特許第6853662号(P6853662)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6853662
(24)【登録日】2021年3月16日
(45)【発行日】2021年3月31日
(54)【発明の名称】表示パネルおよび表示装置
(51)【国際特許分類】
   G09G 3/30 20060101AFI20210322BHJP
   G09G 3/3233 20160101ALI20210322BHJP
   G09G 3/20 20060101ALI20210322BHJP
   H01L 51/50 20060101ALI20210322BHJP
【FI】
   G09G3/30 J
   G09G3/3233
   G09G3/20 612T
   G09G3/20 611H
   G09G3/20 642A
   G09G3/20 624B
   H05B33/14 A
【請求項の数】7
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2016-249338(P2016-249338)
(22)【出願日】2016年12月22日
(65)【公開番号】特開2018-105917(P2018-105917A)
(43)【公開日】2018年7月5日
【審査請求日】2019年7月9日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】514188173
【氏名又は名称】株式会社JOLED
(74)【代理人】
【識別番号】110001357
【氏名又は名称】特許業務法人つばさ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山本 哲郎
【審査官】 橋本 直明
(56)【参考文献】
【文献】 特開2016−009156(JP,A)
【文献】 国際公開第2015/111118(WO,A1)
【文献】 韓国公開特許第10−2015−0068154(KR,A)
【文献】 特開2011−175103(JP,A)
【文献】 特開2003−222902(JP,A)
【文献】 特開2003−208126(JP,A)
【文献】 特開2016−085297(JP,A)
【文献】 特開2012−163787(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G09G 3/30
G09G 3/20
G09G 3/3233
H01L 51/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
各々が発光素子と画素回路とを含む複数の画素を備え、
各前記画素回路は、
前記発光素子に流れる電流を制御する駆動トランジスタと、
映像信号に対応した信号電圧の保持と、保持した前記信号電圧の前記駆動トランジスタのゲートへの印加とを行うメモリ回路と、
前記信号電圧を前記メモリ回路に書き込む書き込みトランジスタと、
前記駆動トランジスタのゲートと、前記発光素子のアノードとの間に設けられた第1保持容量と
を有し、
前記メモリ回路は、
第1の端子および第2の端子を有し、前記第1の端子および前記第2の端子の間に前記信号電圧を保持する第2保持容量と、
前記駆動トランジスタのゲートと前記第1の端子に接続された第1スイッチングトランジスタと、
前記第2の端子と、前記駆動トランジスタのソースまたはドレインに電気的に接続された、前記発光素子の発光・消光を制御する電圧が印可される電源線とに接続された第2スイッチングトランジスタと
を有する
表示パネル。
【請求項2】
各々が発光素子と画素回路とを含む複数の画素を有する表示パネルと、
複数の前記画素を駆動する駆動回路と
を備え、
各前記画素回路は、
前記発光素子に流れる電流を制御する駆動トランジスタと、
映像信号に対応した信号電圧の保持と、保持した前記信号電圧の前記駆動トランジスタのゲートへの印加とを行うメモリ回路と、
前記信号電圧を前記メモリ回路に書き込む書き込みトランジスタと、
前記駆動トランジスタのゲートと、前記発光素子のアノードとの間に設けられた第1保持容量と
を有し、
前記メモリ回路は、
第1の端子および第2の端子を有し、前記第1の端子および前記第2の端子の間に前記信号電圧を保持する第2保持容量と、
前記駆動トランジスタのゲートと前記第1の端子に接続された第1スイッチングトランジスタと、
前記第2の端子と、前記駆動トランジスタのソースまたはドレインに電気的に接続された、前記発光素子の発光・消光を制御する電圧が印可される電源線に接続された第2スイッチングトランジスタと
を有する
表示装置。
【請求項3】
前記駆動回路は、画素行ごとに、前記第2保持容量に、前記信号電圧を書き込み、
前記駆動回路は、各前記画素において、前記第2保持容量に書き込まれた前記信号電圧を一括して前記駆動トランジスタのゲートに転送する
請求項2に記載の表示装置。
【請求項4】
前記駆動回路は、各前記書き込みトランジスタをオンした状態で、画素行ごとに各第2スイッチングトランジスタをオンさせることにより、前記第2保持容量に、前記信号電圧を書き込み、
前記駆動回路は、各前記画素において、各前記書き込みトランジスタをオフした状態で、各前記第1スイッチングトランジスタおよび各第2スイッチングトランジスタをオンすることにより、前記第2保持容量に書き込まれた前記信号電圧を一括して前記駆動トランジスタのゲートに転送する
請求項3に記載の表示装置。
【請求項5】
前記駆動回路は、各前記発光素子が発光している時に、前記第2保持容量に、前記信号電圧を書き込む
請求項3に記載の表示装置。
【請求項6】
前記駆動回路は、各前記画素において、各前記発光素子が消光している時に、前記第2保持容量に、前記第2保持容量に書き込まれた前記信号電圧を一括して前記駆動トランジスタのゲートに転送する
請求項3に記載の表示装置。
【請求項7】
各々が発光素子と画素回路とを含む複数の画素を有する表示パネルと、
複数の前記画素を駆動する駆動回路と
を備え、
各前記画素回路は、
前記発光素子に流れる電流を制御する駆動トランジスタと、
映像信号に対応した信号電圧の保持と、保持した前記信号電圧の前記駆動トランジスタのゲートへの印加とを行うメモリ回路と、
前記信号電圧を前記メモリ回路に書き込む書き込みトランジスタと、
前記駆動トランジスタのゲートと、前記発光素子のアノードとの間に設けられた第1保持容量と
を有し、
前記メモリ回路は、
前記駆動トランジスタのゲートと前記書き込みトランジスタのソースまたはドレインに接続された第1スイッチングトランジスタと、
前記第1スイッチングトランジスタと前記書き込みトランジスタとの接続点と、第1の電源線との間の電流経路に直列に設けられた、前記信号電圧を保持する第2保持容量、および第2スイッチングトランジスタと
を有し、
各前記画素において、前記駆動トランジスタのソースまたはドレインは、第2の電源線に電気的に接続されており、
前記駆動回路は、画素行ごとに、前記第2保持容量に、前記信号電圧を書き込み、
前記駆動回路は、各前記画素において、前記第2保持容量に書き込まれた前記信号電圧を一括して前記駆動トランジスタのゲートに転送し、
前記駆動回路は、各前記書き込みトランジスタをオンした状態で、画素行ごとに各第2スイッチングトランジスタをオンさせることにより、前記第2保持容量に、前記信号電圧を書き込み、
前記駆動回路は、各前記画素において、各前記書き込みトランジスタをオフした状態で、各前記第1スイッチングトランジスタおよび各第2スイッチングトランジスタをオンさせることにより、前記第2保持容量に書き込まれた前記信号電圧を一括して前記駆動トランジスタのゲートに転送する
表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本技術は、表示パネルおよび表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、映像表示を行う表示装置の分野では、画素の発光素子として、流れる電流値に応じて発光輝度が変化する電流駆動型の光学素子、例えば有機EL(electro luminescence)素子を用いた表示装置が開発され、商品化が進められている。有機EL素子は、液晶素子などと異なり自発光素子である。そのため、有機EL素子を用いた表示装置(有機EL表示装置)では、光源(バックライト)が必要ないので、光源を必要とする液晶表示装置と比べて、軽量化、薄型化、高輝度化することができる。さらに、有機EL素子の応答速度は、数μs程度と非常に高速であるので、動画表示時の残像が発生しない。そのため、有機EL表示装置は、次世代のフラットパネルディスプレイの主流になると期待されている。
【0003】
アクティブマトリックス型の有機EL表示装置においては、1水平期間(1H)ごとに各走査線が順次走査されると共に、映像信号に対応する信号電圧がサンプリングされ、保持容量に書き込まれる。即ち、1H周期の線順次走査によって、信号電圧の書込動作が行われる。また、有機EL表示装置では、駆動トランジスタの閾値電圧や移動度が画素ごとに異なる場合には、有機EL素子の発光輝度がばらつき、画面の一様性(ユニフォーミティ)が損なわれてしまう。そこで、アクティブマトリックス型の有機EL表示装置では、駆動トランジスタの閾値電圧や移動度のばらつきに起因する発光輝度のばらつきを低減する補正動作が、1H周期の線順次走査に併せて行われる(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2013−200541号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記の特許文献1に記載の発明では、上述の補正動作による補正能力があまり高くないという問題があった。
【0006】
本技術はかかる問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、上述の補正動作による補正能力を改善することの可能な表示パネルおよび表示装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本技術の一実施の形態に係る表示パネルは、各々が発光素子と画素回路とを含む複数の画素を備えている。各画素回路は、発光素子に流れる電流を制御する駆動トランジスタと、映像信号に対応した信号電圧の保持と、保持した信号電圧の駆動トランジスタのゲートへの印加とを行うメモリ回路とを有している。各画素回路は、さらに、信号電圧をメモリ回路に書き込む書き込みトランジスタと、駆動トランジスタのゲートと、発光素子のアノードとの間に設けられた第1保持容量とを有している。メモリ回路は、第1の端子および第2の端子を有し、第1の端子および第2の端子の間に信号電圧を保持する第2保持容量と、駆動トランジスタのゲートと第2保持容量の第1の端子に接続された第1スイッチングトランジスタとを有している。メモリ回路は、さらに、第2保持容量の第2の端子と、駆動トランジスタのソースまたはドレインに電気的に接続された、発光素子の発光・消光を制御する電圧が印可される電源線とに接続された第2スイッチングトランジスタとを有している。
【0008】
本技術の一実施の形態に係る表示装置は、各々が発光素子と画素回路とを含む複数の画素を有する表示パネルと、複数の画素を駆動する駆動回路とを備えている。この表示装置において、表示パネルは、上記の表示パネルと同じ構成要素を有している。
【0009】
本技術の一実施の形態に係る表示パネルおよび表示装置では、各画素回路にメモリ回路が設けられている。このメモリ回路には、信号電圧を保持する第2保持容量と、駆動トランジスタのゲートと第2保持容量の第1の端子とに接続された第1スイッチングトランジスタが設けられている。このメモリ回路には、さらに、第2保持容量の第2の端子と、駆動トランジスタのソースまたはドレインに電気的に接続された、発光素子の発光・消光を制御する電圧が印可される電源線とに接続された第2スイッチングトランジスタが設けられている。これにより、駆動トランジスタのゲートに、メモリ回路の寄生容量が付加されるのを避けることができるので、ブートストラップゲインの、メモリ回路の寄生容量によるロスを抑制することができる。
【発明の効果】
【0010】
本技術の一実施の形態に係る表示パネルおよび表示装置によれば、ブートストラップゲインの、メモリ回路の寄生容量によるロスを抑制することができるようにしたので、上述の補正動作による補正能力を改善することができる。なお、本技術の効果は、ここに記載された効果に必ずしも限定されず、本明細書中に記載されたいずれの効果であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本技術による一実施の形態に係る表示装置の概略構成図である。
図2】各画素の回路構成の一例を表す図である。
図3】1つの画素に着目したときの電源線、信号線および制御線に印加される電圧、駆動トランジスタのゲート電圧およびソース電圧、ならびに接続点Aの電圧の経時変化の一例を表す図である。
図4】画素の動作の一例を表す図である。
図5】画素の動作の一例を表す図である。
図6】画素の動作の一例を表す図である。
図7】画素の動作の一例を表す図である。
図8】駆動トランジスタのソース電圧の経時変化の一例を表す図である。
図9】画素の動作の一例を表す図である。
図10】画素の動作の一例を表す図である。
図11】画素の動作の一例を表す図である。
図12】画素の動作の一例を表す図である。
図13】各画素の回路構成の一変形例を表す図である。
図14】上記実施の形態およびその変形例に係る表示装置の一適用例の外観を表す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本技術を実施するための形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、説明は以下の順序で行う。

1.実施の形態(表示装置)
2.変形例(表示装置)
3.適用例(電子機器)
【0013】
<1.実施の形態>
[構成]
図1は、本技術の一実施の形態に係る表示装置1の概略構成を表したものである。表示装置1は、例えば、表示パネル10、コントローラ20およびドライバ30を備えている。コントローラ20およびドライバ30が、本技術の「駆動回路」の一具体例に対応する。表示パネル10は、複数の画素11が行列状に配置されてなる。コントローラ20およびドライバ30は、外部から入力された映像信号Dinおよび同期信号Tinに基づいて、複数の画素11を駆動する。
【0014】
(表示パネル10)
図2は、表示パネル10に含まれる各画素11の回路構成の一例を表したものである。表示パネル10は、コントローラ20およびドライバ30によって各画素11がアクティブマトリクス駆動されることにより、外部から入力された映像信号Dinおよび同期信号Tinに基づく画像を表示する。表示パネル10は、例えば、行方向に延在する複数の制御線WSL、複数の制御線CTL1および複数の制御線CTL2と、列方向に延在する複数の信号線DTLおよび複数の電源線DSLを有している。なお、複数の電源線DSLは、行方向に延在していてもよい。表示パネル10は、さらに、制御線WSLと信号線DTLとが互いに交差する箇所ごとに1つずつ設けられた複数の画素11を有している。
【0015】
制御線WSLは、各画素11の選択に用いられるものである。信号線DTLは、映像信号Dinに応じた信号電圧Vsigの、各画素11への供給に用いられるものであり、信号電圧Vsigを含むデータパルスを各画素11に供給するものである。電源線DSLは、各画素11に電力を供給するものである。制御線CTL1は、後述のスイッチングトランジスタTr3のオンオフを制御する制御パルスを各画素11に供給するものである。制御線CTL2は、後述のスイッチングトランジスタTr4のオンオフを制御する制御パルスを各画素11に供給するものである。スイッチングトランジスタTr3が、本技術の「第1スイッチングトランジスタ」の一具体例に対応する。スイッチングトランジスタTr4が、本技術の「第2スイッチングトランジスタ」の一具体例に対応する。
【0016】
各画素11は、例えば、画素回路12と、有機EL素子13とを有している。有機EL素子13が、本技術の「発光素子」の一具体例に対応する。有機EL素子13は、例えば、アノード電極、有機層およびカソード電極が順に積層された構成を有している。有機EL素子13は、素子容量(後述の素子容量Cel)を有している。画素回路12は、有機EL素子13の発光・消光を制御する。画素回路12は、後述の書込走査によって各画素11に書き込んだ電圧を保持する機能を有している。画素回路12は、例えば、駆動トランジスタTr1、書き込みトランジスタTr2、保持容量Cs1およびメモリ回路12Aを含んで構成されている。メモリ回路12Aは、例えば、スイッチングトランジスタTr3,Tr4および保持容量Cs2を含んで構成されている。保持容量Cs1が、本技術の「第1保持容量」の一具体例に対応する。保持容量Cs2が、本技術の「第2保持容量」の一具体例に対応する。
【0017】
書き込みトランジスタTr2は、メモリ回路12Aに対する、映像信号Dinに対応した信号電圧Vsigの書き込みを制御する。具体的には、書き込みトランジスタTr2は、信号線DTLの電圧をサンプリングするとともに、サンプリングにより得られた電圧をメモリ回路12Aに書き込む。駆動トランジスタTr1は、有機EL素子13に直列に接続されている。駆動トランジスタTr1は、有機EL素子13を駆動する。駆動トランジスタTr1は、書き込みトランジスタTr2によってサンプリングされた電圧の大きさに応じて有機EL素子13に流れる電流を制御する。
【0018】
保持容量Cs1は、駆動トランジスタTr1のゲート−ソース間に所定の電圧を保持するものである。保持容量Cs1は、駆動トランジスタTr1のゲートと、有機EL素子13のアノードとの間に設けられている。
【0019】
メモリ回路12Aは、信号電圧Vsigの保持と、保持した信号電圧Vsigの駆動トランジスタTr1のゲートへの印加とを行う。保持容量Cs2は、信号電圧Vsigを保持するものである。スイッチングトランジスタTr3は、駆動トランジスタTr1のゲートと保持容量Cs2との間に設けられている。スイッチングトランジスタTr3は、さらに、駆動トランジスタTr1のゲートと書き込みトランジスタTr2のソースまたはドレインとの間に設けられている。スイッチングトランジスタTr4は、保持容量Cs2の、スイッチングトランジスタTr3側とは反対側に設けられている。具体的には、スイッチングトランジスタTr4は、保持容量Cs2と、電源線DSLとの間に設けられている。なお、画素回路12は、上述の4Tr2Cの回路に対して各種容量やトランジスタを付加した回路構成となっていてもよいし、上述の4Tr2Cの回路構成とは異なる回路構成となっていてもよい。
【0020】
駆動トランジスタTr1、書き込みトランジスタTr2およびスイッチングトランジスタTr3,Tr4は、例えば、nチャネルMOS型の薄膜トランジスタ(TFT(Thin Film Transistor))により形成されている。なお、これらのトランジスタは、pチャネルMOS型のTFTにより形成されていてもよい。これらのトランジスタがエンハンスメント型であるものとして、以下の説明がなされているが、これらのトランジスタが、デプレッション型であってもよい。
【0021】
各信号線DTLは、後述の水平セレクタ31の出力端と、書き込みトランジスタTr2のソースまたはドレインとに接続されている。各制御線WSLは、後述のタイミング生成回路22の一の出力端と、書き込みトランジスタTr2のゲートとに接続されている。各電源線DSLは、後述の電源回路23の出力端と、駆動トランジスタTr1のソースまたはドレインとに接続されている。各電源線DSLは、さらに、電源回路23の出力端と、スイッチングトランジスタTr4ソースまたはドレインとに接続されている。各電源線DSLは、互いに電気的に接続されており、共通の電位となっている。各画素11において、駆動トランジスタTr1のソースまたはドレインは、電位が互いに共通の複数の電源線DSLのいずれか1つの電源線DSLに電気的に接続されている。各制御線CTL1は、後述のタイミング生成回路22の他の出力端と、スイッチングトランジスタTr3のゲートとに接続されている。各制御線CTL2は、後述の制御スキャナ32の出力端と、スイッチングトランジスタTr4のゲートとに接続されている。
【0022】
書き込みトランジスタTr2のゲートは、制御線WSLに接続されている。書き込みトランジスタTr2のソースまたはドレインが信号線DTLに接続されている。書き込みトランジスタTr2のソースおよびドレインのうち信号線DTLに未接続の端子がスイッチングトランジスタTr3のソースまたはドレインに接続されている。書き込みトランジスタTr2のソースおよびドレインのうち信号線DTLに未接続の端子は、さらに、保持容量Cs2の一端に接続されている。スイッチングトランジスタTr3のゲートが制御線CTL1に接続されている。スイッチングトランジスタTr3のソースまたはドレインが、書き込みトランジスタTr2のソースおよびドレインのうち信号線DTLに未接続の端子と、保持容量Cs2の一端とに接続されている。スイッチングトランジスタTr3のソースおよびドレインのうち書き込みトランジスタTr2および保持容量Cs2に未接続の端子は、駆動トランジスタTr1のゲートと、保持容量Cs1の一端とに接続されている。駆動トランジスタTr1のゲートが、スイッチングトランジスタTr3のソースおよびドレインのうち保持容量Cs2および書き込みトランジスタTr2に未接続の端子と、保持容量Cs1の一端とに接続されている。駆動トランジスタTr1のソースまたはドレインが電源線DSLに接続されている。駆動トランジスタTr1のソースおよびドレインのうち電源線DSLに未接続の端子が有機EL素子13のアノードと、保持容量Cs1の他端とに接続されている。保持容量Cs1の一端が駆動トランジスタTr1のゲートに接続されている。保持容量Cs1の他端が駆動トランジスタTr1のソースおよびドレインのうち電源線DSLに未接続の端子に接続されている。保持容量Cs2の一端が書き込みトランジスタTr2のソースおよびドレインのうち信号線DTLに未接続の端子に接続されている。保持容量Cs2の一端は、さらに、スイッチングトランジスタTr3のソースおよびドレインのうち駆動トランジスタTr1のゲートに未接続の端子に接続されている。保持容量Cs2の他端は、スイッチングトランジスタTr4のソースまたはドレインに接続されている。スイッチングトランジスタTr4のゲートは、制御線CTL2に接続されている。スイッチングトランジスタTr4のソースまたはドレインは、保持容量Cs2に接続されている。スイッチングトランジスタTr4のソースおよびドレインのうち保持容量Cs2とは反対側の端子が電源線DSLに接続されている。
【0023】
ドライバ30は、例えば、水平セレクタ31および制御スキャナ32を有している。
【0024】
水平セレクタ31は、例えば、制御信号の入力に応じて(同期して)、映像信号処理回路21から入力されたアナログの信号電圧Vsigを、各信号線DTLに印加する。水平セレクタ31は、例えば、2種類の電圧(Vofs、Vsig)を出力可能となっている。具体的には、水平セレクタ31は、タイミング生成回路22により選択された画素11へ、信号線DTLを介して2種類の電圧(Vofs、Vsig)を供給する。信号電圧Vsigは、映像信号Dinに対応する電圧値となっている。固定電圧Vofsは、映像信号Dinとは無関係の一定電圧である。信号電圧Vsigの最小電圧は固定電圧Vofsよりも低い電圧値となっており、信号電圧Vsigの最大電圧は固定電圧Vofsよりも高い電圧値となっている。水平セレクタ31は、1水平期間ごとに、信号電圧Vsigを含むデータパルスを各信号線DTLに出力する。水平セレクタ31は、データパルスとして、信号電圧Vsigおよび固定電圧Vofsの2値からなるパルスを各信号線DTLに出力する。
【0025】
制御スキャナ32は、例えば、制御信号の入力に応じて(同期して)、各画素11のスイッチングトランジスタTr4のオンオフ動作を制御する。制御スキャナ32は、例えば、2種類の電圧(Von、Voff)を出力可能となっている。具体的には、制御スキャナ32は、駆動対象の画素11へ、制御線CTL2を介して2種類の電圧(Von、Voff)を供給し、スイッチングトランジスタTr4のオンオフ制御を行う。オン電圧Vonは、スイッチングトランジスタTr4のオン電圧以上の値となっている。オフ電圧Voffは、スイッチングトランジスタTr4のオン電圧よりも低い値となっており、かつ、オン電圧Vonよりも低い値となっている。
【0026】
制御スキャナ32は、後述のメモリ書き込み時において、複数の画素11を所定の単位ごとに走査する。具体的には、制御スキャナ32は、1フレーム期間において、各制御線CTL2に制御パルスを順次、出力する。制御スキャナ32は、例えば、制御パルスの入力に応じて(同期して)、複数の制御線CTL2を所定のシーケンスで選択することにより、メモリ書き込みを所望の順番で実行させる。ここで、メモリ書き込みとは、メモリ回路12A(保持容量Cs2)に信号電圧Vsigを書き込むことを指している。
【0027】
(コントローラ20)
次に、コントローラ20について説明する。コントローラ20は、例えば、映像信号処理回路21、タイミング生成回路22および電源回路23を有している。
【0028】
映像信号処理回路21は、例えば、外部から入力されたデジタルの映像信号Dinに対して所定の補正を行い、それにより得られた映像信号に基づいて、信号電圧Vsigを生成する。映像信号処理回路21は、例えば、生成した信号電圧Vsigを水平セレクタ31に出力する。所定の補正としては、例えば、ガンマ補正や、オーバードライブ補正などが挙げられる。
【0029】
タイミング生成回路22は、ドライバ30内の各回路が連動して動作するように制御するものである。タイミング生成回路22は、例えば、外部から入力された同期信号Tinに応じて(同期して)、ドライバ30内の各回路に対して制御信号を出力する。タイミング生成回路22は、さらに、表示パネル10内の各制御線CTL1および各制御線WSLに対して所定の制御信号を出力する。タイミング生成回路22は、例えば、2種類の電圧(Von、Voff)を出力可能となっている。具体的には、タイミング生成回路22は、駆動対象の画素11へ、制御線CTL1および制御線WSLを介して2種類の電圧(Von、Voff)を供給し、書き込みトランジスタTr2およびスイッチングトランジスタTr3のオンオフ制御を行う。オン電圧Vonは、書き込みトランジスタTr2およびスイッチングトランジスタTr3のオン電圧以上の値となっている。オフ電圧Voffは、書き込みトランジスタTr2およびスイッチングトランジスタTr3のオン電圧よりも低い値となっており、かつ、オン電圧Vonよりも低い値となっている。
【0030】
電源回路23は、水平セレクタ31、制御スキャナ32、映像信号処理回路21およびタイミング生成回路22等の種々の回路で必要となる種々の固定電圧を生成し、供給する。電源回路23は、さらに、表示パネル10内の各電源線DSLで必要となる種々の固定電圧を生成し、供給する。
【0031】
[動作]
次に、本実施の形態の表示装置1の動作(消光から発光までの動作)について説明する。本実施の形態では、有機EL素子13のI−V特性が経時変化しても、その影響を受けることなく、有機EL素子13の発光輝度を一定に保つようにするために、有機EL素子13のI−V特性の変動に対する補償動作を組み込んでいる。さらに、本実施の形態では、駆動トランジスタTr1の閾値電圧や移動度が経時変化しても、それらの影響を受けることなく、有機EL素子13の発光輝度を一定に保つようにするために、上記閾値電圧や上記移動度の変動に対する補正動作を組み込んでいる。
【0032】
図3において、閾値補正準備とは、駆動トランジスタTr1のゲート電圧を初期化する(具体的にはVofsにする)とともに、駆動トランジスタTr1のソース電圧を初期化する(具体的にはVssにする)ことを指している。閾値補正とは、駆動トランジスタTr1のゲート−ソース間電圧Vgsを駆動トランジスタTr1の閾値電圧Vthに近づける補正動作を指している。移動度補正とは、駆動トランジスタTr1のゲート−ソース間に保持される電圧(ゲート−ソース間電圧Vgs)を、駆動トランジスタTr1の移動度の大きさに応じて補正する動作を指している。信号電圧転送と、移動度補正とは、互いに別個のタイミングで行われることもある。本実施の形態では、信号書き込みと、移動度補正とが同時に(もしくは間髪空けずに連続して)行われる。信号電圧転送とは、メモリ回路12A(保持容量Cs2)に書き込まれた信号電圧Vsigを、駆動トランジスタTr1のゲートに対して転送する動作を指している。
【0033】
図3は、1つの画素11に着目したときの制御線WSL、電源線DSL、信号線DTLおよび制御線CTL1,CTL2に印加される電圧,駆動トランジスタTr1のゲート電圧Vgおよびソース電圧Vsおよび接続点Aの電圧Vaの経時変化の一例を表したものである。図4図7図9図11は、画素11の動作の一例を表したものである。図8は、駆動トランジスタTr1のソース電圧Vsの経時変化の一例を表したものである。
【0034】
なお、電源線DSLの電圧は、表示パネル10内の全ての電源線DSLに対して同時に印加される電圧となっている。制御線CTL1の電圧についても、表示パネル10内の全ての制御線CTL1に対して同時に印加される電圧となっている。制御線CTL2における消光時のオン電圧については、表示パネル10内の全ての制御線CTL2に対して同時に印加される電圧となっている。制御線CTL2における発光時のオン電圧については、表示パネル10内の各制御線CTL2に対して線順次に印加される電圧となっている。
【0035】
(メモリ書き込み)
まず、コントローラ20およびドライバ30は、メモリ回路12A(保持容量Cs2)に、信号電圧Vsigを書き込む。具体的には、コントローラ20およびドライバ30は、各有機EL素子13が発光している時に、画素行ごとに、メモリ回路12A(保持容量Cs2)に、信号電圧Vsigを書き込む。つまり、コントローラ20およびドライバ30は、各書き込みトランジスタTr2をオンした状態で、画素行ごとに各スイッチングトランジスタTr4をオンさせることにより、メモリ回路12A(保持容量Cs2)に、信号電圧Vsigを書き込む。
【0036】
具体的には、各有機EL素子13が発光している時に、信号線DTLの電圧がVsigとなっており、書き込みトランジスタTr2がオンしており、さらにスイッチングトランジスタTr3がオフしているとする。この時に、タイミング生成回路22は、画素行ごとに、制御線CTL2の電圧をVoffからVonに変化させて、スイッチングトランジスタTr4をオンさせる。これにより、各有機EL素子13が発光している時に、画素行ごとに、メモリ回路12A(保持容量Cs2)に信号電圧Vsigが書き込まれ、保持容量Cs2間に電圧(Vcc−Vsig)が印加される。(T13、図4)。
【0037】
タイミング生成回路22は、一定時間経過後(例えば1水平期間経過後)、画素行ごとに、制御線CTL2の電圧をVonからVoffに変化させて、スイッチングトランジスタTr4をオフさせる(T14)。このとき、書き込みトランジスタTr2はオンしたままであり、信号線DTLの電圧がそのまま、スイッチングトランジスタTr3と書き込みトランジスタTr2との接続点Aに入力されている。その一方で、スイッチングトランジスタTr4がオフしているので、保持容量Cs2に保持されている電圧は、電圧(Vcc−Vsig)のまま変化しない。また、このとき、スイッチングトランジスタTr3はオフしているので、駆動トランジスタTr1のゲート−ソース間電圧Vgsは変化せず、有機EL素子13には、電流Idsが流れる。
【0038】
(消光)
次に、コントローラ20およびドライバ30は、有機EL素子13を消光させる。具体的には、コントローラ20およびドライバ30は、各有機EL素子13が発光している時に、全画素11一括で、有機EL素子13を消光させる。
【0039】
具体的には、各有機EL素子13が発光している時に、電源回路23が、全画素11一括で、電源線DSLの電圧をVccからVssに下げる(T1)。このとき、固定電圧Vssが有機EL素子13の閾値電圧Vthelおよびカソード電圧Vcatの和(Vthel+Vcat)よりも小さくなっている。そのため、ソース電圧VsがVssまで下がると、有機EL素子13が消光し、駆動トランジスタTr1における電源線DSL側の端子がソースとなる。このとき、保持容量Cs1を介したカップリングによりゲート電圧Vgも下がり、有機EL素子13のアノードがVssに充電される。
【0040】
(閾値補正準備)
次に、コントローラ20およびドライバ30は、駆動トランジスタTr1のゲート−ソース間電圧Vgsを駆動トランジスタTr1の閾値電圧Vthに近づける閾値補正の準備を行う。具体的には、コントローラ20およびドライバ30は、各有機EL素子13が消光している時(Vブランキング期間)に、全画素11一括で、閾値補正の準備を行う。
【0041】
具体的には、まず、水平セレクタ31は、全画素11一括で、信号線DTLの電圧をVsigからVofsに変える(T2、図5)。すると、接続点Aの電圧VaがVsigからVofsに変化する。その後、タイミング生成回路22は、全画素11一括で、制御線CTL1の電圧をVoffからVonに変化させて、スイッチングトランジスタTr3をオンさせる(T3、図6)。これにより、駆動トランジスタTr1のゲート電圧VgがVofsとなる。このとき、駆動トランジスタTr1のゲート−ソース間電圧Vgsは、電圧(Vofs−Vss)となっている。電圧(Vofs−Vss)は駆動トランジスタTr1の閾値電圧Vthよりも大きくなっている。つまり、電圧(Vofs−Vss)が駆動トランジスタTr1の閾値電圧Vthよりも大きな値となるよう、固定電圧Vofs,Vssが設定されている。
【0042】
(閾値補正)
次に、コントローラ20およびドライバ30は、閾値補正を行う。具体的には、コントローラ20およびドライバ30は、各有機EL素子13が消光している時(Vブランキング期間)に、全画素11一括で、閾値補正を行う。
【0043】
具体的には、電源回路23は、全画素11一括で、電源線DSLの電圧をVssからVccに上げる(T4、図7)。すると、駆動トランジスタTr1のドレイン−ソース間に電流が流れ、ソース電圧Vsが上昇する。ここで、有機EL素子13の等価回路は図7に示されるようにダイオードと素子容量Celで表される。そのため、ソース電圧Vs(有機EL素子13のアノード電圧Vel)が有機EL素子13の閾値電圧Vthelおよびカソード電圧Vcatの和(Vthel+Vcat)よりも小さい限り、駆動トランジスタTr1のドレイン−ソース間に流れる電流は保持容量Cs1および素子容量Celを充電するために使われる。ソース電圧Vs(アノード電圧Vel)は、例えば、図8に示したように、時間の経過とともに上昇していく。その結果、保持容量Cs1が充電され、ゲート−ソース間電圧VgsがVthに近づいていく。
【0044】
その後、制御スキャナ32が、全画素11一括で、制御線WSLの電圧をVonからVoffに下げ、タイミング生成回路22が、全画素11一括で、制御線CTL1の電圧をVonからVoffに下げることにより、書き込みトランジスタTr2およびスイッチングトランジスタTr3をオフさせる(T5、T6、図9)。すると、駆動トランジスタTr1のゲートがフローティングとなる。
【0045】
次に、制御スキャナ32が、全画素11一括で、制御線CTL2の電圧をVoffからVonに上げることにより、スイッチングトランジスタTr4をオンさせる(T7、図10)。これにより、全画素11のスイッチングトランジスタTr4が一斉にオンする。その結果、接続点Aは、信号電圧Vsigとなる。
【0046】
(信号電圧転送・移動度補正)
次に、コントローラ20およびドライバ30は、信号電圧転送と、移動度補正とを行う。具体的には、コントローラ20およびドライバ30は、各有機EL素子13が消光している時(Vブランキング期間)に、各画素11において、信号電圧転送と、移動度補正とを一括して行う。コントローラ20およびドライバ30は、各画素11において、保持容量Cs2に書き込まれた信号電圧Vsigを一括して駆動トランジスタTr1のゲートに転送する。コントローラ20およびドライバ30は、各画素11において、各書き込みトランジスタTr2をオフした状態で、各スイッチングトランジスタTr3,Tr4をオンすることにより、保持容量Cs2に書き込まれた信号電圧Vsigを一括して駆動トランジスタTr1のゲートに転送する。
【0047】
具体的には、タイミング生成回路22が、全画素11一括で、制御線CTL1の電圧をVoffからVonに上げることにより、スイッチングトランジスタTr3をオンさせる(T8、図11)。これにより、スイッチングトランジスタTr3介して電荷分配が発生し、駆動トランジスタTr1のゲート電圧Vgは階調に応じた電圧値Vsig1となる。その結果、駆動トランジスタTr1は電源線DSLから、駆動トランジスタTr1のゲート電圧Vgに応じた電流を流し、駆動トランジスタTr1のソース電圧Vsは時間とともに上昇してゆく。このとき、駆動トランジスタTr1のソース電圧Vsが有機EL素子13の閾値電圧Vthelおよびカソード電圧Vcatの和(Vthel+Vcat)を越えない場合には、駆動トランジスタTr1の電流は、保持容量Cs1および素子容量Celを充電するのに使用される。このとき、駆動トランジスタTr1の閾値補正は完了しているので、駆動トランジスタTr1のドレイン−ソース間に流れる電流は駆動トランジスタTr1の移動度を反映したものとなる。
【0048】
(発光)
次に、コントローラ20およびドライバ30は、有機EL素子13を発光させる。具体的には、コントローラ20およびドライバ30は、各有機EL素子13が消光している時に、全画素11一括で、有機EL素子13を発光させる。
【0049】
具体的には、タイミング生成回路22が、全画素11一括で、制御線CTL1の電圧をVonからVoffに下げることにより、スイッチングトランジスタTr3をオフさせる(T9、図12)。すると、駆動トランジスタTr1のゲートがフローティングとなり、駆動トランジスタTr1のドレイン−ソース間に電流Idsが流れ、ソース電圧Vsが上昇し、それにともなってゲート電圧Vgも上昇する。ソース電圧Vsは、有機EL素子13に電流Ids'が流れる電圧Vxまで上昇し、有機EL素子13が所望の輝度で発光する。
【0050】
[効果]
次に、本実施の形態の表示装置1における効果について説明する。
【0051】
有機EL表示装置では、通常、駆動トランジスタの閾値電圧や移動度のばらつきに起因する発光輝度のばらつきを低減する補正動作が行われる。従来では、この補正動作を行う際に、画素行ごとに1本ずつ設けられた複数の電源線に対して、VccおよびVssが線順次で印加されていた。Vccは有機EL素子を発光させるための電圧であるので、電源線を線順次駆動する回路の電流能力を大きく設計する必要がある。そのため、従来では、電流能力の大きさに応じて回路幅も大きくなり、狭額縁にすることが難しかった。
【0052】
そこで、例えば、各電源線を線順次で駆動せずに、一括で駆動することが考えられる。例えば、ブランキング期間に、全画素に対して閾値補正を一括して行い、その後、画素行ごとに移動度補正および信号書き込みを行うことが考えられる。このようにした場合には、電源線を線順次駆動する回路を削減することができるので、電源線を線順次駆動する回路の分だけ、狭額縁にすることができる。しかし、この方法では、閾値補正から信号書き込みまでの時間(待機時間)が、画素行ごとに異なっているので、待機時間の間に生じる電流リーク量も、画素行ごとに異なってしまう。その結果、シェーディングが発生してしまう。また、この方法では、発光時間を長く取ることができないので、フリッカが生じてしまう。
【0053】
各電源線を一括で駆動しつつ、発光時間を長くするには、例えば、特許文献1に記載の方法が考えられる。特許文献1に記載の方法では、発光期間中に、信号電圧を画素回路内のメモリ回路に書き込んでおき、メモリ回路に書き込んでおいた信号電圧を、ブランキング期間に全画素の駆動トランジスタに一斉に書き込むことにより、全画素を一斉に発光させる。しかし、特許文献1に記載の画素回路では、メモリ回路内の2つのトランジスタの寄生容量が駆動トランジスタのゲートに付加されるので、ブートストラップゲインが小さくなる。その結果、閾値補正や移動度補正の能力が低下してしまう。それを避けるためには、例えば、駆動トランジスタのゲート−ソース間の保持容量の面積を大きくすることが考えられる。しかし、そのようにした場合には、保持容量の面積を大きくした分だけ、画素回路内の配線間距離が近くなり、高歩留まりを得ることが難しくなる。また、駆動トランジスタのゲート−ソース間の保持容量に保持されている電荷量が変化しやすくなり、画面表示にムラやざらつきが発生しやすくなる。
【0054】
一方、本実施の形態では、各画素回路12に設けたメモリ回路12Aでは、1つのトランジスタ(スイッチングトランジスタTr3)の寄生容量だけが、駆動トランジスタのゲートに付加される。そのため、特許文献1に記載の方法と比べて、ブートストラップゲインを大きくすることができるので、ブートストラップゲインの、メモリ回路12Aの寄生容量によるロスを抑制することができる。その結果、特許文献1に記載の方法と比べて、閾値補正や移動度補正の能力を改善することができるので、高い表示品質の画像を得ることができる。また、本実施の形態では、画素回路12内の配線間距離を、歩留まりが下がるほど近づける必要もなく、画面表示にムラやざらつきが発生しやすくなることもない。
【0055】
また、本実施の形態では、各画素11において、駆動トランジスタTr1のソースまたはドレインが、電位が互いに共通の複数の電源線DSLのいずれか1つに電気的に接続されている。これにより、複数の電源線DSLを線順次で駆動する回路を省略することができるので、表示パネル10を狭額縁化することができる。
【0056】
また、本実施の形態では、スイッチングトランジスタTr4のソースおよびドレインのうち、保持容量Cs2側とは反対側の端子が、電源線DSLに電気的に接続されている。これにより、スイッチングトランジスタTr4に接続する配線と、駆動トランジスタTr1に接続する配線とを共通化することができるので、表示パネル10を狭額縁化することができる。
【0057】
また、本実施の形態では、画素行ごとに、メモリ回路12A(保持容量Cs2)に、信号電圧Vsigが書き込まれる。さらに、各画素11において、メモリ回路12A(保持容量Cs2)に書き込まれた信号電圧Vsigが一括して駆動トランジスタTr1のゲートに転送される。これにより、各有機EL素子13が発光している時に、メモリ回路12A(保持容量Cs2)に、信号電圧Vsigを書き込むことが可能となり、各有機EL素子13が消光している時に、メモリ回路12A(保持容量Cs2)に書き込まれた信号電圧Vsigを一括して駆動トランジスタTr1のゲートに転送することができる。その結果、各有機EL素子13が消光している時に、信号電圧Vsigの書き込みをしていた場合と比べて、各画素11の発光期間を長くすることができる。
【0058】
<2.変形例>
以下に、上記実施の形態の表示装置1の変形例について説明する。なお、以下では、上記実施の形態の表示装置1と共通する構成要素に対しては、同一の符号が付与される。さらに、上記実施の形態の表示装置1と共通する構成要素についての説明は、適宜、省略されるものとする。
【0059】
上記実施の形態において、保持容量Cs2と、スイッチングトランジスタTr4との位置関係が反対になっていてもよい。例えば、図13に示したように、スイッチングトランジスタTr4が保持容量Cs2とスイッチングトランジスタTr3との間に設けられていてもよい。このとき、例えば、スイッチングトランジスタTr4のソースまたはドレインが保持容量Cs2の一端に接続されており、スイッチングトランジスタTr4のソースおよびドレインのうち保持容量Cs2に未接続の端子が接続点Aに接続されていてもよい。さらに、このとき、保持容量Cs2の他端が固定電圧を与える配線(ここでは、カソード電圧Vcatの印加される配線)に電気的に接続されていてもよい。
【0060】
メモリ回路12Aがこのような構成となっている場合であっても、例えば、図3(A)〜図3(E)に示した電圧信号によって各画素11を駆動することができる。従って、本変形例においても、上記実施の形態と同様の効果を有している。
【0061】
<3.適用例>
以下、上記実施の形態およびその変形例(以下、「上記実施の形態等」と称する。)で説明した表示装置1の適用例について説明する。上記実施の形態の表示装置1は、テレビジョン装置、デジタルカメラ、ノート型パーソナルコンピュータ、携帯電話等の携帯端末装置あるいはビデオカメラなど、外部から入力された映像信号あるいは内部で生成した映像信号を、画像あるいは映像として表示するあらゆる分野の電子機器の表示装置に適用することが可能である。
【0062】
図14は、本適用例に係る電子機器2の概略構成例を表したものである。電子機器2は、例えば、折りたたみ可能な2枚の板状の筐体のうちの一方の筐体の主面に表示面2Aを備えたノート型のパーソナルコンピュータである。電子機器2は、上記実施の形態等の表示装置1を備えており、例えば、表示面2Aの位置に表示パネル10を備えている。本適用例では、表示装置1が設けられているので、高い表示品質の画像を得ることができる。
【0063】
以上、実施の形態、変形例および適用例を挙げて本技術を説明したが、本技術は実施の形態等に限定されるものではなく、種々変形が可能である。なお、本明細書中に記載された効果は、あくまで例示である。本技術の効果は、本明細書中に記載された効果に限定されるものではない。本技術が、本明細書中に記載された効果以外の効果を持っていてもよい。
【0064】
また、例えば、本技術は以下のような構成を取ることができる。
(1)
各々が発光素子と画素回路とを含む複数の画素を備え、
各前記画素回路は、
前記発光素子に流れる電流を制御する駆動トランジスタと、
映像信号に対応した信号電圧の保持と、保持した前記信号電圧の前記駆動トランジスタのゲートへの印加とを行うメモリ回路と、
前記信号電圧を前記メモリ回路に書き込む書き込みトランジスタと、
前記駆動トランジスタのゲートと、前記発光素子のアノードとの間に設けられた第1保持容量と
を有し、
前記メモリ回路は、
前記信号電圧を保持する第2保持容量と、
前記駆動トランジスタのゲートと前記第2保持容量との間に設けられた第1スイッチングトランジスタと、
前記第2保持容量と前記第1スイッチングトランジスタとの間、または、前記第2保持容量の、前記第1スイッチングトランジスタ側とは反対側に設けられた第2スイッチングトランジスタと
を有する
表示パネル。
(2)
各前記画素において、前記駆動トランジスタのソースまたはドレインは、電位が互いに共通の複数の電源線のいずれか1つに電気的に接続されている
(1)に記載の表示パネル。
(3)
前記第2スイッチングトランジスタのソースおよびドレインのうち、前記第2保持容量側とは反対側の端子が、前記電源線に電気的に接続されている
(1)または(2)に記載の表示パネル。
(4)
前記第2スイッチングトランジスタのソースおよびドレインのうち、前記第2保持容量側とは反対側の端子が、前記第1スイッチングトランジスタと、前記書き込みトランジスタとの接続点に電気的に接続されている
(1)または(2)に記載の表示パネル。
(5)
各々が発光素子と画素回路とを含む複数の画素を有する表示パネルと、
複数の前記画素を駆動する駆動回路と
を備え、
各前記画素回路は、
前記発光素子に流れる電流を制御する駆動トランジスタと、
映像信号に対応した信号電圧の保持と、保持した前記信号電圧の前記駆動トランジスタのゲートへの印加とを行うメモリ回路と、
前記信号電圧を前記メモリ回路に書き込む書き込みトランジスタと、
前記駆動トランジスタのゲートと、前記発光素子のアノードとの間に設けられた第1保持容量と
を有し、
前記メモリ回路は、
前記信号電圧を保持する第2保持容量と、
前記駆動トランジスタのゲートと前記第2保持容量との間に設けられた第1スイッチングトランジスタと、
前記第2保持容量と前記第1スイッチングトランジスタとの間、または、前記第2保持容量の、前記第1スイッチングトランジスタ側とは反対側に設けられた第2スイッチングトランジスタと
を有する
表示装置。
(6)
各前記画素において、前記駆動トランジスタのソースまたはドレインは、電位が互いに共通の複数の電源線のいずれか1つに電気的に接続されており、
前記駆動回路は、画素行ごとに、前記第2保持容量に、前記信号電圧を書き込み、
前記駆動回路は、各前記画素において、前記第2保持容量に書き込まれた前記信号電圧を一括して前記駆動トランジスタのゲートに転送する
(5)に記載の表示装置。
(7)
前記駆動回路は、各前記書き込みトランジスタをオンした状態で、画素行ごとに各第2スイッチングトランジスタをオンさせることにより、前記第2保持容量に、前記信号電圧を書き込み、
前記駆動回路は、各前記画素において、各前記書き込みトランジスタをオフした状態で、各前記第1スイッチングトランジスタおよび各第2スイッチングトランジスタをオンすることにより、前記第2保持容量に書き込まれた前記信号電圧を一括して前記駆動トランジスタのゲートに転送する
(6)に記載の表示装置。
(8)
前記駆動回路は、各前記発光素子が発光している時に、前記第2保持容量に、前記信号電圧を書き込む
(6)に記載の表示装置。
(9)
前記駆動回路は、各前記画素において、各前記発光素子が消光している時に、前記第2保持容量に、前記第2保持容量に書き込まれた前記信号電圧を一括して前記駆動トランジスタのゲートに転送する
(6)に記載の表示装置。
【符号の説明】
【0065】
1…表示装置、2…電子機器、2A…表示面、10…表示パネル、11…画素、12…画素回路、12A…メモリ回路、13…有機EL素子、20…コントローラ、21…映像信号処理回路、22…タイミング生成回路、23…電源回路、30…ドライバ、31…水平セレクタ、32…制御スキャナ、A…接続点、Cel…素子容量、Cs1,Cs2…保持容量、Cgs…ゲート−ソース間容量、CTL1,CTL2…制御線、Din…映像信号、DSL…電源線、DTL…信号線、Ids…電流、T1,T2,T3,T4,T5,T6,T7,T8,T9,T10,T11,T12,T13,T14…時刻、Tin…同期信号、Tr1…駆動トランジスタ、Tr2…書き込みトランジスタ、Tr3,Tr4…スイッチングトランジスタ、Va…電圧、Vcat…カソード電圧、Vcc,Vofs,Vss…固定電圧、Vg…ゲート電圧、Vgs…ゲート−ソース間電圧、Von…オン電圧、Voff…オフ電圧、Vs…ソース電圧、Vsig…信号電圧、Vth,Vthel…閾値電圧、WSL…制御線。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14