(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6853681
(24)【登録日】2021年3月16日
(45)【発行日】2021年3月31日
(54)【発明の名称】引戸用戸袋構造及びその施工方法
(51)【国際特許分類】
E06B 1/04 20060101AFI20210322BHJP
E06B 3/46 20060101ALI20210322BHJP
E06B 5/16 20060101ALI20210322BHJP
【FI】
E06B1/04 Z
E06B3/46
E06B5/16
【請求項の数】8
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2017-17518(P2017-17518)
(22)【出願日】2017年2月2日
(65)【公開番号】特開2018-123604(P2018-123604A)
(43)【公開日】2018年8月9日
【審査請求日】2019年12月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】000121729
【氏名又は名称】奥地建産株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100135437
【弁理士】
【氏名又は名称】坂野 哲三
(72)【発明者】
【氏名】奥地 誠
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼野 渉
【審査官】
鈴木 智之
(56)【参考文献】
【文献】
登録実用新案第3205223(JP,U)
【文献】
特開2005−139749(JP,A)
【文献】
特開2007−031975(JP,A)
【文献】
特開2011−127343(JP,A)
【文献】
特開2002−115471(JP,A)
【文献】
特開2013−142238(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E06B 1/00− 1/70
E06B 3/46
E06B 5/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
戸袋内に引戸を収納し且つ引き出して開閉できる住宅の引戸用戸袋構造において、
当該引戸を収納できる収納部を構成する壁面部の構造であって、
当該壁面部の骨組構造が水平方向に配設される複数の金属製横枠体と、これら複数の金属製横枠体の両端部に配設される金属製縦枠体とからなり、
前記横枠体が角部を略直角とした横断面略S字形状を有する鋼材からなり、前記縦枠体が前記横枠体の端部を嵌合できる嵌合部を有する横断面略コ字形状を有する鋼材からなることを特徴とする引戸用戸袋構造。
【請求項2】
前記横断面略コ字形状の縦枠体は、底面部とその両端部から延長する両側面部とからなり、一方の側面部を他方の側面部よりもその延長長さを長く形成し、当該延長長さの長い一方の側面部を戸袋側に配置したことを特徴とする請求項1に記載の引戸用戸袋構造。
【請求項3】
前記骨組構造における横枠体が上端部と下端部に配設され、これら両端部間には複数の横枠体が配設され、前記上端部と下端部に配設される横枠体には予め複数の孔部が形成され、これらの孔部を利用して、戸袋の上部に配設される横桟及び床材に螺子を用いて螺着できることを特徴とする請求項1又は2に記載の引戸用戸袋構造。
【請求項4】
前記横枠体と前記縦枠体とからなる骨組構造のうち、上端部と下端部に配設される横枠体を木製の角材から構成したことを特徴とする請求項1又は2に記載の引戸用戸袋構造。
【請求項5】
前記両縦枠体の外側にそれぞれ木製柱を配設し、前記横枠体と縦枠体との骨組構造の両側面には壁材を配設したことを特徴とする請求項1乃至4の何れか1項に記載の引戸用戸袋構造。
【請求項6】
前記金属製の横枠体及び縦枠体が、少なくとも板厚0.4mm〜0.8mmの範囲内にあることを特徴とする請求項1乃至5の何れか1項に記載の引戸用戸袋構造。
【請求項7】
前記縦枠体の両側面部の開口部の間隔がその底面部の幅よりも狭く、両側面部が横枠体を挟持して仮止めできることを特徴とする請求項1乃至6の何れか1項に記載の引戸用戸袋構造。
【請求項8】
工場内で、横断面角型の略S字形状の複数の横枠体を略水平に所定間隔で配設し、これらの両端部を横断面略コ字形状の縦枠体によって挟持固定して骨組構造を作製し、その後設置現場にて引戸用戸袋構造の骨組構造として設置できることを特徴とする引戸用戸袋構造の施工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、住宅用の引戸の戸袋構造に関し、とりわけ戸袋構造の戸袋部の壁面を構成する骨組構造の改良に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の戸建住宅等の引戸構造としては、出入口が形成される壁面に引戸構造が配設され、この引戸構造の戸袋部に引戸が収納され且つ引き出され、その出入口が開閉される形態のものである。
そして、この戸袋部を形成する壁面部(戸袋壁)が設けられるが、この壁面部は、引戸の一方の側にのみ設けられたものと、その両側に設けられたものとが存在する。
【0003】
本発明においては、この壁面部の構造に係るものであるが、上記従来の壁面部構造においては、その骨組構造として両端部の木製支柱とその間に配設される複数の木製中間柱と両側面に配設される石膏ボード等の壁材とから構成されている。
或いは、上記骨組構造に加えて横方向の木製横桟を配したものも存在する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明においては、従来の木造戸袋構造とは異なる発想に基づき、木材に拘泥せずに、例えば鋼材等の金属製の枠体材料を用いて、その強度並びに耐火性能を向上させた戸袋構造を提供することをその第一の課題としている。
そして、上記金属製のものを採用するに際して、その鋼材等の金属製の枠体の形態として如何なる形態のものが最適なものであるかを鋭意研究し、開発することをその課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明の第1のものは、戸袋内に引戸を収納し且つ引き出して開閉できる住宅の引戸用戸袋構造において、当該引戸を収納できる収納部を構成する壁面部の構造であって、当該壁面部の骨組構造が水平方向に配設される複数の金属製横枠体と、これら複数の金属製横枠体の両端部に配設される金属製縦枠体とからなり、
前記横枠体が角部を略直角とした横断面略S字形状を有する鋼材からなり、前記縦枠体が前記横枠体の端部を嵌合できる嵌合部を有する横断面略コ字形状を有する鋼材からなることを特徴とする引戸用戸袋構造である。
【0007】
本発明の第
2のものは、上記第1の発明において、前記
横断面略コ字形状の
縦枠体は、底面部とその両端部から延長する両側面部とからなり、一方の側面部を他方の側面部よりもその延長長さを長く形成し、当該延長長さの長い
一方の側面部を戸袋側に配置したことを特徴とする引戸用戸袋構造である。
【0008】
本発明の第
3のものは、上記第1
又は第2の発明において、前記骨組構造における横枠体が上端部と下端部に配設され、これら両端部間には複数の横枠体が配設され、前記上端部と下端部に配設される横枠体には予め複数の孔部が形成され、これらの孔部を利用して、戸袋の上部に配設される横桟及び床材に螺子を用いて螺着できることを特徴とする引戸用戸袋構造である。
【0009】
本発明の第
4のものは、上記第1
又は第2の発明において、前記横枠体と前記縦枠体とからなる骨組構造のうち、上端部と下端部に配設される横枠体を木製の角材から構成したことを特徴とする引戸用戸袋構造である。
【0010】
本発明の第
5のものは、上記第1乃至第
4の何れかの発明において、前記両縦枠体の外側にそれぞれ木製柱を配設し、前記横枠体と縦枠体との骨組構造の両側面には壁材を配設したことを特徴とする引戸用戸袋構造である。
【0011】
本発明の第
6のものは、上記第1乃至第
5の何れかの発明において、前記横枠体及び縦枠体が、少なくとも板厚0.4mm〜0.8mmの範囲内にあることを特徴とする引戸用戸袋構造である。
【0012】
本発明の第
7のものは、上記第
1乃至第
6の何れかの発明において、前記縦枠体の両側面部の開口部の間隔がその底面部の幅よりも狭く、両側面部が横枠体を挟持して仮止めできることを特徴とする引戸用戸袋構造である。
【0013】
本発明の第
8のものは、工場内で、横断面角型の略S字形状の複数の横枠体を略水平に所定間隔で配設し、これらの両端部を横断面略コ字形状の縦枠体によって挟持固定して骨組構造を作製し、その後設置現場にて引戸用戸袋構造の骨組構造として設置できることを特徴とする引戸用戸袋構造の施工方法である。
【発明の効果】
【0014】
本発明の第1のものにおいては、戸袋内に引戸を収納し且つ引き出して開閉できる住宅の引戸用戸袋構造であって、当該引戸を収納できる収納部を構成する壁面部の構造として、当該壁面部の骨組構造が水平方向に配設される複数の金属製横枠体と、これら複数の金属製横枠体の両端部に配設される金属製縦枠体とから形成されているために、従来の木材性のものと比較すると、その強度が向上する。
【0015】
同様に金属製であるために、その耐火性能も従来のものよりも向上するものとなる。
更に、従来の構成では、木材特有の経年変化による反り・ねじれ等の発生により引き戸の開閉が閉まりにくい現象が発生していたけれども、本発明に係る金属製骨組みでは木材に比べて経年変化が無く、引き戸の開閉が円滑にできることから生活環境を向上させることが可能となる。
【0016】
本発明においては、前記横枠体と縦枠体の形態を限定したものであって、即ち、前記横枠体が角部を略直角とした横断面略S字形状を有し、前記縦枠体が前記横枠体の端部を嵌合できる嵌合部を有する横断面略コ字形状の鋼材からなるものである。
当該形態を採用することにより、より強度が高く、施工も容易となる。
【0017】
本発明の第
2のものにおいては、前記縦枠体の形態を更に限定したものであり、即ち、前記
横断面略コ字形状の
縦枠体は、底面部とその両端部から延長する両側面部とからなり、一方の側面部を他方の側面部よりもその延長長さを長く形成し、当該延長長さの長い
一方の側面部を戸袋側に配置したものである。
【0018】
本発明の第
3のものにおいては、前記骨組構造における横枠体が上端部と下端部に配設され、これら両端部間には複数の横枠体が配設され、前記上端部と下端部に配設される横枠体には予め複数の孔部を形成し、これらの孔部を利用して、戸袋の上部に配設される横桟及び床材に螺子を用いて螺着できるようにしたものである。施工の容易化を図ったものである。
【0019】
本発明の第
4のものにおいては、上記骨組構造において横枠体の上端部と下端部のものとして木製角材を使用したものである。
このように、実施態様の一例として横枠体の一部に木製角材を用いることができる。
【0020】
本発明の第
5のものは、前記骨組構造を有する引戸用戸袋構造として特定し、限定したものである。
【0021】
本発明の第
6のものは、前記金属製の横枠体及び縦枠体の厚みを特定したものである。その効果は、上記発明と同じである。
【0022】
本発明の第
7のものにおいては、前記縦枠体の両側面部の開口部の間隔がその底面部の幅よりも狭く形成したために、両側面部が横枠体を挟持して、仮止めすることができることとなる。
【0023】
本発明の第
8のものにおいては、工場内で、横断面角型の略S字形状の複数の横枠体を略水平に所定間隔で配設し、これらの両端部を横断面略コ字形状の縦枠体によって挟持固定して骨組構造を作製し、その後設置現場にて引戸用戸袋構造の骨組構造として設置できるため、現場施工時間の短縮が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】本発明の引戸用戸袋構造に係る一実施形態を示す斜視説明図である。
【
図4】一部を切り欠いた
図2のH−H線断面図である。
【
図5】上記実施形態に係る戸袋構造の横枠体と縦枠体を示し、その(A)が横枠体を、その(B)が縦枠体を示している。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、添付の図面と共に本発明の実施形態につい説明する。
図1は、本発明の引戸用戸袋構造に係る一実施形態を示す斜視説明図である。
図2は、上記実施形態を示す正面説明図である。
これらの図では、引戸の収納部は紙面の向こう側に位置し、内部構造が解るように手前側の壁材を取り外した状態に描いている。
【0026】
この実施形態に係る戸袋構造では、引戸の収納部は、この収納部を構成する壁面部10の向こう側、つまり紙面の裏側に位置する。
そして、この実施形態では、当該壁面部10は、手前側の片側にのみ存在し、引戸はその壁面部10に沿うように壁面部10の向こう側の収納部に引き入れられ且つ引き出される形態である。
【0027】
出入口20は正面側から見て左側に位置し、右側には収納部を構成する壁面部10が位置する。
本発明においては、この壁面部10の構造に特徴がある。
【0028】
即ち、この壁面部10は、水平方向の横方向に配設された複数の鋼製の横枠体11と、これらの横枠体11の両端部で縦方向に配設される鋼製の縦枠体12とから構成される。
これらの横枠体11の上端部と下端部に配設される横枠体11w、11wは、木製角材を使用してなり、中央部の3本の横枠体11が鋼製のものからなる。
【0029】
このように横枠体は、その上端部と下端部の木製角材からなる横枠体11w、11wと、その間に配設される3本の鋼製の横枠体11が同一間隔で配設されている。
勿論のこととして、上記横枠体の全てを鋼製のものとして実施することもできる。
【0030】
この鋼製の横枠体11は、後に説明するが、横断面形状が角型のS字形状を有している。
縦枠体12は、上記の複数の横枠体11の端部を包み込むように嵌合出来る横断面形状が略コ字形状を有しているが、具体的には後の図を用いて説明する。
【0031】
上記の横枠体11と縦枠体12との骨組構造体の手前側及び向こう側の両側に石膏ボード等の壁材が接合される。
壁側の上記縦枠体12の外側には木材支柱13が配設され、出入口20側の縦枠体12の外側には出入口20を構成する木材製枠材14が配設され、上端部の横枠体11wの上には木製横桟15が、下端部の横枠体11wの下面には床材16が配設される。
【0032】
このように、本発明に係る引戸用戸袋構造は、上端部及び下端部に配設される木製横枠体11wと、その間に配設される3本の金属製、つまり鋼製の横枠体11と両側の縦枠体12とから構成されており、強度が高く、曲げや歪にも強いものとなっている。
当然、耐火性能も木材製のものよりも高いものとなる。
【0033】
図3は、
図2のV−V線断面図である。
図4は、一部を切り欠いた
図2のH−H線断面図である。
図5は、上記実施形態に係る戸袋構造の横枠体と縦枠体を示し、その(A)が横枠体を、その(B)が縦枠体を示している。
【0034】
図3及び
図5(A)から金属製の横枠体11の形態を見て取ることができる。
即ち、この横枠体11は、角部が略直角の横断面略S字形状を有し、
図5(A)の状態で略水平方向の中間部に3本、
図3に示した状態で配設される。
【0035】
この横枠体11の横幅は、略コ字形状の縦枠体12の空間部12hの幅と略同一に形成する。
そして、横枠体11の両側の側面部11s、11sの長さは同一にする。
これら5本の横枠体11w、11の両端部に縦枠体12が嵌合する。
【0036】
図4及び
図5(B)から縦枠体12の形態を見て取ることができる。
即ち、この縦枠体12は、横断面略コ字形状を有し、その略コ字形状の空間部12hを形成する両側面12s、12tと底面12bの3つの面で、横枠体11の端部をきっちりと嵌合させることができるものである。
【0037】
この実施形態では、上記空間部12hを形成する側面12sを他方の側面12tよりも長く形成し、この長く形成された側面12sは、戸袋の収納部21の側に配設している。
即ち、引戸が引き入れられる側の壁面に配置している。
引戸側の壁面の歪や曲げを最小限に抑制するためである。
【0038】
更に、この縦枠体12の開口部の間隔(幅)を底面部12bの幅tよりも小さく設定しておくことにより、鋼材の有する弾性により、両側面部12s、12sによって嵌合挟持される横枠体11、11wの端部を一時的に保持でき、仮止め機能を付加することもできる。
【0039】
以上、本発明の実施形態について説明したが、その実施形態については種々設計変更することが可能である。
先ず、横枠体の中間部の配設本数は必要に応じて自由に設計変更することができるが、少なくとも上端部と下端部には木製或いは金属製のものを配設することが望ましい。
【0040】
配設間隔も適宜変更することができ、同一間隔でなくともよい。
更に、横断面形状も、必ずしも角型のS字形状でなくともよく、鋼製の角型管(横断面矩形形状)、角型のC字形状(いわゆるC型チャンネル材)のもの等々、各種の角型鋼材を利用することができる。
【0041】
更に、これらの金属製の横枠体においては、これが配設される上端部と下端部のものにあっては、上部の横桟及び下部の床材に螺子によって螺着されるのであるが、このたのめの螺子孔としての孔部をこれらの横枠体に穿設しておくことが好ましい。施工の容易化のためであるが、この孔部は、単なる丸穴或いは長孔によって形成することができる。
【0042】
他方、縦枠体についても、横断面コ字形状でなく、角型鋼管を利用することもでき、この場合には螺子等の固定手段により横枠体と固定されることとなる。
この場合には、予め螺子挿通孔或いは螺子孔を縦枠体及び横枠体に設けておくことが好ましい。
【0043】
尚、上記した通り、金属製の横枠体の一部のもの(取り分け上端部と下端部)を木材製の角材を用いることも可能である。
この場合、当然に角材製の横枠体の横幅と鋼製の断面略S字形状の横枠体の横幅は同一として、同じ縦枠体によって共に挟持・固定できるように構成する。
【0044】
同様に、縦枠体に関しても、断面略コ字形状を有し、上記横枠体の端部を嵌合できる空間部を有していればよい。
上記鋼製板材からなる横枠体及び縦枠体の厚みは、略0.4mm乃至0・8mm程度のものを使用することが好ましい。
当該厚みも適宜必要に応じて変更することができる。
【0045】
上記横枠体と縦枠体からなる骨組構造体の両側面には、各種の素材から成る壁材を接合することができる。
また、引戸の収納部の両側に上記本発明に係る壁面部を設けて、引戸を戸袋の収納部の内部に収納して、出入り口の両側の外部から見えない形態の戸袋構造とすることもできる。
【0046】
以上の通り、本発明に係る引戸用戸袋構造においては、その引戸を収納できる収納部の壁面部の構造として金属製の横枠体と縦枠体とを用いて構成し、強度の高い、耐火性能の高い戸袋構造を提供できたものである。
【符号の説明】
【0047】
10 壁面部
11、11w 横枠体
12 縦枠体
13 支柱
14 枠材
15 横桟
16 床材
20 出入口
21 収納部