特許第6853598号(P6853598)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6853598
(24)【登録日】2021年3月16日
(45)【発行日】2021年3月31日
(54)【発明の名称】ドライブレコーダ
(51)【国際特許分類】
   G07C 5/00 20060101AFI20210322BHJP
   H04N 7/18 20060101ALI20210322BHJP
   H04N 5/926 20060101ALI20210322BHJP
   B62D 41/00 20060101ALN20210322BHJP
【FI】
   G07C5/00 Z
   H04N7/18 J
   H04N5/926 100
   !B62D41/00
【請求項の数】13
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2020-153116(P2020-153116)
(22)【出願日】2020年9月11日
【審査請求日】2020年9月11日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】391019681
【氏名又は名称】株式会社コムテック
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】田中 伸行
【審査官】 毛利 太郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−320359(JP,A)
【文献】 特開平07−304473(JP,A)
【文献】 特開2010−134745(JP,A)
【文献】 特開2019−161350(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G07C 5/00− 5/12
H04N 5/00− 7/56
B62D 41/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
取得データを、バッファに格納するように構成されるバッファリング部と、
前記バッファ内の前記取得データを順次無線送信するように構成される無線送信部と、
前記バッファ内での未送信データの滞留に関係する予め定められた事象が発生すると、前記バッファ内の前記未送信データに対応する前記取得データのうち、重要度が基準以上の取得データを圧縮するように構成される圧縮部と、
を備えるドライブレコーダ。
【請求項2】
取得データを、バッファに格納するように構成されるバッファリング部と、
前記バッファ内の前記取得データを順次無線送信するように構成される無線送信部と、
前記バッファ内の未送信データの量が所定水準以上となる事象が発生すると、前記バッファ内の前記未送信データに対応する前記取得データのうち、重要度が基準以上の取得データを圧縮するように構成される圧縮部と、
を備えるドライブレコーダ。
【請求項3】
前記無線送信部は、前記バッファ内の前記未送信データに対応する前記取得データを、重要度が高い取得データから優先的に無線送信する請求項1又は請求項2記載のドライブレコーダ。
【請求項4】
前記無線送信部は、前記バッファ内に前記未送信データとして重要度が同一である複数の取得データが存在するときには、前記重要度が同一である複数の取得データを、新しいデータから優先的に無線送信する請求項3記載のドライブレコーダ。
【請求項5】
前記バッファリング部は、新しい取得データを格納するための空き領域が前記バッファにおいて不足するとき、前記バッファ内の前記未送信データに対応する前記取得データを、重要度の低い取得データから順に上書き対象に選択し、選択した前記取得データに上書きするように、前記新しい取得データを前記バッファに格納する請求項1〜請求項4のいずれか一項記載のドライブレコーダ。
【請求項6】
前記取得データの重要度を、衝撃検知の有無に応じて判別する重要度判別部
を備える請求項1〜請求項5のいずれか一項記載のドライブレコーダ。
【請求項7】
前記圧縮部は、
前記バッファリング部が前記取得データを前記バッファに格納する前に、前記取得データを第一の圧縮率で圧縮することにより、前記バッファリング部に圧縮された前記取得データを前記バッファに格納させ、
前記事象が発生すると、前記バッファ内の前記未送信データに対応する前記取得データのうち、前記重要度が基準以上の取得データを、前記第一の圧縮率よりも高い第二の圧縮率で再圧縮する
ように構成される請求項1〜請求項6のいずれか一項記載のドライブレコーダ。
【請求項8】
前記取得データには、カメラの撮影動作により生成された画像データが含まれる請求項1〜請求項7のいずれか一項記載のドライブレコーダ。
【請求項9】
前記取得データには、位置、速度、及び加速度の少なくとも一つに関する計測データが含まれる請求項1〜請求項8のいずれか一項記載のドライブレコーダ。
【請求項10】
カメラの撮影動作により生成された画像データを圧縮するように構成される圧縮部と、
前記圧縮部により圧縮された画像データである圧縮画像データを、バッファに格納するように構成されるバッファリング部と、
前記バッファ内の前記圧縮画像データを順次無線送信するように構成される無線送信部と、
を備え、
前記圧縮部は、前記バッファにおける未送信データの滞留に関係する予め定められた事象が発生すると、前記バッファ内の前記未送信データに対応する前記圧縮画像データのうち、重要度が基準以上の圧縮画像データを、現在より高い圧縮率で再圧縮するドライブレコーダ。
【請求項11】
カメラの撮影動作により生成された画像データを圧縮するように構成される圧縮部と、
前記圧縮部により圧縮された画像データである圧縮画像データを、バッファに格納するように構成されるバッファリング部と、
前記バッファ内の前記圧縮画像データを順次無線送信するように構成される無線送信部と、
を備え、
前記圧縮部は、前記バッファ内の未送信データの量が所定水準以上であるとき、前記バッファ内の前記未送信データに対応する前記圧縮画像データのうち、重要度が基準以上の圧縮画像データを、現在より高い圧縮率で再圧縮するドライブレコーダ。
【請求項12】
前記無線送信部は、前記バッファ内の前記未送信データに対応する前記圧縮画像データを、重要度が高い圧縮画像データから優先的に無線送信する請求項10又は請求項11記載のドライブレコーダ。
【請求項13】
前記バッファリング部は、新しい圧縮画像データを格納するための空き領域が前記バッファにおいて不足するとき、前記バッファ内の前記未送信データに対応する前記圧縮画像データを、重要度の低い圧縮画像データから順に上書き対象に選択し、選択した前記圧縮画像データに上書きするようにして、前記新しい圧縮画像データを前記バッファに格納する請求項10〜請求項12のいずれか一項記載のドライブレコーダ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ドライブレコーダに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、カメラにより車両周囲を撮影して記録するドライブレコーダが知られている。ドライブレコーダは、例えば、カメラによる撮影画像を、その他の検出情報と共に、ドライブレコーダ内の記録媒体に記録する(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2018−173760号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ドライブレコーダに記録されたデータは、事故などで失われる可能性がある。そのため、本開示者は、ドライブレコーダ内のデータを、無線通信によってサーバ装置にアップロードすることを考えている。この場合、アップロード対象のデータは、バッファに格納された後、順にサーバ装置に送信される。
【0005】
しかしながら、ドライブレコーダにおける通信環境は、車両の移動に伴って変化しやすい。通信環境の悪い中では、バッファ内に未送信データが滞留しやすい。滞留が進行し、バッファ内に空き領域がなくなったときには、古いデータに上書きするように、新しいデータをバッファ内に格納することが考えられる。
【0006】
しかしながら、こうした上書きによっては、サーバ装置に送信されないまま消去されるデータが発生することになる。この頻度を抑えるために、バッファサイズを大きくすることも考えられるが、バッファサイズを大きくすることは、製造コストの増加につながる。
【0007】
そこで、本開示の一側面によれば、ドライブレコーダ内のデータを外部に無線送信するための技術として、通信環境の悪化によるデータ滞留の影響を抑えて、データを適切に無線送信可能な技術を提供できることが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の一側面によれば、バッファリング部と、無線送信部と、圧縮部と、を備えるドライブレコーダが提供される。バッファリング部は、取得データを、バッファに格納するように構成される。無線送信部は、バッファ内の取得データを順次無線送信するように構成される。
【0009】
圧縮部は、バッファ内での未送信データの滞留に関係する予め定められた事象が発生すると、バッファ内の未送信データに対応する取得データのうち、重要度が基準以上の取得データを圧縮するように構成される。
【0010】
圧縮部は、バッファ内の未送信データの量が所定水準以上となる事象が発生すると、バッファ内の未送信データに対応する取得データのうち、重要度が基準以上の取得データを圧縮するように構成されてもよい。
【0011】
バッファ内でデータ滞留が進行するときに、重要データを圧縮すれば、重要データを削除せずに、バッファ内の空き領域を広げることができる。従って、本開示の一側面にかかるドライブレコーダによれば、通信環境の悪化によるデータ滞留の影響を抑えて、データを適切に無線送信することができる。更に言えば、圧縮にかかる処理負荷を、全データを圧縮する場合と比較して抑えることができる。
【0012】
本開示の一側面によれば、取得データには、カメラの撮影動作により生成された画像データが含まれてもよい。取得データには、位置、速度、及び加速度の少なくとも一つに関する計測データが含まれてもよい。
【0013】
本開示の一側面によれば、無線送信部は、バッファ内の未送信データに対応する取得データを、重要度が高い取得データから優先的に無線送信するように構成されてもよい。こうした送信方式によれば、重要データが無線送信されないまま失われてしまうのを抑制することができる。
【0014】
本開示の一側面によれば、無線送信部は、バッファ内に未送信データとして重要度が同一である複数の取得データが存在するとき、重要度が同一である複数の取得データを、新しいデータから優先的に無線送信するように構成されてもよい。こうした送信方式によれば、新しい重要データが無線送信されないまま失われてしまうのを抑制することができる。
【0015】
本開示の一側面によれば、バッファリング部は、新しい取得データを格納するための空き領域がバッファにおいて不足するとき、バッファ内の未送信データに対応する取得データを、重要度の低い取得データから順に上書き対象に選択し、選択した取得データに上書きするようにして、新しい取得データをバッファに格納してもよい。このように上書きすれば、重要度の高いデータが無線送信されないまま失われてしまう可能性を抑制することができる。
【0016】
本開示の一側面によれば、ドライブレコーダは、取得データの重要度を、車両の状況に応じて判別してもよい。本開示の一側面によれば、ドライブレコーダは、取得データの重要度を、衝撃検知の有無に応じて判別する重要度判別部を備えていてもよい。こうしたドライブレコーダによれば、通信環境の悪化によるデータ滞留の影響を抑えて、状況に応じた重要データを適切に外部に無線送信することができる。
【0017】
本開示の一側面によれば、圧縮部は、バッファリング部が取得データをバッファに格納する前に、取得データを第一の圧縮率で圧縮することにより、バッファリング部に圧縮された取得データをバッファに格納させるように構成されてもよい。この圧縮によれば、バッファを有効活用することができる。
【0018】
本開示の一側面によれば、圧縮部は、上述の事象が発生すると、バッファ内の未送信データに対応する取得データのうち、重要度が基準以上の取得データを、第一の圧縮率よりも高い第二の圧縮率で再圧縮するように構成されてもよい。こうした再圧縮によれば、通信環境の悪化による空き領域の不足を効果的に抑制することができる。
【0019】
本開示の一側面によれば、カメラの撮影動作により生成された画像データを圧縮するように構成される圧縮部と、圧縮部により圧縮された画像データである圧縮画像データを、バッファに格納するように構成されるバッファリング部と、バッファ内の圧縮画像データを順次無線送信するように構成される無線送信部と、を備えるドライブレコーダが提供されてもよい。
【0020】
圧縮部は、バッファ内での未送信データの滞留に関係する予め定められた事象が発生すると、バッファ内の未送信データに対応する圧縮画像データのうち、重要度が基準以上の圧縮画像データを、現在より高い圧縮率で再圧縮するように構成されてもよい。
【0021】
圧縮部は、バッファ内の未送信データの量が所定水準以上であるとき、バッファ内の未送信データに対応する圧縮画像データのうち、重要度が基準以上の圧縮画像データを、現在より高い圧縮率で再圧縮するように構成されてもよい。
【0022】
本開示の一側面によれば、無線送信部は、バッファ内の未送信データに対応する圧縮画像データを、重要度が高い圧縮画像データから優先的に無線送信してもよい。
【0023】
本開示の一側面によれば、バッファリング部は、新しい圧縮画像データを格納するための空き領域がバッファにおいて不足するとき、バッファ内の未送信データに対応する圧縮画像データを、重要度の低い圧縮画像データから順に上書き対象に選択し、選択した圧縮画像データに上書きするようにして、新しい圧縮画像データをバッファに格納するように構成されてもよい。
【0024】
こうしたドライブレコーダによれば、通信環境の悪化によるデータ滞留の影響を抑えて、カメラによる撮影画像データ、特には重要な画像データを適切に無線送信することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】ドライブレコーダとサーバ装置との間の通信を説明する図である。
図2】ドライブレコーダの構成を表すブロック図である。
図3】プロセッサが実行するバッファ関連処理を表すフローチャートである。
図4図4A及び図4Bは、例として重要度判別用のテーブルを示す図である。
図5】再圧縮の例を説明する図である。
図6】プロセッサが実行する送信制御処理を表すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下に本開示の例示的実施形態を、図面を参照しながら説明する。
図1に示す本実施形態のドライブレコーダ1は、車両に搭載されて、車両周囲を撮影し、その撮影画像を表す映像データ、及び、関連するデータを、無線通信ネットワークNTを通じて外部のサーバ装置5に送信するように構成される。
【0027】
例えば、ドライブレコーダ1は、セルラーネットワークを通じてサーバ装置5と通信可能に構成される。サーバ装置5は、ドライブレコーダ1から受信したデータを保存するように構成される。
【0028】
ドライブレコーダ1は、図2に示すように、制御部10と、カメラ20と、マイクロフォン25と、圧縮器30と、ディスプレイ40と、スピーカ50と、加速度センサ60と、速度入力器65と、測位器70と、入力インタフェース80と、無線通信器90と、を備える。
【0029】
制御部10は、プロセッサ11と、RAM13と、ROM15と、NVRAM17とを備える。プロセッサ11は、コンピュータプログラムに従う処理を実行することにより、ドライブレコーダ1内の各部を制御する。
【0030】
ROM15は、コンピュータプログラムを記憶する。RAM13は、プロセッサ11による処理実行時に作業領域として使用される。NVRAM17は、設定データ等の各種データを記憶するために使用される、電気的にデータ書換可能な不揮発性メモリである。NVRAM17の例には、フラッシュメモリが含まれる。
【0031】
カメラ20は、車両前方を撮影し、その撮影画像を表す映像データを制御部10に入力するように構成される。マイクロフォン25は、カメラ20による撮影動作と並行して、車室内の音声を収集し、映像データに関連する音声データを制御部10に入力するように構成される。この記載からも理解できるように、カメラ20からの映像データそれ自体に音声は含まれない。本実施形態では、カメラ20からの映像データとマイクロフォン25からの音声データとの組合せにより、映像及び音声を含む動画データが構成される。
【0032】
圧縮器30は、データ圧縮を実現する専用回路である。圧縮器30は、プロセッサ11から入力されるデータを、指定された圧縮方式及び圧縮率で圧縮して、入力データに対応する圧縮データをプロセッサ11に提供するように構成される。
【0033】
ディスプレイ40は、制御部10に制御されて、設定画面や再生画面等のユーザ向けの各種画面を表示するように構成される。スピーカ50は、ユーザに向けて各種案内を音声出力するように、制御部10に制御される。
【0034】
加速度センサ60は、加速度を検出して、検出された加速度を示す加速度データを制御部10に入力するように構成される。加速度データは、衝撃検知のために利用される。速度入力器65は、車両の車速信号線に接続され、車速信号線からの入力に基づいて特定された車両速度を示す速度データを、制御部10に入力するように構成される。
【0035】
測位器70は、現在位置を測定するように構成される。測位器70は、例えばGPS衛星からの衛星信号に基づき、現在位置を測定するように構成される。測定された現在位置を示す位置データは、制御部10に入力される。
【0036】
入力インタフェース80は、ドライブレコーダ1を操作するユーザからの操作信号を制御部10に入力するように構成される。入力インタフェース80は、ドライブレコーダ1に設けられた各種操作スイッチを構成要素として備えることができる。
【0037】
無線通信器90は、無線通信により、外部のサーバ装置5と通信可能に構成される。無線通信器90は、制御部10に制御されて、送信対象のデータを、サーバ装置5に無線送信する。無線通信器90は、セルラー通信可能な通信器であり得る。
【0038】
続いて、プロセッサ11が繰返し実行する図3に示すバッファ関連処理の詳細を説明する。バッファ関連処理では、サーバ装置5へのアップロード対象のデータが圧縮されて、バッファに格納される。バッファは、RAM13内に用意されるメモリ領域であって、サーバ装置5への未送信データを記憶するためのメモリ領域である。バッファに格納されたデータは、順にサーバ装置5に送信される。
【0039】
本実施形態において、アップロード対象のデータは、カメラ20からの映像データ、マイクロフォン25からの音声データ、ドライブレコーダ1又は車両の位置データ、加速度データ、速度データ、及び、入力インタフェース80から入力されるユーザのドライブレコーダ1に対する操作履歴を示す操作履歴データである。
【0040】
バッファ関連処理を開始すると、プロセッサ11は、アップロード対象の新規データを取得し(S110)、取得データについての重要度判別を行う(S120)。例えば、プロセッサ11は、図4Aに示すテーブルに従って、取得データの重要度を判別する。テーブルは、例えばNVRAM17に記憶される。
【0041】
図4Aに示す例によれば、テーブルは、衝撃の有無毎に、映像データ、音声データ、加速度データ、位置データ、速度データ、及び、操作履歴データの重要度を、「高」「低」の二段階で定義する。
【0042】
プロセッサ11は、例えば現時点を終点とする過去所定時間内に閾値以上の加速度が加速度センサ60により検出されている場合、「衝撃あり」と判別することができ、それ以外の場合に、「衝撃なし」と判別することができる。この判別のために、プロセッサ11は、加速度センサ60から取得した過去所定時間分の加速度データを、衝撃検知用のデータとしてRAM13の上記バッファとは別の作業領域に記憶することができる。
【0043】
図4Aに示す例によれば、プロセッサ11は、「衝撃あり」と判別した場合、映像データの重要度を「高」と判別し、音声データの重要度を「低」と判別する。この他、加速度データ及び位置データの重要度を「高」と判別し、速度データ及び操作履歴データの重要度を「低」と判別する。
【0044】
図4Aに示す例によれば、プロセッサ11は、「衝撃なし」と判別した場合、映像データ、音声データ、加速度データ、位置データ、速度データ、及び、操作履歴データの重要度を「低」と判別する。
【0045】
図4Aに示す例は、個人の車両事故発生時における記録データの活用を想定した場面での、各データの重要度を定義したものである。別例として、運行管理等を目的とした従業員の管理のために、記録データを活用する場面では、図4Bに例示するテーブルのように、各データの重要度を定義することができる。
【0046】
図4Bに示す例によれば、プロセッサ11は、「衝撃あり」と判別した場合、映像データを「高」と判別し、音声データ及び加速度データの重要度を「低」と判別する。この他、位置データ、速度データ、及び操作履歴データの重要度を「高」と判別する。
【0047】
図4Bに示す例によれば、プロセッサ11は、「衝撃なし」と判別した場合、映像データ、音声データ、加速度データ、及び操作履歴データの重要度を「低」と判別し、位置データ及び速度データの重要度を「高」と判別する。
【0048】
プロセッサ11は、上記のように、データの種類、及び、車両状況に対応する衝撃の有無に応じて、取得データの重要度を判別する。その後、S130に移行する。S130において、プロセッサ11は、取得データを圧縮する。圧縮方式及び圧縮率は、データ種類毎に定められ得る。プロセッサ11は、取得データを、対応するデータの種類に応じた圧縮方式及び圧縮率で圧縮する。
【0049】
映像データ及び音声データの圧縮方式としては、様々な圧縮方式が既に知られている。本実施形態でも、これらの圧縮方式を用いて、映像データ及び音声データを圧縮することができる。この他、位置データ、速度データ、加速度データ、及び操作履歴データは、バイナリ化及び/又は間引き等によって、圧縮され得る。
【0050】
その後、プロセッサ11は、バッファにおける未送信データの滞留レベルを判別する(S140)。滞留レベルは、例えば、バッファ内の空き領域の大きさ、及び、重要度「高」の未送信データのバッファに占める割合に基づいて、判別される。ここでいうバッファ内の空き領域は、バッファ内において未送信データが書き込まれていない領域に対応する。
【0051】
例えば、プロセッサ11は、S130で圧縮されたデータを格納するための空き領域がバッファ内に存在するとき、滞留レベルを「低」と判別することができる。プロセッサ11は、バッファ内に空き領域が存在せず、且つ、重要度「高」の未送信データのバッファに占める割合が基準値以上であるとき、滞留レベルを「高」と判別することができる。
【0052】
プロセッサ11は、バッファ内に空き領域が存在せず、且つ、重要度「高」の未送信データのバッファに占める割合が基準値未満であるとき、滞留レベルを「中」と判別することができる。
【0053】
プロセッサ11は、滞留レベルが「低」であると判断すると(S150でYes)、バッファの空き領域に、S130での圧縮データを書き込むことにより、S110で取得したデータについてのバッファリングを実現する(S155)。その後、バッファ関連処理を一旦終了する。
【0054】
プロセッサ11は、滞留レベルが「低」ではなく「中」であると判断すると(S160でYes)、S130での圧縮データを、バッファ内における重要度の低い未送信データに上書きするようにバッファ内に書き込むことにより、S110で取得したデータについてのバッファリングを実現する(S165)。バッファ内に空き領域が部分的に残っている場合、プロセッサ11は、この空き領域に圧縮データの一部を書き込むことができる。
【0055】
S165での処理のために、プロセッサ11は、S120で判別した重要度の情報を、対応する圧縮データと共に、バッファに書き込むことができる。あるいは、プロセッサ11は、バッファを管理するための管理テーブルをRAM13に記憶することができ、この管理テーブルにバッファ内の各データの重要度を記しておくことができる。管理テーブルには、各データを格納した領域を示す格納先アドレスと共に、重要度を表す情報及び送信状態を表す情報(換言すれば未送信であるか否かを表す情報)を記述することができる。
【0056】
S165での処理を終えると、プロセッサ11は、無線通信器90を通じた通信環境が良好であるか否かを判断する(S170)。プロセッサ11は、無線通信ネットワークNT内の無線基地局からの無線電波の受信強度(RSSI)が所定強度以上であるか否かに基づいて、通信環境が良好であるか否かを判断することができる。
【0057】
プロセッサ11は、通信環境が良好ではないと判断すると(S170でNo)、データ滞留が進行する可能性を考慮して、バッファ内の未送信データのうち重要度の高いデータを、古いデータから順に所定数だけ、再圧縮対象に選択し、選択した再圧縮対象のデータを、再圧縮する(S175)。
【0058】
再圧縮は、再圧縮後のデータサイズを再圧縮前よりも低減するように行われる。すなわち、プロセッサ11は、再圧縮対象のデータを、そのデータが現在の圧縮率よりも高い圧縮率で圧縮されるように、再圧縮する。この再圧縮データをバッファに格納する。
【0059】
例えば、再圧縮対象のデータが、映像データである場合、プロセッサ11は、圧縮器30を介して、映像データをフレームレート及び/又は解像度を下げるように再圧縮することにより、再圧縮後のデータサイズを、再圧縮前と比較して小さくすることができる。再圧縮対象のデータが、加速度データである場合には、間引き量を増やして再圧縮することにより、再圧縮後のデータサイズを、再圧縮前と比較して小さくすることができる。このことから理解できるように、本実施形態でいう「圧縮」は、例えば情報を間引く又は粗くするなどして、細かな情報を部分的に削除しながら圧縮する不可逆圧縮を含む。
【0060】
図5では、バッファに格納されている未送信データのうち、重要度の高い映像データが古い順に二つ、再圧縮対象に選択され、これらのデータが再圧縮前よりも小さいデータサイズの再圧縮データとしてバッファに再格納されることが例示されている。この再圧縮により、バッファには、新たな空き領域が発生する。
【0061】
プロセッサ11は、S175での処理を終えると、当該バッファ関連処理を一旦終了する。この他、プロセッサ11は、通信環境が良好であると判断すると(S170でYes)、データ滞留が進行しない可能性が高いため、S175の処理を実行することなく、バッファ関連処理を一旦終了する。
【0062】
この他、プロセッサ11は、滞留レベルが「低」「中」ではなく「高」であると判断すると(S160でNo)、S180に移行する。S180において、プロセッサ11は、S165での処理と同様に、S130での圧縮データを、重要度の低い未送信データに上書きするようにバッファに書き込む。更に、プロセッサ11は、S175での処理と同様に、バッファ内の未送信データのうち重要度の高いデータを再圧縮対象に選択し、選択した再圧縮対象のデータを、再圧縮する(S190)。その後、バッファ関連処理を一旦終了する。
【0063】
プロセッサ11は、このバッファ関連処理と並行して、図6に示す送信制御処理を実行する。送信制御処理を開始すると、プロセッサ11は、バッファ内に格納されている未送信データの一つを送信対象に選択する(S210)。バッファ内に未送信データがない場合には、未送信データが格納されるまで待機し、格納された時点で、その未送信データを送信対象に選択する。
【0064】
S210において、プロセッサ11は、重要度の高いデータを優先的に送信対象に選択する。バッファ内に互いの重要度が同じ複数の未送信データであって重要度の高い複数の未送信データが存在する場合、プロセッサ11は、これらの複数の未送信データの中で、最も新しいデータ、すなわち、バッファに格納されてからの経過時間が最も短いデータを送信対象に選択する。
【0065】
バッファ内に重要度の高い未送信データがない場合、プロセッサ11は、バッファ内の未送信データの中で、最も古いデータを送信対象に選択する。このようにして、プロセッサ11は、重要度を優先的な指標として用いて、重要度が互いに異なる複数の未送信データがある場合は重要度の高い順、重要度が互いに同一である重要度の高い複数の未送信データがある場合は新しい順、重要度の高い未送信データがない場合は古い順に、それぞれバッファ内のデータを送信対象に選択する(S210)。
【0066】
S210での処理後、プロセッサ11は、選択した送信対象のデータを、無線通信器90を通じてサーバ装置5に無線送信する処理を実行する(S220)。この送信により、サーバ装置5では、ドライブレコーダ1からのデータが受信され、保存及び管理される。
【0067】
続くS230において、プロセッサ11は、シャットダウン処理が必要であるか否かを判断する。シャットダウン処理は、ドライブレコーダ1がシャットダウンされるときに必要であると判断される。プロセッサ11は、ここで否定判断すると、S210に移行し、肯定判断すると、S240に移行する。
【0068】
S240において、プロセッサ11は、バッファ内の未送信データを、NVRAM17に退避させて、未送信データがシャットダウンにより蒸発しないように対処する。その後、送信制御処理を終了する。S240の処理に対応して、プロセッサ11は、次回起動時に、NVRAM17に退避させた未送信データを、バッファに格納した後、送信制御処理を再開することができる。
【0069】
付言すると、S220では、通信環境によりサーバ装置5との通信に失敗する可能性がある。サーバ装置5との通信ができないとき、プロセッサ11は、サーバ装置5へのデータ送信を諦めてS230に移行することができる。そして、次回のS210実行時には、通信に失敗した未送信データを候補に入れて、送信対象を選択することができる。
【0070】
この記載からも理解できるように、本明細書でいう「未送信データ」は、一度も送信することを試みていないデータの他、送信することを試みたが送信に成功しなかったデータも含まれる。送信に成功しなかったデータには、送信することを試みたが全く送信できなかったデータや、途中まで送信できたが通信遮断などで全てを送信することができなかったデータなどが含まれる。
【0071】
以上に説明した本実施形態のドライブレコーダ1によれば、空き領域がなくなるまでバッファ内に未送信データが滞留しているとき、新規データが、重要度の低いデータを古いデータから上書きするように書き込まれる(S165,S180)。このときプロセッサ11は、重要度の高い未送信データを再圧縮して、そのデータサイズを低減し、バッファに空き領域を生成する(S175,S190)。
【0072】
特に、本実施形態では、通信環境が悪くデータ滞留が進行する可能性があるとき(S170でNo)、上記の再圧縮が行われる(S175)。この他、既にデータ滞留が進行し、上書きすべきではない重要度の高い未送信データのバッファに占める割合が基準以上であるとき、上記の再圧縮が行われる(S190)。
【0073】
従って、本実施形態のドライブレコーダ1によれば、小さいバッファを用いても、通信環境の悪化によるデータ滞留の影響を抑えて、バッファ内の未送信データ、特には重要データ、特には車両状況に応じた重要データを適切に無線送信することができる。
【0074】
再圧縮により未送信データのデータサイズを低減すれば、バッファ内の空き領域が増えるだけでなく、サーバ装置5へのデータ通信量も低減することができるため、通信環境が悪いときでも、データ滞留を抑えて、重要データを効率的にサーバ装置5に送信することができる。
【0075】
本実施形態では、重要度の高いデータを優先的にサーバ装置5に送信するため、重要データが無線送信されないままドライブレコーダ1内で失われる可能性も抑えることができる。
【0076】
この他、本実施形態では、上書きされる可能性のある重要ではないデータに対して再圧縮を行わない。従って、再圧縮にかかる処理負荷を、全データを圧縮する場合と比較して抑えることができる。処理負荷の低減によれば、プロセッサ11に必要な演算能力及び圧縮器30に必要な処理能力を抑えることができることから、ドライブレコーダ1の製造コストを抑えることができる。
【0077】
本実施形態では、上述の通り重要データを優先送信及び再圧縮することから、重要データが未送信のまま失われる可能性を有効に低減することができる。仮に重要データだけでバッファが一杯となってしまった場合、プロセッサ11は、重要データを古い順に上書き対象に選択して、その上書き対象に上書きするように、新規の重要データを書き込むことができる。あるいは、重要データを再々圧縮して、空き領域を確保し、新規の重要データをバッファ内に書き込むことができる。
【0078】
映像データは、再圧縮又は再々圧縮により、静止画像データに置換されてもよい。すなわち、フレームレートを下げるように映像データを圧縮する例には、映像データを静止画像データに置換する例も含まれる。
【0079】
本開示が上述の実施形態に限定されるものではなく、種々の態様を採り得ることは言うまでもない。例えば、プロセッサ11は、S140において上述した手法とは異なる手法で滞留レベルを判別してもよい。
【0080】
例えば、プロセッサ11は、バッファにおける未送信データの滞留時間に基づいて、滞留レベルを判別してもよい。プロセッサ11は、バッファに未送信データとして滞留する最も古いデータのバッファへの格納時からの経過時間に基づいて、滞留レベルを判別することができる。
【0081】
プロセッサ11は、バッファにおける未送信データの数に基づいて、滞留レベルを判別してもよいし、バッファ内に空き領域が存在しない時間の長さや、空き領域がなくなる事象の発生間隔及び/又は頻度に基づいて、滞留レベルを判別してもよい。これらの判別手法は、バッファの空き領域の大きさ以外の手法で、データ滞留に関係する事象に基づいて、滞留レベルを判別する例である。
【0082】
S140において、プロセッサ11は、データ滞留と関係する通信環境又は状況に基づいて、滞留レベルを判別してもよい。例えば、プロセッサ11は、バッファへのデータ転送速度とバッファからのデータ送信速度との比較に基づいて、滞留レベルを判別してもよいし、バッファからのデータ送信速度のみに基づいて、滞留レベルを判別してもよい。
【0083】
プロセッサ11は、無線基地局からの受信強度に基づいて、あるいは、基地局との通信が不可能な時間に基づいて、滞留レベルを判別してもよいし、サーバからの受信応答に基づいて、滞留レベルを判別してもよい。これらの判別手法は、バッファ内の状態を直接参照することなく、データ滞留に関係する通信動作や通信環境等に基づいて、滞留レベルを判別する手法である。滞留レベルを判別する手法を採用せず、単に、通信動作や通信環境等に基づく条件分岐により、S150,S160,S170と同様の条件分岐を実現してもよい。
【0084】
この他、重要度は、「高」「低」の二段階ではなく、三以上の段階で定義されてもよい。この場合、プロセッサ11は、バッファ内の未送信データを、重要度の高い順に、送信対象に選択して、サーバ装置5に無線通信器90を介して無線送信することができる。重要度が同じデータ群に関しては、新しいデータから順に、送信対象に選択して、サーバ装置5に送信することができる。新しいデータから順に送信対象に選択する手法は、重要度が所定水準より高いデータ群に限定されてもよい。例えば、重要度が最も低いデータ群に関しては、重要度が高いデータ群とは異なり、古いデータから順に送信対象に選択し、サーバ装置5に送信してもよい。
【0085】
送信優先度と同様に、プロセッサ11は、バッファ内の未送信データを、重要度の高い順に再圧縮対象に選択することができる。プロセッサ11は、バッファ内において空き領域がないとき、重要度の低いデータから順に上書き対象に選択し、選択したデータに上書きするように新規データを書き込むことができる。
【0086】
この他、プロセッサ11は、バッファ内に空き領域がある段階から、徐々に数を増やすようにして、重要度の高い未送信データを再圧縮してもよい。プロセッサ11は、バッファにおいてデータ滞留が進行しているときには、S130におけるデータ圧縮の段階で、データ滞留が生じていないときの通常の圧縮率よりも高い圧縮率で、S110での取得データを圧縮して、その圧縮データをバッファに格納してもよい。
【0087】
上記実施形態のドライブレコーダ1は、位置データ、速度データ、加速度データ、及び操作履歴データ等の車両データを記録せずに、映像データ及び音声データのみを、あるいは、映像データのみを、バッファに格納するように構成されてもよい。
【0088】
上記実施形態における1つの構成要素が有する機能は、複数の構成要素に分散して設けられてもよい。複数の構成要素が有する機能は、1つの構成要素に統合されてもよい。上記実施形態の構成の一部は、省略されてもよい。上記実施形態の構成の少なくとも一部は、他の上記実施形態の構成に対して付加又は置換されてもよい。特許請求の範囲に記載の文言から特定される技術思想に含まれるあらゆる態様が本開示の実施形態である。
【符号の説明】
【0089】
1…ドライブレコーダ、5…サーバ装置、10…制御部、11…プロセッサ、13…RAM、15…ROM、17…NVRAM、20…カメラ、25…マイクロフォン、30…圧縮器、40…ディスプレイ、50…スピーカ、60…加速度センサ、65…速度入力器、70…測位器、80…入力インタフェース、90…無線通信器、NT…無線通信ネットワーク。
【要約】
【課題】通信環境悪化の影響を抑えて、データを適切に無線送信すること。
【解決手段】本開示の一側面にかかるドライブレコーダでは、バッファ内のデータが順次無線送信される。バッファ内での未送信データの滞留に関係する所定事象が発生すると、あるいはバッファ内の未送信データの量が所定水準以上であるとき、バッファ内の未送信データのうち、重要度が基準以上のデータが圧縮される(S175,S190)。
【選択図】図3
図1
図2
図3
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図5
図6