特許第6853640号(P6853640)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6853640光触媒脱臭材料再生方法、光触媒脱臭材料再生システム、および再生済み光触媒脱臭材料製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6853640
(24)【登録日】2021年3月16日
(45)【発行日】2021年3月31日
(54)【発明の名称】光触媒脱臭材料再生方法、光触媒脱臭材料再生システム、および再生済み光触媒脱臭材料製造方法
(51)【国際特許分類】
   B01J 38/62 20060101AFI20210322BHJP
   B01J 35/02 20060101ALI20210322BHJP
   B01J 38/00 20060101ALI20210322BHJP
   B01J 38/48 20060101ALI20210322BHJP
   B01D 53/86 20060101ALI20210322BHJP
   B01J 21/20 20060101ALN20210322BHJP
【FI】
   B01J38/62ZAB
   B01J35/02 J
   B01J38/00 Z
   B01J38/48 A
   B01D53/86 110
   B01D53/86 280
   !B01J21/20 A
【請求項の数】9
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2016-183249(P2016-183249)
(22)【出願日】2016年9月20日
(65)【公開番号】特開2018-47411(P2018-47411A)
(43)【公開日】2018年3月29日
【審査請求日】2019年9月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】591269712
【氏名又は名称】アンデス電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100119264
【弁理士】
【氏名又は名称】富沢 知成
(72)【発明者】
【氏名】工藤 友宇子
(72)【発明者】
【氏名】工藤 武志
【審査官】 安齋 美佐子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−000301(JP,A)
【文献】 特開2004−041275(JP,A)
【文献】 特開2000−285714(JP,A)
【文献】 特開平02−038498(JP,A)
【文献】 特開2001−121000(JP,A)
【文献】 特開2009−233634(JP,A)
【文献】 特開2004−089912(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 21/00−38/74
B01D 53/86−53/90,53/94−53/96
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
空気浄化に用いられ、除去されなかった物質の堆積により性能低下した光触媒脱臭材料を再生する方法であって、酸性水溶液を用いて光触媒脱臭材料を洗浄する洗浄過程と、洗浄後の光触媒脱臭材料に光触媒が励起する波長の光を照射する照射過程とを備え、
該酸性水溶液にはクエン酸、乳酸、酢酸、酒石酸、またはシュウ酸の少なくともいずれかの有機酸が含有され、
該光触媒脱臭材料の性能を低下させる堆積物質がタバコ煙であり、
下記<E>記載の性能維持率が85%以上である
ことを特徴とする、光触媒脱臭材料再生方法。
<E> 性能維持率は、反応容器内に本方法による再生処理を施した光触媒脱臭材料試料を設置し、所定量のアセトアルデヒドを注入後ブラックライトを照射した場合の、該アセトアルデヒド濃度が5%以下となる所要時間の増加程度を示す、
初期の所要時間A/再生処理後の所要時間B×100
により算出される値。
【請求項2】
前記酸性水溶液の濃度が0.1重量%以上50重量%以下であることを特徴とする、請求項1に記載の光触媒脱臭材料再生方法。
【請求項3】
前記洗浄過程後に、前記光触媒脱臭材料を水で洗浄し乾燥する水洗乾燥過程が設けられていることを特徴とする、請求項1、2のいずれかに記載の光触媒脱臭材料再生方法。
【請求項4】
前記洗浄過程では、酸性水溶液の加熱または超音波発生を用いながら前記光触媒脱臭材料を洗浄することを特徴とする、請求項1、2、3のいずれかに記載の光触媒脱臭材料再生方法。
【請求項5】
前記光触媒脱臭材料が光触媒単体、または、これに少なくとも吸着剤もしくは助触媒のいずれかが加えられた複合材料であることを特徴とする、請求項1、2、3、4のいずれかに記載の光触媒脱臭材料再生方法。
【請求項6】
空気浄化に用いられ、除去されなかった物質の堆積により性能低下した光触媒脱臭材料を再生するシステムであって、酸性水溶液を用いて光触媒脱臭材料を洗浄する洗浄部と、洗浄後の光触媒脱臭材料に光触媒が励起する波長の光を照射する照射部とを備え、
該酸性水溶液にはクエン酸、乳酸、酢酸、酒石酸、またはシュウ酸の少なくともいずれかの有機酸が含有され、
該光触媒脱臭材料の性能を低下させる堆積物質がタバコ煙であり、
下記<E’>記載の性能維持率85%以上である
ことを特徴とする、光触媒脱臭材料再生システム。
<E’> 性能維持率は、反応容器内に本システムによる再生処理を施した光触媒脱臭材料試料を設置し、所定量のアセトアルデヒドを注入後ブラックライトを照射した場合の、該アセトアルデヒド濃度が5%以下となる所要時間の増加程度を示す、
初期の所要時間A/再生処理後の所要時間B×100
により算出される値。
【請求項7】
前記洗浄部と照射部との間に、前記光触媒脱臭材料を水で洗浄し乾燥する水洗乾燥部が設けられていることを特徴とする、請求項6に記載の光触媒脱臭材料再生システム。
【請求項8】
前記洗浄部には酸性水溶液の加熱手段または超音波発生手段が備えられていることを特徴とする、請求項6、7のいずれかに記載の光触媒脱臭材料再生システム。
【請求項9】
空気浄化に用いられ、除去されなかった物質の堆積により性能低下した光触媒脱臭材料を元に再生済み材料を製造する方法であって、酸性水溶液を用いて光触媒脱臭材料を洗浄する洗浄過程と、洗浄後の光触媒脱臭材料に光触媒が励起する波長の光を照射する照射過程とを備え、
該酸性水溶液にはクエン酸、乳酸、酢酸、酒石酸、またはシュウ酸の少なくともいずれかの有機酸が含有され、
該光触媒脱臭材料の性能を低下させる堆積物質がタバコ煙であり、
下記<E’>記載の性能維持率85%以上である
ことを特徴とする、再生済み光触媒脱臭材料製造方法。
<E’> 性能維持率は、反応容器内に本方法による再生処理を施した光触媒脱臭材料試料を設置し、所定量のアセトアルデヒドを注入後ブラックライトを照射した場合の、該アセトアルデヒド濃度が5%以下となる所要時間の増加程度を示す、
初期の所要時間A/再生処理後の所要時間B×100
により算出される値。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は光触媒脱臭材料再生方法、光触媒脱臭材料再生システム、および再生済み光触媒脱臭材料製造方法に係り、特に、空気浄化にて使用される光触媒脱臭材料の再生方法等に関するものである。
【背景技術】
【0002】
空気浄化を目的として光触媒を使用した場合、有機化合物は水と二酸化炭素に分解されるが、難分解性物質(塵埃、高分子化合物、無機化合物等)は光触媒表面に堆積してこれを覆ってしまう。そのために光が光触媒に届かなくなり、光触媒性能が低下する。特にタバコ煙には、難分解性物質でありかつ主要なヤニ成分であるタール、ニコチンが含まれており、喫煙室等の大量のタバコ煙が発生する環境で使用すると、著しく性能が低下してしまう。そのため、光触媒性能を維持するには、表面に堆積した難分解性物質を定期的に洗浄除去することが望ましい。
【0003】
さて、光触媒再生方法については従来、技術的な提案も多くなされている。たとえば後掲特許文献1には、大気中に浮遊する高分子化合物および塵埃などに覆われた光触媒表面の汚染物質を除去する方法として、紫外線を照射して再生する方法が、また特許文献2には、酸化剤と界面活性剤で洗浄して再生する方法が、また特許文献3にはアルカリ洗浄液で洗浄して再生する方法が、それぞれ開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特公平06−44976号公報「光触媒の再生方法及び光触媒による脱臭装置」
【特許文献2】特開平02−169040号公報「光触媒の再生方法」
【特許文献3】特開2004−321863号公報「光触媒フィルターの洗浄方法及び洗浄用キット」
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら紫外線を照射して再生する方法では、光触媒表面に堆積している難分解性物質を完全に除去することは困難である。また、酸化剤と界面活性剤で洗浄して再生する方法では、酸化剤の腐食性が強いため、光触媒の基材として金属を用いる場合には洗浄剤として適さない。しかも、酸化剤である過炭酸化合物や塩素酸化合物および界面活性剤は、洗浄する際に光触媒表面に付着して残留するため、光触媒性能が低下してしまう。
【0006】
また、アルカリ洗浄液で再生する方法は、タバコ煙の付着成分を除去することはできるものの、洗浄液に含まれるアルカリ成分が光触媒表面に残留するため、これらが光触媒反応の阻害因子になり、性能が低下してしまう。すなわち、従来技術のいずれの方法も、タバコ煙が吸着して性能が低下した光触媒を再生する方法としては不十分である。
【0007】
そこで本発明が解決しようとする課題は、かかる従来技術の問題点をなくし、タバコ煙などの汚染により性能低下した光触媒脱臭材料を効率よく十分に再生することのできる、光触媒脱臭材料再生方法、光触媒脱臭材料再生システム、および再生済み光触媒脱臭材料製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願発明者は上記課題について検討した結果、酸性水溶液で光触媒脱臭材料を洗浄した後に、光触媒が励起する波長の光を照射することによって解決できることを見出し、これに基づいて本発明を完成するに至った。すなわち、上記課題を解決するための手段として本願で特許請求される発明、もしくは少なくとも開示される発明は、以下の通りである。
【0009】
〔1〕 空気浄化に用いられ、除去されなかった物質の堆積により性能低下した光触媒脱臭材料を再生する方法であって、酸性水溶液を用いて光触媒脱臭材料を洗浄する洗浄過程と、洗浄後の光触媒脱臭材料に光触媒が励起する波長の光を照射する照射過程とを備え、該酸性水溶液にはクエン酸、乳酸、酢酸、酒石酸、またはシュウ酸の少なくともいずれかの有機酸が含有され、該光触媒脱臭材料の性能を低下させる堆積物質がタバコ煙であり、下記<E>記載の性能維持率が85%以上であることを特徴とする、光触媒脱臭材料再生方法。
<E> 性能維持率は、反応容器内に本方法による再生処理を施した光触媒脱臭材料試料を設置し、所定量のアセトアルデヒドを注入後ブラックライトを照射した場合の、該アセトアルデヒド濃度が5%以下となる所要時間の増加程度を示す、
初期の所要時間A/再生処理後の所要時間B×100
により算出される値。
〔2〕 前記酸性水溶液の濃度が0.1重量%以上50重量%以下であることを特徴とする、〔1〕に記載の光触媒脱臭材料再生方法。
【0010】
〔3〕 前記洗浄過程後に、前記光触媒脱臭材料を水で洗浄し乾燥する水洗乾燥過程が設けられていることを特徴とする、〔1〕、〔2〕のいずれかに記載の光触媒脱臭材料再生方法。
〕 前記洗浄過程では、酸性水溶液の加熱または超音波発生を用いながら前記光触媒脱臭材料を洗浄することを特徴とする、〔1〕、〔2〕、[3]のいずれかに記載の光触媒脱臭材料再生方法。
〕 前記光触媒脱臭材料が光触媒単体、または、これに少なくとも吸着剤もしくは助触媒のいずれかが加えられた複合材料であることを特徴とする、〔1〕、[2]、[3]、[4〕のいずれかに記載の光触媒脱臭材料再生方法。
【0011】
〔6〕 空気浄化に用いられ、除去されなかった物質の堆積により性能低下した光触媒脱臭材料を再生するシステムであって、酸性水溶液を用いて光触媒脱臭材料を洗浄する洗浄部と、洗浄後の光触媒脱臭材料に光触媒が励起する波長の光を照射する照射部とを備え、該酸性水溶液にはクエン酸、乳酸、酢酸、酒石酸、またはシュウ酸の少なくともいずれかの有機酸が含有され、該光触媒脱臭材料の性能を低下させる堆積物質がタバコ煙であり、下記<E’>記載の性能維持率85%以上であることを特徴とする、光触媒脱臭材料再生システム。
<E’> 性能維持率は、反応容器内に本システムによる再生処理を施した光触媒脱臭材料試料を設置し、所定量のアセトアルデヒドを注入後ブラックライトを照射した場合の、該アセトアルデヒド濃度が5%以下となる所要時間の増加程度を示す、
初期の所要時間A/再生処理後の所要時間B×100
により算出される値。
〔7〕 前記洗浄部と照射部との間に、前記光触媒脱臭材料を水で洗浄し乾燥する水洗乾燥部が設けられていることを特徴とする、〔6〕に記載の光触媒脱臭材料再生システム。
〔8〕 前記洗浄部には酸性水溶液の加熱手段または超音波発生手段が備えられていることを特徴とする、〔6〕、〔7〕のいずれかに記載の光触媒脱臭材料再生システム。
〔9〕 空気浄化に用いられ、除去されなかった物質の堆積により性能低下した光触媒脱臭材料を元に再生済み材料を製造する方法であって、酸性水溶液を用いて光触媒脱臭材料を洗浄する洗浄過程と、洗浄後の光触媒脱臭材料に光触媒が励起する波長の光を照射する照射過程とを備え、該酸性水溶液にはクエン酸、乳酸、酢酸、酒石酸、またはシュウ酸の少なくともいずれかの有機酸が含有され、該光触媒脱臭材料の性能を低下させる堆積物質がタバコ煙であり、下記<E’>記載の性能維持率85%以上である
ことを特徴とする、再生済み光触媒脱臭材料製造方法。
<E’> 性能維持率は、反応容器内に本方法による再生処理を施した光触媒脱臭材料試料を設置し、所定量のアセトアルデヒドを注入後ブラックライトを照射した場合の、該アセトアルデヒド濃度が5%以下となる所要時間の増加程度を示す、
初期の所要時間A/再生処理後の所要時間B×100
により算出される値。
【発明の効果】
【0012】
本発明の光触媒脱臭材料再生方法、光触媒脱臭材料再生システム、および再生済み光触媒脱臭材料製造方法は上述のように構成されるため、これらによれば、タバコ煙などの汚染により性能低下した光触媒脱臭材料を効率よく十分に再生することができる。従来の、光照射のみでの再生方法では十分な再生効果が得られなかったという問題、また、アルカリ洗浄剤での再生方法ではアルカリ成分の表面残留による触媒活性の失活が生じるという問題はいずれも、本発明によって解決することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の光触媒脱臭材料再生方法の基本構成を示すフロー図である。
図2】本発明の光触媒脱臭材料再生方法の基本構成を示すフロー図である。
図3】本発明の光触媒脱臭材料再生システムの基本構成を示す概念図である。
図4】光触媒脱臭材料再生方法の実施例の構成を示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面により本発明を詳細に説明する。
図1は、本発明の光触媒脱臭材料再生方法の基本構成を示すフロー図である。図示するように本光触媒材料再生方法は、空気浄化に用いられ、除去されなかった物質の堆積により性能低下した、処理対象であるところの光触媒脱臭材料1を再生する方法であって、酸性水溶液2を用いて処理対象光触媒脱臭材料1を浸漬等適宜の方法によって洗浄する洗浄過程P1と、洗浄後の光触媒脱臭材料3に光触媒が励起する波長の光(励起光4)を照射する照射過程P3とを備えることを、基本的な構成とする。なお本発明では、光触媒脱臭材料の性能を低下させる堆積物質として、主にタバコ煙を想定しているが、本発明がそれに限定されるものではない。
【0015】
洗浄過程P1に用いる酸性水溶液2としては、有機酸がより好ましい。一または複数種類の有機酸が含有された酸性水溶液2とすることができる。有機酸としてはたとえば、クエン酸、酢酸、乳酸、酒石酸、グリコール酸、リンゴ酸、シュウ酸、またはグルコン酸の少なくともいずれかを、好適に用いることができ、その中でも特にクエン酸が好ましい。酸性水溶液2中の有機酸は、0.1〜50重量%の濃度範囲で含まれるように調整すればよい。なお、無機酸は、洗浄の際に表面に付着して残留し、光触媒性能が低下するため、使用は推奨されない。
【0016】
かかる構成により本光触媒脱臭材料再生方法では、処理対象光触媒脱臭材料1は、まず洗浄過程P1において酸性水溶液2により洗浄され、洗浄後の光触媒脱臭材料3は、照射過程P3において励起光4が照射されることによって光触媒が励起せしめられる。各過程P1、P3を経ることによって、空気浄化に用いられ、除去されなかった物質の堆積により性能低下した処理対象光触媒脱臭材料1が再生され、再生済み光触媒脱臭材料5が得られる。
【0017】
洗浄過程P1を経た洗浄後の光触媒脱臭材料3では、酸洗浄により除去し得る物質が除去された後も、表面にタバコ煙成分の一部である有機成分が残留している。そこで、洗浄後の光触媒脱臭材料3を照射過程P3に供して励起光4を照射するのだが、これによって、光触媒脱臭材料3の表面に吸着している有機成分が分解され、表面が再生されて、再生済み光触媒脱臭材料5が得られる。
【0018】
光触媒脱臭材料としては、光触媒単体でもよく、また、吸着剤もしくは助触媒等の少なくともいずれかを含有した複合材料であってもよい。光触媒としては、光照射により触媒作用を示す物質であれば、全て用いることができる。たとえば、酸化チタン、酸化タングステン、酸化亜鉛などが挙げられる。
【0019】
図2は、本発明の光触媒脱臭材料再生方法の別の基本構成を示すフロー図である。図示するように本フローは、洗浄過程P1後に、光触媒脱臭材料を水で洗浄し乾燥する水洗乾燥過程P2が設けられている構成とすることができる。つまり、洗浄過程P1における酸性水溶液2による洗浄後、光触媒脱臭材料の表面に残留している酸を除去するために、水で洗浄するものである。使用する水はたとえば、蒸留水や脱イオン水などの純水、水道水などである。水に浸漬することで、光触媒脱臭材料の表面に残留している酸が水中に溶解し、除去される。酸を除去した後の光触媒脱臭材料は乾燥させてから照射過程P3に供する。
【0020】
なお、洗浄過程P1では、処理対象光触媒脱臭材料1が酸性水溶液2に浸漬等されると、処理対象光触媒脱臭材料1に吸着しているタバコ煙の成分が溶出するが、その際に、酸性水溶液2を加熱しながら、または超音波を発生させながら処理することとしてもよい。これにより洗浄力が高まり、洗浄時間を短くなすることができる。
【0021】
図3は、本発明の光触媒脱臭材料再生システムの基本構成を示す概念図である。図示するように本光触媒脱臭材料再生システム100は、酸性水溶液を用いて光触媒脱臭材料を洗浄する洗浄部10と、洗浄後の光触媒脱臭材料に光触媒が励起する波長の光を照射する照射部30とを備えることを、基本的な構成とする。なお、図示するように、洗浄部10と照射部30との間に、光触媒脱臭材料を水で洗浄し乾燥する水洗乾燥部20を設けた構成とすることができる。
【0022】
かかる構成により本光触媒脱臭材料再生システム100では、処理対象の光触媒脱臭材料は洗浄部10において酸性水溶液を用いて洗浄処理され、洗浄処理後の光触媒脱臭材料は照射部30において励起光照射処理され、最終的に再生済み光触媒脱臭材料が得られる。なお、水洗乾燥部20が備えられていることにより、洗浄処理後の光触媒脱臭材料は水で洗浄処理されて酸が除去され、その後乾燥されてから、照射部30に供され、励起光照射処理される。かかる作用により、空気浄化に用いられ除去されなかった物質の堆積により性能低下した光触媒脱臭材料が再生される。
【0023】
なお、本光触媒脱臭材料再生システム100の洗浄部10には、酸性水溶液の加熱手段または超音波発生手段を備えた構成とすることができる。これにより洗浄部10における処理対象光触媒脱臭材料に対する洗浄力が高まり、洗浄時間を短くすることができる。
【0024】
また、空気浄化に用いられ除去されなかった物質の堆積により性能低下した光触媒脱臭材料を元に再生済み材料を製造する方法であって、酸性水溶液を用いて光触媒脱臭材料を洗浄する洗浄過程と、洗浄後の光触媒脱臭材料に光触媒が励起する波長の光を照射する照射過程とを備える再生済み光触媒脱臭材料製造方法も、本発明の範囲内である。
【実施例】
【0025】
図4は、光触媒脱臭材料再生方法の実施例の構成を示すフロー図である。以下、本発明を実施例により説明するが、本発明がこれらに限定されるものではない。
実施例1
光触媒脱臭材料は、シリカ不織布(75mm×75mm)に酸化チタン光触媒と吸着剤を混合した溶液を塗布して成膜したものを使用した。ガラスデシケーターに光触媒脱臭材料を置き、ファンで空間を撹拌しながら、タバコ5本分の煙を発生させ、前記光触媒脱臭材料にタバコ煙を吸着させた。次に、酸性水溶液による洗浄処理として、クエン酸水溶液(2重量%)500gにタバコ煙を吸着させた光触媒脱臭材料を2時間浸漬した。その後、光触媒脱臭材料に残留している酸を除去するため、水500gに15時間浸漬し、すすぎ洗いをして、乾燥機で50℃3時間乾燥した(水洗処理、乾燥処理)。次に、紫外線(ケミカルランプ)を24時間照射した(照射処理)。
【0026】
実施例2
光触媒脱臭材料は、シリカ不織布(75mm×75mm)に酸化チタン光触媒分散液を塗布して成膜したものを使用した。それ以外は実施例1と同様にして、タバコ煙を吸着させた光触媒脱臭材料を洗浄処理等した。
実施例3
実施例1のクエン酸水溶液を、乳酸水溶液(2重量%)にした以外は実施例1と同様にして、タバコ煙が吸着した光触媒脱臭材料を洗浄処理等した。
【0027】
実施例4
実施例1のクエン酸水溶液を、酢酸水溶液(2重量%)にした以外は実施例1と同様にして、タバコ煙が吸着した光触媒脱臭材料を洗浄処理等した。
実施例5
実施例1のクエン酸水溶液を、酒石酸水溶液(2重量%)にした以外は実施例1と同様にして、タバコ煙が吸着した光触媒脱臭材料を洗浄処理等した。
実施例6
実施例1のクエン酸水溶液を、しゅう酸水溶液(2重量%)にした以外は実施例1と同様にして、タバコ煙が吸着した光触媒脱臭材料を洗浄処理等した。
実施例7
光触媒脱臭材料は、金属多孔質体(75mm×75mm)に酸化チタン光触媒分散液を塗布して成膜したものを使用した。それ以外は実施例1と同様にして、タバコ煙を吸着させた光触媒脱臭材料を洗浄処理した。
【0028】
比較例1
実施例1のクエン酸水溶液を、アルカリ洗浄剤(10重量%、横浜油脂工業(株)製シルバーマイルド)にした以外は実施例1と同様にして、タバコ煙が吸着した光触媒脱臭材料を洗浄処理等した。
比較例2
光触媒脱臭材料を、実施例2と同様のものを使用した以外は比較例1と同様にして、タバコ煙が吸着した光触媒脱臭材料を洗浄処理等した。
比較例3
実施例1のクエン酸水溶液を、炭酸ナトリウム水溶液(2重量%)にした以外は実施例1と同様にして、タバコ煙が吸着した光触媒脱臭材料を洗浄処理等した。
比較例4
実施例1のクエン酸水溶液を、塩素系漂白剤(0.2体積%、花王(株)製キッチンハイター)500mlにした以外は実施例1と同様にして、タバコ煙が吸着した光触媒脱臭材料を洗浄処理等した。
【0029】
比較例5
実施例1の紫外線の照射処理を行わない以外は、実施例1と同様にして、タバコ煙が吸着した光触媒脱臭材料を洗浄処理等した。
比較例6
実施例1のタバコ煙が吸着した光触媒脱臭材料を用い、クエン酸水溶液に浸漬する工程(洗浄処理)と水に浸漬する工程(水洗処理)とをいずれも行わずに、紫外線(ケミカルランプ)を24時間照射して、タバコ煙が吸着した光触媒脱臭材料を処理した。
【0030】
上記方法で洗浄した光触媒脱臭材料について、アセトアルデヒドの脱臭性能評価を行った。評価方法は、20Lの反応容器内に試料を設置し、アセトアルデヒド約20ppmを注入後、ブラックライト照射時のアセトアルデヒドの濃度減少を測定した。初期濃度約20ppmから1ppm以下になるまでに要する時間から、性能維持率を算出し、評価した。
【0031】
表1に、各実施例および比較例の評価結果をまとめて示す。ここに示すように、実施例1〜6で洗浄した試料は、いずれも性能維持率85%以上となった。また、基材に金属多孔質体を用いた実施例7においても性能維持率85%以上となり、金属腐食による性能低下は見られなかった。一方、アルカリ性溶液で洗浄した比較例1〜4は、性能維持率が50%以下となった。クエン酸水溶液での洗浄処理は行ったが、紫外線照射処理を行わなかった比較例5は、性能維持率が40%となった。また、洗浄処理および水洗処理を実施せず、紫外線照射処理のみを行った比較例6は、性能維持率が約49%で性能回復が不十分であった。
【0032】
【表1】
【産業上の利用可能性】
【0033】
本発明の光触媒脱臭材料再生方法、光触媒脱臭材料再生システム、および再生済み光触媒脱臭材料製造方法によれば、タバコ煙の汚染により性能低下した光触媒脱臭材料を、効率よく十分に再生することができ、その効果は従来技術の効果に大きく優る。したがって、空気浄化機製造分野、および関連する全分野において、産業上利用性が高い発明である。
【符号の説明】
【0034】
1…処理対象光触媒脱臭材料
2…酸性水溶液
3…洗浄後の光触媒脱臭材料
4…励起光
5…再生済み光触媒脱臭材料
10…洗浄部
20…水洗乾燥部
30…照射部
100…光触媒脱臭材料再生システム
P1…洗浄過程
P2…水洗乾燥過程
P3…照射過程
図1
図2
図3
図4