(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
先端面に掘削刃が設置されたトップビットと、先端面の周縁部に掘削刃が設置され、先端面の中央部に前記トップビットが設置されたインナービットと、先端面に掘削刃が設置され、前記トップビットが貫通可能で前記インナービットに着脱可能に装着されるアウタービットとを有し、前記インナービットに回転および打撃を伝達することによって、前記トップビットおよび前記アウタービットに回転および打撃を伝達して、前記インナービットおよび前記アウタービットによって掘削孔を形成し、前記トップビットによって前記掘削孔よりも内径がより小さい掘削孔を形成し、
前記インナービットは、外面にそれぞれ軸心から遠ざかる方向に突出するように形成され、円周方向で所定の間隔を空けて等角配置され、軸心に略垂直なインナー係止面を具備するインナー前方突起と、該インナー前方突起の後方に所定の間隔を空けて配置され、軸心に略垂直なインナー打撃面を具備するインナー打撃突起と、該インナー打撃突起の後方に配置され、軸心に平行なインナー回転面を具備するインナー回転突起と、を有し、
前記アウタービットは、内面にそれぞれ軸心に近づく方向に突出するように形成され、円周方向に所定の間隔を空けて等角配置され、軸心に略垂直なアウター被打撃面およびアウター被係止面を具備するアウター被打撃突起と、該アウター被打撃突起の後方に所定の間隔を空けて配置され、軸心に平行なアウター被回転面を具備するアウター被回転突起と、有し、
前記インナー前方突起が、前記アウター被打撃突起同士の間隔および前記アウター被回転突起同士の間隔を軸心方向に通過可能で、かつ、前記インナー打撃突起および前記インナー回転突起が前記アウター被回転突起同士の間隔を軸心方向に通過可能で、
前記インナー前方突起が、前記アウター被打撃突起同士の間隔および前記アウター被回転突起同士の間隔を軸心方向に通過し、かつ、前記インナー打撃突起および前記インナー回転突起が前記アウター被回転突起同士の間隔を軸心方向に通過した状態で、前記インナービットと前記アウタービットとが円周方向に相対的に回転された際、前記インナー回転面が前記アウター被回転面に当接し、さらに、前記インナービットと前記アウタービットとが軸心方向に相対的に移動された際、前記インナー打撃面が前記アウター被打撃面に当接、または前記インナー係止面が前記アウター被係止面に当接することを特徴とする二重管式掘削装置。
先端面に掘削刃が設置されたトップビットと、先端面の周縁部に掘削刃が設置され、先端面の中央部に前記トップビットが設置されたインナービットと、先端面に掘削刃が設置され、前記トップビットが貫通可能で前記インナービットに着脱可能に装着されるアウタービットとを有する二重管式掘削装置を用いたアンカー装置の施工方法であって、
前記インナービットの後端に掘削ハンマを接続して、前記トップビットおよび前記インナービットの一部が貫通可能で前記インナービットの一部が係止可能なケーシングシューを先端に具備するケーシングに、前記トップビットおよび前記インナービットを前記ケーシングの後端から挿入し、前記インナービットの前記ケーシングシューを貫通した部位に前記アウタービットを装着する準備工程と、
前記掘削ハンマから前記インナービットに回転および打撃を伝達することによって前記トップビットおよび前記アウタービットに回転および打撃をそれぞれ伝達し、前記トップビットによって引張抵抗体用掘削孔を形成すると共に、前記インナービットおよび前記アウタービットによってケーシング用掘削孔を形成しながら、前記インナービットを前記ケーシングシューに押し当てて前記ケーシングを前記ケーシング用掘削孔に押し込む掘削工程と、
前記アウタービットを前記インナービットから切り離す切り離し工程と、
掘削ハンマを引き上げて、前記トップビットおよび前記インナービットを前記ケーシングから引き出す回収工程と、
前記引張抵抗体用掘削孔に凝固剤を充填する充填工程と、
引張抵抗体を前記ケーシングに挿入して、前記引張抵抗体の先端部を前記凝固剤に侵入させ、かつ、前記引張抵抗体の後端部を前記ケーシングシューに押し当てるか前記引張抵抗体の後端部を前記ケーシングに固定部材を介して固定するかの何れかを実行する設置工程と、を有することを特徴とするアンカー装置の施工方法。
前記インナービットは、外面にそれぞれ軸心から遠ざかる方向に突出するように形成され、円周方向で所定の間隔を空けて等角配置され、軸心に略垂直なインナー係止面を具備するインナー前方突起と、該インナー前方突起の後方に所定の間隔を空けて配置され、軸心に略垂直なインナー打撃面を具備するインナー打撃突起と、該インナー打撃突起の後方に配置され、軸心に平行なインナー回転面を具備するインナー回転突起と、を有し、
前記アウタービットは、内面にそれぞれ軸心に近づく方向に突出するように形成され、円周方向に所定の間隔を空けて等角配置され、軸心に略垂直なアウター被打撃面およびアウター被係止面を具備するアウター被打撃突起と、該アウター被打撃突起の後方に所定の間隔を空けて配置され、軸心に平行なアウター被回転面を具備するアウター被回転突起と、有し、
前記インナー前方突起が、前記アウター被打撃突起同士の間隔および前記アウター被回転突起同士の間隔を軸心方向に通過可能で、かつ、前記インナー打撃突起および前記インナー回転突起が前記アウター被回転突起同士の間隔を軸心方向に通過可能で、
前記インナー前方突起が、前記アウター被打撃突起同士の間隔および前記アウター被回転突起同士の間隔を軸心方向に通過し、かつ、前記インナー打撃突起および前記インナー回転突起が前記アウター被回転突起同士の間隔を軸心方向に通過した状態で、前記インナービットと前記アウタービットとが円周方向に相対的に回転された際、前記インナー回転面が前記アウター被回転面に当接し、さらに、前記インナービットと前記アウタービットとが軸心方向に相対的に移動された際、前記インナー打撃面が前記アウター被打撃面に当接、または前記インナー係止面が前記アウター被係止面に当接することを特徴とする請求項3記載のアンカー装置の施工方法。
前記引張抵抗体の後端部に、管軸に平行で放射方向に配置された複数枚の板材からなるストッパーが設置され、前記板材の外側縁が形成する仮想円の外径は前記ケーシングの内径よりも小さく、かつ、前記ケーシングシューの内径よりも大きいことを特徴とする請求項3〜5の何れか一項に記載のアンカー装置の施工方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示されたアンカー装置は、地盤に埋設された管体(以下「ケーシング」と称す)と、ケーシングを貫通したアンカー本体(以下「アンカーロッド」と称す)とを備えるものであって、ケーシングの頭部にワイヤーロープが接続され、アンカーロッドのケーシングの先端から突き出した範囲が凝固剤によって地盤に定着される。そして、ケーシングに設けられたシューの上面にアンカーロッドに設けられた筒状頭部の下面を当接させることによって、ケーシングに作用する「アンカー装置を引き抜こうとする力」をアンカーロッドに伝達可能にしている。
そのため、「アンカー装置を倒そうとする力」に対するケーシングの大きな抵抗力と、「アンカーを引き抜こうとする力」に対するアンカーロッドの大きな抵抗との両方を発揮可能にしている。
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示されたアンカー装置の施工方法は、まず、拡縮ビットを具備する第1のハンマによって地中にケーシング用掘削孔を形成しながら、並行してケーシング用掘削孔にケーシングを押し込み、ケーシングをケーシング用掘削孔に埋設する「第1の掘削作業」を実施する。そして、第1のハンマを撤去した後、標準ビットを具備する第2のハンマによってケーシング用掘削孔の下方に、ケーシング用掘削孔よりも内径が小さいアンカーロッド用掘削孔を形成する「第2の掘削作業」を実施し、さらに、第2のハンマを撤去した後、アンカーロッド用掘削孔に凝固剤を充填してから、アンカーロッドを設置するものである。
このため、2台の掘削装置が必要で2回に渡る掘削作業が必要になるため、作業工程が煩雑になり、施工工期の延長や施工コストの上昇の一因になるという問題があった。
【0006】
一方、特許文献2に開示された二重管掘削装置は、インナービットにアウタービットを着脱可能に装着するバヨネット構造を具備し、特許文献1に開示されたアンカー装置の施工方法において使用される拡縮ビットが具備するような拡径機構を不要にするため、構造が簡素で、特に小径の掘削孔の形成に好適である。
しかしながら、特許文献2に開示された二重管掘削装置は、掘削孔(ケーシング用掘削孔)と掘削孔より内径の小さな掘削孔(アンカーロッド用掘削孔)とを1回の掘削作業によって形成することができないという問題があった。
【0007】
本発明は、このような状況に鑑みてなされたものであり、簡素な作業工程によって、アンカー装置を倒そうとする力とアンカー装置を引き抜こうとする力との両方の力に対して大きな抵抗を発揮することができるアンカー装置を施工するアンカー装置の施工方法、およびかかるアンカー装置の施工方法に好適な二重管式掘削装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1)本発明に係る二重管式掘削装置は、先端面に掘削刃が設置されたトップビットと、先端面の周縁部に掘削刃が設置され、先端面の中央部に前記トップビットが設置されたインナービットと、先端面に掘削刃が設置され、前記トップビットが貫通可能で前記インナービットに着脱可能に装着されるアウタービットとを有し、前記インナービットに回転および打撃を伝達することによって、前記トップビットおよび前記アウタービットに回転および打撃を伝達
して、前記インナービットおよび前記アウタービットによって掘削孔を形成し、前記トップビットによって前記掘削孔よりも内径がより小さい掘削孔を形成し、
前記インナービットは、外面にそれぞれ軸心から遠ざかる方向に突出するように形成され、円周方向で所定の間隔を空けて等角配置され、軸心に略垂直なインナー係止面を具備するインナー前方突起と、該インナー前方突起の後方に所定の間隔を空けて配置され、軸心に略垂直なインナー打撃面を具備するインナー打撃突起と、該インナー打撃突起の後方に配置され、軸心に平行なインナー回転面を具備するインナー回転突起と、を有し、
前記アウタービットは、内面にそれぞれ軸心に近づく方向に突出するように形成され、円周方向に所定の間隔を空けて等角配置され、軸心に略垂直なアウター被打撃面およびアウター被係止面を具備するアウター被打撃突起と、該アウター被打撃突起の後方に所定の間隔を空けて配置され、軸心に平行なアウター被回転面を具備するアウター被回転突起と、有し、
前記インナー前方突起が、前記アウター被打撃突起同士の間隔および前記アウター被回転突起同士の間隔を軸心方向に通過可能で、かつ、前記インナー打撃突起および前記インナー回転突起が前記アウター被回転突起同士の間隔を軸心方向に通過可能で、
前記インナー前方突起が、前記アウター被打撃突起同士の間隔および前記アウター被回転突起同士の間隔を軸心方向に通過し、かつ、前記インナー打撃突起および前記インナー回転突起が前記アウター被回転突起同士の間隔を軸心方向に通過した状態で、前記インナービットと前記アウタービットとが円周方向に相対的に回転された際、前記インナー回転面が前記アウター被回転面に当接し、さらに、前記インナービットと前記アウタービットとが軸心方向に相対的に移動された際、前記インナー打撃面が前記アウター被打撃面に当接、または前記インナー係止面が前記アウター被係止面に当接することを特徴とする。
(2)前記(1)において、前記トップビットは軸方向に突出した延長ロッドを具備し、前記インナービットの先端面に軸方向に突出した突出ロッドが設置され、前記延長ロッドと前記突出ロッドとが連結手段によって連結されていることを特徴とする。
【0009】
(3)さらに、発明に係るアンカー装置の施工方法は、先端面に掘削刃が設置されたトップビットと、先端面の周縁部に掘削刃が設置され、先端面の中央部に前記トップビットが設置されたインナービットと、先端面に掘削刃が設置され、前記トップビットが貫通可能で前記インナービットに着脱可能に装着されるアウタービットとを有する二重管式掘削装置を用いたアンカー装置の施工方法であって、
前記インナービットの後端に掘削ハンマを接続して、前記トップビットおよび前記インナービットの一部が貫通可能で前記インナービットの一部が係止可能なケーシングシューを先端に具備するケーシングに、前記トップビットおよび前記インナービットを前記ケーシングの後端から挿入し、前記インナービットの前記ケーシングシューを貫通した部位に前記アウタービットを装着する準備工程と、
前記掘削ハンマから前記インナービットに回転および打撃を伝達することによって前記トップビットおよび前記アウタービットに回転および打撃をそれぞれ伝達し、前記トップビットによって引張抵抗体用掘削孔を形成すると共に、前記インナービットおよび前記アウタービットによってケーシング用掘削孔を形成しながら、前記インナービットを前記ケーシングシューに押し当てて前記ケーシングを前記ケーシング用掘削孔に押し込む掘削工程と、
前記アウタービットを前記インナービットから切り離す切り離し工程と、
掘削ハンマを引き上げて、前記トップビットおよび前記インナービットを前記ケーシングから引き出す回収工程と、
前記引張抵抗体用掘削孔に凝固剤を充填する充填工程と、
引張抵抗体を前記ケーシングに挿入して、前記引張抵抗体の先端部を前記凝固剤に侵入させ、かつ、前記引張抵抗体の後端部を前記ケーシングシューに押し当てるか前記引張抵抗体の後端部を前記ケーシングに固定部材を介して固定するかの何れかを実行する設置工程と、を有することを特徴とする。
(4)前記(3)において、前記インナービットは、外面にそれぞれ軸心から遠ざかる方向に突出するように形成され、円周方向で所定の間隔を空けて等角配置され、軸心に略垂直なインナー係止面を具備するインナー前方突起と、該インナー前方突起の後方に所定の間隔を空けて配置され、軸心に略垂直なインナー打撃面を具備するインナー打撃突起と、該インナー打撃突起の後方に配置され、軸心に平行なインナー回転面を具備するインナー回転突起と、を有し、
前記アウタービットは、内面にそれぞれ軸心に近づく方向に突出するように形成され、円周方向に所定の間隔を空けて等角配置され、軸心に略垂直なアウター被打撃面およびアウター被係止面を具備するアウター被打撃突起と、該アウター被打撃突起の後方に所定の間隔を空けて配置され、軸心に平行なアウター被回転面を具備するアウター被回転突起と、有し、
前記インナー前方突起が、前記アウター被打撃突起同士の間隔および前記アウター被回転突起同士の間隔を軸心方向に通過可能で、かつ、前記インナー打撃突起および前記インナー回転突起が前記アウター被回転突起同士の間隔を軸心方向に通過可能で、
前記インナー前方突起が、前記アウター被打撃突起同士の間隔および前記アウター被回転突起同士の間隔を軸心方向に通過し、かつ、前記インナー打撃突起および前記インナー回転突起が前記アウター被回転突起同士の間隔を軸心方向に通過した状態で、前記インナービットと前記アウタービットとが円周方向に相対的に回転された際、前記インナー回転面が前記アウター被回転面に当接し、さらに、前記インナービットと前記アウタービットとが軸心方向に相対的に移動された際、前記インナー打撃面が前記アウター被打撃面に当接、または前記インナー係止面が前記アウター被係止面に当接することを特徴とする。
(5)また、前記(3)または(4)において、前記トップビットは軸方向に突出した延長ロッドを具備し、前記インナービットの先端面に軸方向に突出した突出ロッドが設置され、前記延長ロッドと前記突出ロッドとが連結手段によって連結されていることを特徴とする。
(6)また、前記(3)〜(5)の何れかにおいて、前記引張抵抗体の後端部に、管軸に平行で放射方向に配置された複数枚の板材からなるストッパーが設置され、前記板材の外側縁が形成する仮想円の外径は前記ケーシングの内径よりも小さく、かつ、前記ケーシングシューの内径よりも大きいことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る二重管式掘削装置は、互いに着脱可能なトップビットとインナービットとアウタービットとを有し、1回の掘削において、トップビットによって内径がより小さな引張抵抗体用掘削孔と、インナービットおよびアウタービットによって内径がより大きなケーシング用掘削孔とを形成することが可能であると共に、これに並行して、ケーシング用掘削孔にケーシングを押し込むことが可能になる。したがって、引張抵抗体用掘削孔に充填されたモルタルに引張抵抗体の先端部を固着させ、かかる引張抵抗体の後端部にケーシングを引き抜き不可能に拘束させることによって、アンカー装置を倒そうとする力とアンカー装置を引き抜こうとする力との両方の力に対して大きな抵抗を発揮するアンカー装置を、1回の掘削による簡素な作業工程によって施工することが可能になる。
また、本発明に係るアンカー装置の施工方法は、かかる二重管式掘削装置を用いるから、1回の掘削による簡素な作業工程によって、アンカー装置を倒そうとする力とアンカー装置を引き抜こうとする力との両方の力に対して大きな抵抗を発揮するアンカー装置を施工することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、発明を実施するための形態(以下、「実施の形態1〜3」という)を、図面を参照しつつ説明する。なお、各図は模式的に描かれたものであって、本発明は図示された形態(部位の形状や個数等)に限定されるものではない。また、図面が煩雑にならないようにするため、一部の部材または一部の符号の記載を省略する場合がある。
【0013】
[実施の形態1]
図1〜
図4は本発明の実施の形態1に係る二重管式掘削装置を説明するものであって、
図1は側面視の断面図、
図2は正面図、
図3は一部(インナービット)を示す一部を断面にした側面図、
図4の(a)は一部(インナービット)を示す正面図、
図4の(b)は一部(アウタービット)を示す側面視の断面図である。
【0014】
(ビットシステム)
図1〜
図4において二重管式掘削装置(以下「ビットシステム」と称す)9は、特許文献2に開示された二重管式掘削装置にトップビット300を追加したものに相当する。
すなわち、ビットシステム9は、トップビット300とインナービット(パイロットビットに同じ)100とアウタービット(リングビットに同じ)200とを有している。
トップビット300のトップ先端面301に掘削刃7が設置され、インナービット100のインナー先端面101の周縁部には掘削刃8が設置され、インナー先端面101の中央部にはトップビット300が着脱可能に設置されている。そして、アウタービット200のアウター先端面201には掘削刃8が設置され、トップビット300はアウタービット200を貫通可能で、アウタービット200はインナービット100に着脱可能に装着される。
また、インナービット100の後端にはインナー連結部180が形成され、インナー連結部180に図示しない掘削ハンマ(打撃および回転を発生する装置、例えば「ダウンザホールハンマ」等)が直接または駆動ロッドを介して接続される。
さらに、インナービット100は、管体(以下「ケーシング」と称す)10に挿入され、インナー後端フランジ170がケーシング10に接合されているケーシングシュー40を押し付け可能になっている。
【0015】
(インナービット)
インナービット100の外周には、インナー先端面101から後方に向かって、円周方向3箇所に間隔を空けて等角配置されたインナー前方突起110と、インナーくびれ部120と、軸心に垂直なインナー打撃面131を具備するインナー打撃突起130と、軸心に平行なインナー回転面144を具備するインナー回転突起140と、インナー外周溝150と、インナー後方突起160と、インナー後端フランジ170と、インナー連結部180とが形成されている。それぞれ、軸心から離れる方向に向かって突出している。
また、インナー前方突起110には軸心に略垂直なインナー係止面113が形成され、インナー前方突起110の先端面(インナー先端面101の周縁部に同じ)には、掘削刃8が固定されている。
また、インナービット100の外周部(掘削刃8の周囲等)に圧縮空気を供給するための通気路として、インナービット100の軸心部にインナー通気路191が形成され、インナー通気路191に連通し、外周面に到達するインナー通気孔192およびインナー先端面101に到達するインナー通気孔193がそれぞれ形成されている。
さらに、インナー後端フランジ170同士の間には、軸方向の溝である掘削土砂排出溝190が、円周方向に等角配置されている。
【0016】
(アウタービット)
アウタービット200は内周に、アウター先端面201に繋がるアウター前方円筒部210と、アウター前方円筒部210の後方に、それぞれ円周方向3箇所に間隔を空けて等角配置されたアウター被打撃突起220とアウター被回転突起240とが形成され、アウター被打撃突起220およびアウター被回転突起240は軸心に向かって突出している。そして、アウター被打撃突起220とアウター被回転突起240との間にはアウター中間円筒部230とが形成されている。
なお、アウター被打撃突起220は軸心に略垂直なアウター被打撃面223およびアウター被係止面221を具備し、アウター被回転突起240は軸心に平行なアウター被回転面242を具備する。
【0017】
(トップビット)
トップビット300は、円錐台状のトップ先端部310と、トップ先端部310の後端に設置された延長ロッド320と、インナー先端面101に設置された突出ロッド330と、延長ロッド320と突出ロッド330とを連結する連結手段(以下「カプラ」と称す)340とを具備している。
そして、トップビット300のトップ先端面301(トップ先端部310の先端面に同じ)に掘削刃7が固定されている。掘削刃7は対角線上に配置された長尺掘削刃7aと、長尺掘削刃7aに対して直交する方向に配置された一対の短尺掘削刃7bとから構成されている。長尺掘削刃7aおよび短尺掘削刃7bはそれぞれ断面略台形であって、直線状の切り羽(先端)を具備しているが、本発明はかかる掘削刃7に限定するものではなく、先端(切り羽)を球面の一部にする掘削刃8を配置してもよい。
なお、
図1では延長ロッド320がトップ先端部310に一体的に形成されているが、本発明はこれに限定するものではなく、それぞれ別体に形成してから接合してもよい。たとえば、延長ロッド320の外周に螺旋状の突条ないし雄ネジを形成して、トップ先端部310にこれが螺合する凹溝ないし雌ネジを設けてもよい。
【0018】
(延長ロッドおよび突出ロッド)
延長ロッド320および突出ロッド330の外周は螺旋状の突条(凹溝に同じ)が形成され、カプラ340の内周には前記螺旋状の突条に螺合する凹溝(突条に同じ)が形成されている。
また、掘削刃7の周囲に圧縮空気を供給するための通気路として、インナー通気路191に連通した突出ロッド通気路331が突出ロッド330に形成され、突出ロッド通気路331に連通した延長ロッド通気路321が延長ロッド320に形成され、延長ロッド通気路321に連通した先端部通気路311がトップ先端部310に形成され、先端部通気路311はトップ先端面301に開口している。
なお、本発明は延長ロッド320と突出ロッド330との連結手段をこれに限定するものではなく、延長ロッド320および突出ロッド330を外面が平滑な管体にして、口元に雄ネジを形成して、カプラ340の内周にこれが螺合する雌ネジを形成してもよい。あるいは、先端部通気路311および突出ロッド通気路331の内周に螺旋状の凹溝または雌ネジを形成し、カプラ340の外周に螺旋状の突条または雄ネジを形成してもよい。
さらに、カプラ340を廃止して、延長ロッド320の端に雄ネジまたは雌ネジを形成し、突出ロッド330の端にこれに螺合する雌ネジまたは雄ネジを形成してもよい。
さらに、トップ先端部310、延長ロッド320、および突出ロッド330を一体的に形成、すなわち、トップビット300とインナービット100とを一体的に形成してもよい。
【0019】
(ケーシングおよびケーシングシュー)
さらに、インナービット100は鋼管であるケーシング10に挿入され、ケーシングシュー40に押し当てられる。
ケーシングシュー40はケーシング10の先端10aに固定された略円筒であって、ケーシング10に挿入されたインナービット100が押し当てられるものである。すなわち、先端寄りに形成された内径および外径が共に大きいシュー径大部41と、後端40b寄りに形成された内径および外径が共に小さいシュー径小部43と、両者を連結するシュー段差部42と、を有している。
そして、シュー径小部43およびシュー段差部42の内径は同じであって、後記する引張抵抗体20が貫通可能で、引張抵抗体20の後端20b寄りに固定されたストッパー50が貫通不可能(係止可能)になっている。すなわち、後記するストッパー50がケーシングシュー40の後端40b(シュー径小部43の後端に同じ)に当接可能になっている。
【0020】
(バヨネット構造)
トップ先端部310およびインナー前方突起110が、アウター被回転突起240同士の間隔およびアウター被打撃突起220同士の間隔を軸心方向に通過可能で、インナー打撃突起130およびインナー回転突起140がアウター被回転突起240同士の間隔を軸心方向に通過可能である。
そして、トップ先端部310およびインナー前方突起110が、アウター被回転突起240同士の間隔およびアウター被打撃突起220同士の間隔を軸心方向に通過し、かつ、インナー打撃突起130およびインナー回転突起140がアウター被回転突起240同士の間隔を軸心方向に通過した状態において、インナービット100とアウタービット200とが円周方向に相対的に回転されると、インナー回転面144がアウター被回転面242に当接する。
さらに、かかる状態において、インナービット100とアウタービット200とが軸心方向に相対的に移動されると、インナー打撃面131がアウター被打撃面223に当接、または、インナー係止面113がアウター被係止面221に当接する。
すなわち、インナービット100とアウタービット200とは「バヨネット構造」によって着脱可能になっている。なお、本発明は、バヨネット構造によってインナービット100とアウタービット200とが着脱可能である限りビットシステム9を前記形態に限定するものではなく、打撃および回転を伝達する部位の配置や形態は何れであってもよい。
【0021】
(掘削作業)
したがって、トップビット300が接続されているインナービット100をケーシング10の後端から挿入し、インナービット100のインナー打撃突起130をケーシング10の先端10a(正確には、ケーシングシュー40の先端面)から突出させ、インナービット100にアウタービット200を装着してビットシステム9を組み立て、ビットシステム9と掘削ハンマ900(
図7参照)とケーシング10とを一体化する。
そして、一体化されている掘削ハンマ900とビットシステム9とケーシング10とを施工地点に設置して、掘削ハンマ900からインナービット100に回転および打撃を伝達すると、インナービット100からアウタービット200に回転および打撃が伝達される。そうすると、トップビット300によって引張抵抗体用掘削孔93(
図5参照)が形成され、インナービット100およびアウタービット200によってケーシング用掘削孔91がそれぞれ形成され、かかる形成と並行して、ケーシング用掘削孔91にケーシングが押し込まれる(これについては実施の形態2において詳細に説明する)。
【0022】
そして、シュー径大部41の外径は、ケーシング10の外径に略同一で、アウタービット200の外径(アウター前方円筒部210に設置された掘削刃8が形成する仮想円の直径に略同じ)より小さくなっているから、ケーシングシュー40およびケーシング10の全周が同時に、ケーシング用掘削孔91の孔壁に摺動することが防止される(通常、ケーシング用掘削孔91は鉛直方向に対して傾いているため、ケーシング10は撓み、その一部がケーシング用掘削孔91の孔壁に摺動する)。
また、シュー径小部43の内径は、インナービット100のインナー後端フランジ170の外径よりも小さいから、ケーシング10の後端10bから挿入されたインナービット100のインナー後端フランジ170がケーシングシュー40に当接し、インナービット100の全長がケーシング10を貫通することはない。
さらに、アウタービット200の外径(アウター被回転突起240等の外径)はシュー径小部43の内径よりも大きいから、アウタービット200はケーシングシュー40を貫通不可能で、アウタービット200がインナービット100に装着されている限り、ケーシング10がビットシステム9から抜け出すことがない。
【0023】
(作用効果)
(a)ビットシステム9は以上の構成であるから、地盤90の深い位置に引張抵抗体用掘削孔93を、地盤90の浅い位置にケーシング用掘削孔91をそれぞれ同時に形成することができる。すなわち、より内径の小さい引張抵抗体用掘削孔93と、より内径の大きいケーシング用掘削孔91とからなる「段付きの掘削孔」を、同時に形成することができる(
図5参照)。
(b)また、トップビット300が接続されているインナービット100をアウタービット200から切り離すことができるから、アウタービット200をケーシング用掘削孔91に残し、トップビット300およびインナービット100を引張抵抗体用掘削孔93およびケーシング用掘削孔91から引き出して回収することができる(
図8の(c)参照)。
(c)また、トップビット300は着脱可能であるから、地盤90の性状に対応した好適な掘削刃(掘削刃7あるいは掘削刃8等)が設置されたトップビット300に取り替えることができる。
(d)さらに、所望の長さのトップビット300を接続することによって、所望の深さの引張抵抗体用掘削孔93を形成することができる。
【0024】
[実施の形態2]
図5〜
図10は本発明の実施の形態2に係るアンカー装置の施工方法を説明するものであって、
図5はアンカー装置を示す側面視の断面図、
図6はフローチャート、
図7は各工程(準備工程)を示す側面視の断面図、
図8は各工程(掘削工程〜回収工程)を示す側面視の断面図、
図9は各工程(充填工程〜設置工程)を示す側面視の断面図、
図10は挿入治具を示す一部を断面にした側面図である。なお、実施の形態1と同じ部位については同じ名称および符号を付して説明の一部を省略する。
【0025】
(アンカー装置)
図5において、アンカー装置1は、地盤90に形成されたケーシング用掘削孔91に設置されたケーシング(アンカーパイプに同じ)10と、ケーシング10に挿入されたアンカー本体(以下「引張抵抗体」と称す)20と、ケーシング用掘削孔91の下方に形成された引張抵抗体用掘削孔93に充填された充填剤(以下「モルタル」と称す)30とを有している。また、ケーシング用掘削孔91の底面91aには、アウタービット200が残留している。なお、ケーシング10とアウタービット200との間隔を大きく描き、両者が離れていることを誇張して示している。
以下、まず、アンカー装置1を形成する各部材について説明し、その後、アンカー装置1の施工方法について順番に説明する。
【0026】
(ケーシング)
図5において、ケーシング10は、先端10aに近い内面に、略円環状のケーシングシュー40が設置された鋼管(
図1参照)であって、後端10bに近い位置に対向した貫通孔11が形成され、後端10bはアンカーキャップ12によって塞がれている。貫通孔11は、ワイヤーロープ2を抜け出し不可能に保持するワイヤロープ保持棒(以下「かんざしピン」と称す)3が挿入されるものである。
【0027】
(引張抵抗体)
引張抵抗体20は、ケーシングシュー40の内径よりも小さな外径の異形棒鋼であって、外周に形成された凹凸(例えば、螺旋状の突条等)がモルタル30との付着を堅固にしている。そして、引張抵抗体20を吊り下げるための被係止ピン22が、引張抵抗体20の後端20bに対角線上に設置され、ケーシングシュー40を押し付けるためのストッパー50が、引張抵抗体20の後端20b寄りに設置されている。
なお、引張抵抗体20は異形棒鋼に限定されるものではなく、引張抵抗体20を外周が平滑な鋼管または棒鋼にして、外周に突出する、例えば、引張抵抗体20に形成したネジ孔に螺合するボルトや、引張抵抗体20を貫通したボルトおよび該ボルトに螺合したナットを設けてもよい。
【0028】
(ストッパー)
ストッパー50は、引張抵抗体20の管軸に平行で放射方向に配置された複数枚の板材であって、当該板材の外側縁が形成する仮想円の外径は、ケーシング10の内径よりも僅かに小さく、ケーシングシュー40の内径(シュー径小部43の内径)よりも大きくなっている。
したがって、ストッパー50の端面はケーシングシュー40に当接して、ケーシング10を引き抜き不可能に保持する力伝達部材として機能すると共に、軸心が鉛直方向に対して傾斜しているケーシング10に引張抵抗体20を挿入する際、両者の軸心を一致させる(正確には、近接させる)センタリング用部材としても機能する。
なお、本発明は前記板材の枚数を4枚に限定するものではなく、また、管軸に平行な板材に替えて、管軸に垂直な板材(円環板または中心孔が形成された多角形板)であってもよい。さらに、引張抵抗体20が管材によって形成される場合には、管材の端部を楕円または扁平に変形したり、円形に拡大したりしてもよい。
【0029】
(被係止ピン)
被係止ピン22は、引張抵抗体20を吊り上げて、引張抵抗体20をケーシング10内に挿入するための挿入治具70(これについては別途詳細に説明する)が係止するものであって、引張抵抗体20の側方に突出し、平面視において、ストッパー50の外側縁が形成する仮想円の内側に納まっている。なお、引張抵抗体20が管体である場合、被係止ピン22を当該管体の内周に跨がるように設置してもよい。
【0030】
(引張抵抗体用掘削孔およびモルタル)
引張抵抗体用掘削孔93はケーシング用掘削孔91の下方に形成され、引張抵抗体用掘削孔93の内径はケーシング用掘削孔91の内径よりも小さく、深さ(引張抵抗体用掘削孔93の底面93aからケーシング用掘削孔91の底面91aまでの距離に同じ)は、例えば約500mmである。
そして、モルタル30は、引張抵抗体用掘削孔93に挿入された注入管(図示しない)を通って引張抵抗体用掘削孔93に充填されたものであって、モルタル30の一部はケーシング10の内側に侵入している。したがって、凝固したモルタル30の外周は、引張抵抗体用掘削孔93の孔壁に密着して、作用する引抜力に対する抵抗面積となる。
なお、以上は、ストッパー50がケーシングシュー40に当接するものを示しているが、本発明はこれに限定するものではない。例えば、ストッパー50とケーシングシュー40とが離隔した状態で、両者の間にモルタル30が介在してもよい。このとき、モルタル30が「固定部材」として両者を固定する。また、ストッパー50とケーシングシュー40とが離隔した状態で、傾斜面94の上方において、ケーシング10の後端10bに近い位置と引張抵抗体20の後端20bに近い位置とが固定部材(例えばボルトやピン等)を介して固定されてもよい。
【0031】
(施工方法)
図6〜
図8において、アンカー装置の施工方法(以下「施工方法」と称す)は、掘削ハンマ(ダウンザホールハンマ等)900によってビットシステム9に回転および打撃を付与することで引張抵抗体用掘削孔93およびケーシング用掘削孔91を同時に形成するものである。なお、本発明は掘削ハンマの型式を限定するものではない。以下、各工程毎に説明する。
【0032】
(S1:準備工程)
図6および
図7において、まず、図示しない平地において、トップビット300が接続されているインナービット100に掘削ハンマ900を接続して、トップビット300およびインナービット100をケーシング10の後端10bから挿入し(
図7の(a)参照)、インナービット100のインナー打撃突起130をケーシング10の先端10a(ケーシングシュー40の先端に同じ)から突出させ(
図7の(b)参照)、インナービット100にアウタービット200を装着する(
図7の(c)参照)。そうすると、ビットシステム9が組み立てられ、ビットシステム9と掘削ハンマ900とケーシング10とが一体化する。
すなわち、トップビット300が接続されているインナービット100をアウタービット200内で軸心方向に移動した後、相対的に回転して、インナー回転面144をアウター被回転面242に当接すると共に、インナー打撃面131がアウター被打撃面223に当接可能またはインナー係止面113がアウター被係止面221に当接可能にする(
図1〜
図4参照)。このとき、インナービット100のインナー後端フランジ170の前面171は(ケーシングシュー40の後端40b(ケーシングシュー40のシュー径小部43に同じ)に当接または間隔を空けて対向している。
【0033】
(S2:掘削工程)
図6および
図8において、地盤90の傾斜面94(理解を容易にするため、水平に図示している)に図示しない掘削スタンドを設置して、一体化されている掘削ハンマ900とビットシステム9とケーシング10とを図示しない掘削スタンド設置する(
図8の(a)参照)。
そして、掘削ハンマ900からインナービット100に回転および打撃を伝達すると、インナービット100からアウタービット200に回転および打撃が伝達され、トップビット300の回転および打撃によって引張抵抗体用掘削孔93が形成され、インナービット100およびアウタービット200の回転および打撃によってケーシング用掘削孔91が形成される。このとき、かかる形成に並行して、インナービット100のインナー後端フランジ170の前面171は、ケーシングシュー40の後端40bに当接して、ケーシング10をケーシング用掘削孔91に押し込む(
図8の(b)参照)。
【0034】
(S3:切り離し工程)
そして、アウタービット200をインナービット100から切り離す。すなわち、インナービット100とアウタービット200とを円周方向に相対的に回転して(インナービット100を掘削時とは反対の方向に回転して)、インナー打撃突起130およびインナー回転突起140がアウター被回転突起240同士の間隔を軸心方向に通過可能、かつインナー前方突起110が、アウター被打撃突起220同士の間隔およびアウター被回転突起240同士の間隔を軸心方向に通過可能にする(
図3および
図4の(b)参照)。
【0035】
(S4:回収工程)
そこで、掘削ハンマ900を引き上げて、アウタービット200をケーシング用掘削孔91中に残留させ、トップビット300およびインナービット100をケーシング10から引き出す(
図8の(c)参照)。
【0036】
(S5:充填工程)
さらに、引張抵抗体用掘削孔93にモルタル30を充填する。すなわち、図示しない注入管をケーシング10に挿入して、注入管の先端を引張抵抗体用掘削孔93に深く(底面93aの近くまで)侵入させ、モルタル30を充填しながら、注入管を引き上げ、モルタル30を引張抵抗体用掘削孔93に充填する。さらに、モルタル30をケーシング10の先端10aに近い所定の範囲にも充填する(
図9の(a)参照)。
【0037】
(S6:設置工程)
そして、引張抵抗体20の後端10bに固定された被係止ピン22に、挿入治具70の先端に設けられたL字状の係止溝73(軸方向の移動と周方向の回転とによって係止するバヨネット構造になっている)を係止して、引張抵抗体20を吊り下げる(
図9の(b)参照)。
そして、引張抵抗体20をケーシング10に挿入してケーシングシュー40を貫通させ、モルタル30に挿入し、ストッパー50がケーシングシュー40に押し当たって、引張抵抗体20の下降が止まるまで押し込む(
図9の(c)参照)。
そこで、被係止ピン22と係止溝73との係止を開放し(周方向の回転と軸方向の移動とによって開放し)、引張抵抗体20を切り離し、挿入治具70を引き上げる(
図9の(d)参照)。
【0038】
(最終工程)
そして、ケーシング10の後端10bにアンカーキャップ12を設置し、貫通孔11にかんざしピン3を差し込む(
図5参照)。なお、かんざしピン3は、ワイヤーロープ2をケーシング10から離脱不可能にする。
なお、設置工程(S6)において、ストッパー50をケーシングシュー40に押し当てないで、引張抵抗体20のストッパー50をモルタル30を介してケーシング10に固定してもよい。
【0039】
(作用効果)
本発明に係るアンカー装置1の施工方法は以上であるため、以下の作用効果を奏する。
(a)一台のビットシステム9を用いた1回の連続した工程によってケーシング用掘削孔91および引張抵抗体用掘削孔93を同時に形成するから、作業が簡素で迅速になり、施工コスの低廉化および施工工期の短縮化が可能になる。
(b)延長ロッド320および突出ロッド330の一方または両方の長さを変更することによって、引張抵抗体用掘削孔93の深さを変更可能であるから、引抜力の大きさに応じた深さの引張抵抗体用掘削孔93を容易に形成することができる。
(c)引張抵抗体20がケーシング10内を移動する際、ストッパー50は引張抵抗体20の軸心をケーシング10の軸心(通常は鉛直方向に対して傾斜している)に一致させるセンタリング効果を有するから、引張抵抗体20をケーシングシュー40に確実に侵入させることができる。
(d)インナービット100とトップビット300とが着脱可能であるから、地盤90の性状に応じた好適な掘削刃が設けられたトップビット300に付け替えることによって、掘削効率が向上する。
【0040】
(変形例)
準備工程(S1)において、トップビット300が接続されていないインナービット100をケーシング10に挿入して、インナービット100にアウタービット200を装着した後、トップビット300をインナービット100に接続してもよい。
また、ストッパー50とケーシングシュー40とが当接する場合に替えて、ストッパー50とケーシングシュー40とが、離隔しながらも、両者の間に介在するモルタル30を「固定部材」として互いを固定する場合や、引張抵抗体20の後端20bの近くとケーシング10の後端10bの近くとを連結部材を介して連結する場合には、設置工程(S6)において、引張抵抗体20をケーシング10に所定の距離挿入し、ストッパー50がケーシングシュー40に押し当たる前に、挿入を停止する。
【0041】
(挿入治具)
図10において、挿入治具70は、長尺の棒体部71と、棒体部71の先端に設置された筒体部72と、筒体部72に形成された係止溝73とを具備している。そして、筒体部72の内部に引張抵抗体20の後端20bが侵入可能である。
係止溝73は対向して設けられ、被係止ピン22が侵入可能なL字状の切欠であって、先端72aに到達し、先端72aに垂直(棒体部71に軸心に平行)な垂直溝部73aと先端72aに平行(棒体部71に軸心に垂直)な平行溝部73bとを具備している。
なお、係止溝73に替えて、被係止ピン22が係止可能な鉤状(L字状)の棒材を棒体部71の先端に設置してもよい。
【0042】
[実施の形態3]
図11および
図12は本発明の実施の形態3に係る二重管式掘削装置を説明するものであって、
図11は側面図、
図12は一部の側面視の断面を示す断面図である。なお、実施の形態1と同じ部位または相当する部位には同じ符号を付して、説明を省略する。
【0043】
(ビットシステム)
図11および
図12において二重管式掘削装置(以下「ビットシステム」と称す)4は、トップビット400とインナービット100とアウタービット200とを有し、ビットシステム9(実施の形態1参照)におけるトップビット300をトップビット400に変更したものに同じである。
【0044】
(トップビット)
トップビット400は、トップ先端部310と、トップ先端部310の後端に着脱可能に設置された延長ロッド320と、インナー先端面101に固定(一体的に形成)された突出ロッド430と、突出ロッド430の内面に形成され、延長ロッド320と突出ロッド430とを連結する連結手段(以下「凹条」と称す)440とを具備している。
すなわち、延長ロッド320は、外面の全長に渡って螺旋状の突条が形成された棒体であって、凹条440は延長ロッド320の突条に螺合する螺旋状の溝である。また、トップ先端部310にも、凹条440と同様の螺旋状の溝(図示しない)が形成されている。
したがって、延長ロッド320は、トップ先端部310および突出ロッド430の両方に着脱可能に設置されている。なお、突出ロッド430には、インナー通気路191と凹条440とを連通する突出ロッド通気路431が形成されている。
【0045】
(作用効果)
したがって、ビットシステム4は、ビットシステム9と同様に組み立てることができ、ビットシステム9と同様にアンカー装置の施工方法を実行することができるから、ビットシステム9と同じ作用効果を奏する。
さらに、突出ロッド430の方が突出ロッド330に比較して、外径を大きくすることができることから、強度が高くなり、突出ロッド430の折損のおそれが低減する。
また、仮に延長ロッド320が損傷した場合でも、その取り替えが容易になっている。
また、カプラ340を有しないことによって部品点数が減少するため、製造コストが安価になると共に、部品の保管や保全が容易になる。
なお、本発明は、延長ロッド320を外面の全長に渡って突条が形成されたものに限定するものではなく、端部のみに突条が形成された鋼管でもよい。また、突条に代えて雄ネジを形成し、かかる雄ネジに螺合する雌ネジをトップ先端部310および突出ロッド430の両方に形成してもよい。また、突条と凹条との連結手段に代えて公知の連結手段(コッター、バヨネット等)にしてもよい。
なお、突出ロッド430を撤去して、インナー先端面101に開口した凹条440をインナービット100に形成したものは、ビットシステム4に均等である。
【0046】
以上、本発明を実施の形態1〜3をもとに説明した。この実施の形態1〜3は例示であ
り、それらの各構成要素及びその組合せにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。