(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
パラフェニレンジアミン及び/又は4,4’−ジアミノジフェニルエーテルの芳香族ジアミン成分と、ピロメリット酸二無水物及び/又は3,3',4,4'−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物の芳香族酸無水物成分とを原料に含み、
パラフェニレンジアミンと4,4'−ジアミノジフェニルエーテルのモル比が45/55〜0/100であり、ピロメリット酸二無水物と3,3',4,4'−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物のモル比が100/0〜50/50である請求項1〜4のいずれか一項に記載のポリイミドフィルム。
【背景技術】
【0002】
近年、パソコン、携帯電話などの電子機器の高性能化に伴い、電子機器内の発熱量が著しく上昇したことにより、電子機器内の放熱を効率良く行うことが重要な課題となっている。
放熱方法としては、熱放射を利用する方法(例えば、セラミック板などの使用)、熱の対流を利用する方法(例えば、空冷フィンなどの使用)、熱伝導を利用する方法(例えば、熱伝導シート、熱伝導性樹脂などの使用)等がある。
【0003】
熱伝導を利用する方法では、例えば、発熱源となる固体と放熱部材となる固体が積層される。しかし、固体同士(例えば、金属同士、金属とセラミックなど)を単に積層しても、その表面の凹凸のために層間に空気が存在し、発熱源から放熱部材へ熱を効率よく伝達することができない。そこで、熱伝導シートや熱伝導性樹脂層を固体間に介在させることによって、発熱源から放熱部材への効率良い熱伝導が実現できると考えられている。
【0004】
特許文献1には、このような熱伝導シートとして、グラファイトシート(グラファイトフィルム)を使用することが記載されている。
従来のグラファイトシートは、グラファイト結晶のc軸がフィルム面に対して垂直に配向しているため、フィルム厚み方向の熱伝導性が十分ではなく、固体間の熱伝導用部材としては不十分であった。
これに対し、特許文献1のグラファイトフィルムでは、グラファイト結晶のa―b面とフィルム面が成す角度を45〜90°とすることにより、フィルム厚み方向の熱伝導性を向上させている。
しかしながら、特許文献1に記載の特定の配向性を有するグラファイトフィルムを得るためには、製造条件の厳密な調整が必要になるという問題がある。また、特許文献1に記載の特定の配向性を有するグラファイトフィルムは、原料となる高分子フィルムの厚みが5μm以下などのように薄い場合は得ることができるが、5μm以上の高分子フィルムを原料とした場合は製造条件の調整が特に難しいという問題もある。
【0005】
また、特許文献2には、発熱源との熱抵抗を小さくでき、グラファイトフィルムの高熱伝導性を生かす方法として、圧縮状態が異なる部分が共存するグラファイトフィルムを使用し、低圧縮部分を発熱体と接合させることにより、接合部分の熱抵抗を小さくすることが記載されている。しかしながら、特許文献2の方法では、低圧縮部分を発熱体と接合できるようにグラファイトフィルムの圧縮状態を調整するのは難しいという問題がある。
【0006】
また、グラファイトシートの製造方法としては、特許文献3には、黒鉛粉の発生が少ないグラファイトフィルムの製造方法として、特定のモル比で特定の酸二無水物とジアミンを反応させて得られるポリイミドフィルムを、2600℃以上で熱処理する方法が記載されている。
さらに、特許文献4には、高分子フィルムをグラファイト化処理した後のフィルムの発泡の程度(すなわち、密度)が、圧延処理後のグラファイトフィルムの耐屈曲性や熱拡散性を決定する要因の一つであることが記載されており、グラファイト化処理後のフィルムの密度が0.7g/cm
3以上1.68g/cm
3以下であれば、圧延処理後のグラファイトフィルムの耐屈曲性や熱拡散性が優れることが記載されている。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明をさらに詳しく説明する。
本発明のポリイミドフィルムは、密度が0.3〜1.5g/cm
3のグラファイトシートを製造するためのポリイミドフィルムである。本発明のポリイミドフィルムは、通常、芳香族ジアミン成分と芳香族酸無水物成分を原料に含有する。
【0013】
芳香族ジアミン成分は、例えば、パラフェニレンジアミン及び/又は4,4’−ジアミノジフェニルエーテルを少なくとも含んでいればよい。
パラフェニレンジアミンと4,4’−ジアミノジフェニルエーテルのモル比は、例えば、45/55〜0/100(例えば、40/60〜0/100)、好ましくは35/65〜0/100(例えば、30/70〜0/100)程度であってよい。
パラフェニレンジアミンと4,4’−ジアミノジフェニルエーテルのモル比が45/55〜0/100であれば、ポリイミドフィルムの面方向の分子配向性が高くなりすぎず、グラファイト化の際にポリイミドフィルム内部からの分解ガスが発生しやすくなり、グラファイトシートが得られやすいなどの観点から好ましい。
【0014】
芳香族酸無水物成分は、例えば、ピロメリット酸二無水物及び/又は3,3',4,4'−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物を少なくとも含んでいればよい。
ピロメリット酸二無水物と3,3',4,4'−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物のモル比は、例えば、100/0〜50/50(例えば、100/0〜55/45)、好ましくは100/0〜60/40(例えば、100/0〜65/35)程度であってよい。ピロメリット酸二無水物と3,3',4,4'−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物のモル比が100/0〜50/50であれば、グラファイト化の際にポリイミドフィルム内部からの分解ガスが発生しやすくなり、グラファイトシートが得られやすいなどの観点から好ましい。
【0015】
芳香族ジアミン成分としては、パラフェニレンジアミン及び4,4’−ジアミノジフェニルエーテル以外の他の芳香族ジアミン成分を含んでいてもよい。
他の芳香族ジアミン成分としては、3,3'−ジアミノジフェニルエーテル、メタフェニレンジアミン、ジアミノジフェニルプロパン(例えば、4,4'−ジアミノジフェニルプロパン、3,4'−ジアミノジフェニルプロパン、3,3'−ジアミノジフェニルプロパンなど)、ジアミノジフェニルメタン(例えば、4,4'−ジアミノジフェニルメタン、3,4'−ジアミノジフェニルメタン、3,3'−ジアミノジフェニルメタンなど)、ベンジジン、ジアミノジフェニルサルファイド(例えば、4,4'−ジアミノジフェニルサルファイド、3,4'−ジアミノジフェニルサルファイド、3,3'−ジアミノジフェニルサルファイドなど)、ジアミノジフェニルスルホン(例えば、4,4'−ジアミノジフェニルスルホン、3,4'−ジアミノジフェニルスルホン、3,3'−ジアミノジフェニルスルホンなど)、2,6−ジアミノピリジン、ビス−(4−アミノフェニル)ジエチルシラン、3,3'−ジクロロベンジジン、ビス−(4−アミノフェニル)エチルホスフィノキサイド、ビス−(4−アミノフェニル)フェニルホスフィノキサイド、ビス−(4−アミノフェニル)−N−フェニルアミン、ビス−(4−アミノフェニル)−N−メチルアミン、1,5−ジアミノナフタレン、3,3'−ジメチル−4,4'−ジアミノビフェニル、3,4'−ジメチル−3',4−ジアミノビフェニル、3,3'−ジメトキシベンジジン、2,4−ビス(p−β−アミノ−t−ブチルフェニル)エーテル、ビス(p−β−アミノ−t−ブチルフェニル)エーテル、p−ビス(2−メチル−4−アミノペンチル)ベンゼン、p−ビス−(1,1−ジメチル−5−アミノペンチル)ベンゼン、m−キシリレンジアミン、p−キシリレンジアミン、2,5−ジアミノ−1,3,4−オキサジアゾール、2,2−ビス(4−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、N−(3−アミノフェニル)−4−アミノベンズアミド、4−アミノフェニル−3−アミノベンゾエート等が挙げられる。これらは1種単独で又は2種以上を併用して使用することができる。
【0016】
ポリイミドフィルムの原料成分としては、本発明の効果を妨げない範囲で、上記芳香族ジアミン成分以外の他のジアミン成分を含んでもよい。
他のジアミン成分としては、例えば、ジアミノアダマンタン類(例えば、1,3−ジアミノアダマンタン、3,3'−ジアミノ−1,1'−ジアミノアダマンタン、3,3'−ジアミノメチル−1,1'−ジアダマンタンなど)、ジアミノアルカン類(例えば、ヘキサメチレンジアミン、ヘプタメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、デカメチレンジアミン、3−メチルヘプタメチレンジアミン、4,4'−ジメチルヘプタメチレンジアミン、2,11−ジアミノドデカン、2,2−ジメチルプロピレンジアミン、3−メトキシヘキサエチレンジアミン、2,5−ジメチルヘキサメチレンジアミン、2,5−ジメチルヘプタメチレンジアミン、5−メチルノナメチレンジアミン、1,4−ジアミノシクロヘキサン、1,12−ジアミノオクタデカンなど)、1,2−ビス(3−アミノプロポキシ)エタン、2,5−ジアミノ−1,3,4−オキサジアゾール、2,2−ビス(4−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、N−(3−アミノフェニル)−4−アミノベンズアミド、4−アミノフェニル−3−アミノベンゾエート等が挙げられる。これらは1種単独で又は2種以上を併用して使用することができる。
【0017】
芳香族酸無水物成分としては、ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物以外の他の芳香族酸無水物成分を含んでいてもよい。
他の芳香族酸無水物成分としては、例えば、2,3',3,4'−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3',4,4'−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7−ナフタレンジカルボン酸二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エーテル、ピリジン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物、ナフタレンテトラカルボン酸二無水物(例えば、1,2,4,5−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8−デカヒドロナフタレンテトラカルボン酸二無水物、4,8−ジメチル−1,2,5,6−ヘキサヒドロナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,6−ジクロロ−1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,7−ジクロロ−1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7−テトラクロロ−1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物)、1,8,9,10−フェナントレンテトラカルボン酸二無水物、2,2−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、1,1−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、1,1−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)スルホン二無水物、ベンゼン−1,2,3,4−テトラカルボン酸二無水物、3,4,3',4'−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物等が挙げられる。これらは1種単独で又は2種以上を併用して使用することができる。
【0018】
特に好ましい芳香族ジアミン成分と芳香族酸無水物成分の組み合わせとしては、例えば、芳香族ジアミン成分としてパラフェニレンジアミンと4,4’−ジアミノジフェニルエーテルをモル比45/55〜0/100(好ましくは、40/60〜0/100)で含み、芳香族酸無水物成分としてピロメリット酸二無水物と3,3',4,4'−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物をモル比100/0〜50/50(好ましくは、100/0〜60/40)で含む組み合わせなどである。
【0019】
[無機粒子]
本発明のポリイミドフィルムは、通常、無機粒子を含む。無機粒子は、通常、ポリイミドフィルム中に分散されている。
分散に供する無機粒子としては、例えば、酸化物{例えば、SiO
2(シリカ)、TiO
2(酸化チタン(IV))等}、無機酸塩{例えば、CaHPO
4(リン酸水素カルシウム)、CaPO
4(リン酸カルシウム)、Ca
2P
2O
7(二リン酸カルシウム)等のリン酸(水素)塩、CaCO
3(炭酸カルシウム)等の炭酸塩}等が挙げられる。中でもリン酸を含むCaHPO
4を用いた場合、ポリイミドフィルム内部から昇華するときに発生するガスにより良好な発泡(膨れ)が生じ、熱伝導性等に優れた良好なグラファイトシートが得られるため、CaHPO
4を主成分(全無機粒子のうち、例えば50〜100重量%、好ましくは70〜100重量%含む)とすることが特に好ましい。
【0020】
分散に供する無機粒子の平均粒子径は、ポリイミドフィルム中の無機粒子の凝集を低減でき、ポリイミドフィルム焼成時の無機粒子の昇華ガスによる発泡が均一になる等の点から、好ましくは0.5〜2.2μmであり、より好ましくは0.5〜2.0μmであり、さらに好ましくは0.5〜1.9μmである。0.5μm以上であるとポリイミドフィルムの易滑性やグラファイトシートの柔軟性、破断強度等の特性が良好となる等の観点から、好ましい。また、2.2μm以下であるとポリイミドフィルム中の無機粒子の凝集を抑制でき、これが結果的に焼成時の無機粒子の昇華ガスによる部分的な過度の発泡を抑制でき、また、グラファイトシート上の表面突起欠陥を低減できる等の観点から好ましい。尚、無機粒子の平均粒子径の測定方法は、特に限定されず、例えば、後述の実施例に記載の方法を用いて測定してよい。
【0021】
分散に供する無機粒子の粒度分布については、狭い分布であること、つまり類似の大きさの無機粒子が全無機粒子に占める割合が高い方が良い。具体的には、粒子径0.5〜2.5μmの無機粒子が全無機粒子中80体積%以上(例えば、80〜100体積%)の割合を占めることが好ましい。この範囲であれば、フィルムの易滑性やグラファイトシートの柔軟性、破断強度等の特性が良好となる等の観点から、好ましい。尚、無機粒子の粒度分布の測定方法は、特に限定されず、例えば、後述の実施例に記載の方法を用いて測定してよい。
【0022】
[ポリイミドフィルムの製造方法]
次に、本発明のポリイミドフィルムの製造方法について説明する。
ポリイミドフィルムを得るに際しては、まず、芳香族ジアミン成分及び芳香族酸無水物成分を含む成分を有機溶媒中で重合させることにより、ポリアミック酸溶液(以下、ポリアミド酸溶液ともいう)を得る。
【0023】
ポリアミック酸溶液の形成に使用される有機溶媒の具体例としては、例えば、ジメチルスルホキシド、ジエチルスルホキシド等のスルホキシド系溶媒、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミド等のホルムアミド系溶媒、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジエチルアセトアミド等のアセトアミド系溶媒、N−メチル−2−ピロリドン、N−ビニル−2−ピロリドン等のピロリドン系溶媒、フェノール、o−,m−,或いはp−クレゾール、キシレノール、ハロゲン化フェノール、カテコール等のフェノール系溶媒、ヘキサメチルホスホルアミド、γ−ブチロラクトン等の非プロトン性極性溶媒等が挙げられる。これらは、単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。さらには、キシレン、トルエン等の芳香族炭化水素と組み合わせて使用してもよい。
【0024】
ポリアミック酸溶液の重合方法は公知のいずれの方法で行ってもよく、例えば、
(1)先に芳香族ジアミン成分全量を溶媒中に入れ、その後芳香族酸無水物成分を芳香族ジアミン成分全量と当量になるよう加えて重合する方法、
(2)先に芳香族酸無水物成分全量を溶媒中に入れ、その後芳香族ジアミン成分を芳香族酸無水物成分と当量になるよう加えて重合する方法、
(3)一方の芳香族ジアミン成分を溶媒中に入れた後、反応成分に対して一方の芳香族酸無水物成分が95〜105モル%となる比率で反応に必要な時間混合した後、もう一方の芳香族ジアミン成分を添加し、続いてもう一方の芳香族酸無水物成分を全芳香族ジアミン成分と全芳香族酸無水物成分とがほぼ当量になるよう添加して重合する方法、
(4)一方の芳香族酸無水物成分を溶媒中に入れた後、反応成分に対して一方の芳香族ジアミン成分が95〜105モル%となる比率で反応に必要な時間混合した後、もう一方の芳香族酸無水物成分を添加し、続いてもう一方の芳香族ジアミン成分を全芳香族ジアミン成分と全芳香族酸無水物成分とがほぼ当量になるよう添加して重合する方法、
(5)溶媒中で一方の芳香族ジアミン成分と芳香族酸無水物成分をどちらかが過剰になるよう反応させてポリアミック酸溶液(A)を調整し、別の溶媒中でもう一方の芳香族ジアミン成分と芳香族酸無水物成分をどちらかが過剰になるよう反応させポリアミック酸溶液(B)を調整する。こうして得られた各ポリアミック酸溶液(A)と(B)を混合し、重合を完結する方法。この時ポリアミック酸溶液(A)を調整するに際し芳香族ジアミン成分が過剰の場合、ポリアミック酸溶液(B)では芳香族酸無水物成分を過剰に、またポリアミック酸溶液(A)で芳香族酸無水物成分が過剰の場合、ポリアミック酸溶液(B)では芳香族ジアミン成分を過剰にし、ポリアミック酸溶液(A)と(B)を混ぜ合わせこれら反応に使用される全芳香族ジアミン成分と全芳香族酸無水物成分とがほぼ当量になるよう調整する方法、等が挙げられる。
なお、重合方法はこれらに限定されることはなく、その他公知の方法を用いてもよい。
【0025】
ポリアミック酸を構成する芳香族酸無水物成分と芳香族ジアミン成分とは、それぞれのモル数が大略等しくなる割合で重合されるが、その一方が10モル%、好ましくは5モル%の範囲内で他方に対して過剰に配合されてもよい。
【0026】
重合反応は、有機溶媒中で撹拌しながら行うことが好ましい。重合温度は、特に限定されないが、通常は、反応溶液の内温0〜80℃で行なわれる。重合時間は、特に限定されないが、10分〜30時間連続して行うことが好ましい。重合反応は、必要により重合反応を分割したり、温度を上下させてもよい。両反応体の添加順序には特に制限はないが、芳香族ジアミン成分の溶液中に芳香族酸無水物を添加することが好ましい。重合反応中に真空脱泡することは、良質なポリアミック酸の有機溶媒溶液を製造するのに有効な方法である。また、重合反応の前に芳香族ジアミン類に少量の末端封止剤を添加することによって、重合反応の制御を行ってもよい。前記末端封止剤は、特に限定されず、公知のものを使用することができる。
【0027】
こうして得られるポリアミック酸溶液は、固形分を、通常5〜40重量%、好ましくは10〜30重量%を含有する。また、その粘度は、特に限定されないが、ブルックフィールド粘度計による測定値が、通常10〜2000Pa・sであり、安定した送液のために、好ましくは100〜1000Pa・sである。尚、有機溶媒溶液中のポリアミック酸は部分的にイミド化されていてもよい。
【0028】
また、ポリアミック酸溶液は、通常、無機粒子を含有する。無機粒子を含有するポリアミック酸溶液を得るに際しては、予め重合したポリアミック酸溶液に無機粒子を添加してもよいし、無機粒子の存在下でポリアミック酸溶液を重合してもよい。
【0029】
無機粒子は、溶媒(例えば、N,N−ジメチルホルムアミド、N、N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホオキサイド、N−メチルピロリドン等の極性溶媒等)に分散されたスラリー(無機粒子スラリー)として使用することが、凝集を防止できるため好ましい。このスラリーは、粒子径が非常に小さいため、沈降速度が遅く安定している。また、たとえ沈降しても再攪拌する事で容易に再分散可能である。
【0030】
無機粒子スラリーの製造方法は、特に限定されず、従来公知の方法に従ってよい。無機粒子スラリーの製造方法としては、例えば、ミキサーを用いて無機粒子と溶媒を混合する方法等が挙げられる。ミキサーとしては、高速ディスパー、ホモミキサー、ボールミル、コーレスミキサー、撹拌式ディスパー等の剪断力の高いものを用いることが好ましい。また、湿式粉砕処理を行い、平均粒子径を細かくしてもよい。湿式粉砕処理には、例えば、ビーズミル、サンドミル等を用いることができる。
【0031】
無機粒子スラリーとしては、無機粒子が予め溶媒中に分散された市販品を使用してもよい。また、無機粒子スラリーは、必要に応じて、他の有機溶媒や配合剤等を含んでいてもよい。
【0032】
無機粒子スラリー中の無機粒子の濃度は、特に限定されないが、例えば、1〜80重量%、好ましくは1〜60重量%、より好ましくは1〜40重量%である。
【0033】
また、無機粒子スラリーを、フィルター(例えば、孔径15μm以下、好ましくは孔径13μm以下、より好ましくは孔径11μm以下、さらに好ましくは孔径5μm以下、特に好ましくは孔径3μm以下のカットフィルター)にかける(フィルター処理する)ことが、無機粒子同士の凝集を抑制することができ、ポリイミドフィルム中の15μm以上の無機粒子を除去することができる等の観点から、好ましい。
【0034】
前記フィルターの材質は、特に限定されず、例えば、高分子素材(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン等)、金属(例えば、ステンレス等)等が挙げられる。
【0035】
無機粒子の添加量は、ポリイミドを形成したときにポリイミド樹脂固形分1重量当たり、通常は0.05〜0.8重量%、好ましくは0.05〜0.55重量%、より好ましくは0.05〜0.52重量%、特に好ましくは0.05〜0.5重量%となる量であることが好ましい。
【0036】
ポリイミドフィルムを製造する方法としては、例えば、ポリアミック酸溶液をフィルム状にキャストし熱的に脱環化脱溶媒させてポリイミドフィルムを得る方法、ポリアミック酸溶液に環化触媒及び脱水剤を混合し化学的に脱環化させてゲルフィルムを作製し、これを加熱脱溶媒することによりポリイミドフィルムを得る方法が挙げられるが、後者の方が得られるポリイミドフィルムの熱膨張係数を低く抑えることができ、フィルム面方向の配高性が高まる為、グラファイトシートが熱伝導性に優れ、また厚みを厚くできること等から好ましい。
【0037】
化学的に脱環化させる方法においては、まず上記ポリアミック酸溶液を調製する。上記ポリアミック酸溶液は、環化触媒(イミド化触媒)、脱水剤及びゲル化遅延剤等を含有することができる。
【0038】
環化触媒の具体例としては、トリメチルアミン、トリエチレンジアミン等の脂肪族第3級アミン、ジメチルアニリン等の芳香族第3級アミン、イソキノリン、ピリジン、β−ピコリン等の複素環式第3級アミン等が挙げられ、これらは単独で又は2種以上を併用できる。なかでも複素環式第3級アミンを少なくとも一種以上使用する態様が好ましい。
【0039】
脱水剤の具体例としては、無水酢酸、無水プロピオン酸、無水酪酸等の脂肪族カルボン酸無水物、無水安息香酸等の芳香族カルボン酸無水物等が挙げられるが、なかでも無水酢酸及び/又は無水安息香酸が好ましい。
【0040】
ポリアミック酸溶液からポリイミドフィルムを製造する方法としては、例えば、環化触媒及び脱水剤を含有せしめたポリアミック酸溶液をスリット付き口金等から支持体上に流延してフィルム状に成形し、支持体上でイミド化を一部進行させて自己支持性を有するゲルフィルムとした後、支持体より剥離して熱処理を行うことにより、ポリイミドフィルムを得る方法が挙げられる。
【0041】
上記ポリアミック酸溶液は、加熱された支持体上に流延され、支持体上で熱閉環反応をし、自己支持性を有するゲルフィルムとなって支持体から剥離される。
【0042】
上記支持体とは、金属製の回転ドラムやエンドレスベルトであり、その温度は液体又は気体の熱媒、及び/又は電気ヒーター等の輻射熱により制御される。
【0043】
上記ゲルフィルムは、支持体からの受熱及び/又は熱風や電気ヒーター等の熱源からの受熱により、通常30〜200℃、好ましくは40〜150℃に加熱されて閉環反応し、遊離した有機溶媒等の揮発分を乾燥させることにより自己支持性を有するようになり、支持体から剥離される。
【0044】
上記支持体から剥離されたゲルフィルムは、通常、回転ロールにより走行速度を規制しながら走行方向に延伸される。延伸は、通常は140℃以下の温度で1.01〜1.90倍、好ましくは1.05〜1.60倍、さらに好ましくは1.10〜1.50倍の倍率で実施される。走行方向に延伸されたゲルフィルムは、テンター装置に導入され、テンタークリップに幅方向両端部を把持されて、テンタークリップと共に走行しながら、幅方向へ延伸される。
【0045】
上記の延伸されたゲルフィルムは、通常、風、赤外ヒーター等で15秒から30分加熱される。次いで、熱風及び/又は電気ヒーター等により、通常、250〜550℃の温度で15秒〜30分熱処理を行う。
【0046】
また、ポリイミドフィルムの厚みは、走行速度を調整することによって調整することができる。
【0047】
このようにして得られたポリイミドフィルムに対して、さらにアニール処理を行ってもよい。アニール処理の方法は、特に限定されず、常法に従ってよい。アニール処理の温度としては、特に限定されないが、200〜500℃が好ましく、200〜370℃がより好ましく、210〜350℃が特に好ましい。具体的には、前記温度範囲に加熱された炉の中を、低張力下にてフィルムを走行させ、アニール処理を行うことが好ましい。炉の中でフィルムが滞留する時間が処理時間となるが、走行速度を変えることでコントロールすることになり、5秒〜5分の処理時間であることが好ましい。また走行時のフィルム張力は10〜50N/mが好ましく、さらには20〜30N/mが好ましい。
【0048】
[ポリイミドフィルム]
ポリイミドフィルム中の無機粒子の含有量は、ポリイミドフィルム樹脂重量(すなわち、ポリイミドフィルム中のポリイミド樹脂固形分1重量)当たり、通常は0.05〜0.8重量%、好ましくは0.05〜0.55重量%、より好ましくは0.05〜0.52重量%、特に好ましくは0.05〜0.3重量%である。0.05重量%以上であれば、ポリイミドフィルム中の無機粒子がフィルム内部から昇華するときに発生するガスが多くなり、また、圧延処理を加えて得られたグラファイトシートが、柔軟性、破断強度等の特性に優れる等の観点から、好ましい。また、0.8重量%以下であれば、ポリイミドフィルム中の無機粒子の凝集を抑制できるため、ポリイミドフィルム焼成時の無機粒子の昇華ガスによる部分的な過度の発泡を抑制でき、また、グラファイトシート上の表面突起欠陥を低減できる等の観点から好ましい。
【0049】
ポリイミドフィルム中の無機粒子の最大分散径(最大分散粒子径)は、好ましくは15μm以下(例えば、1〜15μm、好ましくは3〜15μm)、より好ましくは13μm以下(例えば、1〜13μm、好ましくは3〜13μm)、さらに好ましくは11μm以下(例えば、1〜11μm、好ましくは3〜11μm)であること、すなわち、粒子径が15μmより大きい無機粒子がポリイミドフィルム中に存在しないことが好ましい。15μm以下の範囲にある場合、無機粒子の昇華ガスによる部分的な過度の発泡(膨れ)を生じることなく、グラファイト化時のポリイミドフィルムの膨れが良好であり、グラファイト化されたシートの表面突起欠陥が少なく外観が優れる等の観点から好ましい。
尚、本発明において、無機粒子の分散径とは、通常は、ポリイミドフィルムにおける、分散された無機粒子の粒子径のことであり、一次粒子径のみならず、二次粒子径(凝集粒子の粒子径)を含む。すなわち、無機粒子の最大分散径とは、ポリイミドフィルムにおける無機粒子の最大粒子径のことをいう。
【0050】
ポリイミドフィルムの厚さは、例えば、10〜150μm、好ましくは25〜125μm、より好ましくは25μm〜100μm、さらに好ましくは50μm〜100μm、最も好ましくは80μm〜100μmである。特に、25μm以上であれば、ポリイミドフィルム焼成後に柔軟なグラファイトシートが得られる等の観点から好ましい。また、特に100μm以下であれば、ガス透過性が高い為、グラファイトシートに良質な発泡が発生し、更にグラファイト化されたシート上の表面突起欠陥も少なく、外観に優れる等の観点から好ましい。
【0051】
ポリイミドフィルムの平均熱膨張係数は、特に限定されないが、例えば、0〜100ppm/℃、好ましくは0〜50ppm/℃、より好ましくは3〜35ppm/℃である。熱膨張係数は、例えば、島津製作所製TMA−50を使用し、測定温度範囲:50〜200℃、昇温速度:10℃/分の条件で測定してよい。
【0052】
[グラファイトシート]
本発明のポリイミドフィルムは、グラファイトシートの製造に使用することができる。
ポリイミドフィルムを熱処理することにより、グラファイトシートを得ることができる。熱処理には、公知の加熱手段を使用することができる。
【0053】
グラファイトシートを得るに際しては、例えば、まず、ポリイミドフィルムを所定の寸法に切断し、ポリイミドフィルムのフィルム面を水平又はフィルム面を立ててグラファイト製の保持容器に入れる。
【0054】
次いで、ポリイミドフィルムが投入された保持容器を加熱し、ポリイミドフィルムを焼成することにより、グラファイト化を行うことができる。
ポリイミドフィルムの焼成は、予備焼成工程(I)と本焼成工程(II)を含むことが好ましい。本焼成工程(II)は、通常、予備焼成工程(I)に次いで行われる。
【0055】
予備焼成工程(I)における最終焼成温度は、本焼成工程(II)における焼成温度より低ければよく、例えば、900〜1500℃程度であってよい。
予備焼成工程(I)における昇温速度は、好ましくは1〜15℃/分である。このような範囲であれば、密度が0.3〜1.5g/cm
3のグラファイトシートを得られやすいなどの観点から好ましい。
また、予備焼成工程(I)において、最終焼成温度まで昇温後に、最終焼成温度で保持してもよい。保持時間は、例えば、30分〜3時間程度であってよい。
【0056】
本焼成工程(II)における焼成温度は、例えば、2000℃以上(例えば、2000〜3500℃)であり、2400℃以上(例えば、2400〜3500℃)が好ましく、2600℃以上(例えば、2600〜3500℃)がより好ましい。
また、本焼成工程(II)における最終焼成温度は、2700℃以上(例えば、2700〜3500℃)が好ましく、2800℃以上(例えば、2800〜3500℃)がより好ましく、2900℃近辺(例えば、2900〜3200℃)がさらに好ましい。
焼成温度が3500℃以下であれば、焼成炉の耐熱劣化が小さく、長時間の生産が可能となる。最高焼成温度が2000℃以上であれば、得られるグラファイトシートが柔軟かつ強固となる傾向がある。
本焼成工程(II)における昇温速度は、好ましくは1〜15℃/分である。このような範囲であれば、密度が0.3〜1.5g/cm
3のグラファイトシートを得られやすいなどの観点から好ましい。
また、本焼成工程(II)にいて、最終焼成温度まで昇温度後に、最終焼成温度で保持してもよい。保持時間は、例えば、30分〜3時間程度であってよい。
【0057】
予備焼成工程(I)及び本焼成工程(II)は、通常、不活性ガス中で行われる。不活性ガスとしては、特に限定されず、ヘリウム、アルゴン、窒素等が挙げられるが、アルゴンを用いるのが好ましい。
【0058】
グラファイトシートの密度は、例えば、0.2〜1.6g/cm
3、好ましくは0.3〜1.5g/cm
3である。0.2g/cm
3以上であれば、グラファイトシートが層間剥離しにくいなどの観点から好ましい。また、1.6g/cm
3以下であれば、グラファイトシートの柔軟性が優れ、発熱源や放熱部材などの固体と積層させる際に、グラファイトシートと固体との間に空隙が生じにくく、積層面の熱抵抗を低減できるなどの観点から好ましい。
【0059】
グラファイトシート表面の、直径0.1mm以上の突起欠陥の数は、好ましくは3個/50cm
2以下(例えば、0個/50cm
2〜3個/50cm
2)である。表面の突起欠陥の数は、後述の実施例に記載の方法により評価することができる。
【0060】
尚、ポリイミドフィルムを焼成して得られたグラファイトシートは、圧延ローラ等で挟み込んで圧延処理をしてもよい。圧延処理によって、焼成後のグラファイトシートの膨れで生じた厚みムラを小さくできる。また、圧延処理によって、焼成後のグラファイトシートの熱伝導性を高めることができる。尚、圧延処理方法は特に限定されず、従来公知の方法に従ってよい。
【0061】
本発明のグラファイトシートは、放熱部材[例えば、電子機器(例えば、スマートフォン等)の放熱部材(例えば、層間熱接合材料等)]等の用途に使用することができる。
【実施例】
【0062】
次に、実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら限定されるものではなく、多くの変形が本発明の技術的思想内で当分野において通常の知識を有する者により可能である。
【0063】
[ポリイミドフィルム中の無機粒子の分散径の評価]
株式会社キーエンス社製のマイクロスコープVHX−2000を用い、50cm角のポリイミドフィルム中に存在する無機粒子の最大分散粒子径を透過モードにて観察し、粒子径が15μm以上の粒子の個数を読み取った。
【0064】
[ポリイミドフィルム中の無機粒子量の評価]
ブルカーAXS株式会社製の蛍光X線S2Rangerを用い、無機粒子に含まれるリンのKα線のエネルギー量からリン酸水素カルシウム添加量を評価した。
【0065】
[ポリイミドフィルムに添加する無機粒子の評価]
株式会社堀場製作所社製のレーザー回析/散乱式粒度分布測定装置LA−910を用い、極性溶媒に分散させた試料を測定、解析した結果から粒子径範囲、平均粒子径、粒子径0.5〜2.5μmの粒子の全粒子中に対する占有率を読み取った。
【0066】
[ポリイミドフィルムの厚み、グラファイトシートの厚みの評価]
Mitutoyo社製ライトマチック(Series318)を使用して測定した。
【0067】
[グラファイトシートの局所的な過度の発泡(膨れ)による表面突起欠陥]
株式会社キーエンス社製のマイクロスコープVHX−2000を用い、50cm
2のグラファイトシートの表面を観察し、Φ(直径)0.1mm以上のサイズの突起欠陥を以下の評価基準で評価した。グラファイトシートの表面突起による欠陥は好ましくは0個/50cm
2であるが、3個/50cm
2以下であれば良好と評価した。
良好(○):3個/50cm
2以下
不良(×):3個/50cm
2超過
【0068】
[グラファイトシートの密度]
測定方法:アルキメデス法
測定装置:(株)島津製作所製 電子分析天秤 AUX−120
測定温度:25℃
浸清液:水
【0069】
実施例1
[ポリアミック酸合成例]
ピロメリット酸二無水物(PMDA)(分子量218.12)/3,3’,4、4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)(分子量294.22)/パラフェニレンジアミン(PPD)(分子量108.14)/4,4’−ジアミノジフェニルエーテル(ODA)(分子量200.24)を、モル比で65/35/20/80の割合で用意し、DMAc(N,N−ジメチルアセトアミド)中20重量%溶液にして重合し、3500poiseのポリアミド酸溶液を得た。
【0070】
[ポリイミドフィルムの製膜]
平均粒子径0.87μm、粒子径0.5〜2.5μmの粒子が全粒子中81.5体積%のリン酸水素カルシウムのN,N−ジメチルアセトアミドスラリー(スラリー中、リン酸水素カルシウムを6重量%含む)を孔の直径が5μmのカットフィルター(日本精線製金属繊維焼結フィルター)に通した後、合成例で得たポリアミック酸溶液に、ポリイミドを形成したときにポリイミド樹脂1重量当たりリン酸水素カルシウムが0.10重量%となるように前記スラリーを添加し、十分攪拌、分散させた。このポリアミック酸溶液に無水酢酸(分子量102.09)とβ−ピコリンからなる転化剤をポリアミック酸に対し、それぞれ2.0モル当量の割合での混合、攪拌した。得られた混合物を、口金より回転する65℃のステンレス製ドラム上にキャストし、自己支持性を有するゲルフィルムを得た。このゲルフィルムをドラムから引き剥がし、その両端を把持し、加熱炉にて250℃×30秒、400℃×30秒、550℃×30秒処理し、厚さ75μmのポリイミドフィルムを得た。
【0071】
[グラファイト化]
上記で得られたポリイミドフィルムを幅250mm×600mmの寸法に切断し、グラファイト製の円筒形の有低保持容器にフィルム面を立てて入れた。続いてアルゴンガス中で3℃/分で1000℃まで昇温させて1時間保持し(予備焼成工程)、更に2800℃まで3℃/分で昇温させて1時間保持して(本焼成工程)グラファイト化を行い、グラファイト化シートを得た。
【0072】
実施例2
厚みが100μmになるようにドラムの回転速度、ゲルフィルムの搬送速度(製膜速度)を調整した以外は実施例1と同様にして、ポリイミドフィルムを得た。得られたポリイミドフィルムを実施例1と同様にグラファイト化し、グラファイトシートを得た。
【0073】
実施例3〜10
表1に示す組成とし、表1に示す厚みとなるようにドラムの回転速度、ゲルフィルムの搬送速度を調整した以外は実施例1と同様にして、ポリイミドフィルムを得た。得られたポリイミドフィルムを実施例1と同様にグラファイト化し、グラファイトシートを得た。
【0074】
参考例1
リン酸水素カルシウムのN,N−ジメチルアセトアミドスラリーを5μmカットフィルターに通さずにポリアミック酸溶液に添加すること以外は実施例10と同様にして、ポリイミドフィルムを得た。このポリイミドフィルムを実施例10と同様にして焼成し、グラファイトシートを得た。
【0075】
比較例1
無機粒子を添加しなかった以外は実施例10と同様にして、ポリイミドフィルム得た。このポリイミドフィルムを実施例10と同様にして焼成し、グラファイトシートを得た。
【0076】
実施例1〜10、参考例1及び比較例1で得られたポリイミドフィルムの物性を表1に、グラファイトシートの物性を表2に示す。
【0077】
【表1】
【0078】
【表2】
【0079】
表2に示すとおり、実施例1〜10で得られたグラファイトシートは、表面の突起欠陥が3個/50cm
2以下で、外観に優れていた。また、実施例1〜10で得られたグラファイトシートは、目視で確認できる凹凸が表面になく、平滑なものであった。
【0080】
一方、参考例1については、フィルム中に含まれる粒子径15μm以上の無機粒子の影響で部分的に過度に発泡することでグラファイトシートの表面に突起欠陥が発生し、外観が優れていなかった。
これらの結果から、無機粒子のスラリーを、カットフィルターを用いて濾過してからポリアミド酸に添加することにより、無機粒子の凝集を抑制することができ、得られるポリイミドフィルムは粒子径15μm以上の無機粒子を含まないものとなることが確認された。そして、このようなポリイミドフィルムを用いることで、外観上優れたグラファイトシートが得られることを確認できた。
また、比較例1のようにポリイミドフィルムにフィラーを添加しなかった場合、得られたグラファイトシートは、目視で確認できる凹凸が表面にあり、平滑ではなかった。
【0081】
実施例11
実施例1で得られた75μm厚のポリイミドフィルムを幅250mm×600mmの寸法に切断し、グラファイト製の円筒形の有低保持容器にフィルム面を立てて入れた。続いてアルゴンガス中で3℃/分で1000℃まで昇温させて1時間保持し、更に2800℃まで6℃/分で昇温させて1時間保持してグラファイト化を行い、グラファイトシートを得た。
【0082】
実施例12〜21
表3に示したモノマー組成、厚みのポリイミドフィルムをそれぞれ表3に示した条件でグラファイト化を行い、グラファイトシートを得た。
表3に示すとおり、実施例11〜21で得られたグラファイトシートは、表面の突起欠陥が3個/50cm
2以下であり、外観に優れていた。また、実施例11〜21で得られたグラファイトシートは、目視で確認できる凹凸が表面になく、平滑なものであった。
【0083】
【表3】