(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
さまざまな電子機器や車両、産業機械において、ある電圧値の直流電圧を別の電圧値の直流電圧に変換するDC/DCコンバータが使用される。
図1は、同期整流型の降圧(Buck)DC/DCコンバータ900の回路図である。DC/DCコンバータ900は、入力端子902に直流入力電圧V
INを受け、出力端子904に降圧された出力電圧V
OUTを発生する。DC/DCコンバータ900の出力段には、スイッチングトランジスタM
1、同期整流トランジスタM
2、インダクタ(コイル)L
1、出力キャパシタC
1が設けられる。
【0003】
パルス変調器910は、DC/DCコンバータ900の状態、あるいは出力端子904に接続される負荷(不図示)の状態が目標とする状態に近づくように、デューティ比、周波数、あるいはそれらの組み合わせが変化するパルス信号S
PWMを生成する。ドライバ912は、パルス信号S
PWMにもとづいてスイッチングトランジスタM
1および同期整流トランジスタM
2をスイッチングする。
【0004】
たとえば定電圧出力のDC/DCコンバータ900においては、パルス変調器910は、出力電圧V
OUTが目標電圧V
OUT(REF)に近づくように、パルス信号S
PWMを生成する。なお、定電流出力のDC/DCコンバータ900においては、負荷に流れる電流I
OUTが目標値I
REFに近づくようにパルス信号S
PWMが生成されるが、以下の説明では定電圧出力のコンバータについて説明する。
【0005】
DC/DCコンバータ900ではその起動直後に、出力キャパシタC
1への突入電流を防止するため、出力電圧V
OUTを緩やかに上昇させるソフトスタート制御が行われる。ソフトスタート回路914は、時間とともに緩やかに変化するソフトスタート電圧V
SSを生成する。パルス変調器910には、出力電圧V
OUTを抵抗R
11,R
12によって分圧して得られるフィードバック信号V
FBが入力される。パルス変調器910は、起動直後のソフトスタート期間において、フィードバック信号V
FBがソフトスタート電圧V
SSに追従するようにパルス信号S
PWMを生成し、ソフトスタートの完了後に、フィードバック信号V
FBが基準電圧V
REFと一致するようにパルス信号S
PWMを生成する。
【0006】
DC/DCコンバータ900には、電流センス回路920と、過電流検出回路922を備える。電流センス回路920は、スイッチングトランジスタM
1のオン期間において、スイッチングトランジスタM
1に流れるドレイン電流I
M1を示す電流センス信号V
CSを生成する。過電流検出回路922は、電流センス信号V
CSがしきい値V
OCPをクロスすると、言い換えればドレイン電流I
M1がしきい値I
OCPを超えると、パルス信号S
PWMをオフレベルに遷移させて、オン状態のスイッチングトランジスタを直ちにターンオフする。これは、パルスバイパルス(あるいはサイクルバイサイクル)の過電流制限と称される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
過電流状態のままDC/DCコンバータを動作させ続けることは望ましくない。そこでDC/DCコンバータには、過電流状態が連続して複数サイクル検出されると、あるいは過電流状態が所定時間以上持続すると、DC/DCコンバータの動作を停止させる停止機能(ラッチ停止保護)が実装される。
図2(a)、(b)は、
図1のDC/DCコンバータにおける過電流保護を説明する図である。
図2(a)に示すように、過電流検出信号S
OCPが連続的にアサートされる場合、所定サイクル数Nの経過後に、停止信号OCP_DETがアサートされ、スイッチング動作が停止する。
【0009】
本発明者は、このような停止機能を備えるDC/DCコンバータについて検討した結果、以下の課題を認識するに至った。
【0010】
DC/DCコンバータの動作状態によっては、過電流状態が持続している場合であっても、必ずしも過電流検出信号S
OCPが連続してアサートされるとは限らない。この場合、
図2(b)に示すように、過電流検出信号S
OCPが間欠的にアサートされ、パルスバイパルスの過電流保護を繰り返しながら、永続的に動作し続けてしまう。
【0011】
本発明はかかる課題に鑑みてなされたものであり、そのある態様の例示的な目的のひとつは、定常的な過電流状態を確実に検出可能なDC/DCコンバータの提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明のある態様はDC/DCコンバータの制御回路に関する。DC/DCコンバータの出力信号が目標電圧に近づくようにデューティ比が調節されるパルス信号を生成するパルス変調器と、DC/DCコンバータの電流が所定のしきい値を超えると、過電流検出信号をアサートする過電流検出回路と、過電流検出信号のアサートが、所定サイクル数内に所定の判定回数を超えて発生すると、過電流状態と判定する判定回路と、を備える。
【0013】
この態様によると、過電流検出信号が間欠的にアサートされる持続的な過電流状態を確実に検出し、適切な保護を図ることができる。
【0014】
判定回路は、1回目の過電流検出信号のアサートをトリガとして、所定サイクル数のカウントを開始してもよい。これにより判定回路は、過電流検出信号がアサートされない正常状態では動作しないため、無駄な消費電力を削減できる。また、1回目の過電流検出信号のアサートをトリガとして動作させることで、検出遅延を小さくできる。
【0015】
判定回路は、ディセーブル状態において過電流検出信号のアサートを検出するとイネーブル状態となり、所定サイクル数をカウントするまでの間、カウントイネーブル信号をアサートする第1カウンタと、カウントイネーブル信号がアサートされる間、過電流検出信号がアサートされる回数をカウントする第2カウンタと、を備え、第2カウンタのカウント値が判定回数に応じたしきい値を超えると、過電流状態を示す異常検出信号をアサートしてもよい。
【0016】
判定回路は、一の所定サイクル数が終了すると、次の所定サイクル数を開始してもよい。
【0017】
パルス変調器は、ピーク電流モードの変調器であってもよい。
【0018】
制御回路は、ひとつの半導体基板に一体集積化されてもよい。「一体集積化」とは、回路の構成要素のすべてが半導体基板上に形成される場合や、回路の主要構成要素が一体集積化される場合が含まれ、回路定数の調節用に一部の抵抗やキャパシタなどが半導体基板の外部に設けられていてもよい。回路を1つのチップ上に集積化することにより、回路面積を削減することができるとともに、回路素子の特性を均一に保つことができる。
【0019】
本発明の別の態様はDC/DCコンバータに関する。DC/DCコンバータは上述のいずれかの制御回路を備える。
【0020】
本発明の別の態様は、車載電装機器に関する。車載電装機器電源は、上述のDC/DCコンバータを備える。
【0021】
なお、以上の構成要素の任意の組み合わせや本発明の構成要素や表現を、方法、装置、システムなどの間で相互に置換したものもまた、本発明の態様として有効である。さらに、この項目(課題を解決するための手段)の記載は、本発明の欠くべからざるすべての特徴を説明するものではなく、したがって、記載されるこれらの特徴のサブコンビネーションも、本発明たり得る。
【発明の効果】
【0022】
本発明のある態様によれば、過電流検出信号が間欠的にアサートされる持続的な過電流状態を確実に検出できる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明を好適な実施の形態をもとに図面を参照しながら説明する。各図面に示される同一または同等の構成要素、部材、処理には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。また、実施の形態は、発明を限定するものではなく例示であって、実施の形態に記述されるすべての特徴やその組み合わせは、必ずしも発明の本質的なものであるとは限らない。
【0025】
本明細書において、「部材Aが、部材Bと接続された状態」とは、部材Aと部材Bが物理的に直接的に接続される場合や、部材Aと部材Bが、電気的な接続状態に影響を及ぼさず、あるいは機能を阻害しない他の部材を介して間接的に接続される場合も含む。
同様に、「部材Cが、部材Aと部材Bの間に設けられた状態」とは、部材Aと部材C、あるいは部材Bと部材Cが直接的に接続される場合のほか、電気的な接続状態に影響を及ぼさず、あるいは機能を阻害しない他の部材を介して間接的に接続される場合も含む。
【0026】
また、「信号A(電圧、電流)が信号B(電圧、電流)に応じている」とは、信号Aが信号Bと相関を有することを意味し、具体的には、(i)信号Aが信号Bである場合、(ii)信号Aが信号Bに比例する場合、(iii)信号Aが信号Bをレベルシフトして得られる場合、(iv)信号Aが信号Bを増幅して得られる場合、(v)信号Aが信号Bを反転して得られる場合、(vi)あるいはそれらの任意の組み合わせ、等を意味する。「応じて」の範囲は、信号A、Bの種類、用途に応じて定まることが当業者には理解される。
【0027】
本明細書において参照する波形図やタイムチャートの縦軸および横軸は、理解を容易とするために適宜拡大、縮小したものであり、また示される各波形も、理解の容易のために簡略化され、あるいは誇張もしくは強調されている。
【0028】
図3は、実施の形態に係るDC/DCコンバータ100の回路図である。DC/DCコンバータ100は同期整流型の降圧(Buck)コンバータであり、入力端子102に直流入力電圧V
INを受け、出力端子104に降圧された出力電圧V
OUTを発生する。DC/DCコンバータ100は、出力回路110および制御回路200を備える。本実施の形態では、一例として定電圧出力のDC/DCコンバータを説明する。
【0029】
出力回路110は、スイッチングトランジスタM
1、同期整流トランジスタM
2、インダクタL
1、出力キャパシタC
1、抵抗R
11,R
12を含む。本実施の形態においてスイッチングトランジスタM
1はPチャンネルMOSFETであり、同期整流トランジスタM
2はNチャンネルMOSFETであり、それらは制御回路200に内蔵されている。
【0030】
スイッチングトランジスタM
1と同期整流トランジスタM
2の接続点をスイッチング(SW)端子と称する。端子は、ピンと読み替えてもよい。インダクタL
1は、SW端子と出力端子104の間に設けられる。出力キャパシタC
1は、出力端子104に接続される。フィードバック(FB)端子には、制御対象である出力電圧V
OUTが入力されており、抵抗R
11、R
12は、出力電圧V
OUTを分圧して検出電圧(フィードバック信号)V
FBを生成する。抵抗R
11,R
12は
図1に示すように制御回路200に外付けされてもよい。
【0031】
制御回路200は、スイッチングトランジスタM
1、同期整流トランジスタM
2に加えて、パルス変調器210、ドライバ230、ソフトスタート回路240、オシレータ260、電流センス回路270、過電流検出回路271、判定回路290を備える。制御回路200は好ましくはひとつの半導体基板に一体集積化された機能IC(Integrated Circuit)である。スイッチングトランジスタM
1のソースはVIN端子と、そのドレインはSW端子と接続される。また同期整流トランジスタM
2のドレインはSW端子と接続され、そのソースはGND端子と接続される。イネーブル(EN)端子には、外部から制御回路200(DC/DCコンバータ100)の動作、停止を指示するイネーブル信号ENが入力される。
【0032】
パルス変調器210はメインロジック218を含んでおり、メインロジック218は、イネーブル信号ENがアサート(たとえばハイレベル)されると、図示しない内部の基準電圧源や基準電流源をアクティブとして、その他の回路ブロックを動作可能な状態とし、ソフトスタート回路240にソフトスタート電圧V
SSの生成開始を指示する。ソフトスタート回路240は、動作開始の指示を受けると、時間的に緩やかに増大するソフトスタート電圧V
SSを生成する。ソフトスタート電圧V
SSが増大する期間(その前後を含んでもよい)をソフトスタート期間T
SSと称する。
【0033】
パルス変調器210は、DC/DCコンバータ100の状態、もしくは出力端子104に接続される負荷(不図示)の状態が目標値に近づくように、スイッチングトランジスタM
1のオンオフを指示するパルス信号S
PWM(ハイサイドパルスS
Hともいう)および同期整流トランジスタM
2のオンオフを指示するローサイドパルスS
Lを生成する。
【0034】
上述のようにDC/DCコンバータ100は定電圧出力であり、パルス変調器210は、DC/DCコンバータ100の出力電圧V
OUTを制御対象とする。具体的にはパルス変調器210は、フィードバック電圧V
FBがその目標値V
REFに近づくように、パルス信号S
PWMを生成する。
【0035】
パルス変調器210は公知技術を用いればよく、その制御方式や構成は特に限定されない。制御方式に関しては、電圧モード、ピーク電流モード、平均電流モード、ヒステリシス制御(Bang-Bang制御)、ボトム検出オン時間固定(COT:Constant On Time)方式などを採用しうる。またパルス信号S
PWMの変調方式としては、その限りではないが、パルス幅変調(PWM:Pulse Width Modulation)が採用しうる。パルス変調器210の構成に関しては、エラーアンプやコンパレータを用いたアナログ回路で構成してもよいし、デジタル演算処理を行うプロセッサで構成してもよいし、アナログ回路とデジタル回路の組み合わせで構成してもよい。またパルス変調器210は、負荷の状態に応じて制御方式を切りかえてもよい。
【0036】
パルス変調器210の動作モードは、負荷の状態に応じて可変であってもよい。たとえば重負荷状態ではパルス変調器210はPWMモードで動作し、軽負荷状態ではPFM(Pulse Frequency Modulation)モードで動作してもよい。PWMモード(特に電流連続モード)において、ハイサイドパルスS
HとローサイドパルスS
Lは相補的な信号となる。
【0037】
ドライバ230は、パルス信号S
PWM(ハイサイドパルスS
H)にもとづきスイッチングトランジスタM
1を駆動し、ローサイドパルスS
Lにもとづき同期整流トランジスタM
2を駆動する。
【0038】
オシレータ260は、所定の周波数で発振する。オシレータ260の構成は特に限定されない。たとえばオシレータ260は、キャパシタと、定電流でキャパシタを充電する充電回路と、キャパシタの電圧をしきい値と比較するコンパレータと、コンパレータの出力に応じてキャパシタの電圧がしきい値に達するとキャパシタの電荷を放電する放電回路と、を含んでもよい。オシレータ260は、2つの発振信号S
OSCおよびCLKを生成する。それらは同一の信号であってもよいし、異なる信号であってもよい。
【0039】
パルス変調器210は、オシレータ260が生成する発振信号S
OSCと同期して動作し、したがってパルス信号S
PWMは発振信号S
OSCに応じた周波数を有する。
【0040】
パルス変調器210は、DC/DCコンバータの起動時に、フィードバック信号V
FBが、出力ソフトスタート電圧V
SSと基準電圧V
REFのうち低い方に応じた目標電圧に近づくように、パルス信号S
PWMのデューティ比を調節する。
【0041】
電流センス回路270は、スイッチングトランジスタM
1のオン時間中に、コイルL
1に流れるコイル電流I
L(言い換えればスイッチングトランジスタM
1のドレイン電流I
M1)を検出し、ドレイン電流I
M1を示す電流センス信号V
CSを生成する。電流センス回路270の構成は特に限定されず、たとえばスイッチングトランジスタM
1のオン抵抗を利用してドレイン電流I
M1を検出してもよいし、ドレイン電流I
M1(あるいはコイル電流I
L)の経路上にセンス抵抗を挿入し、センス抵抗の電圧降下を検出してもよい。電流センス回路270は、インダクタL
1の両端間の電圧にもとづいてコイル電流I
Lを検出してもよい。
【0042】
過電流検出回路271は、スイッチングトランジスタM
1のドレイン電流I
M1が所定のしきい値I
OCPを超えると、過電流検出(OCP)信号S
OCPをアサート(たとえばハイレベル)する。過電流検出回路271は、コンパレータで構成することができる。
【0043】
判定回路290は、OCP信号S
OCPのアサートが、所定サイクル数N内に所定の判定回数Mを超えて発生すると、過電流状態と判定し、過電流判定信号OCP_DETをアサート(たとえばハイレベル)する。
【0044】
メインロジック218は、OCP_DET信号のアサートに応答して、DC/DCコンバータ100の動作を停止する。
【0045】
またメインロジック218は外部のホストコントローラ(マイコン)に、過電流状態を通知するフラグ信号FLGを出力する。これにより、過電流状態の通知を受けたホストコントローラは、DC/DCコンバータ100およびDC/DCコンバータ100を備えるシステム全体に関連して、必要な保護処理を実行することができる。
【0046】
図4は、判定回路290の構成例を示す回路図である。判定回路290は、第1カウンタ292、第2カウンタ294を含む。判定回路290は、1回目のOCP信号S
OCPのアサートをトリガとして、所定サイクル数Nのカウントを開始する。
【0047】
第1カウンタ292は、オシレータ260からの発振信号(クロック信号)CLKと、OCP信号S
OCPを受ける。第1カウンタ292は、ディセーブル状態(非カウント状態)においてOCP信号S
OCPのアサートを検出するとイネーブル状態となり、クロック信号CLKと同期してカウントを進め、所定サイクル数をカウントするまでの間、カウントイネーブル信号COUNT_ENをアサート(ハイレベル)する。第1カウンタ292は、シフトレジスタを含んでもよい。
【0048】
第2カウンタ294は、カウントイネーブル信号COUNT_ENがアサートされる間、OCP信号S
OCPがアサートされる回数をカウントする。第2カウンタ294は、そのカウント値OCP_COUNTが判定回数Mに達すると、過電流状態と判定し、OCP_DET信号をアサートする。ただし、N>Mである。
【0049】
以上がDC/DCコンバータ100の構成である。続いてその動作を説明する。
図5は、DC/DCコンバータ100の過電流検出の動作を説明する図である。この例ではN=8、M=4としている。
【0050】
クロック信号CLKは、PWMサイクルごとにエッジを有する。OCP信号S
OCPは、スイッチングトランジスタM
1のドレイン電流I
M1がしきい値I
OCPを超えるたびにアサートされる。OCP信号S
OCPのアサートによって、パルスバイパルスの過電流保護(図中、(i)で示す)が発生し、スイッチングトランジスタM
1がターンオフする。
【0051】
時刻t
0に、1回目のOCP信号S
OCPがアサートされると、その後、クロック信号CLK(ここではネガエッジ)がN(=8)回発生する間、COUNT_EN信号がアサートされる。
【0052】
COUNT_EN信号がハイレベルの期間、OCP信号S
OCPのアサートの回数がカウントされる。時刻t
1に、カウント値OCP_COUNTが判定回数Mに応じたしきい値Kに達すると、OCP_DET信号がアサートされる。この例では、1回目のOCP信号S
OCPは第2カウンタ294のカウントに含まれないため、K=M−1とすればよい。
【0053】
図6は、DC/DCコンバータ100の過電流検出の動作を説明する図である。時刻t
0に、1回目のOCP信号S
OCPがアサートされると、その後、クロック信号CLKがN(=8)回発生する間、COUNT_EN信号がアサートされる。
【0054】
図6では、COUNT_EN信号がハイレベルの間、OCP信号S
OCPは1回のみアサートされる。したがってOCP_DETはアサートされない。時刻t
1にCOUNT_EN信号がローレベルとなると、判定回路290は待機状態となる。
【0055】
続いて時刻t
2に、再び1回目のOCP信号S
OCPのアサートが発生すると、COUNT_EN信号がアサートされ、それに続く判定期間T
DETにおける、OCP信号S
OCPのアサートの回数がカウントされる。
【0056】
以上がDC/DCコンバータ100の動作である。このDC/DCコンバータ100によれば、OCP信号が間欠的に、かつ持続的にアサートされるような状態を、過電流状態と判定することができる。従来の過電流保護は、連続して発生する過電流検出の回数にもとづく処理であったのに対して、本実施の形態における過電流保護は、所定時間における過電流検出の発生頻度(割合)に着目したものと言える。
【0057】
本発明は、
図3のブロック図や回路図として把握され、あるいは上述の説明から導かれるさまざまな装置、回路に及ぶものであり、特定の構成に限定されるものではない。以下、本発明の範囲を狭めるためではなく、発明の本質や回路動作の理解を助け、またそれらを明確化するために、より具体的な構成例や変形例を説明する。
【0058】
図7は、DC/DCコンバータ100の具体的な構成例を示す回路図である。
【0059】
パルス変調器210は、ピーク電流モードのパルス幅変調器である。パルス変調器210は、エラーアンプ212、PWMコンパレータ214、スロープ補償器216、メインロジック218を備える。エラーアンプ212は、ソフトスタート電圧V
SSと基準電圧V
REFの低い一方と、フィードバック電圧V
FBとの誤差を増幅し、誤差信号V
ERRを生成する。エラーアンプ212は3入力のオペアンプで構成してもよい。スロープ補償器216は、電流センス回路270からの電流センス信号V
CSに、スロープ信号V
SLOPEを重畳する。
【0060】
PWMコンパレータ214は、誤差信号V
ERRと、スロープ補償後の電流センス信号V
CS’を比較し、電流センス信号V
CS’が誤差信号V
ERRとクロスすると、リセット信号S
RESETをアサート(たとえばハイレベル)する。メインロジック218は、リセット信号S
RESETのアサートに応答して、パルス信号S
PWMを、スイッチングトランジスタM
1のオフに対応するレベル(オフレベル、たとえばロー)に遷移させる。
【0061】
オシレータ260は、電流I
OSCに応じた周波数を有するセット信号S
SETを生成する。メインロジック218はセット信号S
SETのエッジに応答して、パルス信号S
PWMを、スイッチングトランジスタM
1のオンに対応するレベル(オンレベル、たとえばハイ)に遷移させる。
【0062】
(過電流保護の変形例)
図8(a)、(b)は、DC/DCコンバータ100の過電流検出の変形例を説明する図である。実施の形態に係る過電流検出の処理(
図5、
図6)では、1回目のOCP信号S
OCPをトリガとして、判定期間T
DETを開始した。これに対して、
図7の変形例では、一の所定サイクル数(判定期間)が終了すると、OCP信号のトリガを待たずに、次の所定サイクル数(判定期間)を開始する。この変形例によっても過電流状態を検出できる。
【0063】
図8(a)、(b)の変形例と、
図5,
図6の処理を比較すると、後者の利点が明確となる。
図8(b)は、
図6(a)と同じOCP信号S
OCPに実施の形態に係る過電流検出処理を適用した場合を示す。これらの対比から明らかなように、実施の形態による処理では、変形例に係る処理に比べて、より早いタイミングでOCP_DET信号をアサートすることができる。
【0064】
また変形例では、OCP信号S
OCPが一切アサートされない状態でも、検出期間T
DETをカウントする必要があるため、無駄な消費電力が発生する。これに対して実施の形態に係る処理では、OCP信号S
OCPが一切アサートされない状態では判定回路290の動作は停止しているため、消費電力を低減できる。
【0065】
(用途)
図9は、DC/DCコンバータ100を備える車載電装機器300のブロック図である。車載電装機器300は、DC/DCコンバータ100に加えて、バッテリ302、マイコン304、負荷306を備える。バッテリ302は、たとえば12V(あるいは24V)のバッテリ電圧V
BATを生成する。DC/DCコンバータ100はバッテリ電圧V
BATを入力電圧V
INとして受け、負荷306に最適な電圧レベルを有する出力電圧V
OUTを生成する。負荷306は特に限定されず、各種ECU(Electronic Control Unit)、オーディオ回路、カーナビゲーションシステムなどが例示される。マイコン304は、車載電装機器300を統合的に制御するホストプロセッサであり、制御回路200に対してEN信号を出力する。また、制御回路200のFLG端子を監視し、OCP_DET信号のアサートを検出すると、適切な保護処理を実行する。
【0066】
車載電装機器300には、電子機器よりもさらに高い信頼性が要求される。実施の形態に係るDC/DCコンバータ100は、車載電装機器300など高い信頼性が要求される用途に好適である。
【0067】
以上、本発明について、実施の形態をもとに説明した。この実施の形態は例示であり、それらの各構成要素や各処理プロセスの組み合わせにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。以下、こうした変形例について説明する。
【0068】
(第1変形例)
DC/DCコンバータは、降圧型に限定されず、昇圧型や昇降圧型にも本発明は適用可能である。また、フライバックコンバータなどのようにトランスを用いたコンバータにも本発明は適用しうる。
【0069】
(第2変形例)
実施の形態ではスイッチングトランジスタM
1や同期整流トランジスタM
2がMOSFETである場合を説明したが、本発明はそれには限定されず、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)であってもよい。
【0070】
実施の形態にもとづき、具体的な語句を用いて本発明を説明したが、実施の形態は、本発明の原理、応用を示しているにすぎず、実施の形態には、請求の範囲に規定された本発明の思想を逸脱しない範囲において、多くの変形例や配置の変更が認められる。