特許第6853734号(P6853734)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6853734-削孔装置と削孔方法 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6853734
(24)【登録日】2021年3月16日
(45)【発行日】2021年3月31日
(54)【発明の名称】削孔装置と削孔方法
(51)【国際特許分類】
   E21B 4/00 20060101AFI20210322BHJP
【FI】
   E21B4/00
【請求項の数】6
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2017-109278(P2017-109278)
(22)【出願日】2017年6月1日
(65)【公開番号】特開2018-204256(P2018-204256A)
(43)【公開日】2018年12月27日
【審査請求日】2020年3月3日
(73)【特許権者】
【識別番号】000206211
【氏名又は名称】大成建設株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000194756
【氏名又は名称】成和リニューアルワークス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】平山 哲也
(72)【発明者】
【氏名】小林 伸行
【審査官】 山崎 仁之
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭48−072906(JP,A)
【文献】 特公昭37−001104(JP,B1)
【文献】 特開平09−119280(JP,A)
【文献】 特開2007−170087(JP,A)
【文献】 特公昭43−028157(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E21B 4/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
地中に順次継ぎ足されていく筒状の延長ロッドと、
前記延長ロッドの下端に装着された貫通孔を有する駆動モータと、
前記駆動モータに回転自在に装着された筒状の掘削ロッドと、
前記掘削ロッドの下端に装着され、噴射水供給路と泥水排出路を内部に備えた掘削ビットと、
前記延長ロッドを地上で支持する重機と、から構成され、
前記駆動モータの下端にはウォータースイベルが非回転状態で装着され、該ウォータースイベルには地上に延びる排泥管が取り付けられており、
前記延長ロッドと前記駆動モータと前記掘削ロッドと前記噴射水供給路から噴射水供給ラインが形成され、
前記泥水排出路と前記掘削ロッドと前記ウォータースイベルと前記排泥管から泥水排出ラインが形成されている削孔装置。
【請求項2】
前記掘削ビットは中央の中央ビットと、該中央ビットから側方へ突出した拡翼ビットから構成され、前記拡翼ビットに前記噴射水供給路が形成され、前記掘削ロッドと前記噴射水供給路が迂回管で繋がれており、
前記中央ビットに前記泥水排出路が形成されている、請求項1に記載の削孔装置。
【請求項3】
前記排泥管は可撓性を有しており、前記延長ロッドの継ぎ足しに応じて地上から地中に該排泥管が自動的に送り出される、請求項1または2に記載の削孔装置。
【請求項4】
筒状の延長ロッドの下端に貫通孔を中央に備えた駆動モータを取り付け、該駆動モータの下端に回転自在に筒状の掘削ロッドを取り付けるとともに非回転状態でウォータースイベルを取り付け、該掘削ロッドの下端に噴射水供給路と泥水排出路を内部に備えた掘削ビットを取り付け、該ウォータースイベルに排泥管を取り付け、前記延長ロッドと前記駆動モータと前記掘削ロッドと前記噴射水供給路から噴射水供給ラインを形成し、前記泥水排出路と前記掘削ロッドと前記ウォータースイベルと前記排泥管から泥水排出ラインを形成して掘削装置を構成し、
前記掘削ビットを回転させ、前記噴射水供給ラインを介して噴射水を地盤に供給しながら地盤を掘削し、前記泥水排出ラインを介して泥水を地上に排出しながら掘削孔を造成し、
地盤の掘削に応じて前記延長ロッドを継ぎ足し、この継ぎ足しの際に、前記泥水排出ラインを介した泥水の排出を継続する、削孔方法。
【請求項5】
前記掘削ビットは中央の中央ビットと、該中央ビットから側方へ突出した拡翼ビットから構成され、前記拡翼ビットに前記噴射水供給路を形成し、前記掘削ロッドと前記噴射水供給路を迂回管で繋ぎ、前記中央ビットに前記泥水排出路を形成し、
前記拡翼ビットから噴射水を供給し、前記中央ビットから泥水を排出しながら掘削孔を造成する、請求項4に記載の削孔方法。
【請求項6】
前記排泥管は可撓性を有しており、前記延長ロッドの継ぎ足しに応じて地上から地中に該排泥管を自動的に送り出す、請求項4または5に記載の削孔方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地盤を削孔する削孔装置と削孔方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
場所打ち杭の施工やその他様々な理由から、原地盤を削孔して掘削孔を造成する施工がおこなわれている。削孔方法や削孔装置は原地盤の性状(軟弱地盤か硬質地盤か、砂質系地盤が粘性土地盤か、地下水位が高いか等)や地上および地下の現況等に応じて多岐に亘るが、その一例として、地上に載置された駆動モータを用いて、先端に掘削ビットを備えた掘削ロッドを回転させながら地盤を切削し、掘削ロッドを順次継ぎ足しながら所定長さの掘削孔を造成する方法が挙げられる。この種の削孔装置を用いて掘削孔を造成する場合、掘削孔の延長が長い大深度掘削施工の際に回転トルクが低下し易く、場合によっては掘削ができなくなるといったケースが生じたり、掘削可能であっても掘削精度が低下するケースが生じるといった課題がある。
【0003】
そこで、掘削ロッドを回転させる駆動モータを地上に載置せず、地上にある重機にて継ぎ足し自在な延長ロッドを支持させ、延長ロッドの下端に駆動モータを装備し、駆動モータの下端に回転自在に掘削ロッドを装着してなる削孔装置が開発されており、たとえば特許文献1にその開示がある。この種の装置では、大深度掘削の場合であっても、先端に掘削ビットを備えた掘削ロッドのロッド長が長くなることはなく、掘削に応じて掘削方向に進行する駆動モータにて一定長さの掘削ロッドを回転させることができ、したがって回転トルクの低下もなく、高い掘削精度を保証することができる。
【0004】
なお、掘削孔の造成の際には当該掘削孔の崩壊を防止するべく、掘削孔内には削孔にて生じた土砂が混ざりあった安定液を充満させており、したがって、削孔に応じてこの土砂混じり安定液を地上に排出する必要が生じるが、この土砂混じり安定液(以下、泥水という)の排出方式として、掘削ロッドの中空と、駆動モータの中央の貫通孔と、延長ロッドの中空とからなる泥水排出ラインを介して地上のサクションポンプにて排出する、いわゆる逆循環方式が適用されるのが一般的である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2013−36178号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、延長ロッドの下端に駆動モータが装備され、駆動モータの下端に回転自在に掘削ロッドが装着された削孔装置を用いて掘削孔を造成するに当たり、延長ロッドの継ぎ足しの際には上記する逆循環方式による泥水の地上排出を停止する必要がある。泥水の循環を停止させて駆動モータや掘削ロッドに繋がる延長ロッドを一端仮受けした後、新たな延長ロッドを建て込んで先行する延長ロッドの上端に接続し、仮受けを解除した後に地盤の掘削と泥水の地上排出が開始される。
【0007】
しかしながら、この仮受けの際の泥水排出が停止されている間に泥水中の粒子分が堆積して掘削ロッド内が堆積した粒子分(堆積物)で閉塞され、この堆積物の抵抗によって駆動モータのトルクが増加し、掘削不能に至る危険性がある。
【0008】
本発明は上記する問題に鑑みてなされたものであり、延長ロッドの下端に駆動モータが装備され、駆動モータの下端に回転自在に掘削ロッドが装着された削孔装置とこの削孔装置を用いた削孔方法に関し、延長ロッドの継ぎ足しの際にも泥水の地上排出(もしくは泥水の逆循環)を継続することができ、もって、泥水排出の停止に起因した泥水中の粒子分からなる堆積物にて掘削ロッドが閉塞されて駆動モータのトルクが増加するとともに掘削不能になるといった問題が生じない、削孔装置と削孔方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記目的を達成すべく、本発明による削孔装置は、地中に順次継ぎ足されていく筒状の延長ロッドと、前記延長ロッドの下端に装着された貫通孔を有する駆動モータと、前記駆動モータに回転自在に装着された筒状の掘削ロッドと、前記掘削ロッドの下端に装着され、噴射水供給路と泥水排出路を内部に備えた掘削ビットと、前記延長ロッドを地上で支持する重機と、から構成され、前記駆動モータの下端にはウォータースイベルが非回転状態で装着され、該ウォータースイベルには地上に延びる排泥管が取り付けられており、前記延長ロッドと前記駆動モータと前記掘削ロッドと前記噴射水供給路から噴射水供給ラインが形成され、前記泥水排出路と前記掘削ロッドと前記ウォータースイベルと前記排泥管から泥水排出ラインが形成されているものである。
【0010】
本発明の削孔装置は、駆動モータの下端にウォータースイベルが非回転状態で装着され、このウォータースイベルに対して地上に延びる排泥管が取り付けられている点に特徴を有するものである。筒状の延長ロッド、駆動モータの貫通孔、筒状の掘削ロッドおよび掘削ビットの噴射水供給路から噴射水供給ラインが形成され、掘削ビットの泥水排出路、掘削ロッド、ウォータースイベル、排泥管から泥水排出ラインが形成されており、泥水の排出が掘削ロッド内および延長ロッド内を介するルートではなくてウォータースイベルと排泥管内を介するルートであることから、延長ロッドの継ぎ足しの際に地上からの噴射水の供給は停止するものの、泥水の排出(泥水の循環)を停止する必要はなくなり、泥水排出の停止に起因した上記する様々な課題を解消することができる。
【0011】
また、掘削ロッドを回転させる駆動モータを地上に載置せず、地上にある重機にて継ぎ足し自在な延長ロッドを支持させ、延長ロッドの下端に駆動モータを装備し、駆動モータの下端に回転自在に掘削ロッドを装着してなる削孔装置であることから、大深度掘削の場合であっても、先端に掘削ビットを備えた掘削ロッドのロッド長が長くなることはなく、掘削に応じて掘削方向に進行する駆動モータにて一定長さの掘削ロッドを回転させることができ、回転トルクの低下もなく、高い掘削精度が保証できる。
【0012】
駆動モータは筒状の延長ロッドを流下した噴射水が流通する関係上、たとえばその中央に貫通孔を備えている。一例として、貫通孔の周囲に環状のロータが回転自在に配設され、この環状のロータの周囲に環状のステータが配設され、ロータの下端に掘削ロッドが装着され、ステータの下端にウォータースイベルが装着されることにより、駆動モータに対して掘削ロッドは回転自在に装着され、駆動モータに対してウォータースイベルは非回転状態で装着された構成を形成できる。なお、この構成では、駆動モータの下方において、駆動モータに対して非回転状態で固定されているウォータースイベルの内部において、掘削ロッドが回転自在に配設されている。
【0013】
掘削ロッドは、噴射水供給ラインと泥水排出ラインの双方を構成する要素となり、その一方で各ラインは双方を流れる流体(噴射水と泥水)が混ざり合わないように相互に分離独立している必要がある。したがって、掘削ロッドには、その内部もしくは外部において、噴射水供給ラインを形成する区画と、泥水排出ラインを形成する区画が存在していて、双方のラインを分離独立できる構成となっている。
【0014】
地上にあるクレーン等の重機にて延長ロッドを吊持するとともに、重機に装備されたガイドレール等にたとえば最上段の延長ロッドを固定して当該最上段の延長ロッドの下方移動を案内するとともに、駆動モータの回転時の反力が延長ロッドを介して伝達されてきた伝達反力を重機にて負担する。
【0015】
また、排泥管の地上部における排出口はたとえばサクションポンプに通じており、サクションポンプの駆動によって泥水の排出が実行される。
【0016】
また、本発明による削孔装置の他の実施の形態において、前記掘削ビットは中央の中央ビットと、該中央ビットから側方へ突出した拡翼ビットから構成され、前記拡翼ビットに前記噴射水供給路が形成され、前記掘削ロッドと前記噴射水供給路が迂回管で繋がれており、前記中央ビットに前記泥水排出路が形成されているものである。
【0017】
本実施の形態の削孔装置は、大口径の掘削孔の造成に対応するべく、掘削ビットを中央の中央ビットと該中央ビットから側方へ突出した拡翼ビットから構成したものである。仮に、掘削ビットの中央ビットから噴射水を提供し、かつ中央ビットから別ルートで泥水を排水する構成とした場合、たとえば拡翼ビットの先端から中央ビットの泥水排出路までの距離が長いことから泥水の取込み効率が低下し、泥水が掘削領域にて停滞し続けることで掘削ビットの摩耗や切削不足による掘削孔の出来形不良が生じる可能性がある。
【0018】
そこで、中央ビットに泥水排出路を形成し、拡翼ビットに噴射水供給路を形成するとともに掘削ロッドと噴射水供給路を迂回管で繋いだ構成とすることで、拡翼ビットの噴射水供給路を介して掘削面(掘削底面)の外周部に噴射水を提供し、当該掘削面の外周部から掘削面の中央部にある中央ビットの泥水排出路に向かう泥水の流れを生ぜしめることができ、掘削面外周部の切削土砂を効率的に地上に排出することが可能になる。
【0019】
また、本発明による削孔装置の他の実施の形態において、前記排泥管は可撓性を有しており、前記延長ロッドの継ぎ足しに応じて地上から地中に該排泥管が自動的に送り出されるものである。
【0020】
可撓性のある排泥管としては、ゴムホースや、薄肉ステンレス溶接管を蛇腹状に加工したパイプなど、多様な形態が挙げられる。たとえば、地上において、リール等に可撓性の排泥管を巻装しておく。延長ロッドの継ぎ足しにより、ウォータースイベルの泥水排出口(排泥管の取り付け口)と地上までの距離が伸びた際に、リールが回転して自動的に排泥管を巻出し、地中に送り出される形態などを挙げることができる。
【0021】
また、本発明による削孔方法は、筒状の延長ロッドの下端に貫通孔を中央に備えた駆動モータを取り付け、該駆動モータの下端に回転自在に筒状の掘削ロッドを取り付けるとともに非回転状態でウォータースイベルを取り付け、該掘削ロッドの下端に噴射水供給路と泥水排出路を内部に備えた掘削ビットを取り付け、該ウォータースイベルに排泥管を取り付け、前記延長ロッドと前記駆動モータと前記掘削ロッドと前記噴射水供給路から噴射水供給ラインを形成し、前記泥水排出路と前記掘削ロッドと前記ウォータースイベルと前記排泥管から泥水排出ラインを形成して掘削装置を構成し、前記掘削ビットを回転させ、前記噴射水供給ラインを介して噴射水を地盤に供給しながら地盤を掘削し、前記泥水排出ラインを介して泥水を地上に排出しながら掘削孔を造成し、地盤の掘削に応じて前記延長ロッドを継ぎ足し、この継ぎ足しの際に、前記泥水排出ラインを介した泥水の排出を継続するものである。
【0022】
本発明の掘削方法によれば、既述する本発明の掘削装置を用いて掘削孔を造成することから、延長ロッドの継ぎ足しの際に泥水排出ラインを介した泥水の排出(泥水の循環)を継続することができ、泥水排出の停止に起因した様々な課題を解消することができる。なお、造成された掘削孔には、たとえば鉄筋籠が挿入され、コンクリートが流し込まれて場所打ち杭が施工される。
【0023】
また、本発明による削孔方法の他の実施の形態において、前記掘削ビットは中央の中央ビットと、該中央ビットから側方へ突出した拡翼ビットから構成され、前記拡翼ビットに前記噴射水供給路を形成し、前記掘削ロッドと前記噴射水供給路を迂回管で繋ぎ、前記中央ビットに前記泥水排出路を形成し、前記拡翼ビットから噴射水を供給し、前記中央ビットから泥水を排出しながら掘削孔を造成するものである。
【0024】
さらに、本発明による削孔方法の他の実施の形態において、前記排泥管は可撓性を有しており、前記延長ロッドの継ぎ足しに応じて地上から地中に該排泥管を自動的に送り出すものである。
【発明の効果】
【0025】
本発明の削孔装置と削孔方法によれば、駆動モータの下端にウォータースイベルが非回転状態で装着され、このウォータースイベルに対して地上に延びる排泥管が取り付けられていて、延長ロッド、駆動モータ、掘削ロッドおよび掘削ビットの噴射水供給路から噴射水供給ラインが形成され、掘削ビットの泥水排出路、掘削ロッド、ウォータースイベル、排泥管から泥水排出ラインが形成されていて、泥水の排出が掘削ロッド内および延長ロッド内を介するルートではなくてウォータースイベルと排泥管内を介するルートであることから、延長ロッドの継ぎ足しの際に泥水の排出(泥水の循環)を停止する必要はなくなり、泥水排出の停止に起因した様々な課題、すなわち、泥水排出の停止に起因した泥水中の粒子分からなる堆積物にて掘削ロッドが閉塞されて駆動モータのトルクが増加するとともに掘削不能になるといった課題を解消することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本発明の削孔装置を説明した模式図である。
図2】掘削面に噴射水を提供し、掘削面から泥水を排出しながら掘削孔を造成している状況を説明した模式図である。
図3】延長ロッドを継ぎ足している際に掘削面からの泥水の排出を継続している状況を説明した模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、図面を参照して本発明の削孔装置と削孔方法の実施の形態を説明する。なお、図示例の削孔装置を構成する掘削ビットは、中央の中央ビットと、該中央ビットから側方へ突出した拡翼ビットから構成されているが、これは大口径の掘削孔に対応した掘削ビットであり、したがって、小口径の掘削孔等に対応した掘削ビットは図示例以外の形態であってもよいことは勿論のことである。また、図示例の削孔装置では、掘削ロッドと噴射水供給路を迂回管で繋ぐことで噴射水供給ラインと泥水排出ラインを相互に分離独立させているが、双方のラインを分離独立させる形態は図示例以外にも様々存在することは勿論のことである。
【0028】
(削孔装置と削孔方法の実施の形態)
図1は本発明の削孔装置を説明した模式図であり、図2は掘削面に噴射水を提供し、掘削面から泥水を排出しながら掘削孔を造成している状況を説明した模式図であり、図3は延長ロッドを継ぎ足している際に掘削面からの泥水の排出を継続している状況を説明した模式図である。
【0029】
図示する削孔装置10は、原地盤G内に順次継ぎ足されていく筒状の延長ロッド1と、延長ロッド1の下端に装着された駆動モータ2と、駆動モータ2に回転自在に装着された筒状の掘削ロッド3と、駆動モータ2の下端に非回転状態で装着されたウォータースイベル5と、掘削ロッド3の下端に装着された掘削ビット4と、延長ロッド1を地上で支持する重機6と、ウォータースイベル5に取り付けられた排泥管7と、排泥管7の端部開口が取り付けたサクションポンプ8と、から大略構成されており、掘削ビット4をX1方向に回転させながら下方に前進させ(X2方向)、原地盤G内に所定延長の掘削孔Pを造成するものである。
【0030】
重機6は、最上段の延長ロッド1を降下自在に案内するガイドレール6aを有しており、最上段の延長ロッド1をワイヤ6bで直接吊持することで延長ロッド1や駆動モータ2等を支持する。
【0031】
延長ロッド1は所定長さの鋼管からなり、掘削ビット4による原地盤Gの削孔が進行し、掘削孔Pの延長が長くなるのに応じて順次継ぎ足されていく。なお、図1は三本の延長ロッド1が継ぎ足された状態で削孔が進行している状況を示している。掘削孔Pの造成においては、地上から所定密度の安定液Lが掘削孔P内に提供され、孔壁の崩落防止が図られている。
【0032】
図2で示すように、油圧式の駆動モータ2は、中央のロータ2bとその周囲のステータ2aとから構成され、ロータ2bの中央には貫通孔2cが開設されている。なお、図2で示す駆動モータ2は構成を簡略にして模式的に示したものであり、内側にステータがあり、外側にロータがある別構成の駆動モータ等であってもよく、図示例以外の多様な構成の駆動モータが適用できる。
【0033】
図2で示されている延長ロッド1は最下段の延長ロッドであり、この最下段の延長ロッド1は駆動モータ2のステータ2aに固定されており、したがって、延長ロッド1は駆動モータ2に対して非回転状態で取り付けられている。
【0034】
一方、駆動モータ2のロータ2bの下端には掘削ロッド3が取り付けられており、したがって、ロータ2bのX1方向の回転に応じて掘削ロッド3もX1方向に回転自在となっている。そして、掘削ロッド3の下端には掘削ビット4が取り付けられており、掘削ロッド3と同様にX1方向に回転自在となっている。
【0035】
駆動ロッド3には、駆動モータ2の貫通孔に流体連通する分岐路3aが設けてあり、この分岐路3aの下方から複数の迂回路3cが分岐して掘削ビット4に延びている。
【0036】
駆動モータ2のステータ2aの下端には、ウォータースイベル5が非回転状態で装着されており、したがって、駆動モータ2のロータ2bに装着されている駆動ロッド3の一部はウォータースイベル5内に存在する。
【0037】
掘削ビット4はその前面(下端面)に多数の掘削刃4aを備えており、中央の中央ビット4Aと、この中央ビット4Aから側方へ突出した拡翼ビット4Bから構成されている。拡翼ビット4Bには噴射水供給路4bが形成され、迂回路3cがこの噴射水供給路4bに流体連通している。一方、中央ビット4Aには泥水排出路4cが形成され、掘削ロッド3と流体連通しており、さらに、掘削ロッド3に開設されていてウォータースイベル5内に臨む排出口3bに流体連通している。
【0038】
筒状の延長ロッド1、駆動モータ2の貫通孔2c、掘削ロッド3の分岐路3a、および掘削ビット4の噴射水供給路4bから噴射水供給ラインが形成される。地上から供給された高圧水は、筒状の延長ロッド1および駆動モータ2の貫通孔2cをY1方向に流れ、分岐路3aに流れ込み(Y2方向)、分岐路3aからさらに分岐した迂回路3cに流れ込み(Y3方向)、噴射水供給路4bを介して(Y4方向)掘削面にY5方向で供給される。
【0039】
一方、掘削ビット4の泥水排出路4c、掘削ロッド3の排出口3b、ウォータースイベル5および排泥管7から泥水排出ラインが形成される。排泥管7の地上側の端部は地上にあるサクションポンプ8に流体連通しており、サクションポンプ8を駆動させることにより、泥水排出路4cから掘削土砂が安定液Lに混ざり合った泥水がY6方向で吸引され、掘削ロッド3に入り、掘削ロッド3をY7方向で上流して排出口3cからウォータースイベル5に入り込み(Y8方向)、ウォータースイベル5の排出管5aをY9方向で上流した後、排泥管7をY10方向で上流して地上に排出される。
【0040】
このように、掘削ロッド3は、噴射水が流通する噴射水供給ラインと泥水が流通する泥水排出ラインの双方の構成要素であるため、噴射水と泥水が混ざり合うことなく分離独立して流通するようにそれぞれの流体流路が区画構成されている。
【0041】
掘削孔Pの造成においては、噴射水の掘削面への提供をおこなうとともに、掘削ロッド3を介して泥水を逆循環方式にて地上に排出し、掘削ビット4を継続的に回転させることで造成がおこなわれる。
【0042】
一方、掘削孔Pの掘削が進行して延長ロッド1の継ぎ足しをおこなう際には、図3で示すように、噴射水供給ラインを介した噴射水の供給は停止するものの、泥水排出ラインを介した泥水の排出は継続する。
【0043】
これは、駆動モータ2の下方にウォータースイベル5が非回転状態で装着され、このウォータースイベル5および排泥管7を介した泥水排出ライン、すなわち噴射水供給ラインとは別ルートの排出ラインが設けられていることによって実現される。そのため、泥水排出の停止に起因した泥水中の粒子分からなる堆積物にて掘削ロッド3が閉塞されて駆動モータ2のトルクが増加するとともに掘削不能になるといった問題は生じ得ない。
【0044】
このように、本発明の削孔方法は、図1で示す削孔装置10を用いて、掘削ビット4を回転させ、噴射水供給ラインを介して噴射水を地盤に供給しながら地盤を掘削し、泥水排出ラインを介して泥水を地上に排出しながら掘削孔Pを造成し、原地盤Gの掘削に応じて延長ロッド1を継ぎ足していくものであるが、この延長ロッド1の継ぎ足しの際に、泥水排出ラインを介した泥水の排出を継続するものである。
【0045】
この掘削方法では、掘削ロッド3を回転させる駆動モータ2を地上に載置せず、地上にある重機6にて継ぎ足し自在な延長ロッド1を支持させ、延長ロッド1の下端に駆動モータ2を装備し、駆動モータ2の下端に回転自在に掘削ロッド3を装着してなる削孔装置10を使用していることから、大深度掘削の場合であっても、先端に掘削ビット4を備えた掘削ロッド3のロッド長が長くなることはなく、掘削に応じて掘削方向に進行する駆動モータ2にて一定長さの掘削ロッド3を回転させることができ、回転トルクの低下もなく、高い掘削精度を保証することができる。
【0046】
また、図示する削孔装置10を構成する排泥管7は可撓性を有しており、たとえば、ゴムホースや、薄肉ステンレス溶接管を蛇腹状に加工したパイプなどから形成されている。排泥管7は地上においてリール9に巻装されており、リール9から出た排泥管7の端部がサクションポンプ8に連通している。
【0047】
延長ロッド1の継ぎ足しにより、ウォータースイベル5の排出管5aの泥水排出口と地上までの距離が伸びた際に、リール9が回転して自動的に排泥管7を巻出し、排泥管7が地中に送り出されることで自動的にその延長を長くすることができる。
【0048】
また、図示する削孔装置10は、大口径の掘削孔Pの造成に対応するべく、掘削ビット4を中央の中央ビット4Aと側方の拡翼ビット4Bから構成している。仮に、掘削ビットの中央ビットから噴射水を提供し、かつ中央ビットから別ルートで泥水を排水する構成とした場合、たとえば拡翼ビットの先端から中央ビットの泥水排出路までの距離が長いことから泥水の取込み効率が低下し、泥水が掘削領域にて停滞し続けることで掘削ビットの摩耗や切削不足による掘削孔の出来形不良が生じる可能性がある。
【0049】
そこで、削孔装置10では、中央ビット4Aに泥水排出路4cを形成し、拡翼ビット4Bに噴射水供給路4bを形成するとともに掘削ロッド3と噴射水供給路4bを迂回管3cで繋いだ構成とすることで、拡翼ビット4Bの噴射水供給路4bを介して掘削底面の外周部に噴射水を提供し、当該掘削底面の外周部から掘削面の中央部にある中央ビット4Aの泥水排出路4cに向かうY5方向の泥水の流れを生ぜしめることができ、掘削底面外周部の切削土砂を効率的に地上に排出することが可能になる。
【0050】
所定延長の掘削孔Pが造成されたら、掘削孔P内に鉄筋籠が吊り下され、コンクリートが充填されて場所打ち杭が施工される。
【0051】
以上、本発明の実施の形態について図面を用いて詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における設計変更等があっても、それらは本発明に含まれるものである。
【符号の説明】
【0052】
1…延長ロッド、2…駆動モータ、2a…ステータ、2b…ロータ、2c…貫通孔、3…掘削ロッド、3a…分岐路、3b…排出口、3c…迂回路、4…掘削ビット、4A…中央ビット、4B…拡翼ビット、4a…掘削刃、4b…噴射水供給路、4c…泥水排出路、5…ウォータースイベル、5a…排出管、6…重機、6a…ガイドレール、6b…ワイヤ、7…排泥管、8…サクションポンプ、9…リール、10…削孔装置、G…原地盤、P…掘削孔
図1
図2
図3