びプーリー42bの夫々の両側面に送電電極12ではなく受電電極22を取り付けることもできる。
図9Bは、プーリー42a及びプーリー42bの夫々の両側面に、接触又は容量結合によって受電電極22が取り付けられた場合の構成を示している。この場合、タイミングベルト32a及び32bが送電側となる。この場合、受電側の負荷Rに対して電力及び通信信号を流すことができる。
【0042】
図9Cは、負荷Rが回転軸52上に存在するときの構成を示している。
この場合、図9Cに示すように、回転軸52として同軸状シャフトを採用し、外導体501にプーリー42aを固定し、内導体502にプーリー42bを固定する。これにより、回転軸52に対して電力及び通信信号を流すことができる。なお、電力及び通信信号の取出しは、回転軸52の外導体501に貫通口Hを開けることにより、外導体501及び内導体502間の電圧として電力及び通信信号を取り出すことができる。
図9Dは、複数条のタイミングベルト32にプロファイル61を取り付けた場合の構成を示す断面図である。この場合、プロファイル61に受電電極22を設けることによって、電界結合による受電機能及び通信機能を持たせることができる。例えば、プロファイル61に負荷Rとしてセンサを設けて、タイミングベルト32上の搬送体を検知できるようにしてもよい。なお、プロファイル61には、「はめぱっちん」(登録商標)等を採用することができる。
【0043】
次に、本発明の電力供給システムをリニア駆動システムに適用させた場合について説明する。
図10は、本発明の電力供給システムをリニア駆動システムに適用させた場合の構成を示す図である。
【0044】
本発明の電力供給システムをリニア駆動システムに適用させる場合には、2線ある電力伝送回路のうち、一方をラックギヤ31とし、他方をフェザータッチ電極23とすることによって、外部電極24に対し電力が送電される。
図10Aは、本発明の電力供給システムが適用されるリニア駆動システムを側面方向から見た断面図である。
図10Aに示すように、本発明の電力供給システムが適用されるリニア駆動システムでは、ピニオンギヤ41と噛合されるラックギヤ31と、外部電極24と、が絶縁層Iを挟むように配置されている。外部電極24の所定の部位には、高周波電源から出力された電力を入力するためのコネクタ71が配置されているが、コネクタ71の底部から延出した送電線76は、外部電極24に設けられた貫通孔と絶縁層Iを通ってラックギヤ31に接続されている。このため、高周波電源から出力された電力は、コネクタ71及び送電線76を介してラックギヤ31に入力される。
【0045】
図10B及びCは、本発明の電力供給システムが適用されるリニア駆動システムを長手方向から見た断面図である。
図10B及びCに示すように、外部電極24は、底部に開口部を有する中空の略四角柱形状の部材で構成されている。なお、外部電極24の材質は特に限定されない。例えばアルミニウム製の押出材で構成させることができる。
外部電極24の内部は中空であるため、外部電極24の内部に、外部電極24の長手方向に任意に移動可能な移動体を配置させることができる。この移動体は、ピニオンギヤ41と、回転軸52と、滑り軸受53と、フェザータッチ電極23と、ボディ73と、ガイド輪74と、ANT(超低消費電力無線)部75とを備える。
また、外部電極24の内部側には、ラックギヤ31と、絶縁層Iと、通信線路Lとが配置されている。ラックギヤ31と外部電極24との間は、絶縁層Iを挟むことによって区切られている。また、通信線路Lは、外部電極24と、シールドメタル箔72とで囲まれている。これにより、電磁波放射が低減するため、距離減衰を小さくすることができる。
【0046】
外部電極24の内部に配置された移動体では、2つの滑り軸受53によってピニオンギヤ41及び回転軸52が保持されている。これにより、受電電極としての滑り軸受53と、送電電極としてのラックギヤ31との間に接合容量が形成されるため、ラックギヤ31から取り出された電力は、滑り軸受53に送電される。なお、滑り軸受53には、バックメタルが付された多層型フランジ付きの滑り軸受が採用されている。
外部電極24の内部に配置された移動体は、ラックギヤ31の駆動に合わせて外部電極24の内部を移動する。このとき、4つのガイド輪74のうち2つが外部電極24の両側面の内壁と接し、残る2つが外部電極24の底面の内壁に接しているため、移動体はぶれることなく外部電極24の長手方向と略平行に移動することができる。
【0047】
このような構成を有するリニア駆動システムにおいて、滑り軸受53に送電された電力は、フェザータッチ電極23を介して外部電極24に送電される。具体的には、送電電極としての滑り軸受53と、受電電極としてのフェザータッチ電極23との間には接合容量が形成される。このため、滑り軸受53から送電された電力は、接合容量を介してフェザータッチ電極23に送電される。そして、フェザータッチ電極23に送電された電力は、フェザータッチ電極23と接触する外部電極24に送電される。これにより、小断面の搬送ラインを実現させることができる。
【0048】
また、通信線路Lと、これを囲む外部電極24及びシールドメタル箔72との隙間にANT部75を挿入することにより、通信線路LとANT部75とが非接触の状態を維持させながら移動体を移動させることができる。このようにして、移動体側で通信線路Lを活用することもできる。
なお、通信線路Lには、LCX(漏洩同軸ケーブル)を採用することができる。LCXは、量産性があるため品質の一定化が保てるだけでなく、既存製品を利用できるため安価であるという長所がある。
【0049】
また、本発明の電力供給システムが適用されるリニア駆動システムにおいては、ピニオンギヤ41の代わりにウォームラック型の駆動方式(特許第4531097号)を用いることができる。この場合、モーターを略線路方向に配置させることができるため、本発明の電力供給システムが適用されるリニア駆動システムの更なる小型化を実現させることができる。
【0050】
次に、本発明の電力供給システムを、曲線部を有するリニア駆動システムに適用させた場合について説明する。
図11は、本発明の電力供給システムを、曲線部を有するリニア駆動システムに適用させた場合の構成を示す図である。
【0051】
図10では、外部電極24が直線であることを前提としているが、外部電極24が曲線部を有する場合がある。この場合、ラックギヤ31は、曲線部を通過する際に内周と外周との間で歯車の歯のピッチが異なってしまうという問題が生じる。
これに対しては、図11に示すように、カーブ用ピニオンギヤ44と、カーブ用ラックギヤ33とを併用させた手法を用いる。ここで、「カーブ用ピニオンギヤ」とは、歯車の歯(歯車板401)の微弱変位を許容するピニオンギヤのことをいう。また、「カーブ用ラックギヤ」とは、曲線部を有し、かつ、歯(凸部)の中心部に所定の膨らみを持たせたラックギヤのことをいう。
通常のピニオンギヤ41の場合、曲率半径の大きさに関わらず曲線部でカーブ用ラックギヤ33を用いる必要がある。しかし、カーブ用ピニオンギヤ44と、カーブ用ラックギヤ33とを併用させた場合には、曲線部の曲率半径が大きいときにだけカーブ用ラックギヤ33を用いるだけで済む。
【0052】
図11Aは、カーブ用ピニオンギヤ44の構成を示す断面図である。
図11Aに示すように、カーブ用ピニオンギヤ44は、中央部から放射状に延出した複数の金属製の歯車板401を有し、隣接する歯車板401同士の隙間には弾性体402が充填されている。弾性体402の材質は特に限定されないが、弾性と耐圧縮性とを有し、金属に対して密着する材質で構成させると好適である。例えばシリコンゴムを採用することができる。
【0053】
図11Bは、2つのボビン403がカーブ用ピニオンギヤ44を挟み込むように配置させた状態を示す図である。
ボビン403は、固定ネジ404によってカーブ用ピニオンギヤ44を挟み込むように固定されている。また、図示はしないが、歯車板401とボビン403との間に歯車板401の微小変位を許容する隙間があり、その隙間には弾性体402が充填されている。
このボビン403により、弾性体402をカーブ用ピニオンギヤ44の外側に出さないようにすることができる。
【0054】
図11C乃至Eは、カーブ用ラックギヤ33とカーブ用ピニオンギヤ44とが噛合される様子を示す図である。なお、図10E、D、Cの順で曲線部の曲率半径が小さくなっている。
図11Fは、直線上のラックギヤ31とカーブ用ピニオンギヤ44とが噛合される様子を示す図である。
カーブ用ピニオンギヤ44を備える移動体が直線駆動する場合には、図11Fに示すように、直線上のラックギヤ31のラックギヤ頭頂部310と歯車板401との接触点P(図示なし)は、移動体が直線移動する方向と略垂直に接触線Tとして分布される。なお、破線の矩形は、ラックギヤ31の谷部313を示している。
【0055】
これに対して、カーブ用ピニオンギヤ44を備える移動体が曲線部上を駆動する場合には、図10E、D、Cの順で曲率半径を小さくしていくと、接触点Pの位置は次第に外側にずれて行き、歯車板401を変位させるモーメントが働く。しかし、カーブ用ラックギヤ33を用いているため、カーブ用ラックギヤ33の変位角θに対して、カーブ用ピニオンギヤ44の変位角はΦで済む。これにより、歯車板401の変位を小さく抑えることができるため、カーブ用ピニオンギヤ44の寿命を延ばすことができる。なお、破線の多角形は、カーブ用ラックギヤ33の谷部312を示している。
このように、カーブ用ラックギヤ33とカーブ用ピニオンギヤ44とを用いることにより、曲線部でもスムーズに移動体を駆動させることができる。なお、カーブ用ピニオンギヤ44は、歯車板401を多少変形(折り曲げ、湾曲等)させて製作することにより、カーブ用ラックギヤ33に対してバックラッシュの無いピニオンギヤとして利用することもできる。この場合、曲線部のある線路でも電力を送電することができる。
【0056】
次に、本発明の電力供給システムを、曲線部を有するリニア駆動システムに適用させるために、2条のラックギヤ31とデファレンシャルギヤ81とを用いた場合について説明する。
図12は、本発明の電力供給システムを、曲線部を有するリニア駆動システムに適用させるために、2条のラックギヤ31とデファレンシャルギヤ81とを用いた場合の構成を示す図である。
【0057】
図12Aは、本発明の電力供給システムが適用されるリニア駆動システムを側面方向から見た断面図である。
図12Bは、本発明の電力供給システムが適用されるリニア駆動システムを長手方向から見た断面図である。
図12Bに示すように、外部電極24の内部に配置される移動体は、2つのピニオンギヤ41と、回転軸52と、滑り軸受53と、デファレンシャルギヤ81と、ベベルギヤ82とを備えている。また、図示はしないが、図10に示す移動体と同様に、ボディ73と、ガイド輪74と、ANT75とを備えている。
また、外部電極24の内部には、金属製の固定台83と、2条のラックギヤ84a及び84bと、絶縁層Iと、通信線路Lとが配置されている。ラックギヤ84aと外部電極24との間は、絶縁層Iを挟むことによって区切られている。また、ラックギヤ84bと外部電極24との間は、導電層としての金属製の固定台83を挟むことによって接続されている。通信線路Lは、図10に示す移動体と同様に、外部電極24と、シールドメタル箔72とで囲まれている。
【0058】
外部電極24の内部に配置された移動体では、2つのピニオンギヤ41及び回転軸52が、2つの滑り軸受53の夫々によって保持されている。なお、滑り軸受53には、バックメタルが付された多層型フランジ付きの滑り軸受が採用されている。
また、2つのピニオンギヤ41の間は、両軸間が絶縁されたデファレンシャルギヤ81で結合されている。これにより、曲線部においても、曲線部の内側と曲線部の外側との間の周長距離差を吸収させることができる。
【0059】
さらに、2条のラックギヤ84a及び84bを送電電極として用いることにより、フェザータッチ電極等の他の電極を用いることなく電力を送電させることができる。つまり、受電電極としての2つの滑り軸受53の夫々と、送電電極としての2条のラックギヤ84a及び84bとの夫々との間に接合容量が形成される。これにより、2条のラックギヤ84a及び84bとの夫々から取り出された電力を、2つの滑り軸受53の夫々に送電させることができる。
【0060】
さらに、ベベルギヤ82を設けてデファレンシャルギヤ81を駆動させることにより、外部電極24の内側中央部かつ線路長手方向に対し略平行にモーターの軸を配置させることができるため、更なる小型化を図ることができる。なお、ベベルギヤ82に代えて、笠羽歯車、ウォームギヤ、ハイボイドギヤ等を用いることもできる。
なお、図12では、ラックギヤ84bの電位を外部電極24と同電位にしているが、2条のラックギヤ84a及び84bをいずれも外部電極24と絶縁し、平行する2線として動作させることもできる。即ち、導電層である金属の固定台83を絶縁層Iに置き換えて動作させることができる。
さらに、ピニオンギヤ41を、図11に示すカーブ用ピニオンギヤ44に置き換えることもできる。この場合には、歯車板401の変位量をさらに低減させることができる。
【0061】
次に、本発明の電力供給システムを、従来技術である多方向駆動装置に適用させた場合について説明する。
図13は、本発明の電力供給システムを、従来技術である多方向駆動装置に適用させた場合の例を示す図である。
【0062】
歯車を多方向に駆動させる従来技術として、図13に示すような多方向駆動装置は既に開示されている(特開2011−196487号公報)。即ち、従来技術のみを用いたとしても、表面に複数の凸部を有する板状の被駆動体34上で平歯車45を多方向に移動させることは可能である。
しかしながら、従来技術では、平歯車45を介して駆動体側に電力を供給させるためには、電源ケーブルを常に引き回すか、電池によって駆動させる必要があるという問題点があった。
そこで、本発明の電力供給システムを従来技術に適用することにより、表面に複数の凸部(歯)を有する板状のラックギヤ31側からピニオンギヤ41を介して搬送体(駆動体)側に電力を給電することが可能となる。これにより、上記の問題を解決することができる。
なお、図13において、括弧なしの符号は、従来技術の被駆動体34及び平歯車45を示し、括弧付きの符号は、本発明の電力供給システムを構成するラックギヤ31及びピニオンギヤ41を示している。
【0063】
次に、図13の多方向駆動装置に対し本発明の電力供給システムを適用させた場合の一例について説明する。
図14は、図13の多方向駆動装置に対し本発明の電力供給システムを適用させた場合の構成を示す断面図である。
【0064】
まず、送電電極側について説明する。
複数のギヤブロック311は、図13に示す板状のラックギヤ31を、全て同一形状の正方形になるように分割されたものであり、凸部(歯)のピッチは一定に維持されている。また、複数のギヤブロック311は、いずれも導電性を有し、隣接するギヤブロック311の間は絶縁されている。
また、図示はしないが、複数のギヤブロック311の夫々は、市松模様状に配置され、給電電源の極性が設定される。このとき、隣接するギヤブロック311は、給電電源の極性が異なるように設定されるため寄生容量Cpが発生するが、各ギヤブロック311間の総容量と共振させるようにインダクタンスが設置される。さらに、このインダクタンスに対しトランスから高周波電力が給電される。
以上のような回路構成となるため、所定の数のギヤブロック311の群を1単位として、この1単位毎に図14に示す回路と高周波電源Vfとを用意する必要がある。
【0065】
次に、受電電極側について説明する。
図14に示すように、複数のピニオンギヤ41が複数のギヤブロック311上に配置されており、ピニオンギヤ41とギヤブロック311とは互いに噛合する部位を有している。ピニオンギヤ41は回転軸52を有するが、複数のピニオンギヤ41全てにおいて駆動力を備える必要はなく、一部のピニオンギヤ41が駆動力を備えればよい。
複数のピニオンギヤ41の夫々には、図5に示す導電性カバー43が1つのピニオンギヤ41をカバーし、他の電導性カバー43とは絶縁された受電電極として配置されるが、説明の便宜上これを省略し、軸受51として示されている。
また、図示はしないが、各電極には方向の異なるダイオードが1ペアずつ取り付けられており、夫々が負荷部の異なる極性に接続されている。これにより、任意の場所で電力を受電することができる。
なお、ピニオンギヤ41が複数のギヤブロック311にまたがった場合には、接合容量Ccの大きな方に電流が流れるという問題が生じる。これに対しては、ギヤブロック311の間隔をピニオンギヤ41の歯1ピッチ分だけ空け、ここに絶縁層(図示なし)を設けることにより問題を解決することができる。なお、この場合、ギヤブロック311間の絶縁層として、絶縁体で構成された1つの歯車を設けてもよい。
【0066】
次に、高周波検知スイッチを用いた電力供給システムの例について説明する。
図15は、高周波検知スイッチを用いた電力供給システムの例を示す断面構成図である。
【0067】
図15には、高周波電源Vf1から出力される電力送電周波数を10MHz前後とし、受電電極側に設置された高周波信号源Vf2を10GHz前後とした場合に、搬送体のピニオンギヤ41が存在している直下から電力が送電される様子が示されている。
図15に示すように、送電電極は、図14のギヤブロック311よりも小さい複数のギヤブロック311に分離されて配列されている。
複数のギヤブロック311の夫々には、高周波信号源Vf2から出力される高周波信号を検知してスイッチ動作可能な素子(以下、「高周波検知スイッチ」と呼ぶ)SWが取り付けられている。ギヤブロック311は、通常時はアースに接続されているが、高周波検知スイッチSWが入ったときにのみ高周波電力を送電することができる。高周波検知スイッチSWの動力源は特に限定されないが、例えば直流電源配線の敷設、内蔵電池、蓄電させた高周波信号等の手法を採用することができる。
さらに、高周波検知スイッチ制御部Saは、図示はしないが、高周波信号のみが流れるようにフィルターを装着している。
また、高周波電源Vf1の電圧は、トランスを介してn倍に昇圧されてから分配され、負荷Rの前で1/n倍に降圧されて負荷Rに印加される。なお、電界結合は、電圧が高い方が有利であるため昇圧されている。
【0068】
搬送体側は、駆動機能と受電機能とを有するピニオンギヤ41と、ピニオンギヤ41の周辺に配置された、センシング電極13と、移動電極14とで構成されている。
センシング電極13及び移動電極14は、いずれもギヤブロック311との接合容量が大きくなるように、ギヤブロック311に近接させて配置されている。
また、図15に示すように、受電回路においては、ピニオンギヤ41と、センシング電極13と、移動電極14とに対してのみ高周波信号が流れるようにチョークコイルLPIが設けられている。これにより、高周波電流が流れた際には、スイッチが入り電力伝送回路が形成される。
【0069】
次に、高周波検知スイッチを用いた電力供給システムの例として、図15とは異なる例について説明する。
図16は、高周波検知スイッチを用いた電力供給システムの例として、図15とは異なる例を示す断面構成図である。
【0070】
図16に示す例は、図15に示す例と同様に高周波検知スイッチを用いたものである。しかし、ピニオンギヤ41の周囲に配置された受電電極の数は、図15に示す例では、センシング電極13と移動電極14との2つであるのに対し、図16に示す例では、移動電極14のみである。ただし、図16に示す例において、高周波検知スイッチは、軸受51の電流密度が移動電極14の電流密度に対して高くなることを利用したスレシホールド機能を備えている。このため、高周波電流の電流密度が大きい場合にスイッチが入り電力伝送回路が形成される。図16に示す例では、以上のような構成とすることによって回路を単純化させている。
【0071】
次に、光検知スイッチを用いた電力供給システムの例について説明する。
図17は、光検知スイッチを用いた電力供給システムの例を示す断面構成図である。
【0072】
図17に示す例では、図15及び図16に示す例で用いられた高周波検知スイッチの代わりに、光源91から出力された光を用いてスイッチを入れている。
図17に示すように、ギヤブロック311の中心部には、光を透過させるための開口部92が設けられており、その下に光検知スイッチ制御部Sbが配置されている。このような構成とすることにより、光源91から出力された光を受けたギヤブロック311においてのみ高周波電流のスイッチが入る。なお、光検知スイッチ制御部Sbの動作電源は特に限定されないが、例えば直流電源配線の敷設、内蔵電池、蓄電された光起電圧等の手法を採用することができる。
【0073】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は、上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
【0074】
例えば、上述した実施形態では、電極対の非接触が前提とされているが、完全な非接触でなくとも絶縁物を介して接触し、電気的に近接状態を維持した場合には、十分な接合容量を確保することは可能である。即ち、電極対の一部が物理的に互いに接触したとしても電気的に絶縁されていれば、十分な電力を供給することができる。
【0075】
また、本発明の電力供給システムにおいて採用することができるスイッチは、図15乃至17で例示するスイッチに限定されない。例えば、機械的振動、機械的荷重、磁界等を検知可能なあらゆるスイッチを採用することができる。
【0076】
また、本発明の電力供給システムの歯車部材は、当然ながら所定のモーター等の原動機に接続されており、歯車を用いたあらゆる機械要素に適用することができる。
【0077】
以上まとめると、本発明が適用される電力供給システムは、次のような構成を取れば足り、各種各様な実施形態を取ることができる。
即ち、本発明が適用される電力供給システムは、
電界結合電力伝送技術を適用した電力供給システムであって、
所定の波長の交流電源からの電力を送電する送電部(例えば図4のラックギヤ31)と、
受電電極(図1の受電電極22)を有し、前記送電部のうち前記受電電極と対向する部位を送電電極(図1の送電電極12)として、当該送電電極と当該受電電極とにより形成される複数の接合容量を介して前記送電部から電力を受電して負荷に供給する受電部(図1の受電部2)と、
を備え、
前記受電電極は、導電体の歯車部材(例えば図4のピニオンギヤ41)で形成され、
前記送電部は、前記歯車部材の歯に対応する凹凸を有し、前記歯と噛合するように配置されている。
これにより、歯車を用いた機械要素に対し、歯車を介して電力を供給することができる。
【0078】
また、前記歯車部材の前記歯は、前記歯車部材の中心部付近から放射状に延出された複数の板状部材(例えば図11の歯車板401)で構成させることができ、隣接する前記板状部材の間には弾性体(例えば図11の弾性体402)を充填させることができる。
これにより、受電部は、負荷に対し電力を伝送しながら、曲線部を有する電力伝送線路をスムーズに通過することができる。
【0079】
また、前記歯車部材及び前記送電部を被う様に配置された導電体(例えば図5の導電性カバー43)をさらに備えることができ、
前記送電電極及び前記受電電極のうち少なくとも一方と、前記導電体と、により形成される複数の接合容量を介して前記送電部から前記受電部に対し電力が伝送させることができる。
これにより、さらに接合容量を増大させることができる。また、発生する電磁エネルギーの外部への放射量を低減させることができる。
【0080】
また、前記送電電極は、導電体の歯車部材で形成させることができ、
前記受電部は、前記歯車部材の歯に対応する凹凸を有し、前記歯と噛合するように配置させることができる。
これにより、電極の極性が逆になっておも問題なく電力の伝送を行うことができる。
【0081】
また、本発明が適用される電力供給システムは、
電界結合電力伝送技術を適用した電力供給システムであって、
所定の波長の交流電源からの電力を送電する送電部と、
受電電極を有し、前記送電部のうち前記受電電極と対向する部位を送電電極として、当該送電電極と当該受電電極とにより形成される複数の接合容量を介して前記送電部から電力を受電して負荷に供給する受電部と、
を備えることができ、
前記受電電極は、導電体のプーリー(例えば図7のプーリー42)で形成させることができ、
前記送電部は、前記プーリーの歯に対応する凹凸を有し、前記歯と噛合するように配置されたタイミングベルト(例えば図7のタイミングベルト32)とすることができる。
これにより、送電部と受電部との間に形成される接合容量をさらに増大させることができる。
【符号の説明】
【0082】
1:送電部、2:受電部、3:ギヤ部、4:軸受部、11,21:並列共振回路、12:送電電極、13:センシング電極、14:移動電極、22:受電電極、23:フェザータッチ電極、24:外部電極、31,84a,84b:ラックギヤ、32,32a,32b:タイミングベルト、34:被駆動体、41:ピニオンギヤ、42,42a,42b:プーリー、43:導電性カバー、45:駆動体、50:フランジ、51:軸受、52:回転軸、53:滑り軸受、61:プロファイル、71:コネクタ、72:シールドメタル箔、73:ボディ、74:ガイド輪、75:ANT、76:送電線、81:デファレンシャルギヤ、82:ベベルギヤ、83:金属固定台、91:光源、92:光透過口、301,402:弾性体、302:歯布、303:メッシュ電極、304:導電線、305:抗張体、306:コンタクト部、310,314:ラックギヤ頭頂部、311:ギヤブロック、312,313:ラックギヤ谷部、401:歯車板、403:ボビン、404:固定ネジ、501:外導体、502:内導体
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17