特許第6853637号(P6853637)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6853637
(24)【登録日】2021年3月16日
(45)【発行日】2021年3月31日
(54)【発明の名称】減衰弁およびシリンダ装置
(51)【国際特許分類】
   F16K 17/04 20060101AFI20210322BHJP
   F16F 9/46 20060101ALI20210322BHJP
   F16F 9/34 20060101ALI20210322BHJP
   F16K 17/06 20060101ALI20210322BHJP
   F16K 31/06 20060101ALI20210322BHJP
   F16K 17/10 20060101ALI20210322BHJP
【FI】
   F16K17/04 Z
   F16F9/46
   F16F9/34
   F16K17/04 D
   F16K17/06 A
   F16K17/06 C
   F16K31/06 305Z
   F16K31/06 310C
   F16K17/10
【請求項の数】4
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2016-176299(P2016-176299)
(22)【出願日】2016年9月9日
(65)【公開番号】特開2018-40465(P2018-40465A)
(43)【公開日】2018年3月15日
【審査請求日】2019年6月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000929
【氏名又は名称】KYB株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100122323
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 憲
(74)【代理人】
【識別番号】100067367
【弁理士】
【氏名又は名称】天野 泉
(72)【発明者】
【氏名】小川 義博
(72)【発明者】
【氏名】鳥海 拓弥
(72)【発明者】
【氏名】村田 充
【審査官】 西井 香織
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−074154(JP,A)
【文献】 特表2007−514896(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16K 17/04
F16F 9/34
F16F 9/46
F16K 17/06
F16K 17/10
F16K 31/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
減衰力調整通路と、
前記減衰力調整通路に並列に設けられるフェール通路と、
前記減衰力調整通路と前記フェール通路との下流に接続される下流通路と、
前記減衰力調整通路に設けたリリーフ弁と、
前記フェール通路に設けたノーマルオープンの開閉弁と、
通電時に前記リリーフ弁の開弁圧を調節するとともに前記開閉弁を閉じるソレノイドと、
前記下流通路に設けたオリフィスとを備えた
ことを特徴とする減衰弁。
【請求項2】
中空部を有するハウジングを備え、
前記リリーフ弁は、前記中空部に挿入されて前記減衰力調整通路を有する筒状の第一スリーブと、前記第一スリーブ内に軸方向へ移動可能に収容されて前記第一スリーブに設けた弁座に着座可能な弁体を有する第一スプールと、前記中空部内に収容されて前記弁体を前記弁座に着座させる方向へ前記第一スプールを附勢するばねとを有し、
前記開閉弁は、前記中空部に前記第一スリーブと直列に挿入されて少なくとも前記フェール通路の一部を有する筒状の第二スリーブと、前記第二スリーブ内に収容されて前記第二スリーブに軸方向へ移動可能に案内される第二スプールとを有し、
前記第二スリーブは、前記ハウジングに対する軸方向位置を位置決める位置決め部と前記ハウジングに固定される固定部と、前記第二スリーブの前記位置決め部から前記固定部までの範囲外の位置に前記第二スプールが摺動自在に挿入されるスプール孔とを有し、
前記ソレノイドは、第二スプールを軸方向へ移動させて前記開閉弁を開閉させるとともに、前記第二スプールを介して前記第一スプールに推力を与えて前記リリーフ弁の開弁圧を調節する
ことを特徴とする請求項1に記載の減衰弁。
【請求項3】
前記フェール通路に液体の流れに抵抗を与えるフェール弁を備えた
ことを特徴とする請求項1または2に記載の減衰弁。
【請求項4】
シリンダと、
前記シリンダ内に摺動自在に挿入されるピストンと、
前記シリンダ内に挿入されて前記ピストンに連結されるロッドと、
前記シリンダ内に前記ピストンで区画したロッド側室とピストン側室と、
タンクと、
前記ロッド側室と前記ピストン側室とを連通する第一通路に設けられて前記第一通路を開閉する第一アンロード弁と、
前記ピストン側室と前記タンクとを連通する第二通路に設けられて前記第二通路を開閉する第二アンロード弁と、
前記ピストン側室から前記ロッド側室へ向かう流れのみを許容する整流通路と、
前記タンクから前記ピストン側室へ向かう流れのみを許容する吸込通路と、
減衰力調整通路と、
前記減衰力調整通路に並列に設けられるフェール通路と、
前記減衰力調整通路と前記フェール通路との下流に接続される下流通路と、
前記減衰力調整通路に設けたリリーフ弁と、
前記フェール通路に設けたノーマルオープンの開閉弁と、
通電時に前記リリーフ弁の開弁圧を調節するとともに前記開閉弁を閉じるソレノイドと、
前記下流通路に設けたオリフィスとを備え、
前記減衰力調整通路と前記フェール通路の上流が前記ロッド側室へ接続され、前記下流通路が前記タンクに接続される
ことを特徴とするシリンダ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、減衰弁およびシリンダ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
減衰力調整可能な減衰弁としては、たとえば、ハウジング内にリリーフ弁として機能する筒状の弁座体と、弁座体内に摺動自在に挿入される弁体と切換弁と、弁体を弁座体側へ附勢するスプリングと、弁体と切換弁に推力を与える比例ソレノイドとを備えるものがある。
【0003】
この切換弁は、流路を開閉するようになっており、比例ソレノイドで切換弁を開状態と閉状態とに切換でき、切換弁を介して弁体に比例ソレノイドの推力を作用させて弁体が弁座から離座する開弁圧を調節できるようになっている(たとえば、特許文献1参照)。
【0004】
そして、この減衰弁は、鉄道車両の車体振動を抑制するダンパに使用されており、ダンパのロッド側室とリザーバとを連通する減衰力制御回路の途中に設けられ、前述の開弁圧を比例ソレノイドで制御してダンパが発生する減衰力を調整する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−074154号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
この従来の減衰弁にあっては、リリーフ弁で減衰力を制御するのであるが、開弁時においてロッド側室の圧力変動等によって弁体が高周波で振動する発振を生じやすい傾向がある。
【0007】
弁体が発振すると、ダンパが発生する減衰力の波形に乱れが生じてしまい、減衰力調整により車体の制振制御を行う際に制御性が悪化するだけでなく、減衰力の急変に起因して異音が発生して車体内で異音が知覚されて乗客に不快感を与えてしまう可能性がある。
【0008】
そこで、本発明は、前記不具合を改善するために創案されたものであって、その目的は、減衰弁の発振を防止でき、減衰力波形に乱れを生じさせない減衰弁および減衰弁を適用したシリンダ装置の提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の減衰弁にあっては、並列に設けられる減衰力調整通路とフェール通路と、減衰力調整通路とフェール通路の下流に接続される下流通路と、減衰力調整通路に設けたリリーフ弁と、フェール通路に設けたノーマルオープンの開閉弁と、通電時にリリーフ弁の開弁圧を調節するとともに開閉弁を閉じるソレノイドと、下流通路に設けたオリフィスとを備える。このように構成された減衰弁では、リリーフ弁の下流にオリフィスが設けられており、オリフィスは、リリーフ弁の弁体の急峻な開閉動作を妨げて動作を緩慢にするダンピング作用を呈する。
【0010】
請求項2の減衰弁は、中空部を有するハウジングと、中空部に直列に挿入される第一スリーブおよび第二スリーブと、第一スリーブ内に収容される第一スプールと、第二スリーブ内に収容される第二スプールとを備え、第一スプールと第一スプールを附勢するばねでリリーフ弁を構成し、第二スリーブと第二スプールで開閉弁を構成している。また、第二スリーブがハウジングに対する軸方向位置を位置決める位置決め部とハウジングに固定される固定部と、位置決め部から固定部までの範囲外に設けたスプール孔とを備えている。このように減衰弁を構成すると、減衰弁の加工が容易となり、第一スプールおよび第二スプールの円滑な作動が実現可能となる。
【0011】
また、請求項3の減衰弁では、フェール通路に液体の流れに抵抗を与えるフェール弁を備えている。このように構成された減衰弁では、ソレノイドへの電流供給が途絶えるフェール時にオリフィスだけでなくフェール弁でも液体の流れに抵抗を与えるので、フェール時の減衰力特性を所望する通りにチューニングでき、フェール時に狙い通りの減衰力特性を発揮できる。
【0012】
さらに、請求項4のシリンダ装置では、ピストンによって内部がロッド側室とピストン側室とに区画されるシリンダと、タンクと、ロッド側室とピストン側室とを連通する第一通路に設けられた第一アンロード弁と、ピストン側室とタンクとを連通する第二通路に設けられた第二アンロード弁と、ピストン側室からロッド側室へ向かう流れのみを許容する整流通路と、タンクからピストン側室へ向かう流れのみを許容する吸込通路と、並列に設けられる減衰力調整通路とフェール通路と、減衰力調整通路とフェール通路の下流に接続される下流通路と、減衰力調整通路に設けたリリーフ弁と、フェール通路に設けたノーマルオープンの開閉弁と、通電時にリリーフ弁の開弁圧を調節するとともに開閉弁を閉じるソレノイドと、下流通路に設けたオリフィスとを備えている。このように構成されたシリンダ装置によれば、正常時には、減衰力調整可能な両効きのダンパ或いは片効きのセミアクティブダンパとして機能し、フェール時にはパッシブダンパとして機能できる。
【発明の効果】
【0013】
本発明の減衰弁およびシリンダ装置によれば、減衰弁の発振を防止でき、減衰力波形に乱れも生じなくなる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】一実施の形態における減衰弁を備えたシリンダ装置の液圧回路図である。
図2】一実施の形態における減衰弁を備えたシリンダ装置の減衰力特性を示した図である。
図3】一実施の形態における減衰弁を備えたシリンダ装置の一変形例における液圧回路図である。
図4】具体的な減衰弁の断面図である。
図5】具体的な減衰弁の一変形例の一部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図に示した実施の形態に基づき、本発明を説明する。一実施の形態における減衰弁DVは、基本的には、図1に示すように、並列に設けた減衰力調整通路TPとフェール通路FPと、減衰力調整通路TPとフェール通路FPの下流に接続される下流通路DPと、減衰力調整通路TPに設けたリリーフ弁RVと、フェール通路FPに設けたノーマルオープンの開閉弁OVと、通電時にリリーフ弁RVの開弁圧を調節するとともに開閉弁OVを閉じるソレノイドSolと、下流通路DPに設けたオリフィスOとを備えて構成されており、本例では、シリンダ装置Cに適用されている。
【0016】
シリンダ装置Cは、シリンダ1と、シリンダ1内に摺動自在に挿入されるピストン2と、シリンダ1内に挿入されてピストン2に連結されるロッド3と、シリンダ1内にピストン2で区画したロッド側室4とピストン側室5と、タンク6と、ロッド側室4とピストン側室5とを連通する第一通路7の途中に設けた第一アンロード弁8と、ピストン側室5とタンク6とを連通する第二通路9の途中に設けた第二アンロード弁10と、ピストン側室5からロッド側室4へ向かう流れのみを許容する整流通路11と、タンク6からピストン側室5へ向かう流れのみを許容する吸込通路12と、減衰弁DVとを備えており、所謂片ロッド型のシリンダ装置として構成されている。減衰弁DVは、シリンダ装置Cにおけるロッド側室4とタンク6との間に設けられており、シリンダ1内からタンク6へ排出される液体の流れに抵抗を与える。
【0017】
また、ロッド側室4とピストン側室5には液体として作動油が充填されるとともに、タンク6には、作動油のほかに気体が充填されている。なお、タンク6内は、特に、気体を圧縮して充填して加圧状態とする必要は無い。また、シリンダ装置Cは、図示はしないが、ロッド3が鉄道車両の台車と車体の一方に、シリンダ1が台車と車体の他方に連結されて、台車と車体との間に介装される。なお、シリンダ装置Cは、片ロッド型に設定されているので、両ロッド型のシリンダ装置と比較してストローク長を確保しやすく、シリンダ装置Cの全長が短くなって、鉄道車両への搭載性が向上する。また、シリンダ装置Cの作動媒体である液体は、本例では作動油とされているが、シリンダ装置Cの使用環境により水や水溶液等、他の液体の利用も可能である。
【0018】
以下、減衰弁DVおよびシリンダ装置Cの各部について詳細に説明する。シリンダ1は筒状であって、その図1中右端は蓋13によって閉塞され、図1中左端には環状のロッドガイド14が取り付けられている。また、前記ロッドガイド14内には、シリンダ1内に移動自在に挿入されるロッド3が摺動自在に挿入されている。このロッド3は、一端をシリンダ1外へ突出させており、シリンダ1内の他端をシリンダ1内に摺動自在に挿入されているピストン2に連結している。
【0019】
なお、ロッドガイド14の外周とシリンダ1との間は図示を省略したシール部材によってシールされており、これによりシリンダ1内は密閉状態に維持されている。そして、シリンダ1内にピストン2によって区画されるロッド側室4とピストン側室5には、前述のように液体として作動油が充填されている。
【0020】
また、このシリンダ装置Cの場合、ロッド3の断面積をピストン2の断面積の二分の一にして、ピストン2のロッド側室4側の受圧面積がピストン側室5側の受圧面積の二分の一となるようになっており、シリンダ装置Cの伸長時と収縮時とでシリンダ1内から減衰弁DVを通じてタンク6へ排出される流量が等しくなるようになっている。
【0021】
戻って、ロッド3の図1中左端とシリンダ1の右端を閉塞する蓋13とには、図示しない取付部を備えており、このシリンダ装置Cを鉄道車両における車体と台車との間に介装できる。
【0022】
そして、本例のシリンダ装置Cにあっては、ロッド側室4とピストン側室5とが第一通路7によって連通されており、この第一通路7の途中には、第一アンロード弁8が設けられている。この第一通路7は、シリンダ1外でロッド側室4とピストン側室5とを連通しているが、ピストン2に設けられてもよい。
【0023】
第一アンロード弁8は、電磁開閉弁とされており、ロッド側室4とピストン側室5とを連通する連通ポジションとロッド側室4とピストン側室5との連通を絶つ遮断ポジションとを備えており、通電時には第一通路7を開放してロッド側室4とピストン側室5とを連通する。
【0024】
また、本例のシリンダ装置Cにあっては、ピストン側室5とタンク6とが第二通路9によって連通されており、この第二通路9の途中には、第二アンロード弁10が設けられている。第二アンロード弁10は、電磁開閉弁とされており、ピストン側室5とタンク6とを連通する連通ポジションと、ピストン側室5とタンク6との連通を絶つ遮断ポジションとを備えており、通電時には第二通路9を開放してピストン側室5とタンク6とを連通する。
【0025】
また、図1に示すように、本例のシリンダ装置Cは、ピストン側室5からロッド側室4へ向かう流れのみを許容する整流通路11を備えている。なお、整流通路11は、ピストン2以外に設けてもよい。さらに、本例のシリンダ装置Cは、タンク6からピストン側室5へ向かう流れのみを許容する吸込通路12を備えている。
【0026】
したがって、この本例のシリンダ装置Cにあっては、第一アンロード弁8および第二アンロード弁10が遮断ポジションを採る場合にあって、外力を受けて伸長すると、圧縮されるロッド側室4から作動油が減衰弁DVを通じてタンク6へ押し出され、拡大するピストン側室5には吸込通路12を通じてタンク6から作動油が供給される。したがって、この伸長作動時には、シリンダ装置Cは、減衰弁DVで通過する作動油の流れに抵抗を与えて、ロッド側室4内の圧力を上昇せしめて伸長に対抗する減衰力を発揮する。なお、この場合、減衰弁DVを通過する作動油の流量は、ピストン2の断面積からロッド3の断面積を引いた値にピストン2の移動量を乗じた量になる。
【0027】
反対に、第一アンロード弁8および第二アンロード弁10が遮断ポジションを採る場合にあって、外力を受けてシリンダ装置Cが収縮すると、整流通路11を介して圧縮されるピストン側室5からロッド側室4へ作動油が移動する。また、シリンダ装置Cの収縮時には、ロッド3がシリンダ1内に侵入するため、ロッド3がシリンダ1内に侵入する体積分の作動油がシリンダ1内で過剰となって減衰弁DVを通じてタンク6へ排出される。この収縮作動時には、シリンダ装置Cは、減衰弁DVで通過する作動油の流れに抵抗を与えて、シリンダ1内の圧力を上昇せしめて収縮に対抗する減衰力を発揮する。なお、この場合、減衰弁DVを通過する作動油量は、ロッド3の断面積にピストン2の移動量を乗じた量になる。ここで、ロッド3の断面積は、ピストン2の断面積の二分の一に設定されているので、シリンダ装置Cが伸長しても収縮してもピストン2の移動量が同じであれば、減衰弁DVを通過する作動油量は等しくなる。よって、シリンダ装置Cは、伸縮両側でピストン2の移動速度が同じであれば、等しい減衰力を発揮できる。
【0028】
なお、第一アンロード弁8も第二アンロード弁10も非通電時に遮断ポジションを採るので、電力供給不能な失陥時には、本例のシリンダ装置Cは、前述のように伸縮に対して必ず減衰力を発揮するので、パッシブなダンパとして機能する。
【0029】
また、本例のシリンダ装置Cにあっては、第一アンロード弁8を連通ポジションとして第二アンロード弁10を遮断ポジションとする場合、ロッド側室4とピストン側室5が第一通路7を介して連通されるがピストン側室5とタンク6との連通が絶たれる。この状態でシリンダ装置Cが外力を受けて収縮すると、ロッド3がシリンダ1内に侵入する体積分の作動油がシリンダ1から減衰弁DVへ排出され、前記同様に収縮に対抗する減衰力を発揮する。他方、この状態で、シリンダ装置Cが伸長すると、縮小するロッド側室4から拡大するピストン側室5へ第一通路7を介して作動油が移動し、ロッド3がシリンダ1から退出する体積分の作動油が吸込通路12を介してタンク6からシリンダ1内へ供給される。よって、この場合、作動油が減衰弁DVへ流れないので、シリンダ装置Cは減衰力を発揮しない。
【0030】
さらに、本例のシリンダ装置Cにあっては、第一アンロード弁8を遮断ポジションとして第二アンロード弁10を連通ポジションとする場合、ロッド側室4とピストン側室5の連通が絶たれるが、ピストン側室5とタンク6とが第二通路9を介して連通される。この状態でシリンダ装置Cが外力を受けて伸長すると、ロッド側室4の縮小に伴ってロッド側室4から作動油が減衰弁DVへ排出され、前記同様に伸長に対抗する減衰力を発揮する。他方、この状態で、シリンダ装置Cが収縮すると、縮小するピストン側室5から拡大するロッド側室4へ整流通路11を介して作動油が移動し、ロッド3がシリンダ1内へ侵入する体積分の作動油が第二通路9を介してピストン側室5からタンク6内へ排出される。よって、この場合、作動油が減衰弁DVへ流れないので、シリンダ装置Cは減衰力を発揮しない。このように、このシリンダ装置Cでは、伸長と収縮のいずれか一方を選択して減衰力を発揮する片利きのダンパとして機能できるようになっている。
【0031】
なお、このシリンダ装置C1の場合、シリンダ1内に混入したエアをロッド側室4からタンク6へ排出できるようにエア抜き用オリフィス15が設けられている。
【0032】
つづいて、減衰弁DVは、図1に示すように、並列に設けた減衰力調整通路TPとフェール通路FPと、下流通路DPと、リリーフ弁RVと、開閉弁OVと、ソレノイドSolと、下流通路DPに設けたオリフィスOとを備えて構成される。本例では、減衰弁DVは、前述したようにロッド側室4とタンク6との間に設けられている。具体的には、並列に設けた減衰力調整通路TPとフェール通路FPとはロッド側室4と下流通路DPに接続される。下流通路DPは、一端が減衰力調整通路TPとフェール通路FPに接続され、他端がタンク6に接続されている。よって、ロッド側室4とタンク6は、減衰力調整通路TP、フェール通路FPおよび下流通路DPを介して連通されている。
【0033】
リリーフ弁RVは、減衰力調整通路TPに設けられており、開閉弁OVは、フェール通路FPに設けられている。開閉弁OVは、ばねによって開弁するように附勢されるとともに、ソレノイドSolから推力を受けると閉弁する電磁開閉弁とされている。また、開閉弁OVは、ソレノイドSolの非通電時にはばねによって附勢されてフェール通路FPを連通し、ソレノイドSolへ所定量の電流が供給されるとフェール通路FPを遮断するノーマルオープンの開閉弁とされている。
【0034】
リリーフ弁RVは、開閉弁OVを介してソレノイドSolからの推力で駆動されるようになっており、ソレノイドSolの非通電時にはばねによって附勢されて開弁圧を最大とするようになっている。また、ソレノイドSolに通電して開閉弁OVを遮断ポジションとする際に、リリーフ弁RVには開閉弁OVを介してソレノイドSolの推力が前記のばねに対抗する力として作用するようになっている。よって、ソレノイドSolに通電すると通電量に応じてリリーフ弁RVの開弁圧の調整が可能で、通電量が大きくなるとリリーフ弁RVの開弁圧が小さくなり、反対にソレノイドSolへ通電しない状態では、リリーフ弁RVの開弁圧が最大となる。このように本例の減衰弁DVでは、リリーフ弁RVの開弁圧の調整と開閉弁OVの開閉を一つのソレノイドSolで行える。
【0035】
また、本例では、フェール通路FPには、フェール弁FVとフェール弁FVに並列されるフェール用オリフィスAが設けられている。このフェール弁FVは、フェール通路FPが開閉弁OVによって連通された状態では、上流側の圧力が所定圧となると開弁するようになっており、その開弁圧はリリーフ弁RVの最大開弁圧より小さい値に設定されている。
【0036】
よって、この減衰弁DVは、正常に機能できる正常時においてソレノイドSolに通電する際には、開閉弁OVを遮断してリリーフ弁RVの開弁圧を調節でき、シリンダ装置Cの伸縮する際のロッド側室4内の圧力を制御できる。下流通路DPの途中には、オリフィスOが設けられており、オリフィスOが作動油の流れに抵抗を与える。よって、リリーフ弁RVで制御するロッド側室4の圧力は、リリーフ弁RVの開弁圧にオリフィスOの抵抗分がオーバーライドとして重畳される。しかしながら、オリフィスOに起因する圧力オーバーライドは、リリーフ弁RVによるロッド側室4の圧力の制御性に重大な影響を与えないように配慮されている。
【0037】
減衰弁DVは、以上のように構成され、シリンダ装置Cが伸長する際に、ソレノイドSolへ与える電流量に応じてリリーフ弁RVの開弁圧が調節され、これによりロッド側室4内の圧力が制御されてシリンダ装置Cが発生する伸長を抑制する減衰力が制御される。また、シリンダ装置Cが収縮する際には、ソレノイドSolへ与える電流量に応じてリリーフ弁RVの開弁圧が調節され、これによりロッド側室4およびロッド側室4内の圧力が制御されて、シリンダ装置Cが発生する収縮を抑制する減衰力が制御される。
【0038】
また、ソレノイドSolへ通電できなくなるフェール時(非正常時)には、開閉弁OVが開弁してフェール通路FPを連通し、フェール弁FVが有効とされて、フェール弁FVとオリフィスOによって、シリンダ装置Cの伸縮時における減衰力を発揮する。
【0039】
よって、本例の減衰弁DVを備えたシリンダ装置Cの正常時における減衰力特性は、ピストン速度が低速域にある場合には、図2中線aで示すように、エア抜き用オリフィス15の二乗特性が表れ、ピストン速度が上昇してリリーフ弁RVが開弁するようになると図2中線bで示すように、リリーフ弁RVの開弁圧にオリフィスOの圧力損失分であるオーバーライドが重畳される特性が表れる。なお、オリフィスOのオーバーライドは、ピストン速度が高速になるほど大きくなるので、リリーフ弁RVの開弁後はピストン速度の上昇に応じて減衰係数が徐々に大きくなっていく特性となる。なお、前述の減衰力特性はリリーフ弁RVの開弁圧を変更しない場合の特性であり、リリーフ弁RVの開弁圧の調節によってシリンダ装置Cの減衰力を高低調節できる。
【0040】
そして、このように構成されたシリンダ装置Cは、第一アンロード弁8および第二アンロード弁10を遮断ポジションとする場合、外力によって伸縮するとリリーフ弁RVおよびオリフィスOを介して作動油がシリンダ1内からタンク6へ排出される。そして、開閉弁OVへ供給する通電量を調節してリリーフ弁RVの開弁圧を調節すると、シリンダ装置Cが発生する減衰力を調節できる。よって、正常時において第一アンロード弁8および第二アンロード弁10を遮断ポジションとする場合、シリンダ装置Cは、伸縮両側で減衰力調整可能なダンパとして機能できる。
【0041】
また、第一アンロード弁8を連通ポジションとして第二アンロード弁10を遮断ポジションとする場合および第一アンロード弁8を遮断ポジションとして第二アンロード弁10を連通ポジションとする場合には、前述したように、伸長或いは収縮のいずれか一方に対してのみシリンダ装置Cが減衰力を発揮するモードとなる。よって、たとえば、このモードを選択すれば、減衰力を発揮する方向が鉄道車両の台車の振動で車体を加振してしまう方向である場合、そのような方向には減衰力を出さないようにシリンダ装置Cを片効きのダンパとすることができる。よって、このシリンダ装置Cは、正常時では、カルノップ理論に基づくセミアクティブ制御を容易に実現でき、セミアクティブダンパとして機能できる。
【0042】
他方、何らかの理由によりシリンダ装置Cへ電力供給が途絶えるフェール時には、第一アンロード弁8および第二アンロード弁10が遮断ポジションを採り、前述のようにシリンダ装置Cはパッシブダンパとして機能する。この状態では、シリンダ装置Cが伸縮すると必ずシリンダ1内から作動油が排出される。この時、開閉弁OVが開弁するので排出された作動油は、フェール弁FV、フェール用オリフィスAとオリフィスOを通過してタンク6へ流入する。したがって、このフェール時にあっては、フェール弁FV、フェール用オリフィスAとオリフィスOが作動油の流れに抵抗を与えて、シリンダ装置Cは減衰力を発揮する。なお、シリンダ装置Cの伸縮速度が高速となり、ロッド側室4の圧力がリリーフ弁RVの開弁圧を上回るとリリーフ弁RVも開弁して作動油の通過を許容するようになる。
【0043】
このようにシリンダ装置Cは、正常時には、減衰力調整可能な両効きのダンパ或いは片効きのセミアクティブダンパとして機能し、フェール時にはパッシブダンパとして機能できる。
【0044】
そして、本発明の減衰弁DVにあっては、リリーフ弁RVの下流にオリフィスOが設けられている。オリフィスOは、オリフィスOを通過しようとする作動油の流量が高周波で変動する場合、作動油の流量の変化を妨げる特性を備えている。ここで、リリーフ弁RVの弁体が急峻に開閉動作する場合、下流のオリフィスOを通過しようとする作動油の流量が高周波で振動的に変化するため、オリフィスOが流量の変動を抑制するように機能する。そして、リリーフ弁RVが開く場合には、リリーフ弁RVの弁体に作用する背圧が増加し、逆に、リリーフ弁RVが閉じる場合には、リリーフ弁RVの弁体に作用する背圧が減少して、リリーフ弁RVの急峻な開閉を妨げる。このように、オリフィスOは、リリーフ弁RVの弁体の急峻な開閉動作を妨げて動作を緩慢にするダンピング作用を呈する。したがって、本発明の減衰弁DVでは、リリーフ弁RVでシリンダ装置Cの減衰力を制御している際にロッド側室4に圧力変動が生じても、オリフィスOが発揮するダンピング作用によってリリーフ弁RVの高周波振動を抑制できる。よって、本発明の減衰弁DVによれば、リリーフ弁RVの発振を抑制でき、シリンダ装置Cが発生する減衰力に波形の乱れを生じさせず、減衰力調整による車体の制振制御の制御性が向上し、減衰力の急変を回避して異音の発生も阻止できる。
【0045】
また、本例の減衰弁DVでは、フェール通路FPに作動油の流れに抵抗を与えるフェール弁FVとフェール用オリフィスAとを備えている。このように構成された減衰弁DVでは、ソレノイドSolへの電流供給が途絶えるフェール時にオリフィスOだけでなくフェール弁FVとフェール用オリフィスAでも作動油の流れに抵抗を与える。オリフィスOの特性は、正常時に有効に機能するリリーフ弁RVによる制御性に影響を与えないような特性に設定されるが、フェール弁FVについては、その特性を他の弁とは独立して設定可能である。よって、本例の減衰弁DVによれば、フェール時の減衰力特性を所望する通りにチューニングでき、フェール時に狙い通りの減衰力特性を発揮できる。なお、開閉弁OVの連通ポジションにおいて、フェール通路FPを流れる作動油の流れに抵抗を与えるようにして、フェール弁FVの機能を開閉弁OVに統合してもよい。また、フェール時にオリフィスOで減衰力を発揮する場合には、フェール弁FVを廃止してもよい。フェール弁FVは、リリーフ弁または調圧弁とされる。また、図4に示すように、オリフィス付のリリーフ弁とされてもよいし、オリフィスを別体としてもよい。
【0046】
さらに、本例のシリンダ装置Cでは、ピストン2によって内部がロッド側室4とピストン側室5とに区画されるシリンダ1と、タンク6と、ロッド側室4とピストン側室5とを連通する第一通路7に設けられた第一アンロード弁8と、ピストン側室5とタンク6とを連通する第二通路9に設けられた第二アンロード弁10と、ピストン側室5からロッド側室4へ向かう流れのみを許容する整流通路11と、タンク6からピストン側室5へ向かう流れのみを許容する吸込通路12と、減衰弁DVとを備えている。このように構成されたシリンダ装置Cによれば、正常時には、減衰力調整可能な両効きのダンパ或いは片効きのセミアクティブダンパとして機能し、フェール時にはパッシブダンパとして機能できる。
【0047】
なお、シリンダ装置Cに、図3に示すように、タンク6から作動油を吸込んでロッド側室4へ供給するポンプPを設けると、シリンダ装置Cを積極的に伸縮駆動できアクチュエータとして機能させ得る。また、このようにシリンダ装置Cは第一アンロード弁8と第二アンロード弁10の開閉の切換えにより、伸長或いは収縮でのみ推力を発揮する片効きのアクチュエータダンパとして機能できる。よって、このシリンダ装置Cでは、アクチュエータとセミアクティブダンパの状態の切換えにポンプPの停止と駆動の切換を要しない。
【0048】
前述したところでは、減衰弁DVを原理的に説明したが、以下に、図4に示した具体的な構造を備えた減衰弁DVについて説明する。具体的な減衰弁DVは、図4に示すように、中空部21を有するハウジングHと、中空部21に直列に挿入される第一スリーブ22および第二スリーブ23と、第一スリーブ22内に収容される第一スプール24と、第二スリーブ23内に収容される第二スプール25とを備えて構成されている。
【0049】
以下、減衰弁DVの各部について詳細に説明する。まず、ハウジングHは、本例では、第一ハウジングH1と、第一ハウジングH1の側部に装着される第二ハウジングH2とを備えている。そして、中空部21は、第一ハウジングH1に設けられており、第一ハウジングH1の外部から開口して、この場合、第一ハウジングH1の軸方向両端から外部へ通じている。この中空部21は、本例では、第一ハウジングH1の両端から開口しているが、一端側から開口して袋孔としてもよい。
【0050】
また、第一ハウジングH1に設けた中空部21は、図4中右端側から順に、ばね受27が装着されるばね受装着部21aと、第一スリーブ22および第二スリーブ23が収容されるスリーブ収容部21bと、第二スリーブ23が装着される第二スリーブ装着部21cとを備えている。
【0051】
ばね受装着部21aは、図4中、第一ハウジングH1の右端に形成されており、図4中左方に螺子部21dが設けられ、この螺子部21dよりも図4中右方の内径を大径にしてあり、中空部21の一部をなしている。
【0052】
スリーブ収容部21bは、螺子部21dの図4中左隣に内径を螺子部21dよりも大径にして形成される先端部21eと、先端部21eの図4中左隣に内径を先端部21eよりも大径にして形成される中間部21fと、中間部21fの図4中左隣に内径を中間部21fよりも大径にして形成される後端部21gとで構成され、中空部21の一部をなしている。スリーブ収容部21bの先端とばね受装着部21aの後端との間には、段部21hが形成されている。第二スリーブ装着部21cは、図4中、第一ハウジングH1の左端に形成されており、中空部21の一部をなしている。
【0053】
また、第一ハウジングH1は、本例では、外周側から径方向に開口して先端部21eに連通する第一ポート21iと、外周側から径方向に開口して中間部21fに連通する第二ポート21jと、外周側から径方向に開口して後端部21gに連通する第三ポート21kと、外周から内周へ開口して途中が通路29に通じる第四ポート21mと、を備える。なお、図示はしないが、第一ポート21iは、シリンダ装置Cにおけるタンク6に接続され、第二ポート21jは、シリンダ装置Cにおけるロッド側室4に接続される。また、第一ハウジングH1の第一ポート21iの内周にはオリフィスOを備えたプラグ50が装着されている。
【0054】
さらに、第一ハウジングH1の側部に装着される第二ハウジングH2は、第一ハウジングH1と協働してハウジングHを形成している。第二ハウジングH2は、図4中左端の外方から中空部21に並列に開口する孔としての弁孔28と、内周から開口して弁孔28へ通じる通路29とを備えている。なお、本例では、第二ハウジングH2の図4中右端から開口する孔で通路29の一部を形成しているので、この孔の図4中右端開口端は栓33で閉塞されている。また、第二ハウジングH2には、内周から開口して弁孔28へ通じる第五ポート31とが設けられている。
【0055】
第二ハウジングH2を第一ハウジングH1に装着すると、通路29と第二ポート21jが対向してこれらが連通され、第五ポート31と第三ポート21kが対向してこれらが連通される。なお、第一ハウジングH1と第二ハウジングH2とは別体ではなく一部品とされてもよい。
【0056】
弁孔28の内径は、通路29における弁孔28へ接続する開口端の内径よりも大径とされており、弁孔28内には、この通路29の弁孔28への開口端を弁座34とし、この弁座34に離着座する弁体35が収容されている。さらに、弁孔28内には、弁体35を弁座34側へ向けて附勢するばね16が収容されるとともに、弁孔28の左端側にはばね受として機能する蓋37が螺着されており、弁孔28が閉塞されている。ばね16は、蓋37と弁体35との間に圧縮状態で挟持されており、蓋37の弁孔28に対する装着位置を調節すると弁体35を附勢するばね16の附勢力を調節できるようになっている。そして、これら弁座34、弁体35、ばね16および蓋37によりフェール弁FVが構成されている。
【0057】
また、弁体35には、フェール用オリフィスAが設けられており、このフェール用オリフィスAは、フェール弁FVに並列されており、フェール弁FVが閉弁状態でも通路29を連通する。
【0058】
したがって、第四ポート21mを通じて外方から作動油が導入され、通路29内の圧力がフェール弁FVの開弁圧を上回ると、弁体35が弁座34から後退して開弁し、通路29を第五ポート31へ連通させるようになっている。
【0059】
第一スリーブ22は、図4中右端側である先端側の外径を図4中左端側である後端側の外径よりも小径として段付き筒状とされており、外周には軸方向に並べて形成した二つの環状溝22a,22bを備えている。
【0060】
また、第一スリーブ22は、先端側内周に設けた内周大径部22cと、後端側の内周に設けられた内周大径部22cより小径の内周小径部22dとを備えている。さらに、第一スリーブ22は、環状溝22aから開口して内周大径部22cに通じる通孔22eと、環状溝22bから開口して内周小径部22dに通じる通孔22fと、後端から開口して内周大径部22cと内周小径部22dとの間に形成される段部22gに開口する通孔22hを備える。
【0061】
なお、第一スリーブ22の外周であって、環状溝22aと環状溝22bとの間に周方向に沿ってシールリング38が装着され、環状溝22bよりも後端側に周方向に沿ってシールリング39が装着されている。
【0062】
このように構成された第一スリーブ22は、小径側から第一ハウジングH1の中空部21内に挿入され、小径部分が先端部21e内に嵌合され、大径部分が第一ハウジングH1における中間部21f内に嵌合されて、中空部21におけるスリーブ収容部21b内に収容される。すると、シールリング38,39が第一ハウジングH1のスリーブ収容部21bの内周に密着して環状溝22aと環状溝22bとの間がシールされる。また、環状溝22aは、第一ハウジングH1に設けた第一ポート21iに対向してこれに連通され、環状溝22bは、第一ハウジングH1に設けた第二ポート21jに対向してこれに連通される。よって、通路29は、は、第二ポート21j、環状溝22bおよび通孔22fを介して第一スリーブ22内に通じる。また、第一ポート21iは、環状溝22aおよび通孔22eを介して第一スリーブ22内に通じ、さらには、第四ポート21mに通じる。
【0063】
第二スリーブ23は、図4中右端側である先端側の外径を図4中左端側である後端側の外径よりも小径として段付き筒状とされており、後端側に設けられて図4中左方へ立ち上がる筒状のカラー23aと、カラー23aの後端外周に設けたフランジ23bと、小径部分と大径部分との間に設けた環状溝23cと、カラー23aの外周に設けた固定部としての螺子部23dとを備えている。
【0064】
また、第二スリーブ23を筒状としてその内方にスプール孔Shが形成され、このスプール孔Shには、途中に内周を大径とする内周大径部23eが設けられている。さらに、第二スリーブ23は、環状溝23cから開口して内周大径部23eに通じる通孔23fを備えている。なお、第二スリーブ23の外周であって、環状溝23cに対して軸方向で前後にそれぞれ周方向に沿ってシールリング40,41が装着されている。
【0065】
このように構成された第二スリーブ23は、第一ハウジングH1の図4中左端面である後端面へフランジ23bが当接して軸方向に位置決めされて、第一ハウジングH1の中空部21の開口端に装着される。具体的には、第二スリーブ23は、固定部としての螺子部23dを中空部21に形成の第二スリーブ装着部21cに螺子結合させて、第一ハウジングH1に固定される。すると、第二スリーブ23は、小径部分が第一ハウジングH1における中間部21f内に嵌合され、大径部分が第一ハウジングH1における後端部21g内に嵌合されて、中空部21内に収容される。第二スリーブ23の図4中右端には、凹部23gが設けられており、凹部23gは、第一スリーブ22の図4中左端である後端に開口する通孔22hに対向し、通孔22hを介して第一スリーブ22内の内周大径部22cに通じるようになっている。また、凹部23gにおける内径は、第一スリーブ22の外径よりも小径で第二スリーブ23の内径よりも大径とされ、第二スリーブ23の図4中右端の端面が第一スリーブ22の後端面に対向する。よって、第二スリーブ23は、第一ハウジングH1に装着されると、中空部21内に収容された第一スリーブ22の抜け止めとして機能する。
【0066】
第二スリーブ23が中空部21内に前記のように収容されると、シールリング40,41が第一ハウジングH1のスリーブ収容部21bの内周に密着して環状溝23cが第二スリーブ23の外周を介して他所に連通されないようになっている。また、環状溝23cは、第一ハウジングH1に設けた第三ポート21kに対向してこれに連通される。よって、第二ハウジングH2の第五ポート31は、第三ポート21k、環状溝23cおよび通孔23fを介して第二スリーブ23内に通じる。
【0067】
なお、フランジ23bは、孔としての弁孔28の図1中左端の開口端の一部を塞ぐようになっており、これにより弁孔28に装着された蓋37の第二ハウジングH2からの脱落を阻止できる。よって、第二ハウジングH2に設けたフェール弁FVが第二ハウジングH2から抜け出てしまう恐れがない。
【0068】
また、本例では、第二スリーブ23が第一ハウジングH1に軸方向に位置決めされて装着された状態において、第一スリーブ22の軸方向の長さは、第二スリーブ23の図4中右端の端面と中空部21内の段部21hまでの軸方向の長さよりも短くなるように設定されている。よって、第二スリーブ23を第一ハウジングH1に装着しても、第一スリーブ22が第二スリーブ23と段部21hとで圧縮状態で挟持されず、第一スリーブ22および第二スリーブ23が軸力を受けないようになっている。なお、第一スリーブ22の軸方向の長さを、第二スリーブ23の図4中右端の端面と中空部21内の段部21hまでの軸方向の長さと等しくなるように設定されてもよい。このようにしても、第一スリーブ22および第二スリーブ23に軸力が負荷されるのを阻止できる。
【0069】
また、第二スリーブ23は、本例では、フランジ23bが第一ハウジングH1に当接して軸方向に位置決めされており、位置決め部がフランジ23bとされている。そして、第二スリーブ23の固定部は、本例では、螺子部23dとされており、スプール孔Shは、第二スリーブ23に対して、位置決め部としてのフランジ23bから固定部としての螺子部23dとの間の範囲外に設けられている。この場合、フランジ23b(位置決め部)と螺子部23d(固定部)とスプール孔Shが軸方向に直列配置されているので、スプール孔Shは、第二スリーブ23に対してフランジ3b(位置決め部)と螺子部23d(固定部)とから軸方向にずれた位置に設ければよい。
【0070】
このようにすると、第二スリーブ23のスプール孔Shの部位に圧縮荷重も引張荷重も負荷されないようにできる。つまり、位置決め部は、第二スリーブ23を軸方向に位置決めし、固定部は第二スリーブ23を第一ハウジングH1に固定する部分であるから、第二スリーブ23の両者間には圧縮荷重或いは引張荷重が作用する場合がある。しかしながら、前述のようにスプール孔Shを配置すると第二スリーブ23のスプール孔Shが設けられる部位には何ら荷重が負荷されず、スプール孔Shの変形を阻止できる。
【0071】
図4においては、第二スリーブ23が第一ハウジングH1に螺子締結されているが、第二スリーブ装着部21cの螺子溝および螺子部23dを廃止してフランジ23bとハウジングHをボルト締結して第二スリーブ23を第一ハウジングH1に固定してもよい。この場合、位置決め部および固定部はフランジ23bとなり、スプール孔Shは、やはり、第二スリーブ23に対して位置決め部から固定部までの範囲外に設けられる。このようにしても、第二スリーブ23のスプール孔Shが設けられる部位に対して軸方向の荷重の作用を阻止できる。
【0072】
また、図5に示すように、第二スリーブ装着部21cの螺子溝および第二スリーブ23のカラー23aの外周の螺子部23dを廃止して、フランジ23bの外周に筒状の内周螺子部60を設け、第一ハウジングH1の外周に前記内周螺子部60を螺着させて第二スリーブ23を第一ハウジングH1に固定するようにしてもよい。この場合、フランジ23bが第一ハウジングH1の端部に当接して第二スリーブ23が軸方向に位置決めされるので、第二スリーブ23における位置決め部はフランジ23bとなり、固定部は内周螺子部60となる。スプール孔Shは、第二スリーブ23上では、位置決め部のフランジ23bと固定部の内周螺子部60との間の範囲外に設けられる。このようにしても、第二スリーブ23のスプール孔Shが設けられる部位に対して軸方向の荷重の作用を阻止できる。なお、フランジ23bの外周に内周螺子部60を設ける場合、スプール孔Shを径方向から見て内周螺子部と重なる位置に設けても、第二スリーブ23上では位置決め部のフランジ23bと内周螺子部60との間の範囲外に設けられるので、第二スリーブ23のスプール孔Shが設けられる部位に対して軸方向の荷重の作用を阻止できる。
【0073】
第一スプール24は、第一スリーブ22内に収容されて軸方向への移動が案内されるようになっている。詳細には、第一スプール24は、第一スリーブ22の内周小径部22dに摺動自在に挿入される摺動軸部24aと、摺動軸部24aの図4中右端から右方へ延びる小径軸部24bと、小径軸部24bの図4中右端に設けた円錐台状の弁体24cとを備えている。
【0074】
摺動軸部24aは、外径が小径軸部24bよりも大径とされていて、第一スリーブ22の内周小径部22dに摺接しており、第一スリーブ22によって第一スプール24の軸方向の移動が軸ぶれなく案内されるようになっている。小径軸部24bは、外径が内周小径部22dの内径よりも小径であり、第一スリーブ22に設けた通孔22fに対向している。また、第一スプール24は、第一スリーブ22に対して軸方向に移動するが、摺動軸部24aが通孔22fの開口を完全に閉塞しないようになっている。
【0075】
弁体24cは、外径が内周小径部22dの内径よりも大径とされており、内周小径部22dの図4中右端の開口縁を弁座42として、第一スプール24の軸方向の移動によって当該弁座42に離着座可能となっている。
【0076】
また、第一ハウジングH1の中空部21におけるばね受装着部21aには、ばね受27が装着されている。ばね受27は、有底筒状であって外周には、螺子部27aが設けられており、この螺子部27aを第一ハウジングH1の中空部21に設けた螺子部21dに螺合して第一ハウジングH1に装着できるようになっている。また、ばね受27は、螺子部27aを避ける外周位置に周方向に沿って装着されるシールリング43を備えている。ばね受27を第一ハウジングH1に前記のように装着すると、シールリング43が中空部21におけるばね受装着部21aの内周に密着し、ばね受27によって第一ハウジングH1の中空部21の図4中右端が液密に閉鎖される。
【0077】
このばね受27と第一スプール24の弁体24cの図4中右端との間には、ばねSが介装されており、このばねSの附勢力により第一スプール24は弁体24cが弁座42に着座する方向へ附勢される。このように、弁体24cを備える第一スプール24、弁座42を有する第一スリーブ22およびばねSによってリリーフ弁RVが構成されている。そして、ばねS以外に第一スプール24に外力が作用しない状態では、弁体24cが弁座42に押し付けられて閉弁して、リリーフ弁RVの開弁圧が最大となる。そして、ばねSの附勢力に対抗して弁体24cを開弁する方向に第一スプール24を押す推力を与え、この推力を調節すると弁体24cの弁座42への押付力が調節され、リリーフ弁RVの開弁圧を調節できる。
【0078】
リリーフ弁RVが開弁すると、第四ポート21m、環状溝22b、通孔22fおよび内周小径部22d内で構成される減衰力調整通路TPが開放される。他方、弁体24cが弁座42に着座してリリーフ弁RVが閉弁すると、内周小径部22d内と内周大径部22cとの接続が絶たれて、減衰力調整通路TPが遮断状態となる。なお、本例では、下流通路DPは、内周大径部22c内、通孔22e、環状溝22aおよび第一ポート21iで構成されており、前述したとおり、下流通路DPには第一ポート21iに装着されたプラグ50によりオリフィスOが設けられている。また、前述の通り、第一ポート21iは、シリンダ装置Cにおけるタンク6に接続され、第二ポート21jは、シリンダ装置Cにおけるロッド側室4に接続される。よって、リリーフ弁RVが設置される減衰力調整通路TPの上流は、図1に示したシリンダ装置Cと同様に、ロッド側室4に連通され、下流通路DPの下流はタンク6に連通されていて、リリーフ弁RVの開弁圧の調整でシリンダ装置Cの減衰力を調整できる。
【0079】
なお、ばねSと第一スプール24との間には、弁体側ばね受44が介装されている。本例では、ばねSがコイルばねとされていて、弁体側ばね受44の図4中右端がばねSの内周に遊嵌されていて、ばねSと第一スプール24の軸芯のずれを弁体側ばね受44で吸収できるようになっている。これにより、ばねSの附勢力が径方向で偏りなく第一スプール24に作用するので、第一スプール24の開弁圧がばらつきなく安定する。
【0080】
第二スプール25は、第二スリーブ23内に収容されて軸方向への移動が案内される。また、図4中右端が第一スプール24の図4中左端へ当接できるようになっている。詳細には、第二スプール25は、第二スリーブ23のスプール孔Shに摺動自在に挿入される摺動軸部25aと、摺動軸部25aの図4中右端から右方へ延びる円柱状の弁部25bと、弁部25bの図4中右端に設けられて軸方向へ突出する凸部25cとを備えている。
【0081】
摺動軸部25aは、第二スリーブ23のスプール孔Shに摺接しており、第二スリーブ23によって第二スプール25の軸方向の移動が軸ぶれなく案内されるようになっている。
【0082】
弁部25bは、外径が第二スリーブ23に設けたスプール孔Shに摺接する径に設定されており、その右端がスプール孔Shにおける内周大径部23eよりも右方に配置されると、第二スリーブ23に設けた通孔23fとスプール孔Shとでなる流路の連通を絶つようになっている。
【0083】
また、摺動軸部25aの図4中左端である後端には、フランジ25dが設けられていて、フランジ25dの図4中右端と第二スリーブ23との間には、コイルばね45が介装されている。このコイルばね45によって第二スプール25は図4中左方へ向けて附勢されている。コイルばね45の附勢力以外に外力が作用しない状態では、第二スプール25は、図4に示すように、弁部25bが第二スリーブ23に対して内周大径部23e内に位置決めされ、通孔23fとスプール孔Shとでなる流路を連通するようになっている。
【0084】
さらに、第二スリーブ23の図4中左方には、ソレノイドSolが装着されており、ソレノイドSolへの通電によって、ソレノイドSolのプランジャ51で第二スプール25に図4中右方向の推力を与えられるようになっている。また、ソレノイドSolの通電量の調節により、第二スプール25に与える推力の調節が可能である。この推力は、コイルばね45に対抗する向きの力を第二スプール25に与えるので、第二スプール25をコイルばね45の附勢力に抗して弁部25bの先端を第二スリーブ23内の内周大径部23eよりも右方へ移動させ得る。よって、ソレノイドSolの通電の有無によって、第二スプール25を軸方向へ移動せしめて、前記流路を連通および遮断できるようになっている。このように、第二スリーブ23、第二スプール25およびコイルばね45は、前記流路を開閉するノーマルオープンに設定される開閉弁OVを構成しており、この開閉弁OVは、ソレノイドSolへの通電によって前記流路を開閉する電磁開閉弁とされている。
【0085】
開閉弁OVが開弁すると、通路29、弁孔28、第五ポート31、第三ポート21k、環状溝23c、通孔23f、スプール孔Sh、凹部23gおよび通孔22hで構成されるフェール通路FPを連通状態とする。フェール通路FPは、第一スリーブ22の内周大径部2cに通じているので、フェール通路FPは、内周大径部22cで減衰力調整通路TPに合流して、ともに下流通路DPに通じる。フェール通路FPが連通状態におかれると、弁孔28内に設けたフェール弁FVも開弁可能な状態におかれ、第四ポート21mから導入される圧力がフェール弁FVの開弁圧に達するとフェール弁FVが開弁して、フェール通路FPおよび下流通路DPを通じてロッド側室4の圧力をタンク6へ排出できるようになる。また、開閉弁OVが閉弁する状態では、通孔23fとスプール孔Shとでなる流路の接続が絶たれて、フェール通路FPが遮断状態となる。
【0086】
また、ソレノイドSolの通電量によって第二スプール25へ与える推力を調整でき、第二スプール25で前記流路を閉弁してさらに第二スプール25を第一スプール24に当接させると、第二スプール25を介してソレノイドSolの推力を第一スプール24にも伝達できる。
【0087】
このように、第一スプール24にばねSと対抗する方向のソレノイドSolの推力を作用させられるので、ソレノイドSolへの通電量の調節によって第一スプール24へ作用させる推力を調節して、リリーフ弁RVの開弁圧を調節できる。
【0088】
このように、減衰弁DVは、シリンダ装置Cの適用により減衰力発生減として機能できる。そして、本発明における減衰弁DVでは、リリーフ弁RVの下流にオリフィスOが設けられている。オリフィスOは、オリフィスOを通過しようとする作動油の流量が高周波で変動する場合、作動油の流量の変化を妨げる特性を備えている。ここで、リリーフ弁RVの弁体が急峻に開閉動作する場合、下流のオリフィスOを通過しようとする作動油の流量が高周波で振動的に変化するため、オリフィスOが流量の変動を抑制するように機能する。そして、リリーフ弁RVが開く場合には、リリーフ弁RVの弁体に作用する背圧が増加し、逆に、リリーフ弁RVが閉じる場合には、リリーフ弁RVの弁体に作用する背圧が減少して、リリーフ弁RVの急峻な開閉を妨げる。このように、オリフィスOは、リリーフ弁RVの弁体の急峻な開閉動作を妨げて動作を緩慢にするダンピング作用を呈する。したがって、具体的な減衰弁DVにあっても、リリーフ弁RVでシリンダ装置Cの減衰力を制御している際にロッド側室4に圧力変動が生じても、オリフィスOが発揮するダンピング作用によってリリーフ弁RVの高周波振動を抑制できる。よって、この具体的な減衰弁DVによれば、リリーフ弁RVの発振を抑制でき、シリンダ装置Cが発生する減衰力に波形の乱れを生じさせず、減衰力調整による車体の制振制御の制御性が向上し、減衰力の急変を回避して異音の発生も阻止できる。
【0089】
また、具体的な減衰弁DVにあっても、フェール通路FPに作動油の流れに抵抗を与えるフェール弁FVを備えているので、フェール時の減衰力特性を所望する通りにチューニングでき、フェール時に狙い通りの減衰力特性を発揮できる。
【0090】
また、具体的な減衰弁DVでは、中空部21を有する第一ハウジングH1(ハウジングH)と、中空部21に直列に挿入される第一スリーブ22および第二スリーブ23と、第一スリーブ22内に収容される第一スプール24と、第二スリーブ23内に収容される第二スプール25とを備えている。また、第二スリーブ23が第一ハウジングH1(ハウジングH)に対する軸方向位置を位置決めるフランジ23b(位置決め部)と第一ハウジングH1(ハウジングH)に固定される螺子部23d(固定部)と、フランジ23b(位置決め部)から螺子部23d(固定部)までの範囲外に設けたスプール孔Shとを備えている。このように減衰弁DVを構成すると、第二スリーブ23のスプール孔Shが設けられる部位への軸方向の荷重の負荷が阻止され、中空部21内に収容される第一スリーブ22にも軸方向の引張荷重や圧縮荷重を負荷させずにこれらを抜け止めできる。よって、第一スリーブ22および第二スリーブ23の第一スプール24および第二スプール25が収容される内周形状に歪みが生じない。これにより、第一スリーブ22、第二スリーブ23および第一ハウジングH1の寸法の高精度な管理が不要となり、第一スリーブ22および第二スリーブ23の内周を整形する加工を施さずとも、第一スプール24および第二スプール25の軸方向への移動が保障される。以上より、減衰弁DVによれば、加工が容易でかつ第一スプール24および第二スプール25の円滑な作動が実現可能となる。
【0091】
また、本例における減衰弁DVでは、スプール孔Shが第二スリーブ23に対してフランジ23b(位置決め部)と螺子部23d(固定部)より第一ハウジングH1(ハウジングH)内側へ設けられている。このように減衰弁DVを構成すると、第二スリーブ23のスプール孔Shが設けられる部位を第一ハウジングH1(ハウジングH)内に収容でき、減衰弁DVの全長も短くできる。
【0092】
なお、本例における減衰弁DVでは、第一スリーブ22の軸方向の長さは、第二スリーブ23の端面と中空部21内の段部21hまでの軸方向長さよりも短くなるように設定されている。よって、第二スリーブ23を第一ハウジングH1に装着しても、第一スリーブ22が第二スリーブ23と段部21hとで圧縮状態で挟持されず、第一スリーブ22および第二スリーブ23への軸力が作用しない状態を確実に実現できる。また、第一スリーブ22、第二スリーブ23および第一ハウジングH1に対する寸法管理もより容易となる。
【0093】
そして、本例における減衰弁DVでは、位置決め部は、第二スリーブ23の外周に設けたフランジ23bであって、フランジ23bが第一ハウジングH1(ハウジングH)の端面に当接して第二スリーブ23が第一ハウジングH1(ハウジングH)に対して位置決めされる。このように減衰弁DVを構成すると、簡単な構成でハウジングHに対して第二スリーブ23を位置決めできる。また、フランジ23bをボルトで第一ハウジングH1に固定する場合、フランジ23bを位置決め部としても固定部としても機能させられ、第二スリーブ23の全長ひいては減衰弁DVの全長を短くでき、第二スリーブ23および第一スリーブ22へトルクが負荷されずに済み、両者の内周形状の歪みを一層効果的に阻止できる。
【0094】
また、オリフィスOは、減衰力調整通路TPとフェール通路FPからタンク6に到る下流通路DPに設けられればよいので、ハウジングHとは別個独立に設けてもよい。
【0095】
以上、本発明の好ましい実施の形態を詳細に説明したが、特許請求の範囲から逸脱しない限り、改造、変形、および変更が可能である。
【符号の説明】
【0096】
1・・・シリンダ、2・・・ピストン、3・・・ロッド、4・・・ロッド側室、5・・・ピストン側室、6・・・タンク、7・・・第一通路、8・・・第一アンロード弁、9・・・第二通路、10・・・第二アンロード弁、11・・・整流通路、12・・・吸込通路、21・・・中空部、22・・・第一スリーブ、223・・・第二スリーブ、23b・・・フランジ(位置決め部、固定部)、23d・・・螺子部(固定部)、24・・・第一スプール、24c・・・弁体、25・・・第二スプール、42・・・弁座、C・・・シリンダ装置、DP・・・下流通路、DV・・・減衰弁、FP・・・フェール通路、FV・・・フェール弁、H・・・ハウジング、O・・・オリフィス、OV・・・開閉弁、RV・・・リリーフ弁、Sh・・・スプール孔、Sol・・・ソレノイド、TP・・・減衰力調整通路
図1
図2
図3
図4
図5