特許第6853672号(P6853672)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6853672
(24)【登録日】2021年3月16日
(45)【発行日】2021年3月31日
(54)【発明の名称】ラッチ装置及びこれを用いたドア装置
(51)【国際特許分類】
   E05B 15/10 20060101AFI20210322BHJP
   E05B 15/02 20060101ALI20210322BHJP
   E05B 65/06 20060101ALI20210322BHJP
   E05C 5/00 20060101ALI20210322BHJP
【FI】
   E05B15/10 B
   E05B15/02 D
   E05B65/06 C
   E05C5/00
【請求項の数】8
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2017-4733(P2017-4733)
(22)【出願日】2017年1月13日
(65)【公開番号】特開2018-112041(P2018-112041A)
(43)【公開日】2018年7月19日
【審査請求日】2020年1月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】598063683
【氏名又は名称】株式会社 ユーシン・ショウワ
(74)【代理人】
【識別番号】100122426
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 清志
(74)【代理人】
【識別番号】100155273
【弁理士】
【氏名又は名称】澤田 修孝
(74)【代理人】
【識別番号】100101177
【弁理士】
【氏名又は名称】柏木 慎史
(72)【発明者】
【氏名】山本 哲也
(72)【発明者】
【氏名】福原 篤志
【審査官】 砂川 充
(56)【参考文献】
【文献】 特開平8−326390(JP,A)
【文献】 特開2007−239235(JP,A)
【文献】 実開昭61−22870(JP,U)
【文献】 米国特許第5492382(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05B 1/00−85/28
E05C 1/00−21/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物のドア枠に外開きで開閉自在に取り付けられるドアのラッチ装置であって、
前記ドア枠の枠辺と前記ドアの端面との間に生ずる隙間の領域内に存在しないように前記ドア枠に取り付けられ、前記ドアの開閉軌跡に干渉する位置で前記ドアの開閉方向に突出させて設けられるストライカと、
前記ドアが閉じられた状態で、前記ドアの室内側の面に開口する挿入孔から挿入された前記ストライカに係脱自在に係合して前記ドアをラッチするラッチ部材と、
を備え、
前記ラッチ部材は、前記ドア内に内蔵され、前記ストライカに前記ドア内で係脱可能に係合すること、
を特徴とするラッチ装置。
【請求項2】
前記ラッチ部材は、水平方向に移動することで、前記ストライカに係合して前記ドアをラッチするラッチ位置と、前記ストライカとの係合を脱して前記ドアのラッチを解除するラッチ解除位置との間で変位する、
ことを特徴とする請求項1に記載のラッチ装置。
【請求項3】
前記ラッチ部材は、水平方向に移動自在に取り付けられたラッチボルトの先端部に、垂直軸周りに回転自在であって前記ストライカに設けられたラッチ孔に係脱するラッチヘッドを備え、
前記ラッチヘッドは、
前記ラッチ部材がラッチ位置に位置するとき、回転阻止部材によって回転を阻止され、
前記ラッチ部材がラッチ解除位置に位置するとき、係脱する前記ストライカに押圧されて回転し、前記ストライカとの接触角度を90度よりも小さな角度にする、
ことを特徴とする請求項2に記載のラッチ装置。
【請求項4】
前記ラッチ部材がラッチ位置に位置するとき、前記ラッチ部材の水平移動を選択的に阻止する移動阻止部材を備える、
ことを特徴とする請求項2または3のいずれか一に記載のラッチ装置。
【請求項5】
建物のドア枠に外開きで開閉自在に取り付けられるドアと、
前記ドア枠の枠辺と前記ドアの端面との間に生ずる隙間の領域内に存在しないように前記ドア枠に取り付けられ、前記ドアの開閉軌跡に干渉する位置で前記ドアの開閉方向に突出させて設けられたストライカと、
前記ドアが閉じられた状態で、前記ドアの室内側の面に開口する挿入孔から挿入された前記ストライカにラッチ部材を係脱自在に係合させて前記ドアをラッチするラッチ装置と、
を備え、
前記ラッチ装置は、前記ドア内に内蔵され、前記ストライカに前記ドア内で係脱可能に係合することを特徴とするドア装置。
【請求項6】
前記ラッチ部材は、水平方向に移動することで、前記ストライカに係合して前記ドアをラッチするラッチ位置と、前記ストライカとの係合を脱して前記ドアのラッチを解除するラッチ解除位置との間で変位する、
ことを特徴とする請求項5に記載のドア装置。
【請求項7】
前記ラッチ部材は、水平方向に移動自在に取り付けられたラッチボルトの先端部に、垂直軸周りに回転自在で前記ストライカに設けられたラッチ孔に係脱するラッチヘッドを備え、
前記ラッチヘッドは、
前記ラッチ部材がラッチ位置に位置するとき、回転阻止部材によって回転を阻止され、
前記ラッチ部材がラッチ解除位置に位置するとき、係脱する前記ストライカに押圧されて回転し、前記ストライカとの接触角度を90度よりも小さな角度にする、
ことを特徴とする請求項6に記載のドア装置。
【請求項8】
前記ラッチ部材がラッチ位置に位置するとき、前記ラッチ部材の水平移動を選択的に阻止する移動阻止部材を備える、
ことを特徴とする請求項6または7のいずれか一に記載のドア装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外開きのドアに装着して用いる電気錠及びこれを用いたドア装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ドアは、その開閉を制御するために、施錠装置とラッチ装置とを設けている。
施錠装置は、ドアを施解錠するためのもので、ドア枠の側に設けた窪み形状のストライカに、ドアの端面に出没自在に設けたデッドボルトを抜き差しすることで、ドアの施解錠を実現している。
デットボルトは、ドアの端面から突出した状態に位置固定することができ、これによってドアの施錠が可能となる。
ラッチ装置は、ドアを閉じられた状態に維持、つまりラッチするためのもので、ドア枠の側に設けた窪み形状のストライカに、ドアの端面に出没自在に設けたラッチボルトを嵌合させることで、ドアを閉じた状態に維持できるようにしている。
ラッチボルトは、ドア枠側のストライカに対して90度よりも小さな角度で当接するように傾斜するラッチヘッドを先端部に備えているので、ドアを閉じるとストライカに押されて一旦は引っ込み、飛び出す方向に押すバネの付勢力によってストライカの凹部に嵌り込む。これによってドアのラッチがなされる。
このようなラッチボルトは、操作部の操作に応じて出没し、ラッチ解除が可能となる。操作部としては、例えばドアハンドルに設けた操作レバーが用いられる。
【0003】
従来のドアは、操作部の操作によってドアのラッチを解除するという構造上、操作部の操作が必要となるため煩わしく、また操作部を組み込む必要からドアハンドルのデザイン上の自由度を抑制してしまうという問題がある。
そこで従来、ドアを開けるときのラッチ解除操作を不用としたドア装置が提案されている(特許文献1参照)。
このドア装置は、ドア枠(1)の側にフック(10)を水平配置で取り付けておき、ドア(2)の側には、水平軸周りに回転することによってフックに係脱する係合部(24a)を備えたドアキャッチ(20)を設けている。係合部はスプリングで付勢され、ドアを閉めればフックに係合する方向に回転して係合状態を維持し、ドアを開ければフックとの係合を解く方向に回転してその状態を維持するようにされている。
したがって特許文献1に記載のドア装置によれば、ドアのラッチを解除するための操作が不要となるため、操作上の煩わしさがない。
またドアハンドルに操作部を設ける必要がないので、ドアハンドルのデザイン上の自由度を向上させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−239235号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
施錠装置にしてもラッチ装置にしても、ドア枠において、ドアの端面に対面する位置にストライカを配置している。この点は特許文献1に記載の構造のものも同様で、ドアの端面に対面する位置に取り付けられたフックがストライカの機能を果たすことになる。
このためドアとドア枠との間に生ずる隙間にデットボルトやラッチボルトが露出し、ドア枠ごとこの部分が壊されてしまえば、ドアの施錠は簡単に破られてしまう。実際上も、ストライカを埋め込んでいるドア枠部分を壊されて不正にドアの施錠を破る、という犯罪行為は後を絶たない。
上記特許文献1に記載のドア装置も含め、従来の施錠装置やラッチ装置は、このような犯罪行為に対して無力であるという問題がある。
【0006】
本発明は、このような点に鑑みなされたもので、ドア枠を破壊してドアの施錠を破るという類の犯罪行為を防止できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、建物のドア枠に外開きで開閉自在に取り付けられるドアのラッチ装置であって、前記ドア枠と前記ドアとの間に生ずる隙間から露出しないように前記ドア枠に取り付けられ、前記ドアの開閉軌跡に干渉する位置で前記ドアの開閉方向に突出させて設けられるストライカと、前記ドアが閉じられた状態で、前記ドアの室内側の面に開口する挿入孔から挿入された前記ストライカに係脱自在に係合して前記ドアをラッチするラッチ部材と、を備えることによって上記課題を解決する。
【0008】
本発明のドア装置は、建物のドア枠に外開きで開閉自在に取り付けられるドアと、前記ドア枠と前記ドアとの間に生ずる隙間から露出しないように前記ドア枠に取り付けられ、前記ドアの開閉軌跡に干渉する位置で前記ドアの開閉方向に突出させて設けられたストライカと、前記ドアが閉じられた状態で、前記ドアの室内側の面に開口する挿入孔から挿入された前記ストライカにラッチ部材を係脱自在に係合させて前記ドアをラッチするラッチ装置と、を備えることによって上記課題を解決する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、ドア枠に対するドアのラッチがドアの室内側において行われるため、ドア枠を破壊してもそのラッチ構造部分に外部から手が届かず、またストライカとラッチ部材とによって容易に施錠構造を構成することができ、したがってドア枠を破壊してドアの施錠を破るという類の犯罪行為を確実に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施の一形態として、ドア及びドア枠を一部切り欠いて示すラッチ装置を備えるドア装置の斜視図。
図2】ドアを一部切り欠いて示すラッチ装置の模式図。
図3】ドアに取り付けられたラッチ装置を仮想的に示す斜視図。
図4】ラッチ装置の縦断正面図(施錠状態)。
図5図4におけるA−A線断面図。
図6】ラッチ装置の縦断正面図(解錠・ラッチ状態)。
図7図6におけるB−B線断面図。
図8】ラッチ装置の縦断正面図(ラッチ解除状態)。
図9図8におけるC−C線断面図。
図10図8におけるC−C線断面図(ドアが少し押された状態)。
図11】各部の電気的接続を示す模式図。
図12】ドアが開かれる際の処理の流れを示すフローチャート。
図13】施錠信号を受信した場合の処理の流れを示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0011】
実施の形態を図面に基づいて説明する。
説明は、次の項目にしたがって行う。
1.概要
(1)ラッチ原理
(2)ドア装置の三態様
2.各部の構成
(1)ドア
(2)ストライカ
(3)ラッチ装置本体
(a)ラッチ機構
(b)施錠機構
(c)アクチュエータ
(d)動力伝達機構
(e)制御部
(f)ドアを開くときの制御部の処理
(g)施錠をする際の制御部の処理
3.作用効果
(1)施錠
(2)解錠
(3)防犯強度の向上
(4)ラッチ機構と施錠機構とを兼備する構造の簡略化
(5)ドア装置の簡略化
4.変形例
【0012】
1.概要
(1)ラッチ原理
図1図3に示すように、本実施の形態のドア装置11は、ドア枠21とドア31とを備え、ドア枠21に対してドア31をラッチするラッチ装置101を有している。
ラッチ装置101は、ドア枠21の側に取り付けられるストライカ111と、ドア31に内蔵されるラッチ装置本体121とからなる。ラッチ装置本体121は、ストライカ111に係合するラッチ部材122を有している(図3図10参照)。
ドア31は、図示しないヒンジに外開きで回転自在に支持され、ドア枠21に段部形状で設けられたドア受け22に位置規制される。つまりドア受け22は、ドア31の回転軌跡に干渉するようにドア枠21から突出し、ドア31の室内側の端部を受ける。
ドア枠21において、閉じられたドア31の端面31aに対面するのは、枠辺23である。従来のラッチ装置では、この枠辺23に、窪み形状のストライカが設けられるのに対して、本実施の形態のラッチ装置本体121では、ストライカ111は、ドア受け22の端面22aに取り付けられている。しかもストライカ111は平板状のものであり、ドア31の開閉方向に突出させて設けられ、突出部分にラッチ孔112を形成している。ラッチ孔112を形成するストライカ111の突出部分は、ドア31の回転軌跡に干渉する。
したがってドア31は、その回転途中において、ドア受け22から突出するストライカ111に干渉する。そこで本実施の形態では、ストライカ111との干渉を回避するように、ドア31の室内側の面に開口する挿入孔102が設けられている。挿入孔102は、ドア31に形成される外孔102aと、ドア31に内蔵されるラッチ装置本体121のハウジング123に形成される内孔102bとからなる。
このような構造上、ドア31が閉じられたとき、挿入孔102にストライカ111が挿入されてドア31との干渉が回避され、ドア31はドア受け22に突き当たるまで回転する。このときストライカ111のラッチ孔112は、ラッチ装置本体121のハウジング123の内部に位置づけられる。そこで本実施の形態では、ラッチ部材122を図2中の矢印aの方向に進行させてラッチ孔112に嵌合させ、これによってストライカ111との係合関係を確立し、ドア31をラッチするようにしている。ラッチを解除するには、ラッチ部材122を図2中の矢印bの方向に後退させ、ストライカ111との係合関係を解除可能とする。
以上が、本実施の形態におけるドア31のラッチ原理である。
【0013】
(2)ドア装置の三態様
本実施の形態のドア装置11は、三つの態様を提供する。
施錠状態、解錠・ラッチ状態、及びラッチ解除状態の三態様である。
【0014】
施錠状態は、ドア31をラッチした上で、ラッチ状態をより確実にして施錠した状態とする態様である(図4及び図5参照)。ラッチ装置本体121が内蔵するラッチ機構131がドア31のラッチを行い、施錠機構151が施錠を行う。
【0015】
解錠・ラッチ状態は、施錠機構151が施錠を解除しているが、ラッチ機構131が引き続きドア31のラッチ状態を維持している態様である(図6及び図7参照)。
【0016】
ラッチ解除状態は、施錠機構151が施錠を解除した上に、ラッチ機構131もドア31のラッチ状態を解除した態様である(図8図10参照)。
【0017】
2.各部の構成
各部の構成について説明する。
【0018】
(1)ドア
ドア31には、室内側と室外側とにそれぞれ、ハンドルが取り付けられている。室内側に取り付けられているのは室内ハンドル32であり、室外側に取り付けられているのは室外ハンドル33である(図11も参照のこと)。
室内ハンドル32及び室外ハンドル33は、ともに垂直方向に長い固定ハンドルであり、ドア31の開閉のための可動部分を有していない。
図1及び図11に示すように、室内ハンドル32は、ドア31に固定される固定部32aと、ドア31との間に指を差し込むことができる把手部32bとを有している。
図11に示すように、室外ハンドル33は、ドア31に固定される一対の固定部33aを上下端部に備え、これらの固定部33aの間に、ドア31との間に指を差し込むことができる把手部33bを有している。
【0019】
詳細は後述するが、室内ハンドル32は電池EBを着脱自在に内蔵している。電池EBは、ラッチ装置本体121が内蔵するアクチュエータ201と制御部211とに電力を供給する電力源となる(図11参照)。
また室内ハンドル32には静電スイッチES1が組み込まれ、室外ハンドル33には静電スイッチES2が組み込まれている(図11参照)。静電スイッチES1は、室内ハンドル32に手が触れられたことを検出し、静電スイッチES2は、室外ハンドル33に手が触れられたことを検出する。
【0020】
(2)ストライカ
ストライカ111は、カバー113を有している。
カバー113は、水平方向にスライド自在となるようにストライカ111に取り付けられており、通常はドア受け22から突出するストライカ111の先端方向に向けて付勢され、この先端部分を覆っている。
ドア31が閉じられる過程で、カバー113はドア31の室内側の面に押され、ドア受け22の端面22aに対するストライカ111との取り付け位置(図1及び図2に示す位置)まで後退する。ドア31が開かれると、カバー113は、再びストライカ111の先端部分を覆う位置までスライド移動する。
【0021】
図1及び図2中、カバー113は後退した位置に位置づけられているが、これはラッチ孔112を有するストライカ111の形状を示すための架空の状況を示しており、実際には、ドア31が開いているとき、カバー113はストライカ111の先端部分を覆っている。
【0022】
(3)ラッチ装置本体
ラッチ装置本体121は、一方の側面に平板状の化粧板124を固定したハウジング123の内部に、各部を収納したものである。
図3に示すように、ラッチ装置本体121は、ドア31の端面31aに開口させた収納部(図示せず)に差し込まれ、化粧板124を端面31aと同一面内に位置させた状態で固定される。
ハウジング123に収納される各部は、前述したラッチ部材122を含むラッチ機構131及び施錠機構151と、アクチュエータ201及び制御部211と、サムターン及び鍵部(図示せず)が取り付けられるハブ125を介してアクチュエータ201の動力をラッチ機構131及び施錠機構151に伝達する動力伝達機構171とである。
以下、図4図10に基づいて、各部について説明する。
【0023】
(a)ラッチ機構
ラッチ機構131は、ストライカ111のラッチ孔112にラッチ部材122の先端部を嵌合させ、ドア31をラッチするための機構である。
【0024】
ハウジング123の内部において、ラッチ部材122はラッチレール132にスライド自在に支持され、ストライカ111が挿入される挿入孔102の内孔102bを横切るように、水平方向に移動自在にされている。
このようなラッチ部材122は、ラッチレール132にスライド自在に支持されるラッチボルト133の先端部に、ラッチヘッド134を回転自在に取り付けた構造のものである。ラッチヘッド134は、垂直配置された支軸135に回転自在に支持され、その回転範囲を45度の範囲に規制されている。
【0025】
このようなラッチヘッド134は、進入面136と退避面137とを有している。
進入面136は、ドア31が閉じられるに際して、挿入孔102に挿入されてラッチ装置本体121の内部に進入するストライカ111の先端部に押される面である。この進入面136は、挿入孔102に挿入されるストライカ111の進行方向に対して45度の角度に傾斜している(図7参照)。
退避面137は、ドア31が開かれるに際して、挿入孔102から脱するストライカ111のラッチ孔112側の縁部に押される面である。このときラッチヘッド134は、ラッチ部材122が後退していることを条件に(図9参照)、ラッチ孔112側の縁部に押されて回転し、退避面137を、挿入孔102から脱するストライカ111の退避方向に対して45度の角度に傾斜させる(図10参照)。
こうして進入面136及び退避面137をストライカ111に対して45度の角度で傾斜させているのは、ストライカ111に押されたときに、ラッチ部材122を後退方向にスライド移動させるためである。
【0026】
ラッチ部材122は、スライド移動することで、挿入孔102に挿入されてラッチ装置本体121の内部に進入するストライカ111のラッチ孔112に嵌合するラッチ位置(図4図7参照)と、ラッチ孔112との嵌合状態を解除し得るラッチ解除位置(図8図10参照)との二つのポジションに位置づけられる。
ハウジング123は、ラッチ部材122がラッチ位置に位置づけられているとき、ラッチヘッド134の回転を阻止する回転阻止部材138を設けている。
回転阻止部材138は、ラッチ位置に位置するラッチヘッド134の回転軌跡上に配置された段部形状のものである。
【0027】
ラッチボルト133には、被押圧部139が固定されている。
被押圧部139は、ラッチ部材122のスライド移動方向に直交する方向に突出した部材であり、ラッチ部材122をラッチ位置からラッチ解除位置にスライド移動させるに際して、後述する押圧ピン172(図4図6図8参照)によって押圧力を加えるために設けられている。
【0028】
ハウジング123にはトーションバネ140の一端が固定されており、トーションバネ140の他端は、移動阻止部材152の連結片152aに連結されている。
トーションバネ140は、ラッチ装置101が施錠状態である場合には(図4参照)、ラッチ部材122を突出する方向(図面左方向)に付勢し、図6に示す解錠・ラッチ状態では反対に、ラッチ部材122を没入する方向(図面右方向)に付勢する。また解錠・ラッチ状態では、後述するように、連結溝154に連結している連結ピン173が移動阻止部材152の連結溝154から脱落する。このため解錠・ラッチ状態(図6参照)とラッチ解錠状態(図8参照)の間では、トーションバネ140の付勢力はハブ125にかからない。
ラッチ部材122の内部には、一端がラッチ部材122の壁面に押し当てられ、他端がラッチボルト133を突出する方向に付勢するバネSPが収容されている。このためラッチボルト133は、バネSPの付勢力によって、突出する方向(図面左方向)に付勢されている。
このためラッチ装置101が解錠・ラッチ状態にあるとき、後述する動力伝達片176の押圧ピン172は、ラッチ部材122の被押圧部139に当接している。そこで解錠・ラッチ状態(図6参照)からラッチ解錠状態(図8参照)へ遷移するラッチボルト133は、バネSPの付勢力に抗することになるため、ラッチ解錠状態では突出する方向(図面左方向)に付勢される。また被押圧部139と当接する押圧ピン172により、ハブ125は時計回り方向に付勢されている。
【0029】
(b)施錠機構
施錠機構151は、ラッチ部材122をラッチ位置に確実に位置づけるための機構である。
図5図7図9図10に示すように、ラッチ部材122において、ラッチヘッド134は、ハウジング123の底面に接しているのに対して、ラッチボルト133は、ハウジング123の底面よりも高い位置に配置されている。したがってハウジング123の底面とラッチボルト133との間には隙間が開けられており、この隙間に移動阻止部材152が設けられている。
移動阻止部材152は、T字形状をした平板状の部材であり、直交する二片の交差領域の位置で、支持ピン153によってハウジング123の底面に回転自在に取り付けられている。ここでは説明の便宜上、移動阻止部材152の一片を連結片152aと呼び、連結片152aの中央部分から直交方向に延びる片を位置規制片152bと呼ぶ。
移動阻止部材152の位置規制片152bは、ラッチ位置に位置するラッチヘッド134の後端部分に先端部を対面させ、ラッチ解除位置へのラッチ部材122の移動を阻止している。この状態から移動阻止部材152が回転すると、位置規制片152bはラッチヘッド134の後端部分に対面する位置から退避し、ラッチ解除位置へのラッチ部材122の移動を許容する。
図4及び図5は、移動阻止部材152がラッチ解除位置へのラッチ部材122の移動を阻止している状態を示し、図6図10は、移動阻止部材152がラッチ解除位置へのラッチ部材122の移動を許容している状態を示している。
【0030】
移動阻止部材152の連結片152aは、一端側に連結溝154を形成し、別の一端側をトーションバネ140に連結させている。
連結溝154は、後述する連結ピン173(図4図6図8参照)と連結し、連結ピン173に駆動されて移動阻止部材152を回転させるための構造である。
トーションバネ140は、移動阻止部材152の回転位置に応じて、付勢力を作用させる方向を切り替える。
移動阻止部材152がラッチ解除位置へのラッチ部材122の移動を阻止している状態のとき(図4及び図5参照)、トーションバネ140は、図4図6及び図8中、反時計方向に移動阻止部材152を付勢する。このとき位置規制片152bがラッチヘッド134の後端部分に対面する位置を越えて回転しないように、ハウジング123の底面には、移動阻止部材152の回転を阻止するストッパピン155が立設されている。
移動阻止部材152がラッチ解除位置へのラッチ部材122の移動を許容している状態のとき(図6図10参照)、トーションバネ140は、図4図6及び図8中、時計方向に移動阻止部材152を付勢する。このとき連結片152aの連結溝154が連結ピン173の移動軌跡を越えて回転しないように、ハウジング123の底面には、移動阻止部材152の回転を阻止するストッパピン156が立設されている。
【0031】
(c)アクチュエータ
図4図6図8に示すように、アクチュエータ201は、平べったいケース202に収められたモータ(図示せず)であり、ケース202の一側部に駆動歯車203を露出させている。駆動歯車203は、図示しないモータの回転軸から動力を伝達されて回転する。
アクチュエータ201は、ラッチ機構131及び施錠機構151の上方に位置させて、駆動歯車203の回転軸を水平方向に向けてハウジング123に内蔵されている。
【0032】
(d)動力伝達機構
動力伝達機構171は、鍵部(図示せず)が取り付けられるハブ125を主体に構成され、ハブ125を介してアクチュエータ201の動力をラッチ機構131及び施錠機構151に伝達する。
ハブ125は、水平軸周りに回転自在となるようにハウジング123に取り付けられたリング状の部材であり、中心部に連結孔174を備え、外周面に従動歯車175を設けている。従動歯車175は、アクチュエータ201の駆動歯車203に噛み合う位置に配置され、駆動歯車203の回転にしたがいハブ125を従動回転させる。
【0033】
ハブ125の外周面には、扇形形状の動力伝達片176が放射方向に突出して設けられている。動力伝達片176は、前述した押圧ピン172と連結ピン173とを水平方向に突出させている。
したがってハブ125の回転に応じて押圧ピン172は弧状に変位し、このときラッチボルト133の被押圧部139を押圧し、ラッチ部材122を駆動する。
またハブ125の回転に応じて連結ピン173も弧状に変位し、このとき移動阻止部材152を回転させる。
【0034】
動力伝達機構171は、ハブ125を回転させることによって、ドア装置11の態様を施錠状態から解錠・ラッチ状態に、解錠・ラッチ状態からラッチ解除状態へと状態遷移させる。
図4及び図5に示す施錠状態のときには、押圧ピン172は、被押圧部139から離れた位置に位置づけられる。連結ピン173は、移動阻止部材152の連結溝154に連結した状態である。
図6及び図7に示す解錠・ラッチ状態になると、ハブ125の回転に伴い、押圧ピン172は、被押圧部139に接触する位置まで進む。このとき連結溝154に連結している連結ピン173は移動阻止部材152を回転させ、連結溝154から脱落する。
図8図10に示すラッチ解除状態にまで至ると、ハブ125の回転に伴い、押圧ピン172は被押圧部139を押圧し、ラッチ部材122をラッチ位置からラッチ解除位置まで後退させる。
【0035】
ハウジング123は、ドア31の室内側に面する一面と、室外側に面する別の一面とのそれぞれに、ハブ125の連結孔174を露出させる露出孔126を形成している。
ドア31には、室内側にサムターン、室外側に鍵部がそれぞれ取り付けられ(ともに図示せず)、これらのサムターン及び鍵部の図示しないシリンダは、露出孔126を介してハブ125の連結孔174に連結している。
ハブ125の連結孔174は、サムターン及び鍵部のシリンダとの係合を実現する一対の係合片177を突出形成している。これらの係合片177は、サムターン及び鍵部のシリンダを回転させたとき、例えば50度分の空回転を許容するような間隔で配列されている。以下、この点について詳しく説明する。
【0036】
アクチュエータ201の動作によって駆動歯車203から従動歯車175に動力が伝達される場合、施錠状態から解錠・ラッチ状態に遷移し、解錠・ラッチ状態からラッチ解錠状態に遷移するときのハブ125の回転角度は、例えばそれぞれ20度である。つまりラッチ装置本体121は、施錠状態にあるとき、ハブ125が20度回転(ハブ125の第1の回転領域)することによって解錠・ラッチ状態に遷移し、さらにハブ125が20度回転(ハブ125の第2の回転領域)することによってラッチ解除状態に遷移する。したがってハブ125が40度回転することで、ドア装置11は、施錠状態からラッチ解除状態まで状態遷移することになる。
これに対して、サムターンや鍵部を操作して施解錠をする場合、サムターンや鍵を90度回転させる操作が一般的である。そこで一対の係合片177は、サムターン及び鍵部のシリンダを50度分の空回転させた後に始めてシリンダに係合し、その後は40度分の回転によって施錠状態からラッチ解除状態まで状態遷移させるように配列されているわけである。
【0037】
(e)制御部
ハウジング123は、アクチュエータ201の隣接位置に、制御部211を収納するための収納空間Sを用意している。収納空間Sには、制御部211及び無線通信部212を内蔵する回路ボックス(図示せず)が収納される。
制御部211は、プロセッサとメモリとを備え(いずれも図示せず)、メモリに格納されたプログラムにしたがいプロセッサが各種の演算処理を実行し、アクチュエータ201などの各部を集中的に制御する。
無線通信部212は、ユーザが所持するリモコンキー301と無線通信を確立する。
リモコンキー301は電源(図示せず)を内蔵し、各部を制御する制御部及びメモリ(図示せず)と、アクティブ方式で無線通信を実行する無線通信部(図示せず)と、操作ボタン302を備え、解錠用の認証コードをメモリに格納している。リモコンキー301の制御部は、認証コードの送信要求を受信すると、メモリに格納している認証コードを無線送信する。また操作ボタン302が押された場合、リモコンキー301の制御部は、施錠信号を無線送信する。
制御部211は、室内ハンドル32が取り替え自在に内蔵する電池EBを電源として動作し、室内ハンドル32及び室外ハンドル33がそれぞれ内蔵する静電スイッチES1,ES2から信号を受信する。
室内ハンドル32に内蔵された静電スイッチES1は、室内ハンドル32にユーザがタッチしたとき、出力信号の態様を変化させる。このため制御部211は、静電スイッチES1の出力信号を参照することで、室内ハンドル32にユーザがタッチしたかどうかを判定することができる。
室外ハンドル33に内蔵された静電スイッチES2は、室外ハンドル33にユーザがタッチしたとき、出力信号の態様を変化させる。このため制御部211は、静電スイッチES2の出力信号を参照することで、室外ハンドル33にユーザがタッチしたかどうかを判定することができる。
【0038】
(f)ドアを開くときの制御部の処理
図12は、ドア31を開くときの制御部211の処理の流れを示すフローチャートである。
制御部211は、静電スイッチES1がオンになったか、つまり室内ハンドル32にユーザがタッチしたかどうか(ステップS101)、また静電スイッチES2がオンになったか、つまり室外ハンドル33にユーザがタッチしたかどうか(ステップS102)の判定に待機している。
【0039】
静電スイッチES1がオンになったと判定した場合(ステップS101のYES)、制御部211は、ラッチ部材122がラッチ解除位置に位置するまでアクチュエータ201を駆動する(ステップS103)。
つまり制御部211は、ラッチ装置本体121が施錠状態である場合には(図4及び図5参照)、ハブ125が図4中の反時計方向に40度回転するまでアクチュエータ201を駆動し、ラッチ装置本体121が解錠・ラッチ状態である場合には(図6及び図7参照)、ハブ125が図6中の反時計方向に20度回転するまでアクチュエータ201を駆動する。
これによってラッチ部材122はラッチ解除位置に位置づけられ(図8及び図9参照)、そのままドア31を開くことが可能となる(図10参照)。
【0040】
静電スイッチES2がオンになったと判定した場合(ステップS102のYES)、制御部211は、現在の状態が施錠状態であるかどうかを確認する(ステップS105)。施錠状態であるかどうかは、リモコンキー301から受信した施錠信号にしたがい施錠処理(後述する図13のフローチャートに示す)をしたかどうかを確認することで、容易に判定が可能である。
制御部211は、施錠状態ではないと判定した場合(ステップS105のNO)、ラッチ部材122がラッチ解除位置に位置するまでアクチュエータ201を駆動するステップS103の処理を実行する。これによってドア31を開くことが可能となる(図4図10参照)。
これに対して施錠状態であると判定した場合(ステップS105のYES)、制御部211は、無線通信部212を駆動制御し、認証コードの送信要求を無線送信する(ステップS106)。
このときユーザがリモコンキー301を所持していたならば、リモコンキー301は認証コードの送信要求を受信し、メモリに格納している認証コードを無線送信する。
そこで制御部211は、認証コードの受信に待機し(ステップS107)、認証コードを受信したならば(ステップS107のYES)、適性に認証がされたかどうかの判定処理を実行する(ステップS108)。
制御部211は、認証コードを認証した場合(ステップS108のYES)、ラッチ部材122がラッチ解除位置に位置するまでアクチュエータ201を駆動するステップS103の処理を実行する。これによってドア31を開くことが可能となる(図4図10参照)。
認証コードを受信しなかった場合(ステップS107のNO)、あるいは認証コードを認証できなかった場合には(ステップS108のNO)、制御部211は、解錠のための処理を実行せず、ドア31を開くことができない。
【0041】
制御部211は、ラッチ部材122がラッチ解除位置に位置するまでアクチュエータ201を駆動するステップS103の処理を実行した後、直ちに、ラッチ部材122をラッチ位置に戻すようにアクチュエータ201を駆動する処理を実行する(ステップS104)。つまり図8中、ハブ125を反時計方向に20度回転させるようにアクチュエータ201を駆動し、図6に示す状態にするわけである。
これによってラッチ装置本体121は、解錠・ラッチ状態を維持する(図6及び図7参照)。
【0042】
制御部211は、ラッチ部材122をラッチ位置に戻すようにアクチュエータ201を駆動するステップS104の処理を実行した後は一連の処理を終了し、再び、静電スイッチES1がオンになったかどうか(ステップS101)、静電スイッチES2がオンになったかどうか(ステップS102)の判定に待機する。
【0043】
(g)施錠をする際の制御部の処理
図13は、施錠信号を受信した場合の処理の流れを示すフローチャートである。
制御部211は、現在の状態が施錠状態ではない場合、施錠信号の受信判定に待機している(ステップS201)。
施錠信号の受信を判定すると(ステップS201のYES)、制御部211は、施錠位置までアクチュエータ201を駆動する(ステップS202)。
つまりラッチ装置本体121は、施錠状態ではないとき、ラッチ部材122をラッチ位置に位置づけながらも、移動阻止部材152を跳ね上げ、位置規制片152bの先端部分をラッチヘッド134の後端部分から外れた位置に位置づけている(図6及び図7参照)。そこで制御部211は、ハブ125が図6中の反時計方向に20度だけ回転するようにアクチュエータ201を駆動する。これによって移動阻止部材152は、位置規制片152bの先端部分をラッチヘッド134の後端部分に対面する位置に位置づけ、施錠状態を実現する。
【0044】
3.作用効果
(1)施錠
ドア31が閉じられているとき、ドア枠21に取り付けられたストライカ111は、ドア31及びラッチ装置本体121の挿入孔102(外孔102a,内孔102b)に挿入されている。
図4及び図5に示すように、施錠状態では、ハブ125に設けられた押圧ピン172は、ラッチ部材122の被押圧部139から離反した位置に位置づけられている。このためラッチ部材122は、トーションバネ140に付勢されてラッチ位置に位置づけられ、ラッチヘッド134をストライカ111のラッチ孔112に嵌合させる。このときラッチヘッド134は、回転阻止部材138によって回転が阻止されているので、ドア31を開く方向に押してもラッチヘッド134が回転せず、ドア31はラッチされる。
また図4に示すように、移動阻止部材152の位置規制片152bは、ラッチ位置に位置するラッチヘッド134の後端部分に先端部を対面させ、ラッチ解除位置へのラッチ部材122の移動を阻止している。このためドア31が破壊され、ラッチ部材122が外部に露出してしまったような場合であっても、外力を加え、ラッチ部材122をラッチ解除位置へ移動させるようなことができず、高い防犯性が得られる。
【0045】
(2)解錠
ドア装置11が施錠状態にあるとき、ユーザが室内ハンドル32にタッチするか、リモコンキー301を所持して室外ハンドル33にタッチすることで、ドア装置11は解錠・ラッチ状態(図6及び図7参照)を飛び越えて、ラッチ解除状態となる(図8及び図9参照)。
ドア装置11が解錠・ラッチ状態にあるときには、ユーザが室内ハンドル32又は室外ハンドル33にタッチすることで、ドア装置11は解錠・ラッチ状態(図6及び図7参照)を飛び越えて、ラッチ解除状態となる(図8及び図9参照)。
このときユーザは、室内ハンドル32を押しているか、室外ハンドル33を引っ張っているはずなので、ストライカ111のラッチ孔112の縁部に押されたラッチヘッド134が回転し(図10参照)、ラッチヘッド134からストライカ111が抜けるときの力によってラッチ部材122がスライド移動して後退する。これによってドア31を開くことが可能となる。
【0046】
このようなドア31を開く一連の動作は、僅かな時間で完了するはずなので、前述したとおり制御部211は、ラッチ部材122をラッチ解除位置からラッチ位置に戻すようにアクチュエータ201を駆動する処理を実行する(図12のフローチャート中のステップS104参照)。これによって図8に示すハブ125が反時計方向に20度回転し、図6に示す状態になる。
もっともドア31が開かれた状態では、ラッチヘッド134は、ストライカ111のラッチ孔112の縁部に押されて回転した状態のままなので(図10参照)、ラッチ部材122はトーションバネ140に付勢されてハウジング123の側壁に突き当たり、図6及び図7に示すラッチ位置まで戻ることはない。このような状態でドア31が閉じられると、ストライカ111の先端部がラッチヘッド134の進入面136に突き当たり、ラッチヘッド134は再び元の位置まで回転させ。その過程でラッチ部材122はストライカ111に押されて後退し、ストライカ111はラッチヘッド134を乗り越え、ラッチヘッド134がラッチ孔112に嵌合した状態となる。このとき初めてラッチ部材122はラッチ位置に位置づけられ(図6及び図7参照)、ラッチ装置本体121は解錠・ラッチ状態となる。
【0047】
(3)防犯強度の向上
本実施の形態では、ストライカ111は、ドア枠21とドア31との間に生ずる隙間から露出しないようにドア枠21に取り付けられ、ドア31の室内側の面に開口する挿入孔102から挿入されたストライカ111にラッチ部材122が係脱自在に係合してドア31をラッチする。
このためドア枠21に対するドア31のラッチが室内側において行われるため、ドア枠21を破壊してもそのラッチ構造部分に外部から手が届かない。またストライカ111とラッチ部材122とによって、容易に施錠構造を構成することができる。
したがってドア枠21を破壊してドア31の施錠を破るという類の犯罪行為を、確実に防止することができる。
【0048】
本実施の形態では、ラッチ部材122は、水平方向に移動することで、ストライカ111に係合してドア31をラッチするラッチ位置と、ストライカ111との係合を脱してドア31のラッチを解除するラッチ解除位置との間で変位する。
したがってラッチ部材122を直線運動させるだけという簡単な構造で、ラッチ機構131を実現することができる。
【0049】
本実施の形態では、ラッチ部材122は、水平方向に移動自在に取り付けられたラッチボルト133の先端部に、垂直軸周りに回転自在であってストライカ111に設けられたラッチ孔112に係脱するラッチヘッド134を備え、ラッチヘッド134は、ラッチ部材122がラッチ位置に位置するとき、回転阻止部材によって回転を阻止され、ラッチ部材122がラッチ解除位置に位置するとき、係脱するストライカ111に押圧されて回転し、ストライカ111との接触角度を90度よりも小さな角度にする。
したがってドア31の開閉に際して、ストライカ111に押されるラッチヘッド134が回転しながらラッチ部材122を後退させるように動作し、ドア31の開閉動作に節度間を与えることができる。
【0050】
本実施の形態では、ラッチ部材122がラッチ位置に位置するとき、ラッチ部材122の水平移動を選択的に阻止する移動阻止部材152を備える。
したがって構造を複雑化することなく、ラッチ機構131に施錠機構151を簡単に追加することができる。
【0051】
(4)ラッチ機構と施錠機構とを兼備する構造の簡略化
本実施の形態では、ドア枠21に設けたストライカ111との係合を解除する方向にラッチ部材122を駆動するアクチュエータ201を動作させ、ストライカ111との係合を解除する方向にラッチ部材122を駆動するようにしたので、ストライカ111とラッチ部材122とによって容易に施錠構造を構成することができ、したがって施錠機能を持たせ得る構造のラッチ装置101を簡単な構造で実現することができる。
【0052】
本実施の形態では、ラッチ部材122は、トーションバネ140の付勢力によってストライカ111と係合する方向に付勢されている。
したがって簡単な構造により、ラッチ状態をより確実なものとすることができる。
【0053】
本実施の形態では、ラッチ部材122は、水平方向に移動することで、ストライカ111に係合してドア31をラッチするラッチ位置と、ストライカ111との係合を脱してドア31のラッチを解除するラッチ解除位置との間で変位し、アクチュエータ201の回転運動をラッチ部材122の直線運動に変換する回転自在のハブ125を備える。
したがってアクチュエータ201の回転運動をハブ125によってラッチ部材122の直線運動に変換させるだけという簡単な構造で、ラッチ機構131を実現することができる。
【0054】
本実施の形態では、ラッチ部材122がラッチ位置に位置するとき、ラッチ部材122の水平移動を選択的に阻止する移動阻止部材152を備え、ハブ125は、ラッチ部材122の水平移動を阻止する位置と阻止しない位置とに移動阻止部材152を変位させる第1の回転領域と、ストライカ111に対する係合を解除する位置にラッチ部材122を変位させる第2の回転領域とを備える。
したがって構造を複雑化することなく、ラッチ機構131に施錠機構151を簡単に追加することができる。しかもハブ125の第1の回転領域によって施錠機構151を動作させ、ハブ125の第2の回転領域によってラッチ機構131を動作させることができるので、ラッチ機構131と施錠機構151との間で、部品及び構造の共通化を図ることができ、構造の簡略化や部品コストの低減を図ることができる。
【0055】
(5)ドア装置の簡略化
上述したように、本実施の形態のラッチ装置101は、ストライカ111とラッチ部材122とによってラッチ機構131と施錠機構151とを兼備させ、室内ハンドル32及び室外ハンドル33がそれぞれ内蔵する静電スイッチES1,ES2から信号を受信した制御部211がアクチュエータ201を駆動してハブ125を回転させることにより施解錠を行う構成であるため、従来のドア装置で必要であった可動式のハンドル部材が不要となる。
本実施の形態では、ユーザの施解錠の意思を検出する手段として静電スイッチES1,ES2を用いているが、ボタン(図示せず)を押圧する等により作動するメカ式のスイッチを用いても問題はない。
また、本実施の形態では、ユーザがドア31を開閉するための把持部として固定ハンドルである室内側ハンドル32及び室外側ハンドル33を用いているが、ユーザが手を掛けることができる部位がドアに一体に形成され、その近傍にユーザの施解錠の意思を検出する手段を配置したような構成であってもよい。
なお、ラッチ装置101が電動駆動しないような故障が発生した場合には、ハブ125と連結するキーシリンダ(図示せず)にユーザが所持するキーを挿入して回動操作を行うことにより、ハブ125を回転させてラッチ機構131と施錠機構151とを施解錠操作することができる。
【0056】
4.変形例
実施に際しては、各種の変形や変更が可能である。
例えばストライカ111のラッチ孔112に対するラッチ部材122の係合は、例えば特許文献1に記載されているように、フック状のラッチ部材を回転させて実施するようにしてもよい。
またストライカ111も、ラッチ孔112のような孔形状のものに限らず、例えばピン形状の部材にフォーク形状に形成されたラッチ部材を係合させるような構造であってもよい。
また本実施の形態では、ラッチ機構131と施錠機構151との間で部品の共通化を図ったり、ハブ125を主体とする共通の動力伝達機構171で動作させたりしているが、ラッチ機構131と施錠機構151とをまったく独立させた構造として実現するようにしてもよい。
その他、あらゆる変形や変更が可能である。
【符号の説明】
【0057】
21・・・ドア枠
31・・・ドア
101・・・ラッチ装置
102・・・挿入孔
111・・・ストライカ
112・・・ラッチ孔
122・・・ラッチ部材
133・・・ラッチボルト
134・・・ラッチヘッド
138・・・回転阻止部材
152・・・移動阻止部材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13