特許第6853596号(P6853596)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6853596高純度ビスフルオロスルホニルイミド塩の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6853596
(24)【登録日】2021年3月16日
(45)【発行日】2021年3月31日
(54)【発明の名称】高純度ビスフルオロスルホニルイミド塩の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C01B 21/086 20060101AFI20210322BHJP
   H01M 10/0567 20100101ALI20210322BHJP
   H01G 11/64 20130101ALI20210322BHJP
【FI】
   C01B21/086
   H01M10/0567
   H01G11/64
【請求項の数】10
【全頁数】23
(21)【出願番号】特願2020-105239(P2020-105239)
(22)【出願日】2020年6月18日
【審査請求日】2020年6月18日
(31)【優先権主張番号】201911139935.7
(32)【優先日】2019年11月20日
(33)【優先権主張国】CN
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】518187318
【氏名又は名称】上海如鯤新材料有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】110002262
【氏名又は名称】TRY国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】楊 斌
(72)【発明者】
【氏名】沈 楓鋒
【審査官】 中島 芳人
(56)【参考文献】
【文献】 特開2016−204054(JP,A)
【文献】 韓国公開特許第10−2017−0083368(KR,A)
【文献】 特開2014−162680(JP,A)
【文献】 特表2019−501858(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C
C01B
H01M
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
製造原料として、少なくともビスフルオロスルホニルイミド、Mn−を非水溶媒中で反応させ、後処理するステップを含み、
前記Mは、Li、Na、K、Rb、Csからなる群から選択されるいずれか1種であり、前記Xは、B、O、N、P、Siのうちの少なくとも1種の元素の陰イオンを含み、n≧2であり、
前記Mn−は、硫酸塩、リン酸塩、ケイ酸塩のうちの少なくとも1種を含むポリ無機塩、マロン酸塩、イソフタル酸塩、クエン酸塩のうちの少なくとも1種を含むポリカルボン酸塩、または、ヒドロキノン二塩、ビフェノール二塩、ビスフェノールA二塩のうちの少なくとも1種を含むポリオルガノフェノール塩であり、
前記非水溶媒は、ロピオニトリル、ブチロニトリル、イソブチロニトリル、マロノニトリル、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、アセトン、ブタノン、ニトロメタン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ギ酸メチル、酸ブチル、酢酸イソプロピル、炭酸ジメチル、炭酸ジエチル、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、エチルメチルカーボネート、ジクロロメタン、ジクロロエタン、トリクロロエタン、テトラクロロエタン、クロロベンゼン、フルオロベンゼン、トリフルオロトルエンのうちの1種又は複数種の組み合わせを含み、
前記非水溶媒の水分は1000ppm未満であり、
前記後処理過程は、濾過、減圧濃縮、貧溶媒による再結晶化を含む
ことを特徴とする、高純度ビスフルオロスルホニルイミド塩の製造方法。
【請求項2】
前記非水溶媒の水分は100ppm未満である
ことを特徴とする、請求項1に記載のビスフルオロスルホニルイミド塩の製造方法。
【請求項3】
前記Mn−は、硫酸リチウム、リン酸ナトリウム、マロン酸二カリウム、硫酸ルビジウム、イソフタル酸二セシウム、メタケイ酸リチウム、四ホウ酸リチウム、ケイ酸リチウム、オルトケイ酸リチウム、二リン酸四リチウム、三リン酸五リチウム、クエン酸リチウム、マロン酸二ナトリウム、八ホウ酸二ナトリウム、ケイ酸二カリウム、硫酸二カリウム、ビスフェノールA二リチウム、ビスフェノールAF二リチウムからなる群から選択される少なくとも1種であることを特徴とする、請求項1に記載のビスフルオロスルホニルイミド塩の製造方法。
【請求項4】
前記Mn−の水分は、500ppm未満であることを特徴とする、請求項1からのいずれか1項に記載のビスフルオロスルホニルイミド塩の製造方法。
【請求項5】
前記ビスフルオロスルホニルイミドとMn−とのモル比は1:(0.5〜4)であることを特徴とする、請求項1に記載のビスフルオロスルホニルイミド塩の製造方法。
【請求項6】
前記反応温度は−20〜120℃、反応時間は0.1〜48時間であることを特徴とする、請求項1に記載のビスフルオロスルホニルイミド塩の製造方法。
【請求項7】
前記非水溶媒の水分は500ppm未満であることを特徴とする、請求項1、からのいずれか1項に記載のビスフルオロスルホニルイミド塩の製造方法。
【請求項8】
前記ビスフルオロスルホニルイミドの純度は99.5%を超えることを特徴とする、請求項1に記載のビスフルオロスルホニルイミド塩の製造方法。
【請求項9】
前記ビスフルオロスルホニルイミドは、結晶化により純度を向上させ、
前記結晶化は、有機溶媒中で行われ、前記有機溶媒は、アルカン、アルケン、芳香族炭化水素、塩素化炭化水素のうちの少なくとも1種を含むことを特徴とする、請求項に記載のビスフルオロスルホニルイミド塩の製造方法。
【請求項10】
前記ビスフルオロスルホニルイミドの結晶化温度は、−50℃−100℃であることを特徴とする、請求項に記載のビスフルオロスルホニルイミド塩の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電解液添加剤の技術分野に関し、具体的には、簡単で、経済的で、工業化が容易な高純度ビスフルオロスルホニルイミド塩の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電解液中で六フッ化リン酸リチウムは、負極に対して安定であり、導電率が高く、放電容量が大きく、内部抵抗が小さく、充放電速度が速いため、現在リチウム電池に一般的に使用されている電解質リチウム塩である。また、六フッ化リン酸リチウムは、優れたイオン伝導度、良好な酸化安定性及び低い環境汚染などの利点を有し、現在最適なリチウムイオン電池電解質であり、市販されているリチウムイオン電池では主塩として使用されており、添加量は電解液総量の約15%、濃度は約1mol/Lである。長年の技術発展の後、現在製品化されている六フッ化リン酸リチウムは、純度が99.99%以上に達した高純度製品となっている。国家標準の定義では、その不純物として塩化物は1ppm未満、硫酸塩は5ppm未満、陽イオンのナトリウムイオンは2ppm未満であり、他の陽イオンはいずれも1ppm未満である。高純度の六フッ化リン酸リチウムは、安全な電池動作を確保するための重要な要素である。
【0003】
しかし、六フッ化リン酸リチウムは、使用過程において多くの欠点がある。例えば、水と接触すると、フッ化水素が発生して電池の変形が起こり、電池の使用寿命が短縮し、高温に耐性がなく、80℃〜100℃で分解反応が生じ、五フッ化リン及びフッ化リチウムなどが生成する。
【0004】
米国特許US5916475には、LiPFよりも熱安定性及び化学安定性により優れ、導電性がより高く、腐食速度がより低いフッ素含有リチウム塩であるビスフルオロスルホニルイミドリチウム(LiFSI)が開示されており、LiPFの代わりに使用可能なビスフルオロリチウム塩であると考えられており、リチウム電池とスーパーキャパシタにおいて良好な応用の見通しがある。最新の研究(ACS Applied Materials & Interfaces,Volume 11,Issue 29,Pages 25833−25843,2019)により分かるように、LiFSIを主塩としてスルホランの溶液を調製して電解質として使用することにより、可燃性が低く、リチウム金属陽極との適合性が高いだけではなく、1.0mA/cmの電流密度下で400回サイクルしても98%のクーロン効率が保持され得る。ChemElectroChem,Volume 5,Issue 24,Pages 4008−4014,2018には、高電圧(4Vを超える)の固体電池においても、LiFSIは固体電解液であるポリカーボネートで良好な安定性及び電気化学性能を示すことが報告されている。LiFSIは急速充放電ではLiPFよりも遥かに優れている(Electrochemistry Communications,Volume 103,Pages 109−113,2019)。Joule Issue 8,Pages 1548−1558,2018及びACS Energy Letters,Volume 4,Issue 2,Pages 483−488,2019には、1.2mol/LのLiFSIとリン酸トリエチル(TEP)で調製された不燃性電解液は、安全性が高いだけではなく、高クーロン効率を有することが報告されている(CCE,最大600cycleで97%)。LiFSIは、優れた総合的な性能を有し、リチウム空気電池(Chinese Chemical Letters,Volume 30,Issue 6,Pages 1289−1292,2019)、リチウム硫黄電池(AngewandteChemie,International Edition,Volume 58,Issue 3,Pages 791−795,2019)、高濃度(12M DME)固体電池(Nano Energy,Volume 50,Pages 431−440,2018)のいずれにおいても驚くべき効果を示した。LiFSIは、リチウム電池業界の発展に対して多くの可能性を提供し、広い開発スペースがある。しかし、LiFSIが電解液の主要な電解質として作用する場合、その純度に対する要求も大幅に高くなり、それ自体に含まれる塩化物イオン、硫酸イオン、水分、酸性物質、陽イオンなどの不純物は、電池の正極、負極、セパレーター、電解液溶媒及び添加剤などにマイナスの効果をもたらし、安全性及びサイクル寿命に影響を与え、電池へのLiFSIの広い使用の主要なボトルネックとなる恐れがある。
【0005】
LiFSIの製造方法には、多くの方法があり、間接法及び直接法に大別され得る。間接法は、金属又は有機塩基のビスフルオロスルホニルイミド塩を調製してから、リチウム塩との置換反応により製造する方法であり、特許US2013331609、US2012041233、EP2415757、US2011034716、CN104085864Aにはこの方法が開示されている。しかし、この方法では、金属又は塩基が用いられ、製品中の金属及び塩基の残留により品質が低下し、置換反応は水中で行われ、抽出及び洗浄を繰り返す必要があり、このような過程はLiFSIの分解を引き起こす。もう1つの方法は、ビスフルオロスルホニルイミドとリチウム塩との反応によりLiFSIを製造する直接法である。US8377406には、水溶液中でビスフルオロスルホニルイミド(HFSI)を炭酸リチウムと直接反応させてLiFSIを製造する方法が開示されている。CN104925765A及びCN108002355のいずれにもHFSIと水酸化リチウム、炭酸リチウム、重炭酸リチウムとを有機溶媒中で反応させることによりLiFSIを製造する方法が報告されているが、得られた製品の純度は僅か99.86−99.88%であり、不純物であるフッ化物イオンは21−27ppm、塩化物イオンは4.7−7.8ppm、硫酸イオンは15−20ppmである。CN106365132Aには、HFSIとフッ化リチウムを用いて加圧条件下でLiFSIを製造する方法が報告されている。CN106241757Aには、HFSIと塩化リチウムを反応させることでLiFSIを製造する方法が報告されており、得られた製品中の塩化物イオンは5−8ppm、硫酸イオンは15−23ppmである。このような無機リチウム塩を用いる直接法は、反応過程で水又は低分子の強酸(例えば、塩化水素、フッ化水素など)が生成するため、原料及び製品の分解又は塩化物イオン若しくはフッ化物イオンの残留を引き起こし、複雑な精製処理により製品の含有量を高める必要がある。フランスのArkemaは、LiFSIの結晶化精製方法を報告している(FR 3059994,Jun 15,2018)。この方法では、高真空薄膜蒸留の極端な方法が使用されたが、精製された製品の純度は僅か99.80%以上であり、不純物の含有量は依然として高く、典型的な実施例において水分が40ppm、塩化物イオンが22ppm、硫酸イオンが7ppmである。これは、水中でLiFSIを製造する方式によるものだからである。CN201810242600では、有機塩基及び結晶を添加する方法によっても、塩化物イオンを20ppm前後にしか制御できない。CN106976849では、後処理過程において酸無水物の添加と結晶化により製品中の水分を除去しているが、最終的な水分は37−89ppmにしか達せず、純度は99.91−99.96%である。
【0006】
現在、LiFSIの生産技術の限界により、低規格のLiFSIを製造し、電解液における添加剤として使用することにより、六フッ化リン酸リチウムの主塩としてのいくつかの欠点を補うことしかできない。LiFSIをリチウム電池電解液の主塩として優れた電気化学性能を発揮させるために、高純度の製品は必須である。そのため、含有量が99.99%以上、水分が20ppmよりも低く、各陰イオンの合計及び陽イオンの合計がいずれも10ppm未満であるLiFSIの製造は、早急に解決すべき技術的な問題である。
【0007】
本発明は、高規格のLiFSIの製造方法を提供する。(1)高純度のHFSIを原料とし、(2)非水系反応系を用い、かつ反応には水又は強酸などの破壊性を有する副生成物を生ずることなく、(3)副生成物が製品に対して破壊作用がなく、(4)貧溶媒による結晶化により副生成物の残留を正確に制御するなどにより、最終的な効果を奏する。
【発明の概要】
【0008】
上記問題を解決するために、本発明は、原料が少なくともビスフルオロスルホニルイミド、Mn−を含む高純度ビスフルオロスルホニルイミド塩の製造方法を提供する。
ここで、前記Mは、Li、Na、K、Rb、Csからなる群から選択されるいずれか1種であり、前記Xは、B、O、N、P、Siのうちの少なくとも1種の元素の陰イオンを含み、n≧2である。
【0009】
好ましい実施形態において、前記Mn−は、硫酸塩、亜硫酸塩、チオ硫酸塩、リン酸塩、リン酸一水素塩、亜リン酸塩、ピロリン酸塩、ケイ酸塩、ヘキサフルオロケイ酸塩、ホウ酸塩、モリブデン酸塩、クロム酸塩のうちの少なくとも1種を含むポリ無機塩である。
【0010】
好ましい実施形態において、前記Mn−は、シュウ酸塩、マロン酸塩、コハク酸塩、グルタル酸塩、アジピン酸塩、セバシン酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、酒石酸二塩、グルタミン酸二塩、シクロヘキサントリカルボン酸塩、フタル酸塩、イソフタル酸塩、テレフタル酸塩、ベンゼントリカルボン酸塩、クエン酸塩、エチレンジアミン四酢酸四塩、エチレンジアミン四酢酸三塩、エチレンジアミン四酢酸二塩のうちの少なくとも1種を含むポリカルボン酸塩である。
【0011】
好ましい実施形態において、前記Mn−は、カテコール二塩、レゾルシノール二塩、ヒドロキノン二塩、ビフェノール二塩、ビスフェノールA二塩、サリチル酸二塩、p−ヒドロキシベンゼンスルホン酸二塩、o−ヒドロキシベンゼンスルホン酸二塩、5−スルホ−1,3−ベンゼンジカルボン酸二塩のうちの少なくとも1種を含むポリオルガノフェノール塩である
【0012】
好ましい実施形態において、前記Mn−は、硫酸リチウム、リン酸ナトリウム、マロン酸二カリウム、硫酸ルビジウム、イソフタル酸二セシウム、クロム酸二リチウム二水和物、メタケイ酸リチウム、3−ヒドロキシ−2−オキソプロピルリン酸二リチウム、四ホウ酸リチウム、ケイ酸リチウム、グリセロリン酸二リチウム、オルトケイ酸リチウム、亜硫酸リチウム、モリブデン酸リチウム、二リン酸四リチウム、クロム酸リチウム、三リン酸五リチウム、フタル酸二リチウム、チオ硫酸二リチウム、ヘキサフルオロケイ酸二リチウム、アジピン酸二リチウム、セバシン酸二リチウム、メチレンビス(ホスホン酸)ジエチル二リチウム、2−ブテン二酸二リチウム、シュウ酸リチウム、二リン酸二リチウム、マレイン酸リチウム、アゼライン酸二リチウム、二クロム酸リチウム、酒石酸リチウム、クエン酸リチウム、マロン酸二ナトリウム、2−ヒドロキシグルタル酸二ナトリウム、フェノールフタレイン一リン酸二ナトリウム、八ホウ酸二ナトリウム、ケイ酸二カリウム、硫酸二カリウム、ペルオキシ一硫酸二カリウム、クロム酸ルビジウム、ビスフェノールA二リチウム、ビスフェノールAF二リチウムからなる群から選択される少なくとも1種である。
【0013】
好ましい実施形態において、前記Mn−の水分は500ppm未満、好ましくは100ppm未満である。
【0014】
好ましい実施形態において、ビスフルオロスルホニルイミド、Mn−を非水溶媒中で混合して反応させ、後処理することにより得られるステップを含む
【0015】
好ましい実施形態において、前記ビスフルオロスルホニルイミドとMn−とのモル比は1:(0.5〜4)である。
【0016】
好ましい実施形態において、前記反応温度は−20〜120℃、反応時間は0.1〜48時間である。
【0017】
好ましい実施形態において、前記後処理過程は、濾過、減圧濃縮、貧溶媒による再結晶化を含む。
好ましい実施形態において、前記非水溶媒は、アセトニトリル、プロピオニトリル、ブチロニトリル、イソブチロニトリル、マロノニトリル、シクロヘキサノニトリル、アクリロニトリル、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、1,3−ジオキソラン、1,4−ジオキサン、アセトン、ブタノン、メチルイソブチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、ニトロメタン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ギ酸メチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソプロピル、γ−ブチロラクトン、トリフルオロ酢酸エチル、トリフルオロ酢酸メチル、炭酸ジメチル、炭酸ジエチル、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、エチルメチルカーボネート、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、エチルプロピルエーテル、ジイソプロピルエーテル、tert−ブチルメチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールメチルエチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、N−メチル−2−ピロリドン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、イソオクタン、デカン、ドデカン、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、プロピルベンゼン、トリメチルベンゼン、テトラヒドロナフタレン、ジクロロメタン、ジクロロエタン、クロロホルム、トリクロロエタン、テトラクロロエタン、テトラクロロエチレン、トリフルオロトリクロロエタン、クロロブタン、クロロシクロヘキサン、クロロベンゼン、トリクロロベンゼン、フルオロベンゼン、トリフルオロトルエンのうちの1種又は複数種の組み合わせを含む。
【0018】
好ましい実施形態において、前記非水溶媒の水分は1000ppm未満、好ましくは100ppm未満である。
【0019】
好ましい実施形態において、前記ビスフルオロスルホニルイミドの純度は99.5%を超え、好ましくは99.9%を超える。
【0020】
好ましい実施形態において、前記ビスフルオロスルホニルイミドは、結晶化により純度を向上させ、前記結晶化は、有機溶媒中で行われ、前記有機溶媒は、アルカン、アルケン、芳香族炭化水素、塩素化炭化水素のうちの少なくとも1種を含む。
【0021】
好ましい実施形態において、前記ビスフルオロスルホニルイミドの結晶化温度は−50℃−100℃、好ましくは−20℃−17℃である。
【0022】
発明の効果
本発明は、非水系で高純度ビスフルオロスルホニルイミド塩を製造する方法を提供する。本発明の方法は、反応過程が温和で、副反応がなく、後処理が簡単で、収率が高く、純度が高い。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下の詳細な説明の目的のために、反対のことが明示的に述べられていない限り、本発明は様々な代替の変形形態及びステップの順序を採用できることを理解されたい。さらに、本明細書及び特許請求の範囲で使用される成分の量を示すすべての数字は、いずれかの操作の例又は他に示されている場合を除き、すべての場合において「約」という用語によって修飾されると理解されるべきである。したがって、反対のことが述べられていない限り、以下の説明及び添付の特許請求の範囲に記載される数値パラメータは、本発明の所望の性能に応じて変化する近似値である。少なくとも、同等性原則の適用を特許請求の範囲に限定する試みではなく、各数値パラメータは、少なくとも報告された有効数字の数に従い、通常の丸め手法を適用することにより解釈されるべきである。
【0024】
本発明の広い範囲を説明する数値範囲及びパラメータは近似値であるが、特定の実施例に挙げられる数値は可能な限り正確に報告される。ただし、数値には本質的に、それぞれのテスト測定で見つかった標準偏差から必然的に生じる特定の誤差が含まれる。
【0025】
本明細書で数値範囲が開示される場合、上記の範囲は連続的であると見なされ、範囲の最小値と最大値、及びこの最小値と最大値の間の各値を含む。さらに、範囲が整数である場合、範囲の最小値と最大値の間の各整数が含まれる。さらに、特徴又は特性を説明するために複数の範囲が提供される場合、これらの範囲は組み合わせることができる。言い換えれば、特に明記しない限り、本明細書に開示されるすべての範囲は、そこに包含される任意及びあらゆるサブ範囲を含むと理解される。例えば、「1から10」の指定範囲は、最小値1と最大値10の間のすべてのサブ範囲を含むと見なされるべきである。範囲1から10の例示的なサブ範囲には、1から6.1、3.5から7.8、5.5から10などが含まれるが、これらに限定されない。
【0026】
本発明の第1の態様は、製造原料が少なくともビスフルオロスルホニルイミド、Mn−を含み、前記MがLi、Na、K、Rb、Csからなる群から選択されるいずれか1種であり、前記XがB、O、N、P、Siのうちの少なくとも1種の元素の陰イオンを含み、n≧2である高純度ビスフルオロスルホニルイミド塩の製造方法を提供する。
【0027】
前記ビスフルオロスルホニルイミド塩の一般式はMFSIであり、前記ビスフルオロスルホニルイミド塩の構造式は式Iで表される。
【0028】
一実施形態において、前記MがLiである場合、MFSIはビスフルオロスルホニルイミドリチウムである。
【0029】
一実施形態において、前記MがNaである場合、MFSIはビスフルオロスルホニルイミドナトリウムである。
【0030】
一実施形態において、前記MがKである場合、MFSIはビスフルオロスルホニルイミドカリウムである。
【0031】
一実施形態において、前記MがRbである場合、MFSIはビスフルオロスルホニルイミドルビジウムである。
【0032】
一実施形態において、前記MがCsである場合、MFSIはビスフルオロスルホニルイミドセシウムである。
【0033】
好ましい実施形態として、前記Mn−の水分は500ppm未満、好ましくは100ppm未満である。
【0034】
ビスフルオロスルホニルイミド
前記ビスフルオロスルホニルイミドの構造式は式IIで表される。
好ましい実施形態として、前記ビスクロロスルホニルイミドの製造方法は、以下のステップを含む。2000mlの四口フラスコに825gのスルファミン酸及び1200gのクロロスルホン酸を加え、108℃に昇温する。塩化チオニル2730gを12時間かけて滴下し、8時間保温し続けた後、排ガスを水と液体アルカリで吸収する。反応終了後、水ポンプで過剰な塩化チオニルを減圧除去した後、オイルポンプで減圧蒸留し、110℃/8.6mbarの留分を回収することにより得られる。
【0035】
他の好ましい実施形態として、前記ビスクロロスルホニルイミドの製造方法は、以下のステップを含む。1000mLのPTFE反応器に1600gのビスクロロスルホニルイミドを加え、撹拌し始める。16gのメタノールを加え、100℃に昇温し、500gの無水フッ化水素ガスを一定速度で通過させ始め、反応温度を100±5℃に維持し、16時間反応させ、酸価が340mgKOH/g以下に下がったときに反応を停止させる。窒素ガスで4時間パージすることでフッ化水素を除去し、粗製品を精留し、60−62℃/25mbarの留分を回収することにより得られる。
【0036】
本出願人は、前記ビスフルオロスルホニルイミドの純度が、製造される純度ビスフルオロスルホニルイミド塩の収率、純度に大きな影響を与えることを発見した。
【0037】
好ましい実施形態として、前記ビスフルオロスルホニルイミドは、結晶化により純度を向上させ、前記結晶化は、無溶媒又は有機溶媒中で行われる。
【0038】
前記結晶化は、撹拌状態下の結晶化でも静的結晶化であってもよく、バッチ結晶化でも連続結晶化であってもよい。
【0039】
好ましい実施形態として、前記結晶化は有機溶媒中で行われ、前記有機溶媒は、アルカン、アルケン、芳香族炭化水素、塩素化炭化水素のうちの少なくとも1種を含む。
【0040】
アルカンの例として、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタンが含まれるが、これらに限定されない。
アルケンの例として、ブタジエン、シクロペンタジエン、シクロヘキセンが含まれるが、これらに限定されない。
芳香族炭化水素の例として、ベンゼン、キシレン、トルエンが含まれるが、これらに限定されない。
塩素化炭化水素の例として、クロロベンゼン、フルオロベンゼン、ジクロロベンゼン、トリフルオロトルエン、ジクロロメタン、ジクロロエタン、ジクロロプロパン、トリクロロエタン、テトラクロロエタン、テトラクロロエチレンが含まれるが、これらに限定されない。
【0041】
好ましい実施形態として、前記ビスフルオロスルホニルイミドの高純度品の製造方法は、以下のステップを含む。
反応器に450−550gのビスフルオロスルホニルイミドの精留物を加え、撹拌し始める。150−250gのジクロロメタンを加え、40±5℃に昇温し、撹拌して溶解させ、1−3度/時間の降温速度でゆっくりと降温し、最終的に結晶化温度を−10±0.5℃に維持して5−7時間保温し、低温グローブボックス中で濾過し、濾過ケーキを溶融した後、溶媒を減圧除去し、ビスフルオロスルホニルイミドを得る。
【0042】
他の実施形態として、前記ビスフルオロスルホニルイミドの高純度品の製造方法は、以下のステップを含む。
ジャケット付き反応釜に450−550gの液体ビスフルオロスルホニルイミドの精留物を加え、撹拌し始める。1−3度/時間の降温速度でゆっくりと降温し、最終的に結晶化温度を0±0.2℃に維持して5−7時間保温した後、母液を排出し、残留固体を18−25℃に加熱して溶融させ、ビスフルオロスルホニルイミドの高純度品を得る。
【0043】
好ましい実施形態として、前記ビスフルオロスルホニルイミドの純度は99.5%を超え、好ましくは99.9%を超える。
【0044】
n−
前記Mは、Li、Na、K、Rb、Csからなる群から選択されるいずれか1種であり、前記Xは、B、O、N、P、Siのうちの少なくとも1種の元素の陰イオンを含み、n≧2である。
【0045】
一実施形態として、前記Mn−は、ポリ無機塩、ポリカルボン酸塩、ポリオルガノフェノール塩からなる群から選択される1種である。
【0046】
好ましい実施形態として、前記Mn−は、硫酸塩、亜硫酸塩、チオ硫酸塩、リン酸塩、リン酸一水素塩、亜リン酸塩、ピロリン酸塩、ケイ酸塩、ヘキサフルオロケイ酸塩、ホウ酸塩、モリブデン酸塩、クロム酸塩のうちの少なくとも1種を含むポリ無機塩である。
【0047】
好ましい実施形態として、前記Mn−は、シュウ酸塩、マロン酸塩、コハク酸塩、グルタル酸塩、アジピン酸塩、セバシン酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、酒石酸二塩、グルタミン酸二塩、シクロヘキサントリカルボン酸塩、フタル酸塩、イソフタル酸塩、テレフタル酸塩、ベンゼントリカルボン酸塩、クエン酸塩、エチレンジアミン四酢酸四塩、エチレンジアミン四酢酸三塩、エチレンジアミン四酢酸二塩のうちの少なくとも1種を含むポリカルボン酸塩である。
【0048】
好ましい実施形態として、前記Mn−は、カテコール二塩、レゾルシノール二塩、ヒドロキノン二塩、ビフェノール二塩、ビスフェノールA二塩、サリチル酸二塩、p−ヒドロキシベンゼンスルホン酸二塩、o−ヒドロキシベンゼンスルホン酸二塩、5−スルホ−1,3−ベンゼンジカルボン酸二塩のうちの少なくとも1種を含むポリオルガノフェノール塩である。
【0049】
好ましい実施形態として、前記Mn−は、硫酸リチウム、リン酸ナトリウム、マロン酸二カリウム、硫酸ルビジウム、イソフタル酸二セシウム、クロム酸二リチウム二水和物、メタケイ酸リチウム、3−ヒドロキシ−2−オキソプロピルリン酸二リチウム、四ホウ酸リチウム、ケイ酸リチウム、グリセロリン酸二リチウム、オルトケイ酸リチウム、亜硫酸リチウム、モリブデン酸リチウム、二リン酸四リチウム、クロム酸リチウム、三リン酸五リチウム、フタル酸二リチウム、チオ硫酸二リチウム、ヘキサフルオロケイ酸二リチウム、アジピン酸二リチウム、セバシン酸二リチウム、メチレンビス(ホスホン酸)ジエチル二リチウム、2−ブテン二酸二リチウム、シュウ酸リチウム、二リン酸二リチウム、マレイン酸リチウム、アゼライン酸二リチウム、二クロム酸リチウム、酒石酸リチウム、クエン酸リチウム、マロン酸二ナトリウム、2−ヒドロキシグルタル酸二ナトリウム、フェノールフタレイン一リン酸二ナトリウム、八ホウ酸二ナトリウム、ケイ酸二カリウム、硫酸二カリウム、ペルオキシ一硫酸二カリウム、クロム酸ルビジウム、ビスフェノールA二リチウム、ビスフェノールAF二リチウムからなる群から選択される少なくとも1種である。
【0050】
前記クロム酸二リチウム塩のCAS番号は14307−35−8である。前記メタケイ酸リチウムのCAS番号は10102−24−6である。前記3−ヒドロキシ−2−オキソプロピルリン酸二リチウムのCAS番号は102783−56−2である。前記ケイ酸リチウムのCAS番号は12627−14−4である。前記グリセロリン酸二リチウムのCAS番号は1300−23−8である。前記オルトケイ酸リチウムのCAS番号は13453−84−4である。前記二リン酸四リチウムのCAS番号は13843−41−9である。前記三リン酸五リチウムのCAS番号は15804−33−8である。前記フタル酸二リチウムのCAS番号は15968−00−0である。前記チオ硫酸二リチウムのCAS番号は16992−28−2である。前記ケイ酸二リチウムのCAS番号は17347−95−4である。前記アジピン酸二リチウムのCAS番号は18621−94−8である。前記セバシン酸二リチウムのCAS番号は19370−86−6である。前記メチレンビス(ホスホン酸)ジエチル二リチウムのCAS番号は194931−67−4である。前記ブテン二酸ジリチウムのCAS番号は24820−18−6である。前記二リン酸二リチウムのCAS番号は33943−47−4である。前記マレイン酸リチウムのCAS番号は34895−26−6である。前記アゼライン酸二リチウムのCAS番号は38900−29−7である。前記二クロム酸リチウムのCAS番号は52478−50−9である。前記酒石酸リチウムのCAS番号は868−17−7である。前記ビスフェノールA二リチウムのCAS番号は67306−98−3である。前記ビスフェノールAF二リチウムのCAS番号は128968−16−1である。
【0051】
一実施形態において、前記ビスフルオロスルホニルイミド塩の製造方法は、以下のステップを含む。
ビスフルオロスルホニルイミド、Mn−を非水溶媒中で混合して反応させ、後処理することにより得られる。
【0052】
一実施形態において、前記ビスフルオロスルホニルイミド塩の製造は乾燥した不活性ガスの雰囲気において行われる。
【0053】
一実施形態において、前記乾燥した不活性ガスは、窒素ガス、アルゴンガス又はヘリウムガスのうちの1種又は複数種の組み合わせを含む。
【0054】
好ましくは、前記乾燥した不活性ガスは窒素ガスである。
一実施形態において、前記反応温度は−20〜120℃であり、材料の安定性及び反応の安全性、制御可能性、ビスフルオロスルホニルイミド塩の純度などの因子を総合的に考慮すると、0〜40℃であることが好ましい。
【0055】
一実施形態において、前記反応時間は0.1〜48時間であり、材料の安定性及び反応の安全性、制御可能性、ビスフルオロスルホニルイミド塩の純度などの因子を総合的に考慮すると、1〜20時間であることが好ましく、1〜15時間であることがより好ましい。
【0056】
好ましい実施形態において、前記非水溶媒は、アセトニトリル、プロピオニトリル、ブチロニトリル、イソブチロニトリル、マロノニトリル、シクロヘキサノニトリル、アクリロニトリル、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、1,3−ジオキソラン、1,4−ジオキサン、アセトン、ブタノン、メチルイソブチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、ニトロメタン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ギ酸メチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソプロピル、γ−ブチロラクトン、トリフルオロ酢酸エチル、トリフルオロ酢酸メチル、炭酸ジメチル、炭酸ジエチル、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、エチルメチルカーボネート、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、エチルプロピルエーテル、ジイソプロピルエーテル、tert−ブチルメチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールメチルエチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、N−メチル−2−ピロリドン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、イソオクタン、デカン、ドデカン、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、プロピルベンゼン、トリメチルベンゼン、テトラヒドロナフタレン、ジクロロメタン、ジクロロエタン、クロロホルム、トリクロロエタン、テトラクロロエタン、テトラクロロエチレン、トリフルオロトリクロロエタン、クロロブタン、クロロシクロヘキサン、クロロベンゼン、トリクロロベンゼン、フルオロベンゼン、トリフルオロトルエンのうちの1種又は複数種の組み合わせを含む。
【0057】
一実施形態において、前記非水溶媒の水分は、500ppm未満、好ましくは100ppm未満である。一実施形態において、前記非水溶媒の使用量は、理論上のビスフルオロスルホニルイミド塩生成物の重量の0.2〜10倍であり、生成物の収率及び純度を総合的に考慮すると、理論上のビスフルオロスルホニルイミド塩生成物の重量の1〜3倍であることが好ましい。
【0058】
一実施形態において、前記ビスフルオロスルホニルイミドとMn−とのモル比は1:(0.5〜4)である。
【0059】
好ましい実施形態において、前記ビスフルオロスルホニルイミドとMn−とのモル比は1:(0.5〜2)である。
【0060】
前記ビスフルオロスルホニルイミド、Mn−、非水溶媒の混合方式は特に制限されず、いずれも本発明の範囲に含まれるが、一般的に言えば、工業生産の操作に便利な方式であればよい。
【0061】
一実施形態において、前記後処理過程は、濾過、減圧濃縮、貧溶媒による再結晶化を含む。
【0062】
好ましい実施形態において、前記後処理過程は、濾過、減圧濃縮、貧溶媒による再結晶化、再濾過、乾燥を含む。
【0063】
前記ビスフルオロスルホニルイミド塩溶液の後処理過程における濾過の目的は、ビスフルオロスルホニルイミド塩溶液中の副生成物を除去することにある。
【0064】
前記再濾過の目的は、濾液を除去してビスフルオロスルホニルイミド塩を得ることにある。
前記減圧濃縮、即ち減圧蒸留により非水溶媒を除去する。
【0065】
一実施形態において、前記減圧濃縮の真空度は100Pa〜10kPa、温度範囲は0〜60℃である。
一実施形態において、前記貧溶媒は、ベンゼン、トルエン、o−キシレン、m−キシレン、p−キシレン、クロロベンゼン、o−ジクロロベンゼン、m−ジクロロベンゼン、p−ジクロロベンゼン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ジクロロメタン、トリクロロメタン、四塩化炭素、1,2−ジクロロエタン,1,1−ジクロロエタン、1,1,2−トリクロロエタン、テトラクロロエタン、テトラクロロエチレン、1,2,3−トリクロロプロパン、n−プロピルエーテル、n−ブチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテルのうちの1種又は複数種の組み合わせを含む。
【0066】
反応時に加える非水溶媒が2種類の溶媒の組み合わせであり、かつ貧溶媒が既に含まれている場合、結晶化時に貧溶媒を添加しなくてもよい。
【0067】
一実施形態において、前記貧溶媒の使用量は、理論上のビスフルオロスルホニルイミド塩生成物の重量の1〜50倍であり、ビスフルオロスルホニルイミド塩の収率及び純度を総合的に考慮すると、理論上のビスフルオロスルホニルイミド塩生成物の重量の2〜10倍であることが好ましい。
【0068】
一実施形態において、前記乾燥の真空度は100Pa〜10kPa、温度範囲は0〜60℃である。具体的な実施態様には制限がないが、いずれも本発明の範囲内に含まれるべきであり、一般的に言えば、工業生産の操作に便利な方式であればよい。
【0069】
本発明の原理は以下の通りである。
HFSI+Mn−→MFSI+M(n−1)HX(n−1)−
本出願人は研究により、特定の比率でビスフルオロスルホニルイミド(HFSI)とMn−(n≧2)を非水溶媒中で反応させた後、濾過、減圧濃縮、貧溶媒による結晶化などの一連の後処理を行うことにより、品質が高く、収率が高いビスフルオロスルホニルイミド塩が得られることを発見した。これは、HFSIが強酸であり、Mn−が弱塩基であり、両者が接触して酸−塩基中和反応が生じるためであり、完全な変換が非常に容易であり、副反応は見出されなかった。また、適切な反応溶媒において、原料HFSI及び製品は反応溶媒に溶解する一方、原料Mn−及び副生成物M(n−1)HX(n−1)−は反応溶媒に溶解しないので、反応後に濾過すれば製品溶液及び副生成物固体を得ることができる。さらに製品溶液を濃縮させ、貧溶媒を加えて析出させることにより、高品質、高収率のビスフルオロスルホニルイミド塩が得られる。副生成物M(n−1)HX(n−1)−と塩基性塩MOH又はMCOは水相で中和し、濾過して乾燥させることでさらに主原料Mn−に再変換することができ、これによって廃液・廃ガス・固形廃棄物の発生がなく、リサイクルの効果が得られる。本出願人は、Mn−(n=1)である場合、得られるビスフルオロスルホニルイミド塩の純度、収率などはある程度低下することも発見した。これは、主に水又は反応系に溶解した酸が生成するためである。例えば、MXが水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムである場合、1当量の水が生成し、製品MFSIの加水分解の副反応が生じ、不純物イオンが生成する。例えば、MXがLiCl、LiF、NaBr、KI、LiBF、LiClOなどである場合、反応して強酸性物質の他の分子が生成され、反応の不完全な変換により、また強酸HCl、HF、HBr、HI、HBF、HClOなどが非水溶媒において一定の溶解度を有するため、完全に除去されにくいことで、不純物イオンが残留し、また、強酸が、例えば、アセトニトリル、エーテル系溶媒、アミド系溶媒、エステル系溶媒など特定の極性溶媒と反応してアルコール酸系不純物を生成するため、製品の品質がさらに低下する。
【0070】
本出願人は、非水溶媒の選択、貧溶媒の使用量が生成物の収率及び純度に大きな影響を与えることを発見した。極性が比較的大きい非水溶媒を用いる場合、原料は非水溶媒中で溶解性が良好で、正反応の進行に有利であるが、極性が大き過ぎると、副生成物M(n−1)HX(n−1)−の溶媒中の溶解度が高くなる場合がある。極性が小さい他の溶媒を追加することにより、反応による変換が完全で、副生成物の溶解量が小さいという最適な効果が得られる。減圧脱溶媒の過程において、極性が大きい非水溶媒の残留量を正確に制御することにより、少量の残留不純物を溶解させ、結晶化過程において、貧溶媒の添加量を正確に制御することにより、高収率が得られる。従って、両者の組み合わせにより、収率が高く、純度が高いという最適な効果が得られる。
【0071】
本出願人は、Mn−をやや過剰にすることにより、製品の収率及び純度を向上できることを発見した。これは、やや過剰なMn−が反応の完全変換を促進できるとともに、残留するMn−が濾過により容易に除去でき、製品の品質に影響を与えないためであると推測されている。ビスフルオロスルホニルイミドとMn−とのモル比が1:(0.5〜4)である場合、ビスフルオロスルホニルイミド塩の収率及び純度は良好であるが、適切に制御できないと、高品質な目的生成物が得られないため、本発明に至ることが非常に困難である。本出願人は、創造的な研究を通じて本発明の技術手段を取得しており、本発明では、他の元素、イオン又は分離されにくい物質が導入する必要がない。
【0072】
さらに、特に明記しない場合、用いられる溶媒及び試薬は、
から購入した。
【0073】
以下、実施例により本発明を具体的に説明する。
【0074】
製造例1:ビスクロロスルホニルイミドの製造方法
2000mlの四口フラスコに825gのスルファミン酸及び1200gのクロロスルホン酸を加え、108℃に昇温した。2730gの塩化チオニルを12時間かけて滴下し、8時間保温し続け、排ガスを水と液体アルカリで吸収した。反応終了後、水ポンプにより過剰な塩化チオニルを減圧除去した後、オイルポンプにより減圧蒸留し、110℃/8.6mbarの留分を回収し、中間留分1386g(含有量98.5%、収率77%)を得た。
【0075】
製造例2:ビスフルオロスルホニルイミドの製造方法
1000mLのPTFE反応器に1600gのビスクロロスルホニルイミドを加え、撹拌を開始した。16gのメタノールを加え、100℃に昇温し、500gの無水フッ化水素ガスを一定速度で通過させ始め、反応温度を100±5℃に維持し、16時間反応させ、酸価が340mgKOH/g以下に下がったときに反応を停止させた。窒素ガスで4時間パージすることでフッ化水素を除去し、粗製品を精留し、60−62℃/25mbarの留分を回収し、精留物の中間留分であるビスフルオロスルホニルイミドの精留物1150g(収率85.0%、純度99.0%、硫酸イオン0.45%、フッ化物イオン0.20%、塩化物イオン0.004%、スルファミン酸0.35%)を得た。
【0076】
精製例1:前記ビスフルオロスルホニルイミドの高純度品の製造方法
1000mLのPTFE反応器に500gのビスフルオロスルホニルイミドの精留物を加え、撹拌を開始した。200gのジクロロメタンを加え、40℃に昇温し、撹拌して溶解した後、氷塩浴で2度/時間の降温速度でゆっくりと降温し、最終的に結晶化温度を−10±0.2℃に維持して6時間保温し、低温グローブボックス中で濾過し、濾過ケーキを溶融した後、溶媒を減圧除去し、ビスフルオロスルホニルイミド380g(収率76%、純度99.97%、硫酸イオン76ppm、フッ化物イオン55ppm、塩化物イオン8ppm、スルファミン酸88ppm)を得た。
H−NMR(CDCl3):7.81,s,1H。19F−NMR(CDCl3):58.9。融点:17℃
【0077】
精製例2:前記ビスフルオロスルホニルイミドの高純度品の製造方法
1000mLのジャケット付き反応釜に500gの液体ビスフルオロスルホニルイミドの精留物を加え、撹拌を停止させた。氷塩浴で2度/時間の降温速度でゆっくりと降温し、最終的に結晶化温度を0±0.2℃に維持して6時間保温し、母液を排出し、残留固体を20℃に加熱して溶融させ、ビスフルオロスルホニルイミドの高純度品460g(収率92%、純度99.95%、硫酸イオン123ppm、フッ化物イオン77ppm、塩化物イオン10ppm、スルファミン酸220ppm)を得た。
【0078】
前記ビスフルオロスルホニルイミドの測定方法:イオンクロマトグラフによりビスフルオロスルホニルイミドの純度を測定する。収率(%)=実際の製品質量/理論上の製品質量×100%。塩化物イオンの測定方法:イオンクロマトグラフにより測定する。水分測定方法:メトラー・トレド社製のカールフィッシャー水分計により測定する。酸価測定方法:国家標準GB/T 4954−2002に規定の石油製品及び潤滑剤の中和値測定法に従って測定する。
【0079】
実施例1
本発明の実施例1は、ビスフルオロスルホニルイミドリチウム塩を提供する。その製造原料は、精製例2で得られたビスフルオロスルホニルイミドの高純度品、硫酸リチウム、非水溶媒アセトニトリルである。
【0080】
前記ビスフルオロスルホニルイミドリチウム塩の製造方法は、以下のステップを含む。
室温下、窒素ガス雰囲気中で、非水溶媒アセトニトリル300g及び無水硫酸リチウム220g(2.0mol)を1000mlの反応フラスコに加え、撹拌しながら0〜10℃に降温した。自製のビスフルオロスルホニルイミドの高純度品181g(1.0mol)を2時間かけて滴下した。0〜10℃の条件下で6時間撹拌した後、サンプリングして反応液の酸価を測定したところ、反応終点に達していた。
【0081】
グローブボックス中で反応液を濾過し、副生成物である硫酸リチウムと硫酸水素リチウムの混合物を得た。30〜35℃で濾液を粘稠で半透明の固液混合物となるまで減圧濃縮し、貧溶媒のテトラクロロエタン800gを加え、冷水浴で0℃に降温することにより結晶化させて大量の白色固体を析出させた後、グローブボックスに移して再濾過し、40〜50℃で6時間減圧乾燥させ、白色粉末状のビスフルオロスルホニルイミドリチウム182.1gを得た。ICPにより分析した結果、Naは0.3ppm、Kは0.2ppm、Caは0.1ppmであり、その他(Fe/Cu/Zn/Pb)はいずれも1.0ppm未満であった。
【0082】
前記非水溶媒であるアセトニトリルの水分は10ppmであった。
前記貧溶媒であるテトラクロロエタンの水分は12ppmであった。
前記原料である硫酸リチウムの水分は17ppmであった。
【0083】
実施例2
本発明の実施例2は、ビスフルオロスルホニルイミドリチウム塩を提供する。その製造原料は、精製例2で得られたビスフルオロスルホニルイミドの高純度品、マロン酸二リチウム、非水溶媒である炭酸ジメチル及びジクロロエタンである。
【0084】
前記ビスフルオロスルホニルイミドリチウム塩の製造方法は、以下のステップを含む。
室温下、窒素ガス雰囲気中で、200gの非水溶媒である炭酸ジメチル、800gのジクロロエタン(水分35ppm)、及び無水マロン酸二リチウム232g(2.0mol)を2000mlの反応フラスコに加え、撹拌しながら10〜20℃に降温した。自製のビスフルオロスルホニルイミドの高純度品181g(1.0mol)を4時間かけて滴下した。次いで、10〜20℃の条件下で8時間撹拌した後、サンプリングして反応液の酸価を測定したところ、反応終点に達していた。
【0085】
反応液をグローブボックス中で濾過し、副生成物であるマロン酸二リチウムとマロン酸水素リチウムの混合物を得た。35〜45℃で濾液を粘稠で半透明の固液混合物となるまで減圧濃縮し、貧溶媒ジクロロエタン800gを加え、冷水浴で0℃に降温することにより結晶化させて大量の白色固体を析出させた後、グローブボックスに移して再濾過し、40〜50℃で12時間減圧乾燥させ、180.3gの白色粉末状のビスフルオロスルホニルイミドリチウムを得た。ICPにより分析した結果、Naは0.4ppm、Kは0.2ppm、Caは0.2ppmであり、その他(Fe/Cu/Zn/Pb)はいずれも1.0ppm未満であった。
【0086】
前記非水溶媒である炭酸ジメチルの水分は16ppmであった。
前記貧溶媒であるジクロロエタンの水分は22ppmであった。
前記原料であるマロン酸二リチウムの水分は34ppmであった。
【0087】
実施例3
本発明の実施例3は、ビスフルオロスルホニルイミドナトリウム塩を提供する。その製造原料は、精製例2で得られたビスフルオロスルホニルイミドの高純度品、リン酸ナトリウム、非水溶媒ニトロメタンである。
【0088】
前記ビスフルオロスルホニルイミドナトリウム塩の製造方法は、以下のステップを含む。
【0089】
室温下、窒素ガス雰囲気中で、500gの非水溶媒ニトロメタン及び無水リン酸ナトリウム115.8g(1.0mol)を1000mlの反応フラスコに加え、撹拌しながら温度を20〜40℃に制御した。自製のビスフルオロスルホニルイミド181g(1.0mol)を2時間かけて滴下した。次いで、20〜40℃の条件下で6時間撹拌した後、サンプリングして反応液の酸価を測定したところ、反応終点に達していた。
【0090】
反応液をグローブボックス中で濾過し、副生成物であるリン酸水素ナトリウムを得た。50〜55℃で濾液を粘稠で半透明の固液混合物となるまで減圧濃縮し、貧溶媒であるジクロロエタン800gを加え、冷水浴で0℃に降温することにより結晶化させて大量の白色固体を析出させた後、グローブボックスに移して再濾過し、50〜60℃で8時間減圧乾燥させ、197.0gの白色粉末状のビスフルオロスルホニルイミドナトリウムを得た。ICPにより分析した結果、Kは0.8ppm、Caは0.6ppmであり、その他(Fe/Cu/Zn/Pb)はいずれも1.0ppm未満であった。
【0091】
前記非水溶媒であるニトロメタンの水分は76ppmであった。
前記貧溶媒であるジクロロエタンの水分は22ppmであった。
前記原料である無水リン酸ナトリウムの水分は80ppmであった。
【0092】
実施例4
本発明の実施例4は、ビスフルオロスルホニルイミドカリウム塩を提供する。その製造原料は精製例2で得られたビスフルオロスルホニルイミドの高純度品、ハイドロキノン二カリウム、非水溶媒酢酸エチルである。
【0093】
前記ビスフルオロスルホニルイミドカリウム塩の製造方法は、以下のステップを含む。
【0094】
室温下、窒素ガス雰囲気中で、500gの非水溶媒である酢酸エチル及びハイドロキノン二カリウム186g(0.75mol)を1000mlの反応フラスコに加え、撹拌しながら10〜20℃に降温した。自製のビスフルオロスルホニルイミド181g(1.0mol)を2時間かけて滴下した。次いで、20〜30℃の条件下で6時間撹拌した後、サンプリングして反応液の酸価を測定したところ、反応終点に達していた。
【0095】
反応液をグローブボックス中で濾過し、副生成物を得た。40〜45℃で濾液を粘稠な固液混合物となるまで減圧濃縮し、貧溶媒ジクロロメタン800gを加え、冷水浴で0℃に降温することにより結晶化させて大量の白色固体を析出させた後、グローブボックスに移して再濾過し、50〜60℃で8時間減圧乾燥させ、208.1gの白色粉末状のビスフルオロスルホニルイミドカリウムを得た。ICPにより分析した結果、Naは0.9ppm、Caは0.4ppmであり、その他(Fe/Cu/Zn/Pb)はいずれも1.0ppm未満であった。
【0096】
前記非水溶媒である酢酸エチルの水分は88ppmであった。
前記貧溶媒であるジクロロメタンの水分は36ppmであった。
前記原料であるハイドロキノン二カリウムの水分は92ppmであった。
【0097】
実施例5
本発明の実施例5は、ビスフルオロスルホニルイミドルビジウム塩を提供する。その製造原料は精製例2で得られたビスフルオロスルホニルイミドの高純度品、硫酸ルビジウム、非水溶媒N,N−ジメチルホルムアミドである。
【0098】
前記ビスフルオロスルホニルイミドルビジウム塩の製造方法は、以下のステップを含む。
【0099】
室温下、窒素ガス雰囲気中で、100gの非水溶媒N,N−ジメチルホルムアミド及び硫酸ルビジウム26.7g(0.10mol)を250mlの反応フラスコに加え、撹拌しながら10〜20℃に降温した。自製のビスフルオロスルホニルイミド18.1g(0.10mol)を1時間滴下した。次いで、30〜40℃の条件下で3時間撹拌し、サンプリングして反応液の酸価を測定したところ、反応終点に達していた。
【0100】
反応液をグローブボックス中で濾過し、副生成物を得た。60〜70℃で濾液を粘稠な固液混合物となるまで減圧濃縮し、さらに貧溶媒であるジブチルエーテル100gを加え、冷水浴で0℃に降温することで結晶化させて白色固体を析出させた後、グローブボックスに移して再濾過し、60〜70℃で4時間減圧乾燥させ、25.5gの白色粉末状のビスフルオロスルホニルイミドルビジウムを得た。ICPにより分析した結果、Naは1.3ppm、Kは0.8ppm、Caは0.7ppmであり、その他(Fe/Cu/Zn/Pb)はいずれも1.0ppm未満であった。
【0101】
前記非水溶媒であるN,N−ジメチルホルムアミドの水分は63ppmであった。
前記貧溶媒であるジブチルエーテルの水分は85ppmであった。
前記原料である硫酸ルビジウムの水分は70ppmであった。
【0102】
実施例6
本発明の実施例6は、ビスフルオロスルホニルイミドセシウム塩を提供する。その製造原料は、精製例2で得られたビスフルオロスルホニルイミドの高純度品、イソフタル酸二セシウム、非水溶媒炭酸ジメチルである。
【0103】
前記ビスフルオロスルホニルイミドセシウム塩の製造方法は、以下のステップを含む。
【0104】
室温下、窒素ガス雰囲気中で、200gの非水溶媒炭酸ジメチル及びイソフタル酸二セシウム129.0g(0.30mol)を500mlの反応フラスコに加え、撹拌しながら温度を30〜40℃に制御した。自製のビスフルオロスルホニルイミド36.2g(0.20mol)を1時間かけて滴下した。次いで、30〜40℃の条件下で3時間撹拌した後、サンプリングして反応液の酸価を測定したところ、反応終点に達していた。
【0105】
反応液をグローブボックス中で濾過し、副生成物を得た。40〜50℃で濾液を粘稠な固液混合物となるまで減圧濃縮し、さらに貧溶媒であるトルエン200gを加え、冷水浴で0℃に降温することで結晶化させて白色固体を析出させた後、グローブボックスに移して再濾過し、60〜70℃で4時間減圧乾燥させ、59.8gの白色粉末状のビスフルオロスルホニルイミドルビジウムを得た。ICPにより分析した結果、Naは2.3ppm、Kは1.2ppm、Caは0.9ppmであり、その他(Fe/Cu/Zn/Pb)はいずれも1.0ppm未満であった。
【0106】
前記非水溶媒である炭酸ジメチルの水分は16ppmであった。
前記貧溶媒であるトルエンの水分は85ppmであった。
前記原料であるイソフタル酸二セシウムの水分は230ppmであった。
【0107】
実施例7
本発明の実施例7は、ビスフルオロスルホニルイミドリチウム塩を提供する。その製造原料は、精製例2で得られたビスフルオロスルホニルイミドの高純度品、四ホウ酸リチウム、非水溶媒ブタノンである。
【0108】
前記ビスフルオロスルホニルイミドリチウム塩の製造方法は、以下のステップを含む。
【0109】
室温下、窒素ガス雰囲気中で、300gの非水溶媒であるブタノン及び四ホウ酸リチウム340g(2.0mol)を1000mlの反応フラスコに加え、撹拌しながら10〜15℃に降温した。自製のビスフルオロスルホニルイミド181g(1.0mol)を2時間かけて滴下した。次いで、10〜15℃の条件下で8時間撹拌した後、サンプリングして反応液の酸価を測定したところ、反応終点に達していた。
【0110】
反応液をグローブボックス中で濾過し、30〜35℃で濾液を粘稠で半透明の固液混合物となるまで減圧濃縮し、さらに貧溶媒であるエチレングリコールジブチルエーテル800gを加え、冷水浴で0℃に降温することにより結晶化させて大量の白色固体を析出させた後、グローブボックスに移して再濾過し、40〜50℃で6時間減圧乾燥させ、180.8g白色粉末状のビスフルオロスルホニルイミドリチウムを得た。ICPにより分析した結果、Naは0.4ppm、Kは0.4ppm、Caは0.2ppmであり、その他(Fe/Cu/Zn/Pb)はいずれも1.0ppm未満であった。
【0111】
前記非水溶媒であるブタノンの水分は87ppmであった。
前記貧溶媒であるエチレングリコールジブチルエーテルの水分は90ppmであった。
前記原料である四ホウ酸リチウムの水分は74ppmであった。
【0112】
実施例8
本発明の実施例8はビスフルオロスルホニルイミドリチウム塩を提供する。その製造原料は、精製例2で得られたビスフルオロスルホニルイミドの高純度品、ケイ酸リチウム、非水溶媒テトラヒドロフランである。
【0113】
前記ビスフルオロスルホニルイミドリチウム塩の製造方法は、以下のステップを含む。
【0114】
室温下、窒素ガス雰囲気中で、500gの非水溶媒であるテトラヒドロフラン及びケイ酸リチウム180g(2.0mol)を1000mlの反応フラスコに加え、撹拌しながら−10〜0℃に降温した。自製のビスフルオロスルホニルイミド181g(1.0mol)を2時間かけて滴下した。次いで−10〜0℃の条件下で8時間撹拌した後、サンプリングして反応液の酸価を測定したところ、反応終点に達していた。
【0115】
反応液をグローブボックス中で濾過し、濾液に貧溶媒であるキシレン800gを加え、混合した後、30〜35℃粘稠で半透明の固液混合物となるまで減圧濃縮し、冷水浴で0℃に降温することにより結晶化させて大量の白色固体を析出させた後、グローブボックスに移して再濾過し、40〜50℃で6時間減圧乾燥させ、172.0gの白色粉末状のビスフルオロスルホニルイミドリチウムを得た。ICPにより分析した結果、Naは0.3ppm、Kは0.1ppm、Caは0.2ppmであり、その他(Fe/Cu/Zn/Pb)はいずれも1.0ppm未満であった。
【0116】
前記非水溶媒であるテトラヒドロフランの水分は56ppmであった。
前記貧溶媒であるキシレンの水分は21ppmであった。
前記原料であるケイ酸リチウムの水分は55ppmであった。
【0117】
実施例9
本発明の実施例9は、ビスフルオロスルホニルイミドリチウム塩を提供する。その製造原料は、精製例2で得られたビスフルオロスルホニルイミドの高純度品、三リン酸五リチウム、非水溶媒アセトニトリルとクロロベンゼンの混合物である。
【0118】
前記ビスフルオロスルホニルイミドリチウム塩の製造方法は、以下のステップを含む。
【0119】
室温下、窒素ガス雰囲気中で、300gの非水溶媒であるアセトニトリルと600gのクロロベンゼン(水分32ppm)の混合物及び三リン酸五リチウム160g(0.5mol)を2000mlの反応フラスコに加え、撹拌しながら15〜20℃に降温した。自製のビスフルオロスルホニルイミド181g(1.0mol)を2時間かけて滴下した。次いで、15〜20℃の条件下で6時間撹拌した後、サンプリングして反応液の酸価を測定したところ、反応終点に達していた。
【0120】
反応液をグローブボックス中で濾過し、30〜35℃で濾液を粘稠で半透明の固液混合物となるまで減圧濃縮し、さらに貧溶媒であるクロロベンゼン300gを追加し、冷水浴で0℃に降温することにより結晶化させて大量の白色固体を析出させた後、グローブボックスに移して再濾過し、40〜50℃で6時間減圧乾燥させ、182.4gの白色粉末状のビスフルオロスルホニルイミドリチウムを得た。ICPにより分析した結果、Naは0.4ppm、Kは0.3ppm、Caは0.1ppmであり、その他(Fe/Cu/Zn/Pb)はいずれも1.0ppm未満であった。
【0121】
前記非水溶媒であるアセトニトリルの水分は10ppmであった。
前記貧溶媒であるクロロベンゼンの水分は35ppmであった。
前記原料である三リン酸五リチウムの水分は82ppmであった。
【0122】
実施例10
本発明の実施例10は、ビスフルオロスルホニルイミドリチウム塩を提供する。その製造原料は、精製例2で得られたビスフルオロスルホニルイミドの高純度品、クエン酸リチウム、非水溶媒酢酸エチルである。
【0123】
前記ビスフルオロスルホニルイミドリチウム塩の製造方法は、以下のステップを含む。
【0124】
室温下、窒素ガス雰囲気中で、500gの非水溶媒である酢酸エチル及びクエン酸リチウム1.0molを1000mlの反応フラスコに加え、撹拌しながら15〜20℃に降温した。自製のビスフルオロスルホニルイミド181g(1.0mol)を2時間かけて滴下した。次いで、15〜20℃の条件下で6時間撹拌した後、サンプリングして反応液の酸価を測定したところ、反応終点に達していた。
【0125】
反応液をグローブボックス中で濾過し、30〜35℃で濾液を粘稠で半透明の固液混合物となるまで減圧濃縮し、さらに貧溶媒ジクロロエタン800gを加え、冷水浴で0℃に降温することにより結晶化させて大量の白色固体を析出させた後、グローブボックスに移して再濾過し、40〜50℃で6時間減圧乾燥させ、177.3gの白色粉末状のビスフルオロスルホニルイミドリチウムを得た。ICPにより分析した結果、Naは1.3ppm、Kは0.6ppm、Caは0.3ppmであり、その他(Fe/Cu/Zn/Pb)はいずれも1.0ppm未満であった。
【0126】
前記非水溶媒である酢酸エチルの水分は88ppmであった。
前記貧溶媒であるジクロロエタンの水分は22ppmであった。
前記原料であるクエン酸リチウムの水分は65ppmであった。
【0127】
実施例11
本発明の実施例11は、ビスフルオロスルホニルイミドリチウム塩を提供する。その製造原料は精製例2で得られたビスフルオロスルホニルイミドの高純度品、ビスフェノールA二リチウム、非水溶媒エチルメチルカーボネートとテトラクロロエタンの混合溶媒である。
【0128】
前記ビスフルオロスルホニルイミドリチウム塩の製造方法は、以下のステップを含む。
【0129】
室温下、窒素ガス雰囲気中で、500gの非水溶媒であるエチルメチルカーボネートとテトラクロロエタンの混合溶媒(エチルメチルカーボネートとテトラクロロエタンとの重量比は1:3である)、ビスフェノールA二リチウム240g(1.0mol)を1000mlの反応フラスコに加え、撹拌しながら10〜20℃に降温した。自製のビスフルオロスルホニルイミド181g(1.0mol)を4時間かけて滴下した。次いで、20〜30℃の条件下で6時間撹拌した後、サンプリングして反応液の酸価を測定したところ、反応終点に達していた。
【0130】
反応液をグローブボックス中で濾過し、副生成物を得た。30〜35℃で濾液を粘稠で半透明の固液混合物となるまで減圧濃縮し、さらに貧溶媒テトラクロロエタン800gを加え、冷水浴で0℃に降温することにより結晶化させて大量の白色固体を析出させた後、グローブボックスに移して再濾過し、40〜50℃で6時間減圧乾燥させ、182.0gの白色粉末状のビスフルオロスルホニルイミドリチウムを得た。ICPにより分析した結果、Naは0.5ppm、Kは0.2ppm、Caは0.1ppmであり、その他(Fe/Cu/Zn/Pb)はいずれも1.0ppm未満であった。
【0131】
前記非水溶媒であるエチルメチルカーボネートの水分は8ppmであった。
前記貧溶媒であるテトラクロロエタンの水分は12ppmであった。
前記原料ビであるスフェノールA二リチウムの水分は47ppmであった。
【0132】
比較例1
本発明の比較例1は、ビスフルオロスルホニルイミドリチウム塩を提供する。その製造原料は、製造例2で得られたビスフルオロスルホニルイミドの精留物、硫酸リチウム、非水溶媒アセトニトリルである。
【0133】
前記ビスフルオロスルホニルイミドリチウム塩の製造方法は、以下のステップを含む。
【0134】
室温下、窒素ガス雰囲気中で、300gの非水溶媒アセトニトリル及び無水硫酸リチウム220g(2.0mol)を1000mlの反応フラスコに加え、撹拌しながら0〜10℃に降温した。ビスフルオロスルホニルイミドの精留物183g(1.0mol)を2時間かけて滴下した。次いで、0〜10℃の条件下で6時間撹拌した後、サンプリングして反応液の酸価を測定したところ、反応終点に達していた。
【0135】
反応液をグローブボックスで濾過し、副生成物である硫酸リチウムと硫酸水素リチウムの混合物を得た。30〜35℃で濾液を粘稠で半透明の固液混合物となるまで減圧濃縮し、さらに貧溶媒テトラクロロエタン800gを加え、冷水浴で0℃に降温することにより結晶化させて大量の白色固体を析出させた後、グローブボックスに移して再濾過し、40〜50℃で6時間減圧乾燥させ、179.2gの白色粉末状のビスフルオロスルホニルイミドリチウムを得た。ICPにより分析した結果、Naは1.3ppm、Kは0.4ppm、Caは0.1ppmであり、その他(Fe/Cu/Zn/Pb)はいずれも1.0ppm未満であった。
【0136】
前記非水溶媒であるアセトニトリルの水分は10ppmであった。
前記貧溶媒であるテトラクロロエタンの水分は12ppmであった。
前記原料である硫酸リチウムの水分は17ppmであった。
【0137】
比較例2
本発明の比較例2は、ビスフルオロスルホニルイミドリチウム塩を提供する。その製造原料は、精製例2で得られたビスフルオロスルホニルイミドの高純度品、硫酸リチウム、非水溶媒である高水分アセトニトリルである。
【0138】
前記ビスフルオロスルホニルイミドリチウム塩の製造方法は、以下のステップを含む。
【0139】
室温下、窒素ガス雰囲気中で、300gの非水溶媒であるアセトニトリル及び無水硫酸リチウム220g(2.0mol)を1000mlの反応フラスコに加え、撹拌しながら0〜10℃に降温した。ビスフルオロスルホニルイミドの高純度品181g(1.0mol)を2時間かけて滴下した。次いで、0〜10℃の条件下で6時間撹拌した後、サンプリングして反応液の酸価を測定したところ、反応終点に達していた。
【0140】
反応液をグローブボックス中で濾過し、副生成物である硫酸リチウムと硫酸水素リチウムの混合物を得た。30〜35℃で濾液を粘稠で半透明の固液混合物となるまで減圧濃縮し、さらに貧溶媒テトラクロロエタン800gを加え、冷水浴で0℃に降温することにより結晶化させて大量の白色固体を析出させた後、グローブボックスに移して再濾過し、40〜50℃で6時間減圧乾燥させ、175.2gの白色粉末状のビスフルオロスルホニルイミドリチウムを得た。ICPにより分析した結果、Naは0.2ppm、Kは0.1ppm、Caは0.1ppmであり、その他(Fe/Cu/Zn/Pb)はいずれも1.0ppm未満であった。
【0141】
前記非水溶媒であるアセトニトリルの水分は450ppmであった。
前記貧溶媒であるテトラクロロエタンの水分は220ppmであった。
前記原料である硫酸リチウムの水分は17ppmであった。
【0142】
比較例3
本発明の比較例3は、ビスフルオロスルホニルイミドリチウム塩を提供する。その製造原料は、ビスフルオロスルホニルイミド、リン酸二水素リチウム、非水溶媒アセトニトリルである。
【0143】
前記ビスフルオロスルホニルイミドリチウム塩の製造方法は、以下のステップを含む。
室温下、窒素ガス雰囲気中で、500gの非水溶媒であるアセトニトリル及びリン酸二水素リチウム4.0molを1000mlの反応フラスコに加え、撹拌しながら15〜20℃に降温した。精製例2で得られたビスフルオロスルホニルイミドの高純度品181g(1.0mol)を2時間かけて滴下した。次いで、15〜20℃の条件下で6時間撹拌した後、サンプリングして反応液の酸価を測定したところ、反応終点に達していた。
【0144】
反応液をグローブボックス中で濾過し、貧溶媒ジクロロエタン2000gを加え、30〜35℃で濾液を粘稠で半透明の固液混合物となるまで減圧濃縮し、さらに冷水浴で0℃に降温することにより結晶化させて大量の白色固体を析出させた後、グローブボックスに移して再濾過し、40〜50℃で6時間減圧乾燥させ、166.4gの白色粉末状のビスフルオロスルホニルイミドリチウムを得た。
【0145】
前記溶媒であるアセトニトリルの水分は10ppmであった。
前記溶媒であるジクロロエタンの水分は22ppmであった。
前記原料であるリン酸二水素リチウムの水分は49ppmであった。
【0146】
比較例4
本発明の比較例4は、ビスフルオロスルホニルイミドカリウム塩を提供する。その製造原料は、ビスフルオロスルホニルイミド、リン酸カリウム、非水溶媒酢酸エチルである。
【0147】
前記ビスフルオロスルホニルイミドカリウム塩の製造方法は、以下のステップを含む。
【0148】
室温下、窒素ガス雰囲気中で、500gの非水溶媒である酢酸エチル及びリン酸カリウム212g(1.0mol)を1000mlの反応フラスコに加え、撹拌しながら10〜20℃に降温した。精製例2で得られたビスフルオロスルホニルイミドの高純度品181g(1.0mol)を2時間かけて滴下した。次いで、20〜30℃の条件下で6時間撹拌した後、サンプリングして反応液の酸価を測定したところ、反応終点に達していた。
【0149】
反応液をグローブボックス中で濾過し、副生成物を得た。濾液に貧溶媒ジクロロメタン500gを加え、冷水浴で0℃に降温することにより結晶化させて大量の白色固体を析出させた後、グローブボックスに移して再濾過し、50〜60℃で8時間減圧乾燥させ、186.3gの白色粉末状のビスフルオロスルホニルイミドカリウムを得た。
【0150】
前記非水溶媒である酢酸エチルの水分は88ppmであった。
前記貧溶媒であるジクロロメタンの水分は36ppmであった。
前記原料であるリン酸カリウムの水分は80ppmであった。
性能試験
【0151】
イオンクロマトグラフィーによりビスフルオロスルホニルイミド塩の純度を測定する。収率(%)=実際の製品質量/理論上の製品質量×100%。フッ化物イオン、塩化物イオン(単位:ppm)の測定方法:イオンクロマトグラフにより測定する。水分(単位:ppm)の測定方法:メトラー・トレド社製のカールフィッシャー水分計により測定する。酸価測定方法:国家標準GB/T 4954−2002に規定の石油製品及び潤滑剤の中和値測定法に従って測定する。NMR測定方法:核磁気共鳴分光計により測定する。測定結果を表1に示す。
【0152】
【0153】
表1における「−」は、その実施例に対して対応する性能試験を行っていないことを表す。
【0154】
上記実施例は例示的なものに過ぎず、本発明方法のいくつかの特徴を説明するものである。添付する特許請求の範囲は、可能な限り広い範囲を主張することを意図しており、本明細書に記載の実施例は、実行可能な実施例のすべての組み合わせに基づいて選択される実施形態の説明に過ぎない。従って、添付する特許請求の範囲は、本発明の特徴を説明するための例示的な選択に限定されない。特許請求の範囲で用いられる数値範囲には、その範囲内のサブ範囲も含まれ、これらの範囲内での変化も添付する特許請求の範囲に含まれると解釈されるべきである。
【要約】      (修正有)
【課題】反応過程が温和で副反応がなく、後処理が簡単で、収率が高い、非水系で高純度ビスフルオロスルホニルイミド塩を製造する方法を提供する。
【解決手段】製造原料は、少なくともビスフルオロスルホニルイミド、及びMn−を含み、ここで、前記MはLi、Na、K、Rb、Csからなる群から選択されるいずれか1種であり、前記XはB、O、N、P、Siのうちの少なくとも1種の元素の陰イオンを含み、n≧2である製造方法。
【選択図】なし