特許第6853645号(P6853645)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6853645フルブリッジ回路、液体噴射ヘッド、及び液体噴射記録装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6853645
(24)【登録日】2021年3月16日
(45)【発行日】2021年3月31日
(54)【発明の名称】フルブリッジ回路、液体噴射ヘッド、及び液体噴射記録装置
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/045 20060101AFI20210322BHJP
【FI】
   B41J2/045
【請求項の数】12
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2016-195367(P2016-195367)
(22)【出願日】2016年10月3日
(65)【公開番号】特開2018-58227(P2018-58227A)
(43)【公開日】2018年4月12日
【審査請求日】2019年8月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】501167725
【氏名又は名称】エスアイアイ・プリンテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001357
【氏名又は名称】特許業務法人つばさ国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100171251
【弁理士】
【氏名又は名称】篠田 拓也
(74)【代理人】
【識別番号】100142837
【弁理士】
【氏名又は名称】内野 則彰
(74)【代理人】
【識別番号】100166305
【弁理士】
【氏名又は名称】谷川 徹
(72)【発明者】
【氏名】川本 俊司
【審査官】 中村 博之
(56)【参考文献】
【文献】 特開平10−114064(JP,A)
【文献】 特開2016−055513(JP,A)
【文献】 特開2003−025571(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2015/0054872(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01−2/215
H03K 17/66
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
容量性負荷の一端に出力端子が接続され、該出力端子への出力を電源またはグランドに切り替える第1のスイッチと、
前記容量性負荷の他端に出力端子が接続され、該出力端子への出力を電源またはグランドに切り替える第2のスイッチと、
前記第1のスイッチを駆動するための駆動波形を出力する第1の波形発生部と、
前記第2のスイッチを駆動するための駆動波形を出力する第2の波形発生部と、
前記第1の波形発生部及び前記第2の波形発生部が出力する駆動波形の電圧を検出する検出部と、
前記検出部が検出した電圧に基づいて前記スイッチのうちいずれかの出力を制御する制御部と、
を備えることを特徴とするフルブリッジ回路。
【請求項2】
前記制御部は、
前記検出部が検出した電圧に基づいて前記スイッチのうちいずれかの出力がグランドになるように制御する、
ことを特徴とする請求項1に記載のフルブリッジ回路。
【請求項3】
前記第1のスイッチは、前記第1の波形発生部が出力する駆動波形の電圧がハイレベルの場合に出力端子への出力を電源に切り替え、前記第1の波形発生部が出力する駆動波形の電圧がロウレベルの場合に出力端子への出力をグランドに切り替え、
前記第2のスイッチは、前記第2の波形発生部が出力する駆動波形の電圧がハイレベルの場合に出力端子への出力を電源に切り替え、前記第2の波形発生部が出力する駆動波形の電圧がロウレベルの場合に出力端子への出力をグランドに切り替え、
前記制御部は、
前記第1の波形発生部が出力する駆動波形の電圧がハイレベルであり、且つ前記第2の波形発生部が出力する駆動波形の電圧がロウレベルからハイレベルに切り替わったことを前記検出部が検出した場合、前記第2のスイッチの出力がグランドになるように制御する、
ことを特徴とする請求項2に記載のフルブリッジ回路。
【請求項4】
前記制御部は、
前記第1の波形発生が出力する駆動波形の電圧がハイレベルからロウレベルに切り替わってから前記容量性負荷の放電時定数以上の時間が経過する前に、前記第2の波形発生部が出力する駆動波形の電圧がロウレベルからハイレベルに切り替わったことを前記検出部が検出した場合、前記第2のスイッチの出力がグランドになるように制御する、
ことを特徴とする請求項3に記載のフルブリッジ回路。
【請求項5】
さらに、前記第2の波形発生部が出力する駆動波形の電圧をロウレベルに固定するためのAND回路を備え、
前記AND回路の第1の入力端子には、前記制御部からの制御信号が入力され、
前記制御部は、
前記制御信号をロウレベルに制御することで、前記第2のスイッチの出力がグランドになるように制御する、
ことを特徴とする請求項3又は請求項4に記載のフルブリッジ回路。
【請求項6】
前記制御部は、
前記検出部が検出した電圧に基づいて前記スイッチのうちいずれかの出力が電源になるように制御する、
ことを特徴とする請求項1に記載のフルブリッジ回路。
【請求項7】
前記第1のスイッチは、前記第1の波形発生部が出力する駆動波形の電圧がハイレベルの場合に出力端子への出力を電源に切り替え、前記第1の波形発生部が出力する駆動波形の電圧がロウレベルの場合に出力端子への出力をグランドに切り替え、
前記第2のスイッチは、前記第2の波形発生部が出力する駆動波形の電圧がハイレベルの場合に出力端子への出力を電源に切り替え、前記第2の波形発生部が出力する駆動波形の電圧がロウレベルの場合に出力端子への出力をグランドに切り替え、
前記制御部は、
前記第1の波形発生部が出力する駆動波形の電圧がロウレベルであり、且つ前記第2の波形発生部が出力する駆動波形の電圧がハイレベルからロウレベルに切り替わったことを前記検出部が検出した場合、前記第2のスイッチの出力が電源になるように制御する、
ことを特徴とする請求項6に記載のフルブリッジ回路。
【請求項8】
前記制御部は、
前記第1の波形発生が出力する駆動波形の電圧がロウレベルからハイレベルに切り替わってから前記容量性負荷の放電時定数以上の時間が経過する前に、前記第2の波形発生部が出力する駆動波形の電圧がハイレベルからロウレベルに切り替わったことを前記検出部が検出した場合、前記第2のスイッチの出力が電源になるように制御する、
ことを特徴とする請求項7に記載のフルブリッジ回路。
【請求項9】
さらに、前記第2の波形発生部が出力する駆動波形の電圧を電源に固定するためのOR回路を備え、
前記OR回路の第1の入力端子には、前記制御部からの制御信号が入力され、
前記制御部は、
前記制御信号をハイレベルに制御することで、前記第2のスイッチの出力が電源になるように制御する、
ことを特徴とする請求項7又は請求項8に記載のフルブリッジ回路。
【請求項10】
前記制御部は、
制御した前記スイッチの出力状態を所定の条件が満たされるまで保持するように制御し、前記所定の条件が満たされると、当該スイッチの出力の制御を解除する、
ことを特徴とする請求項1から請求項9のいずれか一項に記載のフルブリッジ回路。
【請求項11】
請求項1から請求項10のいずれか一項に記載のフルブリッジ回路と、
前記フルブリッジ回路により駆動される容量性負荷であるアクチュエータプレートと、
を備えることを特徴とする液体噴射ヘッド。
【請求項12】
請求項11に記載の液体噴射ヘッド、
を備えることを特徴とする液体噴射記録装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フルブリッジ回路、液体噴射ヘッド、及び液体噴射記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ドライバIC(Integrated Circuit)において、容量性負荷をフルブリッジ回路で駆動する場合には、回路全体がチャージポンプを構成するようになる(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2016−165120号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の技術では、回路全体がチャージポンプを構成するため、駆動タイミングによっては駆動回路の絶対最大定格を超えるような電圧が発生し、駆動回路が故障する場合があるという問題がある。
【0005】
そこで、本発明は上述の事情を鑑みてなされたものであり、回路に過大な電圧がかかることを防ぐことができるフルブリッジ回路、液体噴射ヘッド、及び液体噴射記録装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様は、容量性負荷の一端に出力端子が接続され、該出力端子への出力を電源またはグランドに切り替える第1のスイッチと、前記容量性負荷の他端に出力端子が接続され、該出力端子への出力を電源またはグランドに切り替える第2のスイッチと、前記第1のスイッチを駆動するための駆動波形を出力する第1の波形発生部と、前記第2のスイッチを駆動するための駆動波形を出力する第2の波形発生部と、前記第1の波形発生部及び前記第2の波形発生部が出力する駆動波形の電圧を検出する検出部と、前記検出部が検出した電圧に基づいて前記スイッチのうちいずれかの出力を制御する制御部と、を備えることを特徴とするフルブリッジ回路である。
【0007】
また、本発明の一態様は、上記フルブリッジ回路において、前記制御部は、前記検出部が検出した電圧に基づいて前記スイッチのうちいずれかの出力がグランドになるように制御する、ことを特徴とする。
【0008】
また、本発明の一態様は、上記フルブリッジ回路において、前記第1のスイッチは、前記第1の波形発生部が出力する駆動波形の電圧がハイレベルの場合に出力端子への出力を電源に切り替え、前記第1の波形発生部が出力する駆動波形の電圧がロウレベルの場合に出力端子への出力をグランドに切り替え、前記第2のスイッチは、前記第2の波形発生部が出力する駆動波形の電圧がハイレベルの場合に出力端子への出力を電源に切り替え、前記第2の波形発生部が出力する駆動波形の電圧がロウレベルの場合に出力端子への出力をグランドに切り替え、前記制御部は、前記第1の波形発生部が出力する駆動波形の電圧がハイレベルであり、且つ前記第2の波形発生部が出力する駆動波形の電圧がロウレベルからハイレベルに切り替わったことを前記検出部が検出した場合、前記第2のスイッチの出力がグランドになるように制御する、ことを特徴とする。
【0009】
また、本発明の一態様は、上記フルブリッジ回路において、前記制御部は、前記第1の波形発生が出力する駆動波形の電圧がハイレベルからロウレベルに切り替わってから前記容量性負荷の放電時定数以上の時間が経過する前に、前記第2の波形発生部が出力する駆動波形の電圧がロウレベルからハイレベルに切り替わったことを前記検出部が検出した場合、前記第2のスイッチの出力がグランドになるように制御する、ことを特徴とする。
【0010】
また、本発明の一態様は、上記フルブリッジ回路において、さらに、前記第2の波形発生部が出力する駆動波形の電圧をロウレベルに固定するためのAND回路を備え、前記AND回路の第1の入力端子には、前記制御部からの制御信号が入力され、前記制御部は、前記制御信号をロウレベルに制御することで、前記第2のスイッチの出力がグランドになるように制御する、ことを特徴とする。
【0011】
また、本発明の一態様は、上記フルブリッジ回路において、前記制御部は、前記検出部が検出した電圧に基づいて前記スイッチのうちいずれかの出力が電源になるように制御する、ことを特徴とする。
【0012】
また、本発明の一態様は、上記フルブリッジ回路において、前記第1のスイッチは、前記第1の波形発生部が出力する駆動波形の電圧がハイレベルの場合に出力端子への出力を電源に切り替え、前記第1の波形発生部が出力する駆動波形の電圧がロウレベルの場合に出力端子への出力をグランドに切り替え、前記第2のスイッチは、前記第2の波形発生部が出力する駆動波形の電圧がハイレベルの場合に出力端子への出力を電源に切り替え、前記第2の波形発生部が出力する駆動波形の電圧がロウレベルの場合に出力端子への出力をグランドに切り替え、前記制御部は、前記第1の波形発生部が出力する駆動波形の電圧がロウレベルであり、且つ前記第2の波形発生部が出力する駆動波形の電圧がハイレベルからロウレベルに切り替わったことを前記検出部が検出した場合、前記第2のスイッチの出力が電源になるように制御する、ことを特徴とする。
【0013】
また、本発明の一態様は、上記フルブリッジ回路において、前記制御部は、前記第1の波形発生が出力する駆動波形の電圧がロウレベルからハイレベルに切り替わってから前記容量性負荷の放電時定数以上の時間が経過する前に、前記第2の波形発生部が出力する駆動波形の電圧がハイレベルからロウレベルに切り替わったことを前記検出部が検出した場合、前記第2のスイッチの出力が電源になるように制御する、ことを特徴とする。
【0014】
また、本発明の一態様は、上記フルブリッジ回路において、さらに、前記第2の波形発生部が出力する駆動波形の電圧を電源に固定するためのOR回路を備え、前記OR回路の第1の入力端子には、前記制御部からの制御信号が入力され、前記制御部は、前記制御信号をハイレベルに制御することで、前記第2のスイッチの出力が電源になるように制御する、ことを特徴とする。
【0015】
また、本発明の一態様は、上記フルブリッジ回路において、前記制御部は、制御した前記スイッチの出力状態を所定の条件が満たされるまで保持するように制御し、前記所定の条件が満たされると、当該スイッチの出力の制御を解除する、ことを特徴とする。
【0016】
また、本発明の一態様は、上記フルブリッジ回路と、前記フルブリッジ回路により駆動される容量性負荷であるアクチュエータプレートと、を備えることを特徴とする液体噴射ヘッドである。
【0017】
また、本発明の一態様は、上記液体噴射ヘッド、を備えることを特徴とする液体噴射記録装置である。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、回路に過大な電圧がかかることを防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の実施形態における液体噴射記録装置の構成を示す斜視図である。
図2】本発明の実施形態における液体噴射ヘッドの斜視図である。
図3】本発明の実施形態におけるヘッドチップの斜視図である。
図4】本発明の実施形態におけるヘッドチップの分解斜視図である。
図5】本発明の実施形態における制御回路の一例を示す概略ブロック図である。
図6】本発明の実施形態における第1のスイッチ及び第2のスイッチの正常な駆動パターンの一例を示す図である。
図7】本発明の実施形態における第1のスイッチ及び第2のスイッチの異常な駆動パターンの一例を示す図である。
図8】本発明の実施形態における第1の波形発生器及び第2の波形発生器が出力する駆動波形の一例を示す図である。
図9】本発明の実施形態におけるスイッチ制御処理の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
(液体噴射記録装置)
以下、本発明の一実施形態について、図面を参照しながら説明する。
まず、本実施形態に係る液体噴射記録装置1の概略構成について説明する。
図1は、液体噴射記録装置1の構成を示す斜視図である。なお、以下の図では、説明を分かり易くするために各部材の縮尺を適宜変更している。
同図に示すように、液体噴射記録装置1は、記録紙等の被記録媒体Sを搬送する一対の搬送手段2,3と、被記録媒体Sに図示しないインクを噴射する液体噴射ヘッド4と、液体噴射ヘッド4にインクを供給するインク供給手段5と、液体噴射ヘッド4を被記録媒体Sの搬送方向Yと直交する走査方向Xに走査させる走査手段6と、を備えている。
なお、本実施形態では、搬送方向Yおよび走査方向Xの2方向に直交する方向を上下方向Zとする。
【0021】
一対の搬送手段2,3は、搬送方向Yに間隔をあけて配置されており、一方の搬送手段2が搬送方向Yの上流側に位置し、他方の搬送手段3が搬送方向Yの下流側に位置している。これら搬送手段2,3は、走査方向Xに延設されたグリットローラ2a,3aと、このグリットローラ2a,3aに対して平行に配置されると共に、グリットローラ2a,3aとの間で被記録媒体Sを挟み込むピンチローラ2b,3bと、グリットローラ2a,3aをその軸回りに回転させるモータ等の図示しない駆動機構と、をそれぞれ備えている。
そして、一対の搬送手段2,3のグリットローラ2a,3aを回転させることで、被記録媒体Sを搬送方向Yに沿った矢印B方向に搬送することが可能とされている。
【0022】
インク供給手段5は、インクが収容されたインクタンク10と、インクタンク10と液体噴射ヘッド4とを接続するインク配管11と、を備えている。
図示の例では、インクタンク10は、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の4色のインクがそれぞれ収容されたインクタンク10Y、10M、10C、10Kが搬送方向Yに並んで配置されている。インク配管11は、例えば可撓性を有するフレキシブルホースであり、液体噴射ヘッド4を支持するキャリッジ16の動作(移動)に追従可能とされている。
【0023】
走査手段6は、走査方向Xに延び、搬送方向Yに間隔をあけて互いに平行に配置された一対のガイドレール15と、これら一対のガイドレール15に沿って移動可能に配置されたキャリッジ16と、このキャリッジ16を走査方向Xに移動させる駆動機構17と、を備えている。
駆動機構17は、一対のガイドレール15の間に配置され、走査方向Xに間隔をあけて配置された一対のプーリ18と、これら一対のプーリ18の間に巻回されて走査方向Xに移動する無端ベルト19と、一方のプーリ18を回転駆動させる駆動モータ20と、を備えている。
【0024】
キャリッジ16は、無端ベルト19に連結されており、一方のプーリ18の回転駆動による無端ベルト19の移動に伴って走査方向Xに移動可能とされている。また、キャリッジ16には、複数の液体噴射ヘッド4が走査方向Xに並んだ状態で搭載されている。
図示の例では、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の各インクをそれぞれ噴射する4つの液体噴射ヘッド4、すなわち液体噴射ヘッド4Y,4M,4C,4Kが搭載されている。
【0025】
(液体噴射ヘッド)
次に、液体噴射ヘッド4について詳細に説明する。
図2は、液体噴射ヘッド4の斜視図である。
同図に示すように、液体噴射ヘッド4は、キャリッジ16に固定される固定プレート25と、この固定プレート25上に固定されたヘッドチップ26と、インク供給手段5から供給されたインクを、ヘッドチップ26の後述するインク導入孔41aにさらに供給するインク供給部27と、ヘッドチップ26に駆動電圧を印加する制御手段28と、を備えている。
【0026】
液体噴射ヘッド4は、駆動電圧が印加されることで、各色のインクを所定の噴出量で吐出する。このとき、液体噴射ヘッド4が走査手段6により走査方向Xに移動することにより、被記録媒体Sにおける所定範囲に記録を行うことができる。この走査を、搬送手段2,3により被記録媒体Sを搬送方向Yに搬送しながら繰り返し行うことで、被記録媒体Sの全体に記録を行うことが可能となる。
【0027】
固定プレート25には、アルミ等の金属製のベースプレート30が上下方向Zに沿って起立した状態で固定されていると共に、ヘッドチップ26の後述するインク導入孔41aにインクを供給する流路部材31が固定されている。流路部材31の上方には、インクを貯留する貯留室を内部に有する圧力緩衝器32がベースプレート30に支持された状態で配置されている。そして、流路部材31と圧力緩衝器32は、インク連結管33を介して連結され、圧力緩衝器32にはインク配管11が接続されている。
【0028】
このような構成のもと、圧力緩衝器32は、インク配管11を介してインクが供給されると、このインクを内部の貯留室内に一旦貯留した後、所定量のインクをインク連結管33および流路部材31を介してインク導入孔41aに供給する。
なお、これら流路部材31、圧力緩衝器32およびインク連結管33は、上記インク供給部27として機能する。
【0029】
また、固定プレート25には、ヘッドチップ26を駆動するための集積回路等の制御回路(駆動回路)35が搭載されたIC基板36が取り付けられている。この制御回路35と、ヘッドチップ26の後述する共通電極(駆動電極)および個別電極(何れも不図示)は、図示しない配線パターンがプリント配線されたフレキシブル基板37を介して電気接続されている。これにより、制御回路35は、フレキシブル基板37を介して共通電極と個別電極との間に、駆動電圧を印加することが可能となる。
なお、これら制御回路35が搭載されたIC基板36、およびフレキシブル基板37は、上記制御手段28として機能する。
【0030】
(ヘッドチップ)
続いて、ヘッドチップ26について詳細に説明する。
図3は、ヘッドチップ26の斜視図、図4は、ヘッドチップ26の分解斜視図である。
図3図4に示すように、ヘッドチップ26は、アクチュエータプレート40、カバープレート41、支持プレート42、およびアクチュエータプレート40の側面に設けられたノズルプレート60を備えている。
ヘッドチップ26は、後述する液体吐出チャネル45Aの長手方向端部に臨むノズル孔43aからインクを吐出する、いわゆるエッジシュートタイプとされている。
【0031】
アクチュエータプレート40は、第1アクチュエータプレート40Aおよび第2アクチュエータプレート40Bの2枚のプレートを積層した、いわゆる積層プレートとされている。なお、アクチュエータプレート40は、積層プレートに限らず、1枚のプレートで構成してもよい。
【0032】
第1アクチュエータプレート40Aおよび第2アクチュエータプレート40Bは、共に厚さ方向に分極処理された圧電基板、例えばPZT(チタン酸ジルコン酸鉛)セラミックス基板であり、互いの分極方向を反対に向けた状態で接合されている。
このアクチュエータプレート40は、厚さ方向L1に直交する第1方向(配列方向)L2に長く、厚さ方向L1および第1方向L2に対して直交する第2方向L3に短い、平面視略長方形状に形成されている。
【0033】
なお、本実施形態のヘッドチップ26はエッジシュートタイプであるので、厚さ方向L1が液体噴射記録装置1における走査方向Xに一致し、且つ第1方向L2が搬送方向Y、第2方向L3が上下方向Zに一致する。すなわち、例えばアクチュエータプレート40の側面のうち、ノズルプレート60に対向する側面(インクが吐出される側の側面)は、下端面40aとなり、この下端面40aとは第2方向L3の反対側に位置する側面は、上端面40bとなる。以下の説明では、この上下方向に則して、単に下側、上側と称して説明する場合がある。しかしながら、通常、上下方向については、液体噴射記録装置1の設置角度に応じて変化してしまうことは言うまでもない。
【0034】
アクチュエータプレート40の一方の主面(カバープレート41が重なる面)40cには、第1方向L2に所定の間隔をあけて並んだ複数のチャネル45が形成されている。これら複数のチャネル45は、一方の主面40c側に開口した状態で第2方向L3に沿って直線状に延びる溝部であり、長手方向の一方側がアクチュエータプレート40の下端面40a側に開口している。これら複数のチャネル45の間には、断面略矩形状で第2方向L3に延びる駆動壁(圧電隔壁)46が形成されている。この駆動壁46によって、各チャネル45はそれぞれ区分けされている。
【0035】
また、複数のチャネル45は、インクが充填される液体吐出チャネル45Aと、インクが充填されない非吐出チャネル45Bと、に大別される。そして、これら液体吐出チャネル45Aと非吐出チャネル45Bは、第1方向L2に交互に並んで配置されている。
このうち、液体吐出チャネル45Aは、アクチュエータプレート40の上端面40b側に開口することなく、下端面40a側にだけ開口した状態で形成されている。一方、非吐出チャネル45Bについては、アクチュエータプレート40の下端面40a側だけでなく、上端面40b側にも開口するように形成されている。
【0036】
液体吐出チャネル45Aの内壁面、すなわち第1方向L2に向かい合う一対の側壁面および底壁面には、不図示の共通電極が形成されている。この共通電極は、液体吐出チャネル45Aに沿って第2方向L3に延び、アクチュエータプレート40の一方の主面40c上に形成された共通端子51に導通している。
一方、非吐出チャネル45Bの内壁面のうち、第1方向L2に向かい合う一対の側壁面には、不図示の個別電極がそれぞれ形成されている。これら個別電極は、非吐出チャネル45Bに沿って第2方向L3に延び、アクチュエータプレート40の一方の主面40c上に形成された個別端子53に導通している。
【0037】
なお、個別端子53は、アクチュエータプレート40の一方の主面40c上における共通端子51よりも上端面40b側に形成されている。そして、液体吐出チャネル45Aを挟んだ両側に位置する個別電極同士(異なる非吐出チャネル45B内に形成された個別電極同士)を、接続するように形成されている。
【0038】
このような構成のもと、制御回路35が、フレキシブル基板37を介し、さらに共通端子51および個別端子53を通じて、共通電極と個別電極との間に駆動電圧を印加すると、駆動壁46が変形する。そして、液体吐出チャネル45A内に充填されたインクに圧力変動が生じる。これにより、液体吐出チャネル45A内のインクをノズル孔43aより吐出することができ、被記録媒体Sに文字や図形等の各種情報を記録することが可能となる。
【0039】
アクチュエータプレート40の一方の主面40c上には、カバープレート41が重ね合わされている。このカバープレート41には、インク導入孔41aが第1方向L2に長い平面視略矩形状に形成されている。
このインク導入孔41aには、流路部材31を介して供給されてきたインクを液体吐出チャネル45A内に導入させ、且つ非吐出チャネル45B内への導入を規制する複数のスリット55aが形成されたインク導入板55が形成されている。つまり、複数のスリット55aは、液体吐出チャネル45Aに対応する位置に形成されており、各液体吐出チャネル45A内にのみインクを充填することが可能となる。
【0040】
なお、カバープレート41は、例えばアクチュエータプレート40と同じPZTセラミックス基板で形成され、アクチュエータプレート40と同じ熱膨張をさせることで、温度変化に対する反りや変形を抑制している。但し、この場合に限られず、アクチュエータプレート40とは異なる材料でカバープレート41を形成しても構わない。この場合、カバープレート41の材料として、アクチュエータプレート40と熱膨張係数が近い材料を用いることが好ましい。
【0041】
支持プレート42は、重ね合されたアクチュエータプレート40およびカバープレート41を支持していると共に、ノズルプレート60を同時に支持している。支持プレート42は、アクチュエータプレート40に対応するように、第1方向L2に長く形成された略長方形状の板材で、中央の大部分に、厚さ方向に貫通する嵌合孔42aが形成されている。この嵌合孔42aは、第1方向L2に沿って略長方形状に形成されており、重ね合されたアクチュエータプレート40およびカバープレート41を嵌合孔42a内に嵌め込んだ状態で支持している。
【0042】
また、支持プレート42は、その外形状が厚さ方向下端に向かうに従って段差により小さくなるように段付き板状に形成されている。すなわち、支持プレート42は、厚さ方向上端側に位置するベース部42Aと、ベース部42Aの下端面に配置され、このベース部42Aよりも外形状が小さくなるように形成された段差部42Bと、が一体成形されたものである。そして、支持プレート42は、段差部42Bの端面がアクチュエータプレート40の下端面40aと面一となるように組み合わされている。また、段差部42Bの端面に、ノズルプレート60が、例えば接着等により固定されている。
【0043】
(制御手段)
続いて、制御手段28について詳細に説明する。制御手段28では、IC基板36に搭載された制御回路35がフレキシブル基板37を介してアクチュエータプレート40の共通端子51(共通電極)と個別端子53(個別電極)とに電気的に接続されている。
【0044】
図5は、本実施形態における制御回路35の一例を示す概略ブロック図である。本図に示すように、制御回路35は、第1のスイッチ110と、第2のスイッチ120と、第1の波形メモリ210と、第2の波形メモリ220と、第1の波形発生器230(第1の波形発生部)と、第2の波形発生器240(第2の波形発生部)と、AND回路242と、第1の電圧計250(検出部)と、第2の電圧計260(検出部)と、比較器270(制御部)と、クロック発生器280と、を備えており、アクチュエータプレート40の共通端子51(共通電極)と個別端子53(個別電極)とに駆動電圧を印加する。ここで、アクチュエータプレート40は、上述したようにPZT(ピエゾ)セラミックス基板であり、制御回路35に対する容量性の負荷である。
【0045】
図示するように、第1のスイッチ110及び第2のスイッチ120は、アクチュエータプレート40を駆動するフルブリッジ・パルス駆動回路として構成されている。第1のスイッチ110は、個別端子53に出力端子が接続され、該出力端子への出力を電源(「1」)またはグランド(「0」)に切り替えるスイッチである。第1のスイッチ110は、第1の波形発生器230が出力する駆動波形の電圧がハイレベルの場合に出力端子への出力を電源に切り替え、第1の波形発生器230が出力する駆動波形の電圧がロウレベルの場合に出力端子への出力をグランドに切り替える。
【0046】
第2のスイッチ120は、共通端子51に出力端子が接続され、該出力端子への出力を電源(「1」)またはグランド(「0」)に切り替えるスイッチである。第2のスイッチ120は、第2の波形発生器240が出力する駆動波形の電圧がハイレベルの場合に出力端子への出力を電源に切り替え、第2の波形発生器240が出力する駆動波形の電圧がロウレベルの場合に出力端子への出力をグランドに切り替える。アクチュエータプレート40は、第1のスイッチ110及び第2のスイッチ120からの駆動電圧により駆動される。
【0047】
なお、アクチュエータプレート40は、通常は、共通電極側が常時グランドに接続され、個別電極側に印加される駆動電圧Eによって駆動する。このため、回路の最大定格は電圧Eよりわずかに大きくなる程度に設定されている。しかしながら、本実施形態では、上述したように、個別電極側に加えて、共通電極側も駆動電圧が印加される。すなわち、制御回路35は、第2のスイッチ120の出力を切り替えることによりアクチュエータプレート40(PZTセラミックス基板)の共通電極側も駆動(コモンドライブ)する。このため、第1のスイッチ110及び第2のスイッチ120の駆動タイミングによっては、回路に最大定格を超える電圧2Eがかかる場合があり、それにより回路が過電圧によって故障する場合がある。
【0048】
図6は、第1のスイッチ110及び第2のスイッチ120の正常な駆動パターンの一例を示す図である。本図には、過大な電圧が発生しない正常な駆動パターンを示す。ここで、電源電圧は「E」V(ボルト)である。
【0049】
まず、図6(A)に示す初期状態では、第1のスイッチ110及び第2のスイッチ120はともに出力がグランド「0」である。このとき、アクチュエータプレート40の充電電圧は「0」Vであり、回路に発生する発生電圧は「0」Vである。
【0050】
その後、図6(B)に示す充電になると、第1のスイッチ110は、出力が電源「1」に切り替わる。一方、第2のスイッチ120は「0」に固定されたままである。そして、充電されると、アクチュエータプレート40の充電電圧は「E」Vになり、発生電圧は「E」Vになる。
【0051】
その後、図6(C)に示す初期状態になると、第1のスイッチ110及び第2のスイッチ120はともに「0」に切り替わる。そして、放電されると、アクチュエータプレート40の充電電圧は「0」Vになり、発生電圧は「0」Vになる。
【0052】
その後、図6(D)に示す逆充電になると、第2のスイッチ120は、出力が電源「1」に切り替わる。一方、第1のスイッチ110は「0」に固定されたままである。そして、充電されると、アクチュエータプレート40の充電電圧は「E」Vになり、発生電圧は「−E」Vになる。
【0053】
その後、図6(E)に示す放電になると、第1のスイッチ110及び第2のスイッチ120はともに「0」に切り替わる。そして、放電されると、アクチュエータプレート40の充電電圧は「0」Vになり、発生電圧は「0」Vになる。
【0054】
このように、通常時には、第1のスイッチ110及び第2のスイッチ120は、発生電圧が電源電圧「E」Vを超えないように動作する。
【0055】
一方、図7は、第1のスイッチ110及び第2のスイッチ120の異常な駆動パターンの一例を示す図である。本図には、過大な電圧が発生する異常な駆動パターンを示す。
【0056】
まず、図7(A)に示す放電状態では、第1のスイッチ110及び第2のスイッチ120はともに「0」である。このとき、アクチュエータプレート40の充電電圧は「0」Vであり、発生電圧は「0」Vである。
【0057】
その後、図7(B)に示す充電になると、第1のスイッチ110は「1」に切り替わる。一方、第2のスイッチ120は「0」に固定されたままである。そして、充電されると、アクチュエータプレート40の充電電圧は「E」Vになり、発生電圧は「E」Vになる。
【0058】
その後、図7(C)に示す上乗せ充電になると、第2のスイッチ120が「1」に切り替わる。一方、第1のスイッチ110は「1」に固定されたままである。この状態において、アクチュエータプレート40の充電電圧は「E」Vであるため、発生電圧が「2E」Vとなり、電源電圧「E」Vを超える。
【0059】
このように、第1のスイッチ110が「1」のときに、アクチュエータプレート40に電荷が貯まっている状態で、電位の低い方の第2のスイッチ120を「0」から「1」に切り替えると、第1のスイッチ110に電源電圧の2倍の電位が加わり、回路を破壊する可能性がある。
【0060】
通常、制御回路35は、第1のスイッチ110及び第2のスイッチ120が正常な駆動パターンで動作するよう、第1の波形発生器230及び第2の波形発生器240から駆動波形を出力させる。しかしながら、第1の波形メモリ210又は第2の波形メモリ220に間違ったデータが書き込まれたり、ノイズ等の影響により波形データが書き換わることにより、第1の波形発生器230及び第2の波形発生器240から出力される駆動波形が予期せぬ波形に置き換わることがある。この場合には、第1の波形発生器230及び第2の波形発生器240から出力される駆動波形が第1のスイッチ110及び第2のスイッチ120を異常な駆動パターンで動作をさせてしまうことがある。
【0061】
なお、第1の波形メモリ210は、第1の波形発生器230が出力する駆動波形に関する波形データを記憶するメモリである。第2の波形メモリ220は、第2の波形発生器240が出力する駆動波形に関する波形データを記憶するメモリである。第1の波形メモリ210及び第2の波形メモリ220は、外部から書き込み可能なメモリである。また、クロック発生器280は、駆動波形を発生する基準となるクロック信号を発振し、発振したクロック信号を第1の波形発生器230、第2の波形発生器240、及び比較器270に出力する。
【0062】
また、第1の波形発生器230は、波形発生回路231を備え、クロック発生器280から入力されるクロック信号に基づいて、第1のスイッチ110を駆動するための駆動波形を出力する。波形発生回路231は、第1の波形メモリ210から波形データを読み出し、読み出した波形データに基づいて第1のスイッチ110を駆動するための駆動波形を出力する。
【0063】
第2の波形発生器240は、波形発生回路241を備え、クロック発生器280から入力されるクロック信号に基づいて、第2のスイッチ120を駆動するための駆動波形を出力する。波形発生回路241は、第2の波形メモリ220から波形データを読み出し、読み出した波形データに基づいて第2のスイッチ120を駆動するための駆動波形を出力する。
【0064】
図8は、第1の波形発生器230及び第2の波形発生器240が出力する駆動波形の一例を示す図である。
本図において、横軸は時間である。また、上段が第1の波形発生器230が出力する駆動波形Aを示し、下段が第2の波形発生器240が出力する駆動波形Bを示す。
【0065】
図8(A)及び図8(B)は、第1のスイッチ110及び第2のスイッチ120を正常な駆動パターンで動作させる駆動波形の一例を示す。図8(A)に示す例では、駆動波形Aの電圧がハイレベルからロウレベルに切り替わって(t11)から、アクチュエータプレート40の放電時定数(例えば、0.4μs(マイクロ秒))以上経過した後に、駆動波形Bの電圧がロウレベルからハイレベルに切り替わっている(t12)。
【0066】
図8(B)に示す例では、駆動波形Aの電圧と駆動波形Bの電圧とが同時にロウレベルからハイレベルに切り替わり(t21)、その後、駆動波形Aの電圧と駆動波形Bの電圧とが同時にハイレベルからロウレベルに切り替わっている(t22)。
【0067】
一方、図8(C)から図8(E)は、第1のスイッチ110及び第2のスイッチ120を異常な駆動パターンで動作させる禁止波形を示す。図8(C)に示す例では、駆動波形Aの電圧がハイレベルからロウレベルに切り替わって(t31)から、アクチュエータプレート40の放電時定数以上の時間が経過する前に、駆動波形Bの電圧がロウレベルからハイレベルに切り替わっている(t32)。このような場合には、アクチュエータプレート40は、個別電極(駆動波形A)側に充電された電荷が完全に放電していない状態のときに、共通電極(駆動波形B)側による充電により電荷が積み上げられ、回路が過電圧になる場合がある。よって、駆動波形Aの電圧がハイレベルからロウレベルに切り替わってから放電時定数以上の時間が経過する前に、駆動波形Bの電圧がロウレベルからハイレベルに切り替わる禁止波形の場合には、第1のスイッチ110が「1」から「0」に切り替わってから放電時定数以上の時間が経過する前に、第2のスイッチ120が「0」から「1」に切り替わる異常な駆動パターンで動作する。
【0068】
また、図8(D)に示す例では、駆動波形Aがロウレベルからハイレベルに切り替わった(t41)直後に、駆動波形Bがロウレベルからハイレベルに切り替わっている(t42)。また、図8(E)に示す例では、駆動波形Aがハイレベルの間に、駆動波形Bがロウレベルからハイレベルに切り替わり(t51)、ハイレベルからロウレベルに切り替わっている(t52)。
【0069】
このように、駆動波形Aの電圧がハイレベルのときに、駆動波形Bの電圧がロウレベルからハイレベルに切り替わる禁止波形の場合には、第1のスイッチ110が「1」のときに、第2のスイッチ120が「0」から「1」に切り替わる異常な駆動パターンで動作する。
【0070】
比較器270は、第1のスイッチ110及び第2のスイッチ120が異常な駆動パターンで動作することを防ぐために、第1の電圧計250が検出した駆動波形Aの電圧と第2の電圧計260が検出した駆動波形Bの電圧とを比較し、第1の波形発生器230及び第2の波形発生器240から出力される駆動波形が禁止波形である場合に、第2のスイッチ120の出力がグランドになるように、第2の波形発生器240から出力される駆動波形Bの電圧をロウレベルに制御する。
【0071】
ここで、第1の電圧計250は、第1の波形発生器230が出力する駆動波形の電圧を検出する。また、第2の電圧計260は、第2の波形発生器240が出力する駆動波形の電圧を検出する。第1の電圧計250及び第2の電圧計260が、第1の波形発生器230及び第2の波形発生器240が出力する駆動波形の電圧を検出する検出部を構成する。
【0072】
具体的には、比較器270は、クロック発生器280から入力されるクロック信号に基づいて、第1の電圧計250及び第2の電圧計260が検出した電圧を取得する。そして、比較器270は、取得した電圧に基づいて、第1のスイッチ110又は第2のスイッチ120のうちいずれかの出力を制御する。例えば、第1の電圧計250及び第2の電圧計260が検出した電圧に基づいて、第1のスイッチ110又は第2のスイッチ120のうちいずれかの出力がグランドになるように制御する。より具体的には、第1の波形発生器230が出力する駆動波形の電圧がハイレベルであり、且つ第2の波形発生器240が出力する駆動波形の電圧がロウレベルからハイレベルに切り替わったことを検出した場合、第2のスイッチ120の出力がグランドになるように、AND回路242に出力する制御信号をロウレベルに制御することで、第2の波形発生器240を制御する。
【0073】
AND回路242は、第1の入力端子には比較器270からの制御信号が入力され、第2の入力端子には第2の波形発生器240から出力される駆動波形が入力され、出力端子から第2のスイッチ120を駆動するための駆動波形を出力する。すなわち、AND回路242は、制御信号に基づいて、第2のスイッチ120の出力がグランドになるように第2のスイッチ120を駆動するための駆動波形の電圧をロウレベルに固定する。具体的には、AND回路242は、制御信号がロウレベルである場合に、電圧がロウレベルの駆動波形を第2のスイッチ120に出力する。また、AND回路242は、制御信号がハイレベルである場合に、第2の波形発生器240から出力される駆動波形を第2のスイッチ120に出力する。
【0074】
また、比較器270は、所定の条件が満たされるまで、制御した第2のスイッチ120の出力状態をグランドに保持(固定)するように制御する。そして、比較器270は、当該所定の条件が満たされると、第2のスイッチ120の出力の制御(固定)を解除する。具体的には、比較器270は、第2のスイッチ120の出力をグランドに固定した後に、所定の条件が満たされた場合、AND回路242に出力する制御信号をロウレベルからハイレベルに制御して、第2のスイッチ120の固定を解除する。所定条件として、例えば、第2の波形発生器240が出力する駆動波形の電圧をロウレベルに固定してから所定時間が経過したこと、プリント回数が所定回数以上になったこと、液体噴射記録装置1の電源起動時、或いは、ユーザからの操作入力を受け付けたこと、等がある。
【0075】
次に、図9を参照して、制御回路35が実行するスイッチ制御処理の動作について説明する。図9は、スイッチ制御処理の一例を示すフローチャートである。ここで、スイッチ制御処理とは、上述したように、駆動波形Aの電圧と駆動波形Bの電圧とに基づいて、第2のスイッチ120の出力を制御する処理のことをいう。
【0076】
(ステップS101)第1の電圧計250は、第1の波形発生器230が出力する駆動波形Aの電圧を検出する。また、第2の電圧計260は、第2の波形発生器240が出力する駆動波形Bの電圧を検出する。その後、ステップS102の処理に進む。
【0077】
(ステップS102)比較器270は、第1の電圧計250が検出した電圧(第1の波形発生器230が出力する駆動波形Aの電圧)がハイレベルであるか否かを判定する。電圧がハイレベルであると比較器270が判定した場合には、ステップS104の処理に進む。また、電圧がロウレベルであると比較器270が判定した場合には、ステップS103の処理に進む。
【0078】
(ステップS103)比較器270は、第1の電圧計250が検出した電圧(第1の波形発生器230が出力する駆動波形Aの電圧)がハイレベルからロウレベルに切り替わってから放電時定数以上の時間が経過したか否かを判定する。放電時定数以上の時間が経過したと比較器270が判定した場合には、ステップS101の処理に戻る。また、放電時定数以上の時間が経過していないと比較器270が判定した場合には、ステップS104の処理に進む。
【0079】
(ステップS104)比較器270は、第2の電圧計260が検出した電圧(第2の波形発生器240が出力する駆動波形Bの電圧)がロウレベルからハイレベルに切り替わったか否かを判定する。電圧がロウレベルからハイレベルに切り替わったと比較器270が判定した場合には、ステップS105の処理に進む。また、電圧がロウレベルからハイレベルに切り替わっていないと比較器270が判定した場合には、ステップS101の処理に戻る。
【0080】
(ステップS105)比較器270は、AND回路242に出力する制御信号をロウレベルに制御することにより、第2の波形発生器240から出力される駆動波形の電圧をロウレベルに制御し、第2のスイッチ120の出力をグランドに固定する。その後、ステップS106の処理に進む。
【0081】
(ステップS106)比較器270は、所定条件を満たしたか否かを判定する。所定条件を満たしたと比較器270が判定した場合には、ステップS107の処理に進む。また、所定条件を満たしていないと比較器270が判定した場合には、ステップS106の処理を再度実行する。
【0082】
(ステップS107)比較器270は、AND回路242に出力する制御信号をロウレベルからハイレベルに制御して、第2のスイッチ120のグランドへの固定を解除する。その後、ステップS101の処理に戻る。
【0083】
以上説明したように、本実施形態に係る制御回路35は、個別端子53に出力端子が接続され、該出力端子への出力を電源またはグランドに切り替える第1のスイッチ110と、共通端子51に出力端子が接続され、該出力端子への出力を電源またはグランドに切り替える第2のスイッチ120と、第1のスイッチ110を駆動するための駆動波形を出力する第1の波形発生器230と、第2のスイッチ120を駆動するための駆動波形を出力する第2の波形発生器240と、第1の波形発生器230が出力する駆動波形の電圧を検出する第1の電圧計250と、第2の波形発生器240が出力する駆動波形の電圧を検出する第2の電圧計260と、第1の電圧計250及び第2の電圧計260が検出した電圧に基づいて第2のスイッチ120の出力がグランドになるように制御する比較器270と、第2の波形発生器240が出力する駆動波形の電圧をロウレベルに固定するためのAND回路242と、を備えるフルブリッジ回路である。第1のスイッチ110は、第1の波形発生器230が出力する駆動波形の電圧がハイレベルの場合に出力端子への出力を電源に切り替え、第1の波形発生器230が出力する駆動波形の電圧がロウレベルの場合に出力端子への出力をグランドに切り替る。第2のスイッチ120は、第2の波形発生器240が出力する駆動波形の電圧がハイレベルの場合に出力端子への出力を電源に切り替え、第2の波形発生器240が出力する駆動波形の電圧がロウレベルの場合に出力端子への出力をグランドに切り替える。AND回路242の第1の入力端子には比較器270からの制御信号が入力される。比較器270は、第1の波形発生器230が出力する駆動波形の電圧がハイレベル又はハイレベルからロウレベルに切り替わってから放電時定数以上の時間が経過する前であり、且つ第2の波形発生器240が出力する駆動波形の電圧がロウレベルからハイレベルに切り替わったことを検出した場合、第2のスイッチ120の出力がグランドになるように、AND回路242に出力する制御信号をロウレベルに制御する。
【0084】
これにより、ノイズ等の影響により、第1のスイッチ110及び第2のスイッチ120が異常な駆動パターンで動作をすることを防ぎ、回路に過大な電圧がかかることを防ぐことができる。よって、回路の絶対最大定格を超える電圧の発生に起因した故障を防ぐことができる。
【0085】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
【0086】
例えば、上述した実施形態では、液体噴射記録装置1の液体噴射ヘッド4の制御回路35において使用されるフルブリッジ回路について説明したが、本実施形態に係るフルブリッジ回路は、液体噴射記録装置1以外の装置に適用してもよい。
【0087】
また、上述した実施形態では、共通端子51に出力端子が接続される第2のスイッチ120の出力をグランドに固定して異常な動作を防いでいるが、これに限らず、第1のスイッチ110の出力をグランドに固定して異常な動作を防いでもよい。例えば、比較器270は、第2の波形発生器240が出力する駆動波形の電圧がハイレベル、又はハイレベルからロウレベルに切り替わってから放電時定数以上の時間が経過する前であり、且つ第1の波形発生器230が出力する駆動波形の電圧がロウレベルからハイレベルに切り替わったことを検出した場合、第1のスイッチ110の出力がグランドになるように制御してもよい。
【0088】
また、比較器270は、第2のスイッチ120または第1のスイッチ110の出力がグランドになるように制御する条件として、上述の放電時定数以上の時間が経過するか否かの条件を考慮しなくてもよい。例えば、比較器270は、第1の波形発生器230が出力する駆動波形の電圧がハイレベルからロウレベルに切り替わってから放電時定数以上の時間が経過する前に、第2の波形発生器240が出力する駆動波形の電圧がロウレベルからハイレベルに切り替わったことを検出した場合(図8の(C)示す駆動波形の例)、正常な動作とみなし、第2の波形発生器240が出力する駆動波形が第2のスイッチ120へ入力されるように制御してもよい。また、同様に、比較器270は、第2の波形発生器240が出力する駆動波形の電圧がハイレベルからロウレベルに切り替わってから放電時定数以上の時間が経過する前に、第1の波形発生器230が出力する駆動波形の電圧がロウレベルからハイレベルに切り替わったことを検出した場合、正常な動作とみなし、第1の波形発生器230が出力する駆動波形が第1のスイッチ110へ入力されるように制御してもよい。
【0089】
また、図8に示す駆動波形のハイレベルとロウレベルとを逆転させた駆動としてもよい。その場合、第1のスイッチ110又は第2のスイッチ120の出力がグランドのときに他方のスイッチの出力が電源からグランドに切り替わった場合にも、回路に過電圧−2Eが生じる場合がある。この場合には、他方のスイッチからの出力を電源に固定して過電圧を防いでもよい。具体的には、比較器270は、第1の波形発生器230が出力する駆動波形の電圧がロウレベル、又はロウレベルからハイレベルに切り替わってから放電時定数以上の時間が経過する前であり、且つ第2の波形発生器240が出力する駆動波形の電圧がハイレベルからロウレベルに切り替わったことを検出した場合、第2のスイッチ120の出力が電源になるように制御する。この場合、例えば、AND回路242に代えてOR回路を設け、比較器270がOR回路に出力する制御信号をハイレベルに制御することにより、第2のスイッチ120の出力が電源になるように制御する。なお、比較器270は、第2の波形発生器240が出力する駆動波形の電圧がロウレベル、又はロウレベルからハイレベルに切り替わってから放電時定数以上の時間が経過する前であり、且つ第1の波形発生器230が出力する駆動波形の電圧がハイレベルからロウレベルに切り替わったことを検出した場合、第1のスイッチ110の出力が電源になるように制御してもよい。
【0090】
なお、上述した実施形態における制御回路35が備える各部の機能全体あるいはその一部は、これらの機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することによって実現しても良い。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。
【0091】
また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD−ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶部のことをいう。さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムを送信する場合の通信線のように、短時間の間、動的にプログラムを保持するもの、その場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリのように、一定時間プログラムを保持しているものも含んでも良い。また上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであっても良く、さらに前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるものであっても良い。
【0092】
また、上述した実施形態における制御回路35を、LSI(Large Scale Integration)等の集積回路として実現してもよい。また、例えば、制御回路35を集積してプロセッサ化してもよい。また、集積回路化の手法はLSIに限らず専用回路、または汎用プロセッサで実現してもよい。また、半導体技術の進歩によりLSIに代替する集積回路化の技術が出現した場合、当該技術による集積回路を用いてもよい。
【符号の説明】
【0093】
1…液体噴射記録装置、4…液体噴射ヘッド、35…制御回路、40…アクチュエータプレート、51…共通端子、53…個別端子、110…第1のスイッチ、120…第2のスイッチ、210…第1の波形メモリ、220…第2の波形メモリ、230…第1の波形発生器、231…波形発生回路、240…第2の波形発生器、241…波形発生回路、242…AND回路、250…第1の電圧計、260…第2の電圧計、270…比較器
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9