特許第6853715号(P6853715)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6853715
(24)【登録日】2021年3月16日
(45)【発行日】2021年3月31日
(54)【発明の名称】プリンタ
(51)【国際特許分類】
   B41J 15/04 20060101AFI20210322BHJP
   B65H 16/02 20060101ALI20210322BHJP
【FI】
   B41J15/04
   B65H16/02
【請求項の数】3
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2017-66019(P2017-66019)
(22)【出願日】2017年3月29日
(65)【公開番号】特開2018-167464(P2018-167464A)
(43)【公開日】2018年11月1日
【審査請求日】2020年2月12日
(73)【特許権者】
【識別番号】501398606
【氏名又は名称】富士通コンポーネント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087480
【弁理士】
【氏名又は名称】片山 修平
(72)【発明者】
【氏名】矢田 雄二
【審査官】 五閑 統一郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−025539(JP,A)
【文献】 特開2007−203563(JP,A)
【文献】 特開2001−031283(JP,A)
【文献】 特開2004−284777(JP,A)
【文献】 実開昭62−182753(JP,U)
【文献】 特開2009−091146(JP,A)
【文献】 特開平04−253617(JP,A)
【文献】 特開2010−143710(JP,A)
【文献】 特開2014−156322(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 15/00
B41J 11/00
B65H 5/00
B65H 16/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロール紙を保持する保持手段と、
前記ロール紙に印刷を行う印刷手段と、
筐体内に設けられ、前記ロール紙に当接し、前記ロール紙を前記印刷手段に案内する案内手段と、
前記ロール紙の搬送時に、前記案内手段に振動を付与する第1振動付与手段と、を備えたことを特徴とするプリンタ。
【請求項2】
前記案内手段は、前記ロール紙の搬送方向に向かって幅が徐々に狭くなる側面を有し、前記ロール紙の搬送方向に向かって下向きに傾斜しており、
前記第1振動付与手段は、前記印刷手段のウォームアップの開始前から前記案内手段に振動を付与することを特徴とする請求項1に記載のプリンタ。
【請求項3】
前記保持手段は、前記ロール紙を載置する湾曲面を備え、
記湾曲面に取り付けられ、前記湾曲面に振動を付与する第2振動付与手段をさらに備えることを特徴とする請求項1又は2に記載のプリンタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリンタに関する。
【背景技術】
【0002】
ロール紙に印字を行うプリンタが知られている。また、一定の長さの被転写紙の紙送りの負荷を低減させる態様で用紙ガイドを振動させる加振器を有する用紙搬送装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。加振器は少なくとも給紙用紙送り手段により被転写紙が用紙ガイドに当接している間、及び逆方向用紙送り手段により被転写紙が用紙ガイドに案内されている間、動作する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−31283号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
用紙搬送方向が下向きである用紙落とし込みタイプのプリンタでは、ロール紙の重みに比例するロール紙と用紙ホルダとの摩擦により、用紙搬送モータの用紙引き込み力を大きくする必要がある。また、用紙セット時にロール紙を用紙ガイドに押し付けるため、用紙ガイドとロール紙との間に摩擦が発生し、ロール紙を印刷部に挿入しづらい場合がある。また、ロール紙を所定の位置にセットできなかった場合にロール紙の破損や斜行が発生するため、使用者が用紙セット時にロール紙を適切な位置にセットする必要がある。
【0005】
本発明の目的は、紙送りの負荷を低減し、印刷手段へロール紙を容易に搬送することができるプリンタを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、明細書に開示されたプリンタは、ロール紙を保持する保持手段と、前記ロール紙に印刷を行う印刷手段と、筐体内に設けられ、前記ロール紙に当接し、前記ロール紙を前記印刷手段に案内する案内手段と、前記ロール紙の搬送時に、前記案内手段に振動を付与する第1振動付与手段と、を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、紙送りの負荷を低減し、印刷手段へロール紙を容易に搬送することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本実施の形態に係るプリンタの斜視図である。
図2】プリンタの断面図である。
図3】圧電素子の駆動タイミングを示すタイミングチャートである。
図4】プリンタの上面図である。
図5】圧電素子の駆動タイミングを示すタイミングチャートである。
図6】第1変形例に係るプリンタの断面図である。
図7】第2変形例に係るプリンタの断面図である。
図8】圧電素子に印加される電圧とタイミングを示すタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照しながら本発明の実施の形態を説明する。
【0010】
図1は、本実施の形態に係るプリンタ1の斜視図である。図2は、プリンタ1の断面図である。図3は、圧電素子30の駆動タイミングを示すタイミングチャートである。以下では便宜上、図1に示すように上下、前後左右方向を定義する。
【0011】
本実施の形態によるプリンタ1は、例えば、サーマルプリンタである。プリンタ1は、ロール紙18に印刷を行う印刷部2と、ロール紙18をカットするカッタ3と、ロール紙18を印刷部2に案内する案内手段としての第1用紙ガイド4と、筐体の左右に立設された第1側面5と、第1側面5の内側に立設された第2側面6と、第2側面6間に形成されたロール紙18を収容する収容部8と、右側の第1側面5及び第2側面6の外側に配置され、印刷部2、カッタ3及び後述する圧電素子30,31a〜31c,32a〜32cの動作を制御する制御手段としての制御基板9とを備えている。制御基板9は不図示のマイコンやメモリなどを備えている。
【0012】
さらに、プリンタ1は、図2に示すように、底板15と、底板15から垂直に立設された第1前面19と、第1前面19の上端に固定され、底板15に対して垂直に立設された第2前面10と、第2前面10に固定され、用紙搬送路である間隙を介して第1用紙ガイド4と対向する第2用紙ガイド11と、底板15に固定され、ロール紙18を載置する円弧状の湾曲面16aを有する用紙ホルダ16と、ロール紙18本体と第1用紙ガイド4との間に配置され、ロール紙18を支持するシャフト17とを備えている。搬送される際、ロール紙18は矢印A方向に回転する。第2前面10には用紙挿入口20が形成されている。
【0013】
シャフト17は、第2側面6の上端に形成された凹部7に嵌められる。第1用紙ガイド4は、前端部4a、中間部4b及び後端部4cを備え、前端部4a、中間部4b及び後端部4cは一体形成されている。尚、図2では省略されているが、第1用紙ガイド4の中間部4b及び後端部4cの左右両端には、ロール紙18の斜行を防ぐ側面が形成されている。
【0014】
第1用紙ガイド4の前端部4aは、第2前面10の用紙挿入口20近傍に固定され、前後方向に延びている。第1用紙ガイド4の中間部4bは前端部4aから後端部4cに向かって上向きに傾斜している。つまり、第1用紙ガイド4は、後端部4cから前端部4aに向かって下向きに傾斜している。また、後端部4cは中間部4bからわずかに上向きに傾斜している。これにより、ロール紙18が第1用紙ガイド4の後端部4cに当接し、中間部4bに当接することを防いでいる。ロール紙18と中間部4bとが当接しないので、ロール紙18と第1用紙ガイド4との摩擦を減らし、紙送りの負荷を低減することができる。
【0015】
印刷部2は、発熱体を含む印字ヘッド12と、印字ヘッド12と対向し、印字ヘッド12と共にロール紙18を挟み込むプラテンローラ13と、ロール紙18の有無を検出するセンサ14とを備えている。
【0016】
図2に示すように、第1用紙ガイド4の中間部4bの裏面(ロール紙18と反対側の面)に、振動付与手段としての圧電素子30が固定されている。制御基板9から圧電素子30に駆動電圧を印加すると、圧電素子30は矢印B方向に振動する。図3に示すように、制御基板9は、プラテンローラ13を回転させる不図示のモータや印刷部2のウォームアップ状態の開始後、ロール紙18の搬送前及び印刷部2の印刷開始前から圧電素子30の振動を開始し、ロール紙18の搬送中及び印刷部2の印刷中は圧電素子30の振動を継続させ、ロール紙18の搬送及び印刷部2の印刷完了から所定時間経過後に圧電素子30の振動を停止させる。
【0017】
このように、ロール紙の搬送時に圧電素子30が第1用紙ガイド4に振動を付与するので、第1用紙ガイド4からロール紙18を一時的に浮かせて、ロール紙18と第1用紙ガイド4との摩擦を減らし、印刷時の紙送りの負荷を低減することができる。
【0018】
図4は、プリンタ1の上面図である。図5は、圧電素子30の駆動タイミングを示すタイミングチャートである。
【0019】
第1用紙ガイド4の中間部4bの左右側面4b1及び後端部4cの左右側面4c1は一体形成されている。左右側面4b1は平行であるが、左右側面4c1はロール紙18の搬送方向(矢印C方向)に向かって幅が徐々に狭くなるように形成されている。
【0020】
また、左右側面4b1の一方(図4では右側面)に圧電素子30が設けられている。制御基板9が圧電素子30に駆動電圧を印加すると、圧電素子30は図示左右方向に振動する。図5に示すように、制御基板9は、プラテンローラ13を回転させるモータや印刷部2のウォームアップの開始前から圧電素子30の振動を開始させ、ウォームアップ中は圧電素子30の振動を継続させ、ロール紙18の搬送及び印刷部2の印刷の開始から所定時間経過後に圧電素子30の振動を停止させる。
【0021】
図5では、ウォームアップの開始前から圧電素子30の振動を開始させている。これは、ロール紙18を自動的に用紙挿入口20にセットするためである。つまり、ロール紙18の搬送方向に向かって左右側面4c1間の幅が徐々に狭くなり、且つ第1用紙ガイド4は後端部4cから前端部4aに向かって下向きに傾斜しているので、ロール紙18は圧電素子30の振動により左右方向にずらされ、第1用紙ガイド4の幅方向(図4では左右方向)の中央に寄せられ、用紙挿入口20に案内される。
【0022】
このように、ロール紙18をセットする時に圧電素子30が第1用紙ガイド4に振動を付与するので、第1用紙ガイド4からロール紙18を一時的に浮かせて、ロール紙18と第1用紙ガイド4との摩擦を減らし、紙送りの負荷を低減することができる。
【0023】
図6は、第1変形例に係るプリンタ1の断面図である。
【0024】
図2及び図4では、圧電素子30は第1用紙ガイド4に取り付けられていたが、図6では、圧電素子30は用紙ホルダ16の湾曲面16aの裏面に装着されている。尚、図6では図示しないが、他の圧電素子が図2及び図4に示すように第1用紙ガイド4に取り付けられてもよい。圧電素子30は用紙ホルダ16の湾曲面16aを上下方向に振動させる。これにより、用紙ホルダ16からロール紙18を一時的に浮かせて、ロール紙18と用紙ホルダ16との摩擦を減らし、紙送りの負荷を低減することができる。尚、圧電素子30の駆動タイミングは図3のタイミングと同様である。
【0025】
用紙搬送方向が下向きである用紙落とし込みタイプのプリンタ1で、圧電素子30が用紙ホルダ16の湾曲面16aの裏面に装着されていない場合には、ロール紙18の重みに比例するロール紙18と用紙ホルダ16との摩擦により、大径のロール紙18を使用できないおそれがある。しかし、圧電素子30が湾曲面16aの裏面に装着されている場合には、湾曲面16aを振動させることでロール紙18と用紙ホルダ16との摩擦を減らすことができるので、用紙落とし込みタイプのプリンタ1でも大径のロール紙18を使用することができる。
【0026】
図7は、第2変形例に係るプリンタ1の断面図である。図8は、圧電素子32aに印加される電圧とタイミングを示すタイミングチャートである。
【0027】
ロール紙18の低速搬送時に、用紙送り動作に伴い発生する搬送モータ(不図示)の振動がロール紙18に伝播し、ロール紙18の振動により異音が発生することがある。
【0028】
そこで、図7のプリンタでは、ロール紙18の振動により発生する異音を抑制するために、ロール紙18の振動を検出する検知手段としての圧電素子31aと、ロール紙18の振動を打ち消す振動を発生させる振動付与手段としての圧電素子32aとが、シャフト17と第1用紙ガイド4との間の用紙搬送路40に設けられている。用紙搬送方向に対し、圧電素子31aが上流に配置され、圧電素子32aが下流に配置されている。
【0029】
圧電素子31a及び圧電素子32aはロール紙18の下面に接触している。圧電素子31aはロール紙18の振動を検出し、ロール紙18の振動に対応する電圧を制御基板9に出力する。制御基板9は、図8に示すように、ロール紙18の搬送及び印刷部2の印刷の開始から完了までの間、圧電素子31aから受信した電圧を打ち消す電圧を圧電素子32aに印加する。圧電素子32aに印加される電圧はロール紙18の振動状態により変化する。圧電素子32aは、制御基板9からの印加電圧に応じて、ロール紙18の振動を打ち消す振動を発生させる。
【0030】
ここで、圧電素子31aの出力電圧をV1とし、圧電素子32aへの印加電圧をV2とすると、以下の式が成立する。
V2=k・V1 (k:減衰係数、−1<k<0)
【0031】
このように、圧電素子32aが圧電素子31aによって検出された振動と逆位相の振動をロール紙18に付与することで、ロール紙18の振動を相殺し、ロール紙18の振動により発生する異音を抑制することができる。
【0032】
また、図7に示すように、ロール紙18の振動により発生する異音を抑制するために、ロール紙18の振動を検出する圧電素子31bと、ロール紙18の振動を打ち消す振動を発生させる圧電素子32bとを、第1用紙ガイド4の中間部4bの裏面に設けてもよい。この場合、圧電素子31bは用紙搬送の上流に配置され、圧電素子32bが下流に配置される。圧電素子31b及び圧電素子32bは、圧電素子31a及び圧電素子32aに代えてプリンタ1に設けられてもよいし、又は圧電素子31a及び圧電素子32aに加えてプリンタ1に設けられてもよい。
【0033】
さらに、圧電素子31a及び圧電素子32aに加えて、ロール紙18の振動による異音を抑制するために、ロール紙18の振動を検出する圧電素子31cと、ロール紙18の振動を打ち消す振動を発生させる圧電素子32cとを、用紙搬送路40上の圧電素子31a及び圧電素子32aと異なる位置に設けられてもよい。圧電素子31cは圧電素子32cに対して用紙搬送方向の上流に配置されている。圧電素子31c及び圧電素子32cはロール紙18の上面に接触する。
【0034】
このように、ロール紙18の振動を検出する圧電素子及びロール紙18の振動を打ち消す振動を発生させる圧電素子のペアを複数設けることで、ロール紙18の振動を複数段階で打ち消すことができる。例えば、用紙搬送方向上流に配置された圧電素子のペアが打ち消すことができなかった振動を、用紙搬送方向下流に配置された圧電素子のペアで打ち消すことができる。従って、圧電素子のペアを複数設けることで、振動抑制効果をより向上させることができる。
【0035】
以上説明したように、本実施の形態によれば、プリンタ1は、ロール紙18の搬送時に第1用紙ガイド4に振動を付与するように圧電素子30を動作させる。これにより、ロール紙18と第1用紙ガイド4との摩擦を減らし、紙送りの負荷を低減し、印刷部2へロール紙を容易に搬送できる。
【0036】
尚、本発明は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲内で種々変形して実施することが可能である。
【符号の説明】
【0037】
1 プリンタ
2 印刷部
4 第1用紙ガイド
9 制御基板
12 印字ヘッド
13 プラテンローラ
16 用紙ホルダ
18 ロール紙
30,31a〜31c,32a〜32c 圧電素子
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8