(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記延長杭の内側を貫通する前記回転治具を前記回転杭に固定する工程の後、前記回転治具に計測機器を挿入して前記回転杭の状態を計測する工程を更に備えることを特徴とする請求項1に記載の横向き回転杭の施工方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、回転杭を横向きではなく平坦な地面に縦向きに地盤中に貫入する場合、地面に大型装置を安定に配置し、この装置により回転杭を安定に支持して位置や向きを調整しつつ大きな回転力を与えることができる。また、縦向きは重力によって強制的に調芯されることもあり、回転杭を所望の位置や向きで地盤中に貫入することができる。
ところが、回転杭を斜面から横向きに地盤中に貫入する場合、斜面に大型装置を配置することが困難であるため、回転杭を安定に支持したり位置や向きを調整したりすることが容易でない。しかも、横向きは重力による強制が働かない上、例えば水抜き用の配管などの場合には、回転杭は小径(例えば20〜100mm程度)のため撓みやすく、回転力を与えて羽根部の推進力で斜面から土壌中に貫入させるだけでは、十分な推進力が得られず、進行しやすい(地盤が軟らかい)方向に逃げてしまう。そのため、特に貫入初期から位置や向きにズレが生じ易く、貫入の進行と共にズレが大きくなるなど、精度よく貫入することが容易でなかった。
この問題を解決するために、例えば、回転杭に回転力を加えながら、回転杭を斜面に向けて押し込むことも考えられるが、回転力だけでなく押し込み力も回転杭に並行して加える必要が生じ、作業が煩雑となる。
【0005】
本発明では、前述した事情に鑑みてなされたものであって、回転杭を斜面において横向きに貫入しても容易に精度よく貫入することが可能な横向き回転杭の施工方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するために、本発明は以下の手段を提案している。
本発明に係る横向き回転杭の施工方法は、棒状治具を斜面から地盤中に横向きに挿入
し、前記棒状治具を、前記棒状治具の後端側を前記斜面の外側に露出させた状態で前記地盤中に配置する工程と、
前記棒状治具を挿入する工程の後で、前記棒状治具の後端側に計器を設置して水平度を確認する工程と、前記棒状治具の水平度を確認する工程の後で、羽根部を有する回転杭
の先端側を、
前記棒状治具の後端側における前記斜面の外に露出する部位に外嵌し、前記回転杭を前記棒状治具に挿入させながら回転させることで、前記棒状治具に沿って前記地盤中に貫入する工程と、を備えることを特徴とする。
なお「回転杭を、棒状治具に挿入させながら回転させる」とは、棒状治具内に回転杭を挿し入れながら回転させるのではなく、回転杭を棒状治具に径方向の外側から被せながら回転させる(回転杭に棒状治具を径方向の外側から覆わせながら回転杭を回転させる)ことを意味する。
【0007】
この発明によれば、棒状治具を斜面から地盤中に横向きに挿入した状態で、回転杭を棒状治具に挿入しつつ回転させるので、地盤中に貫入される回転杭が棒状治具により案内される。そのため、回転杭を斜面において回転させることで羽根部の推進力により横向きに貫入させても、斜面の所定の位置に所定の水平度で、精度よく貫入することが可能である。
【0009】
この場合、地盤中に挿入された棒状治具の水平度を回転杭の貫入前に確認するので、棒状治具を精度よく地盤中に配置でき、回転杭を精度よく横向きに案内して貫入することができる。
【0010】
また本発明に係る施工方法では、前記棒状治具を挿入する工程で、予め形成された先行穴に前記棒状治具を挿入してもよい。
【0011】
この場合、棒状治具は回転杭より細いため、棒状治具用の先行穴を容易に形成できる。また先行穴を予め形成することで、例えば、先行穴が形成されていない場合などに比べて、棒状治具を容易に精度よく地盤中に挿入できる。そのため、回転杭をより容易に精度よく地盤中に挿入することが可能である。
【0012】
また本発明に係る施工方法
は、棒状治具を斜面から地盤中に横向きに挿入する工程と、羽根部を有する回転杭を、前記棒状治具に挿入させながら回転させることで、前記棒状治具に沿って前記地盤中に貫入する工程と、前記地盤中に貫入した前記回転杭の後端側に延長杭を接続するとともに、前記延長杭の内側を貫通する回転治具、または前記延長杭を内側に収容する回転治具を前記回転杭に固定する工程と、前記回転治具を介して前記回転杭に回転力を伝達する工程と、
を備えることを特徴とする。
【0013】
この場合、地盤中に貫入した回転杭に回転治具を固定し、回転治具を介して回転杭に回転力を伝達するので、回転杭の後端側に延長杭を接続して横向き回転杭を長尺に構成しても、延長杭を介さずに回転杭の羽根部に回転力を付与できる。これにより、貫入時に延長杭に大きな捻れ方向の荷重を負荷することを防止でき、延長杭に必要な強度を軽減できる。そのため、例えば水抜き用の穴の開いた強度の弱い延長杭であったとしても、その延長杭を破損することなく貫入させることができる。
【0014】
また本発明に係る施工方法では、前記延長杭の内側を貫通する前記回転治具を前記回転杭に固定する工程の後、前記回転治具に計測機器を挿入して前記回転杭の状態を計測する工程を更に備えてもよい。
【0015】
この場合、施工途中で回転杭の状態を容易に計測できるため、回転杭をより容易に精度よく配置することが可能であり、作業性も良好である。
【0016】
また本発明に係る施工方法では、前記棒状治具を挿入する工程では、先端に掘削部を有する前記棒状治具により前記斜面から前記地盤を掘削して前記棒状治具を挿入してもよい。
【0017】
この場合、例えば、先行穴を形成する作業を簡略化又無くすこと等ができ、作業工程を簡略化できる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、回転杭を斜面において横向きに貫入しても容易に精度よく貫入することが可能な横向き回転杭の施工方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
(第1実施形態)
以下、図面を参照し、本発明の一実施形態に係る横向き回転杭の施工方法を説明する。
第1実施形態の水抜き構造は、
図1に示すように、斜面11を有する地盤10中に、回転杭20が斜面11から横向きに貫入されている。斜面11には、地盤10が表面に露出しているものだけでなく、例えば、表面に擁壁等の構造物が形成された垂直な壁面も含む。なお、表面に構造物が形成されている場合には、例えば、回転杭20を横向きに貫入する箇所をコア抜き等した後、回転杭20を地盤10に貫入することができる。横向きとは、水平に対して平行となる方向または水平に対して±30度以内の傾斜(勾配)を有する方向とすることができる。本実施形態のように、回転杭20が水抜き用の鋼管である場合、回転杭20が、水平に対して平行となる方向または水平に対して±10度以内の傾斜(勾配)であることが好ましい。
【0021】
回転杭20は、円管状の杭本体部21と、杭本体部21の外周に螺旋状に設けられた羽根部22と、を有する。
杭本体部21は直径が40〜100mm程度の小径の鋼管からなる。杭本体部21の管壁には、排水用の複数の貫通孔23が設けられている。杭本体部21の先端側には羽根部22が設けられている。羽根部22は、薄板により形成され、杭本体部21の管壁の外周囲に螺旋状に配置されて固定されている。
【0022】
回転杭20は、斜面11における予め設定された位置に、予め設定された水平度で、地盤10中に貫入されている。水平度は水平に対する傾斜角度であり、水平に対して平行となる0度を含む。
回転杭20は、杭本体部21の先端側の羽根部22により地盤10中に固定され、杭本体部21の後端開口を斜面11の外に臨ませた状態で配置されている。
【0023】
このような水抜き構造を第1実施形態の回転杭20の施工方法を用いて構築するには以下のように行う。本実施形態のような水抜き配管では、水平に対する±10度程度の横向きで施工されることが多いが、本施工方法は30度程度の傾斜の横向きとされた回転杭20の施工でも有効である。
【0024】
まず図
2(a)に示すように、第1工程で棒状治具31を斜面11から地盤10中に横向きに挿入する。
棒状治具31は鋼材製の棒材や中空パイプ等からなる。棒状治具31は回転杭20の杭本体部21の直径より小径に形成されるとともに、回転杭20より長尺に形成されている。棒状治具31は、回転杭20の貫入初期時に係るトルクに対して抗する程度のせん断耐力を具備している。これにより、回転杭20の貫入初期時に、棒状治具31をガイドとして機能させることができる。
【0025】
第1工程では、予め形成された先行穴33に棒状治具31を挿入する。すなわち、斜面11から地盤10中に先行穴33を形成し、先行穴33に棒状治具31を挿入する。
先行穴33は、例えば、回転杭20を設置する位置に、回転杭20を設置する水平度で形成することができる。先行穴33の直径は、棒状治具31を地盤10中に安定して配置できるものであればよく、例えば、回転杭20の杭本体部21の直径や棒状治具31の直径より小さい径または同等の径または大きい径としてもよい。先行穴33の深さ(長さ)は、回転杭20の長さより浅く(短く)てもよいが、本実施形態では、回転杭20の長さより深いとともに棒状治具31の長さより浅く形成されている。
先行穴33を形成後、先行穴33に棒状治具31を挿入し、棒状治具31の後端側を斜面11の外側に露出させた状態で配置する。
【0026】
第1工程の後、後述する第2工程の前に、棒状治具31の水平度を確認する工程を実施する。この工程では、地盤10に挿入された棒状治具31の水平度を確認するとともに挿入された棒状治具31を用いて先行穴33の水平度および深さを確認する。このとき、例えば、棒状治具31の水平度等が、予め設定された許容範囲内に収まっていれば、次の工程に移行し、収まっていなければ、前記許容範囲内に収まるように追加の作業を実施する。棒状治具31の水平度や先行穴33の深さの測定は、例えば目視により基準と対比したり、傾斜計等の計器34により計測したりすることができる。棒状治具31の水平度の測定は、例えば、棒状治具31の後端側(露出する部分)を利用して、この後端側を目視の基準としたり、
図2(a)に示すように、後端側に計器34を設置したりして、実施することができる。
【0027】
次に、
図2(b)に示すように、第2工程で、回転杭20を棒状治具31に挿入させながら回転させることで、回転杭20を棒状治具31に沿って地盤10中に貫入する。
なお「回転杭20を、棒状治具31に挿入させながら回転させる」とは、棒状治具31内に回転杭20を挿し入れながら回転させるのではなく、回転杭20を棒状治具31に径方向の外側から被せながら回転させる(回転杭20に棒状治具31を径方向の外側から覆わせながら回転杭20を回転させる)ことを意味する。
【0028】
第2工程では、棒状治具31の後端側における斜面11の外に露出する部位に回転杭20の先端側を外嵌する。回転杭20の後端側を着脱可能な回転装置35と接続する。回転装置35により回転杭20を回転させると、回転杭20の先端側の羽根部22が回転し、羽根部22で生じる推進力により回転杭20が地盤10中に貫入する。
【0029】
その際、回転杭20を棒状治具31に挿入させながら回転させるため、回転杭20が棒状治具31に沿って地盤10中に貫入する。すなわち、棒状治具31を用いることなく回転杭20のみを回転させると、特に貫入初期時に回転杭20の位置や向きが安定しないが、棒状治具31に回転杭20を挿入することで回転杭20が棒状治具31に案内され、安定して地盤10中に貫入できる。
そして、回転杭20を地盤10中に横向きに十分に貫入させた後、回転杭20の後端側を斜面11の外に露出した状態で第2工程を終了する。棒状治具31は、例えば、第2工程が終了した後、地盤10から回転杭20を通して引き抜いたり、回転装置35を取り外したりすることができる。
このようにして回転杭20を施工し、適宜、後工程を行うことで、水抜き構造を構築する。
【0030】
以上説明したように、本実施形態に係る回転杭20の施工方法によれば、棒状治具31を斜面11から地盤10中に横向きに挿入した状態で、回転杭20を棒状治具31に挿入しつつ回転杭20を回転させて貫入している。そのため、地盤10中に貫入される回転杭20が棒状治具31により案内される。その結果、回転杭20を斜面11において回転させて羽根部22の推進力で横向きに貫入していても、斜面11の所定の位置に所定の水平度で精度よく貫入することができる。
【0031】
この施工方法では、地盤10中に挿入された棒状治具31の水平度を回転杭20の貫入前に確認している。そのため棒状治具31を精度よく地盤10中に配置でき、回転杭20を精度よく横向きに案内して貫入できる。
【0032】
この施工方法では、予め形成された先行穴33に棒状治具31を挿入している。この棒状治具31は回転杭20より細いため、棒状治具31用の先行穴33を容易に形成できる。また、先行穴33を予め形成することで、例えば、先行穴33が形成されていない場合などに比べて、棒状治具31を容易に精度よく地盤10中に挿入できる。その結果、回転杭20をより容易に精度よく地盤10中に配置することが可能である。
【0033】
(第2実施形態)
次に、本発明に係る第2実施形態に係る横向き回転杭の施工方法を、
図3および
図4を参照して説明する。
図3に示す第2実施形態の施工方法を用いて構築する水抜き構造では、延長杭25を備えている他は第2実施形態の水抜き構造と同様である。また
図4(a)〜(e)に示す第2実施形態の施工方法では、第3工程から第5工程を備えている他は、第1実施形態と同様である。そのため第1実施形態における構成要素と同一の部分については同一の符号を付し、その説明を省略し、異なる点についてのみ説明する。
【0034】
第2実施形態の水抜き構造は、
図3に示すように、斜面11を有する地盤10中に、回転杭20が延長杭25と接続された状態で、斜面11から横向きに貫入されている。
【0035】
延長杭25は、杭本体部21の外径と同等または同等以下の外径を有する円管状の鋼管からなり、杭本体部21の厚みと同等または薄肉に形成されている。延長杭25の先端側は、杭本体部21の後端側に接続されている。図示の例では、延長杭25の管壁には複数の貫通孔23が設けられているが、貫通孔23が無くてもよい。さらに、延長杭25に前記羽根部22が設けられていてもよい。
杭本体部21(回転杭20)と延長杭25とは、接続部45を介して接続される。接続部45の構造は、杭本体部21と延長杭25とを、内部を連通させた状態で接続できれば特に限定されない。
【0036】
延長杭25が接続された回転杭20は、斜面11における予め設定された位置に、予め設定された水平度で、地盤10中に貫入されている。水平度は水平に対する傾斜角度であり、水平に対して平行となる0度を含む。
延長杭25が接続された回転杭20は、杭本体部21の先端側の羽根部22により地盤10中に固定され、延長杭25の後端開口を斜面11の外に臨ませた状態で配置されている。
【0037】
第2実施形態の施工方法を用いて水抜き構造を構築するには以下のように行う。
図4(a)(b)に示すように、第1実施形態と同様に、第1工程で棒状治具31を地盤10中に挿入し、第2工程で回転杭20を棒状治具31に沿って地盤10中に貫入した後、
図4(c)(d)に示すように、第3工程および第4工程を実施する。
【0038】
次に、
図4(c)(d)に示すように、第3工程で回転杭20の後端側に回転治具37を固定するとともに、第4工程で回転杭20の後端側に延長杭25を接続する。
第3工程で用いる回転治具37は、回転杭20の杭本体部21より小さい外径を有する鋼材製の棒材からなる。回転治具37の外径は延長杭25の内径よりも小さい。回転治具37の先端側には、杭本体部21と着脱可能に固定される第1固定部39が設けられ、回転治具37の後端側には、回転装置35と着脱可能に固定される第2固定部41が設けられている。固定部39,41の構造は回転力を伝達できる構造であれば特に限定されない。また杭本体部21の内部を閉塞して土砂の流入を防止するためのパッキン43を回転治具37の先端部に設けてもよい。
第3工程では、固定部39,41を用い、回転杭20と回転治具37とを固定するとともに回転治具37の後端側に回転装置35を固定する。
【0039】
この第3工程とともに第4工程を行う。第4工程では、延長杭25を回転治具37の外周に配置し、延長杭25の先端側と回転杭20の杭本体部21の後端側とを前記接続部45で接続する。なお、回転治具37の外周への延長杭25の配置は、第2固定部41から回転装置35を離脱させた状態で実施することができる。
第3工程および第4工程を実施し、回転杭20に回転治具37を固定するとともに延長杭25を接続した状態では、回転治具37は延長杭25の内側を貫通している。また、延長杭25と回転治具37とは回転杭20を介して間接的に接合されているだけで、直接的には接合されていない。
【0040】
次に、
図4(e)に示すように第5工程を実施する。
第5工程では、回転装置35が回転治具37を回転させることで、回転治具37を介して回転杭20に回転力を伝達する。
これにより、回転杭20が回転し、回転杭20の先端側の羽根部22の回転で推進力が生じ、回転杭20が地盤10中に貫入する。同時に、回転杭20に接続された延長杭25も回転杭20とともに回転しつつ地盤10中に貫入する。
【0041】
回転杭20が十分に地盤10中に貫入した時点で、回転装置35および回転治具37を取り外し、延長杭25が接続された回転杭20を地盤10中に貫入する作業を終了する。
このようにして回転杭20を施工し、適宜、後工程を行うことで、水抜き構造を構築する。
【0042】
以上説明したように、本実施形態に係る回転杭20の施工方法によれば、地盤10中に貫入した回転杭20に回転治具37を固定し、回転治具37を介して回転杭20に回転力を伝達している。そのため回転杭20の後端側に延長杭25を接続して横向き回転杭を長尺に構成していても、延長杭25を介さずに回転杭20の羽根部22に回転力を付与できる。これにより、貫入時に延長杭25に大きな捻れ方向の荷重が負荷されることを防止でき、延長杭25に必要な強度を軽減できる。その結果、延長杭25の構造や、延長杭25と回転杭20との接続部45の構造の自由度を向上できる。例えば延長杭25の肉厚を薄く形成したり、貫通孔23の位置や面積を調整したりすることも可能である。つまり本実施形態のような、水抜き用の穴の開いた強度の弱い延長杭25であったとしても、その延長杭25を破損することなく貫入させることができる。
【0043】
(第3実施形態)
次に、本発明に係る第3実施形態に係る横向き回転杭の施工方法を、
図5および
図6を参照して説明する。
図5に示す第3実施形態の施工方法を用いて構築する水抜き構造では、延長杭27が異なる他は第2実施形態の水抜き構造と同様である。また
図6(a)〜(e)に示す第3実施形態の施工方法では、第3工程および第4工程が異なる他は、第2実施形態と同様である。そのため第2実施形態における構成要素と同一の部分については同一の符号を付し、その説明を省略し、異なる点についてのみ説明する。
【0044】
第3実施形態の水抜き構造では、
図5に示すように、第2実施形態よりも細い延長杭27を用いている。この延長杭27は、回転杭20の杭本体部21より細い外径を有する円管状の鋼管からなる。延長杭27の先端側は、接続部47において杭本体部21の後端側の内部に嵌合して接続されている。
【0045】
第3実施形態の施工方法を用いて水抜き構造を構築するには以下のように行う。
図6(a)(b)に示すように、第2実施形態と同様に、第1工程で棒状治具31を地盤10中に挿入し、第2工程で回転杭20を棒状治具31に沿って地盤10中に貫入した後、
図6(c)(d)に示すように、第3工程および第4工程を実施する。
【0046】
第3工程では、
図6(c)に示すように、回転杭20の後端側と延長杭27の前端側とを接続部47で接続する。接続部47では、例えば杭本体部21の内部に延長杭27を螺合させたり、継手により締結したりすることで接続してもよい。
【0047】
第4工程では、
図6(d)に示すように、回転治具49の先端側を回転杭20の後端側に固定する。回転治具49は、延長杭27の外径よりも大きい内径を有する鋼材製の中空パイプからなる。回転治具49は、延長杭27を内側に収容した状態で、回転杭20の後端側に固定される。
回転杭20の後端側に延長杭27を接続するとともに回転治具49を固定した状態では、延長杭27と回転治具49とが回転杭20を介して間接的に接合されているだけで、直接的には接合されていない。
【0048】
回転治具49の後端側に着脱可能に回転装置35を接続した後、図
6(e)に示す第5工程を第2実施形態と同様に行う。すなわち、回転装置35の回転力を、回転治具49を介して回転杭20に伝達し、延長杭27が接続された回転杭20を回転させて地盤10中に貫入するとともに、適宜、後工程を行うことで水抜き構造を構築する。
【0049】
以上のような第3実施形態に係る回転杭20の施工方法でも第2実施形態と同様の作用効果が得られる。
すなわち、この第3実施形態でも、地盤10中に貫入した回転杭20に回転治具49を固定し、回転治具49を介して回転杭20に回転力を伝達している。そのため、回転杭20の後端側に延長杭27を接続して回転杭20を長尺に構成していても、延長杭27を介さずに回転杭20の羽根部22に回転力を付与できる。これにより、貫入時に延長杭27に大きな捻れ方向の荷重が負荷されることを防止でき、延長杭27に必要な強度を軽減できる。その結果、第2実施形態と同様に、延長杭27を有する回転杭20における構造の自由度を向上でき、例えば延長杭27の肉厚を薄く形成したり、貫通孔23の位置や面積を調整したりすることも可能である。
【0050】
(他の実施形態)
図7は第4実施形態の施工方法において棒状治具を挿入する工程を示している。この実施形態では、棒状治具31を挿入する工程において用いる棒状治具31が異なる他は、第1実施形態から第3実施形態と同様にして斜面の水抜き構造を構築する。
【0051】
第4実施形態の棒状治具31は、先端に掘削ビット(掘削部)51を有している。この棒状治具31を用いて、先行穴33を形成することなく斜面11から地盤10を掘削して棒状治具31を挿入してもよい。また先行穴33を形成した後、斜面11から先行穴33の周囲の地盤10を掘削して棒状治具31を挿入してもよい。
地盤10中に棒状治具31を挿入した後は、第1実施形態から第3実施形態と同様にして、回転杭20を斜面11から地盤10中に貫入すれることができる。
【0052】
このような第4実施形態の施工方法であっても、第1実施形態から第3実施形態と同様の作用効果が得られる。さらに先端に掘削ビット51を有する棒状治具31で地盤10を掘削して棒状治具31を挿入するため、先行穴33を形成する作業を簡略化又無くすことができ、作業工程を簡略化できる。なお掘削ビット51に代えて、ドリル(掘削部)を採用することも可能である。また、掘削ビット51やドリルを備えることなく、棒状治具31を斜面11に向けて単に打ち込む(押し込む)ことにより挿入してもよい。
【0053】
図8は第5実施形態の施工方法において回転治具37を固定して回転杭20に回転力を伝達する工程を示している。この実施形態では、回転治具37を固定する工程において用いる回転治具37が異なる他は、第2実施形態と同様にして斜面11の水抜き構造を構築する。
【0054】
第5実施形態で用いる回転治具37は中空パイプからなる。この回転治具37を地盤10中に貫入させた回転杭20に固定した後、回転治具37の中空部に計測機器53を挿入し、回転杭20の状態を計測する。
例えば傾斜計を挿入し、回転杭20に固定された回転治具37全体の傾斜を計測することで、回転杭20の杭本体部21の位置や曲がり等の出来形を検出してもよい。またCCDカメラを挿入し、回転杭20の内側に侵入した土砂を観察してもよい。
【0055】
このような回転杭20の状態の計測は、第2実施形態において、回転杭20に回転治具37を固定した直後から、回転治具37を介して回転杭20に回転力を伝達して回転杭20および延長杭25を貫入した後までの、任意の時点で行うことが可能である。
【0056】
このような第5実施形態の施工方法であっても、第2実施形態と同様の作用効果が得られる。さらに回転治具37の中空部に計測機器53を挿入して回転杭20の状態を計測するので、回転杭20の貫入状態を容易に確認でき、回転杭20をより容易に精度よく配置することが可能であるとともに作業性も良好である。
【0057】
なお、本発明の技術的範囲は前記各実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
例えば上記では、延長杭25,27を設けない例や、回転杭20に1本の延長杭25,27を接続した例について説明したが、2本以上の延長杭25,27を接続してもよい。
【0058】
その他、本発明の趣旨に逸脱しない範囲で、前記各実施形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、前記した変形例を適宜組み合わせてもよい。