(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6853610
(24)【登録日】2021年3月16日
(45)【発行日】2021年3月31日
(54)【発明の名称】発電システム用位置エネルギー蓄積装置
(51)【国際特許分類】
F03G 3/00 20060101AFI20210322BHJP
F16D 11/06 20060101ALI20210322BHJP
【FI】
F03G3/00 A
F16D11/06
【請求項の数】3
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2018-127863(P2018-127863)
(22)【出願日】2018年6月4日
(65)【公開番号】特開2019-210928(P2019-210928A)
(43)【公開日】2019年12月12日
【審査請求日】2020年11月9日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】712008002
【氏名又は名称】西浦 信一
(72)【発明者】
【氏名】西浦 信一
【審査官】
小林 勝広
(56)【参考文献】
【文献】
特開2017−133399(JP,A)
【文献】
特開昭56−034981(JP,A)
【文献】
中国特許出願公開第103711664(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F03G 1/00− 7/10
F16D 11/06、11/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エネルギーを受容して第1動力を発生する受容装置、及び、第2動力を電力に変換する発電装置の各々に対して動力伝達可能に接続される蓄積装置であって、
重りと、
巻取器と、
両端がそれぞれ前記重りと前記巻取器に接続された線体と、
前記巻取器の巻取方向への回転を許容するとともに前記巻取方向と反対の繰出方向への前記巻取器の回転を許容しない第1状態と、前記巻取器の前記繰出方向への回転を許容する第2状態と、を切り換える切換機構と、
を備え、
前記第1動力により前記巻取器を前記巻取方向に回転させることで前記線体を巻き取って前記重りを上昇させ、これにより位置エネルギーを蓄え、
前記重りを自重により下降させることで、前記第1動力よりも大きく且つ前記巻取器を前記繰出方向に回転させる前記第2動力を発生する、発電システム用位置エネルギー蓄積装置にあって、
前記切換機構は、前記巻取り器の動作方向を駆動方向と空転方向とに切換るクラッチ機構と、前記クラッチ機構に連結するクラッチレバーと、前記重りの上昇下降に連動する前記クラッチレバーのストップ機構とを備え、
前記クラッチ機構は、前記クラッチレバーが前記クラッチレバーの前記ストップ機構に接触することで駆動方向から空転方向へ切り換り、前記クラッチレバーが前記クラッチレバーの前記ストップ機構から外れることで、空転方向から駆動方向へ切り替わることを特徴とする発電システム用位置エネルギー蓄積装置
【請求項2】
前記ストップ機構は、前記重りと、前記巻取器と、に両端がそれぞれ接続された前記線体に沿って配置された線体ガイドと、前記線体ガイドに連結されたストップバーと、を備え、前記線体ガイドと前記ストップバーは、前記重りの上昇下降に連動する請求項1に記載の発電システム用位置エネルギー蓄積装置
【請求項3】
前記線体は、前記線体の前記巻取器側に配置されるストッパーを備え、該ストッパーは、前記重りが下死点に近づいたときに前記線体ガイドを押し下げ、該線体に連動する前記ストップバーの位置を下げることで、前記クラッチレバーのストップを解除することを特徴とする請求項2に記載の発電システム用位置エネルギー蓄積装置
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自然界に発生する風、海水の干満、波、川の流れなど、流体の流動や、その他の再生可能エネルギーを利用して発電する発電システム、特に好適には、再生可能エネルギーを位置エネルギーとして一旦蓄積し、この位置エネルギーを発電に適したエネルギーとして発電機に送る発電システム用位置エネルギー蓄積装置に関する。
【背景技術】
【0002】
再生エネルギーを電気エネルギーに変換するアイデアは数多く出されている。その多くは、エネルギー変換をいかに効率よく行うかというところに注目している。
特許文献1 特開2017−133399号公報には、再生可能エネルギーを、一旦、位置エネルギーに変換し、蓄積した位置エネルギーの開放で発電するシステムが開示されている。この方法では、位置エネルギーの蓄積と開放にクラッチ機構が用いられている。現在よく知られているクラッチ機構は、電気的な制御を基にしたものが一般的であり、該特許も、電磁的な制御によって駆動方向と空転方向を切換ることが可能なクラッチ機構を例としている。
しかしながら、発生した電力を、その一部とはいえ、クラッチ機構に利用するのは、電力への変換効率を重視すると好ましいことではない。
電力を使用しない機械的に作動されるクラッチ機構は数多く開示されている。 特許文献2 特開2009−093565号公報には、乗用田植機に使用される機械的に作動されるクラッチ機構が開示されている。この方法では、効果的な爪クラッチの利用法が開示されているが、クラッチを解除するクラッチレバーの駆動源をシステムの外部に求めている。
特許文献1 特開2017−133399号公報の位置エネルギーの蓄積と開放を利用した発電システムに使用するクラッチ機構では、クラッチレバーの駆動源を外部に得ることは困難であり、内部に発生する動力でクラッチレバーを動作させることが好ましい。また、そのクラッチレバーの動作は、位置エネルギーである重りの上死点、下死点で、自動で切り替わることができれば、なお好ましいと言える。
電力を使用せず、クラッチレバーの動作をシステム内部の動力を利用し、かつ自動で上死点、下死点のポイント
で切り換えることができる、発電システム用位置エネルギー蓄積装置が求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017−133399号公報
【特許文献2】特開2009−093565号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
よく知られる爪クラッチ機構では、位置エネルギーを蓄積するために蓄積機構が駆動方向に動作するとき、蓄積された位置エネルギーが、ラチェットの歯車に伝達され、歯止め(爪)に圧力としてかかる。動作方向を駆動方向から空転方向に変換し、蓄積された位置エネルギーを開放するためには、この歯止め(爪)にかかる位置エネルギーの圧力を解除しうる動力を歯止め(爪)に与え、歯止め(爪)をラチェット機構の歯車から外さなければならない。
発明者は、歯止め(爪)に直接あるいは間接的に接続したクラッチレバーの長さを十分にとれば、てこの応用で、位置エネルギーのかかった歯止め(爪)をラチェット機構の歯車から外し得る
ことに着目した。
そこで、発明者はクラッチレバーに、位置エネルギーである重りの上死点、下死点で効果的にタイミングよくクラッチレバーを動作させる動力を与える方法を鋭意検討した。
【0005】
すなわち本発明は、上記事情にかんがみてなされたもので、電力を使用せず、クラッチレバーの動作をシステム内部の動力を利用し、自動で適切なポイントによる駆動方向と空転方向の切換を行うことができ、発電システム全体の発電効率を最大限に維持しうる、発電システム用位置エネルギー蓄積装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記課題を解決するためになされたもので、以下の構成を具備している。
発明1は、
エネルギーを受容して第1動力を発生する受容装置、及び、第2動力を電力に変換する発電装置の各々に対して動力伝達可能に接続される蓄積装置であって、
重りと、
巻取器と、
両端がそれぞれ前記重りと前記巻取器に接続された線体と、
前記巻取器の巻取方向への回転を許容するとともに前記巻取方向と反対の繰出方向への前記巻取器の回転を許容しない第1状態と、前記巻取器の前記繰出方向への回転を許容する第2状態と、を切り換える切換機構と、
を備え、
前記第1動力により前記巻取器を前記巻取方向に回転させることで前記線体を巻き取って前記重りを上昇させ、これにより位置エネルギーを蓄え、
前記重りを自重により下降させることで、前記第1動力よりも大きく且つ前記巻取器を前記繰出方向に回転させる前記第2動力を発生する、発電システム用位置エネルギー蓄積装置にあって、
前記切換機構は、前記巻取り器の動作方向を駆動方向と空転方向とに切換るクラッチ機構と、前記クラッチ機構に連結するクラッチレバーと、前記重りの上昇下降に連動する前記クラッチレバーのストップ機構とを備え、
前記クラッチ機構は、前記クラッチレバーが前記クラッチレバーの前記ストップ機構に接触することで駆動方向から空転方向へ切り換り、前記クラッチレバーが前記クラッチレバーの前記ストップ機構から外れることで、空転方向から駆動方向へ切り替わることを特徴とする発電システム用位置エネルギー蓄積装置である。
【0007】
発明2は、前記ストップ機構は、前記重りと、前記巻取器と、に両端がそれぞれ接続された前記線体に沿って配置された線体ガイドと、前記線体ガイドに連結されたストップバーと、を備え、前記線体ガイドと前記ストップバーは、前記重りの上昇下降に連動する発明1に記載の発電システム用位置エネルギー蓄積装置である。
【0008】
発明3は、前記線体は、前記線体の前記巻取器側に配置されるストッパーを備え、該ストッパーは、前記重りが下死点に近づいたときに前記線体ガイドを押し下げ、該線体に連動する前記ストップバーの位置を下げることで、前記クラッチレバーのストップを解除することを特徴とする発明
2に記載の発電システム用位置エネルギー蓄積装置である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、簡単至便な構造によって、位置エネルギーの蓄積と開放を、電力を用いず、適切な位置で、自動に、クラッチ機構の切換が可能になる。そのことによって、蓄積された位置エネルギーの電力変換の効率向上や、簡単な構造による耐久性の向上、システム全体の低価格化が図られ、より有用な発電システム用位置エネルギー蓄積装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施形態に係る発電システム及び切換機構の概略的な構成を示す図である。
【
図2】巻取器の動作方向が、駆動方向から空転方向へ切り替わる態様を示している。
【
図3】巻取り器の動作方向が空転方向から駆動方向へ切り替わる態様を示している。
【
図4】ラチェット機構の駆動方向時 空転方向時の態様を示している。
【発明を実施するための形態】
【0011】
実施形態につき説明する。
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態にかかる位置エネルギー蓄積装置の切替機構の概略的な構成を示す図である。この図をもって切換機構の動作プロセスを説明する。
風力や波力、水流といった再生可能エネルギーが、プロペラやブレード、スクリューといった受容機構によって運動エネルギーに代わり、変速機Aへ伝達される。この際の受容装置は図示しないが、公知の技術はすべて使いうる。変速機Aは位置エネルギーを効率よく蓄積するため減速機が好ましい。減速機によってトルクアップされスピードダウンした動力は第1シャフト1によって動力伝達円盤2に伝達される。
【0012】
動力伝達円盤2には、歯止め(爪)取付軸3によって、ラチェット機構の歯止め(爪)4が配置されている。歯止め(爪)4は、第2シャフト9に固定されたラチェット機構の歯車5にかみ合って、巻取り器8を駆動方向へ回転させ、線体12を巻取器8に収納することで、重り17を巻き上げ、位置エネルギーの蓄積を行う。
【0013】
巻取器8の駆動方向を制御するクラッチ機構は、前述のラチェット機構のほか、油圧を使うもの、磁気を使うもの、様々あるが、公知の機械的に作動されるクラッチ機構であればいずれも使いうる。この実施形態では、このうち最も単純な爪ラチェット機構を例に説明を行うが、本発明は、それに限定されるものではない。
【0014】
重り17が上昇している間、歯止め(爪)4に連結するクラッチレバー6は、動力伝達円盤2の回転に伴って回り続ける。(
図4a)
重り17が線体ガイド13の底面に到達し、さらに上昇を続けると、線体ガイド13は重り17に押し上げられ、それに連結する連結ブロック15、及びそれに固定されたストップバー14も上昇していく。
【0015】
ストップバー14の先端が、クラッチレバー6が回っている高さまで到達すると、クラッチレバー6はストップバー14に接触する。
図2にその態様を示す。
【0016】
この時、クラッチレバー6の回転は止まるが、動力伝達円盤2は回り続けるため、クラッチレバー6に連結する歯止め(爪)4にクラッチレバー6からのてこの力と動力伝達円盤2の回転トルクがかかり、歯止め(爪)4はラチェット機構の歯車5から外れる。(
図4b)巻取器8は空転状態となり、重り17の重力で駆動方向とは逆の回転を始める。
なお、図示しないが、ストップバー14がクラッチレバー6の押してくる力を十分受けられるよう、ストップバー14の回りに補強を兼ねたガイドを設けてもよい。
【0017】
巻取器8の下には第2シャフト9によってワンウェイクラッチが接続されている。このワンウェイクラッチは、巻取器8が駆動方向に回転しているときは、空転するが、巻取器8が空転方向に回転するときは、第3シャフト10を駆動して動力を変速機Bと発電機に伝達する。その動力によって変速機Bによって増速された回転は発電機を回転させて発電を行う。
変速機Bと発電機については、公知の技術をすべて使い得るため詳細を記載しない。
【0018】
重りが下死点近くに来ると、線体12の巻取り器8側に取り付けられたストッパー7が、線体ガイド13の上部に到達し、重り17がさらに下降を続けると、線体ガイド13の挿入径より大きく作られたストッパー7が線体ガイド13を重り17の重力によって押し下げる。
図3はその態様を示したものである。線体ガイド13はパイプ形状が望ましいが、線体が沿うようなもので重りが持ち上げうる形状であるなら排除するものではない。
【0019】
同時に線体ガイド13に連結する連結ブロック15とそれに固定されたストップバー14も位置が下がり、ストップバー14に回転を止められていたクラッチレバー6はフリーとなる。図示しないが、
クラッチレバー6は、ばねやスプリングの力で元の位置に戻り、歯止め(爪)4を再びラチェット機構の歯車5にかませる。
図示しないが、
クラッチレバー6は歯止め(爪)4に配置してもよい。
そうして動力伝達円盤2は、再び巻取器8を駆動方向に回転させ、重り17を巻き上げる。
この動作を繰り返すことで、位置エネルギーの蓄積と開放を、適切な位置で、電力を用いず、繰り返し行うことができる。
なおクラッチレバー6は、効果的に歯止め(爪)4をラチェット機構の歯車5から外すために、歯止め(爪)4との間に別のリンク機構を設けてもよい。ラチェット機構やクラッチ機構の態様には公知の様々な実施例があるが、本発明はいずれも排除することはない。
【0020】
(第2実施形態)
第2実施形態は、巻取器8が第1実施形態のように地面に対して水平の位置ではなく、垂直の位置にある場合である。その場合、ストップバー14は、地面に対して平行に配置される。その他の構成については、(第1実施形態)に倣うものであるので、詳述を行わない。
【産業上の利用可能性】
【0021】
本発明を利用すれば、再生エネルギーを利用した小型、安価で安定した発電機、好適にはIoT通信用の電力やセンサー用の電力を供給する発電システム用位置エネルギー蓄積装置を提供することができる。
【符号の説明】
【0022】
1…第1シャフト、2…動力伝達円盤、3…歯止め(爪)取付軸、4…ラチェット機構の歯止め(爪)、5…ラチェット機構の歯車、6…クラッチレバー、7…ストッパー、8…巻取器、9…第2シャフト、10…第3シャフト、11…線体ガイドローラー、12…線体、13…線体ガイド、14…ストップバー、15…連結ブロック、16…固定板、17…重り